JP3892926B2 - カリックスアレーン誘導体及びそれを含有する硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な硬化性樹脂であるカリックスアレーン誘導体及びそれを含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
カリックスアレーンは、フェノールとホルムアルデヒドの縮合により生成する環状オリゴマー(大環状フェノール樹脂誘導体)である。カリックスアレーン及びその誘導体は、円錐台形の周側面に沿ってベンゼン環が配されたようなその特有の構造から、クラウンエーテルやシクロデキストリンと同様に包接機能を有することが知られており、第三のホスト分子として、例えば海水中の重金属イオンの回収などを目的とした研究が近年盛んに行われている。
また、特公平6−53819号及び特公平7−23340号に記載されているように、カリックスアレーンをアセチル化したものを有機溶剤に溶解させ、これを基板上にスピンコートすることにより耐熱性フィルムを得る方法が知られている。
しかしながら、熱硬化性及び/又は光硬化性の樹脂組成物に好適に用いることができるカリックスアレーン誘導体については、これまでのところ知られていない。
【0003】
ところで、光硬化性樹脂の代表的なものとしては、(メタ)アクリレート系光硬化性樹脂が知られている。
(メタ)アクリレート系光硬化性樹脂は、塗料、印刷インキ、電子材料、歯科材料、光学材料、及び光造形など様々な分野で使用されているが、これらの耐熱性は200℃程度であり、ソルダーレジストや液晶カラーフィルター保護膜などで要求される熱安定性としては不足気味であった。
一方、耐熱性に特に優れた光硬化性(メタ)アクリレート系樹脂としては、フルオレン骨格を有するアクリレートがあるが、このものの耐熱性は300℃程度であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
カリックスアレーンの誘導体としては、構成単位であるp−アルキルフェノールのp−位を脱アルキルした後にスルホン酸基やアリル基を導入したものや、p−アルキルフェノールの水酸基をアリルエーテル化、シリルエーテル化、アセチル化したものなど、多数知られている(例えば、前掲特公平6−53819号及びジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J.Am.Chem.Soc.)Vol.117、No.2、1995、第586〜601頁参照)。
しかしながら、アクリロイル基やメタクリロイル基(以下、総称する場合、(メタ)アクリロイル基という)、ビニル基、プロペニル基等を導入することによって、熱硬化性及び/又は光硬化性としたカリックスアレーン誘導体は未だ知られていない。
また、高い耐熱性、特に300℃を超える耐熱性を有する一般の炭化水素系の光硬化性(メタ)アクリレート系樹脂も未だ存在しない。
【0005】
従って、本発明の目的は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、プロパルギル基等の重合性不飽和基が導入され、熱硬化性及び/又は光硬化性に優れると共に、高い耐熱性を有するカリックスアレーン誘導体を提供することにある。
さらに本発明の目的は、上記のようなカリックスアレーン誘導体を含有し、加熱及び/又は光の照射によって速やかに硬化し、耐熱性、硬度等に優れた硬化塗膜が得られる硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、下記化3の一般式(1)で示されるカリックスアレーン誘導体が提供される。
【化3】
さらに本発明によれば、上記一般式(1)で示されるカリックスアレーン誘導体と重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のカリックスアレーン誘導体は、p−アルキルフェノールとホルムアルデヒドの縮合によって生成するp−アルキルカリックスアレーンの水酸基に対応する化合物を反応させ、下記化4の(1)〜(11)で示される基を導入したことを特徴としている。すなわち、p−アルキルカリックスアレーンに重合性不飽和二重結合又は三重結合を有する基である(メタ)アクリロイル基、ビニル基、プロペニル基又はプロパルギル基を導入したものであるため、熱硬化性及び光硬化性を有すると共に、このような重合性不飽和二重結合又は三重結合を有する基がエステル結合又はエーテル結合によって導入されたものであるため、p−アルキルカリックスアレーンの耐熱性がさらに改善され、極めて高い耐熱性を有する。
従って、このような硬化性カリックスアレーン誘導体を適当な熱重合開始剤又は光重合開始剤(重合開始触媒)と共存させることにより、加熱又は光の照射により容易に重合し、極めて高い熱安定性を示す架橋硬化物が得られる。
【化4】
【0008】
本発明のカリックスアレーン誘導体の出発材料であるp−アルキルカリックスアレーンの合成は、適当な溶媒中でp−アルキルフェノールとホルムアルデヒドを水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒の存在下、加熱反応させる従来公知の方法で行うことができ、反応条件を適当に選定することにより前記一般式(1)においてnが4〜10のものが得られるが、特にnが4〜8のp−アルキルカリックスアレーンが好ましい。
【0009】
また、p−アルキルカリックスアレーンのアルキル基は、炭素数1〜12のものである必要がある。カリックスアレーンのp−位に電子供与性のアルキル基が導入されていることにより、その後の(メタ)アクリロイル基やビニル基、プロペニル基の導入反応が容易となる。しかしながら、アルキル基の炭素数が12を超えて大きくなると、得られるカリックスアレーン誘導体の耐熱性が劣化し易くなるので好ましくない。工業上の利用性を考慮すると、上記アルキル基としてはメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基等が好ましく、一方、耐熱性の面からはメチル基、イソプロピル基又はt−ブチル基が好ましい。
【0010】
前記(1)の基の導入は、p−アルキルカリックスアレーンの水酸基に(メタ)アクリル酸クロリドを好ましくはトリエチルアミン等の触媒の存在下に反応させることによって行うことができ、反応は室温〜50℃で容易に進行し、理想的には反応温度は30℃前後である。
一方、前記(2)の基の導入は、p−アルキルカリックスアレーンの水酸基にグリシジル(メタ)アクリレートを好ましくはテトラブチルアンモニウムブロミド等の触媒の存在下に約70〜130℃、好ましくは90℃前後で反応させるか、あるいはp−アルキルカリックスアレーンの水酸基をヒドロキシアルキル化した後に(メタ)アクリル酸を反応させることによって行うことができる。
【0011】
また、前記(3)の基の導入は、p−アルキルカリックスアレーンの水酸基に(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートをジブチル錫ジラウレート等の触媒の存在下、室温〜120℃、好ましくは50〜80℃の温度で反応させて行うことができる。
前記(4)〜(6)の基の導入は、p−アルキルカリックスアレーンの水酸基にエチレンオキサイド付加やクロロヒドリン縮合を行ってヒドロキシエチル化、ヒドロキシプロピル化したものに約80〜130℃、好ましくは100℃前後で(メタ)アクリル酸を反応させて脱水エステル化を行うか、あるいは(メタ)アクリル酸低級アルキル(メチル、エチル、ブチルなど)エステルとアルカリ又は酸、好ましくは水酸化アルカリの存在下でエステル交換反応させることにより行うことができる。
【0012】
また、前記(7)及び(8)の基の導入は、p−アルキルカリックスアレーンの水酸基にクロロエチルビニルエーテルやグリシジルビニルエーテルなどを約50〜150℃、好ましくは90℃前後の温度で反応させることにより行うことができる。
さらに、前記(9)及び(10)の基の導入は、p−アルキルカリックスアレーンの水酸基に約30〜130℃、好ましくは90℃前後の温度で臭化アリルやアリルグリシジルエーテルなどを反応させた後、ナトリウムアルコキサイド等の触媒の存在下でアリル基を異性化させてプロペニル基とすることにより行うことができる。また、前記(11)の基の導入は、p−アルキルカリックスアレーンの水酸基に約30〜100℃の温度でアルカリの存在下、好ましくは触媒を用い、ハロゲン化プロパルギルを反応させることにより行うことができる。
前記したような反応機構自体は周知であり、従って詳細な説明は省くが、本発明のカリックスアレーン誘導体の合成は前記したような方法に限定されるものではなく、他の適当な方法で合成することも可能である。
【0013】
以上のような方法により得られる前記一般式(1)で表わされる本発明に係る硬化性カリックスアレーン誘導体は、殆どが300℃を超える耐熱性を有し、従来の光硬化性(メタ)アクリレート系樹脂の耐熱性を大幅に上回っている。また、重合性不飽和二重結合又は三重結合を有するため、適当な熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加することにより、加熱又は光の照射により容易に重合し、しかも、得られる重合物は高い熱安定性を示し、また(メタ)アクリレート系樹脂に比べて硬化の際の体積収縮が極めて少なく、種々の基材に対する接着性が優れていると共に、硬度等の特性においても優れている。
従って、このような硬化性カリックスアレーン誘導体を熱もしくは光重合開始剤と共に含有する硬化性樹脂組成物は、塗料、印刷インキ、ワニス、接着剤、表面被覆剤などとして、あるいは印刷版、プリント基板等のエッチングレジスト、めっきレジスト、ソルダーレジスト等の各種レジスト膜の形成や多層回路作成の際の層間絶縁膜などの形成に有利に用いることができる。
【0014】
前記熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物など、ラジカル重合触媒として公知の各種化合物を用いることができる。
【0015】
また、前記光重合開始剤としては、代表的なものとしてベンゾインやベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類又はキサントン類等があり、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの光重合開始剤は、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の安息香酸系又は第三級アミンなど公知慣用の光増感剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記のような熱もしくは光重合開始剤の使用量の好適な範囲は、前記カリックスアレーン誘導体100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜10重量部となる割合である。熱もしくは光重合開始剤の配合割合が0.1重量部未満の場合には硬化反応が遅くなり、一方、30重量部より多い場合には硬化塗膜の特性が悪くなり、また、硬化性樹脂組成物の保存安定性が悪くなるので好ましくない。
【0017】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、その性能を損わない範囲で必要に応じて、希釈剤として、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、β−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、又は上記各アクリレートに対応する各メタクリレート類、多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステル、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート又はウレタンアクリレートなど、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー類、オリゴマー類もしくはプレポリマー類を添加することができ、それによって組成物の光硬化性をさらに増進させることができる。また、一般の有機溶媒、例えばジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、酢酸セロソルブなどのセロソルブ系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドなどの溶媒を希釈剤として用いることもできる。従来公知のカリックスアレーンが有機溶媒に難溶で、特殊の有機溶媒しか用いることができないのに対し、本発明のカリックスアレーン誘導体の場合には溶解性が良く、一般の有機溶媒を用いることができることも大きな利点である。
【0018】
上記のような希釈剤の使用量は、前記カリックスアレーン誘導体100重量部に対して200重量部以下、好ましくは10〜150重量部の割合が望ましいが、硬化性樹脂組成物の使用目的、あるいはスピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、スクリーン印刷法等の塗布方法に応じて適宜の割合で使用すればよい。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに熱硬化特性を増進させる目的で、必要に応じてエポキシ樹脂や、アミン化合物などのエポキシ樹脂用硬化剤を配合することができる。
上記エポキシ樹脂としては、代表的なものを挙げると、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンとをアルカリ存在下に反応させて得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAとホルマリンを縮合反応した樹脂のエポキシ化物、ビスフェノールAの代わりにブロム化ビスフェノールAを用いたものや、ノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを反応させてグリシジルエーテル化したノボラック型エポキシ樹脂、例えばフェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、p−t−ブチルフェノールノボラック型等のエポキシ樹脂、また、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等がある。さらに、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、シクロペンテンオキサイド基等を有する環式脂肪族エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルーpーアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン系樹脂;ヒダントイン環をグリシジル化したヒダントイン型エポキシ樹脂;トリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート;ビキシレノール型又はビフェノール型のエポキシ樹脂;側鎖にグリシジル基を有する共重合体等があるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は前記カリックスアレーン誘導体100重量部に対して100重量部以下の割合が適当である。
【0020】
また、アミン化合物としては、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン、4,4´,4´´−トリアミノトリフェニルメタン、4,4´,4´´−トリアミノトリフェニルエタン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン、o−,m−,p−フェニレンジアミン、三フッ化ホウ素−アミン・コンプレックス(錯体)、ジシアンジアミド及びその誘導体、有機酸ヒドラジッド、ジアミノマレオニトリル、メラミン及びその誘導体、アミンイミド、ポリアミンの塩等が挙げられる。また、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体や、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類などを用いることもできる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し一般に0.1〜1.1モルの範囲が適当である。
【0021】
さらに、本発明の硬化性組成物には、光反応性や熱硬化反応性を損わない範囲で、さらに必要に応じて硫酸バリウム、酸化珪素、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどの公知慣用の充填剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知慣用の着色用顔料、消泡剤、密着性付与剤、レベリング剤などの各種添加剤類を加えてもよい。
【0022】
前記したような成分を配合して調製された組成物は、これを基材上に適当な方法で塗布し、光照射及び/又は加熱によって硬化せしめる。光照射の光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどの工業的に利用し得る光源や、レーザー光線、電子線、X線などの公知の活性光線のいずれも用いることができる。また、照射時間は、光源の光の強さ等により変わるが、一般には0.5秒〜60分間が適当である。
また、光照射後、硬化性組成物を約80〜200℃、好ましくは約100〜160℃にさらに加熱することにより、短時間でスムーズに加熱硬化が行われ、耐熱性、寸法安定性、密着性、硬度等の硬化特性に優れた硬化物が得られる。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。
【0024】
参考合成例1(原料合成)
p−クレゾール57.2gを1,4−ジオキサン660mlに溶解させ、パラホルムアルデヒド38.5gを加え、さらに5N水酸化カリウム水溶液を33ml加えた。これを5時間還流し、室温まで冷却した後、2N塩酸85mlを加えた。生成した粘稠なペーストを取り出し、水、エタノール、及びn−ヘキサンの順で洗浄、乾燥し、p−メチルカリックスアレーン56.2g(収率89%)を得た。
得られた生成物は、IRスペクトル、 1H−NMRスペクトル及びマススペクトル(MS)のデータから、p−メチルカリックスアレーンの4〜6量体の混合物と同定できた。各スペクトルデータを以下に示す。
【0025】
参考合成例2(原料合成)
p−tert−ブチルフェノール10g、パラホルムアルデヒド7.2g、水酸化カリウム1.5g、及び水8mlを混合し、1時間加熱、攪拌した。次いでキシレン100mlを加え、さらに3時間加熱、攪拌した。その後室温まで冷却した後、生成した沈殿物を濾過して取り出し、クロロホルムとアセトンから再結晶させてp−tert−ブチルカリックスアレーン9.8g(収率90%)を得た。
生成物のIRスペクトル及び 1H−NMRスペクトルのデータを以下に示す。
【0026】
前記参考合成例1及び2で得られたp−メチルカリックスアレーン及びp−tert−ブチルカリックスアレーンの熱重量分析(TGA)による分解開始温度(IDT)及び示差走査熱量測定(DSC)によるガラス転移点(Tg)の測定結果を下記表1に示す。
【表1】
【0027】
参考合成例3(中間原料合成)
攪拌装置、温度計、滴下ロート、及び還流冷却管を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、参考合成例1に従って合成したp−メチルカリックスアレーン36g、10N水酸化カリウム水溶液150ml、テトラブチルアンモニウムブロミド4.8g、及びジエチレングリコールジメチルエーテル(商品名ジグライム)300mlを入れ、加熱、攪拌しながら90℃でエチレンクロロヒドリン120.8gを少量ずつ30分かけて滴下した。さらに90℃で5時間反応させた後、室温まで冷却し、反応液を酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル抽出層を200mlの20%食塩水で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去させてp−メチルカリックスアレーンのヒドロキシエチル化物(平均2.5モル付加物)58gを得た。このものの水酸基価を常法により測定したところ244mgKOH/gであった。
【0028】
参考合成例4(中間原料合成)
参考合成例3と同様の装置を取り付けた3リットルの四つ口フラスコに、参考合成例1に従って合成したp−メチルカリックスアレーン60g、10N水酸化カリウム水溶液750ml、テトラブチルアンモニウムブロミド8.1g、及びジグライム1,000mlを入れ、加熱、攪拌しながら90℃でエチレンクロロヒドリン603.8gを少量ずつ1時間かけて滴下した。さらに95℃で8時間反応させた後、室温まで冷却し、反応液を酢酸エチル1,000mlで抽出した。酢酸エチル抽出層を400mlの20%食塩水で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去させてp−メチルカリックスアレーンのヒドロキシエチル化物(平均6.8モル付加物)210gを得た。このものの水酸基価を常法により測定したところ134mgKOH/gであった。
【0029】
実施例1
参考合成例1で合成したp−メチルカリックスアレーン(水酸基価467.5mgKOH/g)0.6gをN−メチルピロリドン6mlに溶解させ、この溶液にトリエチルアミン1.26g及びアクリル酸クロリド1.13gを少量ずつ滴下し、室温で3時間反応させた。反応母液を水に注ぎ、生じた固体を再沈殿により精製することにより、p−メチルカリックスアレーンアクリレート(以下、MeAAと略称する)を0.81g得た。
MeAAのスペクトルデータを以下に示す。 1H−NMRの積分比より求めた反応率は93%であった。なお、MeAAの熱重量分析(TGA)による分解開始温度(IDT)は410℃であった。
【0030】
実施例2
参考合成例1に従って合成したp−メチルカリックスアレーン6.0gをN−メチルピロリドン60mlに溶解させ、トリエチルアミン12.6g及びメタクリル酸クロリド13.1gを少量ずつ加えた。室温で3時間反応させた後、反応母液を水へ注ぎ、生じた沈殿物を回収、乾燥した。これをクロロホルムに溶解し、n−ヘキサンに再沈殿させて精製することにより、p−メチルカリックスアレーンメタクリレート(以下、MeMAAと略称する)8.0gを得た。
MeMAAのスペクトルデータを以下に示す。 1H−NMRの積分比より求めた反応率は100%であった。なお、MeMAAの熱重量分析(TGA)による分解開始温度(IDT)は413℃であった。
【0031】
実施例3
参考合成例1に従って合成したp−メチルカリックスアレーン6.0gをN−メチルピロリドン60mlに溶解させ、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)9.3g及びジブチル錫ジラウレート2mgを加え、70℃で3時間反応させた。反応母液を水へ注ぎ、生じた沈殿物を回収、乾燥した。これをクロロホルムに溶解し、n−ヘキサンに再沈殿させて精製することにより、p−メチルカリッスアレーンのMOI変性物(以下、MeMOIと略称する)10.6gを得た。
MeMOIのスペクトルデータを以下に示す。 1H−NMRの積分比より求めた反応率は100%であった。なお、MeMOIの熱重量分析(TGA)による分解開始温度(IDT)は268℃であった。
【0032】
実施例4
参考合成例1に従って合成したp−メチルカリックスアレーン0.6gをN−メチルピロリドン6mlに溶解させ、テトラブチルアンモニウムブロミド81mg及び水素化ナトリウム0.6gを加えた。この溶液に2−クロロエチルビニルエーテル3.54mlを少量ずつ加え、室温で1時間、さらに80℃で24時間反応させた。反応母液を水に注ぎ、希塩酸で中和した後、生成した沈殿物を回収、乾燥させた。これをクロロホルムに溶解し、n−ヘキサンへ再沈殿させることにより精製し、p−メチルカリックスアレーンの2−クロロエチルビニルエーテル誘導体(以下、MeCEVEと略称する)0.80gを得た。
MeCEVEのスペクトルデータを以下に示す。 1H−NMRの積分比より求めた反応率は100%であった。なお、MeCEVEの熱重量分析(TGA)による分解開始温度(IDT)は330℃であった。
【0033】
実施例5
参考合成例1に従って合成したp−メチルカリックスアレーン0.15gをN−メチルピロリドン1.5mlに溶解させ、テトラブチルアンモニウムブロミド20mg及びグリシジルビニルエーテル(GVE)0.875gを加え、100℃で24時間反応させた。反応母液を水に注ぎ、生成した沈殿物を回収、乾燥させた。これをクロロホルムに溶解し、n−ヘキサンへ再沈殿させることにより精製し、p−メチルカリックスアレーンのGVE付加物(以下、MeGVEと略称する)0.22gを得た。
MeGVEのスペクトルデータを以下に示す。 1H−NMRの積分比より求めた反応率は92%であった。なお、MeGVEの熱重量分析(TGA)による分解開始温度(IDT)は355℃であった。
【0034】
実施例6
参考合成例1に従って合成したp−メチルカリックスアレーン0.6g、テトラブチルアンモニウムブロミド81mg、及び水酸化カリウム1.65gをN−メチルピロリドン6mlに溶解させ、アリルブロミド2.16mlを室温で加え、50℃で24時間反応させた。反応母液を水へ注いで生成物を沈殿させ、これを回収、乾燥し、クロロホルムに溶解し、n−ヘキサンに再沈殿させて精製することにより、p−メチルカリッスアレーンのアリルエーテル0.596gを得た。
このアリルエーテル0.401g及びカリウム−t−ブトキシド0.14gをN−メチルピロリドン6mlに溶解させ、80℃で24時間攪拌してアリルエーテルの異性化を行った。その後、反応母液をアリルエーテル合成時と同様に精製して、p−メチルカリックスアレーンのプロぺニルエーテル0.324gを得た。このものの熱重量分析(TGA)による分解開始温度(IDT)は313℃であった。また、スペクトルデータを以下に示す。
【0035】
実施例7
参考合成例1に従って合成したp−メチルカリックスアレーン0.6g、テトラブチルアンモニウムブロミド81mg、及び水酸化カリウム1.65gをN−メチルピロリドン6mlに溶解させ、プロパルギルブロミド2.27mlを室温で加え、50℃で24時間反応させた。反応母液を水へ注いで生成物を沈殿させ、これを回収、乾燥し、クロロホルムに溶解し、n−ヘキサンに再沈殿させて精製することにより、p−メチルカリッスアレーンのプロパルギルエーテル0.640gを得た。このものの熱重量分析(TGA)による分解開始温度(IDT)は370℃であった。また、スペクトルデータを以下に示す。
【0036】
実施例8
参考合成例2で合成したp−tert−ブチルカリックスアレーン0.81gをトルエン8mlに懸濁させ、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)0.93g及びジブチル錫ジラウレート0.9mgを加えて80℃で3時間反応させた。反応母液を室温まで冷却して沈殿物を析出させた。この沈殿物を濾過により分取し、n−ヘキサンで洗浄することによりp−tert−ブチルカリックスアレーンのMOI変性物(以下、BuMOIと略称する)1.26gを得た。
BuMOIのスペクトルデータを以下に示す。 1H−NMRの積分比より求めた反応率は100%であった。
【0037】
実施例9
攪拌装置、温度計、空気吹き込み用の毛細管、及びディーンシュターク検水管を取り付けた四つ口フラスコに、参考合成例3で得られたp−メチルカリックスアレーンのヒドロキシエチル化物(水酸基価244mgKOH/g)50g、アクリル酸34.6g、p−トルエンスルホン酸2.3g、ヒドロキノン0.17g、及びトルエン300mlを入れ、空気を吹き込みながら加熱し、トルエンを還流させてエステル化による生成水を系内から除きながら6時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、10%炭酸ナトリウム水溶液50mlで2回洗浄し、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、トルエンを留去することにより、ペースト状の生成物46gを得た(収率67%)。
得られたp−メチルカリックスアレーンのヒドロキシエチル化物のアクリル酸エステル(以下、CA2EOAAと略称する)の25℃における粘度は17.5Pa・s、屈折率は1.557であり、熱重量分析(TGA)における分解開始温度は382℃であった。
CA2EOAAのIR及び 1H−NMRスペクトルによる解析データを以下に示す。また、構造式を下記化5の式(2)に示す。
【0038】
実施例10
実施例9と同様の反応装置に、参考合成例4で得られたp−メチルカリックスアレーンのヒドロキシエチル化物(水酸基価134mgKOH/g)110g、アクリル酸41.2g、p−トルエンスルホン酸2.7g、ヒドロキノン0.30g、及びトルエン300mlを入れ、空気を吹き込みながら加熱し、トルエンを還流させてエステル化による生成水を系内から除きながら8時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液150mlで2回洗浄し、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、トルエンを留去することにより、ペースト状の生成物118gを得た(収率87%)。
得られたp−メチルカリックスアレーンのヒドロキシエチル化物のアクリル酸エステル(以下、CA6EOAAと略称する)の25℃における粘度は7,590mPa・s、屈折率は1.518であり、熱重量分析(TGA)における分解開始温度は382℃であった。CA6EOAAのIR及び 1H−NMRスペクトルによる解析データを以下に示す。また、構造式を下記化5の式(2)に示す。
【0039】
【化5】
【0040】
実施例11
攪拌装置、温度計、及び滴下ロート(2つ)を取り付けた500mlの四つ口フラスコに、参考合成例2に従って得られたp−tert−ブチルカリックスアレーン9.5g、塩化メチレン300ml、及びフェノチアジン4.5mgを入れ、氷水浴で冷却しながら内温約5℃で攪拌した。一方の滴下ロートから塩化アクリロイル25gを50mlの塩化メチレンで希釈した溶液を、もう一方の滴下ロートからはトリエチルアミン30.3gを50mlの塩化メチレンで希釈した溶液を少量ずつ1時間かけて滴下した。この間、内温は10℃以下であった。反応液を室温で一夜攪拌し、メタノール10gを加えてさらに3時間攪拌した。反応液を1N塩酸水溶液100mlへ注ぎ、塩化メチレン層を分取した。塩化メチレン層を5%炭酸水素ナトリウム100mlで2回、次いで水100mlで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮したものをn−ヘキサン1リットルへ再沈殿させて精製、減圧乾燥することにより、p−tert−ブチルカリックスアレーンのアクリル酸エステル(以下、BuAAと略称する)10.8gを得た。
得られたBuAAの示差熱分析(TG/DSC)における融点は165℃、分解開始温度は367℃であった。BuAAのIR及び 1H−NMRスペクトルによる解析データを以下に示す。また、構造式を下記化6の式(3)に示す。
【0041】
【化6】
【0042】
実施例12(光硬化性樹脂組成物)
前記実施例3で合成したMeMOIの50重量部と、光重合性モノマーのフェノキシエチルアクリレート(以下、PEAと略称する)50重量部、及び光重合開始剤(チバガイギー社製イルガキュア651)1重量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物をカバーグラス2枚の間に挟み、高圧水銀灯により光照射した。硬化の進行状況をFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)により追跡調査したところ、150mJ程度の照射量で硬化反応は飽和状態となり、約90%の反応率が得られた。この結果は、上記光硬化性樹脂組成物の光硬化性が極めて高いことを示している。
【0043】
実施例13(熱硬化性樹脂組成物)
前記実施例1及び2で合成したMeAA又はMeMAAの50重量部と、PEA、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、又はトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)の50重量部、及びベンゾイルパーオキサイド1重量部を混合して熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ調製した。
得られた各熱硬化性樹脂組成物を100℃で30分間加熱することにより重合させて得られた硬化物の熱重量分析(TGA)による分解開始温度(IDT)を表2に示す。
【表2】
【0044】
また、比較のために、上記実施例13で用いたPEA及び他の光重合性モノマーの熱重量分析(TGA)による分解開始温度(IDT)を表3に示す。
【表3】
表2と表3を比較すれば明らかなように、耐熱性に劣る光重合性モノマーを組成物に添加する場合においても、本発明に係るカリックスアレーン誘導体が共存することにより、耐熱性が著しく向上し、しかも、カリックスアレーン誘導体単独の耐熱性と比較しても同等の耐熱性が得られることがわかる。
【0045】
実施例14(光カチオン硬化性樹脂組成物)
前記実施例4、5、6及び7で合成したカリックスアレーン類と、光カチオン重合開始剤としてビス−[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドービス(ヘキサフルオロホスフェート)(DPSP)又は4−モルホリノ−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート(MDBZ)をカリックスアレーン類のビニル基又はプロパルギル基1モル当り5モル%加え、少量のテトラヒドロフラン(THF)に均一に溶解させた。この溶液をKBr板に塗布し、乾燥してTHFを留去後、高圧水銀灯により光照射した。硬化の進行状況をFT−IRにより追跡調査したところ、DPSP及びMDBZともに800mJ程度の照射量で硬化反応は飽和状態となり、約80%の反応率が得られた。
【0046】
実施例15(光硬化性樹脂組成物)
前記実施例9及び10で合成したCA2EOAA、CA6EOAA、及び比較例としてペンタエリスリトールのヒドロキシエチル化物のテトラアクリレート(NKエステル ATM−4E、新中村化学工業(株)製)、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(NKエステル AMP−60G、新中村化学工業(株)製)に対し、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバガイギー社製)をそれぞれ3重量部配合したものをポリカーボネート板に膜厚約60μmに塗布し、窒素雰囲気下に紫外線照射を行い、硬化させた塗膜の物性を評価した。
なお、この時照射した紫外線の照射量は200mJであった。また、密着性は、塗膜に碁盤目状に切れ目を付け、セロハンテープを張り付けて剥がすことにより剥離する塗膜片と基盤に残る塗膜片の比より求めた。その結果を表4に示す。
【表4】
表4に示す結果から、CA2EOAA及びCA6EOAAは、光硬化性が従来の光重合性モノマーに劣ることはなく、かつ密着性に優れた硬化塗膜を与えることが判る。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るカリックスアレーン誘導体は、p−アルキルカリックスアレーンに重合性不飽和二重結合又は三重結合を有する基である(メタ)アクリロイル基、ビニル基、プロペニル基又はプロパルギル基を導入したものであるため、熱硬化性及び光硬化性を有すると共に、このような重合性不飽和二重結合や三重結合を有する基がエステル結合又はエーテル結合(特に好ましくはエステル結合)によって導入されたものであるため、p−アルキルカリックスアレーンの耐熱性がさらに改善され、極めて高い耐熱性を有する。また、(メタ)アクリレート系樹脂に比べて硬化の際の体積収縮が極めて少なく、種々の基材に対して接着性が優れている。
また、このような硬化性カリックスアレーン誘導体を熱もしくは光重合開始剤と共に含有する本発明に係る硬化性樹脂組成物は、加熱又は光の照射により速やかに重合し、極めて高い耐熱性、各種基材に対する接着性、硬度、耐薬品性、電気絶縁性等の諸特性に優れた硬化物が得られる。従って、塗料、印刷インキ、ワニス、接着剤、表面被覆剤などとして、あるいは印刷版、プリント基板等のエッチングレジスト、めっきレジスト、ソルダーレジスト等の各種レジスト膜や多層回路作成の際の層間絶縁膜の形成に有利に用いることができる。
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