JP3841426B2 - 平版印刷版用原板 - Google Patents

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Description

本発明は親水性表面を有する支持体上に、疎水性(以下、親油性ともいう)の層(画像形成層)を有するネガ型の平版印刷用原板に関する。より詳しくは、ディジタル信号に基づいた走査露光による製版が可能であり、且つ水現像可能な、または現像することなしにそのまま印刷機に装着し印刷することが可能な平版印刷版用原板及びその平版印刷版用原板を用いた平版印刷版の製造方法に関する。
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。このような平版印刷版用原板としては、従来、親水性支持体上に、親油性の感光性樹脂層を設けたPS版が広く用いられる。その製版方法として、通常は、リスフイルムの画像を通して露光を行った後、非画像部を現像液によって溶解除去する方法であり、この方法により所望の印刷版を得ていた。
近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、ディジタル化技術が広く普及してきており、このような、ディジタル化技術に対応した、新しい画像出力方式が種々実用されるようになっきている。これに伴い、レーザ光のような指向性の高い輻射線にディジタル化された画像情報を担持してこの光で原板を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接印刷版を製造するコンピュータ トゥ プレート技術が注目されている。それに伴ってこの目的に適応した印刷版用原板を得ることが重要な技術課題となっている。
他方、従来のPS版に於ける製版行程は、露光の後、非画像部を溶解除去する操作が必要であり、このような付加的な湿式の処理を不要化又は簡易化することが、従来技術に対して改善が望まれてきたもう一つの課題である。特に近年は、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっている。処理の簡素化、乾式化、無処理化は、このような環境面と、先述のディジタル化に伴った工程の合理化の両方の観点から、従来にも増して、強く望まれるようになっている。
このような観点から、従来の処理工程を必要としない方法の一つとして次のような方法が提案されている。即ち、印刷版用原板の非画像部の除去を通常の印刷過程の中で行えるような感光層を用い、現像工程を行うことなく、露光後、印刷機上で現像し最終的な印刷版を得る方式である。このような方法による平版印刷版の製版方式は機上現像方式と呼ばれる。具体的方法としては、例えば、湿し水やインク溶剤に可溶な感光層の使用、印刷機中の圧胴やブランケット胴との接触による力学的除去を行う方法等が挙げられる。しかしながら、機上現像方式の大きな問題は、印刷用原板は露光後も、感光層が定着されないため、例えば、印刷機に装着するまでの間、原板を完全に遮光状態又は恒温条件で保存する、といった手間のかかる方法をとる必要があった。
一方、走査露光による印刷版の製造法として、最近、半導体レーザ、YAGレーザ等の固体レーザで高出力のものが安価に入手できるようになってきたことから、特に、これらのレーザを用いる方法が有望視されるようになっている。従来の、低〜中パワー密度の露光を利用する感光材料は、画像記録が光化学反応によってなされていたが、これらの高出力レーザを用いた高パワー密度の露光を用いる場合には、露光領域に瞬間的な露光時間の間に大量の光エネルギーが集中するため、光エネルギーが効率的に熱エネルギーに変換され、熱が引き起こす様々な現象を画像記録に利用できる。具体的には、化学変化の他、相変化、形態変化等の構造変化を利用できる。通常、このような高パワー密度露光による発熱を利用した記録方式はヒートモード記録と呼ばれる。つまり、高パワー密度露光を用いると、感光材料に吸収された光エネルギーは、熱に変換され、生じた熱によって、所望の現象が引き起こされて画像が記録される。
このようなヒートモード記録方式の大きな長所は、露光によって記録された画像の定着が必須ではないことにある。つまり、ヒートモード感材の画像記録に利用される現象は、普通の強度の光に対する暴露や、普通の環境温度下では実質的に起こらないため、露光後の画像の定着は必須ではない。従って、例えば、ヒートモード露光により不溶化若しくは可溶化する感光層を用い、露光した感光層を像様に除去して印刷版とする製版工程を機上現像方式で行えば、現像(非画像部の除去)は、画像露光後、たとえ任意の時間、環境光に暴露されても、画像が影響を受けない印刷システムが可能である。
従ってヒートモード記録を利用すれば、機上現像方式に望ましい平版印刷版用原板を得ることも可能となると期待される。
ヒートモード記録に基づく平版印刷版の好ましい製造法の一つとして、親水性の支持体上に疎水性の画像形成層を設け、画像状にヒートモード露光し、疎水性層の溶解性・分散性を変化させ、必要に応じ、湿式現像により非画像部を除去する方法が提案されている。
このような原板の例として、例えば、特許文献1には、親水性支持体上に、熱により溶解性が向上しいわゆるポジ作用を示す記録層、具体的には糖類やメラミンホルムアルデヒド樹脂等の特定の組成を有する記録層を設けた原板をヒートモード記録することによって、印刷版を得る方法が開示されている。
しかしながら、開示された記録層はいずれも感熱性が十分でないため、ヒートモード走査露光に対しては、感度がはなはだ不十分であった。また、露光前後の疎水性/親水性のディスクリミネーション、即ち、溶解性の変化が小さいことも、実用上問題であった。ディスクリミネーションが乏しければ、機上現像方式の製版を行うことは実質的に困難である。
また、従来のヒートモードポジ方式原板には別の大きな問題として非画像部における残膜と呼ばれる現象がある。即ち、記録層中の支持体近傍での露光による溶解性変化が、記録層表面近傍に比較して小さいために支持体近傍の膜物質が溶解し去らないで残るという欠陥が起こりがちで、その点の改良が必要であった。一般にヒートモードポジ型原板においては、ヒートモード露光時の熱の発生は記録層中の光吸収剤の光吸収に基くものであるため、熱の発生量は記録層表面で大きく、支持体近傍では小さいことが多い。このため、支持体近傍での記録層の親水化の程度が比較的低くなってしまうものである。結果として、しばしば、本来、親水性表面を提供すべき露光部において、疎水性の膜が除去されきれずに残膜となることがあった。このような、非画像部の残膜は、印刷物に印刷汚れを引き起こす。特に、印刷適性上好ましい、アルミニウムのような熱伝導性の高い金属支持体を用いた場合、熱拡散によって、一層、支持体近傍での温度上昇が妨げられるため、残膜の問題は顕著である。支持体付近でも十分な親水性を得るためには、極端に大きな露光エネルギーを与えるか、若しくは露光後の加熱といった後処理を実施する必要があった。
特公昭46ー27919号公報
本発明の目的は、短時間での走査露光ののちに現像処理を行うことなく直接に印刷機に装着して製版することが可能であり、画像層の支持体近傍での熱エネルギー不足による残膜が生じない、したがって印刷面上の印刷汚れの少ないヒートモード型の平版印刷版用原板を提供することにある。
本発明者は、シロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂に吸光性物質を介在させるとこの樹脂の親水性から疎水性への変化に対する光感度が増加すること、さらに隣接層中に熱によって物性が変化する物質があれば、その物性変化の光感度も増加することを見いだし、これらの発見に基づいてヒートモード型の前記の弱点の解決を図ることに鋭意努めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.シロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂と、マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種とを含有する親水性の皮膜を基板上に設けたことを特徴とする平版印刷版用原板。
2.シロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂と、マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種とを含有し、かつ300〜1200nmの分光波長領域中に吸光度が0.3以上の分光吸収域を有する親水性の皮膜を基板上に設けたことを特徴とする上記1に記載の平版印刷版用原板。
3.露光によって原板の表面の被照射部が親水性から親油性に変換することを特徴とする上記1又は2に記載の平版印刷版用原板。
4.シロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂が、一般式(II)で現されるシラン化合物の少なくとも1種を含有する分散液からゾルゲル変換によって形成され、かつ構成単位中に含まれる置換基として少なくとも一つの水酸基を含む樹脂であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の平版印刷版用原板。
一般式(II)
(R Si(Y) 4−n
一般式(II)中、R の少なくとも一つは水酸基を表し、その他は、炭化水素基又はヘテロ環基を表わす。Yは水素原子、ハロゲン原子、−OR 、−OCOR 、又は、−N(R )(R )を表す(R 、R は、各々炭化水素基を表し、R 、R は同じでも異なってもよく、水素原子又は炭化水素基を表す)。nは1、2又は3を表わす。
5.原板に露光を施して得られた印刷版の未露光部が親水性であり、露光部が疎水性であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の平版印刷版用原板。
.上記1〜5のいずれかに記載の平版印刷版用原板に露光時間が10−4秒以下の短時間の像様露光を行って印刷用の画像を形成することを特徴とする平版印刷方法。
.700〜1200nmの分光波長域に極大分光エネルギーを有する輻射線によって像様露光を行うことを特徴とする上記に記載の平版印刷方法。
8.上記1〜5のいずれかに記載の平版印刷版用原板から得られた印刷版を湿し水とインクを用いて印刷することを特徴とする平版印刷方法。
本発明のシロキサン結合及びシラノール結合を有する化合物とマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する親水性の皮膜を有する印刷原板は、ヒートモードの画像書き込み後、湿式現像処理を必要としない平版印刷版用原版であって、親水性と疎水性との間の物性変換に対する光感度が高く、したがって露光部と未露光部との識別効果も優れており、汚れのない印刷物を与えることができる。また、本発明によれば、特に赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザー等を用いて記録することにより、ディジタルデータから直接製版可能な平版印刷版用原版を提供することができる。

本発明の形態は、皮膜そのものが画像形成層でもある形態である。この形態では、画像形成層はシロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂を含有した親水性の皮膜である。この層は、直接の熱の作用又は光・熱変換性の光の照射による熱の作用によって2つのシラノール結合の間の縮合反応が起こって親水性基を失い、その結果親水性から疎水性に変化する。この感熱(又は感光)反応の感度は、元来は印刷原板用としては不十分であって満足な印刷品質が得られなかった。しかし、本発明では、マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種をこの皮膜中に含ませることによって、光・熱変換効果が機能するようになり、親水性から疎水性への変化の感度が向上し、画像部と非画像部との識別性に優れた実用的な印刷原板が得られるに至った。
したがって本発明の印刷原板では、光・熱変換性の光照射によって原板表面は親水性から疎水性に変化する。シロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂とマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する親水性の皮膜によって光・熱変換作用が増幅されるという機構によって感度の増加と識別性の向上が得られたものと考えられる。
この機構に加えて、シロキサン結合及びシラノール基を含有する樹脂を含む皮膜の断熱効果によって発生した熱の逃散が防止されることも寄与しているものと考えられる。
なおこの皮膜は、光・熱変換作用が効果的に起るのに必要なレベルの光吸収能を有している必要がある。その必要な光吸収能は、300〜1200nmの分光波長領域中に吸光度が0.3以上の分光吸収域を有することであるが、具体的にはこの波長域に吸光度が0.3以上の吸収極大を有するか、又はこの波長域に吸収極大を有しなくても吸光度が0.3以上の連続した100nm以上の分光波長域が存在していることを意味する。この光吸収能の条件を満たしておれば、この吸光波長域に相当する波長の像様露光を行うことによって感光度が増大して識別性が向上する。
マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物は、とくに本発明の感光度増大効果と識別性増大効果が大きく、好ましく用いることができる。
光・熱変換効果は、一般的に熱の発生速度とその熱の逃散速度との競争関係に依存しており、熱の逃散速度が遅いほど発生熱の局部蓄積が起こって高温が得られる。したがって本発明は、高照度光による短時間の像様露光の場合に適しており、とくに露光時間が10−4秒以下の短時間であることがよい。中でもレーザー光による走査方式の露光が本発明に適している。
本発明の印刷原板を用いる印刷版の製作に用いる光源は、本発明の印刷原板と組み合わせて光・熱変換効果が発揮できる光源であれば、可視域、紫外線領域、赤外線領域のいずれであってもよいが、とくに700〜1200nmの分光波長域に極大分光エネルギーを有する輻射線であることが有利である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明による平版印刷用原板では、基板の上にシロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂とマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する親水性の皮膜を有している。本明細書では、親水性の皮膜を担持した部分を「基板」と呼ぶこととする。
以下、各要素について順次述べる。
〔基板〕
基板には、寸度的に安定な板状物が用いられる。本発明に用いることができる基板としては、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、ニッケル、ステンレス鋼等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の金属がラミネート又は蒸着された紙もしくはプラスチックフィルム等が含まれる。
好ましい基板は、ポリエステルフィルム、アルミニウム、又は印刷版上で腐食しにくいSUS鋼板であり、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられる基板の厚みはおよそ0.05mm〜0.6mm程度、好ましくは0.1mm〜0.4mm、特に好ましくは0.15mm〜0.3mmである。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。化学的方法としては、特開昭54−31187号公報に記載されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法が適している。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸などの酸を含む電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号に開示されているように混合酸を用いた電解粗面化方法も利用することができる。
このような粗面化方法のうち、特に特開昭55−137993号公報に記載されているような機械的粗面化と電気化学的粗面化を組合せた粗面化方法が、感脂性画像の支持体への接着力が強いので好ましい。
上記の如き方法による粗面化は、アルミニウム板の表面の中心線表面粗さ(Ha)が0.3〜1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。
粗面化されたアルミニウム板は必要に応じて水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの水溶液を用いてアルカリエッチング処理がされ、さらに中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。
形成される酸化皮膜量は、1.0〜5.0g/m 、特に1.5〜4.0g/mであることが好ましい。陽極酸化皮膜の量は1.0g/mより少ないと耐刷性が不十分であったり、平板印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
これらの陽極酸化処理の内でも、とくに英国特許第1,412,768号公報に記載されている硫酸中で高電流密度で陽極酸化する方法及び米国特許第3,511,661号公報に記載されている燐酸を電解浴として陽極酸化する方法が好ましい。
上記の好ましくは粗面化され、更に陽極酸化されたアルミニウム板は、必要に応じて親水化処理しても良く、その好ましい例としては米国特許第2,714,066号及び同第3,181,461号公報に開示されているようなアルカリ金属シリケート、例えば珪酸ナトリウム水溶液又は特公昭36−22063号公報に開示されている弗化ジルコニウム酸カリウム及び米国特許第4,153,461号公報に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法がある。
〔皮膜〕
以上で基板の説明を終わり、次に基板上に設けられていて、シロキサン結合およびシラノール基を有する樹脂とマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種とを含有する親水性の皮膜について説明する。はじめに、シロキサン結合およびシラノール基を有する樹脂(以後、シロキサン系樹脂とも呼ぶ)について説明する。
本発明の平版印刷版用原版の画像記録層に含有されるシロキサン系樹脂は、シロキサン結合およびシラノール基を有し、画像記録層としての適度な強度と表面の親水性を付与するものであれば、特に限定されないが、下記一般式(I)で示されるものが挙げられる。
Figure 0003841426
上記一般式(I)のシロキサン系樹脂は、下記一般式(II)で示されるシラン化合物の少なくとも1種を含有する分散液からゾル−ゲル変換によって形成され、一般式(I)中のR01〜R03の少なくとも一つは水酸基を表し、他は下記一般式(II)中の記号のR及びYから選ばれる有機残基を表わす。
一般式(II)
(RSi(Y)4−n
一般式(II)中、Rの、少なくとも一つは水酸基を表し、その他は、炭化水素基又はヘテロ環基を表わす。Yは水素原子、ハロゲン原子、−OR、−OCOR、又は、−N(R)(R)を表す(R、Rは、各々炭化水素基を表し、R、Rは同じでも異なってもよく、水素原子又は炭化水素基を表す)。nは1、2又は3を表わす。
好ましくは、一般式(II)中のRは水酸基であるが、水酸基以外としては、炭素数1〜12の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等;これらの基に置換される基としては、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、チオール基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、エポキシ基、−OR′基(R′は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、2−ヒドロキシエチル基、3−クロロプロピル基、2−シアノエチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、2−ブロモエチル基、2−(2−メトキシエチル)オキシエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、3−カルボキシプロピル基、ベンジル基等を示す)、
−OCOR″基(R″は、前記R′と同一の内容を表わす)、−COOR″基、−COR″基、−N(R''')( R''' )(R''' は、水素原子又は前記R′と同一の内容を表わし、各々同じでも異なってもよい)、−NHCONHR″基、−NHCOOR″基、−Si(R″)基、−CONHR''' 基、−NHCOR″基、等が挙げられる。これらの置換基はアルキル基中に複数置換されてもよい)、炭素数2〜12の置換されてもよい直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられる)、炭素数7〜14の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基等;これらの基に置換される基としては、前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、
炭素数5〜10の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、ノルボニル基、アダマンチル基等、これらの基に置換される基としては、前記アルキル基の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)、炭素数6〜12の置換されてもよいアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基で、置換基としては前記アルキル基に置換される基と同一の内容のものが挙げられ、又、複数置換されてもよい)、又は、窒素原子、酸素原子、イオウ原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有する縮環してもよいヘテロ環基(例えば該ヘテロ環としては、ピラン環、フラン環、チオフェン環、モルホリン環、ピロール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリドン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、テトラヒドロフラン環等で、置換基を含有してもよい。置換基としては、前記アルキル基中の置換基と同一の内容のものが挙げられ、又複数置換されてもよい)を表わす。
好ましくはYは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表わす)、−OR基、−OCOR基又は−N(R)(R)基を表わす。
−OR基において、Rは炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブトキシ基、ヘプチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(メトキシエチルオキソ)エチル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−メトキシプロピル基、2−シアノエチル基、3−メチルオキサプロピル基、2−クロロエチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、クロロシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、ジメトキシベンジル基、メチルベンジル基、ブロモベンジル基等が挙げられる)を表わす。
−OCOR基において、Rは、Rと同一の内容の脂肪族基又は炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(芳香族基としては、前記R中のアリール基で例示したと同様のものが挙げられる)を表わす。
又−N(R)(R)基において、R、Rは、互いに同じでも異なってもよく、各々、水素原子又は炭素数1〜10の置換されてもよい脂肪族基(例えば、前記の−OR基のRと同様の内容のものが挙げられる)を表わす。
より好ましくは、RとRの炭素数の総和が16個以内である。
一般式(II)で示されるシラン化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン、n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン、n−ヘキシルトリクロルシラン、n−ヘキシルトリブロムシラン、n−へキシルトリメトキシシラン、n−へキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−へキシルトリt−ブトキシシラン、n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン、n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン、
フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン、テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、イソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、
トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明の画像記録層形成に用いる一般式(II)で示されるシラン化合物とともに、Ti、Zn、Sn、Zr、Al等のゾル−ゲル変換の際に樹脂に結合して成膜可能な金属化合物を併用することができる。
用いられる金属化合物として、例えば、Ti(OR″)(R″はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、TiCl、Zn(OR″)、Zn(CHCOCHCOCH、Sn(OR″)、Sn(CHCOCHCOCH、Sn(OCOR″)、SnCl、Zr(OR″)、Zr(CHCOCHCOCH、Al(OR″)等が挙げられる。
(マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種)
皮膜中には、ゾル−ゲル変換の際にシラン化合物と結合して樹脂に取り込まれて成膜可能な上記したTi、Zn、Sn、Zr、Al等の金属化合物のほかに、必ずしもシラン化合物と結合しなくてもよいマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種を含んでいる。これらのマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種について説明する。
本発明には、原子番号21〜30のスカンジウムから亜鉛、原子番号39〜48のイットリウムからカドミウム、原子番号72〜80のハフニウムから水銀、原子番号57〜71のランタノイド系希土類金属などの任意の遷移金属の化合物を用いることができるが、加えてマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種が用いられる。
マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種は、輻射線エネルギーを吸収して熱エネルギーに変換し、その熱作用が親水性と疎水性の間の物性変化に利用されて、印刷原板の感光度増大効果と識別性増大効果の発揮に寄与する。したがって、マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種は光・熱変換作用を効果的に発現するのに必要な添加量を親水性の皮膜中に安定に存在できる必要がある。
この必要条件から、遷移金属化合物の中でも好ましく用いることのできる化合物は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、銀、プラセオジム、サマリウム、ユーロピウム、イッテリビウム、ビスマス、錫、亜鉛、セリウム、ランタン及びネオジムの金属化合物であり、中でもマンガン化合物、鉄化合物、プラセオジム化合物及びコバルト化合物は、とくに本発明の感光度増大効果と識別性増大効果が大きく、より好ましい。
光・熱変換作用が効果的に起るのに必要なレベルの光吸収能は、300〜1200nmの分光波長領域中に吸光度が0.3以上の分光吸収域を有することであるが、具体的にはこの波長域に吸光度が少なくとも0.3の吸収極大を有するか、又はこの波長域に吸収極大を有しなくても吸光度が0.3以上の連続した100nm以上の分光波長域が存在していることを意味する。この光吸収能の条件を満たしておれば、この吸光波長域に相当する波長の像様露光を行うことによって感光度が増大して識別性が向上する。
上記のマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種は、酢酸塩、しゅう酸塩などのカルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、オキシ塩化物、塩酸塩などの形で用いることができる。また、皮膜中に取り込まれて安定に存在するかぎり、ヘキサシアノ錯塩、ペンタシアノアコ錯塩、アンミン錯塩、ニトロアンミン錯塩などの無機金属錯塩や金属フタロシアニンなどの有機金属錯塩の形のマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種も用いることができる。
好ましく用いることのできる代表的な化合物を以下に例示する。
しゅう酸塩としては、しゅう酸コバルト(II)、しゅう酸鉄(II)、しゅう酸鉄(III)アンモニウム、しゅう酸マンガン(II)。
酢酸塩としては、 酢酸コバルト(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)。
硝酸塩としては、硝酸コバルト、硝酸鉄(III)、硝酸プラセオジム、硝酸マンガン(II)。
硫酸塩としては、 硫酸アンモニウムコバルト、硫酸アンモニウムセリウム、硫酸アンモニウム鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(III)、硫酸アンモニウムマンガン(II)、硫酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)アンモニウム、硫酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸マンガン(II)。
炭酸塩としては、 炭酸コバルト、炭酸マンガン(II)。
オキシ塩化物の例としては、CoOCl。
塩化物の例としては、CoCl 、FeCl 、MnCl などが挙げられる。
又、上記金属塩と遷移金属アルコキシドや遷移金属アセチルアセテートを併用しても良い。
金属アルコキシドの例としては、Ti(OCH ) 、Ti(OC 、Ti(OC 、Ti(OC 、Cu(OCH 、Zn(OC 、Y(OC 、Ce(OC544 、Sb(OC 、Ta(OC 、W(OC 、La(OC 、Nb(OC 、Zr(OCH 、Zr(OC 、Zr(OC 、Zr(OC944 、La[(Al(OC 、Ni[Al(OC] 、(C O)Zr[Al(OC ]などが挙げられる。
金属アセチルアセトネートの例としては、Ir(CH COCH(OCH 、Mn(CHCOCHCH 、Cu(CH COCHCOCH、Cr(CH COCHCOCH 、Ce(CH COCHCOCH などがある。
無機金属錯塩の例としては、ヘキサシアノ鉄(III)錯塩、ヘキサシアノ鉄(II) 錯塩、テトラシアノ銅(II)錯塩、銅(II) ・アンモニア錯塩、塩化金酸、
また、有機金属錯塩としては、銅フタロシアニン錯塩、鉄フタロシアニン錯塩、コバルトフタロシアニン錯塩、コバルト・モルフィリン錯塩などが含まれる。
上記したマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種のほかに、遷移金属以外の金属元素の酢酸塩、しゅう酸塩などのカルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、オキシ塩化物、塩酸塩なども皮膜中に取り込まれて安定に存在するかぎり、皮膜中に添加してもよい。
好ましく用いることのできる遷移金属以外の金属の化合物には以下に例が挙げられる。
しゅう酸アルミニウム、しゅう酸カリウム、しゅう酸カルシウム、しゅう酸水素カリウム、しゅう酸ストロンチウム、しゅう酸バリウム、しゅう酸マグネシウム、しゅう酸リチウムなどのしゅう酸塩、
酢酸アルミニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸ナトリウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸リチウムなどの酢酸塩、
硝酸アルミニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸マグネシウム、硝酸リチウム、硝酸ルテチウムなどの硝酸塩、
硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウム、硫酸アンモニウムマグネシウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸セシウム、硫酸ナトリウム、硫酸鉛(II)、硫酸マグネシウム、硫酸リチウム、硫酸ルビジウムなどの硫酸塩、
炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水酸化マグネシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ナトリウム、炭酸鉛(II)、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸メチルマグネシウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩、
AlCl,CaCl 、SiCl 、MgCl 、LiClなどの塩化物が挙げられる。
又、上記金属塩と金属アルコキシドや金属アセチルアセテートを併用しても良い。金属アルコキシドの例としては、Sr(OC 、Ba(OC 、Ca(OC 、Pb(OC 、Pb(OCH 、Mg[Al(OC ] 、Mg[Al(OC ]などが挙げられ、金属アセチルアセトネートの例としては、Al(CHCOCH COOH) などがある。
マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種の添加量は、前記したシラン化合物と結合して樹脂に取り込まれる金属化合物も含めて、シロキサン系樹脂を構成するシラン化合物に対して80モル%以内、好ましくは50モル%以内である。この範囲においてゾル−ゲル法によって作成される膜の均一性、強度等が充分に保持される。
金属化合物のうち、マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種の割合は、50%以上であり、好ましくは70%以上であり、すべてがマンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種であってもよい。
皮膜の厚みは、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜1μmである。
本発明に印刷用原板の皮膜には、さらに構成成分としては以下のような化合物が挙げられる。
(光吸収剤)
本発明の平版印刷版用原板をレーザー露光により画像を形成する平版印刷版用原板として用いる場合には、平版印刷版用原板の皮膜層に光吸収剤を添加することもできる。
本発明において好ましく使用される光吸収剤は、波長760〜1200nmの光を有効に吸収する赤外線吸収染料又は顔料である。より好ましくは、波長760〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収染料又は顔料である。
染料としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等の公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等の公報に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号公報に記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号公報に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号公報に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)公報に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号公報に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号公報中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
好ましい有機顔料の例は、トリフェニルメタン系、キナクリドン系、ペリレン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、キノフタロン系、モノアゾ系、ジスアゾ系の顔料が耐熱性であり、吸光係数も大きく、優れた光・熱変換性を持つ。この例には、クロモフタールスカーレットR,ペリレンレッド178、ベンゾイミダゾロンカルミンHF4C,レーキレッドC,ロダミン6Gレーキ、パーマネントレッドFGR,パーマネントボルドFGR,キナクリドンマゼンタ122、イエローH10GLなどを挙げることができる。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理をほどこして用いてもよい。表面処理の方法には樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の感光性組成物の塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると塗布後の画像記録層の均一性の点で好ましくない。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
これらの染料若しくは顔料は、本発明の平版印刷版用原板の皮膜層の組成物全固形物分に対し0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜10重量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10重量%、顔料の場合特に好ましくは1.0〜10重量%の割合で添加することができる。顔料若しくは染料の添加量が0.01重量%未満であると感度が低くなり、また50重量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生しやすい。
(酸発生剤)
本発明のヒートモードの画像露光による平版印刷版用原板は、皮膜層中に光若しくは熱により酸を発生させる化合物(以下、酸発生剤と呼ぶ)を添加することによって露光部の皮膜層の溶解が促進される場合があり、そのような場合には酸発生剤を添加することが望ましい。
本発明に用いることができる酸発生剤としては、以下のような公知の化合物を挙げることができる。
例えば、S.I.Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18, 387(1974)、T.S.Ba1 etal., Polymer, 21, 423(1980) 等に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3-140,140号等の公報に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker etal., Macromolecules, 17, 2468(1984)、C.S.Wen etal., Teh, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号等の公報に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello etal., Macromorecules, 10(6), 1307(1977)、Chem. & Eng. News, Nov. 28, p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号、特開平2-150,848 号、特開平2-296,514号等の公報に記載のヨードニウム塩、
J.V.Crivello etal., Polymer J. 17, 73(1985)、J.V.Crivello etal., J. Org. Chem., 43, 3055(1978) 、W.R.Watt etal., J.Polymer Sci., Polymer Chem.,
Ed., 22, 1789(1984)、J.V.Crivello etal., Polymer Bull., 14, 279(1985)、J.V.Crivello etal, Macromorecules, 14(5), 1141(1981)、J.V.Crivello etal., J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 2877(1979) 、欧州特許第370,693号、米国特許3,902,114 号、欧州特許第233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444 号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同 3,604,580号、同3,604,581 号等の公報に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello etal., Macromorecules, 10(6), 1307(1977)、J.V.Crivello etal., J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 1047(1979)等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen etal., Teh, Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, 0ct(1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、米国特許第3,905,815号、特公昭46-4605号、特開昭48-36281号、特開昭55-32070号、特開昭60-239736号、特開昭61-169835号、特開昭61-169837号、特開昭62-58241号、特開昭62-212401号、特開昭63-70243号、特開昭63-298339号等の公報に記載の有機ハロゲン化合物、
K.Meier etal., J.Rad.Curing, 13(4), 26(1986)、T.P.Gill etal., Inorg. Chem., 19, 3007(1980) 、D.Astruc, Acc. Chem. Res., 19(12), 377(1896)、特開平2-161445号等の公報に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、S.Hayase etal.,
J. Polymer Sci., 25, 753(1987)、E.Reichmanis etal., J. Po1ymer Sci., Po1ymer Chem. Ed., 23, 1(1985) 、Q.Q.Zhu etal., J. Photochem., 36, 85, 39,317(1987) 、B. Amit etal., Tetrahedron Lett., (24) 2205(1973), D.H.R.Barton etal., J.Chem Soc., 3571(1965) 、P.M.Collins etal., J. Chem. Soc.,Perkin I,1695(1975)、M.Rudinstein etal, Tetrahedron Lett., (17), 1445(1975)、J.W.Walker etal., J. Am. Chem. Soc., 110,7170(1988)、S.C.Busman etal., J.Imaging Technol., 11(4), 191(1985) 、H.M.Houlihan etal., Macromolecules, 21,2001(1988)、P.M.Collins etal., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 532(1972)、S.Hayase etal., Macromolecules, 18, 1799(1985)、E.Reichmanis etal., J. Electrochem. Soc., So1id State Sci. Technol., 130(6)、F.M.Houlihan etal., Macromolcules, 21, 2001(1988) 、欧州特許第0290,750号、同046,083 号、同156,535号、同271,851 号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号、特開昭60-198538号、特開昭53-133022号等の公報に記載のo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、
M.TUNOOKA etal., Polymer Preprints Japan, 35(8) 、G.Bermer etal, J.Rad,
Curing, 13(4)、W.J.Mijs etal, Coating Technol., 55(697)., 45(1983)、Akzo, H.Adachi etal., Polymer Preprints, Japan, 37(3) 、欧州特許第0199,672号、同84515号、同199,672号、同044,115号、同0101,122 号、米国特許第4,618,564号、同4,371,605号、同4,431,774号、特開昭64-18143号、特開平2-245756号、特願平3-140109号等の公報に記載のイミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61-166544号等の公報に記載のジスルホン化合物、特開昭50-36209号(米国特許第3969118号)公報に記載のo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハライド、特開昭55-62444号(英国特許第2038801号)公報に記載あるいは特公平1-11935号公報に記載のo−ナフトキノンジアジド化合物を挙げることができる。
その他の酸発生剤としては、シクロヘキシルシトレート、p−アセトアミノベンゼンスルホン酸シクロヘキシルエステル、p−ブロモベンゼンスルホン酸シクロヘキシルエステル等のスルホン酸アルキルエステル、本発明者らが先に出願した特願平9−26878号公報に記載の下記構造式で表されるアルキルスルホン酸エステル等を用いることができる。
Figure 0003841426
上記光、熱又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の中で、特に有効に用いられるものについて以下に説明する。
(1)トリハロメチル基が置換した下記一般式(PAG1)で表されるオキサゾール誘導体又は一般式(PAG2)で表されるS−トリアジン誘導体、
Figure 0003841426
式中、Rは置換若しくは未置換のアリール基、アルケニル基、Rは置換若しくは未置喚のアリール基、アルケニル基、アルキル基、−CYを示す。Yは塩素原子又は臭素原子を示す。
具体的には以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0003841426
Figure 0003841426
(2)下記の一般式(PAG3)で表されるヨードニウム塩、又は一般式(PAG4)で表されるスルホニウム塩、若しくはジアゾニウム塩。
Figure 0003841426
ここで、式Ar及びArは、各々独立に置換若しくは未置換のアリール基を示す。好ましい置換基としては、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、メルカプト基及びハロゲン原子が挙げられる。
、R及びRは各々独立に、置換若しくは未置換のアルキル基、アリール基を示す。好ましくは炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜8のアルキル基及びそれらの置換誘導体である。好ましい置換基としては、アリール基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子であり、アルキル基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基である。
は対アニオンを示し、例えば、BF 、AsF 、PF 、SbF 、Si 、ClO 、CFSO 等のパーフルオロアルカンスルホン酸アニオン;ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、ナフタレン−1−スルホン酸アニオン等の結合多核芳香族スルホン酸アニオン;アントラキノンスルホン酸アニオン;スルホン酸基含有染料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、R、R及びRのうちの2つ及びAr、Arはそれぞれの単結合又は置換基を介して結合してもよい。
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0003841426
Figure 0003841426
一般式(PAG3)、(PAG4)で示される上記オニウム塩は公知であり、例えば、J. W. Knapczyk etal, J. Am. Chem. Soc., 91, 145(1969)、A. L. Maycok etal, J. Org. Chem., 35, 2532 (1970)、B. Goethas etal, Bull. Soc. Chem. Belg., 73, 546 (1964)、H. M. Leicester, J. Am. Chem. Soc., 51, 3587 (1929) 、J. V. Crivello etal, J. Polym. Chem. Ed., 18, 2677(1980)、米国特許第2,807,648号及び同4,247,473号、特開昭53−101,331号等の公報に記載の方法により合成することができる。
(3)下記一般式(PAG5)で表されるジスルホン誘導体又は一般式(PAG6)で表されるイミノスルホネート誘導体。
Figure 0003841426
式中、Ar及びArは各々独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示す。Rは置換若しくは未置換のアルキル基、アリール基を示す。Aは置換若しくは未置換のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を示す。
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0003841426
Figure 0003841426
これら酸発生剤の含有量は、本発明の平版印刷版用原板の皮膜層全固形物分に対して通常0.1〜30重量%、より好ましくは1〜15重量%である。
(増感色素)
酸発生剤が十分の光感度を持たない場合に酸発生剤を活性にするために、種々の酸発生剤の増感色素が用いてもよい。
このような増感色素の例としては、米国特許5,238,782号公報に記載のピラン系色素、米国特許4,997,745号公報に記載のシアニン色素、及びスクアリリウム系色素、米国特許5,262,276号公報に記載のメロシアニン系色素、特公平8−20732号公報に記載のピリリュウム色素、その他、ミヒラーズケトン、チオキサントン、ケトクマリン色素、9−フェニルアクリジン等を有効なものとして用いることができる。また、その他にも米国特許4,987,230号公報に記載のビスベンジリデンケトン色素、9,10−ジフェニルアントラセンのような多環芳香族化合物等を用いることができる。
その他の成分としては、例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。
具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)等、あるいは特開昭62−293247号公報、特願平7−335145号公報に記載されている染料を挙げることができる。
なお、添加量は、本発明の平版印刷用原板の皮膜層全固形分に対し、0.01〜10重量%の割合である。
(界面活性剤)
本発明の平版印刷版用原板の皮膜層中には、印刷条件に対する安定性を拡げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の皮膜層全固形物中に占める割合は、0.05〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。
[製版方法]
次に、この平版印刷版用原板の製版方法について説明する。この平版印刷版用原板は、例えば、熱記録ヘッド等により直接画像様に感熱記録を施したり、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザー、あるいは赤外線灯やキセノン放電灯により画像露光される。
画像の書き込みは、面露光方式、走査方式のいずれでもよい。前者の場合は、赤外線照射方式や、キセノン放電灯の高照度の短時間光を原板上に照射して光・熱変換によって熱を発生させる方式である。赤外線灯などの面露光光源を使用する場合には、その照度によっても好ましい露光量は変化するが、通常は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が0.1〜10J/cm の範囲であることが好ましく、0.1〜1J/cm の範囲であることがより好ましい。支持体が透明である場合は、支持体の裏側から支持体を通して露光することもできる。その露光時間は、0.01〜1msec、好ましくは0.01〜0.1msecの照射で上記の露光強度が得られるように露光照度を選択するのが好ましい。照射時間が長い場合には、熱エネルギーの生成速度と生成した熱エネルギーの拡散速度の競争関係から露光強度を増加させる必要が生じる。
後者の場合には、赤外線成分を多く含むレーザー光源を使用して、レーザービームを画像で変調して原板上を走査する方式が行われる。レーザー光源の例として、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザーを挙げることができる。レーザー出力が0.1〜300Wのレーザーで照射をすることができる。また、パルスレーザーを用いる場合には、ピーク出力が1000W、好ましくは2000Wのレーザーを照射するのが好ましい。この場合の露光量は、印刷用画像で変調する前の面露光強度が0.1〜10J/cm の範囲であることが好ましく、0.3〜1J/cm の範囲であることがより好ましい。支持体が透明である場合は、支持体の裏側から支持体を通して露光することもできる。
画像露光された平版印刷版用原板は、露光後に水現像し、更に必要であればガム引きを行ったのち、印刷機に版を装着し印刷を行うこともできる。また、露光後ただちに(現像工程を経ずに)印刷機に版を装着し印刷を行うこともできる。この場合は、湿し水等により、加熱部あるいは露光部が膨潤し、印刷初期に膨潤部が除去され、平版印刷版が形成される。即ち、本発明の平版印刷版用原板を使用する製版方法では、特に現像処理を経ることなく平版印刷版を製版し得る。本発明における水現像とは、水或いは水を主成分とするpH2以上の現像液により現像することを指す。
水現像を行う場合も、現像処理を行わない場合も、露光後に加熱処理を行うことが記録時の感度向上の観点から好ましい。加熱処理の条件は、80〜150℃の範囲内で10秒〜5分間行うことが好ましい。即ち、この加熱処理を施すことにより、レーザー照射時、記録に必要なレーザーエネルギーを減少させることができる。
このような処理によって得られた本発明の平版印刷版用原板は水現像されるかあるいは現像工程を経ずにそのままオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〜8及び比較例1〜3〕
表1に本発明の実施例1〜8及びその比較例1〜3の各平版印刷用原板を作製し、印刷適性を試験した結果を示す。
(1)基板の作製
厚さ0.24mmのJIS A1050仕様のアルミニウム板の表面をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液を用いて砂目立てした後、よく水で洗浄した。10重量%水酸化ナトリウム水溶液に70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後、20重量%HNO水溶液で中和洗浄、水洗した。これをV=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1重量%硝酸水溶液中35℃で230クーロン/dm の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0.55μm(Ra表示)であった。ひきつづいて30重量%HSO水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、10重量%HSO 水溶液中で電流密度30A/dm、陽極酸化皮膜量が2.2g/m 相当になるように陽極酸化し、水洗して基板を作成した。
(2)皮膜の塗設
下記の処方(A)の成分をシリコンテトラエトキシド、エタノール、純水、塩酸の順に混合してゆき30分間、室温で攪拌して塗布溶液(A)を作成した。
処方(A)
シリコンテトラエトキシド 7.5g
エタノール(95%) 12g
純水 5g
塩酸(35%) 0.1g
次に、上記処方量の塗布溶液(A)にMn(NO ・6H Oをそれぞれ8.9g、20.7g添加し1時間室温で攪拌し、各塗布溶液(B−1)及び(B−2)を作成した。
さらに、上記処方量の塗布溶液(A)にFe(NO ・9HOをそれぞれ3.3g、12.5g添加し1時間室温で攪拌し、各々塗布溶液(C−1)及び(C−2)を作成した。
また、塗布溶液(A)にCo(NO ・6H Oをそれぞれ10.5g、24.5g添加し、1時間室温で攪拌し、各々塗布溶液(D−1)及び(D−2)を作成した。
さらに、Pr(NO ・6H Oをそれぞれ13.4g,38.0g,添加し、1時間室温で攪拌し、各塗布溶液(E−1)及び(E−2)を作成した。
以上のように作成した塗布溶液(B−1)〜(E−2)をスピンコーターを用いて、回転数500rpm、10秒で前記(1)のアルミニウム基板に塗布した後、オーブンにて、200℃で10分間乾燥した後、さらに500℃で30分間乾燥して平版印刷用原板を作成して、原板1〜8とした。
(5)印刷原板の評価と評価方法
<吸光度の測定>
得られた印刷原板1〜8を、バリシャ社製の吸光度計CARY5Gを用いて830nmの反射濃度を測定した。同時に陽極酸化を施した基板の830nmの反射濃度も測定し、前者の測定値から後者の測定値を差し引いた値を吸光度とした。
<印刷版の作成>
得られた平版印刷用原版1〜8を波長830nmの半導体レーザー光を照射した。
以下に具体的なレーザー照射条件を下記に示す。
レーザー出力:350mW
ビーム半径:12.5μm
走査速度:1.7m/sec
出力:700mJ/cm
露光後、接触角計(協和界面化学(株)製CA−D)を用いて、接触角の測定を行った。測定には蒸留水を用いてレーザー光を照射した部分と照射していない部分について接触角を測定し、比較した。表1に示したようにレーザー光の照射により大きな接触角変化を得ることができた。
又、レーザー露光した原板に何ら後処理することなく印刷機にかけ印刷を行ったところ1000枚印刷しても汚れのない鮮明な印刷物が得られた。
使用した印刷機は、ハイデルベルグSOR−Mであり、湿し水には、水にEU−3(富士写真フイルム(株)製)を1vol%、IPAを10vol%添加した水溶液を用い、インキには、GEOS(N)墨を用いた。
〔比較例1〕
比較のために実施例1において、基板上に塗布溶液B−1を塗布する代わりに塗布溶液(A)を塗布する以外は、実施例1と同じ仕様で印刷原板を作成して比較用の原板17とした。
上記比較例1の印刷原板17も実施例の原板1〜8と同様に830nmにおける吸光度を測定したのち、レーザー光照射を行い、接触角の測定及び印刷評価試験を行った。結果は、表1に併せて示されているように、比較例1のいずれもレーザー照射により画像形成できず、接触角も大きな変化はなかった。
前記の方法で印刷したところ、比較例1は照射部にインキが着肉しなかった。
なお、上記の実施例1〜8と比較例1の評価方法は、つぎの通りである。
<画像形成評価方法>
レーザー照射部を未照射部との色の違いを目視で評価した。
○:レーザー照射部と未照射部と明瞭な区別が付く。
△:レーザー照射部と未照射部との区別が付くが、○程は明瞭には区別が付かない。
×:レーザー照射部と未照射部との区別が付かない。
<印刷汚れの評価方法>
印刷物の非画像部に汚れが発生しているかどうかを目視観察し、同時に反射濃度計(国際規格ISO5に規定の反射濃度測定条件を満たす)によって非画像部の反射濃度も測定した。印刷汚れがなければ、印刷前の紙面の反射濃度に対する印刷面の反射濃度の増加は0.01以内であるが、増加値が0.01を僅かに超えるような目視に掛からない程度の僅かな印刷汚れも濃度を測定すれば検出される。評価結果も表1に示す。表1において、印刷汚れを認めない場合を○、認められる場合を×、反射濃度計では検出されるが、目視では認られず許容内と判定されるものは、△と表示した。
Figure 0003841426

Claims (8)

  1. シロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂と、マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種とを含有する親水性の皮膜を基板上に設けたことを特徴とする平版印刷版用原板。
  2. シロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂と、マンガン化合物、コバルト化合物、プラセオジム化合物及び鉄化合物から選ばれる少なくとも一種とを含有し、かつ300〜1200nmの分光波長領域中に吸光度が0.3以上の分光吸収域を有する親水性の皮膜を基板上に設けたことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版用原板。
  3. 露光によって原板の表面の被照射部が親水性から親油性に変換することを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版用原板。
  4. シロキサン結合及びシラノール基を有する樹脂が、一般式(II)で現されるシラン化合物の少なくとも1種を含有する分散液からゾルゲル変換によって形成され、かつ構成単位中に含まれる置換基として少なくとも一つの水酸基を含む樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版用原板。
    一般式(II)
    (R Si(Y) 4−n
    一般式(II)中、R の少なくとも一つは水酸基を表し、その他は、炭化水素基又はヘテロ環基を表わす。Yは水素原子、ハロゲン原子、−OR 、−OCOR 、又は、−N(R )(R )を表す(R 、R は、各々炭化水素基を表し、R 、R は同じでも異なってもよく、水素原子又は炭化水素基を表す)。nは1、2又は3を表わす。
  5. 原板に露光を施して得られた印刷版の未露光部が親水性であり、露光部が疎水性であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の平版印刷版用原板。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の平版印刷版用原板に露光時間が10−4秒以下の短時間の像様露光を行って印刷用の画像を形成することを特徴とする平版印刷方法。
  7. 700〜1200nmの分光波長域に極大分光エネルギーを有する輻射線によって像様露光を行うことを特徴とする請求項に記載の平版印刷方法。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の平版印刷版用原板から得られた印刷版を湿し水とインクを用いて印刷することを特徴とする平版印刷方法。
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