JP3731979B2 - カリックスアレーン誘導体及びそれを含有する硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な硬化性樹脂である液状のカリックスアレーン誘導体及びそれを含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
カリックスアレーンは、フェノールとホルムアルデヒドの縮合により生成する環状オリゴマー(大環状フェノール樹脂誘導体)である。カリックスアレーン及びその誘導体は、円錐台形の周側面に沿ってベンゼン環が配されたようなその特有の構造から、クラウンエーテルやシクロデキストリンと同様に包接機能を有することが知られており、第三のホスト分子として、例えば海水中の重金属イオンの回収などを目的とした研究が近年盛んに行われている。
また、特公平6−53819号及び特公平7−23340号に記載されているように、カリックスアレーンをアセチル化したものを有機溶剤に溶解させ、これを基板上にスピンコートすることにより耐熱性フィルムを得る方法が知られている。
【0003】
ところで、光硬化性樹脂の代表的なものとしては、(メタ)アクリレート系光硬化性樹脂が知られている。
(メタ)アクリレート系光硬化性樹脂は、塗料、印刷インキ、電子材料、歯科材料、光学材料、及び光造形など様々な分野で使用されているが、これらの耐熱性は200℃程度であり、ソルダーレジストや液晶カラーフィルター保護膜などで要求される熱安定性としては不足気味であった。
一方、耐熱性に特に優れた光硬化性(メタ)アクリレート系樹脂としては、フルオレン骨格を有するアクリレートがあるが、このものの耐熱性は300℃程度であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
カリックスアレーンの誘導体としては、構成単位であるp−アルキルフェノールのp−位を脱アルキルした後にスルホン酸基やアリル基を導入したものや、p−アルキルフェノールの水酸基をアリルエーテル化、シリルエーテル化、アセチル化したものなど、多数知られている(例えば、前掲特公平6−53819号及びジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J.Am.Chem.Soc.)Vol.117、No.2、1995、第586〜601頁参照)。
また、本発明者らも、アクリロイル基やメタクリロイル基(以下、総称する場合、(メタ)アクリロイル基という)、ビニル基、プロペニル基等を導入することによって、熱硬化性及び/又は光硬化性としたカリックスアレーン誘導体を既に開発している(第45回高分子学会予稿集II、P448及び第46回高分子学会予稿集III 、P445)。
【0005】
本発明者らが開発した、カリックスアレーンに(メタ)アクリロイル基を導入したカリックスアレーンアクリレートもしくはメタクリレート(以下、カリックスアレーン(メタ)アクリレートと総称する)は、ベンゼン環がメチレンスペーサーでつながった環状構造を有する多官能(メタ)アクリレートであり、従来のフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートよりも低粘度で耐熱性に優れている。
しかしながら、これらのカリックスアレーン(メタ)アクリレートは常温で粉体である。活性エネルギー線、例えば紫外線により露光したり、熱硬化性樹脂として重合開始触媒と配合して熱硬化させるコーティング材料などに使用するには、一般に液状であることが好ましく、このために市販の多官能(メタ)アクリレートモノマー及び/又は有機溶剤に溶解させる必要があり、取り扱いの点から不利であった。
【0006】
従って、本発明の目的は、重合性不飽和基の(メタ)アクリロイル基が導入され、熱硬化性及び/又は光硬化性に優れると共に、高い耐熱性を有する常温で液状のカリックスアレーン誘導体を提供することにある。
さらに本発明の目的は、コーティング材料の調製や成膜が容易であり、上記のようなカリックスアレーン誘導体を含有し、加熱及び/又は光の照射によって速やかに硬化し、耐熱性、硬度等に優れた硬化塗膜が得られる硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、下記一般式(1)で示されるカリックスアレーン誘導体が提供される。
【化3】
さらに本発明によれば、上記一般式(1)で示されるカリックスアレーン誘導体と重合開始剤を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、p−アルキルカリックスアレーンにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド、あるいはエチレンクロロヒドリン及び/又はプロピレンクロロヒドリンを付加重合あるいは縮重合させて得られるカリックスアレーンのポリオキシアルキレン変成物を、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、p−トルエンスルホン酸などの触媒の存在下に反応させることにより得られるカリックスアレーン誘導体は、それ自身が液状であり(以下、液状カリックスアレーン誘導体と称す)、従来の粉体のカリックスアレーン(メタ)アクリレートよりも取り扱いの点において優れていることを見い出した。
【0009】
従って、本発明の液状カリックスアレーン誘導体は、溶剤や他の(メタ)アクリレートモノマーで希釈することなしに重合開始触媒と配合して、コーティング材など一般の活性エネルギー線硬化性樹脂と同様の用途に用いることができる。ただし、グラビア印刷インキのように用途によっては樹脂がかなり低粘度であることが要求されるので、この場合には希釈性に優れた(メタ)アクリレートモノマー、例えば1,6−ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどと配合するのが好ましい。
【0010】
また、本発明の液状カリックスアレーン誘導体は、p−アルキルカリックスアレーンにポリオキシアルキレン基を介して(メタ)アクリロイル基を導入したものであるため、熱硬化性及び光硬化性を有すると共に、(メタ)アクリロイル基がエーテル結合によって導入されているため、p−アルキルカリックスアレーンの耐熱性がさらに改善され、極めて高い耐熱性を有する。
従って、このような硬化性の液状カリックスアレーン誘導体を適当な熱重合開始剤又は光重合開始剤(重合開始触媒)と共存させることにより、加熱又は光の照射により容易に重合し、極めて高い熱安定性を示す架橋硬化物が得られる。
【0011】
本発明の液状カリックスアレーン誘導体の出発材料であるp−アルキルカリックスアレーンの合成は、適当な溶媒中でp−アルキルフェノールとホルムアルデヒドを水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒の存在下、加熱反応させる従来公知の方法で行うことができ、反応条件を適当に選定することにより前記一般式(1)においてnが3〜10のものが得られるが、特にnが4〜8のp−アルキルカリックスアレーンが好ましい。
【0012】
また、p−アルキルカリックスアレーンのアルキル基は、炭素数1〜12のものである必要がある。カリックスアレーンのp−位に電子供与性のアルキル基が導入されていることにより、その後の(メタ)アクリロイル基の導入反応が容易となる。しかしながら、アルキル基の炭素数が12を超えて大きくなると、得られる液状カリックスアレーン誘導体の耐熱性が劣化し易くなるので好ましくない。工業上の利用性を考慮すると、上記アルキル基としてはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基等が好ましく、特に耐熱性の面からはメチル基、エチル基、イソプロピル基又はt−ブチル基が好ましい。
【0013】
(メタ)アクリロイル基の導入は、p−アルキルカリックスアレーンの水酸基にエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加重合させるか、エチレンクロロヒドリンやプロピレンクロロヒドリンを縮重合させて得られるカリックスアレーンのポリオキシアルキレン変成物に、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等の酸触媒の存在下にアクリル酸、メタクリル酸又はそれらの混合物(以下、(メタ)アクリル酸と総称する)を反応させることにより行うことができる。反応は約70〜140℃で容易に進行する。
上記付加重合の際にエチレンオキシドとプロピレンオキシドの混合物を用い、あるいは上記縮重合の際にエチレンクロロヒドリンとプロピレンクロロヒドリンの混合物を用いることにより、反応条件に応じてこれらのブロック共重合又はランダム共重合が生起する。ポリオキシアルキレン基の平均重合度は1よりも大きいことが必要であるが、20未満であることが好ましい。平均重合度が1以下の場合には固形のカリックスアレーン誘導体が生成するようになる。
前記したような反応機構自体は周知であり、従って詳細な説明は省くが、本発明のカリックスアレーン誘導体の合成は前記したような方法に限定されるものではなく、他の適当な方法で合成することも可能である。
【0014】
以上のような方法により得られる前記一般式(1)で表わされる本発明に係る液状カリックスアレーン誘導体は、300℃を超える耐熱性を有し、従来の光硬化性(メタ)アクリレート系樹脂の耐熱性を大幅に上回っている。また、重合性不飽和二重結合を有するため、適当な熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加することにより、加熱又は光の照射により容易に重合し、しかも、得られる重合物は高い熱安定性を示し、また(メタ)アクリレート系樹脂に比べて硬化の際の体積収縮が極めて少なく、種々の基材に対する接着性が優れていると共に、硬度等の特性においても優れている。
従って、このような液状カリックスアレーン誘導体を熱もしくは光重合開始剤と共に含有する硬化性樹脂組成物は、塗料、印刷インキ、ワニス、接着剤、表面被覆剤などとして、あるいは印刷版、プリント基板等のエッチングレジスト、めっきレジスト、ソルダーレジスト等の各種レジスト膜の形成や多層回路作成の際の層間絶縁膜などの形成に有利に用いることができる。
【0015】
前記熱重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物など、ラジカル重合触媒として公知の各種化合物を用いることができる。
【0016】
また、前記光重合開始剤としては、代表的なものとしてベンゾインやベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類又はキサントン類等があり、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの光重合開始剤は、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の安息香酸系又は第三級アミンなど公知慣用の光増感剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。
【0017】
上記のような熱もしくは光重合開始剤の使用量の好適な範囲は、前記液状カリックスアレーン誘導体100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは1〜10重量部となる割合である。熱もしくは光重合開始剤の配合割合が0.1重量部未満の場合には硬化反応が遅くなり、一方、30重量部より多い場合には硬化塗膜の特性が悪くなり、また、硬化性樹脂組成物の保存安定性が悪くなるので好ましくない。
【0018】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、その性能を損わない範囲で必要に応じて、希釈剤として、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、β−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、又は上記各アクリレートに対応する各メタクリレート類、多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステル、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート又はウレタンアクリレートなど、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー類、オリゴマー類もしくはプレポリマー類を添加することができ、それによって組成物の光硬化性をさらに増進させることができる。また、一般の有機溶媒、例えばジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、酢酸セロソルブなどのセロソルブ系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドなどの溶媒を希釈剤として用いることもできる。従来公知のカリックスアレーンが有機溶媒に難溶で、特殊の有機溶媒しか用いることができないのに対し、本発明の液状カリックスアレーン誘導体の場合には溶解性が良く、一般の有機溶媒を用いることができることも大きな利点である。
【0019】
上記のような希釈剤の使用量は、前記液状カリックスアレーン誘導体100重量部に対して200重量部以下、好ましくは10〜150重量部の割合が望ましいが、硬化性樹脂組成物の使用目的、あるいはスピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、スクリーン印刷法等の塗布方法に応じて適宜の割合で使用すればよい。
【0020】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、ビニルエーテル樹脂などの他の活性エネルギー線硬化性樹脂を配合することができ、さらに熱硬化特性を増進させる目的で、エポキシ樹脂や、アミン化合物などのエポキシ樹脂用硬化剤を配合することができる。
上記エポキシ樹脂としては、代表的なものを挙げると、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンとをアルカリ存在下に反応させて得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAとホルマリンを縮合反応した樹脂のエポキシ化物、ビスフェノールAの代わりにブロム化ビスフェノールAを用いたものや、ノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを反応させてグリシジルエーテル化したノボラック型エポキシ樹脂、例えばフェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、p−t−ブチルフェノールノボラック型等のエポキシ樹脂、また、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等がある。さらに、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、シクロペンテンオキサイド基等を有する環式脂肪族エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルーpーアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、ジグリシジルトリブロムアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン系樹脂;ヒダントイン環をグリシジル化したヒダントイン型エポキシ樹脂;トリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート;ビキシレノール型又はビフェノール型のエポキシ樹脂;側鎖にグリシジル基を有する共重合体等があるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は前記液状カリックスアレーン誘導体100重量部に対して100重量部以下の割合が適当である。
【0021】
また、アミン化合物としては、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン、4,4´,4´´−トリアミノトリフェニルメタン、4,4´,4´´−トリアミノトリフェニルエタン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン、o−,m−,p−フェニレンジアミン、三フッ化ホウ素−アミン・コンプレックス(錯体)、ジシアンジアミド及びその誘導体、有機酸ヒドラジッド、ジアミノマレオニトリル、メラミン及びその誘導体、アミンイミド、ポリアミンの塩等が挙げられる。また、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体や、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類などを用いることもできる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し一般に0.1〜1.1モルの範囲が適当である。
【0022】
さらに、本発明の硬化性組成物には、光反応性や熱硬化反応性を損わない範囲で、さらに必要に応じて硫酸バリウム、酸化珪素、タルク、クレー、炭酸カルシウムなどの公知慣用の充填剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知慣用の着色用顔料、消泡剤、密着性付与剤、レベリング剤などの各種添加剤類を加えてもよい。
【0023】
前記したような成分を配合して調製された組成物は、これを基材上に適当な方法で塗布し、光照射及び/又は加熱によって硬化せしめる。光照射の光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどの工業的に利用し得る光源や、レーザー光線、電子線、X線などの公知の活性光線のいずれも用いることができる。また、照射時間は、光源の光の強さ等により変わるが、一般には0.5秒〜60分間が適当である。
また、光照射後、硬化性組成物を約80〜200℃、好ましくは約100〜160℃にさらに加熱することにより、短時間でスムーズに加熱硬化が行われ、耐熱性、寸法安定性、密着性、硬度等の硬化特性に優れた硬化物が得られる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。
【0025】
参考合成例1(原料合成)
p−クレゾール432gをキシレン3リットルに溶解させ、パラホルムアルデヒド227gを加え、さらに10N水酸化カリウム水溶液を10ml加えた。これを加熱・還流させて7時間反応させ、析出した固体を濾取した。この固体をアセトン、メタノール、水の順に洗浄、乾燥してp−メチルカリックスアレーン346g(収率73%)を得た。
得られた生成物を飛行時間型質量分析(TOF−MS)で測定した結果、クレゾールとメチレンの繰り返し単位が6(n=6)のものと、少量の7及び8(n=7及び8)に相当するピークが確認された。本生成物の赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)及び水素核磁気共鳴吸収スペクトル( 1H−NMRスペクトル)データを以下に示す。
IR(KBr):3,272cm-1(νOH)
1H−NMR(200MHz、溶媒DMSO−d6 、内部標準TMS):
δ(ppm)=1.80〜2.28(3.0H,Ar−CH3 )
3.60〜4.08及び4.40〜4.72(2.1H,Ar−CH2 )
6.56〜7.22(2H,ArH)
8.08〜8.88(0.9H,OH)
【0026】
参考合成例2(p−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物(平均2.5モル付加物)の合成)
攪拌装置、温度計、滴下ロート、及び還流冷却管を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、参考合成例1で得られたp−メチルカリックスアレーン36g、10N水酸化カリウム水溶液150ml、テトラブチルアンモニウムブロミド4.8g、及びジエチレングリコールジメチルエーテル(商品名ジグライム)300mlを入れ、加熱、攪拌しながら90℃でエチレンクロロヒドリン120.8gを少量ずつ30分かけて滴下した。さらに90℃で5時間反応させた後、室温まで冷却し、反応液を酢酸エチル500mlで抽出した。酢酸エチル抽出層を200mlの20%食塩水で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去させてp−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物58gを得た。このものの水酸基価を常法により測定したところ244mgKOH/gであった。このことから、p−メチルカリックスアレーンのフェノール性水酸基1モル当り平均2.5モルのポリオキシエチレン基が付加したことがわかる。
【0027】
参考合成例3(p−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物(平均6.8モル付加物)の合成)
参考合成例2と同様の装置を取り付けた3リットルの四つ口フラスコに、参考合成例1で得られたp−メチルカリックスアレーン60g、10N水酸化カリウム水溶液750ml、テトラブチルアンモニウムブロミド8.1g、及びジグライム1,000mlを入れ、加熱、攪拌しながら90℃でエチレンクロロヒドリン603.8gを少量ずつ1時間かけて滴下した。さらに95℃で8時間反応させた後、室温まで冷却し、反応液を酢酸エチル1,000mlで抽出した。酢酸エチル抽出層を400mlの20%食塩水で2回洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下に留去させてp−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物210gを得た。このものの水酸基価を常法により測定したところ134mgKOH/gであった。このことから、p−メチルカリックスアレーンのフェノール性水酸基1モル当り平均6.8モルのポリオキシエチレン基が付加したことがわかる。
【0028】
実施例1(p−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物のアクリル酸エステル(平均2.5モル付加物)の合成)
攪拌装置、温度計、空気吹き込み用の毛細管、及びディーンシュターク検水管を取り付けた四つ口フラスコに、参考合成例2で得られたp−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物(水酸基価244mgKOH/g)50g、アクリル酸34.6g、p−トルエンスルホン酸2.3g、ヒドロキノン0.17g、及びトルエン300mlを入れ、空気を吹き込みながら加熱し、トルエンを還流させてエステル化による生成水を系内から除きながら6時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、10%炭酸ナトリウム水溶液50mlで2回洗浄し、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、トルエンを留去することにより、ペースト状の液体46gを得た(収率67%)。
得られたp−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物のアクリル酸エステル(以下、MeCA2.5EOAと略称する)の25℃における粘度は17.5Pa・s、屈折率は1.557であり、熱重量分析(TGA)における分解開始温度は382℃であった。
MeCA2.5EOAのIR及び 1H−NMRスペクトルによる解析データを以下に示す。また、構造式を下記の式(2)に示す。
IR(KBr):1,724cm-1(νC=O)、
1,635cm-1(νC=C,ビニル)
1H−NMR(400MHz、CDCl3 、TMS):
δ(ppm)=1.60〜2.60(3.0H,CH3 −Ar)
3.35〜4.45(12.0H,Ar−CH2 −,−OCH2 CH2 O−)
5.65〜5.88(1.0H,Hb )
6.05〜6.20(1.0H,Ha )
6.25〜6.50(1.0H,Hc )
6.50〜6.95(2.0H,ArH)
【0029】
実施例2(p−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物のアクリル酸エステル(平均6.8モル付加物)の合成)
実施例1と同様の反応装置に、参考合成例3で得られたp−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物(水酸基価134mgKOH/g)110g、アクリル酸41.2g、p−トルエンスルホン酸2.7g、ヒドロキノン0.30g、及びトルエン300mlを入れ、空気を吹き込みながら加熱し、トルエンを還流させてエステル化による生成水を系内から除きながら8時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液150mlで2回洗浄し、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、トルエンを留去することにより、ペースト状の液体118gを得た(収率87%)。
得られたp−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物のアクリル酸エステル(以下、MeCA6.8EOAと略称する)の25℃における粘度は7,590mPa・s、屈折率は1.518であり、熱重量分析(TGA)における分解開始温度は353℃であった。MeCA6.8EOAのIR及び 1H−NMRスペクトルによる解析データを以下に示す。また、構造式を下記の式(2)に示す。
IR(KBr):1,723cm-1(νC=O)、
1,634cm-1(νC=C,ビニル)
1H−NMR(400MHz、CDCl3 、TMS):
δ(ppm)=1.62〜2.28(3.0H,CH3 −Ar)
3.25〜4.33(29.2H,Ar−CH2 −,−OCH2 CH2 O−)
5.67〜5.85(1.0H,Hb )
6.10〜6.19(1.0H,Ha )
6.35〜6.50(1.0H,Hc )
6.50〜6.94(2.0H,ArH)
【0030】
【化4】
【0031】
実施例3(p−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物のアクリル酸エステル(平均8.3モル付加物)の合成)
参考合成例2と同様にして合成したp−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物(水酸基価116mgKOH/g、平均8.3モル付加物)98g、アクリル酸72g、p−トルエンスルホン酸3.8g、ヒドロキノン0.34g、及びトルエン500mlを用いる以外、実施例1と同様に反応させて対応するアクリル酸エステル90gを得た。
得られたp−メチルカリックスアレーンのポリオキシエチレン変成物のアクリル酸エステル(以下、MeCA8.3EOAと略称する)の粘度及びIRデータを以下に示す。
粘度(25℃):1,500mPa・s
IR(KBr):1,724cm-1(νC=0)1,634cm-1(νC=C,ビニル)
【0032】
実施例4(p−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物のアクリル酸エステル(平均3モル付加物)の合成)
参考合成例2と同様にして合成したp−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物(水酸基価191mgKOH/g、平均3モル付加物)98g、アクリル酸36g、p−トルエンスルホン酸6.3g、ヒドロキノン0.27g、及びトルエン340mlを用いる以外、実施例1と同様に反応させて対応するアクリル酸エステル97gを得た。
得られたp−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物のアクリル酸エステル(以下、MeCA3POAと略称する)の粘度、分解開始温度及びIRデータを以下に示す。
粘度(25℃):106Pa・s
分解開始温度(TGA):396℃
IR(KBr):1,724cm-1(νC=0)1,638cm-1(νC=C,ビニル)
【0033】
実施例5(p−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物のメタクリル酸エステル(平均3モル付加物)の合成)
参考合成例2と同様にして合成したp−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物(水酸基価191mgKOH/g、平均3モル付加物)57g、メタクリル酸25g、p−トルエンスルホン酸4.35g、ヒドロキノン0.16g、及びトルエン400mlを用いる以外、実施例1と同様に反応させて対応するメタクリル酸エステル61gを得た。
得られたp−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物のメタクリル酸エステル(以下、MeCA3POMAと略称する)の粘度及びIRデータを以下に示す。
粘度(40℃):25Pa・s
IR(KBr):1,717cm-1(νC=0)1,638cm-1(νC=C,ビニル)
【0034】
実施例6(p−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物のアクリル酸エステル(平均6モル付加物)の合成)
参考合成例2と同様にして合成したp−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物(水酸基価120mgKOH/g、平均6モル付加物)130g、アクリル酸30g、p−トルエンスルホン酸5.3g、ヒドロキノン0.24g、及びトルエン300mlを用いる以外、実施例1と同様に反応させて対応するアクリル酸エステル125gを得た。
得られたp−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物のアクリル酸エステル(以下、MeCA6POAと略称する)の粘度及びIRデータを以下に示す。
粘度(25℃):5,700mPa・s
IR(KBr):1,723cm-1(νC=0)1,636cm-1(νC=C,ビニル)
【0035】
実施例7(p−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物のメタクリル酸エステル(平均6モル付加物)の合成)
参考合成例2と同様にして合成したp−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物(水酸基価120mgKOH/g、平均6モル付加物)130g、メタクリル酸48g、p−トルエンスルホン酸8g、ヒドロキノン0.36g、及びトルエン300mlを用いる以外、実施例1と同様に反応させて対応するメタクリル酸エステル134gを得た。
得られたp−メチルカリックスアレーンのポリオキシプロピレン変成物のメタクリル酸エステル(以下、MeCA6POMAと略称する)の粘度及びIRデータを以下に示す。
粘度(40℃):5,000mPa・s
IR(KBr):1,720cm-1(νC=0)1,637cm-1(νC=C,ビニル)
【0036】
前記実施例1〜7で合成した各種液状カリックスアレーン誘導体の溶解性を表1に示す。
また、比較のために各種粉体カリックスアレーン誘導体の溶解性も表1に併せて示す。
なお、溶解性は各種カリックスアレーン誘導体と各種溶媒を1:1(重量比)の割合で混合して評価した。
【表1】
【0037】
上記表1中、MeCAAはp−メチルカリックスアレーンアクリレートを、MeCAMAはp−メチルカリックスアレーンメタクリレートを、MeCAMOIはp−メチルカリックスアレーンのメタクリロキシエチルイソシアネート反応物を意味する。これらの構造を下記式(3)に示す。
【化5】
上記表1に示されるように、本発明の液状カリックスアレーン誘導体は各種溶媒に対する良好な溶解性を示した。
【0038】
実施例8(光硬化性樹脂組成物)
前記実施例1及び2で合成したMeCA2.5EOA、MeCA6.8EOA、及び比較例としてペンタエリスリトールのヒドロキシエチル化物のテトラアクリレート(NKエステル ATM−4E、新中村化学工業(株)製)、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート(NKエステル AMP−60G、新中村化学工業(株)製)に対し、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバガイギー社製)をそれぞれ3重量部配合したものをポリカーボネート板に膜厚約60μmに塗布し、窒素雰囲気下に紫外線照射を行い、硬化させた塗膜の物性を評価した。
なお、この時照射した紫外線の照射量は200mJであった。また、密着性は、塗膜に碁盤目状に切れ目を付け、セロハンテープを張り付けて剥がすことにより剥離する塗膜片と基板に残る塗膜片の比より求めた。その結果を表2に示す。
【表2】
表2に示す結果から、MeCA2.5EOA及びMeCA6.8EOAは、光硬化性が従来の光重合性モノマーに劣ることはなく、かつ密着性に優れた硬化塗膜を与えることが判る。
【0039】
実施例9(光硬化性樹脂組成物)
前記実施例4及び6で合成したMeCA3POA、MeCA6POA、及び比較例としてペンタエリスリトールのポリオキシプロピレン変成物のテトラアクリレート(PE10POAと略称する)に対し、光重合開始剤としてダロキュア1173(メルク社製)及びイルガキュア907をそれぞれ3重量部(計6重量部)配合した物を、ポリカーボネート板にスピンコーター(3,000rpm×30秒)で塗布し、空気中で紫外線照射(400mJ)して硬化させた塗膜の物性を評価した。その結果を表3に示す。
【表3】
一般にアクリロイル当量が大きいものほど硬化性は低下する傾向にあるが、表3に示す結果から、本発明のカリックスアレーンのポリオキシアルキレン変成物のアクリレートはアクリロイル当量が比較的大きいにも拘らず優れた光硬化性を示すことが判る。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るカリックスアレーン誘導体は、液状であるため取扱い易く、コーティング材料の調製や成膜が容易であり、またp−アルキルカリックスアレーンに重合性不飽和二重結合を有する基である(メタ)アクリロイル基をポリオキシアルキレン基を介して導入したものであるため、熱硬化性及び光硬化性を有すると共に、p−アルキルカリックスアレーンの耐熱性がさらに改善され、極めて高い耐熱性を有する。また、(メタ)アクリレート系樹脂に比べて硬化の際の体積収縮が極めて少なく、種々の基材に対して接着性が優れている。また、このような硬化性の液状カリックスアレーン誘導体を熱もしくは光重合開始剤と共に含有する本発明に係る硬化性樹脂組成物は、加熱又は光の照射により速やかに重合し、極めて高い耐熱性、各種基材に対する接着性、硬度、耐薬品性、電気絶縁性等の諸特性に優れた硬化物が得られる。従って、塗料、印刷インキ、ワニス、接着剤、表面被覆剤などとして、あるいは印刷版、プリント基板等のエッチングレジスト、めっきレジスト、ソルダーレジスト等の各種レジスト膜や多層回路作成の際の層間絶縁膜の形成に有利に用いることができる。
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