JP2001105761A - 平版印刷用ネガ型印刷原板、及び平版印刷用ネガ型印刷版の作製方法 - Google Patents

平版印刷用ネガ型印刷原板、及び平版印刷用ネガ型印刷版の作製方法

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JP2001105761A
JP2001105761A JP29261199A JP29261199A JP2001105761A JP 2001105761 A JP2001105761 A JP 2001105761A JP 29261199 A JP29261199 A JP 29261199A JP 29261199 A JP29261199 A JP 29261199A JP 2001105761 A JP2001105761 A JP 2001105761A
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printing plate
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JP29261199A
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Takao Nakayama
隆雄 中山
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】(イ)現像処理を必要としないで、簡易に製版
できて、直接に印刷機に装着して製版することも可能
で、(ロ)耐刷性にすぐれ、印刷面上の印刷汚れが少な
く、レーザー光による走査型の画像露光方式によって容
易に製版できて、画像部と非画像部との識別性に優れ、
(ハ)反復して再使用可能なヒートモード型のネガ型平
版印刷原板及びその原板を用いる印刷版の作製方法を提
供する。 【解決手段】光熱変換性微粒子と、光触媒性金属酸化物
粒子が結着樹脂に分散された感光層を有する印刷用原
板、及び、この原板にヒートモードの像様光照射を行っ
て、該金属酸化物層の極性を変換させて像様疎水性領域
を形成させることからなる平版印刷用ネガ型無処理刷版
の作製方法。また、使用した印刷版を、活性光を照射ま
たは高温親水性発現温度に加熱する印刷原板の再生方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、現像不要で耐刷性
に優れた平版印刷用のネガ型無処理印刷版の作製方法に
関する。より詳しくは、ヒートモードの画像記録によっ
て製版できて、かつディジタル信号に基づいた走査露光
による画像記録も可能であり、現像することなく印刷機
に装着して製版・印刷することができ、しかも再使用可
能なネガ型の無処理平版印刷版の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】平版印刷法とりわけオフセット印刷法
は、数多くの印刷方法の中でも印刷版の製作工程が簡単
であるために、とくに一般的に用いられてきており、現
在の主要な印刷手段となっている。この印刷技術は、油
と水の不混和性に基づいており、画像領域には油性材料
つまりインクが、非画像領域には湿し水が選択的に保持
される。したがって印刷される面と直接あるいはブラン
ケットと称する中間体を介して間接的に接触させると画
像部のインクが転写されて印刷が行われる。
【0003】オフセット印刷の主な方法は、アルミニウ
ム基板を支持体としてその上にジアゾ感光層を塗設した
PS板である。PS板においては、アルミニウム基板を
支持体としてその表面を砂目立て、陽極酸化、その他の
諸工程を施してインク受容能と非画像部のインク反発性
を強め、耐刷力を向上させ、印刷面の精彩化を図るなど
を行い、その表面に印刷用画像を形成させる。したがっ
てオフセット印刷は、簡易性に加えて耐刷力や印刷面の
高精彩性などの特性も備わってきている。しかしなが
ら、印刷物の普及に伴って、オフセット印刷法の一層の
簡易化が要望され、数多くの簡易印刷方法が提案されて
いる。
【0004】その代表例がAgfa-Gevaert社から市販され
たCopyrapid オフセット印刷版をはじめ、米国特許35
11656号、特開平7−56351号などでも開示さ
れている銀塩拡散転写法による印刷版作製に基づく印刷
方法であって、この方法は、1工程で転写画像を作るこ
とができて、かつその画像が親油性であるために、その
まま印刷版とすることができるので、簡易な印刷方法と
して実用されている。しかしながら、簡易とはいいなが
らこの方法もアルカリ現像液による拡散転写現像工程を
必要としている。現像液による現像工程を必要としない
さらに簡易な印刷方法が要望されている。
【0005】画像露光を行ったのちのアルカリ現像液に
よる現像工程を省略した簡易印刷版の製作方法の開発は
上記の背景から行われてきた。現像工程を省略できるこ
とから無処理刷版とも呼ばれるこの簡易印刷版の技術分
野では、これまでに主として 像様露光による画像記録面上の照射部の熱破壊による
像形成、像様露光による照射部の親油性化(ヒートモ
ード硬化)による画像形成、同じく照射部の親油性化
であるが、光モード硬化によるもの、ジアゾ化合物の
光分解による表面性質の変化、画像部のヒートモード
溶融熱転写などの諸原理に基づく手段が提案されてい
る。
【0006】これらの開示技術は、製版に際して現像液
を必要としないように考案されてはいるが、親油性領域
と親水性領域との差異(すなわち識別性)が不十分であ
ること、したがって印刷画像の画質が劣ること、解像力
が劣り、鮮鋭度の優れた印刷画面が得にくいこと、画像
面の機械的強度が不十分で傷がつきやすいこと、そのた
めに保護膜が必要となるなど却って簡易性が損なわれる
こと、長時間の印刷に耐える耐久性が不十分なことなど
のいずれか一つ以上の欠点を伴っていて、単にアルカリ
現像工程を無くすだけでは実用性は伴わないことを示し
ている。印刷上必要とされる諸特性を具備し、かつ簡易
に印刷版を製作できる印刷版作成方法への強い要望は、
いまだに満たされていない。
【0007】その解決の手段として、高出力のレーザー
光の照射によって熱の作用によって照射部の画像層を熱
飛散させて除去する(アブレーションと呼ばれる)方法
が開示され、例えば、WO98/40212号、WO9
8/34796号及び特開平6−199064号公報に
は、遷移金属化合物コロイドを含む親水性層を上層と
し、親油性画像記録層を下層とした重層構成層を基板上
に設けた、現像することなく製版することが可能な平版
印刷原板が開示されている。この方法は、たしかに完全
に熱飛散が行われた照射領域と非照射領域との識別性は
大きいが、飛散物による装置の汚れ、印刷面の汚れが装
置の稼働と印刷品質を損なう上に、しばしば照射光の熱
が画像記録層の深部に及ばず、支持体に近い画像層底部
が飛散しないで残る残膜という現象があり、残膜があれ
ば本来の識別性が発揮されず印刷品質を低下させる。
【0008】このために、ヒートモードの光照射による
画像形成であってもアブレーションによらないで、表面
の親水性・疎水性の度合の熱による変化、すなわち極性
変化を利用する簡易製版方法がこの欠点を伴わない方法
として開示されている。例えば、疎水性ワックスやポリ
マーラテックスなどの熱可塑性ポリマーを親水層に添加
して、熱により表面へ相分離させて疎水化する方法が特
開昭58−199153号、US3,168,864号
などで提案され、識別性改善手段の一つの方向が示唆さ
れている。しかし、これらの開示技術は識別性が不足し
ていること、とくに親水性が不足して印刷汚れが懸念さ
れることなどにより改善が望まれている。
【0009】また、無処理型印刷版作成方法の一つとし
てジルコニアセラミックが光照射によって親水性化する
ことを利用した印刷版作製方法が特開平9−16909
8号で開示されている。しかし、ジルコニアの光感度は
不十分であり、かつ極性変換効果が不十分のため画像部
と非画像部の識別性が不足している。
【0010】上記した先行技術に見られるように、現像
液を必要としない簡易な印刷方法の開発に関して多大の
注力がされてきたが、この課題に対する市場の要望が強
いだけに未だにその要望に十分答えうる技術が提供され
てない状況にある。また、市場の上記要望に加えて使用
済みの印刷用原版を簡単に再生して再使用する手段の開
発も、コストの低減と廃棄物の軽減の両面で有利であ
り、要望されていることである。しかしながら、印刷用
原版の再生使用には、その再生操作の簡易性が伴わなけ
れば意味がなく、再生操作の簡易化は難度の高い課題で
ある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ヒー
トモードの製版方式の前記した欠陥を解決して性能向上
を図ることである。すなわち、本発明の目的は、現像処
理を必要としないで、簡易に製版できて、直接に印刷機
に装着して製版することも可能で、しかも耐刷性にすぐ
れ、印刷面上の印刷汚れも少ない平版用印刷原板及び印
刷版を提供することにある。本発明のさらなる他の目的
は、反復して再使用可能な平版印刷用原板、及びその再
使用方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
に対して、例えばWO98/40212号、WO98/
34796号及び特開平6−199064号公報などの
光の熱破壊作用による画像形成方法では、熱飛散による
汚れにより識別性が伴わず、例えば特開平特開平9−1
69098号、特開昭58−199153号、US3,
168,864号公報などに開示された光の極性変換作
用による画像形成方法では、低感度ゆえに識別性が伴わ
ないなど、従来の先行技術では発明目的に十分には応え
られないことに鑑みて、光熱変換物質と光触媒性物質と
を共存させたときの新たな挙動を追求したところ、熱飛
散もなく、しかも高感度に像形成できる条件があること
が判り、その条件の具現の検討を重ね、本発明を完成す
るに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0013】1.光熱変換性粒子と光触媒性を有する金
属化合物粒子とが結着剤に分散された感光層を支持体上
に有することを特徴とする平版印刷用ネガ型印刷原板。
【0014】2.感光層がゾルゲル変換性の結着剤から
なり、光熱変換性粒子と光触媒性を有する金属化合物粒
子とをゾル状態の結着剤に添加したのち、該結着剤を支
持体上に塗布した感光層であることを特徴とする上記1
に記載の平版印刷用ネガ型印刷原板。
【0015】3.光熱変換性粒子と光触媒性を有する金
属化合物粒子の少なくとも一方がシリケート処理されて
いることを特徴とする上記1又は2に記載の平版印刷用
ネガ型印刷原板。
【0016】4.光熱変換性粒子と光触媒性を有する金
属化合物粒子の少なくとも一方が結着剤のゾルゲル変換
構造の構成成分であることを特徴とする上記1〜3のい
ずれか1項に記載の平版印刷用ネガ型印刷原板。
【0017】5.光熱変換性粒子と光触媒性を有する金
属化合物粒子とが結着剤に分散された感光層を支持体上
に有する印刷用原板に、ヒートモードの像様光照射を行
って、該金属化合物層の極性を変換させて像様疎水性領
域を形成させることを特徴とする平版印刷用ネガ型印刷
版の作製方法。
【0018】6.請求項1〜4のいずれか1項に記載の
印刷用原板から作製された印刷版を使用した後、使用済
みの該刷版上のインキを除去し、活性光の全面照射又は
加熱によって感光層の表面を親水性とし、印刷用原板と
して再使用することを特徴とする請求項5に記載の平版
印刷用ネガ型印刷版の作製方法。
【0019】本発明の第1の特徴は、光触媒性の金属化
合物と光熱変換性物質を同一の感光層内に共存させたこ
とである。これによって、「活性光の照射によって疎水
性から親水性へ表面の極性が変化し、熱を加えると親水
性の表面が疎水性に戻る」という光触媒性金属化合物の
性質と「光エネルギーを吸収して熱エネルギーに変換す
る」という光熱変換性物質の性質とを共に利用した製版
・印刷と使用済み刷版の再生の両方を可能にしたことで
ある。これによってヒートモードの画像記録が可能で、
かつ反復再生使用も可能な感光性印刷用原板を得ること
ができた。
【0020】すなわち、本発明の印刷原板は、光熱変換
性物質と光触媒性金属化合物が同一の感光層内に別個の
分散粒子として共存していることが特徴である。このよ
うな互いの存在関係においては、光熱変換性物質が光の
照射を受けて光エネルギーを熱エネルギーに変換する
と、その近傍の光触媒性の金属化合物の親水性の表面が
その熱によって疎水性に変化し、それに伴って感光層の
その部分の極性も疎水性となる。したがって印刷原板の
親水性表面に像様光照射領域に対応した像様疎水性領域
が形成され、その像様疎水性領域をインキ受容領域とす
るネガ型の印刷版を作成することができる。
【0021】また、光触媒性金属化合物の存在下では、
ヒートモード光により形成された像様疎水性領域は、紫
外線などの活性光の照射を受けると疎水性から親水性へ
と戻る現象を利用すると、使用済み印刷版を原板に再生
することも可能となる。すなわち、像様光照射で作られ
た印刷版を印刷に使用した後、インキを除去してから活
性光を照射すると、インキが除去された疎水性領域も親
水性に戻るので、表面の全面が親水性の印刷原板とな
り、反復再使用することができる。
【0022】印刷原板の反復再生使用は、上記とは異な
る以下の方法でも行うことができる。すなわち、光触媒
性金属化合物は、加熱すると疎水性にもどるという上記
の性質を有しているが、この疎水性発現温度を超えてさ
らに高温に加熱すると、再び親水性となる性質がある。
この温度は親水性発現温度と呼ばれ、金属化合物の種類
や履歴によって異なるが、一般に170°C以上、多く
の場合、200°C以上で現れる。本発明においては、
使用済み刷版に、活性光を照射する代わりに刷版を高温
親水性発現温度に加熱して表面が親水性の印刷原板に戻
し、反復再使用することもできる。
【0023】本発明者が所属する研究グループでは、先
に光触媒性を有する金属化合物粒子上に光熱変換性金属
微粒子を担持させる方法を見いだしたが、本発明におい
ては、光触媒性を有する金属化合物粒子と光熱変換性物
質とを別個に分散させた状態で同一の層内に共存させる
という単純な方法で耐刷性と印刷品質に優れた印刷原板
を得ることができた。両者を別個に分散させることによ
り、光熱変換性物質の選択範囲が拡大され、光熱変換効
果の優れた材料を選択できるに至った。
【0024】また、光熱変換性物質と光触媒性金属化合
物は、別個に分散させてはいるが、同一の感光層内に共
存しているので、光熱変換感度が高く、耐刷性と印刷品
質に寄与している。この効果は、感光層の結着剤がゾル
ゲル変換構造を有する結着剤すなわちゾル状態で光熱変
換性物質と光触媒性金属化合物とを内包して、支持体上
に塗布されたのちにゲル構造が発達するような結着剤で
ある場合に、とくに顕著となる。その理由は、おそらく
ゲル構造の結着剤と光熱変換性物質及び光触媒性金属化
合物間の伝熱抵抗が小さく、ヒートモード露光の感度、
したがって極性変換の敏感性を向上させているものと推
定している。本発明は、感光層の結着剤、光熱変換性物
質及び光触媒性金属化合物粒子間の伝熱効率がよいこと
が発明の効果を高めるので、光熱変換性物質及び光触媒
性金属化合物粒子のいずれか又は両方を結着剤に添加す
るのに先立ってシリケート処理して表面親水性を高めて
おくと印刷原板の性能をさらに向上させることができ
る。さらに、チタン、ジルコニウム、鉄などの酸化物の
ような光熱変換性又は光触媒性化合物を結着剤のシロキ
サン構造の中に取り込んでゲル構造を構成させることが
特に優れた効果をもたらしている。
【0025】上記の本発明の方法では、光熱変換性物質
と光触媒性金属化合物が共存する親水性の感光層に、ヒ
ートモードの像様光照射を行うだけで、被照射部はイン
キ受容性の像様疎水性領域を形成し、親水性を示す画像
記録層表面の非照射領域と著しい極性の差を生じさせる
ことができるので、印刷汚れも少なく耐刷性も優れた印
刷版を現像不要の簡単な方法で作製できる。さらに印刷
版を使用後、紫外線等の活性光線を照射することにより
(又は高温親水性発現温度に加熱することにより)、疎
水性領域は親水性に変化し、再度印刷用原板として反復
使用することができる。従って、経済的でもある。ま
た、製版操作が上記のように簡単であり、かつヒートモ
ードの光照射はレーザー光によって行うこともできるの
で、印刷原板を印刷機にセットして機上製版を行うこと
もできる。本発明の具体的な態様の詳細は以下に記す。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、光触媒性を有する金属化合物層、光熱変換性微粒
子、結着剤、感光層の塗設、支持体、製版方法、印刷原
板の再生の順に詳細に説明する。以下の記述では、光熱
変換性物質と光触媒性を有する金属化合物(光触媒性金
属化合物)が混合分散された「感光層」を「画像記録
層」と呼ぶこともある。なお、本明細書で用いている用
語について触れておくと、「活性光」とは、光触媒型金
属化合物が吸収すると励起されて、その表面を親水性に
変化させる光を指している。また、「全面照射」は、印
刷面の全面にわたって実質的に一様(たとえ走査露光で
あっても)で局部的な不均一が実用上認められない照射
(露光)を指している。これに対して「像様照射」は、
受光面照度が画像状に分布するように画像変調された光
による照射である。「ヒートモード」とは、当業界で通
常用いている意味で用いており、微細な発熱媒体を画像
状に接触させて熱の作用による描画を行う方法以外に
も、吸収した光が熱エネルギーに変換される結果、光化
学的な変化でなく熱の作用による変化がもたらされる現
象を利用する方式を指しており、ヒートモードの描画に
は赤外線、高照度短時間の可視光及びレーザービームな
どが用いられる。
【0027】〔感光層の構成及び塗設〕また本発明にお
いて、感光層すなわち画像記録層は、光熱変換剤、光触
媒性金属化合物及び結着剤を必須の構成成分としてい
る。結着剤は、光熱変換剤と光触媒性金属化合物を別個
に分散しうるものであれば、有機高分子や無機高分子材
料のいずれも使用することができるが、ゾルゲル変換性
の結着剤が好ましく、とくに、シロキサン結合を有する
樹脂を好ましい。ゾル−ゲル変換を利用して成膜するこ
とにより、感光層としての膜の強度及び光熱変換剤や光
触媒性金属化合物の粒子の均一分散性に優れるという利
点がある。
【0028】本発明の平版印刷用原板の感光層は、疎水
性状態のときは水との接触角は通常30度以上であり、
好ましくは60度以上、より好ましくは80度以上であ
る。活性光の光触媒作用によって親水性化すると、光触
媒性金属化合物の表面は、拡張ぬれを示すほどの親水性
となり、したがって感光層の表面の極性も親水性とな
る。光照射で表面が親水性に変換される現象の詳細は、
例えば、渡辺俊也、セラミックス、31、837(19
96)等に記載されている。しかし、平版印刷用原版へ
の応用は今まで開示されておらず、この使用は平版印刷
の技術分野での大きな進歩を示す。なお、感光層表面の
水との接触角は、平版印刷用原版の感光層表面に、室温
で蒸留水2μlを乗せ、30秒後の表面接触角(度)
を、表面接触計(CA−D、協和界面化学(株)製商品
名)を用いて測定される。
【0029】(光触媒性を有する金属化合物)光触媒性
を有する金属化合物は、活性光を吸収すると電子エネル
ギー準位が励起されて反応性が促進される性質をもつ金
属化合物であり、励起作用をもつ光を活性光と呼んでい
る、本発明に使用する光触媒性を有する金属化合物に
は、TiO2、RTiO3(Rはアルカリ土類金属原
子)、AB2-xx3-xx10(Aは水素原子又はアル
カリ金属原子、Bはアルカリ土類金属原子又は鉛原子、
Cは希土類原子、Dは周期律表の5A族元素に属する金
属原子、Eは同じく4族元素に属する金属原子、xは0
〜2の任意の数値を表す)、SnO2、MoS2、MoS
2、ZrO2、ZnO、ZnS、CdS、CdSe、P
bS、SiC、Bi23、WO3 及びFe23が挙げら
れる。
【0030】酸化チタン(TiO2)は、イルメナイト
やチタンスラグの硫酸加熱焼成、あるいは加熱塩素化後
酸素酸化など既知の任意の方法で作られたものを使用で
きる。酸化チタンはいずれの結晶形のものも使用できる
が、とくにアナターゼ型のものが感度が高く好ましい。
アナターゼ型の結晶は、酸化チタンを焼成して得る過程
の焼成条件を選ぶことによって得られることはよく知ら
れている。その場合に無定形の酸化チタンやルチル型酸
化チタンが共存してもよいが、アナターゼ型結晶が40
%以上、好ましくは60%以上含むものが上記の理由か
ら好ましい。
【0031】アナターゼ型酸化チタン粒子の平均粒径
は、5〜500nmのものが好ましく、より好ましくは5
〜100nmである。この範囲において、紫外線光照射に
よる表面親水化がより適切に行なわれる。アナターゼ型
酸化チタン粒子は、粉体としてあるいはチタニアゾル分
散液として上市品として入手できる。例えば、石原産業
(株)、チタン工業(株)、堺化学(株)、日本アエロ
ジル(株)、日産化学工業(株)等から市販されてい
る。
【0032】本発明に供されるアナターゼ型酸化チタン
粒子は、他の金属元素又はその酸化物を含有してもよ
い。含有とは、粒子の表面及び/又は内部に被覆したり
担持したり、あるいはドープしたりすることを含める。
含有される金属元素としては、例えば、Si、Mg、
V、Mn、Fe、Sn、Ni、Mo、Ru、Rh、R
e、Os、Cr、Sb、In、Ir、Ta、Nb、C
s、Pd、Pt、Au等が挙げられる。具体的には、特
開平7−228738号、同7−187677号、同8
−81223号、同8−257399号、同8−283
022号、同9−25123号、同9−71437号、
同9−70532号等に記載されている。これらの他の
金属元素又はその酸化物の含有量は、アナターゼ型酸化
チタン粒子全重量の好ましくは10%以下、より好まし
くは5%以下である。
【0033】RTiO3のRは、マグネシウム、カルシ
ウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウムなどの周
期律表のアルカリ土類元素に属する金属原子であり、と
くにストロンチウムとバリウムが好ましい。上記のR
は、その合計が上記の式に化学量論的に整合する限り2
種以上のアルカリ土類金属原子を共存させることができ
る。
【0034】一般式AB2-xx3-xx10で表される
化合物において、Aは水素原子及びナトリウム、カリウ
ム、ルビジウム、セシウム、リチウムなどのアルカリ金
属原子から選ばれる1価原子で、その合計が上記の式に
化学量論的に整合する限りそれらの2種以上を共存して
もよい。Bは、上記のRと同義のアルカリ土類金属原子
又は鉛原子であり、上記同様に化学量論的に整合する限
り2種以上の原子が共存してもよい。Cは希土類原子で
あり、好ましくはスカンジウム、イットリウムのほかラ
ンタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジウム、ホル
ミウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ツ
リウム、イッテルビウム、ルテチウムなどのランタノイ
ド系元素に属する原子であり、また、その合計が上記の
式に化学量論的に整合する限りそれらの2種以上を共存
してもよい。Dは周期律表の5A族元素から選ばれた一
種以上で、バナジウム、ニオブ、タンタルが挙げられ
る。また、化学量論関係を満たす限り、2種以上の5A
族元素が共存してもよい。Eは同じくシリコン、ゲルマ
ニウム、錫、鉛,チタン、ジルコニウムなどの4族元素
に属する金属原子であり、また、2種以上の4族の金属
原子が共存してもよい。xは0〜2の任意の数値を表
す。一般式AB2-xx3-xx10で表される化合物の
具体例としては、CsLa 2NbTi2 10、HCa1.5
La0.5 Nb2.5Ti0.5 10、LaNbTi210など
挙げられる。
【0035】これらの化合物の製造方法としては、たと
えば、CsLa2NbTi210微粒子は、その化学量論
に対応するCs2CO3 、La23 、NbO5,TiO2
を乳鉢で微粉砕して、白金るつぼに入れ、130℃で5
時間焼成し、それを冷却してから乳鉢に入れて数ミクロ
ン以下の微粒子に粉砕して得られる。この方法は、Cs
La2NbTi210型微粒子に限られず、HCa1.5
0.5Nb2.5 Ti0.510、LaNbTi210など前
述のAB2-xx3-xx10、(0≦x≦2)に適用さ
れる。
【0036】その他の光触媒性を有する金属化合物は、
市販の容易に入手できるものを用いることができる。本
発明においては、以上のTiO2 、RTiO3 、AB
2-xx3-xx10、SnO2、ZrO2、ZnO、Zn
S、CdS、PbS、SiC、WO3、CdSe、Mo
Se、MoSe2、Bi23 及びFe23の少なくとも
一つを単独あるいは2種以上の組み合わせて感光層中に
内包される。
【0037】本発明においては、光触媒性金属化合物微
粒子の含量として好ましくは感光層中の固形物成分の3
0〜95wt%の範囲で含有し、より好ましくは50〜8
0wt%の範囲で含有するのがよい。30wt%未満では感
光層表面の極性応答が必ずしも十分でなく、95wt%を
超えて多くなると、膜の物理的特性が劣化することが多
い。
【0038】(光熱変換性物質)本発明では、光熱変換
性物質としては、結着剤に溶解又は分散され、かつ照射
光の分光スペクトル領域に分光吸収領域をもち、吸収し
た光エネルギーを蛍光や燐光として放射することなく、
熱エネルギーに変換しうる物質であれば用いることがで
きる。それらは、金属微粒子、金属化合物粒子、顔料、
カーボンブラックなどの非金属固体単体及び染料などで
ある。
【0039】1.光熱変換性金属微粒子 本発明では、光触媒性を有する金属化合物層の表面に光
熱変換性微粒子として、金属微粒子、金属化合物又は顔
料が坦持される。 <光熱変換性金属微粒子を形成する物質>好ましい金属
微粒子として、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、N
i、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、Au、Pt、
Pd、Rh、In、Sn、W、Re、Sb、Te、G
e、Pb、の微粒子が挙げられる。これらの金属微粒子
を構成する金属のなかでも、より好ましい金属は、可視
又は赤外線領域の吸光度が高い金属、例えばRe、S
b、Te、Au、Ag、Cu、Ge、Pb、Geの微粒
子が挙げられる。また、イオン化傾向が水素元素よりも
後順位(貴)である金属すなわちAg,Au,Cu,P
t,Pd及びRh、とくにAg,Au及びCuの微粒子
も好ましい。また、例えばRe,Sb,Te,Au,A
g,Cu、Ge,Pb、Snなどの低融点金属の微粒子
とTi、Zn、Fe、Co、Ni、Geなどの自己発熱
性金属の微粒子を混合使用するなど、2種以上の光熱変
換物質で構成されていてもよい。
【0040】これらの粒子の粒径は、10μm以下、好
ましくは、0.005〜5μm、さらに好ましくは、
0.01〜3μmである。0.01μm以下では、粒子
の分散が難しく、10μm以上では、印刷物の解像度が
悪くなる。
【0041】以上に述べた金属単体及び合金の微粒子
は、表面を親水性化処理することによって、本発明の効
果がより発揮される。表面親水性化の手段は、親水性で
かつ粒子への吸着性を有する化合物、例えば界面活性剤
で表面処理したり、粒子の構成物質と反応する親水性基
をもつ物質で表面処理したり、保護コロイド性の親水性
高分子皮膜を設けるなどの方法をを用いることができ
る。とくに好ましいのは、表面シリケート処理であり、
例えば鉄微粒子の場合は、70℃の珪酸ナトリウム(3
%)水溶液に30秒浸漬する方法によって表面を十分に
親水性化することができる。他の金属微粒子も同様の方
法で表面シリケート処理を行うことができる。
【0042】これらの金属微粒子は、金属化合物の還
元、金属精錬時の機械的粉砕、蒸着やスパッタリング、
その他の公知の方法で好ましいサイズのものを作製して
もよく、また市販の金属粒子を購入してもよい。
【0043】II. 顔料 光熱変換性金属化合物層の表面に担持され得る光熱変換
物質として、顔料も好ましく用いることができる。本発
明に用いることができる顔料には下記のものを挙げるこ
とができる。 (1)無機顔料 クロムイエロー、カドミウムイエロー、ニッケルチタン
イエロー、べんがら、カドミウムレッド、モリブデンレ
ッド、群青、コバルト青、エメラルドグリーンなど。
【0044】(2)有機金属錯体顔料 銅、クロミウム、コバルト、マンガンなどのフタロシア
ニン錯化合物。上記(1)及び(2)の顔料は、耐熱性
が十分であるので、ヒートモード描画のさいに温度が高
くなっても微粒子自体の熱破壊よりは光触媒性の金属化
合物層の極性を変化させる作用を行う。また、吸収スペ
クトル領域が広いので、輻射線が赤外線でなくてもよ
い。例えば、大容量のコンデンサーと組み合わせた短時
間高照度で500〜600nmに発光極大をもつ連続ス
ペクトルのキセノンフラッシュ照射によって100℃以
上の局部加熱を容易に行うことができる利点がある。
【0045】(3)有機顔料 トリフェニルメタン系、キナクリドン系、ペリレン系、
イソインドリノン系、ジオキサジン系、キノフタロン
系、モノアゾ系、ジスアゾ系の顔料が耐熱性であり、吸
光係数も大きく、優れた光・熱変換抜糸津である。この
例には、クロモフタールスカーレットR,ペリレンレッ
ド178、ベンゾイミダゾロンカルミンHF4C,レー
キレッドC,ロダミン6Gレーキ、パーマネントレッド
FGR,パーマネントボルドFGR,キナクリドンマゼ
ンタ122、イエローH10GLなどを挙げることがで
きる。
【0046】そのほか、市販の顔料及びカラーインデッ
クス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技
術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(C
MC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC
出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用でき
る。
【0047】顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範
囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲
にあることがさらに好ましく、0.1μm〜1μmの範
囲にあることが特に好ましい。顔料の粒径が0.01μ
m未満のときは製造時に空中へ飛散し易いので好ましく
なく、また、10μmを越えると分散物の感光層塗布液
の安定性が低下する点と出来上がった感光層の熱分布の
均一性が劣る点で好ましくない。
【0048】顔料を分散する方法としては、インク製造
やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用でき
る。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アト
ライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、イ
ンペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダ
イナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げら
れる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1
986年刊)に記載がある。(3)に示した各有機顔料
も可視光領域に吸収を持ち、(1)及び(2)に分類し
た顔料と同様、赤外線であっても高照度の可視光線であ
っても光・熱変換層として作用する。
【0049】(4)熱変換性色素微粒子 光・熱変換物質として組み込むことのできる染料として
は、市販の染料及び文献(例えば、「染料便覧」有機合
成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知
のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩
アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、
フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン
染料、メチン染料、シアニン染料、金属チオレート錯体
等の染料が挙げられる。
【0050】好ましい染料としては、例えば、特開昭5
8−125246号、特開昭59−84356号、特開
昭59−202829号、特開昭60−78787号等
に記載されているシアニン染料、特開昭58−1736
96号、特開昭58−181690号、特開昭58−1
94595号等に記載されているメチン染料、特開昭5
8−112793号、特開昭58−224793号、特
開昭59−48187号、特開昭59−73996号、
特開昭60−52940号、特開昭60−63744号
等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−1
12792号等に記載されているスクワリリウム色素、
英国特許434,875号記載のシアニン染料、米国特
許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好
適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号
記載の置換アリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開
昭57−142645号(米国特許第4,327,16
9号)に記載のトリメチンチアピリリウム塩、等を挙げ
ることができる。これらの染料のうち特に好ましいもの
としては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリ
ウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。これら
は、適当な溶剤に溶解させた溶液または適当な分散媒に
分散させた分散液の形に調製し、その中に光触媒性の金
属化合物層を浸漬処理して粉体を付着させる方法によ
り、担持させることができる。
【0051】III.金属化合物粉体 一酸化チタン、酸化ゲルマニウム、ゲルマニウム・砒素
化合物、インジウム・燐化合物は、赤外線に対して光・
熱変換作用が大きい。また、ITO(錫ドープした酸化
インジウム)、酸化クロミウム、硫化鉄、硫化クロム、
そのほか遷移金属元素の酸化物も光熱変換性の微粒子と
して用いることができる。
【0052】IV. その他 カーボンブラックは、銀コロイド微粒子と並ぶ優れた輻
射スペクトル依存性のない光・熱変換物質として公知で
あり、可視域から赤外線領域にわたって高い吸光度を有
しているが、疎水性であるので結着樹脂層への分散性は
良くない。本発明に用いる場合は、表面を親水性化する
処理を施すことが好ましい。
【0053】表面親水性化には、従来公知の任意の方法
を用いることができる。たとえば、カーボンブラック粒
子の表面は、水酸基導入処理あるいはシリケート処理を
施すことによって親水性化できる。具体的には、あらか
じめ乾燥したカーボンブラック粒子10gを10-2Torr
以下に減圧にした反応容器に入れて脱気したのち、水蒸
気を流して、反応容器を回転さながら、出力20Wでプ
ラズマ照射を1時間行って水酸基導入カーボンブラック
が得られる。この段階で親水性化が進んでいるが、さら
に高度に親水性化するには、得られた水酸基導入カーボ
ンブラック1.5gを水40mLに分散させ、テトラエ
トキシシラン3mLを滴下させて2乃至6時間室温にて
反応させる(反応時間が長いほど表面親水性度が増加す
る)。また、このとき塩酸又はアンモニアを触媒として
添加してもよい。反応終了後、反応物を水洗し、乾燥さ
せて表面シリケート処理したカーボンブラックが得られ
る。この過程では、テトラエトキシシランが水酸基導入
カーボンブラックの水酸基と脱アルコール結合したの
ち、残りのエトキシ基も加水分解して表面シリケート化
されると考えられている。
【0054】以上に述べた光熱変換性粒子を画像形成層
中に含ませるさいには、その含有量は光熱変換性粒子の
種類によって異なるが、通常画像形成層の固形の構成成
分の0.01〜30重量%であり、好ましくは、0.1
〜5重量%である。0.01重量%以下では発熱量が不
足し、30重量%以上では光触媒能が低下する。
【0055】本発明においては、光熱変換性物質と光触
媒性金属化合物微粒子の効果を相乗的に有効に活用する
ため、光熱変換性物質と金属化合物微粒子の合計量とし
て好ましくは感光層中の固形物成分の30〜95wt%の
範囲で含有し、より好ましくは50〜80wt%の範囲で
含有するのがよい。これによって感光層表面の極性変化
が光触媒性金属化合物微粒子表面のそれによく対応させ
ることができる。30wt%未満では感光層表面の親水化
が必ずしも十分でなく、95wt%を超えて多くなると、
膜物性の劣化が起こりやすい。
【0056】また、本発明の効果を発揮するためには、
光熱変換性粒子が照射光の分光スペクトル領域のいずれ
かの連続した100nmの領域において、0.3以上の
平均吸光度を有する物質からなることと吸収した光を蛍
光や燐光の形で放出することなく熱エネルギーに変換す
る性質を有していることが必要である。吸光度が低いと
熱の発生が不十分であり、蛍燐光の形でエネルギー放出
すると光熱変換率を損なう。また、画像形成層が、十分
の光熱変換作用をもつ必要上、光熱変換性粒子の画像形
成層中の密度は、画像形成層が上記の吸光度を有してい
ることが必要である。この光吸収能の条件を満たしてお
れば、この吸光波長域に相当する波長の像様露光を行う
ことによって感光度が増大して識別性が向上する。ま
た、画像形成層の吸光度は透過濃度と同義であり、国際
規格 ISO5-3 及び ISO5-4 に準拠して測定される。
【0057】画像形成層には、その他の成分として、上
記光熱変換性粒子と光触媒性金属化合物以外の無機顔料
粒子を含有してもよい。例えば、シリカ、アルミナ、カ
オリン、クレー、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸バリ
ウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウ
ム、アナターゼ型結晶以外の酸化チタン等が挙げられ
る。これら光熱変換性を有しない無機顔料は、光熱変換
性粒子と光触媒性金属化合物の合計量100重量部に対
して、40重量部を超えない範囲で用いる。好ましく
は、30重量部以内である。
【0058】(結着樹脂)本発明の感光層に供される結
着剤(結着樹脂とも呼ぶ)は、光触媒性金属化合物粒子
と光熱変換性物質とをともに分散させることができて、
かつ樹脂の量が光触媒性金属化合物粒子の極性の変化に
敏感に応答して同じ極性変化を取れるように十分少量で
よい結着樹脂であれば、いずれでも用いることができ
る。好ましく使用に供される樹脂としては、前記一般式
(I)で示されるシロキサン成分の結合を有する樹脂を
主成分とするものである。この樹脂は、ゾル状態で光触
媒性金属化合物粒子と光熱変換性物質とを分散して、ゲ
ル化の進行とともにこれらの粒子を強固にゲル構造の中
に内包できるという特徴があり、熱伝達効率及び感光層
表面の極性変換の敏感性において特に有利である。一般
式(I)で示されるシロキサン結合はより具体的には以
下に示す結合を含み、これらは1種以上が樹脂中に存在
する。
【0059】
【化1】
【0060】ここで、R01〜R03は、同じでも異なって
もよく、水素原子、炭化水素基又はヘテロ環基を表す。
A、B、R01、R02及びR03で示される炭化水素基及び
ヘテロ環基は下記一般式(II)中のR0で表されるもの
と同じである。
【0061】好ましくは、感光層はアナターゼ型酸化チ
タン粒子及び下記一般式(II)で示されるシラン化合物
の少なくとも1種を含有する分散液からゾル−ゲル法で
形成される。
【0062】一般式(II) (R0)nSi(Y)4-n 〔一般式(II)中、R0は水素原子、炭化水素基又はヘ
テロ環基を表す。Yは水素原子、ハロゲン原子、−OR
1、−OCOR2、又は、−N(R3)(R4)を表す
(R1、R2は、各々炭化水素基を表し、R3、R4は同じ
でも異なってもよく、水素原子又は炭化水素基を表
す)。nは0、1、2又は3を表す。〕
【0063】好ましくは、一般式(II)中のR0は、水
素原子、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状もし
くは分岐状のアルキル基{例えば、メチル基、エチル
基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、
ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシ
ル基等;これらの基に置換される基としては、ハロゲン
原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシ
基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、
エポキシ基、−OR′基(R′は炭化水素基、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル
基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、プロペニル
基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒ
ドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノ
エチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロ
モエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル
基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシ
プロピル基、ベンジル基等を示す)、−OCOR′基、
−COOR′基、−COR′基、−N(R″)(R″)
(R″は、水素原子又は前記R′と同一の内容を表し、
各々同じでも異なってもよい)、−NHCONHR′
基、−NHCOOR′基、−Si(R′)3基、−CON
HR″基、−NHCOR′基等が挙げられる。これらの
置換基はアルキル基中に複数置換されてもよい}、
【0064】炭素数2〜12の置換されてもよい直鎖状
又は分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペ
ニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オ
クテニル基、デセニル基、ドデセニル基等、これらの基
に置換される基としては、前記アルキル基に置換される
基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されても
よい)、炭素数7〜14の置換されてもよいアラルキル
基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニル
プロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基
等;これらの基に置換される基としては、前記アルキル
基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複
数置換されてもよい)、炭素数5〜10の置換されても
よい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキ
シル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペン
チルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等、これ
らの基に置換される基としては、前記アルキル基の置換
基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されても
よい)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基
(例えばフェニル基、ナフチル基で、置換基としては前
記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げ
られ、又、複数置換されてもよい)、又は、窒素原子、
酸素原子、イオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原
子を含有する縮環してもよいヘテロ環基(例えば該ヘテ
ロ環としては、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モ
ルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール
環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾ
チアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テ
トラヒドロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置
換基としては、前記アルキル基中の置換基と同一の内容
のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)を表す。
【0065】好ましくはYは、ハロゲン原子(フッ素原
子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す)、−O
1基、−OCOR2基又は−N(R3)(R4)基を表す。
−OR1基において、R1は炭素数1〜10の置換されて
もよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピ
ル基、ブトキシ基、ヘプチル基、ヘキシル基、ペンチル
基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、
ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル
基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロ
キシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(メトキ
シエチルオキシ)エチル基、2−(N,N−ジエチルア
ミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノ
エチル基、3−メチルオキシプロピル基、2−クロロエ
チル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロ
オクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロ
ヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベ
ンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙
げられる)を表す。
【0066】−OCOR2基において、R2は、R1と同
一の内容の脂肪族基又は炭素数6〜12の置換されても
よい芳香族基(芳香族基としては、前記R0中のアリー
ル基で例示したと同様のものが挙げられる)を表す。ま
た、−N(R3)(R4)基において、R3、R4は、互いに
同じでも異なってもよく、各々、水素原子又は炭素数1
〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−
OR1基のR1と同様の内容のものが挙げられる)を表
す。より好ましくは、R3とR4の炭素数の総和が16ケ
以内である。
【0067】一般式(I)で示されるシラン化合物の具
体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定
されるものではない。メチルトリクロルシラン、メチル
トリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチル
トリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラ
ン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリクロル
シラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシ
シラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプ
ロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン、n−
プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシ
ラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピル
トリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシ
シラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン、n−ヘ
キシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラ
ン、n−へキシルトリメトキシシラン、n−へキシルト
リエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシ
ラン、n−へキシルトリt−ブトキシシラン、n−デシ
ルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n
−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシ
シラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デ
シルトリt−ブトキシシラン、n−オクタデシルトリク
ロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−
オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルト
リエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキ
シシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン、
フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラ
ン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキ
シシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニ
ルトリt−ブトキシシラン、
【0068】テトラクロルシラン、テトラブロムシラ
ン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テ
トライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジ
メトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、
ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、
ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロルシラ
ン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシ
シラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチル
ジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェ
ニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキ
シシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリブロムヒド
ロシラン、トリメトキシヒドロシラン、イソプロポキシ
ヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン、ビニル
トリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルト
リメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル
トリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシ
ラン、トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフ
ルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピ
ルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエト
キシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシ
シラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラ
ン、
【0069】γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキ
シシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシ
シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−
メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ
−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、
γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ
−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラ
ン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシ
ラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ
−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノ
プロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリ
エトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキ
シシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラ
ン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、
γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−
メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプ
トプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピ
ルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピル
トリt−ブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシク
ロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4
−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラ
ン、等が挙げられる。
【0070】本発明の感光層形成に用いる一般式(II)
で示されるシラン化合物のほかに、一般式(II)におけ
るSiがTi、Zn、Sn、Zr、Al又はNiに置換
したゾル−ゲル法で成膜可能な金属化合物も結着樹脂と
して用いることができる。これらの有機金属化合物は、
一般式(II)で示されるシラン化合物と併用して混合相
として用いることもできる。SiがTi、Zn、Sn、
Zr、Al又はNiに置き代えられた有機金属化合物に
おいても置換基R0 ,Y及びnは、一般式(II)におけ
る場合と同義であって例示置換基も、一般式(II)にお
いて例示した置換基を挙げることができる。好ましく用
いられる金属化合物として、例えば、Ti(OR5)
4(R5はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プ
ロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、T
iCl3 (OR5)、TiCl2 (OR5)2、TiCl4
TiCH 3 Cl3、TiCH3 (OR5)3、Zn(OR5)
2、Zn(CH3COCHCOCH 32、Sn(O
5)4、Ni(CH3COO)4 、Zn(CH3CO
O)4 、Ti(CH3COO)4 、Sn(CH3COCHC
OCH3)4、Sn(OCOR5)4、Ti(OCOR5)4
Ni(OCOR5)4、SnCl4、Zr(OR5)4、Zr
(CH3COCHCOCH3)4、ZrCl3 (OR5)、Z
rCl2 (OR5)2、Al(OR 5)3、Zr(CH3CO
O)4等が挙げられる。
【0071】併用される金属化合物は、ゾル−ゲル法に
よって作成される膜の均一性、強度等が充分に保持され
る範囲で用いられる。本発明の感光層において、光熱変
換粒子及び光触媒性金属化合物粒子との合計量とシロキ
サン結合含有の樹脂の存在割合は、30〜95/70〜
5重量比が好ましい。より好ましくは50〜80/50
〜20重量比である。この範囲において、感光層の膜の
強度、紫外線照射後の表面の親水性等が良好に保持さ
れ、地汚れのない鮮明な画像の印刷物が多数枚印刷可能
となる。
【0072】本発明の感光層は、好ましくはゾル−ゲル
法によって作成されるが、これは従来公知のゾル−ゲル
法を用いて行なうことができる。具体的には、作花済夫
「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1
988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄
膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等
の成書等に詳細に記述の方法に従って作成できる。
【0073】感光層用の塗布液は、水溶媒で、更には塗
液調整時の沈殿抑制による均一液化のために水溶性溶媒
を併用する。水溶性溶媒としては、アルコール類(メタ
ノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレング
リコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコー
ル、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノ
メチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエー
テル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)、エ
ーテル類(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジ
メチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテ
ル、テトラヒドロピラン等)、ケトン類(アセトン、メ
チルエチルケトン、アセチルアセトン等)、エステル類
(酢酸メチル、エチレングリコールモノメチルモノアセ
テート等)、アミド類(ホルムアミド、N−メチルホル
ムアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン等)等が
挙げられ、1種あるいは2種以上を併用してもよい。
【0074】更に、一般式(II)で示されるシラン化合
物、更には併用する前記の金属化合物の加水分解及び重
縮合反応を促進するために、酸性触媒又は塩基性触媒を
併用することが好ましい。触媒は、酸あるいは塩基性化
合物をそのままか、あるいは水またはアルコールなどの
溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触
媒、塩基性触媒という)を用いる。そのときの濃度につ
いては特に限定しないが、濃度が濃い場合は加水分解、
重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の濃い塩
基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場
合があるため、塩基性触媒の濃度は1N(水溶液での濃
度換算)以下が望ましい。
【0075】酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に
限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場
合には、焼結後に触媒が結晶粒子中にほとんど残留しな
いような元素から構成される触媒がよい。具体的には、
酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、
硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭
酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、構造式RCOOHの
Rを他元素または置換基によって置換した置換カルボン
酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸など、塩基性
触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、
エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられ
る。
【0076】光熱変換性粒子と光触媒性金属化合物粒子
とが、上記のゾル状態の分散液に添加されて、混合分散
して調整されたゾル状塗布液を、支持体上に、従来公知
の塗布方法のいずれかを用いて、塗布・乾燥し、成膜す
る。形成される感光層の膜厚は0.2〜10μmが好ま
しく、より好ましくは0.5〜8μmである。この範囲
で均一な厚みの膜が作成され、且つ膜の強度が充分とな
る。塗布された感光層は時間の経過とともにゲル構造が
発達し、構成成分である光熱変換性粒子と光触媒性金属
化合物粒子は、別個の分散状態のまま内包されて本発明
用の印刷原板となる。
【0077】〔支持体〕つぎに画像記録層を塗設する支
持体について述べる。本発明において、光触媒型金属化
合物の層を支持体上に設ける場合、使用される支持体と
しては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プ
ラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、
ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例え
ば、アルミニウム、亜鉛、銅、ステンレス等)、プラス
チックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セ
ルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、
酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロ
ピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール
等)、上記のごとき金属がラミネート、もしくは蒸着さ
れた紙、もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。
【0078】好ましい支持体は、ポリエステルフィル
ム、アルミニウム、又は印刷版上で腐食しにくいSUS
板であり、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価で
あるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウ
ム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分
とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニ
ウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィ
ルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素に
は、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロ
ム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合
金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本
発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウ
ムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製
造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでも
よい。このように本発明に適用されるアルミニウム板
は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知
公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することがで
きる。本発明で用いられる支持体の厚みはおよそ0.0
5mm〜0.6mm程度、好ましくは0.1mm〜0.
4mm、特に好ましくは0.15mm〜0.3mmであ
る。
【0079】アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所
望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活
性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂
処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理
は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗
面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法
および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われ
る。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨
法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用
いることができる。また、電気化学的な粗面化法として
は塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う
方法がある。また、特開昭54−63902号に開示さ
れているように両者を組み合わせた方法も利用すること
ができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必
要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理され
た後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるため
に陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化
処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形
成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、
塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられ
る。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜
決められる。
【0080】陽極酸化の処理条件は用いる電解質により
種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質
の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流
密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間
10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜
の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であ
ったり、平板印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、
印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚
れ」が生じ易くなる。
【0081】画像記録層との密着性を確保するために
は、プラスチック支持体は塗布の前に公知の方法で帯電
処理が施される。
【0082】〔製版方法及び印刷〕次に、この平版印刷
版用原板の製版方法及び印刷について説明する。 <活性光による全面照射>本発明では、画像記録層が全
面親水性でない場合には、像様露光に先立って活性光に
よる全面照射を行って、画像記録層を均一に親水性にす
る。全面照射に使用する活性光について述べると、同時
に全面を照射するいわゆる面露光方式又はスリット状の
光の移動による全面露光方式であっても、あるいは光束
のビームを全面にわたって走査させるスキャニング露光
方式でもよい。後者の場合は、ビームの走査間隔が実質
的に印刷に支障無い程度に小さければ一様の全面照射と
みてよい。一般的に光源がレーザー光源であれば、ビー
ムスキャニング露光方式が好都合であり、電球や放電管
のようなインコヒーレントな発散型光源であれば面露光
方式が好都合である。光触媒型金属化合物を主成分とす
る薄層を励起させる活性光は、400nm以下に感光域
を有するので、水銀灯、タングステンハロゲンランプ、
その他のメタルハライドランプ、キセノン灯、その他紫
外線光を発する放電管などを用いることが出来る。ま
た、励起光としては、発振波長を325nmに有するヘ
リウムカドミウムレーザーや発振波長を351.1〜3
63.8nmに有する水冷アルゴンレーザーも用いるこ
とができる。さらに近紫外レーザー発振が確認されてい
る窒化ガリウムレーザー系では、発振波長を360〜4
40nmに有するInGaN系量子井戸半導体レーザー、及
び360〜430nmに発振波長を有する導波路 MgO-L
iNbO3 反転ドメイン波長変換デバイス型のレーザーも適
用できる。
【0083】照射光量に応じて、表面層の光触媒型金属
化合物を光吸収励起によって親水性に変化して行き、表
面層を構成する光触媒型金属化合物がすべて活性化する
とそれ以上の光照射によってさらに親水性の程度が変化
することはない。好ましい照射光の強さは、光触媒型金
属化合物の画像形成層の性質によって異なり、また活性
光の波長や分光分布によっても異なるが、通常は印刷用
画像で変調する前の面露光強度が0.05〜100jo
ule/cm2 ,好ましくは0.05〜10joule
/cm2 ,より好ましくは0.05〜5joule/c
2 である。また、光照射には相反則がほぼ成立してお
り、例えば10mW/cm2で100秒の露光を行って
も、1W/cm2で1秒の露光を行っても、同じ効果が
得られるので活性光を発光する限り光源の選択には制約
はない。この照射光量は、レーザーによるスキャニング
方式あるいはな発散型光源を用いる面露光方式でもとく
に支障がないレベルの光量である。活性光による照射を
受けた表面は、水との接触角が20度以下で、好ましく
は10度以下であり、拡張濡れの場合もある。
【0084】上記の疎水性から親水性への光による変化
をもたらす感光性は、性質及び機構共に従来開示されて
いるジルコニアセラミック(特開平9−169098)
の感光性とは異なるものである。たとえば、感度につい
ては、ジルコニアセラミックに対しては7W/μm2
レーザー光と記されており、レーザー光のパルス持続時
間を100ナノ秒として70joule /cm2 であって光
触媒型金属化合物層の感度より約1桁低い。機構的に
も、十分解明されてはいないが、親油性有機付着物の光
剥離反応と考えられており、ジルコニアの光変化機構と
は異なっている。
【0085】<像様光照射及び印刷>全面が均一に親水
化された印刷版面に疎水性の像様部分を形成するには、
印刷版面を像様に、赤外線レーザーなどの熱線を画像マ
スクを通して照射(露光)することによって行われる。
像様光照射を行なうことによって、光熱変換性物質であ
る金属微粒子が加熱され、その結果金属化合物層の極性
が親水性から疎水性へと変換され、画像記録層に像様疎
水性領域(インキ受容領域)が形成される。なお、像様
光照射は、該照射によって上記金属微粒子が溶融するほ
どに加熱されないような露光量である。
【0086】画像の書き込みは、面露光方式、走査方式
のいずれでもよい。前者の場合は、赤外線照射方式や、
キセノン放電灯の高照度の短時間光を原板上に照射して
光・熱変換によって熱を発生させる方式である。赤外線
灯などの面露光光源を使用する場合には、その照度によ
っても好ましい露光量は変化するが、通常は、印刷用画
像で変調する前の面露光強度が0.1〜10J/cm2
の範囲であることが好ましく、0.1〜1J/cm2
範囲であることがより好ましい。支持体が透明である場
合は、支持体の裏側から支持体を通して露光することも
できる。その露光時間は、0.01〜1msec、好ま
しくは0.01〜0.1msecの照射で上記の露光強
度が得られるように露光照度を選択するのが好ましい。
照射時間が長い場合には、熱エネルギーの生成速度と生
成した熱エネルギーの拡散速度の競争関係から露光強度
を増加させる必要が生じる。
【0087】後者の場合には、赤外線成分を多く含むレ
ーザー光源を使用して、レーザービームを画像で変調し
て原板上を走査する方式が行われる。レーザー光源の例
として、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘ
リウムカドミウムレーザー、YAGレーザーを挙げるこ
とができる。レーザー出力が0.1〜300Wのレーザ
ーで照射をすることができる。また、パルスレーザーを
用いる場合には、ピーク出力が1000W、好ましくは
2000Wのレーザーを照射するのが好ましい。この場
合の露光量は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が
0.1〜10J/cm2の範囲であり、0.05〜5jou
le /cm2 が好ましく、0.3〜1J/cm2の範囲で
あることがより好ましい。支持体が透明である場合は、
支持体の裏側から支持体を通して露光することもでき
る。ヒートモードの像様光による照射を受けた表面は、
疎水性へと極性が変化し、水との接触角が50度以上
で、多くは60度以上であり、90度以上の場合もあ
る。
【0088】平版印刷版を製版する際、画像露光した
後、必要であれば非画像部を保護するために版面保護剤
(いわゆる、ガム液)を含んだ整面液を塗布する「ガム
引き」といわれる工程が行なわれる。ガム引きは、平版
印刷版の親水性表面が空気中の微量混入成分の影響を受
けて親水性が低下するのを防ぐため、非画像部の親水性
を高めるため、製版後印刷するまでの期間又は印刷を中
断してから再び開始するまでの間に平版印刷版が劣化す
るのを防止するため、印刷機に取りつける場合などのよ
うに平版印刷版を取り扱う時に指の油、インキなどが付
着して非画像がインキ受容性となって、汚れるのを防止
するため、更に、平版印刷版を取り扱う時に非画像部及
び画像部に傷が発生することを防止するため、などの種
々の目的をもって行われる。
【0089】この目的に使用される皮膜形成性を有する
水溶性樹脂の好ましい具体例としては、例えばアラビア
ガム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロ
ーズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ
等)及びその変性体、ポリビニルアルコール及びその誘
導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及び
その共重合体、アクリル酸共重合体、ビニルメチルエー
テル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレ
イン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、
焙焼デキストリン、酸素分解デキストリン、酵素分解エ
ーテル化デキストリン等が挙げられる。
【0090】整面液中の保護剤中の上記水溶性樹脂の含
有量は、3〜25重量%が適当であり、好ましい範囲は
10〜25重量%である。なお、本発明においては上記
水溶性樹脂を2種以上混合使用しても良い。
【0091】平版印刷版用版面保護剤には、そのほかに
種々の界面活性剤を添加してもよい。使用できる界面活
性剤としてはアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性
剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては脂肪族ア
ルコール硫酸エステル塩類、脂酒石酸、リンゴ酸、乳
酸、レプリン酸、有機スルホン酸などがあり、鉱酸とし
ては硝酸、硫酸、燐酸等が有用である。鉱酸、有機酸又
は無機塩等の少なくとも1種もしくは2種以上併用して
もよい。
【0092】上記成分の他必要により湿潤剤としてグリ
セリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール
等の低級多価アルコールも使用することができる。これ
ら湿潤剤の使用量は保護剤中に0.1〜5.0重量%が
適当であり、好ましい範囲は0.5〜3.0重量%であ
る。以上の他に本発明の平版印刷版用版面保護剤には、
防腐剤などを添加することができる。例えば安息香酸及
びその誘導体、フェノール、ホルマリン、デヒドロ酢酸
ナトリウム等を0.005〜2.0重量%の範囲で添加
できる。
【0093】版面保護剤には消泡剤を添加することもで
きる。好ましい消泡剤には有機シリコーン化合物が含ま
れ、その添加量は0.0001〜0.1重量%の範囲が
好ましい。
【0094】版面保護剤には画像部の感脂性低下を防ぐ
ため有機溶剤を含有させることができる。好ましい有機
溶剤には水難溶性のものであり、沸点が約120℃〜約
250℃の石油留分、例えばジブチルフタレート、ジオ
クチルアジペートなどの凝固点が15℃以下で沸点が3
00℃以上の可塑剤が挙げられる。このような有機溶剤
は0.05〜5重量%の範囲で添加される。
【0095】版面保護剤は均一溶液型、サスペンジョン
型、エマルジョン型のいずれの形態をもとることができ
るが、特に上記のような有機溶剤を含むエマルジョン型
において、すぐれた性能を発揮する。この場合、特開昭
55−105581号公報に記載されているように界面
活性剤を組合せて含有させることが好ましい。
【0096】画像露光され、露光後に水現像され、更に
必要であればガム引きを行った印刷原板は、印刷機に版
を装着し印刷を行うこともできる。また、露光後ただち
に(現像工程を経ずに)印刷機に版を装着し印刷を行う
こともできる。あるいは、印刷機に印刷原板を装着して
おいて、レーザーによる画像状の走査露光を行って機上
で平版印刷版を形成させることもできる。即ち、本発明
の平版印刷版用原板を使用する製版方法では、特に現像
処理を経ることなく平版印刷版を製版し得る
【0097】〔印刷原板の再生〕次に印刷を終えた印刷
版の再生について記す。印刷終了後の印刷版は、疎水性
の石油系溶剤を用いて付着しているインクを洗い落と
す。溶剤としては市販の印刷用インキ溶解液として芳香
族炭化水素、例えばケロシン、アイソパ−などがあり、
それらを用いることができるほか、ベンゾール、トルオ
ール、キシロール、アセトン、メチルエチルケトン及び
それらの混合溶剤を用いてもよい。
【0098】インクを洗浄除去した印刷版は、高温に曝
さないかぎり任意の場所に保管して次の印刷に備える。
この使用済み印刷版は、前記した活性光による全面露光
によって表面が親水性となって再びヒートモードの像様
露光を繰り返して再度印刷に使用することができる。活
性光による全面照射によって再び表面を親水性としたと
きの表面の水に対する接触角は、はじめの活性光による
全面照射の時と同じレベルに戻っており、通常20度以
下で、多くの場合10度以下であり、拡張濡れの場合も
ある。
【0099】別の親水性化の方法としては、光触媒性金
属化合物は疎水性となる温度よりもさらに高温に加熱さ
れると高温親水性を発現する性質を利用して、インクを
洗浄除去した印刷版を高温親水性発現温度に加熱する方
法を用いてもよい。高温親水性発現温度は、金属化合物
の種類と履歴によって異なるが、通常170°C以上、
多くは200°C以上で高温親水性となる。親水性とな
るのに要する時間は2〜30分程度で、加熱温度が高い
ほど短時間で親水性となる。水に対する接触角の変化も
光照射による場合と本質的な相違はない。
【0100】本発明に係わる印刷原版の反復再生可能回
数は、完全に把握できていないが、少なくとも15回以
上であり、おそらく版面の除去不能な汚れ、印刷面の傷
や、版材の機械的な変形(ひずみ)などによって制約さ
れるものと思われる。
【0101】
【実施例】以下に実施例を示して、本発明を詳細に説明
するが、本発明の内容がこれらに限定されるものではな
い。
【0102】実施例1 <アルミニウム支持体の作成>厚さ0.24mmのJI
S−A−1050に従うアルミニウム板の表面を、ナイ
ロンブラシとパミストン(400メッシュ)の水懸濁液
とで砂目立てした後、水でよく洗浄した。次に、10%
の水酸化ナトリウム水溶液に70℃で60秒間浸漬して
エッチングした後、流水で水洗いした。20%の硝酸水
溶液で中和、洗浄してから、水洗いした。得られたアル
ミニウム板を、矩形波の交番波形電流(条作:陽極時電
圧12.7V、陽極時電気量に対する陰極時電気量の比
が0.9、陽極時電気量160クローン/dm2)を用
いて、0.5%の硝酸アルミニウムを含む1%硝酸水溶
液中で電解粗面化処理を行った。得られた板の表面粗さ
は、0.6μm(Ra表示)であった。この処理に続い
て、1%の水酸化ナトリウム水溶液に40℃で30秒間
浸漬した後、30%の硫酸水溶液中、55℃で1分間処
理した。次に、厚さが2.5g/dm2になるように、
20%の硫酸水溶液中で直流電流を用いて電流密度2A
/dm2の条件下、陽極酸化処理をした。これを水洗、
乾燥して支持体を作成した。
【0103】 <平版印刷用原板の作成> ・光触媒酸化チタンゾル(30%溶液) 酸化チタンスラリーSTS−01(石原産業(株)製) 127g ・銀コロイド分散物(光熱変換性金属粒子) 12.7g ・テトラメトキシシラン(信越化学(株)製) 50g ・濃塩酸(和光純薬(株)製) 0.5g ・メタノール 883g
【0104】なお、銀コロイド分散物は、平均粒子径
0.2μmで、いわゆる Carey Leaの銀ゾルであり、La
usanne M,II, Franz G, B., Collin G. B., J.Colloid
Interface Science, vol. 93, 545 (1983)に記載の方法
にて調製したのち、分散液を減圧濃縮して20重量%銀
コロイド分散物とした。
【0105】上記の陽極酸化アルミニウム支持体上に上
記組成物をワイヤーバーを用いて塗布し、110℃で2
0分間乾燥して、塗布量1g/m2の感光層を形成し平版印
刷用原版とした。平版印刷用原版の表面に、蒸留水2μ
lを乗せ、30秒後の表面接触角(度)を、表面接触計
〔CA−D(商品名)協和界面化学(株)製〕を用いて
測定した所、55度であった。この平版印刷用原版を低
圧水銀灯を用いて紫外線成分の多い光を1Kluxで30秒
間全面照射して印刷原板の表面を全面親水性とした。ふ
たたび平版印刷用原版の表面に、蒸留水2μlを乗せ、
30秒後の表面接触角(度)を、表面接触計(上記製
品)を用いて測定した所、7度となり、きわめて親水性
の表面に変換していた。
【0106】<像様露光>レーザービームの走査型露光
装置として、PEARLsetter74(Press
tek社製)を用いて像様露光を行った。光照射後、再
び表面接触角をしく呈したところ、この印刷原板のレー
ザー照射領域表面の水滴接触角は85度を示し、疎水性
の高い表面に変化した。
【0107】<印刷>印刷機としてRYOBI−320
0MCDを用い、湿し水にEU−3(富士写真フイルム
(株)製)の1vol%水溶液を用い、インキはGEO
S(N)墨を用いた。印刷開始の10枚目で網点部およ
びベタ部の着肉は均一で、非画像部の地汚れもなく良好
な印刷物を得た。さらに、4,000枚まで印刷汚れが
なく、高品質な印刷物が得られた。
【0108】〔実施例2〜9及び比較例1、2〕実施例
1の感光層用塗布液の光熱変換性粒子を銀コロイド分散
物から、下記の8種類の分散物に変更した以外は、実施
例1と同じ方法で印刷原板を作成した。なお、下記の分
散物は、いずれも粒子濃度が20重量%になるように処
方の水を調節するか、または水分蒸発濃縮を行った。
【0109】<光熱変換性粒子> (1)Pdコロイド分散物(平均粒子径0.15μm) Pdコロイド分散物はポリビニルアルコールを分散剤と
し、塩化パラジウムをメタノール還元によって還元して
調製したのち、分散液を減圧濃縮して20重量%Pdコ
ロイド分散物とした。 (2)Auコロイド分散物(平均粒子径0.15μm) Auコロイド分散物はポリビニルピロリドンを分散剤と
して塩化金酸を塩基性メタノール還元法によって還元し
て調製したものを用いた。 (3)表面親水性四三酸化鉄(Fe3O4)粒子(平均粒子径
0.1μm) 四三酸化鉄(Fe3O4)粒子(平均粒子径0.15μm)を
本明細書中に前記したシリケート処理(3%液、70
℃、30秒)を施して表面親水性とした粒子分散物を用
いた。 (4)チタンブラック(TiOx(x=1.0 〜1.1)粒子(平均
粒子径0.1μm) 市販のチタンブラック(平均粒子径4μm)を用いた。 (5)表面親水性酸化マンガン(Mn3O4)粒子(平均粒子
径0.1μm) 酸化マンガン(Mn3O4)粒子(平均粒子径0.05μm)
を本明細書中に前記したシリケート処理(3%液、70
℃、30秒)を施して表面親水性とした粒子分散物を用
いた。 (6)カーボンブラック微粒子(平均粒子径0.03μ
m) 前記した減圧脱気プラズマ照射法によって表面に水分散
可能な水酸基を導入したカーボンブラック分散液(濃度
20重量%)。 (7)フタロシアニンB(平均粒子径0.23μm) 市販のフタロシアニンB顔料をそのまま使用した。 (8)赤外線吸収顔料 下記のIR色素の固体微粒子分散液(平均粒子径0.2
μm、20重量%水分散液、分散助剤としてドデシルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム0.1重量%使用、ペイン
トシェーカーで分散)を使用した。
【0110】
【化2】
【0111】比較例1として、実施例2の光熱変換粒子
(Pd)を同量のアルミナゾル分散物(平均粒子径0.
03μm)に変更したもの、及び比較例2として、実施
例2の光触媒性金属化合物粒子(酸化チタン)を同量の
酸化カドミウム分散物(平均粒子径0.65μm)に変
更したものを用いた。比較例1、2は上記以外は実施例
2と同じ方法で調製した。
【0112】この平版印刷用原版を低圧水銀灯を用いて
紫外線成分の多い光を1Kluxで30秒間全面照射して印
刷原板の表面を全面親水性とした。各原板試料の表面
に、蒸留水2μlを乗せ、30秒後の表面接触角(度)
を、表面接触計(上記製品)を用いて測定した所、比較
例1は、15度、比較例2は55度であったが、実施例
の各試料は、いずれも7〜10度であり、十分に親水性
の表面であった。
【0113】<像様露光>レーザービームの走査型露光
装置として、PEARLsetter74(Press
tek社製)を用いて像様露光を行った。光照射後、再
び表面接触角を測定し、その結果を表1に示した。
【0114】<印刷>印刷機としてRYOBI−320
0MCDを用い、湿し水にEU−3(富士写真フイルム
(株)製)の1vol%水溶液を用い、インキはGEO
S(N)墨を用いた。印刷開始から2000枚印刷した
ときの印刷面の視覚評価によって印刷汚れを良好
(○)、許容レベル(△)、不良(×)と評価した。地
汚れはなくても画像部にインキ着肉しない場合も不良
(×)と評価した。また、印刷汚れが認められるまでの
印刷枚数を耐刷数とし、それらの結果を表1に示した。
【0115】
【表1】
【0116】表1に示すように、本発明の実施例2〜9
はいずれも親水性・疎水性の像様分布の識別性がすぐ
れ、印刷品質(地汚れの少なさ)。耐刷数ともに優れて
いるのに対して、比較例1、2ともに識別性が劣り、そ
れが印刷品質(着肉性)と耐刷数を著しく低下させてい
る。
【0117】〔実施例10〜14〕実施例1〜5におい
てそれぞれ使用した印刷版を次のように再生した。すな
わち、使用済み印刷版の表面を印刷用インキ洗浄液ダイ
クリーンR(発売元:大日本インキ工業社)とトルエン
を1:1に混合した溶剤を、ウェスにしみ込ませて丁寧
に洗浄してインキを除去した。これを120℃のオーブ
ン中に1時間加熱した後、放置して室温まで自然冷却し
た。
【0118】この再生印刷原板を用いて、実施例1と同
じように活性光による全面照射とレーザー光による画像
露光(像様照射)、それに続くオフセット印刷を3回繰
り返して行った。繰り返しで得られた印刷物も1回目と
同様にレーザー露光部にはインキがのり、非露光部には
汚れのない品質(実質的に表1記載の1回目の結果と同
じ)であり、印刷版の損傷も認められなかった。
【0119】〔実施例15〜19〕実施例1の感光層用
塗布液の光触媒性粒子を酸化チタン粒子から、下記の8
種類の光触媒性粒子分散物に変更した以外は、実施例1
と同じ方法で印刷原板を作成した。なお、下記の分散物
は、いずれも粒子濃度が30重量%になるように処方の
水を調節するか、または水分蒸発濃縮を行った。
【0120】<光触媒性金属化合物粒子> (1)酸化錫粒子分散物(平均粒子径6.2μm) 市販の酸化錫粒子(和光純薬(株)試薬級)をディゾル
バーにて粉砕したものを、0.05%ドデシルベンゼン
スルホン酸ナトリウム水溶液に30重量%分散液とした
もの。 (2)酸化亜鉛粒子分散物(平均粒子径5.0μm) 市販の酸化亜鉛粒子(和光純薬(株)試薬級)をディゾ
ルバーにて粉砕したものを、0.05%ドデシルベンゼ
ンスルホン酸ナトリウム水溶液に30重量%分散液とし
たもの。 (3)硫化カドミウム分散物(平均粒子径5.0μm) 市販のカドミウムイエローを、10%ドデシルベンゼン
スルホン酸ナトリウム水溶液に混練して30重量%分散
液としたもの。 (4)酸化ジルコニウム粒子分散物(平均粒子径5.0
μm) 市販の酸化ジルコニウム粒子(和光純薬(株)試薬級)
をディゾルバーにて粉砕したものを、0.05%ドデシ
ルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液に30重量%分
散液としたもの。 (5)硫化モリブデン粒子分散物(平均粒子径5.0μ
m) 市販の硫化モリブデン粒子(和光純薬(株)試薬級)を
ディゾルバーにて粉砕したものを、0.05%ドデシル
ベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液に30重量%分散
液としたもの。
【0121】この平版印刷用原版を低圧水銀灯を用いて
紫外線成分の多い光を1Kluxで5分間全面照射して印刷
原板の表面を全面親水性とした。各原板試料の表面に、
蒸留水2μlを乗せ、30秒後の表面接触角(度)を、
表面接触計(上記製品)を用いて測定した所、いずれも
7〜10度であり、十分に親水性の表面であった。
【0122】<像様露光>レーザービームの走査型露光
装置として、PEARLsetter74(Press
tek社製)を用いて像様露光を行った。光照射後、再
び表面接触角を測定し、その結果を表1に示した。
【0123】<印刷>印刷機としてRYOBI−320
0MCDを用い、湿し水にEU−3(富士写真フイルム
(株)製)の1vol%水溶液を用い、インキはGEO
S(N)墨を用いた。印刷結果の評価は、実施例2〜9
で行った評価と同じ方法で印刷面の視覚評価と耐刷性を
評価し、それらの結果を表2に示した。
【0124】
【表2】
【0125】表2に示すように、本発明の実施例15〜
19はいずれも親水性・疎水性の像様分布の識別性がす
ぐれ、印刷品質(地汚れの少なさ)。耐刷数ともに優れ
ていた。
【0126】〔実施例20〕実施例1と同様な方法で、
結着剤となる樹脂の原料成分のみを以下の処方に示すも
のに変更し、平版印刷用原版を作成した。 <感光層用塗布液> ・光触媒酸化チタンゾル(30%溶液) 酸化チタンスラリーSTS−01(石原産業(株)製) 127g ・銀コロイド分散物(光熱変換性金属粒子) 12.7g ・テトラエトキシシラン(信越化学(株)製) 25g ・テトラ−n−ブトキシチタン(石原産業(株)製) 25g ・濃塩酸(和光純薬(株)製) 0.5g ・メタノール 883g
【0127】実施例1同様に、画像形成し、オフセット
印刷をおこなった。得られた印刷物は、実施例1の印刷
物と同様に、非画像部の地汚れのない鮮明な画質のもの
であり、耐刷性5000枚以上と良好なものであった。
【0128】実施例21 実施例1における感光層用塗布液のテトラメトキシシラ
ンを同重量のメチルトリメトキシチタンに変更したほか
は、実施例1と同じ方法で印刷原板の作製、露光、印刷
試験を行った。実施例1同様に、画像形成し、オフセッ
ト印刷をおこなった。得られた印刷物は、実施例1の印
刷物と同様に、非画像部の地汚れのない鮮明な画質のも
のであり、耐刷性5000枚以上と良好なものであっ
た。
【0129】実施例22 実施例1における感光層用塗布液のテトラメトキシシラ
ンを同重量の3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラ
ンに変更したほかは、実施例1と同じ方法で印刷原板の
作製、露光、印刷試験を行った。実施例1同様に、画像
形成し、オフセット印刷をおこなった。得られた印刷物
は、実施例1の印刷物と同様に、非画像部の地汚れのな
い鮮明な画質のものであり、耐刷性5000枚以上と良
好なものであった。
【0130】
【発明の効果】本発明の平版印刷用原板は、光触媒性金
属化合物粒子と、光熱変換性粒子と、該光触媒性粒子の
極性変化に応答しうる量の結着樹脂とを含有する感光層
を有することにより、ヒートモードの像様照射によっ
て、地汚れがなく鮮明な画質の印刷物を多数枚印刷可能
となる平版印刷版とすることができる。また、この平版
印刷版は、印刷に使用したのち、印刷インキを除去した
のち、活性光を一様照射するか、又は含有される光触媒
性金属化合物粒子の高温親水性発現温度よりも高温に加
熱することによって表面が親水性にもどるので、印刷用
原板として反復使用することができる。また本発明は、
結着樹脂として前記一般式(I)で示されるシロキサン
結合を有するゾル−ゲル変換型の結着樹脂を用いること
により、印刷面の地汚れ耐性と耐刷性がさらに向上する
上に、感光層としての膜の強度と分散される粒子の均一
分散性にも優れるという利点がある。光触媒性金属化合
物粒子と、光熱変換性粒子は、表面をシリケート処理し
て親水性化することによって分散性を向上させて、上記
の印刷特性の向上をもたらさせることもできる。
フロントページの続き Fターム(参考) 2H084 AA14 AA32 AE05 BB04 CC05 2H096 AA06 BA01 BA20 EA04 EA23 JA10 LA30 2H114 AA04 AA22 AA24 BA01 DA04 DA08 DA09 DA25 DA38 DA79 EA02 EA04 FA16 GA03 GA05 GA09

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光熱変換性粒子と光触媒性を有する金属
    化合物粒子とが結着剤に分散された感光層を支持体上に
    有することを特徴とする印刷用原板。
  2. 【請求項2】 感光層がゾルゲル変換性の結着剤からな
    り、光熱変換性粒子と光触媒性を有する金属化合物粒子
    とをゾル状態の結着剤に添加したのち、該結着剤を支持
    体上に塗布した感光層であることを特徴とする請求項1
    に記載の平版印刷用ネガ型印刷原板。
  3. 【請求項3】 光熱変換性粒子と光触媒性を有する金属
    化合物粒子の少なくとも一方がシリケート処理されてい
    ることを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷用
    ネガ型印刷原板。
  4. 【請求項4】 光熱変換性粒子と光触媒性を有する金属
    化合物粒子の少なくとも一方が結着剤のゾルゲル変換構
    造の構成成分であることを特徴とする請求項1〜3のい
    ずれか1項に記載の平版印刷用ネガ型印刷原板。
  5. 【請求項5】 光熱変換性粒子と光触媒性を有する金属
    化合物粒子とが結着剤に分散された感光層を支持体上に
    有する印刷用原板に、ヒートモードの像様光照射を行っ
    て、該金属化合物層の極性を変換させて像様疎水性領域
    を形成させることを特徴とする平版印刷用ネガ型刷版の
    作製方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の印
    刷用原板から作製された印刷版を使用した後、使用済み
    の該刷版上のインキを除去し、活性光の全面照射又は加
    熱によって感光層の表面を親水性とし、印刷用原板とし
    て再使用することを特徴とする請求項5に記載の平版印
    刷用ネガ型印刷版の作製方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005156739A (ja) * 2003-11-21 2005-06-16 Dainippon Printing Co Ltd パターン形成体用塗工液
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