JP6320170B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナー、及び該トナーに用いられる結着樹脂に関する。
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した電子写真用のトナーの開発が要求されている。
高画質化及び高速化に対応して、特に熱特性を改善するために、トナー用結着樹脂として、組成の調整が容易であるポリエステル樹脂が汎用されており、ポリエステル樹脂の原料として様々なアルコール成分とカルボン酸成分を組み合わせて用いる試みがなされている。
例えば、特許文献1には、低温定着性、粉砕性、保存性の向上と紙の巻き付き防止を目的として、炭素数10〜24の1価の脂肪族カルボン酸化合物及び炭素数10〜24の1価の脂肪族アルコールからなる群より選ばれた少なくとも1種の1価の脂肪族化合物を0.1〜10モル%含有したモノマー混合物を縮重合させて得られた結晶性ポリエステルからなるトナー用結着樹脂が開示されている。
また、特許文献2には、定着温度幅の増大、耐ブロッキング性、帯電特性の向上を目的として、カルボン酸成分(x)とアルコール成分(y)とが重縮合されてなる1種以上のポリエステル樹脂で構成されるポリエステル樹脂(P)を含有するトナーバインダーであって、(P)の少なくとも1種(P1)がアルコール成分(y)中に炭素数2〜4の脂肪族ジオール(y1)を50〜95モル%含有し、(P)が特定の式を満たすトナーバインダーが開示されている。
特許文献3には、低温定着性、耐オフセット性、高温高湿下での帯電安定性、保存性の向上を目的として、結着樹脂及び着色剤を含有してなるトナーであって、前記結着樹脂が、アルコール成分とカルボン酸成分を重縮合させて得られた、軟化点Tm(A)が120〜160℃のポリエステル(A)と、軟化点Tm(B)が80℃以上120℃未満のポリエステル(B)とを含有してなり、ポリエステル(A)及び/又は(B)が、1,2-プロパンジオールを2価のアルコール成分中65モル%以上含有した、実質的に脂肪族アルコールのみからなるアルコール成分と、カルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルであるトナーが開示されている。
特開2003−337443号公報 国際公開第2012/46445号 特開2007−155978号公報
電子写真法においては、環境負荷低減の観点から、より一層優れた低温定着性を有するトナーの開発が求められており、特に、高速印刷が可能な印刷機では、定着機の温度に対してトナーに伝導するエネルギー量が少なくなるため、さらなる低温定着性の向上が求められる。一方、低温定着性を向上させるためには、樹脂の軟化点やガラス転移温度を低下させる方法が用いられるが、樹脂の物性をこのように変化させると、トナーの高温での保存性が低下する。さらに湿度の高い環境においては、樹脂が吸湿するため、より高い保存安定性が必要となり、これら低温定着性と高湿下での保存性を両立するのは困難であるという問題がある。
従って、低温定着性と高湿下での保存性に優れるトナーが求められている。
本発明は、得られるトナーの低温定着性と高湿下での保存性に優れる静電荷像現像用トナー、及び該トナーに用いられる結着樹脂に関する。
本発明者らは、得られるトナーの低温定着性と高湿下での保存性に影響する要因は、トナーに含有される結着樹脂中の分子構造によるものと考えて検討を行った。その結果、結着樹脂を、特定の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、特定の分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得ることで、得られるトナーに優れた低温定着性と高湿下での保存性を発現させることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、
〔1〕 炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物を含有するカルボン酸成分を重縮合して得られるポリエステル系樹脂を含有する、静電荷像現像用トナー、並びに
〔2〕 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸を含有するカルボン酸成分と、炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分を重縮合して得られるポリエステル系樹脂を含有する、トナー用結着樹脂
に関する。
本発明の静電荷像現像用トナーは、低温定着性と高湿下での保存性において優れた効果を奏するものである。
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂として、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する短鎖の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、分岐アルキル基を有する長鎖の1価の脂肪酸化合物を含有するカルボン酸成分を重縮合して得られるポリエステル系樹脂を含有する。
本発明のトナーが、低温定着性と高湿下での保存性に優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は、前記のごとく、アルコール成分は、いわゆる第二級水酸基を有する短鎖の脂肪族ジオールを含有し、カルボン酸成分は、分岐アルキル基を有する長鎖の1価の脂肪酸化合物を含有する。
第二級水酸基を有するジオールにより、樹脂分子鎖がリジッドになり、さらに分岐を有する1価の脂肪酸化合物は、分岐による剛直性を有し、2価以上の酸に比べ、分子鎖の末端に存在しやすいため、トナーを作製した際には、脂肪酸化合物による疎水基がトナー表面に存在するものと考えられる。これによって、得られるトナーの高湿下での保存性が向上するものと考えられる。
一方、分岐を有する脂肪酸化合物が存在するトナー表面は定着時の温度で融解しやすい上に、第二級水酸基を有する短鎖の脂肪族ジオールはエステル基濃度が高く、エステル部と紙との水素結合によって、定着性が向上し、得られるトナーの低温定着性が向上するものと考えられる。
本発明のトナーが結着樹脂として含有するポリエステル系樹脂は、炭素数が3以上5以下、好ましくは3以上4以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物を含有するカルボン酸成分を重縮合して得られる。
炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとしては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール等が挙げられ、なかでも得られるトナーの低温定着性と保存性、耐久性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3-ブタンジオールが好ましく、1,2-プロパンジオールがより好ましい。
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、ポリエステル樹脂部分のアルコール成分中、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、α,ω−脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物の炭素数は、高湿下での保存性の観点から、8以上であり、16以上が好ましく、18以上がより好ましい。また、反応性とポリエステル樹脂の分子量を高める観点から、20以下である。なお、本発明において、脂肪酸化合物を含め、カルボン酸化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。ただし、アルキルエステル部のアルキル基の炭素数は、前記炭素数には含めない。
分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物の分岐の数は、高湿下での保存性の観点から、3以上が好ましく、5以上がより好ましい。また、得られるトナーの低温定着性を向上させる観点から、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。
なお、分岐の数は、主鎖に対する分岐の数だけでなく、分岐鎖がさらに分岐を有する場合は、その分岐の数も含める。
炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物としては、式(Ia):
Figure 0006320170
で表される2-ヘプチルウンデカン酸、式(Ib):
Figure 0006320170
で表される2-(4,4-ジメチル-2-ペンチル)-5,7,7-トリメチル-n-オクタン酸等のイソステアリン酸、式(II):
Figure 0006320170
で表される2-ヘキシルデカン酸等のイソパルミチン酸、式(III):
Figure 0006320170
で表される2,2-ジメチルヘキサン酸、式(IV):
Figure 0006320170
で表される2-エチルヘキサン酸等が挙げられ、これらの中ではイソステアリン酸が好ましい。
分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、高湿下での保存性の観点から、2モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。また、反応性とポリエステル樹脂の分子量を高める観点から、40モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、20モル%以下がさらに好ましく、15モル%以下がさらに好ましい。
分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、高湿下での保存性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、反応性とポリエステル樹脂の分子量を高める観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
カルボン酸成分は、得られるトナーの帯電性と高湿下での保存性の観点から、さらに、芳香族ジカルボン酸化合物を含有していることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。これらの中では、帯電性の観点から、テレフタル酸及びイソフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物を含めたカルボン酸成分中、80モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましい。また、アルコール成分との反応性を高め、ポリエステル樹脂を効率的に得る観点から、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましい。
分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物及び芳香族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸化合物等が挙げられる。
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合反応時の温度は、反応性の観点から、200℃以上が好ましい。また、熱分解性の観点から、250℃以下が好ましい。
重縮合反応は、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下で行ってもよい。エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒等が挙げられる。スズ触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等が挙げられるが、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、2-エチルヘキサン酸錫(II)等のSn−C結合を有していない錫(II)化合物が好ましい。チタン触媒としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
なお、本発明において、ポリエステル系樹脂とは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルを含む。変性されたポリエステルとしては、例えば、ポリエステルがウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、及びポリエステル成分と付加重合系樹脂成分を含む2種以上の樹脂成分を有する複合樹脂等が挙げられる。
本発明において、ポリエステル系樹脂は、得られるトナーの低温定着性を向上させる観点から、線状樹脂であることが好ましい。なお、線状樹脂とは、ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分とカルボン酸成分のいずれもが、2官能以下の原料モノマーを用いて合成された樹脂のことをいい、3官能以上の原料モノマー量は全ての原料モノマー中、2モル%以下であることが好ましい。
ポリエステル系樹脂の軟化点は、反応性とポリエステル樹脂の分子量を高め、得られるトナーの保存性を向上させる観点から、70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。また、低温定着性の観点から、140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。
ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、得られるトナーの高湿下での保存性を向上させる観点から、25℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。また、得られるトナーの低温定着性を向上させる観点から、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。
ポリエステル系樹脂の数平均分子量は、得られるトナーの高湿下での保存性を向上させる観点から、2000以上が好ましく、2200以上がより好ましい。また、得られるトナーの低温定着性を向上させる観点から、4000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2500以下がさらに好ましい。
ポリエステル系樹脂の酸価は、得られるトナーの帯電性の観点から、3mgKOH/g以上が好ましく、5mgKOH/g以上がより好ましい。また、得られるトナーの高湿下での保存性を向上させる観点から、40mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/g以下がより好ましい。
ポリエステル系樹脂の水酸基価は、得られるトナーの低温定着性を向上させる観点から、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましく、15mgKOH/g以上がさらに好ましい。また、得られるトナーの高湿下での保存性を向上させる観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましい。
ポリエステル系樹脂の酸価と水酸基価の合計は、得られるトナーの帯電性及び低温定着性を向上させる観点から、15mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましい。また、得られるトナーの高湿下での保存性を向上させる観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、25mgKOH/g以下がより好ましい。
本発明のトナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、前記結着樹脂以外の公知の樹脂が併用されていてもよいが、前記のポリエステル系樹脂の含有量は、結着樹脂中、90〜100質量%が好ましく、93〜100質量%がより好ましく、95〜100質量%がさらに好ましい。
本発明のトナーには、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよく、着色剤、離型剤及び荷電制御剤が含有されることが好ましい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、40質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましい。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成社製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業社製)、「TN-105」(保土谷化学工業社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物、例えば「TN105」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。また、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結晶性ポリエステル、非晶質複合樹脂等の結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましく、外添剤としては、無機微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の例は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛が挙げられ、シリカが好ましい。
シリカは、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中ではヘキサメチルジシラザンが好ましい。
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましい。また、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。
外添剤の含有量は、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の静電荷像現像用トナー、及び該トナーに用いられる結着樹脂を開示する。
<1> 炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物を含有するカルボン酸成分を重縮合して得られるポリエステル系樹脂を含有する、静電荷像現像用トナー。
<2> 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物が、分岐を5つ以上有するものである、前記<1>記載の静電荷像現像用トナー。
<3> 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物が、イソステアリン酸である、前記<1>又は<2>記載の静電荷像現像用トナー。
<4> 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物が、2-(4,4-ジメチル-2-ペンチル)-5,7,7-トリメチル-n-オクタン酸である、前記<1>〜<3>いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
<5> 炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの炭素数が、3以上4以下である、前記<1>〜<4>いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
<6> ポリエステル系樹脂の数平均分子量が2000以上4000以下である、前記<1>〜<5>いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
<7> ポリエステル系樹脂の軟化点が70℃以上140℃以下である、前記<1>〜<6>いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
<8> カルボン酸成分が、さらに、芳香族ジカルボン酸化合物を80モル%以上含有する、前記<1>〜<7>いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
<9> 芳香族ジカルボン酸化合物が、テレフタル酸及びイソフタル酸より選ばれる1種以上である、前記<8>記載の静電荷像現像用トナー。
<10> ポリエステル系樹脂が線形樹脂である、前記<1>〜<9>いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
<11> 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物が、カルボン酸成分中、2モル%以上40モル%以下である、前記<1>〜<10>いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
<12> 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物が、カルボン酸成分の合計量中、5質量%以上40質量%以下である、前記<1>〜<11>いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
<13> 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸を含有するカルボン酸成分と、炭素数3以上5以下の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分を重縮合して得られるポリエステル系樹脂を含有する、トナー用結着樹脂。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の数平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、試料をテトラヒドロフランに、25℃で溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー社製)
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔樹脂の水酸基価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
〔外添剤の平均粒子径〕
一次粒子の体積平均粒径を、平均粒子径として下記式より求める。
平均粒径(nm)=6/(ρ×比表面積(m2/g))×1000
式中、ρは外添剤の真比重であり、例えば、シリカの真比重は2.2である。比表面積は、窒素吸着法により求められたBET比表面積である。なお、上記式は、粒径Rの球と仮定して、
比表面積=S×(1/m)
m(粒子の重さ)=4/3×π×(R/2)3×真比重
S(表面積)=4π(R/2)2
から得られる式である。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔樹脂の製造〕
樹脂製造例1〔樹脂1〕
表1に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5時間反応を行った後、220℃まで5℃/時間の速度で昇温を行った。その後220℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、5.3kPaにて残存する原料モノマー(主としてアルコール成分)を留去しながら表1に記載の軟化点まで反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
樹脂製造例2〔樹脂2〜15〕
表1、2に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5時間反応を行った後、220℃まで5℃/時間の速度で昇温を行った。その後220℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、13.3kPaにて表1、2に記載の軟化点まで反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
Figure 0006320170
Figure 0006320170
〔静電荷像現像用トナーの製造〕
実施例1〜8及び比較例1〜7(実施例5〜8は参考例である)
表3に示す結着樹脂100質量部、着色剤「Regal 330R」(キャボット社製、カーボンブラック)5質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社製)1質量部、及び離型剤「三井ハイワックス NP055」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:125℃)2質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度80℃で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ「NAX-50」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:HMDS、体積平均粒子径:30nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
試験例1〔高湿下での保存性〕
220mL容の容器(直径約3cm)にトナー4gを入れ、高温高湿(温度55℃、湿度85%)環境下で60時間放置した。12時間毎にトナー凝集の発生程度を目視にて観察し、以下の評価基準に従って、高湿下での保存性を評価した。結果を表3に示す。
〔評価基準〕
A:84時間後も凝集は認められない。
B:72時間後も凝集は認められないが84時間後では凝集が認められる。
C:60時間後も凝集は認められないが72時間後では凝集が認められる。
D:48時間後で凝集は認められないが60時間後では凝集が認められる。
E:36時間後で凝集は認められないが48時間後では凝集が認められる。
F:24時間後で凝集は認められないが36時間後では凝集が認められる。
G:12時間後で凝集は認められないが24時間後では凝集が認められる。
H:12時間以内に凝集が認められる。
試験例2〔低温定着性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した装置にトナーを実装し、シャープ(株)製の紙[CopyBond SF-70NA(75g/m2)]上に、未定着の状態で印刷物を得た。総定着圧が40kgfになるように調整した定着機(定着速度390mm/sec)を用い、定着ローラーの温度を100℃から240℃へと10℃ずつ順次上昇させながら、各温度で前記未定着状態の印刷物の定着試験を行った。定着した画像に「ユニセフセロハン」(三菱鉛筆社、幅:18mm、JISZ-1522)を貼り付け、30℃に設定した定着ローラーに通過させた後、テープを剥がした。テープを貼る前と剥がした後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(剥離後/貼付前×100)が最初に90%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とした。最低定着温度が低いほど低温定着性が良好である。結果を表3に示す。
Figure 0006320170
以上の結果より、実施例のトナーは、比較例のトナーに比べて、いずれも低温定着性と高湿下での保存性に優れることがわかる。
本発明の静電荷像現像用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。

Claims (8)

  1. 炭素数3の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物を含有するカルボン酸成分を重縮合して得られるポリエステル系樹脂を含有する、静電荷像現像用トナーであって、前記炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物が、分岐を5つ以上有するものである、静電荷像現像用トナー。
  2. 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物が、イソステアリン酸である、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物が、2-(4,4-ジメチル-2-ペンチル)-5,7,7-トリメチル-n-オクタン酸である、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
  4. ポリエステル系樹脂の数平均分子量が2000以上4000以下である、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
  5. カルボン酸成分が、さらに、芳香族ジカルボン酸化合物を80モル%以上含有する、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
  6. ポリエステル系樹脂が線形樹脂である、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
  7. 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物が、カルボン酸成分中、2モル%以上40モル%以下である、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
  8. 炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸を含有するカルボン酸成分と、炭素数3の第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有するアルコール成分を重縮合して得られるポリエステル系樹脂を含有する、トナー用結着樹脂であって、前記炭素数8以上20以下の、分岐アルキル基を有する1価の脂肪酸化合物が、分岐を5つ以上有するものである、トナー用結着樹脂
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