JP4238047B2 - ジエン誘導体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジエン誘導体の製造方法に関し、より詳しくは2位と3位に選択的に置換基を導入させるブタジエン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ジエン誘導体は、医薬、農薬等の等で幅広く用いられる中間体として有用である。例えば、末端アセチレンからカップリングすることによりジエン誘導体を製造する方法が知られている(T. Takahashi, J.Org.Chem. 1995, 60, 4444-4448:非特許文献1)。しかしながら、置換基の導入箇所を選択的に制御することができないといった問題があった。
【0003】
従って、置換基を簡便かつ選択的に導入することができるジエン誘導体の製造方法が望まれていた。
【0004】
【非特許文献1】
T. Takahashi, J.Org.Chem. 1995, 60, 4444-4448
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明では、下記式(1)で示されるジエン誘導体の製造方法であって、
【化4】
[式中、R1及びR2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。]下記式(2a)で示される第1のシリルアセチレン、及び、下記式(2b)で示される第2のシリルアセチレンを、
【化5】
[式中、R1及びR2は、上記の意味を有する。A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいピリジニル基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。]下記式(3)で示される有機金属化合物と、
【化6】
[式中、Mは、遷移金属を示し、L1及びL2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。但し、L1及びL2は、架橋されていてもよい。X1及びX2は、脱離基である。]を反応させ反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を脱シリル化剤で処理する工程とを含むことを特徴とするジエン誘導体の製造方法が提供される。
【0006】
本発明では、Mが周期表第4族から第6族の遷移金属であることが好ましく、Mがチタン、ジルコニウム又はハフニウムであることがさらに好ましい。
【0007】
また、本発明では、前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子であって、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基であることが好ましい。
【0008】
また、本発明では、R1及びR2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基であることが好ましく、また、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基又は置換基を有していてもよいピリジニル基であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、下記式(2a)で示される第1のシリルアセチレン、及び、下記式(2b)で示される第2のシリルアセチレンを、下記式(3)で示される有機金属化合物と反応させ反応混合物を得る工程(第1の工程)と、前記反応混合物を脱シリル化剤で処理する工程(第2の工程)とを含むことを特徴とする下記式(1)で示されるジエン誘導体の製造方法が提供される。
【0010】
【化7】
[式中、R1、R2、A1、A2、A3、A4、A5、A6、X1、X2、M、L1およびL2は、上記の意味を有する。]
【0011】
上記式中、R1およびR2は、それぞれ互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基;又は水酸基である。
【0012】
本明細書において、「C1〜C20炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C1〜C20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C1〜C20炭化水素基」には、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C4〜C20アルキルジエニル基、C6〜C18アリール基、C6〜C20アルキルアリール基、C6〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、C4〜C20シクロアルケニル基、(C3〜C10シクロアルキル)C1〜C10アルキル基などが含まれる。
【0013】
本明細書において、「C1〜C20アルキル基」は、C1〜C10アルキル基であることが好ましく、C1〜C6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0014】
本明細書において、「C2〜C20アルケニル基」は、C2〜C10アルケニル基であることが好ましく、C2〜C6アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0015】
本明細書において、「C2〜C20アルキニル基」は、C2〜C10アルキニル基であることが好ましく、C2〜C6アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
【0016】
本明細書において、「C4〜C20アルキルジエニル基」は、C4〜C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C4〜C6アルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
【0017】
本明細書において、「C6〜C18アリール基」は、C6〜C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0018】
本明細書において、「C6〜C20アルキルアリール基」は、C6〜C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0019】
本明細書において、「C6〜C20アリールアルキル基」は、C6〜C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルキル基」は、C4〜C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルケニル基」は、C4〜C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「C1〜C20アルコキシ基」は、C1〜C10アルコキシ基であることが好ましく、C1〜C6アルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
【0023】
本明細書において、「C6〜C20アリールオキシ基」は、C6〜C10アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
【0024】
1及びR2で示される「C1〜C20炭化水素基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「アミノ基」、「シリル基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
本明細書において、「置換基を有していてもよいアミノ基」の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0026】
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル基」の例としては、制限するわけではないが、ジメチルシリル、ジエチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
【0027】
本発明において、R1及びR2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基であることが好ましく、C1〜C10アルキル基又はC6〜C10アリール基であることが更に好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、又はフェニルであることがより好ましい。
本発明において、R1及びR2が、同一の基であってもよい。
【0028】
本発明において、上記式(1)で示されるジエン誘導体が、2,3−ジブチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−3−プロピル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−3−ヘキシル−1,3−ブタジエンであってもよい。
【0029】
本発明のジエン誘導体の製造方法において、第1の工程では、下記式(2a)で示される第1のシリルアセチレン、及び、下記式(2b)で示される第2のシリルアセチレンが用いられる。
【0030】
【化8】
[式中、R1及びR2は、上記の意味を有する。]
【0031】
上記式中、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいピリジニル基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。
【0032】
1、A2、A3、A4、A5及びA6で示される「C1〜C20炭化水素基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「アミノ基」、「ピリジニル基」、「シリル基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
本発明において、A1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基又は置換基を有していてもよいピリジニル基であることが好ましく、C1〜C10アルキル基又はC6〜C10アリール基であることが更に好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、フェニルであることがより好ましい。
【0034】
本発明のジエン誘導体の製造方法において、第1の工程では、下記式(3)で示される有機金属化合物が用いられる。
【化9】
【0035】
上記式中、Mは、遷移金属を示す。Mとしては、周期表第4族〜第6族の遷移金属であることが好ましく、周期表第4族の金属、即ち、チタン、ジルコニウム及びハフニウムであることが更に好ましく、ジルコニウムであることが特に好ましい。
【0036】
1及びL2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。ただし、L1及びL2は、架橋されていてもよい。前記アニオン性配位子は、非局在化環状η5−配位系配位子、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリールオキシ基又はジアルキルアミド基であることが好ましく、非局在化環状η5−配位系配位子であることが更に好ましい。非局在化環状η5−配位系配位子としては、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基を挙げることができ、無置換のシクロペンタジエニル基、及び置換されたシクロペンタジエニル基であることが好ましい。
【0037】
この置換シクロペンタジエニル基は、例えば、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、n−ブチルシクロペンタジエニル、t−ブチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、ジエチルシクロペンタジエニル、ジイソプロピルシクロペンタジエニル、ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、インデニル基、2−メチルインデニル基、2−メチル−4−フェニルインデニル基、テトラヒドロインデニル基、ベンゾインデニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、オクタヒドロフルオレニル基及びアズレニル基である。
【0038】
非局在化環状η5−配位系配位子は、非局在化環状π系の1個以上の原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。水素の他に、周期表第14族の元素及び/又は周期表第15、16及び17族の元素のような1個以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0039】
非局在化環状η5−配位系配位子、例えば、シクロペンタジエニル基は、中心金属と、環状であってもよい、一つの又は複数の架橋配位子により架橋されていてもよい。架橋配位子としては、例えば、CH2、CH2CH2、CH(CH3)CH2、CH(C49)C(CH32、C(CH32、(CH32Si、(CH32Ge、(CH32Sn、(C652Si、(C65)(CH3)Si、(C652Ge、(C652Sn、(CH24Si、CH2Si(CH32、o−C64又は2、2'−(C642が挙げられる。
【0040】
上記式(3)で示される有機金属化合物は、二つ以上のメタロセン部分 (moiety)を有する化合物も含む。このような化合物は多核メタロセンとして知られている。前記多核メタロセンは、いかなる置換様式及びいかなる架橋形態を有していてもよい。前記多核メタロセンの独立したメタロセン部分は、各々が同一種でも、異種でもよい。前記多核メタロセンの例は、例えばEP−A−632063、特開平4−80214号、特開平4−85310、EP−A−654476に記載されている。
【0041】
上記式中、X1及びX2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、脱離基を示す。脱離基としては、C1〜C20炭化水素基であることが好ましく、C1〜C10アルキル基、C2〜C10アルケニル基、C2〜C10アルキニル基、C3〜C10アリル基、C4〜C10アルキルジエニル基、C4〜C10ポリエニル基、C6〜C10アリール基、C6〜C12アルキルアリール基、C6〜C12アリールアルキル基、C4〜C10シクロアルキル基、又は、C4〜C10シクロアルケニル基が好ましい。脱離基としては、C1〜C6アルキル基であることが更に好ましく、ブチル基であることがより好ましい。
【0042】
本発明のジエン誘導体の製造方法において、第1の工程では、上記式(2a)で示される第1のシリルアセチレン、及び、上記式(2b)で示される第2のシリルアセチレンを、上記式(3)で示される有機金属化合物と反応させ反応混合物を得る。
【0043】
本発明の第1の工程において用いられる上記式(2a)で示される第1のシリルアセチレン及び上記式(2b)で示される第2のシリルアセチレンの量は、上記式(3)で示される有機金属化合物1モルに対し、それぞれ、0.1モル〜100モルであり、好ましくは0.5モル〜3モルであり、更に好ましくは0.8モル〜2.0モルである。
【0044】
本発明の第1の工程において、典型的には、上記式(3)で示される有機金属化合物の溶液に、上記式(2a)で示される第1のシリルアセチレン、及び、上記式(2b)で示される第2のシリルアセチレンを添加し、攪拌して反応混合物を得る。有機金属化合物(3)は単離されたものを用いる必要はなく、溶液中で調製された有機金属化合物をそのまま用いても良い。
【0045】
本発明の第1の工程において、反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜200℃の温度範囲、更に好ましくは−80℃〜60℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0046】
本発明の第1の工程において、溶媒としては、上記式(3)で示される有機金属化合物を溶解することができる溶媒が好ましい。溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。
【0047】
本発明のジエン誘導体の製造方法において、第2の工程では、第1工程で得られた前記反応混合物を脱シリル化剤で処理する。
【0048】
本明細書において、脱シリル化剤としては、酸等を挙げることができる。
【0049】
本明細書において、「酸」としては、広く有機酸、無機酸を挙げることができる。
本明細書において、「有機酸」としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、乳酸、グルコン酸等を挙げることができる。また、「無機酸」としては、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、炭酸、リン酸、アルミン酸、ジルコン酸等を挙げることができる。
【0050】
本発明の第2工程において、脱シリル化剤として、トリフルオロ酢酸、フッ化水素酸を用いることが好ましい。
【0051】
本発明の第2の工程において、典型的には、第1の工程で得られた反応混合物の溶液に脱シリル化剤を添加し、攪拌してジエン誘導体を製造する。反応混合物は単離されたものを用いる必要はなく、溶液中で調製された反応混合物をそのまま用いることが好ましい。
【0052】
本発明の第2の工程において、反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜200℃の温度範囲、更に好ましくは−80℃〜60℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0053】
本発明では、下記式で示されるように、まず、上記式(3)で示される有機金属化合物上で、2種類のシリルアセチレンのうち、シリル基が結合していない側の炭素上でカップリング反応が進行し、α位にシリル基が結合したメタラシクロペンタジエン(4)が生成すると考えられる。これを脱シリル化剤で処理して脱シリル化を行うことにより、ジエンの2位と3位に置換基R1、R2を結合した生成物を得ることができると考えられる。
【0054】
【化10】
【0055】
もっともこのような反応経路は推論に過ぎず、本発明はこのような反応経路に限定されるものではない。
【0056】
本発明において、上記式(3)で示される有機金属化合物としては、たとえば、下記のメタロセンを用いることができる。
【0057】
ビス(シクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム。
【0058】
ビス(シクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン。
【0059】
ビス(シクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジブチルハフニウム。
【0060】
なお、以下のジクロロ体については、ナトリウム等のアルカリ金属、マグネシウム等のアルカリ土類金属のような強塩基で還元するか、又は、ジアルキル体に変換する。
【0061】
ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム。
【0062】
ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン。
【0063】
ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジクロロハフニウム。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0065】
すべての反応は、特に言及しない限り、乾燥した窒素雰囲気下のもとで行われた。溶媒として用いたテトラヒドロフラン(THF)は窒素気流下、ナトリウム金属、ベンゾフェノンで蒸留して無水とした。ジルコノセンジクロライドは、アルドリッチ化学から購入したものを用いた。また、n−ブチルリチウム(1.59 Mヘキサン溶液)は関東化学から購入したものを用いた。アルキンは、東京化成工業から購入したものを用いた。ニッケル(II)錯体は、公知の方法で調製した。その他の試薬も、市販品を購入し、そのまま用いた。
【0066】
1H及び13C NMRスペクトルは、室温のCDCl3又はC6D6(1% TMS含有)溶液を用いて、JEOL NMRスペクトロメター上で測定した。ガスクロマトグラフ分析は、シリカガラスキャピラリカラムSHIMADZU CBP1-M25-O25 及び SHIMADZU C-R6A-Chromatopac integrator を備えたSHIMADZU GC-14A ガスクロマトグラフで測定した。
【0067】
実施例1
2,3−ジブチル−1,3−ブタジエン
【化11】
【0068】
窒素雰囲気下ジルコノセンジクロリド292mgを5mlのテトラヒドロフランに溶解し、ドライアイスバスにて−78℃に冷却する。ここに2当量のブチルリチウム試薬を加え撹拌する。この液に2当量の1−トリメチルシリル−1−ヘキシンを加え、ドライアイスバスをはずして、ゆっくり室温まで温度を上げる。すると1−トリメチルシリル−1−ヘキシンの2量化したジルコナシクロペンタジエンが生成する。このジルコナシクロペンタジエンを3Nの塩酸で処理し、1,4−ビス(トリメチルシリル)−2,3−ジブチル−1,3−ブタジエンを得た。これにトリフルオロ酢酸を加え、室温で3時間撹拌すると2,3−ジブチル−1,3−ブタジエンをGC収率98%、単離収率75%で得た。
【0069】
実施例2
2−フェニル−3−ヘキシル−1,3−ブタジエン
【化12】
【0070】
実施例1において1−トリメチルシリル−1−ヘキシンの代わりに1−トリメチルシリルフェニルアセチレンを用いると1−トリメチルシリルフェニルアセチレンが2量化したジルコナシクロペンタジエンが得られるが、これに1−トリメチルシリル−1−オクチンを1当量加えて撹拌すると1−トリメチルシリルフェニルアセチレンと1−トリメチルシリル−1−オクチンがクロスでカップリングした1,4−ビス(トリメチルシリル)−2−フェニル−3−ヘキシルジエンが得られた。このジエンにこれにトリフルオロ酢酸を加え、室温で3時間撹拌すると2−フェニル−3−ヘキシル−1,3−ブタジエンをGC収率95%、単離収率85%で得た。
【0071】
参考例1
2−フェニル−3−プロピル−1,3−ヘプタジエン
【化13】
【0072】
実施例2において1−トリメチルシリル−1−オクチンの代わりに4−オクチンを加え、室温で撹拌すると1−トリメチルシリルフェニルアセチレンと4−オクチンがカップリングしたジルコナシクロペンタジエンが得られた。これを3N塩酸で処理すると、1−トリメチルシリル−2−フェニル−3−プロピル−1,3−ヘプタジエンを得ることができた。これにトリフルオロ酢酸を加え、室温で3時間撹拌すると2−フェニル−3−プロピル−1,3−ヘプタジエンをGC収率92%、単離収率77%で得ることができた。
【0073】
【発明の効果】
本発明の方法により、置換基を簡便かつ選択的に導入することができるジエン誘導体を得ることができる。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で示されるジエン誘導体の製造方法であって、
    [式中、R1及びR2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。]
    下記式(2a)で示される第1のシリルアセチレン、及び、下記式(2b)で示される第2のシリルアセチレンを、
    [式中、R1及びR2は、上記の意味を有する。
    1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいピリジニル基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。]
    下記式(3)で示される有機金属化合物と、
    [式中、Mは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを示し、
    1及びL2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、非局在化環状η 5 −配位系配位子を示す。但し、L1及びL2は、架橋されていてもよい。
    1及びX2は、塩素原子である。]
    を反応させ反応混合物を得る工程と、前記反応混合物を脱シリル化剤で処理する工程とを含むことを特徴とするジエン誘導体の製造方法。
  2. 前記非局在化環状η 5 −配位系配位子が、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基である、請求項に記載のジエン誘導体の製造方法。
  3. 1及びR2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基である、請求項1又は2に記載のジエン誘導体の製造方法。
  4. 1、A2、A3、A4、A5及びA6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基、置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基又は置換基を有していてもよいピリジニル基である、請求項1〜のいずれかに記載のジエン誘導体の製造方法。
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