JP3889086B2 - 二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置 - Google Patents

二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フロントフォークにおける懸架スプリングのばね特性を調整する二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車のフロントフォークは、アウタチューブ内にインナチューブが摺動自在に挿通され、これらのアウタチューブ及びインナチューブ内に、懸架スプリング及びダンパ装置が配設されて構成される。アウタチューブ、インナチューブの一方が車体側に保持され、他方が車軸を保持する。このフロントフォークにより、路面からの衝撃が上記懸架スプリングにて吸収され、フロントフォークの伸縮振動が上記ダンパ装置にて抑制される。
【0003】
上述のような自動二輪車のフロントフォークにあっては、懸架スプリングが、2つのばね体を直列配列し、各ばね体の相互に対向する端部が螺合して重ね合されて構成されたものがある(実開平5-81546 号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような懸架スプリングでは、 2本のばね体の重ね合せ部分のばね定数が他の部分のばね定数に比べ大きくなるので、上記 2本のばね体の重ね合せ長(重ね合せ巻数)を変更することにより、懸架スプリングのばね定数を調整できる。ところが、上記公報記載の自動二輪車のフロントフォークでは、懸架スプリングのばね定数を外部から調整する手段が開示されていない。
【0005】
本発明の課題は、上述の事情を考慮してなされたものであり、フロントフォークにおける懸架スプリングのばね定数を外部から容易に変更して調整できる二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、車体に支持される車体側チューブと車軸を支持する車軸側チューブとの間に懸架スプリングが配設され、この懸架スプリングは、2本のばね体が直列に配列され、各ばね体の相互に対向する端部が螺合して重ね合されて構成され、上記懸架スプリングの両端部が一対をなすアッパばね受けとロアばね受けを介して上記両チューブに支持された二輪車等のフロントフォークにおいて、上記車体側チューブの上端部内周にばね定数アジャスタが回転自在に配設され、このばね定数アジャスタとアッパばね受けとの間に2本のアジャストパイプを設け、両アジャストパイプを嵌合し、一方のアジャストパイプの軸方向に形成したスリットと他方のアジャストパイプに形成した凸部を嵌合して両アジャストパイプを一体回転可能に設け、このばね定数アジャスタの回転操作により、両アジャストパイプのいずれかに固定されているアッパばね受けが回転して上記ばね体の重ね合せ長を変更可能とするようにしたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記車体側チューブには、ばね定数アジャスタの内周側にイニシャルアジャスタが回転自在に配設され、上記ばね定数アジャスタとアッパばね受けとの間に2本のアジャストパイプを設け、両アジャストパイプを嵌合し、一方のアジャストパイプの軸方向に形成したスリットと他方のアジャストパイプに形成した凸部を嵌合して両アジャストパイプを一体回転可能に設け、また、上記イニシャルアジャスタは、上記アッパばね受けが固定されているアジャストパイプの内周に螺合されたイニシャルアジャスト部材に連結され、上記イニシャルアジャスタの回転操作により、上記イニシャルアジャスト部材を介して上記アッパばね受けが固定されているアジャストパイプを軸方向に移動させて、上記アッパばね受けを懸架スプリングの軸方向に移動可能とし、更に、上記車体側チューブの上端部には、上記ばね定数アジャスタに係合可能なロック部材が設置され、上記イニシャルアジャスタの回転操作時に上記ロック部材により上記ばね定数アジャスタの回転が阻止されるよう構成されたものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、上記イニシャルアジャスト部材が、ダンパ装置におけるダンパシリンダであるようにしたものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載の発明において、上記懸架スプリングは、巻き方向が反対である 2本のばね体を相互に直列に配列して構成されたものである。
【0010】
請求項1に記載の発明には、次の作用がある。
複数のばね体の重ね合せ部分は他の部分に比べばね定数が大きいので、ばね定数アジャスタの回転操作によって、一方のばね受けを介しばね体の重ね合せ長(重ね合せ巻数)を変更することにより、懸架スプリングのばね定数を変更できる。従って、フロントフォークにおける懸架スプリングのばね定数を、ばね定数アジャスタを操作することにより外部から容易に変更して調整できる。
【0011】
請求項2に記載の発明には、次の作用がある。
ばね定数アジャスタを回転操作することにより、アジャストパイプを介してばね受けの一方が回転し、懸架スプリングにおけるばね体の重ね合せ長(重ね合せ巻数)が変更されるので、懸架スプリングのばね定数を外部から容易に変更できる。
【0012】
また、イニシャルアジャスタの回転操作時には、ロック部材によってばね定数アジャスタが固定(回転阻止)されるので、上記イニシャルアジャスタを回転操作することにより、イニシャルアジャスト部材を介してアジャストパイプが軸方向に移動する。これにより、ばね受けの一方が懸架スプリングの軸方向に移動して、懸架スプリングの初期荷重を外部から容易に変更して調整できる。
【0013】
請求項3に記載の発明には、次の作用がある。
イニシャルアジャスタに連結されるイニシャルアジャスト部材がダンパ装置のダンパシリンダにて兼用されることから、専用のイニシャルアジャスト部材が不要となり、部品点数が削減して、フロントフォークのコストを低減できる。
【0014】
請求項4に記載の発明には、次の作用がある。
懸架スプリングを構成する直列配列された複数のばね体の巻き方向が相互に反対であることから、懸架スプリングの伸縮時に発生するねじれを相殺でき、懸架スプリングを長寿命化できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置の一つの実施の形態が適用された自動二輪車のフロントフォークを示す縦断面図である。図2は、図1の上部を示す断面図である。図3は、図1の中央部を示す断面図である。図4は、図1の下部を示す断面図である。図5は、図1の懸架スプリングを示す正面図である。図6は、図5の懸架スプリングを構成するばね体を示し、(A)が第1ばね体の正面図であり、(B)が図6(A)のVIB 矢視図であり、(C)が第2ばね体の正面図であり、(D)が図6(C)のVID 矢視図である。図7は、図2のばね定数アジャスタを示し、(A)が図7(B)のVIIA-VIIA 線に沿う断面図であり、(B)が図7(A)のVIIB矢視図である。図8は、図2のロック部材を示し、(A)が図8(B)のVIIIA-VIIIA 線に沿う断面図であり、(B)が図8(A)のVIIIB 矢視図である。図9は、図2及び図3の第1アジャストパイプを示し、(A)が縦半断面図であり、(B)が図9(A)のIXB 矢視図であり、(C)が図9(A)のIXC 矢視図である。図10は、図3の第2アジャストパイプを示し、(A)が縦半断面図であり、(B)が図10(A)のX 矢視図である。図11は、図3のアッパばね受けを示し、(A)が図11(B)のXIA-XIA 線に沿う断面図であり、(B)が図11(A)のXIB 矢視図である。図12は、図4のロアばね受けを示し、(A)が図12(B)のXIIA-XIIA 線に沿う断面図であり、(B)が図12(A)のXIIB矢視図である。図13は、図1の懸架スプリングの作動特性を示す作動図である。図14は、比較例としての懸架スプリングの作動特性を示す作動図である。
【0016】
図1に示すように、自動二輪車の倒立型のフロントフォーク10は、車体側チューブとしてのアウタチューブ11内に車軸側チューブとしてのインナチューブ12が挿通され、両チューブ11及び12間に懸架スプリング13及びダンパ装置14が内蔵して構成されたものであり、アウタチューブ11がアッパブラケット及びロアブラケット(ともに図示せず)を介して車体側に支持され、インナチューブ12の車軸ブラケット15に締付ボルト16を用いて車軸が支持される。
【0017】
アウタチューブ11の開口端部17の内周に第1ガイドブッシュ18が、更に、この第1ガイドブッシュ18と離間したアウタチューブ11の内周に、第2ガイドブッシュ19がそれぞれ固着される。これらの第1ガイドブッシュ18及び第2ガイドブッシュ19がインナチューブ12の外周面に摺接して、アウタチューブ11及びインナチューブ12が摺動自在に構成される。図1のフロントフォーク10は、最圧縮状態を示す。
【0018】
懸架スプリング13の下端部は、ロアばね受け21、ロアメタル22及び車軸ブラケット15を介してインナチューブ12に支持される。つまり、ロアメタル22は、図4に示すように、センタボルト23を介して車軸ブラケット15に固定され、このロアメタル22にロアばね受け21の雌ねじ部24(図12)が螺合される。
【0019】
また、図1に示すように、懸架スプリング13の上端部は、アッパばね受け20、第2アジャストパイプ26、後述のダンパシリンダ27、ジョイントピース28及びフォークボルト29を介してアウタチューブ11に支持される。つまり、図3に示すように、アッパばね受け20外周の雄ねじ部30(図11)が第2アジャストパイプ26下端部内周の雌ねじ部31(図10)に螺合固定されてアッパばね受け20が第2アジャストパイプ26に一体化され、この第2アジャストパイプ26の雌ねじ部32とダンパシリンダ27の雄ねじ部33とが回転自在に螺合されて、第2アジャストパイプ26がダンパシリンダ27に支持される。第2アジャストパイプ26の雌ねじ部32とダンパシリンダ27の雄ねじ部33は左ねじに形成される。更に、ダンパシリンダ27の上端部が、図2に示すようにジョイントピース28の段部28Aに当接して支持され、このジョイントピース28が、アウタチューブ11の上端部内周に螺装されたフォークボルト29の段部29Aに当接して支持される。
【0020】
上述のように、懸架スプリング13の上端部、下端部が、それぞれアッパばね受け20を介してアウタチューブ11に支持され、ロアばね受け21を介してインナチューブ12に支持されて、懸架スプリング13は路面からの衝撃力を吸収する。
【0021】
また、上記ダンパ装置14は、図1及び図2に示すように、ジョイントピース28及びフォークボルト29を介してアウタチューブ11に支持されたダンパシリンダ27と、図1及び図4に示すように、ロアメタル22に螺装されて車軸ブラケット15を介しインナチューブ12に支持された中空形状のピストンロッド34と、ピストン35及びニードル弁36を備えたピストンバルブ機構37と、ダンパシリンダ27内の上方にベースピストン38及びベースニードル弁39を備えたベースバルブ機構40と、を有して構成される。これらのピストンバルブ機構37及びベースバルブ機構40により発生する減衰力によって、懸架スプリング13による衝撃力の吸収に伴い発生するアウタチューブ11及びインナチューブ12の伸縮運動が抑制される。尚、符号41は、ピストンロッド34の抜け止めを果たすロックナットである。
【0022】
図1及び図3に示すように、ダンパシリンダ27の先端部(下端部)には、先端側からシリンダロアキャップ42、ブッシュハウジング43、オイルシールハウジング44及びばね受け45が順次配設され、これらがストッパリング46とキャップ押え47間に挟まれてダンパシリンダ27の先端部に固定される。上記ブッシュハウジング43内に第3ガイドブッシュ48が装着され、この第3ガイドブッシュ48がピストンロッド34の外周面に摺接可能とされる。オイルシールハウジング44内には、ピストンロッド34の外周面に摺接するオイルシール49が収容され、このオイルシール49により、ダンパシリンダ27内に充填された作動油(油面H)の漏洩が防止される。尚、ばね受け45にてリバウンドスプリング50が支持される。
【0023】
上記ダンパシリンダ27内は、作動油の油面Hの上方に、図1及び図2に示すように、空気が充填されたガス室51が形成される。このガス室51内のガス圧がエアバルブ55により調整される。また、ダンパシリンダ27内の作動油が充填された領域は、ピストン35及びベースピストン38を隔てて、ロッド側室52とピストン側室53とベースバルブ室54とに区画される。
【0024】
ピストンバルブ機構37におけるピストン35は、ピストンロッド34の上端部に螺装されたピストンホルダ56に取り付けられる。このピストン35には、伸側流路57及び圧側流路(図示せず)が軸方向に貫通して形成され、又、軸方向両端面に伸側バルブ58及び圧側バルブ(チェックバルブ)59が配設される。伸側バルブ58は伸側流路57を、圧側バルブ59は圧側流路をそれぞれ閉止可能とし、共に、ピストン35とともにオイルロックカラー60によりピストンホルダ56に固定される。
【0025】
また、ピストンバルブ機構37におけるニードル弁36は、図1及び図4に示すように、アジャストロッド61及びアジャストボール62を介してニードル弁アジャスト機構63に連結される。このニードル弁アジャスト機構63は、車軸ブラケット15に回転自在に配設されたニードル弁アジャスタ64と、このニードル弁アジャスタ64と一体回転可能にロアメタル22内に支持されたジョイントボルト65と、このジョイントボルト65に固定されロアメタル22にクリック機構66を介して支持されたアジャストプレート67と、ジョイントボルト65のねじ部に螺合されテーパ面68がアジャストボール62に当接するアジャストスライダ69と、を有して構成される。
【0026】
ニードル弁アジャスタ64を回転操作することにより、ジョイントボルト65がクリック機構66にて微小角度間欠的に回転し、これによりアジャストスライダ69がジョイントボルト65の軸方向に移動して、アジャストスライダ69のテーパ面68がアジャストボール62を介しアジャストロッド61をその軸方向に移動可能とする。この結果、図2及び図3に示すように、ニードル弁36は、ピストンホルダ56との間に形成されるオリフィス70の流路面積を変更する。このオリフィス70とピストンホルダ56の通路71とを経て、ロッド側室52とピストン側室53とが連通可能とされる。
【0027】
ピストンバルブ機構37の伸側バルブ58、圧側バルブ59及びニードル弁36によって、インナチューブ12がアウタチューブ11内に侵入するフロントフォーク10の圧縮行程で、ピストン側室53からの作動油が圧側流路を通り圧側バルブ59を開弁してロッド側室52内へ導かれる。
【0028】
また、インナチューブ12がアウタチューブ11から突出するフロントフォーク10の伸長行程では、ダンパシリンダ27に対するピストン35の相対速度が低速のときに、ロッド側室52内の作動油が通路71及びオリフィス70を通りピストン側室53へ導かれ、作動油がオリフィス70を通るときに伸側減衰力が発生する。また、フロントフォーク10の伸長行程で、ダンパシリンダ27に対するピストン35の相対速度が中高速であるときには、ロッド側室52内の作動油が伸側流路57を経て伸側バルブ58を撓み変形させてピストン側室53へ流れ、作動油が伸側バルブ58を変形させるときに伸側減衰力が発生する。
【0029】
ダンパシリンダ27とピストン35との相対速度が低速の場合オリフィス70を作動油が通るときに発生する伸側減衰力は、ニードル弁アジャスト機構63のニードル弁アジャスタ64を回転操作して、オリフィス70の流路面積を変更することにより調整される。
【0030】
一方、ベースバルブ機構40におけるベースピストン38は、図1及び図2に示すように、中空形状のベースホルダ72に固着される。このベースピストン38には、軸方向に貫通して圧側流路73及び伸側流路(図示せず)が形成され、又、軸方向両端面に圧側バルブ74及び伸側バルブ(チェックバルブ)75が配設される。圧側バルブ74は圧側流路73を、伸側バルブ75は伸側流路をそれぞれ閉止可能として、共に、ベースホルダ72の下端部に螺着されるオイルロックピース76によりベースホルダ72に固着される。
【0031】
上記ベースホルダ72は、中空形状の中空ロッド72Aの下端部に螺着固定される。前記アウタチューブ11の上端部に、フォークボルト29及びジョイントピース28を介して支持されたダンパシリンダ27の上端部には、イニシャルアジャスタ77(後述)が一体に螺着固定される。このイニシャルアジャスタ77の内周部に、ダンパシリンダ27の上部つまりガス室51を密閉するシリンダアッパキャップ78が一体に螺着固定され、このシリンダアッパキャップ78の下部内周に上記中空ロッド72Aの上端部が一体に螺着固定されて、ベースホルダ72がアウタチューブ11に支持される。
【0032】
上記圧側バルブ74の背面は、バルブ押え79を介しバルブスプリング80により支持される。このバルブスプリング80の上端は、アジャストカラー85に支持される。一方、上記シリンダアッパキャップ78の軸方向中央部内周にアジャストケース81の下部外周部が一体に螺着固定され、これらのシリンダアッパキャップ78の上部とアジャストケース81との間に圧側バルブアジャスタ82が配設される。この圧側バルブアジャスタ82は、アジャストケース81に回転自在に螺合され、アジャストケース81との間にクリック機構83が介在されて、微小角度間欠回転可能に設けられる。この圧側バルブアジャスタ82の下端面は、シリンダアッパキャップ78に貫通配置されたアジャストピン84に当接し、このアジャストピン84が上記アジャストカラー85の上端面に当接する。
【0033】
従って、圧側バルブアジャスタ82を回転操作することによりアジャストピン84及びアジャストカラー85が軸方向に移動し、バルブスプリング80が伸縮して、バルブ押え79を介し圧側バルブ74へ付与されるばね力が変更され、これにより圧側バルブ74の初期開弁圧が調整可能とされる。
【0034】
また、ベースバルブ機構40におけるベースニードル弁39はベースホルダ72内に収容され、中空ロッド72A内に収容されたアジャストロッド86を介してアジャストピン87に回転一体に、且つ軸方向に進退可能に連結される。アジャストピン87は、アジャストケース81内に回転自在に配設され、上端部にベースニードル弁アジャスタ88を備える。このベースニードル弁アジャスタ88を回転操作させることにより、アジャストピン87及びアジャストロッド86を介して、ベースニードル弁39は、ベースホルダ72との間に形成されたオリフィス89の流路面積を変更する。このオリフィス89、ベースホルダ72の通路90、及びオイルロックピース76の通路91を介してピストン側室53とベースバルブ室54とが連通可能とされる。ベースニードル弁アジャスタ88は、アジャストケース81との間に介在されたクリック機構92により、微小角度間欠回転可能に設けられる。
【0035】
フロントフォーク10の圧縮行程では、図1に示すように、ダンパシリンダ27のロッド側室52内にピストンロッド34が侵入するので、この侵入体積分の作動油がベースバルブ機構40の作用でピストン側室53からベースバルブ室54へ排出される。つまり、ダンパシリンダ27に対するピストン35の相対速度が低速のときには、ピストン側室53内の作動油は、オイルロックピース76の通路91、オリフィス89及びベースホルダ72の通路90を経てベースバルブ室54へ流れる。作動油がオリフィス89を流れる間に圧側減衰力が発生する。また、ダンパシリンダ27に対するピストン35の相対速度が中高速のときには、ピストン側室53内の作動油は、ベースピストン38の圧側流路73を通り圧側バルブ74を撓み変形させてベースバルブ室54内へ流れる。作動油が圧側バルブ74を撓み変形させる間に圧側減衰力が発生する。
【0036】
フロントフォーク10の伸長行程では、ダンパシリンダ27からピストンロッド34が抜け出て、その分ピストン側室53内の容積が増大するので、ベースバルブ室54内の作動油がベースピストン38の伸側流路を経て伸側バルブ75を開きピストン側室53内へ流れる。
【0037】
ダンパシリンダ27に対するピストン35の相対速度が低速のときにオリフィス89にて発生する圧側減衰力は、ベースニードル弁アジャスタ88を回転操作し、ベースニードル弁39によりオリフィス89の流路面積を変更することによって調整される。また、ダンパシリンダ27に対するピストン35の相対速度が中高速のときに圧側バルブ74にて発生する圧側減衰力は、圧側バルブアジャスタ82を回転操作し、バルブスプリング80のばね力を変更して圧側バルブ74の初期開弁圧を変えることにより調整される。
【0038】
従って、図1に示すように、フロントフォーク10の圧縮行程では、ベースバルブ機構40において、ベースニードル弁39のオリフィス89或いは圧側バルブ74を流れる作動油により圧側減衰力が発生し、ピストンバルブ機構37においては減衰力が殆ど発生しない。また、フロントフォーク10の伸長行程では、ピストンバルブ機構37において、ニードル弁36のオリフィス70或いは伸側バルブ58を流れる作動油により伸側減衰力が発生し、ベースバルブ機構40においては減衰力が殆ど発生しない。これらの圧側及び伸側減衰力によって、フロントフォーク10の伸縮運動が抑制される。
【0039】
尚、ピストンホルダ56の上端に設置されたオイルロックカラー60と、ベースホルダ72の下端に設置されたオイルロックピース76とは、フロントフォーク10の最圧縮時に緊密状態で嵌合可能に設けられる。これにより、フロントフォーク10の最圧縮時に、オイルロックカラー60とオイルロックピース76との間で圧縮された作動油によりオイルロック作用が発生し、フロントフォーク10の圧縮ストローク端での緩衝が実施される。
【0040】
また、ダンパシリンダ27の下端部に配設されたリバウンドスプリング50は、フロントフォーク10の最伸長時にピストンホルダ56のばね押え部93に当接して圧縮される。これにより、フロントフォーク10の伸長ストローク端での緩衝が実施される。
【0041】
更に、アウタチューブ11の開口端部17には、図4に示すようにシールハウジング94が螺着される。このシールハウジング94内に、第1ガイドブッシュ18に対し軸方向に隣接してオイルシール95が装着され、このオイルシール95に隣接してダストシール96が装着される。
【0042】
さて、上述のようなフロントフォーク10においては、図5及び図6に示すように、上記懸架スプリング13は、第1ばね体97と第2ばね体98とが直列に配列され、第1ばね体97と第2ばね体98との互いに対向するオープンエンド部99が螺合し、一部が重ね合されて構成される。第1ばね体97及び第2ばね体98は巻き方向が共に右巻きであり、第1ばね体97の巻数は第2ばね体98の巻数よりも少なく設定される。
【0043】
第1ばね体97と第2ばね体98とのオープンエンド部99が螺合し得るように、第1ばね体97の平均径R1 は第2ばね体98の平均径R2 と同一に設定され、又、第1ばね体97のピッチP1 も第2ばね体98のピッチP2 と同一に設定される。また、第1ばね体97の線径d1 と第2ばね体98の線径d2 、並びに第1ばね体97と第2ばね体98の材質は、両ばね体97及び98のばね定数が大きく異ならない範囲で、異なって設定されてもよい。
【0044】
懸架スプリング13においては、上記第1ばね体97と第2ばね体98とが重ね合された重ね合せ部101は、第1ばね体97の線径d1 と第2ばね体98の線径d2 とを加算した線径となるので、重ね合せ部101以外の部分に比べばね定数が大きくなる。従って、懸架スプリング13の圧縮時には、重ね合せ部101以外の部分が先に撓む(圧縮変形する)。また、同様の理由で、第1ばね体97と第2ばね体98との重ね合せ部101の長さ(重ね合せ長L)を変更することにより、懸架スプリング13のばね定数が変更可能とされる。
【0045】
図5及び図6に示すように、懸架スプリング13を構成する第1ばね体97及び第2ばね体98のクローズドエンド100は、平坦面に端面加工されるとともに、端末102から約 270°の位置に、凹部103が形成される。
【0046】
図1、図3及び図4に示すように、懸架スプリング13をアウタチューブ11とインナチューブ12との間に配設させたときには、第1ばね体97のクローズドエンド100がロアばね受け21に支持され、第2ばね体98のクローズドエンド100がアッパばね受け20に支持される。
【0047】
アッパばね受け20及びロアばね受け21は、それぞれ図11、図12に示すように、フランジ部104を備えた略リング形状であり、これらのフランジ部104にて第1ばね体97、第2ばね体98のクローズドエンド100が支持される。このフランジ部104に凸部105が形成され、第1ばね体97、第2ばね体98の凹部103が上記凸部105に係合可能とされる。尚、アッパばね受け20の雌ねじ部106と、ロアばね受け21の雄ねじ部107にばねガイド108、109(図1)がそれぞれ螺着固定される。また、これらの雌ねじ部106及び雄ねじ部107は左ねじに形成されている。
【0048】
ところで、図1〜図3に示すように、アウタチューブ11の上端部には、フォークボルト29の内周側にばね定数アジャスタ110が回転自在に配設される。このばね定数アジャスタ110にジョイントピース28を介して、第1アジャストパイプ25及び第2アジャストパイプ26が連結され、この第2アジャストパイプ26に前述の如くアッパばね受け20が螺着固定される。
【0049】
ばね定数アジャスタ110は、図7に示すように、六角面111及び段部112を備える円筒形状であり、六角面111と反対側の端部に雄ねじ部113を有する。この雄ねじ部113にジョイントピース28の上部が一体に螺着固定される。
【0050】
また、第1アジャストパイプ25は、図9に示すようにパイプ形状であり、上端部に雌ねじ部114が形成され、下部が若干縮径されるとともに、下端部の外周面に凸部115が形成される。雌ねじ部114に、ジョイントピース28が一体に螺着固定される。
【0051】
また、第2アジャストパイプ26は、図10に示すようにパイプ形状であり、上部が若干拡径されて、第1アジャストパイプ25の縮径下部に嵌合されるとともに、この上部にスリット116が形成される。このスリット116は、軸方向に延在して形成され、第2アジャストパイプ26の拡径上部が第1アジャストパイプ25の縮径下部に嵌合された際に、第1アジャストパイプ25の凸部115を嵌め込み可能とする。この凸部115とスリット116との嵌合により、第1アジャストパイプ25と第2アジャストパイプ26とが一体回転可能に設けられる。その他、この第2アジャストパイプ26の内周面には、軸方向中央位置に雌ねじ部32が、下端部に雌ねじ部31が前述の如く刻設される。雌ねじ部32がダンパシリンダ27の雄ねじ部33に回転自在に螺合され、雌ねじ部31がアッパばね受け20の雄ねじ部30に一体に螺合され、アッパばね受け20が第2アジャストパイプ26に固定される。
【0052】
図2及び図8に示すように、フォークボルト29とばね定数アジャスタ110との間に、ロックスプリング121により上方に付勢された状態でロック部材117が装着される。このロック部材117はリング形状であり、上端部内周面にばね定数アジャスタ110の六角面111に嵌合可能な六角面118が形成されるとともに、下端部に挿通孔119が形成される。この挿通孔119は、ロック部材117の下端面に開口するとともに、フォークボルト29に螺装されたボルト120を挿通可能とする。従って、ロック部材117は、ロックスプリング121に付勢されて六角面118がばね定数アジャスタ110の六角面111に嵌合した通常の状態では、ばね定数アジャスタ110の回転を阻止し、ロック部材117をロックスプリング121の付勢力に抗して下方へ押圧し、ロック部材117の六角面118をばね定数アジャスタ110の六角面111から外した状態では、ばね定数アジャスタ110を回転可能とする。
【0053】
従って、ロック部材117を下方に押圧してばね定数アジャスタ110を回転可能とした状態で、このばね定数アジャスタ110を回転操作することにより、ジョイントピース28を介して第1アジャストパイプ25が一体に回転し、この第1アジャストパイプ25の突部115と第2アジャストパイプ26のスリット116との嵌合により、第2アジャストパイプ26が第1アジャストパイプ25と同期回転してアッパばね受け20を回転させる。アッパばね受け20、ロアばね受け21の凸部105が懸架スプリング13における第2ばね体98、第1ばね体97の凹部103にそれぞれ係合されているので、上記アッパばね受け20の回転により、第2ばね体98が第1ばね体97に対し相対的に回転し、軸方向に移動して、第1ばね体97と第2ばね体98の重ね合せ部101の重ね合せ長L(重ね合せ巻数)が変更され、懸架スプリング13のばね定数が調整される。
【0054】
一方、図1及び図2に示すように、アウタチューブ11の上端部には、ばね定数アジャスタ110の内周側に、このばね定数アジャスタ110の段部112上に係止された状態で、イニシャルアジャスタ77が回転自在に配設される。このイニシャルアジャスタ77は、上端部外周に六角面122が形成され、下端外周部が前述の如くダンパシリンダ27の上端内周部に一体に螺着固定される。このダンパシリンダ27は、イニシャルアジャスト部材として機能し、左ねじの雄ねじ部33及び雌ねじ部32を介して第2アジャストパイプ26に回転自在に螺合される。
【0055】
従って、イニシャルアジャスタ77を回転操作することによりダンパシリンダ27が一体に回転し、第2アジャストパイプ26のスリット116に第1アジャストパイプ25の突部115が嵌合して、後述のロック部材117の作用により第2アジャストパイプ26が回転阻止されているので、雄ねじ部33と雌ねじ部32の螺合により第2アジャストパイプ26が軸方向に移動する。この第2アジャストパイプ26の軸方向の移動により、アッパばね受け20が懸架スプリング13の軸方向に移動して、懸架スプリング13の初期荷重の設定が調整される。
【0056】
尚、上記イニシャルアジャスタ77の回転操作時には、ロック部材117がばね定数アジャスタ110に嵌合して、このばね定数アジャスタ110並びに第1及び第2アジャストパイプ25、26の回転が阻止される。また、イニシャルアジャスタ77の外周部にはばね定数アジャスタ110との間にOリング123が装着され、又、ダンパシリンダ27の外周部には第1アジャストパイプ25との間にOリング123が装着されて、ばね定数アジャスタ110の回転操作時に、イニシャルアジャスタ77及びダンパシリンダ27が連れ回りするよう設けられる。
【0057】
次に、上述のように、ばね定数アジャスタ110、第1アジャストパイプ25、第2アジャストパイプ26、アッパばね受け20、ロアばね受け21及びロック部材117にて構成されたばね定数アジャスト機構と、イニシャルアジャスタ77、ダンパシリンダ27、第1アジャストパイプ25、第2アジャストパイプ26、アッパばね受け20及びロアばね受け21により構成されたイニシャルアジャスト機構の作用をそれぞれ説明する。
【0058】
懸架スプリング13の初期荷重を変更するには、イニシャルアジャスト機構のイニシャルアジャスタ77を回転操作する。ダンパシリンダ27の雄ねじ部33と第2アジャストパイプ26の雌ねじ部32とが左ねじであるため、イニシャルアジャスタ77を右回転操作すれば、ダンパシリンダ27を介し第2アジャストパイプ26が軸方向下方へ移動して懸架スプリング13が圧縮され、この懸架スプリング13の初期荷重が高められる。また、イニシャルアジャスタ77を左回転操作すれば、第2アジャストパイプ26が軸方向上方へ移動して懸架スプリング13が伸長し、この懸架スプリング13の初期荷重が低められる。
【0059】
懸架スプリング13のばね定数を変更するには、ばね定数アジャスト機構のロック部材117をスパナ等の自重で押し下げて、このロック部材117の六角面118をばね定数アジャスタ110の六角面111から外し、この状態でばね定数アジャスタ110を回転操作する。このばね定数アジャスタ110を右回転操作することにより、ジョイントピース28、第1アジャストパイプ25及び第2アジャストパイプ26を介してアッパばね受け20が右回転し、懸架スプリング13の第2ばね体98が第1ばね体97に対し相対的に右回転して、両ばね体97及び98が更に螺合し、これらのばね体97及び98の重ね合せ部101の重ね合せ長Lが増大して、懸架スプリング13のばね定数が大きくなる。
【0060】
また、ばね定数アジャスタ110を左回転操作することにより、ジョイントピース28、第1アジャストパイプ25及び第2アジャストパイプ26を介してアッパばね受け20が左回転し、懸架スプリング13の第2ばね体98が第1ばね体97に対して相対的に左回転し、両ばね体97及び98の重ね合せ部101の重ね合せ長Lが減少して、懸架スプリング13のばね定数が小さくなる。
【0061】
ばね定数アジャスタ110を右回転して懸架スプリング13のばね定数を大きくしたときには、懸架スプリング13の軸長が短くなり初期荷重が変更されるので、このばね定数アジャスタ110の右回転操作終了後ロック部材117にてばね定数アジャスタ110を回転阻止した後に、イニシャルアジャスタ77を右回転操作してアッパばね受け20を懸架スプリング13の軸方向に下降させ、懸架スプリング13の初期荷重を適正な値に調整する。また、ばね定数アジャスタ110を左回転して懸架スプリング13のばね定数を小さくしたときには、この懸架スプリング13の軸長が長くなるので、ばね定数アジャスタ110の左回転操作終了後ロック部材117にてばね定数アジャスタ110の回転を阻止した後に、イニシャルアジャスタ77を左回転操作してアッパばね受け20を懸架スプリング13の軸方向に上昇させ、この場合も懸架スプリング13の初期荷重を適正な値に調整する。
【0062】
上記実施の形態によれば、次の▲1▼〜▲4▼の効果を奏する。
▲1▼ばね定数アジャスタ110を回転操作することにより、第1アジャストパイプ25及び第2アジャストパイプ26を介してアッパばね受け20が回転操作し、懸架スプリング13における第1ばね体97及び第2ばね体98の重ね合せ部101の重ね合せ長Lが変更されるので、フロントフォーク10における懸架スプリング13のばね定数を、ばね定数アジャスタ110を回転操作することにより外部から容易に変更して調整することができる。
【0063】
▲2▼また、イニシャルアジャスタ77の回転操作時には、ロック部材117によってばね定数アジャスタ110が回転阻止されるので、上記イニシャルアジャスタ77を回転操作することにより、イニシャルアジャスト部材としてのダンパシリンダ27を介して第2アジャストパイプ26が軸方向に移動する。これにより、アッパばね受け20が懸架スプリング13の軸方向に移動して、懸架スプリング13の初期荷重を外部から容易に変更して調整できる。
【0064】
▲3▼更に、イニシャルアジャスタ77に連結されるイニシャルアジャスト部材がダンパシリンダ装置14のダンパシリンダ27にて兼用されたことから、専用のイニシャルアジャスト部材が不要となり、部品点数が削減してフロントフォーク10のコストを低減できる。
【0065】
▲4▼懸架スプリング13の重ね合せ部101は、図1に示すように、アッパばね受け20及びロアばね受け21にて支持されていない部分であるため、懸架スプリング13の圧縮時に軸線が折れ曲る座屈現象を生じ易く、このとき、座屈した重ね合せ部101がインナチューブ12の内周面に接触して、このインナチューブ12の内周面に擦れてしまう。また、懸架スプリング13における重ね合せ部101以外の部分は、この重ね合せ部101に比べばね定数が小さいので、懸架スプリング13の圧縮時に、重ね合せ部101よりも先に撓む。
【0066】
そこで、仮に、図14に示すように、懸架スプリング13を構成する第1ばね体97と第2ばね体98との軸長(つまり巻数)が同一であると、懸架スプリング13の最伸長時に軸方向中央位置にあった重ね合せ部101のA点(このA点は図14(A)に示すように車軸ブラケット15から距離Mの位置にある。)は、懸架スプリング13の最圧縮時にも軸方向中央位置にあり(図14(B)に示すように、A点は車軸ブラケット15から距離Nの位置にある。)、その移動距離Sは(M−N)となる。このため、フロントフォーク10の圧縮行程で懸架スプリング13の重ね合せ部101が座屈し、重ね合せ部101のA点が上記移動距離Sを移動する間にインナチューブ12の内周面に擦れて、懸架スプリング13のばね特性にスティック現象が生ずる。
【0067】
これに対し、本実施の形態では、図13に示すように、懸架スプリング13を構成する第1ばね体97及び第2ばね体98のうち、第1ばね体97の軸長(巻数)が第2ばね体98よりも小さく形成されているので、懸架スプリング13の圧縮時における第1ばね体97の撓み量は、第2ばね体98よりも小さい。このため、図13(A)に示す懸架スプリング13の最伸長時に、車軸ブラケット15から距離mの位置にあった重ね合せ部101のa点は、図13(B)に示す懸架スプリング13の最圧縮時に車軸ブラケット15から距離nの位置にきて、その移動距離sは(m−n)となる。このa点の移動距離sは、図14に示すA点の移動距離Sよりも小さいので、フロントフォーク10の圧縮行程で懸架スプリング13の重ね合せ部101が座屈し、この重ね合せ部101のa点がインナチューブ12の内周面に擦れる距離が短くなる。このため、懸架スプリング13のばね特性においてスティック現象が抑制され、ばね特性を良好にすることができる。
【0068】
尚、上記実施の形態では、懸架スプリング13を構成する第1ばね体97と第2ばね体98とが共に右巻きのばね体であるものを述べたが、第1ばね体97と第2ばね体98の一方が左巻きで、他方が右巻きのばね体であってもよい。この場合には、懸架スプリング13の伸縮時に発生するねじれを相殺でき、懸架スプリング13を長寿命化できる。
【0069】
また、上記実施の形態では、イニシャルアジャスト部材がダンパ装置14におけるダンパシリンダ27の場合を述べたが、イニシャルアジャスト部材をダンパシリンダ27と別体に設けてこのダンパシリンダ27の外側に配置し、イニシャルアジャスタ77に連結してもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、ダンパ装置14のダンパシリンダ27が、ジョイントピース28及びフォークボルト29を介してアウタチューブ11に支持され、ダンパ装置14のピストンロッド34がロアメタル22及び車軸ブラケット15を介してインナチューブ12に支持されるものを述べたが、ダンパシリンダ27を車軸ブラケット15を介してインナチューブ12にて支持させ、ピストンロッド34をイニシャルアジャスタ77の内側に配設してアウタチューブ11にて支持させてもよい。
【0071】
更に、懸架スプリング13の巻き数の短い第1ばね体97をアッパばね受け20にて支持させ、巻き数の多い第2ばね体98をロアばね受け21にて支持させてもよい。また、本発明を、正立型のフロントフォークに適用してもよい。
【0072】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置によれば、フロントフォークにおける懸架スプリングのばね定数を外部から容易に変更して調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置の一つの実施の形態が適用された自動二輪車のフロントフォークを示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1の上部を示す断面図である。
【図3】図3は、図1の中央部を示す断面図である。
【図4】図4は、図1の下部を示す断面図である。
【図5】図5は、図1の懸架スプリングを示す正面図である。
【図6】図6は、図5の懸架スプリングを構成するばね体を示し、(A)が第1ばね体の正面図であり、(B)が図6(A)のVIB 矢視図であり、(C)が第2ばね体の正面図であり、(D)が図6(C)のVID 矢視図である。
【図7】図7は、図2のばね定数アジャスタを示し、(A)が図7(B)のVIIA-VIIA 線に沿う断面図であり、(B)が図7(A)のVIIB矢視図である。
【図8】図8は、図2のロック部材を示し、(A)が図8(B)のVIIIA-VIIIA 線に沿う断面図であり、(B)が図8(A)のVIIIB 矢視図である。
【図9】図9は、図2及び図3の第1アジャストパイプを示し、(A)が縦半断面図であり、(B)が図9(A)のIXB 矢視図であり、(C)が図9(A)のIXC 矢視図である。
【図10】図10は、図3の第2アジャストパイプを示し、(A)が縦半断面図であり、(B)が図10(A)のX 矢視図である。
【図11】図11は、図3のアッパばね受けを示し、(A)が図11(B)のXIA-XIA 線に沿う断面図であり、(B)が図11(A)のXIB 矢視図である。
【図12】図12は、図4のロアばね受けを示し、(A)が図12(B)のXIIA-XIIA 線に沿う断面図であり、(B)が図12(A)のXIIB矢視図である。
【図13】図13は、図1の懸架スプリングの作動特性を示す作動図である。
【図14】図14は、比較例としての懸架スプリングの作動特性を示す作動図である。
【符号の説明】
10 フロントフォーク
11 アウタチューブ(車体側チューブ)
12 インナチューブ(車軸側チューブ)
13 懸架スプリング
20 アッパばね受け
21 ロアばね受け
25 第1アジャストパイプ
26 第2アジャストパイプ
27 ダンパシリンダ
29 フォークボルト
77 イニシャルアジャスタ
97 第1ばね体
98 第2ばね体
99 オープンエンド部
101 重ね合せ部
110 ばね定数アジャスタ
117 ロック部材
L 重ね合せ長

Claims (4)

  1. 車体に支持される車体側チューブと車軸を支持する車軸側チューブとの間に懸架スプリングが配設され、この懸架スプリングは、2本のばね体が直列に配列され、各ばね体の相互に対向する端部が螺合して重ね合されて構成され、上記懸架スプリングの両端部が一対をなすアッパばね受けとロアばね受けを介して上記両チューブに支持された二輪車等のフロントフォークにおいて、
    上記車体側チューブの上端部内周にばね定数アジャスタが回転自在に配設され、このばね定数アジャスタとアッパばね受けとの間に2本のアジャストパイプを設け、両アジャストパイプを嵌合し、一方のアジャストパイプの軸方向に形成したスリットと他方のアジャストパイプに形成した凸部を嵌合して両アジャストパイプを一体回転可能に設け、このばね定数アジャスタの回転操作により、両アジャストパイプのいずれかに固定されているアッパばね受けが回転して上記ばね体の重ね合せ長を変更可能とすることを特徴とする二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置。
  2. 上記車体側チューブには、ばね定数アジャスタの内周側にイニシャルアジャスタが回転自在に配設され、
    上記ばね定数アジャスタとアッパばね受けとの間に2本のアジャストパイプを設け、両アジャストパイプを嵌合し、一方のアジャストパイプの軸方向に形成したスリットと他方のアジャストパイプに形成した凸部を嵌合して両アジャストパイプを一体回転可能に設け
    また、上記イニシャルアジャスタは、上記アッパばね受けが固定されているアジャストパイプの内周に螺合されたイニシャルアジャスト部材に連結され、上記イニシャルアジャスタの回転操作により、上記イニシャルアジャスト部材を介して上記アッパばね受けが固定されているアジャストパイプを軸方向に移動させて、上記アッパばね受けを懸架スプリングの軸方向に移動可能とし、
    更に、上記車体側チューブの上端部には、上記ばね定数アジャスタに係合可能なロック部材が設置され、上記イニシャルアジャスタの回転操作時に上記ロック部材により上記ばね定数アジャスタの回転が阻止されるよう構成された請求項1に記載の二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置。
  3. 上記イニシャルアジャスト部材が、ダンパ装置におけるダンパシリンダである請求項2に記載の二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置。
  4. 上記懸架スプリングは、巻き方向が反対である 2本のばね体を相互に直列に配列して構成された請求項1〜3のいずれか一に記載の二輪車等のフロントフォークにおけるばね特性調整装置。
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