JP3880514B2 - ビフェニレンシクロブテニレンモノマーおよびそのポリマー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビフェニレンシクロブテニレンポリマー及びその製造方法に関し、より詳しくは、ビニレン二重結合部分がシス体であるビフェニレンシクロブテニレンポリマー及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から、バックライトなどのパネル型光源として無機材料を用いた発光素子が使用されていた。最近になり、このような発光素子として、有機材料を用いた有機電界発光素子が開発されてきている。このような有機材料として、例えば、フェニレンビニレンが開発されており、既に実用化のレベルまできている。
【0003】
フェニレンビニレンはビニレン二重結合を有しており、シス体とトランス体が考えられる。しかしながら、シス体であると、トランス体へと容易に異性化してしまい、物性が不安定になることから、トランス体のフェニレンビニレンが開発されていた。
【0004】
ところで、フェニレンビニレンのような炭素−炭素二重結合を有する有機材料においては、特定の条件下では、シス−トランスの異性化が起こり、材料としての性能が安定しないことがある。従って、異性化の恐れがなく、かつ有機電界発光素子として有用な有機材料を、高収率かつ簡便に得ることが所望された。
【0005】
【非特許文献1】
J. Org. Chem. 1999, 64, 8706-8708
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1態様では、下記式(1)で示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマーが提供される。
【化8】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;又は水酸基であり、ただし、R1及びR2、R3及びR4、R5及びR6、並びに、R7及びR8は、それぞれ、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよく、nは、2〜100,000の整数である。]
【0007】
また、本発明の第2態様では、上記式(1)で示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法であって、遷移金属化合物及び還元剤の存在下、下記式(2)で示される1,2−ジフェニルシクロブテンを
【化9】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、上記の意味を有する。X1及びX2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子を示す。]重合させることを特徴とする、ビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第1及び第2態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の第2態様において、前記遷移金属化合物が、ニッケル錯体又はパラジウム錯体であることが好ましい。また、前記還元剤が亜鉛であることが好ましい。
【0010】
本発明の第3態様では、下記式(3)で示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマーが提供される。
【化10】
[式中、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;又は水酸基であり、ただし、A1及びA2、A3及びA4、A5及びA6、A7及びA8、A12及びA13、A14及びA15、並びに、B1及びB2は、それぞれ、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよく、mは、2〜100,000の整数である。]
【0011】
また、本発明の第4態様では、下記式(4)で示されるビス(フェニルシクロブテニル)フルオレン誘導体が提供される。
【化11】
[式中、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;又は水酸基であり、ただし、A1及びA2、A3及びA4、A5及びA6、A7及びA8、A12及びA13、A14及びA15、並びに、B1及びB2は、それぞれ、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよく、Y1及びY2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、又は、ハロゲン原子を示す。]
【0012】
さらに、本発明の第5態様では、上記式(3)で示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法であって、遷移金属化合物及び還元剤の存在下、下記式(5)で示されるビフェニレンシクロブテニレンモノマーを
【化12】
[式中、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2は、上記の意味を有する。X3及びX4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子を示す。]重合させることを特徴とする、ビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第3態様、第4態様および第5態様において、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15及びA16は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、又は、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基であることが好ましい。また、B1及びB2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基であることが好ましい。
【0014】
本発明の第5態様において、前記遷移金属化合物が、ニッケル錯体又はパラジウム錯体であることが好ましい。また、前記還元剤が亜鉛であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の第1態様では、下記式(1)で示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマーが提供される。
【化13】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びnは上記の意味を有する。]
【0016】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;又は水酸基である。
【0017】
本明細書において、「C1〜C20炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C1〜C20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C1〜C20炭化水素基」には、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C4〜C20アルキルジエニル基、C6〜C18アリール基、C6〜C20アルキルアリール基、C6〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、C4〜C20シクロアルケニル基、(C3〜C10シクロアルキル)C1〜C10アルキル基などが含まれる。
【0018】
本明細書において、「C1〜C20アルキル基」は、C1〜C10アルキル基であることが好ましく、C1〜C6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0019】
本明細書において、「C2〜C20アルケニル基」は、C2〜C10アルケニル基であることが好ましく、C2〜C6アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「C2〜C20アルキニル基」は、C2〜C10アルキニル基であることが好ましく、C2〜C6アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、2−プロピニル、2−ブチニル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「C4〜C20アルキルジエニル基」は、C4〜C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C4〜C6アルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「C6〜C18アリール基」は、C6〜C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「C6〜C20アルキルアリール基」は、C6〜C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「C6〜C20アリールアルキル基」は、C6〜C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0025】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルキル基」は、C4〜C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルケニル基」は、C4〜C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル等を挙げることができる。
【0027】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で示される「C1〜C20炭化水素基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「アミノ基」、「シリル基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
本明細書において、「置換基を有していてもよいアミノ基」の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0029】
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル基」の例としては、制限するわけではないが、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
【0030】
本発明において、R1及びR2、R3及びR4、R5及びR6、並びに、R7及びR8は、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよい。これらの置換基が形成する環は、4員環〜16員環であることが好ましく、4員環〜12員環であることが更に好ましい。この環は、ベンゼン環等の芳香族環あってもよいし、脂肪族環であってもよい。また、これらの置換基が形成する環に、更に単数又は複数の環が形成されていてもよい。
【0031】
前記飽和環または不飽和環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子または式―N(B)―で示される基(式中、Bは水素原子またはC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよい。即ち、前記飽和環または不飽和環はヘテロ環であってもよい。かつ、置換基を有していてもよい。不飽和環は、ベンゼン環等の芳香族環であってもよい。
【0032】
Bは,水素原子またはC1〜C10炭化水素基であることが好ましく、水素原子またはC1〜C7炭化水素基であることが更に好ましく、Bは水素原子、C1〜C3アルキル基、フェニル基またはベンジル基であることが更になお好ましい。
【0033】
この飽和環又は不飽和環は、置換基を有していてもよく、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などの置換基が導入されていてもよい。
【0034】
本発明において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基であることが好ましく、水素原子;C1〜C10アルキル基;C2〜C10アルケニル基;C2〜C10アルキニル基;又はC1〜C10アルコキシ基であることが更に好ましい。
【0035】
nは、2〜100,000の整数であり、2〜10,000の整数であることが好ましく、2〜1,000の整数であることがより好ましく、2〜200の整数であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の第2態様では、本発明の第1態様にかかるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法の一態様が提供され、遷移金属化合物及び還元剤の存在下、下記式(2)で示される1,2−ジフェニルシクロブテンを、重合させることを特徴とする下記式(1)に示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法が提供される。
【化14】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びnは、上記の意味を有する。]
【0037】
本発明の第2態様において、下記式(2)で示される1,2−ジフェニルシクロブテンが用いられる。
【化15】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、上記の意味を有する。]
【0038】
上記式(2)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、本発明の第1態様で、上記式(1)中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8において説明したのと同様である。
【0039】
上記式(2)中、X1及びX2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子を示す。X1及びX2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であることが好ましく、臭素であることがより好ましい。
【0040】
上記式(2)で示される1,2−ジフェニルシクロブテンは、公知の方法(例えば、J. Org. Chem. 1999, 64, 8706-8708に開示の方法)で合成することができる。例えば、ジエチルメタロセンにジフェニルアセチレンを加え、2,3−ジフェニルメタラシクロペンテンを得る。続いて、この生成物にヨウ素を加えて攪拌し、さらに塩化銅を添加して攪拌することで得ることができる。
なお、ジエチルメタロセンは、対応する有機金属化合物、特にジクロロ体等のジハロゲノ体にエチルグリニャールを−100℃〜0℃で作用させて得られる。
【0041】
本発明で用いる上記式(2)示される1,2−ジフェニルシクロブテンの合成に使用できるジエチルメタロセンとしては、たとえば以下のメタロセンを挙げることができる。
【0042】
ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルジルコニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジエチルジルコニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジエチルジルコニウム;
ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルチタン;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジエチルチタン;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジエチルチタン;
ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルハフニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジエチルハフニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジエチルハフニウム。
【0043】
本発明の第2態様にかかるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法は、遷移金属化合物存在下で行われる。遷移金属化合物としては、ニッケル錯体又はパラジウム錯体を好ましく挙げることができる。
【0044】
本明細書において、ニッケル錯体及びパラジウム錯体としては、4配位又は6配位であることが好ましく、4配位子が更に好ましい。これらの錯体には、低級アルキルカルボニルオキシ基、ホスフィン、ホスファイト若しくはハロゲン原子の少なくとも一つが配位子として、それぞれ、ニッケル金属及びパラジウム金属に結合していることが好ましい。
【0045】
本明細書において、ニッケル錯体は、たとえば、NiX2P1P2(式中、Xは、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示し、P1及びP2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ホスフィン、ホスファイト又はアミンを示し、好ましくは、ホスフィン又はアミンを示し、更に好ましくはホスフィンを示す。ただし、P1及びP2は、互いに架橋していてもよい。)であってもよい。
【0046】
本明細書において、ホスフィンは、ジフェニルホスフィンのようなジアリールホスフィン、トリフェニルホスフィンのようなトリアリールホスフィン、トリエチルホスフィンのようなトリアルキルホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンのようなα,ω−ビス(ジアリールホスフィノ)アルカン、P,P,P',P',P",P"−ヘキサフェニル−トリスエチレンテトラホスフィンのようなP,P,P',P',P",P"−六置換−トリスアルキレンテトラホスフィン等を挙げることができる。ホスファイトは、ホスフィンと同様である。
【0047】
本明細書において、アミンは、配位子としては、ピリジン、ビピリジン、キノリン等の芳香族アミンであってもよいし、エチレンジアミンのようなアルキレンジアミン、N,N,N',N'−テトラアルキルエチレンジアミンのようなN,N,N',N'−四置換アルキレンジアミン、トリスエチレンジアミンのようなトリスアルキレンジアミン等の脂肪族アミンであってもよい。
【0048】
本明細書において、ニッケル錯体としては、たとえば、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロニッケル、ジクロロ(2,2'−ビピリジン)ニッケルが挙げられる。NiX2P1P2で示されるニッケル錯体は、NiX2で示されるニッケル塩と比べて、有機溶媒中での溶解度が向上するので、用途によっては、好ましい。たとえば、NiX2で示されるニッケル塩を反応系が含まれている溶媒に添加し、所望により、更にホスフィンを溶媒に添加して in situで、ニッケルホスフィン錯体を形成してもよい。
【0049】
本明細書において、パラジウム錯体は、Pd(Q1)(Q2)(Q3)(Q4)(式中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ホスフィン、ホスファイト、C1−C20アシル基、ハロゲン原子を含む置換基を有していてもよいC1〜C20アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子を含む置換基を有していてもよいC1〜C20アリールカルボニルオキシ基、ニトリル、又は、ハロゲン原子を示し、好ましくは、ホスフィン、ホスファイト、C1−C20アシル基、アミン、ハロゲン原子、又は、ハロゲン原子を示し、ただし、Q1、Q2、Q3及びQ4の任意の2つ、3つ及び4つが、互いに架橋していてもよい。)であってもよい。ホスフィン、ホスファイト又はアミンについては、上述の通りである。パラジウム錯体としては、たとえば、Pd(O−C(=O)R)4(式中、Rはアルキル基又はアリール基であり、互いに架橋していてもよい。)、[PdX4]2-(Xはハロゲン原子である。)、テトラキス(トリアリールホスフィン)、PdCl2(2,2'-ビピリジン)等が挙げられる。
【0050】
本発明の第2態様において、遷移金属化合物の量は、1,2−ジフェニルシクロブテン(2)1モルに対し、0.0001モル〜20モルであり、好ましくは0.001モル〜1モルであり、更に好ましくは、0.01モル〜0.1モルである。
【0051】
本発明の第2態様にかかるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法は、還元剤存在下で行われる。還元剤としては、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、スズ、リチウム、ナトリウム等を好ましく挙げることができ、亜鉛を特に好ましく挙げることができる。
【0052】
本発明の第2態様において、還元剤の量は、1,2−ジフェニルシクロブテン(2)1モルに対し、0.1モル〜20モルであり、好ましくは0.5モル〜8モルであり、更に好ましくは、1.5モル〜4.0モルである。
【0053】
本発明の第2態様において、反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜100℃の温度範囲、更に好ましくは−50℃〜100℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0054】
本発明の第2態様において、溶媒としては、上記式(2)で示される1,2−ジフェニルシクロブテンを溶解することができる溶媒が好ましい。溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。
【0055】
本発明の第3態様では、下記式(3)で示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマーが提供される。
【化16】
[式中、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1、B2及びmは、上記の意味を示す。]
【0056】
A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;又は水酸基である。
【0057】
A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2で示される「C1〜C20炭化水素基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「アミノ基」、「シリル基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
本発明において、A1及びA2、A3及びA4、A5及びA6、A7及びA8、A12及びA13、A14及びA15、並びに、B1及びB2は、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよい。これらの置換基が形成する環は、4員環〜16員環であることが好ましく、4員環〜12員環であることが更に好ましい。この環は、ベンゼン環等の芳香族環あってもよいし、脂肪族環であってもよい。また、これらの置換基が形成する環に、更に単数又は複数の環が形成されていてもよい。
【0059】
前記飽和環または不飽和環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子または式―N(B)―で示される基(式中、Bは水素原子またはC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよい。即ち、前記飽和環または不飽和環はヘテロ環であってもよい。かつ、置換基を有していてもよい。不飽和環は、ベンゼン環等の芳香族環であってもよい。
【0060】
Bは,水素原子またはC1〜C10炭化水素基であることが好ましく、水素原子またはC1〜C7炭化水素基であることが更に好ましく、Bは水素原子、C1〜C3アルキル基、フェニル基またはベンジル基であることが更になお好ましい。
【0061】
この飽和環又は不飽和環は、置換基を有していてもよく、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などの置換基が導入されていてもよい。
【0062】
本発明において、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15及びA16は、それぞれ互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基であることが好ましく、水素原子;C1〜C10アルキル基;C2〜C10アルケニル基;C2〜C10アルキニル基;C1〜C10アルコキシ基であることが更に好ましい。
【0063】
本発明において、B1及びB2は、それぞれ互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基であることが好ましく、水素原子;C1〜C10アルキル基;C6〜C10アリール基;C2〜C10アルケニル基;C2〜C10アルキニル基;C1〜C10アルコキシ基であることが更に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、又は、フェニル基であることがより好ましい。
【0064】
mは、2〜100,000の整数であり、2〜10,000の整数であることが好ましく、2〜1,000の整数であることがより好ましく、2〜200の整数であることがさらに好ましい。
【0065】
また、本発明の第4態様では、下記式(4)で示されるビス(フェニルシクロブテニル)フルオレン誘導体が提供される。
【化17】
[式中、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2は、上記の意味を示す。]
【0066】
上記式(4)中のA1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2は、本発明の第3態様で、上記式(3)中のA1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2において説明したのと同様である。
【0067】
上記式(4)中、Y1及びY2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、又は、ハロゲン原子を示す。
Y1及びY2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基、C6〜C10アリール基、C2〜C10アルケニル基、C2〜C10アルキニル基、C1〜C10アルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、又は、ハロゲン原子であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、メチルアミノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であることがさらに好ましく、水素原子、メチル基、ジメチルアミノ基、臭素であることがより好ましい。
【0068】
上記式(4)で示されるビス(フェニルシクロブテニル)フルオレン誘導体は、例えば、下記のスキームで生成することができる。
【化18】
【0069】
本発明で用いる上記式(4)示されるビス(フェニルシクロブテニル)フルオレン誘導体の合成に使用できるジエチルメタロセンとしては、たとえば以下のメタロセンを挙げることができる。
【0070】
ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルジルコニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジエチルジルコニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジエチルジルコニウム;
ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルチタン;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジエチルチタン;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジエチルチタン;
ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルハフニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジエチルハフニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジエチルハフニウム。
【0071】
本発明の第5態様では、本発明の第4態様にかかるビス(フェニルシクロブテニル)フルオレン誘導体の一態様を用いた本発明の第3態様にかかるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法の一態様が提供され、遷移金属化合物及び還元剤の存在下、下記式(5)で示されるビフェニレンシクロブテニレンモノマーを重合させることを特徴とする下記式(3)に示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法が提供される。
【化19】
[式中、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1、B2及びmは、上記の意味を示す。]
【0072】
本発明の第5態様において、下記式(5)で示されるビフェニレンシクロブテニレンモノマーが用いられる。
【化20】
[式中、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2は、上記の意味を有する。]
【0073】
上記式(5)中のA1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2は、本発明の第4態様で、上記式(4)中のA1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15、A16、B1及びB2において説明したのと同様である。
【0074】
上記式(5)中、X3及びX4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子を示す。X3及びX4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であることが好ましく、臭素であることがより好ましい。
【0075】
本発明の第5態様にかかるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法は、遷移金属化合物存在下で行われる。遷移金属化合物としては、ニッケル錯体又はパラジウム錯体を好ましく挙げることができる。
【0076】
本発明の第5態様において使用される遷移金属化合物は、本発明の第2態様の遷移金属化合物において説明したのと同様である。
【0077】
本発明の第5態様において、遷移金属化合物の量は、ビフェニレンシクロブテニレンモノマー(5)1モルに対し、0.0001モル〜20モルであり、好ましくは0.001モル〜1モルであり、更に好ましくは、0.01モル〜0.1モルである。
【0078】
本発明の第5態様にかかるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法は、還元剤存在下で行われる。還元剤としては、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、スズ、リチウム、ナトリウム等を好ましく挙げることができ、亜鉛を特に好ましく挙げることができる。
【0079】
本発明の第5態様において、還元剤の量は、ビフェニレンシクロブテニレンモノマー(5)1モルに対し、0.1モル〜20モルであり、好ましくは0.5モル〜8モルであり、更に好ましくは、1.5モル〜4.0モルである。
【0080】
本発明の第5態様において、反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜100℃の温度範囲、更に好ましくは−50℃〜100℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0081】
本発明の第5態様において、溶媒としては、上記式(5)で示されるビフェニレンシクロブテニレンモノマーを溶解することができる溶媒が好ましい。溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。
【0082】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0083】
有機金属化合物を含め、すべての反応は、窒素雰囲気下で標準的なシュレンク技術を用いて行われた。溶媒として用いたTHF(テトラヒドロフラン)は、ナトリウム金属、ベンゾフェノンで蒸留して無水とした。ジルコノセンジクロライドは、アルドリッチ(Aldrich Chemical Company, Inc)から、アルキンは、東京化成(TCI Co. Ltd)から、購入した。塩化銅は、和光純薬工業(Wako Pure Chemical Industries Ltd)から購入した。その他の試薬は、アルドリッチ(Aldrich Chemical Company, Inc)から購入したものを用いた。
【0084】
1H-NMRおよび13C-NMRスペクトルは、25℃にて重水素化クロロホルム溶液(TMS1%含有)を内部標準として、JEOL JNM-AL-300を用いて測定した。ガスクロマトグラフ分析は、シリカガラスキャピラリカラムSHIMADZU CBP1-M25-O25 及び SHIMADZU C-R6A-Chromatopac integrator を備えたSHIMADZU GC-14A ガスクロマトグラフで測定した。
【0085】
参考例1
1,2−ビス(4−ブロモフェニル)シクロブテン
【化21】
窒素雰囲気下、シュレンク管に二塩化ジルコノセン(700 mg, 2.4 mmol)と無水THF(15 mL)を入れ、-78℃に冷却して臭化エチルマグネシウムのTHF溶液(0.95 M, 5.05 mL, 4.8 mmol)を加えた。1時間攪拌した後、ビス(4−ブロモフェニル)アセチレン(672 mg, 2.0 mmol)を加え、0℃に昇温した。ヨウ素(609 mg, 2.4 mmol)を加えてさらに3時間0℃で攪拌した。塩化銅(I)(238 mg, 2.4 mmol)を加え、室温で6時間攪拌した。反応混合物に3N塩酸を加え、エーテルで抽出し、溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムで生成し、表題化合物を得た(466 mg, 収率64%)。
【0086】
実施例1
【化22】
窒素雰囲気下、シュレンク管に、参考例1で得られた1,2−ビス(4−ブロモフェニル)シクロブテン(364 mg, 1.0 mmol)、塩化ニッケル(II)ビストリフェニルホスフィン(33 mg, 0.05 mmol)、2,2'−ビピリジル(8 mg, 0.05 mmol)、亜鉛粉末(196 mg, 3.0 mmol)、無水DMF(3 mL)を加え、80℃で24時間攪拌した。反応後、生成した固体を、3N塩酸、水、およびエタノールで洗浄することで、ポリマー(198 mg, 収率97%)を黄色粉末として得た。
【0087】
実施例2
実施例1と同様の反応を、参考例1で得られた1,2−ビス(4−ブロモフェニル)シクロブテン(364 mg, 1.0 mmol)、塩化ニッケル(II)ビストリフェニルホスフィン(65 mg, 0.10 mmol)、2,2'−ビピリジル(16 mg, 0.10 mmol)亜鉛粉末(196 mg, 3.0 mmol)、無水DMF(3 mL)で行い、ポリマー(202 mg, 収率99%)を得た。
【0088】
実施例3
2,7−ビス(2−フェニル−1−シクロブテニル)−9,9−ジプロピルフルオレン
【化23】
窒素雰囲気下、20 mLのシュレンク管に二塩化ジルコノセン(351 mg, 1.20 mmol)と5 mLの無水THFを入れ、-78℃に冷却してから、臭化エチルマグネシウムのTHF溶液(0.89 M, 2.7 mL, 2.4 mmol)を加え1時間攪拌した。この溶液に、-20℃に冷却した2,7−ビス(フェニルエチニル)−9,9−ジプロピルフルオレンのTHF(5 mL)溶液を加え、-20℃に昇温して2時間、および0 ℃で1時間攪拌した。これにヨウ素(305 mg, 1.20 mmol)を加えて、0℃で1時間攪拌し、次に塩化銅(I)(119 mg, 1.20 mmol)を加えて室温で12時間攪拌した。反応混合物に3 N塩酸を加え、酢酸エチルで有機層を抽出した。溶媒を留去して得られた黄褐色油状物をシリカゲルカラムで精製し、さらにエタノールから再結晶することで、表題化合物97 mg(収率38%)を黄色粉末として得た。黄色粉末、収率38%。
【0089】
1H NMR (CDCl3,δ) 0.71 (brs, 10 H), 1.82 − 1.94 (m, 4 H), 2.77 − 2.88 (m, 8 H), 7.21 − 7.35 (m, 6 H), 7.40 − 7.47 (m, 2 H), 7.53 − 7.66 (m, 8 H);13C NMR (CDCl3,δ) 14.54, 17.30, 26.74, 26.92, 42.63, 55.11, 119.52, 120.42, 125.03, 126.01, 127.42, 128.26, 135.02, 136.32, 138.23, 139.51, 140.39, 150.97。
【0090】
実施例4
2,7−ビス(2−p−トリル−1−シクロブテニル)−9,9−ジプロピルフルオレン
【化24】
【0091】
実施例3における2,7−ビス(フェニルエチニル)−9,9−ジプロピルフルオレンの代わりに、2,7−ビス(p−トリルエチニル)−9,9−ジプロピルフルオレンを用いて、同様の方法で合成した。黄色粉末、収率37%。
【0092】
1H NMR (CDCl3,δ) 0.71 (brs, 10 H), 1.82 − 1.96 (m, 4 H), 2,37 (s, 6 H), 2.73 − 2.88 (m, 8 H), 7.13 (d, 4 H, J = 8 Hz), 7.39 − 7.66 (m, 10 H);
13C NMR (CDCl3,δ) 14.56, 17.31, 21.37, 26.75, 26.81, 42.67, 55.10, 119.44, 120.38, 124.97, 125.96, 128.95, 133.60, 135.16, 137.27, 138.25, 138.50, 140.27, 150.94。
【0093】
実施例5
2,7−ビス[2−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−シクロブテニル]−9,9−ジプロピルフルオレン
【化25】
【0094】
実施例3における2,7−ビス(フェニルエチニル)−9,9−ジプロピルフルオレンの代わりに、2,7−ビス[(4−ジメチルアミノフェニル)エチニル]−9,9−ジプロピルフルオレンを用いて、同様の方法で合成した。黄色粉末、収率27%。
【0095】
1H NMR (CDCl3,δ) 0.68 − 0.78 (m, 10 H), 1.84 − 1.96 (m, 4 H), 2.72 − 2.84 (m, 8 H), 2.98 (s, 12 H), 6.67 (d, 4 H, J = 9 Hz), 7.39 − 7.64 (m, 10 H);
13C NMR (CDCl3,δ) 14.59, 17.31, 26.62, 26.65, 40.42, 42.71, 55.00, 111.85, 119.27, 120.20, 124.71, 124.95, 127.08, 135.40, 135.56, 138.50, 139.86, 149.77, 150.85。
【0096】
実施例6
2,7−ビス(2−(4−ブロモフェニル)−1−シクロブテニル)−9,9−ジプロピルフルオレン
【化26】
【0097】
窒素雰囲気下、50 mLのシュレンク管に二塩化ジルコノセン(876 mg, 3.0 mmol)と15 mLの無水THFを入れ、-78℃に冷却し、臭化エチルマグネシウムのTHF溶液(0.89 M, 6.8 mL, 6.1 mmol)を加え、1時間攪拌した。その後、窒素ガスを減圧留去し、エチレンガスを導入し、冷媒を取り除いて、室温下エチレン雰囲気のままで1時間攪拌した。2,7−ビス[(4−ブロモフェニル)エチニル]−9,9−ジプロピルフルオレン(304 mg, 0.50 mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。この溶液を-78℃に冷却し、ヨウ素(761 mg, 3.0 mmol)を加え、その後すぐにフラスコを氷浴につけてそのまま3時間攪拌した。塩化銅(I)(297 mg, 3.0 mmol)を加えて12時間攪拌した。反応混合物に3 N塩酸を加え、酢酸エチルで有機層を抽出した。溶媒を留去して得られた黄褐色油状物をシリカゲルカラムで精製し、さらにエタノールから再結晶することで、表題化合物80 mg(収率24%)を黄色粉末として得た。黄色粉末、収率24%。
【0098】
1H NMR (CDCl3,δ) 0.71 (brs, 10 H), 1.82 − 1.98 (m, 4 H), 2.71 − 2.98 (m, 8 H), 7.38 − 7.46 (m, 10 H), 7.61 (brs, 2 H), 7.63 (d, 2 H, J = 2 Hz); 13C NMR (CDCl3,δ) 14.56, 17.29, 26.62, 27.03, 42.59, 55.13, 119.65, 120.32, 121.01, 125.05, 127.53, 131.36, 134.77, 135.08, 136.97, 140.35, 140.47, 151.04。
【0099】
実施例7
【化27】
20 mLのシュレンクフラスコに、2,7−ビス[2−(4−ブロモフェニル)−1−シクロブテニル]−9,9−ジプロピルフルオレン(70 mg, 0.11 mmol)、2,2'−ビピリジル(22 mg, 0.14 mmol)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(38 mg, 0.14 mmol)、1,5−シクロオクタジエン(52 μL, 0.4 mmol)を入れ、無水DMF(2 mL)を加えて70℃で12時間攪拌した。室温に冷却した後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。その有機層をEDTA水溶液で2回、水、および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去して得られた残渣を、少量のクロロホルムに溶解し、それをエタノール中に滴下して、生成した沈殿をろ過し、真空乾燥して、黄色固体を66 mgを得た。
【0100】
1H NMR (CDCl3,δ) 0.55 − 0.93 (m, 10 H), 1.80 − 2.15 (m, 4 H), 2.76 − 2.97 (m, 8 H), 7.35 − 7.85 (m, 14 H)。
【0101】
【発明の効果】
本発明により、異性化の恐れがなく、かつ有機電界発光素子として有用な有機材料を、高収率かつ簡便に得ることができる。
Claims (17)
- 下記式(1)で示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマー。
ただし、R1及びR2、R3及びR4、R5及びR6、並びに、R7及びR8は、それぞれ、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよく、
nは、2〜100,000の整数である。] - R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基である、請求項1に記載のビフェニレンシクロブテニレンポリマー。
- 下記式(1)で示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法であって、
ただし、R1及びR2、R3及びR4、R5及びR6、並びに、R7及びR8は、それぞれ、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよく、
nは、2〜100,000の整数である。]
遷移金属化合物及び還元剤の存在下、下記式(2)で示される1,2−ジフェニルシクロブテンを
重合させることを特徴とする、ビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法。 - 前記遷移金属化合物が、ニッケル錯体又はパラジウム錯体である、請求項3に記載のビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法。
- 前記還元剤が、亜鉛である、請求項3又は4に記載のビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法。
- R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基である、請求項3〜5のいずれかに記載のビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法。
- 下記式(3)で示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマー。
ただし、A1及びA2、A3及びA4、A5及びA6、A7及びA8、A12及びA13、A14及びA15、並びに、B1及びB2は、それぞれ、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよく、
mは、2〜100,000の整数である。] - A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15及びA16は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基である、請求項7に記載のビフェニレンシクロブテニレンポリマー。
- B1及びB2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基である、請求項7又は8に記載のビフェニレンシクロブテニレンポリマー。
- 下記式(4)で示されるビス(フェニルシクロブテニル)フルオレン誘導体。
ただし、A1及びA2、A3及びA4、A5及びA6、A7及びA8、A12及びA13、A14及びA15、並びに、B1及びB2は、それぞれ、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよく、
Y1及びY2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、又は、ハロゲン原子を示す。] - A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15及びA16は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基である、請求項10に記載のビス(フェニルシクロブテニル)フルオレン誘導体。
- B1及びB2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基である、請求項10又は11に記載のビス(フェニルシクロブテニル)フルオレン誘導体。
- 下記式(3)で示されるビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法であって、
ただし、A1及びA2、A3及びA4、A5及びA6、A7及びA8、A12及びA13、A14及びA15、並びに、B1及びB2は、それぞれ、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよく、
mは、2〜100,000の整数である。]
遷移金属化合物及び還元剤の存在下、下記式(5)で示されるビフェニレンシクロブテニレンモノマーを
重合させることを特徴とする、ビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法。 - 前記遷移金属化合物が、ニッケル錯体又はパラジウム錯体である、請求項13に記載のビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法。
- 前記還元剤が、亜鉛である、請求項13又は14に記載のビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法。
- A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A11、A12、A13、A14、A15及びA16は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基である、請求項13〜15のいずれかに記載のビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法。
- B1及びB2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C20アルキル基、置換基を有していてもよいC6〜C20アリール基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルケニル基、置換基を有していてもよいC2〜C20アルキニル基、又は、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基である、請求項13〜16のいずれかに記載のビフェニレンシクロブテニレンポリマーの製造方法。
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