JP3884479B2 - セルロースファイバの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アミンオキサイド法によるセルロースファイバ、特にセルロースステープルファイバの製造方法に関する。
今日広く用いられている、ビスコース法に代わり得るセルロース成形体の製造方法を数十年間調査してきた。他の理由の中でも環境への影響が少ない理由から特に興味深い代替物として、有機溶媒中で誘導体を形成せずにセルロースを溶解し、この溶液から成形体、例えばファイバ、フィルム及び膜を押し出す方法を見いだした。このように押し出したファイバには、BISFA(国際人工ファイバ基準局)によってリオセル(Lyocell)という属名が与えられている。有機溶媒とは、有機化学物質と水との混合物であるとBISFAは理解している。
有機溶媒として、第3アミンオキサイドと水との混合物がセルロース成形体の製造に特に適していることが明らかとなった。アミンオキサイドとして、基本的にはN−メチルモルホリン−N−オキサイド(NMMO)を使用する。他のアミンオキサイドは、例えばEP−A−0 553 070号に述べられる。成形可能なセルロース溶液の製造方法は、例えばEP−A−0 356 419号で知られている。第3アミンオキサイドを使用したセルロース成形体の製造を、一般的にはアミンオキサイド法として述べる。
US−A−4,246,221号は、セルロース溶液製造のためのアミンオキサイド法について述べており、ここでは、セルロース溶液を紡糸口金のような成形工具でフィラメントに紡糸し、その後、セルロースが沈殿する沈殿浴を通過させ、水を含んで膨張したフィラメントを得る。これらのフィラメントを従来の方法、即ち洗浄及び後処理によってセルロースファイバ及びステープルファイバに処理する。
乾式/湿式紡糸法によってアミンオキサイドから製造したセルロースファイバは、綿のような天然のけん縮ファイバと対照的に、突出部分のない(unlobed)円形断面を有することが知られている。これらを毛糸及び平面ファイバアセンブリに処理する場合、例えば、EP−A−0 574 870号で説明されるように、円形断面及び比較的平滑な表面によって問題が生じ得る。この特許出願によると、これらの問題として、紡糸ファイバを紡糸して糸にする場合のファイバ同士の不十分な付着力、フィラメント毛糸の不十分なカバー並びにこのファイバ及びフィラメント撚り糸から製造した平面ファイバアセンブリの不十分な耐スリップ性が挙げられる。これらの問題を解決するために、上述の特許出願は、アミンオキサイド溶液を、円形ではなく、例えばY字形の断面を有する紡糸穴を通して押し出すことを提案した。したがって、リオセルファイバはY字形部分を有する。
Chemical Fibers International(CFI)(第45巻、1995年2月、27〜30頁)では、アミンオキサイド法によって製造した四つのセルロースファイバ全ての顕微鏡写真が示されている。これらすべてをアミンオキサイド法によって製造したにも関わらず、これらのファイバが同一ではないことは興味深い。四つのファイバの差は顕微鏡でも分かる。上述の文献では、当業者がどのようにして異なるセルロースファイバを製造するのかについては示されていない。即ち、各ファイバを異なるように製造する方法が当業者に与えられていない。
Textilia Europe 6/94の第6ff頁でも、アミンオキサイド法によって製造したセルロースファイバについて説明されており、ここでも、当業者に、製造の詳細に関する糸口が与えられていない。他の情報の中でも、製造方法が示されないセルロースファイバが永久的なけん縮を有することをこの文献から収集することはできるが、これが何を意味し、ファイバはどのようにけん縮するのかに関するより詳細な情報は与えられていない。
けん縮ファイバは、これらをファイバ、特にステープルファイバに処理する場合にさまざまな理由から利点を有する。例えば、カードスライバー(card sliver)を製造するのにファイバ同士の付着力が必要とされるため、ファイバをカードしやすい。けん縮ファイバは非けん縮ファイバよりもスライバー付着が高いため、カーディング速度を増大させることができる。
従来技術では、ファイバをけん縮する、いわゆるけん縮工程が知られている。しかし、このようにして得た大部分のけん縮は、カーディング後、既に失われており、最も遅くとも撚り糸に紡糸した後には、織物にはもはや見られない。けん縮により、織物をかさ高くし、ソフトな感触を与える。
WO94/28220号及びWO94/27903号から、リオセルファイバを機械的方法でけん縮する方法が知られている。この方法によると、まず、新しく製造したトウ形状のフィラメントを、複数の洗浄浴に通過させて溶媒を除去する。次に、トウを約165℃で乾燥し、乾燥状態でパイプ型装置に導入し、この装置でフィラメントトウに折り目をつけ、幾つかの種類のけん縮を達成する。さらに、けん縮ファイバを高温乾燥蒸気で処理し、その後ステープルファイバにカットする。これらのファイバは、けん縮のために別個の装置を必要とするため、これらの製造が複雑な装置を必要とするという欠点、及びけん縮がファイバに折り目をつけることによって得られるという欠点を有する。さらに、公知の方法によって機械的方法で行われるけん縮は、幾つかの更なる後処理工程後に失われる。
本発明の目的は、従来のリオセルファイバよりも簡単な方法で撚り糸及び繊維に処理することができる、新しいリオセルファイバの製造方法を提供することである。新しいファイバは、WO94/28220号又はWO94/27903号による機械的けん縮手段によって製造されない。非円形断面を有する紡糸孔を呈する紡糸口金を使用しても製造しない。本発明によって製造するリオセルファイバは、円形断面を呈する紡糸孔を有する従来の紡糸口金を使用して製造される。
本発明によるセルロースファイバの製造方法は、次の工程を有する。即ち、
(A) セルロース含有材料を、水性第3アミンオキサイドに溶解して紡糸可能セルロース溶液を得る工程、
(B) セルロース溶液を紡糸し、水性沈殿浴に通過させて水含有膨張フィラメントを得る工程、
(C) 水含有膨張フィラメントをさまざまな点で絞り、その結果フィラメント長のミリメートル当たり、平均で少なくとも二つの絞り点を得る工程、及び
(D) 絞ったフィラメントをセルロースファイバに乾燥してセルロースファイバを製造する工程を含む。この方法において、フィラメントに形成した絞り点を乾燥ファイバでも維持し、線形偏光の下で観察すると、色の変化として見ることができるように、十分に高圧力で絞りを行う。
本発明の明細書及び請求の範囲の目的のために、”絞り点”という用語は、フィラメント及びファイバの断面形状の曲げ、撚り及びその他の変化について述べるものとする。
本発明は、アミンオキサイド法によって製造するフィラメントは、絞りによって膨潤状態で断面形状が変化し、絞りに使用する強度が十分に大きいと、絞り点が乾燥後も維持されることを見出したことに基づく。したがって、例えば、絞り点において、円形でなく楕円形に変形した断面形状を有するセルロースファイバを製造することができる。絞り点は、くぼみ、目増やし(widening)又は曲げとして顕微鏡で観察することができる。
通常、絞りの場合に加えられる強度の程度は、幾つかのパラメータ、例えば、ファイバ力価、膨張の程度及び望ましい断面変化の程度に依存する。本発明の発明者は、所望の断面変化を得るために必要な強度は、先行試験で簡単に決定することができることを見いだした。
ファイバの絞りは、膨張フィラメントをプレートプレスのような適切な成形工具に通過させることによって達成することができる。このプレートプレスの表面は、膨張フィラメントを長手方向に異なる程度に加圧して、フィラメントを異なる程度に変形させる突起部及びくぼみ部によって構成される。
また、フィラメントをロールに通過させ、適切に構成した表面を有する合わせロールを使用してフィラメントを絞るのに必要とされる強度を加えることによって、膨張フィラメントを絞ることができる。
さらに、膨張フィラメントを、多数のフィラメントから成るトウに結合し、長手方向に撚り、この状態で一対のロールに通過させて絞るのに必要な強度を加えることもできる。
フィラメント長のミリメートル当たり少なくとも三つ、特に少なくとも六つの絞り点を得るように、絞りを行うのが好ましい。
絞り点によってファイバに幾らかの付着力が与えられて、カードスライバーを製造し易くなるため、本発明によって製造したファイバのほうがより簡単にカードすることができることが分かった。
本発明によって製造したファイバは、全長にわたって円形断面を有する従来のリオセルファイバよりもスライバー同士の付着力が高い。これによってカーディング速度を早めることができる。
本発明の方法の好適な実施形態は、上述の工程(B)で得た水含有膨張フィラメントを加圧の前にカットすることを特徴とする。
本発明の方法のさらに好適な実施形態は、カットフィラメントがランダム配向性であるフリースを、絞りの前に、カットした水含有膨張フィラメントから製造し、このフリースを加圧することを特徴とする。この場合、ファイバがそのランダム配向性により互いにその上に重ね合わされるため、加圧中、他の点でなく、ファイバが互いの上に重なり合う点に高圧を加えることができるという事実によって、不規則な表面を形成するのに必要な、さまざまな圧力を得ることができる。このため、加圧面を必ずしも形成する必要はないことがわかった。これは、断面の異なる変形を示唆している。
本発明の方法のこの実施形態では、ビスコース法で知られているように、ステープルファイバフリースからの洗浄水の通常の絞りと共に加圧を実施することができる。通常は、ステープルファイバフリースが移動スクリーンを通過する一対以上のロールによって脱水を実施する。一対又は複数のロールは、水含有量を低減させるだけでなく、カットした膨張フィラメントの断面形状を十分に変化させるようにフリースに十分な高圧を加えるため、重要である。
また、本発明は、セルロースファイバ、特に、本発明の方法によって製造することができるセルロースステープルファイバにも関する。本発明のファイバは、ファイバの断面で得た変化を保持する、即ち、カーディング又は撚り糸製造後も変化が消えないことを特徴とする。これによって、本発明のリオセルファイバのさらなる処理が容易になる。
さらに、驚くべきことに、アミンオキサイド法で製造したファイバのファイバ強度及びファイバの伸びは、断面が変化しても悪化しないことがわかった。
本発明は、さらに、撚り糸、布、不織布及びメリヤスに関し、これらは本発明のファイバを含むことによって特徴付けられる。
以下の実施例によって、本発明をより詳細に説明する。
実施例1
最初に、水含有NMMOのセルロース紡糸可能溶液を、EP−A−0 356 419号で述べた方法を使用して調製した。
この紡糸可能溶液を、円形紡糸孔を有する紡糸口金を使用して、WO93/19320号で述べた方法によってフィラメントに紡糸した。エアギャップで延伸した後、フィラメントを、セルロースが凝固する水性沈殿浴に通過させた。得られた水含有フィラメントは膨張状態及びハイドロプラスチック状(hydroplastic)で存在し、このフィラメントを4cmのステープルにカットした。
カットフィラメントをミキサー中で水とスラリー状態にし、水中で回転させたカットフィラメントを移動スクリーンに供給し、このスクリーン上でカットファイバのフリースを形成した。ファイバはランダム配向性であった。
移動スクリーンは一対のロールを通過し、このロールは、フリース上に約0.1秒間に約106Paの圧力を加えた。その後、フリースを洗浄し、さらに一対のロールに通過し、約106Paの圧力を加えた。その後、得られたステープルファイバを乾燥した。
本発明のファイバの偏光顕微鏡(倍率400)による分析によって、偏光の色の変化を観察することができるところで、ファイバ長のミリメートル当たり平均7つの絞り点を得たことがわかった。絞り点で、ファイバは円形ではなく多少不規則に変形した断面を呈した。照射光の色の変化は、各絞り点でファイバの厚みが異なることによるものである。
得られたファイバから撚り糸を製造し、スライバーの付着長をDIN 53834のパート1にしたがって測定した。本発明によって製造したファイバは、ほぼ円形の断面を有するファイバであって、本発明の方法で製造しなかったファイバよりも比較的高いスライバー付着長を示した。

Claims (5)

  1. (A) セルロース含有材料を水性第3アミンオキサイドに溶解して紡糸可能セルロース溶液を得る工程、
    (B) セルロース溶液を紡糸し、水性沈殿浴に通過させて水含有膨張フィラメントを得る工程、
    (C) 水含有膨張フィラメントをさまざまな点で絞り、その結果フィラメント長のミリメートル当たり、平均で少なくとも二つの絞り点を得る工程、及び
    (D) 絞ったフィラメントをセルロースファイバに乾燥してセルロースファイバを製造する工程を含むセルロースファイバの製造方法であって、フィラメントに形成した絞り点を乾燥ファイバでも維持し、線形偏光の下で観察する際、色の変化として見ることができるように、十分に高圧で絞りを行う、
    セルロースファイバの製造方法。
  2. フィラメント長のミリメートル当たり、平均で少なくとも三つの絞り点を得るように絞りを行う、請求項1記載の方法。
  3. フィラメント長のミリメートル当たり、平均で少なくとも六つの絞り点を得るように絞りを行う、請求項1記載の方法。
  4. 工程(B)で得た膨張フィラメントを絞りの前にカットする、請求項1〜3のいずれか1項記載のセルロースファイバ製造方法。
  5. 絞りの前に、カットしたフィラメントがランダム配向性であるフリースを、カットした水含有膨張フィラメントから製造し、該フリースを加圧する、請求項4記載のセルロースファイバ製造方法。
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