JP3891336B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、相溶性、粘度安定性に優れ、加熱溶融時においてもブリードを生ずることのない軟化剤、及び該軟化剤を含有してなる樹脂組成物、該軟化剤を含有してなる成形品、該樹脂組成物を用いてなる成形品に関する。更に詳しくは、シート、床材、人形、玩具、自動車内装材等の分野で広く利用が可能な熱老化性に優れた軟化剤、及び該軟化剤を含有してなる(メタ)アクリル樹脂組成物、該軟化剤を含有してなる成形品、該樹脂組成物を用いてなる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に塩化ビニル樹脂に代表されるハロゲン化ビニル樹脂又はその共重合体は、そのままでは硬く脆いものであるため、これに適当な可塑剤及びその他添加剤を適量添加して軟質ハロゲン化ビニル樹脂組成物として、各種成形物用に使用されている。特に軟質塩化ビニル樹脂系組成物は、可塑剤の添加量を変化させることで、要求される柔らかさを有する成形物が容易に得られることから、例えば、シートや床材、人形、玩具、自動車内装材等の分野で広く利用されてきた。しかし、近年、環境問題から非ハロゲン系樹脂への転換が求められてきている。
【0003】
(メタ)アクリル系樹脂に配合する軟化剤としては、従来より塩化ビニル樹脂に用いられているフタル酸エステル系可塑剤を使用する方法(特公昭62−3868号公報、特公平4−24378号公報など)が提案されている。しかしながら、上記提案のフタル酸エステル系可塑剤では、結合アルキル基の炭素数が少ないもの(例えば、フタル酸ジブチル(DBP))では、初期粘度が低く、(メタ)アクリル樹脂との相溶性は良いが、粘度安定性が極めて悪く、プラスチゾル調製後1〜2日後には固化してしまい、プラスチゾルとして成形、加工ができなくなり、また、結合アルキル基の炭素数が多いもの(例えば、フタル酸ジオクチル(DOP))は、粘度安定性は比較的良いが、(メタ)アクリル樹脂との相溶性が極めて悪く、必要性能を得るのに十分な量を配合できないという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、特に(メタ)アクリル樹脂との相溶性、粘度安定性に優れ、加熱溶融した後でもブリード等のない軟化剤と、(メタ)アクリル系樹脂とを含有する樹脂組成物、及びそれを成形して得られる成形品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、炭素数2〜3の脂肪族グリコール(A)と、脂肪族ジカルボン酸(B)、及び脂肪族アルコール(C)及び/又は脂肪族モノカルボン酸(D)とのエステル化反応により得られることを特徴とする軟化剤が、特に(メタ)アクリル樹脂との相溶性、粘度安定性に優れ、加熱溶融した後でもブリード等のない軟化剤であり、該軟化剤を配合した樹脂組成物、該軟化剤を含有してなる成形品、該樹脂組成物を用いてなる成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、炭素数2〜3の脂肪族グリコール(A)と脂肪族ジカルボン酸(B)と脂肪族アルコール(C)及び/または脂肪族モノカルボン酸(D)とのエステル化反応により得られる、数平均分子量が700〜1300の範囲の軟化剤、及び、(メタ)アクリル系樹脂を含有してなることを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0009】
更に、本発明は、前記樹脂組成物からなることを特徴とする成形品に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施するにあたり、必要な事項を以下に述べる。
【0011】
本発明の軟化剤とは、炭素数2〜3の脂肪族グリコール(A)と、脂肪族ジカルボン酸(B)、及び脂肪族アルコール(C)及び/又は脂肪族モノカルボン酸(D)とのエステル化反応により得られる。
【0012】
本発明で使用する炭素数2〜3の脂肪族グリコール成分(A)とは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3プロパンジオールが例示でき、これらは単独または二種以上を混合して使用してもよい。
【0013】
また、脂肪族ジカルボン酸(B)とは、炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸であり、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸等が挙げられ、中でもアジピン酸が好ましい。これらは単独または二種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
脂肪族アルコール(C)とは、炭素数が4〜13の脂肪族アルコールであり、例えば、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、トリデカノール等が挙げられる。これらの中でも、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコールが好ましい。これらは単独または二種以上を混合して使用してもよい。
【0015】
脂肪族モノカルボン酸(D)としては、炭素数が4〜13(但し、カルボキシル基の炭素数は含まない)の脂肪族モノカルボン酸であり、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸等が挙げられる。これらは単独または二種以上を混合して使用してもよい。
【0016】
本発明の軟化剤は、上述の炭素数2〜3の脂肪族グリコール(A)と脂肪族ジカルボン酸(B)及び脂肪族アルコール(C)及び/又は脂肪族モノカルボン酸(D)から、一般公知のエステル化反応より得られるものである。
【0017】
本発明の軟化剤の分子量は、数平均分子量で、好ましくは500〜1500であり、より好ましくは700〜1300の範囲である。数平均分子量がかかる範囲にあるならば、特に(メタ)アクリル系樹脂との相溶性に優れ、加熱減量も低減され、好ましい。
【0018】
本発明の軟化剤を添加する(メタ)アクリル系樹脂とは、好ましくは、メタクリル酸メチルを50重量%以上含有する共重合体である。メタクリル酸メチルを主成分としたポリマーであって、メタクリル酸メチル単量体の単独重合体、又はメタクリル酸メチル単量体に酢酸ビニル等のビニルエステル、スチレン等の芳香族ビニル、アクリロニトリル等のシアン化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル等のアクリル酸やメタクリル酸及びそのアルキルエステル、ジアクリル酸エタン、ジメタクリル酸ブタン、ジメタクリル酸ヘキサン等のジアクリル酸エステル又はジメタクリル酸エステル、等の不飽和化合物を共重合成分としたものである。
【0019】
該(メタ)アクリル系樹脂の重合方法は、乳化重合法でも懸濁重合法でも、また、ホモジナイザー如き強力な分散力を併用して合成されたものでもよく、特に限定はしない。
【0020】
本発明で使用する(メタ)アクリル系樹脂の分子量は、重量平均分子量(以後、Mwと云う)で、好ましくは30万以上、より好ましくは50万〜300万である。(メタ)アクリル系樹脂のMwがかかる範囲であれば、相溶性、成形加工性に優れ、高温での軟化剤との融解速度が低下せず生産性が低下することもなく、好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは平均粒子径1mm以下の微粒子、より好ましくは0.1〜5μmの一次粒子が凝集してできた10〜100μmの粉粒状の(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の粒子径がかかる範囲であれば、軟化剤を均一に分散し易く、高温にしても軟化剤の融解速度が低下せず生産性が低下することもなく、好ましい。
【0022】
本発明の樹脂組成物は、少なくとも軟化剤と(メタ)アクリル系樹脂を含有してなる。
【0023】
本発明の樹脂組成物において、(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して、軟化剤を好ましくは30〜150重量部、より好ましくは50〜100重量部配合する。
【0024】
本発明の樹脂組成物には、耐ブリード性を損なわない範囲で可塑剤を併用してもよい。併用する可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、燐酸エステル、アジピン酸エステル、エポキシ化エステル、ポリエステルなどの可塑剤が挙げられる。
【0025】
また、本発明の樹脂組成物には必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、充填剤、顔料、加工助剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、その他の添加剤等を配合することができる。
【0026】
本発明により、軟化剤と(メタ)アクリル系樹脂との相溶性に優れ、また粘度安定性、成形加工性に優れ、加熱溶融した後でもブリード等のない樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
本発明の成形品は、前記の本発明の軟化剤を含有することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の成形品は、前記の本発明の樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0029】
本発明の成形品としては、例えば、シート、床材、人形、玩具、自動車内装材等が挙げられる。
【0030】
尚、本発明の態様は、上述したように、炭素数2〜3の脂肪族グリコール(A)と、脂肪族ジカルボン酸(B)、及び脂肪族アルコール(C)及び/又は脂肪族モノカルボン酸(D)とのエステル化反応により得られることを特徴とする軟化剤にかかるものである。
【0031】
本発明の他の態様の一つとしては、軟化剤を構成する脂肪族ジカルボン酸(B)の炭素数が4〜8である上記の軟化剤にかかるものである。
【0032】
本発明の他の態様の一つとしては、軟化剤を構成する脂肪族アルコール(C)及び/又は脂肪族モノカルボン酸(D)の炭素数が4〜13(但し、カルボキシル基の炭素数は含まない)である上記の各軟化剤にかかるものである。
【0033】
本発明の他の態様の一つとしては、数平均分子量が500〜1500である上記の各軟化剤にかかるものである。
【0034】
本発明の他の態様の一つとしては、少なくとも、上記の軟化剤と(メタ)アクリル系樹脂を含有してなることを特徴とする樹脂組成物にかかるものである。
【0035】
本発明の他の態様の一つとしては、上記の軟化剤を含有することを特徴とする成形品にかかるものである。
【0036】
本発明の他の態様の一つとしては、上記の樹脂組成物からなることを特徴とする成形品にかかるものである。
【0037】
【実施例】
以下に、本発明を、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、以下において、部および%は特に断わりのない限りすべて重量基準であるものとする。又、各種物性値は以下の方法に従い測定した。
【0038】
[実施例1〜4]
表1に示すように、グリコール成分(A)と、ジカルボン酸成分(B)を、温度計、撹拌機、還流冷却器及びデカンターを付した内容積2リットルの4ッ口フラスコに仕込み、窒素気流下で撹拌しながら加熱し、反応液温度を220℃まで昇温し1時間反応後、200℃に降温してアルコール成分(C)を仕込み、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.00028モル添加し、230℃まで再度昇温反応後、過剰のアルコール成分(C)を減圧留去して本発明の軟化剤A、B、C及びDを得た。
【0039】
[実施例5]
表1に示すように、グリコール成分(A)と、ジカルボン酸成分(B)を、温度計、攪拌機、還流冷却器及びデカンターを付した内容積2リットルの4ッ口フラスコに仕込み、窒素気流下で撹拌しながら加熱し、反応液温度を220℃まで昇温し1時間反応後、200℃に降温してモノカルボン酸成分(D)を仕込み、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.00028モル添加し、230℃まで再度昇温反応後、過剰のモノカルボン酸成分(D)を減圧留去させ本発明の軟化剤Eを得た。
【0040】
上記のようにして得られた本発明の軟化剤A、B、C、D及びEについて、性能評価を行うために重量平均分子量(Mw)が100万であり平均粒子径が1μmであるメタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル=7/3共重合樹脂100重量部に対して、得られた軟化剤80重量部を配合したプラスチゾル組成物を、初期粘度測定、粘度安定性試験、シート化試験および相溶性試験を行い、結果を表1に示した。
【0041】
尚、表1において、EGはエチレングリコール、PGはプロピレングリコール、AAはアジピン酸、C8は2−エチルヘキシルアルコール、C9はイソノニルアルコール、C10はデシルアルコール、OAは2−エチルヘキサン酸の略称である。
【0042】
[比較例1]
表2に示すように、ジカルボン酸成分(B)とアルコール成分(C)、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.0006モル添加し、温度計、撹拌機、還流冷却器及びデカンターを付した内容積2リットルの4ッ口フラスコに仕込み、窒素気流下で撹拌しながら加熱し、230℃まで昇温し反応後、過剰のアルコール成分(C)を減圧留去して、比較例1として軟化剤Fを得た。
【0043】
[比較例2]
表2に示すように、グリコール成分(A)と、ジカルボン酸成分(B)を、温度計、撹拌機、還流冷却器及びデカンターを付した内容積2リットルの4ッ口フラスコに仕込み、窒素気流下で撹拌しながら加熱し、反応液温度を220℃まで昇温し1時間反応後、200℃に降温してアルコール成分(C)を仕込み、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.00025モル添加し、230℃まで再度昇温し反応後、過剰のアルコール成分(C)を減圧留去して、比較例2として軟化剤Gを得た。
【0044】
[比較例3]及び[比較例4]
比較例3として市販のフタル酸ジブチル(DBP)、比較例4としてフタル酸ジオクチル(DOP)を使用して、以下の評価を行った。
【0045】
実施例、比較例の試験方法は、以下の通りである。
【0046】
[粘度安定性試験方法]
軟化剤とアクリル樹脂を、室温で10分間攪拌混練してアクリル樹脂系プラスチゾル組成物を調製し、200mlビーカーに移し、25℃恒温室に2時間放置後、7日間放置後の安定性をビーカーを傾けた時の流動性を下記の基準に従い目視により評価した。
○:流動性あり。
△:ほとんど流動性なし。
×:固化していた。
【0047】
[シート化試験方法]
プラスチゾル組成物をガラス板上に1mmの厚さに流延し、150℃で10分間の条件で溶融ゲル化させてシートを形成させ、冷却後、得られたシートをガラス板より取り外し、その強伸度を測定し、以下の基準に従い評価した。
○:充分な強度と伸びを有するシートが得られた。
△:シートは得られたが、強度、伸び共に不充分であった。
×:シートが得られなかった。
【0048】
[相溶性試験方法]
シート化試験で作成したシートの一部を20℃、相対湿度65%の恒温恒湿室に放置し、15日後にシート表面への可塑剤のブリードの程度を目視観察により、以下の基準に従い評価した。
○:ブリードしていなかった。
△:かすかにブリードしていた。
×:激しくブリードしていた。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【発明の効果】
本発明の軟化剤は、特に(メタ)アクリル系樹脂との相溶性に優れ、加熱溶融した後でもブリード等のない軟質(メタ)アクリル樹脂組成物が得られる。本発明の軟化剤、及び樹脂組成物は、例えば、シート、床材、人形、玩具、自動車内装材等の成形品に適用可能である。また、本発明の樹脂組成物、及び成形品は塩化ビニル樹脂を使用しないので、近年、問題となっている環境問題にも適応するものである。
Claims (4)
- 炭素数2〜3の脂肪族グリコール(A)と脂肪族ジカルボン酸(B)と脂肪族アルコール(C)及び/または脂肪族モノカルボン酸(D)とのエステル化反応により得られる、数平均分子量が700〜1300の範囲の軟化剤、及び、(メタ)アクリル系樹脂を含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
- 前記軟化剤を構成する脂肪族ジカルボン酸(B)の炭素数が4〜8である、請求項1記載の樹脂組成物。
- 前記軟化剤を構成する前記脂肪族アルコール(C)または脂肪族モノカルボン酸(D)の炭素数が4〜13(但し、カルボキシル基の炭素数は含まない)である、請求項1または2記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる成形品。
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