JP4074529B2 - 全置換ナフタレン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、全置換ナフタレン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ナフタレンは、機能性材料として有用であり、置換基を導入することにより、その機能、物性を制御することができる。このため、所望の置換基を導入したナフタレン誘導体の製造法が所望されていた。
【0003】
従来、すべての位置に置換基を有する全置換ナフタレン誘導体を合成する方法としては、ディールス・アルダー法によるものが知られていた。しかしながら、この方法では、出発物質である任意の置換基をもったベンザインを発生させることが困難であるという大きな問題があった。
【0004】
従って、置換基を任意に選ぶことができる全置換ナフタレン誘導体を高収率で簡便に得る方法の提供が所望された。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明では、下記式(1)で示される全置換ナフタレン誘導体の製造方法であって、
【化5】
[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基であり、ただし、R1及びR2、R2及びR3、R3及びR4、A1及びA2、A2及びA3、並びにA3及びA4は、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよい。]第1の遷移金属化合物存在下、下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンと、
【化6】
[式中、R1、R2、R3及びR4は、上記の意味を有する。M1は、遷移金属を示し、L1及びL2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。但し、L1及びL2は、架橋されていてもよい。]下記式(3)で示されるビニル化合物とを反応させ、第1の反応混合物を得る工程と、
【化7】
[式中、Xは脱離基である。]前記第1の反応混合物をハロゲン化して、第2の反応生成物を得る工程と、第2の遷移金属化合物存在下、前記第2の反応生成物と下記式(4)で示されるメタラシクロペンタジエンとを反応させる工程と、
【化8】
[式中、A1、A2、A3及びA4は、上記の意味を有する。M2は、遷移金属を示し、L3及びL4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。但し、L3及びL4は、架橋されていてもよい。]を含むことを特徴とする全置換ナフタレン誘導体の製造方法が提供される。
【0006】
本発明において、第1の遷移金属化合物が、パラジウム錯体又はニッケル錯体であることが好ましい。また、第2の遷移金属化合物が、銅イオン、ニッケルイオン、ビスマスイオン、または、パラジウムイオンを含む塩であることが好ましい。
【0007】
また、本発明において、M1及びM2が、周期表第4族から第6族の遷移金属であることが好ましく、M1及びM2が、ジルコニウムであることがさらに好ましい。
【0008】
また、本発明において、前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子であって、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基であることが好ましい。
【0009】
また、本発明において、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、Xが、ハロゲン原子であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明では、第1の遷移金属化合物存在下、下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンと、下記式(3)で示されるビニル化合物とを反応させ、第1の反応混合物を得る工程(第1の工程)と、前記第1の反応混合物をハロゲン化して、第2の反応生成物を得る工程(第2の工程)と、第2の遷移金属化合物存在下、前記第2の反応生成物と下記式(4)で示されるメタラシクロペンタジエンとを反応させる工程(第3の工程)とを含むことを特徴とする下記式(1)で示される全置換ナフタレン誘導体の製造方法が提供される。
【0012】
【化9】
[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3、A4、X、M1、L1、L2、M2、L3およびL4は、上記の意味を有する。]
【0013】
上記式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。
【0014】
本明細書において、「C1〜C20炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C1〜C20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C1〜C20炭化水素基」には、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C4〜C20アルキルジエニル基、C6〜C18アリール基、C6〜C20アルキルアリール基、C6〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、C4〜C20シクロアルケニル基、(C3〜C10シクロアルキル)C1〜C10アルキル基などが含まれる。
【0015】
本明細書において、「C1〜C20アルキル基」は、C1〜C10アルキル基であることが好ましく、C1〜C6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0016】
本明細書において、「C2〜C20アルケニル基」は、C2〜C10アルケニル基であることが好ましく、C2〜C6アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0017】
本明細書において、「C2〜C20アルキニル基」は、C2〜C10アルキニル基であることが好ましく、C2〜C6アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、2−プロピニル、2−ブチニル等を挙げることができる。
【0018】
本明細書において、「C4〜C20アルキルジエニル基」は、C4〜C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C4〜C6アルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
【0019】
本明細書において、「C6〜C18アリール基」は、C6〜C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「C6〜C20アルキルアリール基」は、C6〜C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「C6〜C20アリールアルキル基」は、C6〜C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルキル基」は、C4〜C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルケニル基」は、C4〜C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル等を挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「C1〜C20アルコキシ基」は、C1〜C10アルコキシ基であることが好ましく、C1〜C6アルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
【0025】
本明細書において、「C6〜C20アリールオキシ基」は、C6〜C10アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
【0026】
R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4で示される「C1〜C20炭化水素基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「アミノ基」、「シリル基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
本明細書において、「置換基を有していてもよいアミノ基」の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0028】
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル基」の例としては、制限するわけではないが、ジメチルシリル、ジエチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
【0029】
本発明において、R1及びR2、R2及びR3、R3及びR4、A1及びA2、A2及びA3、並びにA3及びA4は、それぞれ、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよい。これらの置換基が形成する環は、4員環〜16員環であることが好ましく、4員環〜12員環であることが更に好ましい。この環は、ベンゼン環等の芳香族環あってもよいし、脂肪族環であってもよい。また、これらの置換基が形成する環に、更に単数又は複数の環が形成されていてもよい。
【0030】
前記飽和環または不飽和環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子または式―N(B)―で示される基(式中、Bは水素原子またはC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよい。即ち、前記飽和環または不飽和環はヘテロ環であってもよい。かつ、置換基を有していてもよい。不飽和環は、ベンゼン環等の芳香族環であってもよい。
【0031】
Bは,水素原子またはC1〜C10炭化水素基であることが好ましく、水素原子またはC1〜C7炭化水素基であることが更に好ましく、Bは水素原子、C1〜C3アルキル基、フェニル基またはベンジル基であることが更になお好ましい。
【0032】
この飽和環又は不飽和環は、置換基を有していてもよく、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などの置換基が導入されていてもよい。
【0033】
本発明において、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基又はハロゲン原子であることが好ましく、C1〜C10アルキル基;C6〜C10アリール基又はハロゲン原子であることが更に好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、フェニル、又はヨウ素であることがより好ましい。
【0034】
本発明において、上記式(1)で示される全置換ナフタレン誘導体が、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタブチルナフタレン、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタプロピルナフタレン、1,2,3,4−テトラメチル−5,6,7,8−テトラエチルナフタレン、1,2,3,4−テトラフェニル−5,6,7,8−テトラプロピルナフタレン、1,2,3,4,9,10-ヘキサエチル-6,7,8,9-テトラヒドロアントラセン、1,2,3,4-テトラメチル-5,6-ジエチル-7,8-ジプロピルナフタレン、1,2,3,4-テトラメチル-5,6-ジエチル-7,8-ジフェニルナフタレン、1,3,4−トリメチル−2−ヨード−5,6,7,8−テトラエチルナフタレン、1,2,3−トリメチル−4−ヨード−5,6,7,8−テトラエチルナフタレン、1,4−ジメチル−2,3−ジヨード−5,6,7,8−テトラエチルナフタレンであることが好ましい。
【0035】
本発明の全置換ナフタレン誘導体の製造方法において、第1の工程では、下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンが用いられる。
【0036】
【化10】
[式中、R1、R2、R3及びR4は、上記の意味を有する。]
【0037】
M1は、遷移金属を示す。M1としては、周期表第4族〜第6族の遷移金属であることが好ましく、周期表第4族の金属、即ち、チタン、ジルコニウム及びハフニウムであることが更に好ましく、ジルコニウムであることが特に好ましい。
【0038】
L1及びL2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。ただし、L1及びL2は、架橋されていてもよい。前記アニオン性配位子は、非局在化環状η5−配位系配位子、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリールオキシ基又はジアルキルアミド基であることが好ましく、非局在化環状η5−配位系配位子であることが更に好ましい。非局在化環状η5−配位系配位子としては、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基を挙げることができ、無置換のシクロペンタジエニル基、及び置換されたシクロペンタジエニル基であることが好ましい。
【0039】
本明細書において、「置換シクロペンタジエニル基」は、例えば、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、n−ブチルシクロペンタジエニル、t−ブチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、ジエチルシクロペンタジエニル、ジイソプロピルシクロペンタジエニル、ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、インデニル基、2−メチルインデニル基、2−メチル−4−フェニルインデニル基、テトラヒドロインデニル基、ベンゾインデニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、オクタヒドロフルオレニル基及びアズレニル基である。
【0040】
本明細書において、「非局在化環状η5−配位系配位子」は、非局在化環状π系の1個以上の原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。水素の他に、周期表第14族の元素及び/又は周期表第15、16及び17族の元素のような1個以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0041】
本明細書において、「非局在化環状η5−配位系配位子」、例えば、シクロペンタジエニル基は、中心金属と、環状であってもよい、一つの又は複数の架橋配位子により架橋されていてもよい。架橋配位子としては、例えば、CH2、CH2CH2、CH(CH3)CH2、CH(C4H9)C(CH3)2、C(CH3)2、(CH3)2Si、(CH3)2Ge、(CH3)2Sn、(C6H5)2Si、(C6H5)(CH3)Si、(C6H5)2Ge、(C6H5)2Sn、(CH2)4Si、CH2Si(CH3)2、o−C6H4又は2、2'−(C6H4)2が挙げられる。
【0042】
上記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンは、二つ以上のメタロセン部分 (moiety)を有する化合物も含む。このような化合物は多核メタロセンとして知られている。前記多核メタロセンは、いかなる置換様式及びいかなる架橋形態を有していてもよい。前記多核メタロセンの独立したメタロセン部分は、各々が同一種でも、異種でもよい。前記多核メタロセンの例は、例えばEP−A−632063、特開平4−80214号、特開平4−85310、EP−A−654476に記載されている。
【0043】
本発明の全置換ナフタレン誘導体の製造方法において、第1の工程では、下記式(3)で示されるビニル化合物が用いられる。
【0044】
【化11】
【0045】
上記式中、Xは脱離基である。脱離基としては、例えば、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン原子、トシラート基(―O−S(=O)2−C6H4−CH3)、トリフルオロメタンスルホン酸エステル(トリフラート)、C1〜C20アルコキシ基(好ましくは、C1〜C10アルコキシ基であり、更に好ましくは、C1〜C6アルコキシ基)、C6〜C20アリールオキシ基、トリ低級アルキルシリルオキシ基等が挙げられる。脱離基としては、Cl、Br、トシラート基、C1〜C20アルコキシ基、及びトリ低級アルキルシリルオキシ基が好ましく、Brがより好ましい。
【0046】
本発明の全置換ナフタレン誘導体の製造方法において、第1の工程では、第1の遷移金属化合物を用いる。
【0047】
第1の遷移金属化合物は、金属塩でもよいし、金属錯体でもよい。金属塩の場合には、例えば、ニッケル、パラジウム、銅、ルテニウム又はロジウムと、塩酸、硫酸等の無機酸又はカルボン酸のような有機酸の塩であってもよい。例えば、ハロゲン化ニッケル(II)、ハロゲン化パラジウム(II)、ハロゲン化銅(I)、ハロゲン化ルテニウム(III)、ハロゲン化ロジウム(III)のような金属塩であってもよく、特に、ハロゲン化ニッケル(II)等が好ましく、用いられる。
【0048】
第1の遷移金属化合物が金属錯体の場合には、4配位又は6配位であることが好ましい。配位子としては、ホスフィン、ホスファイト、アミン、ニトリル、又は、ハロゲン原子等が好ましい。配位子は、1座(unidentate)であってもよいし、2座(bidentate)、3座(tridentate)、又は、4座(tetradentate)であってもよい。
【0049】
ホスフィンは、ジフェニルホスフィンのようなジアリールホスフィン、トリフェニルホスフィンのようなトリアリールホスフィン、トリエチルホスフィンのようなトリアルキルホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンのようなα,ω−ビス(ジアリールホスフィノ)アルカン、P,P,P',P',P",P"−ヘキサフェニル−トリスエチレンテトラホスフィンのようなP,P,P',P',P",P"−六置換−トリスアルキレンテトラホスフィン等であってもよい。ホスファイトは、ホスフィンと同様である。
【0050】
アミンは、配位子としては、ピリジン、ビピリジン、キノリン等の芳香族アミンであってもよいし、エチレンジアミンのようなアルキレンジアミン、N,N,N',N'−テトラアルキルエチレンジアミンのようなN,N,N',N'−四置換アルキレンジアミン、トリスエチレンジアミンのようなトリスアルキレンジアミン等の脂肪族アミンであってもよい。
【0051】
本発明において、第1の遷移金属化合物はニッケル錯体であることが好ましい。
【0052】
ニッケル錯体は、4配位であることが好ましい。ニッケル錯体は、たとえば、NiX2P1P2(式中、Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示し、P1及びP2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ホスフィン、ホスファイト又はアミンを示し、好ましくは、ホスフィン又はアミンを示し、更に好ましくはホスフィンを示す。ただし、P1及びP2は、互いに架橋していてもよい。)であってもよい。ホスフィン、ホスファイト又はアミンについては、上述の通りである。
【0053】
ニッケル錯体としては、たとえば、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロニッケル、ジクロロ(2,2'−ビピリジン)ニッケルが挙げられる。NiX2P1P2で示されるニッケル錯体は、NiX2で示されるニッケル塩と比べて、有機溶媒中での溶解度が向上するので、用途によっては、好ましい。たとえば、NiX2で示されるニッケル塩を反応系が含まれている溶媒に添加し、所望により、更にホスフィンを溶媒に添加して in situで、ニッケルホスフィン錯体を形成してもよい。
【0054】
本発明の全置換ナフタレン誘導体の製造方法において、第1の工程では、第1の遷移金属化合物存在下、上記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンと、上記式(3)で示されるビニル化合物とを反応させ、第1の反応混合物を得る。
【0055】
上記式(3)で示されるビニル化合物の量は、メタラシクロペンタジエン(2)1モルに対し、0.1モル〜100モルであり、好ましくは0.5モル〜3モルであり、更に好ましくは0.8モル〜1.5モルである。
【0056】
第1の遷移金属化合物の量は、メタラシクロペンタジエン(2)1モルに対し、0.0001モル〜10モルであり、好ましくは0.005モル〜3モルであり、更に好ましくは0.5モル〜2.5モルである。
【0057】
本発明の第1の工程において、典型的には、上記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンの溶液に、第1の遷移金属化合物および上記式(3)で示されるビニル化合物を添加し、攪拌して反応混合物を得る。メタラシクロペンタジエン(2)は単離されたものを用いる必要はなく、溶液中で調製されたメタラシクロペンタジエンをそのまま用いても良い。
【0058】
本発明の第1の工程において、反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜200℃の温度範囲、更に好ましくは−80℃〜60℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0059】
本発明の第1の工程において、溶媒としては、上記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンを溶解することができる溶媒が好ましい。溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。
【0060】
本発明の全置換ナフタレン誘導体の製造方法において、第2の工程では、第1工程で得られた第1の反応混合物をハロゲン化して、第2の反応生成物を得る。
【0061】
第1の反応混合物のハロゲン化は、たとえば、濃硫酸を含んだ80%の酢酸中、ヨウ素と過ヨウ素酸を加えて加熱して行うことができる。
【0062】
第2の工程において、反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜200℃の温度範囲、更に好ましくは70℃〜80℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0063】
第2の工程において、溶媒としては、濃硫酸を含んだ80%酢酸を用いることが好ましい。
【0064】
本発明の全置換ナフタレン誘導体の製造方法において、第3の工程では、第2の遷移金属化合物存在下、第2の工程で得られた第2の反応生成物と下記式(4)で示されるメタラシクロペンタジエンとを反応させる。
【0065】
【化12】
[式中、A1、A2、A3及びA4は、上記の意味を有する。]
【0066】
上記式中、M2は、遷移金属を示す。M2としては、周期表第4族〜第6族の遷移金属であることが好ましく、周期表第4族の金属、即ち、チタン、ジルコニウム及びハフニウムであることが更に好ましく、ジルコニウムであることが特に好ましい。
【0067】
L3及びL4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。ただし、L3及びL4は、架橋されていてもよい。前記アニオン性配位子は、非局在化環状η5−配位系配位子、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリールオキシ基又はジアルキルアミド基であることが好ましく、非局在化環状η5−配位系配位子であることが更に好ましい。非局在化環状η5−配位系配位子としては、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基を挙げることができ、無置換のシクロペンタジエニル基、及び置換されたシクロペンタジエニル基であることが好ましい。
【0068】
上記式(4)で示されるメタラシクロペンタジエンは、二つ以上のメタロセン部分 (moiety)を有する化合物を含んでいてもよい。
【0069】
本発明の全置換ナフタレン誘導体の製造方法において、第3の工程では、第2の遷移金属化合物が用いられる。
【0070】
第2の遷移金属化合物は、金属塩でもよいし、金属錯体でもよいが、金属塩であることが好ましい。金属塩の場合は、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu又はZnを含むことが好ましく、例えば、V、Cr、Mn、Cu又はZnを含むことが更に好ましく、Cuを含むことが特に好ましい。例えば、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu又はZnについての塩酸、硫酸等の無機酸の塩を用いることができる。たとえば、ハロゲン化チタン(IV)、ハロゲン化鉄(III)、ハロゲン化銅(I)、ハロゲン化亜鉛(II)、ハロゲン化ビスマス(III)のような金属塩が好ましく、特に、CuClのようなハロゲン化銅(I)が好ましく、用いられる。
【0071】
本発明の全置換ナフタレン誘導体の製造方法において、第3の工程では、第2の遷移金属化合物存在下、第2の工程で得られた第2の反応生成物と上記式(4)で示されるメタラシクロペンタジエンとを反応させ、全置換ナフタレン誘導体を得る。
【0072】
メタラシクロペンタジエン(4)の量は、第2の反応生成物1モルに対し、0.1モル〜100モルであり、好ましくは0.5モル〜3モルであり、更に好ましくは0.8モル〜3.0モルである。
【0073】
第2の遷移金属化合物の量は、第2の反応生成物1モルに対し、0.1モル〜100モルであり、好ましくは0.5モル〜3モルであり、更に好ましくは0.8モル〜2.5モルである。
【0074】
本発明の第3の工程において、典型的には、メタラシクロペンタジエン(4)の溶液に、第2の遷移金属化合物と第2の工程で得られた反応生成物とを添加し、攪拌して全置換ナフタレン誘導体を製造する。
【0075】
第3の工程において、反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜200℃の温度範囲、更に好ましくは−80℃〜60℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0076】
第3の工程において、溶媒としては、上記式(4)で示されるメタラシクロペンタジエンを溶解することができる溶媒が好ましい。溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。ここで、N,N'−ジメチルプロピレンウレア、ヘキサメチルホスホアミド等の安定化剤を共存させることが好ましい。
【0077】
本発明では、下記で示されるように、まず、第1の遷移金属化合物存在下、下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンと下記式(3)で示されるビニル化合物とが反応し、1,2,3,4−テトラ置換ベンゼン(5)が生成する。これをハロゲン化剤で処理してジハロゲノ体(6)とし、第2の遷移金属化合物存在下、下記式(4)で示されるメタラシクロペンタジエンと反応させることによって下記式(1)で示される全置換ナフタレン化合物を得ることができると考えられる。
【0078】
【化13】
[式中、R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3、A4、X、M1、L1、L2、M2、L3およびL4は、上記の意味を有する。Y1およびY2はハロゲン原子を示す。]
【0079】
もっともこのような反応経路は推論に過ぎず、本発明はこのような反応経路に限定されるものではない。
【0080】
上記式(2)および上記式(4)で示されるメタラシクロペンタジエンは、ビスシクロペンタジエニル金属ジアルキルのようなメタロセン1モルに、約2モルのアルキン又は約1モルのジインを作用させることにより得ることができる。本発明において、上記式(2)および上記式(4)で示されるメタラシクロペンタジエンとしてジルコナシクロペンタジエンを用いる場合には、例えば、下記のジルコノセンを用いて合成することができる。
【0081】
ビス(シクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジブチルジルコニウム。
【0082】
なお、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウムなどのジクロロ体については、ナトリウム等のアルカリ金属、マグネシウム等のアルカリ土類金属のような強塩基で還元するか、又は、ジアルキル体に変換してから、ジルコナシクロペンタジエンを生成させる。
【0083】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0084】
すべての試薬は、市販品を購入し、そのまま用いた。溶媒として用いたテトラヒドロフラン(THF)はナトリウム金属、ベンゾフェノンで蒸留して無水とした。すべての反応は、乾燥した窒素雰囲気下のもとで標準シュレンク手法を用いて行われた。
【0085】
参考例1
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン
【化14】
Cp2ZrCl2(0.292g, 1.0mmol)及びn-BuLi(0.80mL, 2.0mmol, 1.59M)から得られたCp2ZrBu2のTHF(5mL)溶液に、3−ヘキシン(0.22mL, 2.0mmol)を-78℃で加えた。反応混合物を室温まで昇温させ、1時間攪拌した。得られた反応混合物にビニルブロマイド(0.14mL, 2.0mmol)およびNiCl2(PPh3)2(0.65g, 1.0mmol)を室温にて加えた。反応混合物を1時間攪拌し、3N HClを加えて反応を終了させ、ヘキサンで抽出した。組合わさった有機抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮させた。シリカゲル(ヘキサン)を用いたカラムクロマトグラフィーによって表題化合物を得た。無色油。91mg、単離収率48%。NMR収率53%。
【0086】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ1.16 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 1.23 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 2.64 (q, J = 7.5 Hz, 4H), 2.68 (q, J = 7.5 Hz, 4H), 7.00 (s, 2H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ15.57, 15.62, 21.72, 25.66, 126.14, 139.58, 139.64; 高分解能質量分析: 計算値C14H22 190.1721、実測値 190.1700。
【0087】
参考例2
1,2,3,4-テトラプロピルベンゼン
【化15】
参考例1と同様の手順で行った。ただし、3−ヘキシン(2.0mmol)の代わりに、40.0mmolの4−オクチンを用いた。無色油。2.54g、単離収率 52%。
【0088】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ 0.99 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.04 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.47-1.63, (m, 8H), 2.52-2.58 (m, 8H), 6.94 (s, 2H),; 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ14.50, 14.99, 24.67, 24.71, 31.50, 35.25, 126.62, 138.23, 138.65。
【0089】
参考例3
1,2,3,4-テトラブチルベンゼン
【化16】
参考例1と同様の手順で行った。ただし、3−ヘキシン( 2.0mmol)の代わりに、20.0mmolの5−デシンを用いた。無色油。1.55g、単離収率 51%。
【0090】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ1.00 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 1.03 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 1.40-1.66 (m, 16H), 2.58-2.66 (m, 8H), 6.98 (s, 2H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ13.90, 14.04, 23.05, 23.53, 28.84, 32.80, 33.60, 33.90, 126.66, 138.38, 138.63; 高分解能質量分析: 計算値 C22H38 302.2973、実測値302.2964。
【0091】
参考例4
1,2,3,4-テトラメチルベンゼン
【化17】
参考例1と同様の手順で行った。ただし、3−ヘキシンの代わりに2−ブチンを用いた。
【0092】
参考例5
1,2,3,4-テトラエチルジヨードベンゼン
【化18】
参考例1で得られた、1,2,3,4-テトラエチルベンゼン(1.90g, 10.0mmol)を10mLの濃硫酸を含む80%酢酸(50mL)に溶解させ、素早く攪拌して、70-80℃にて、ヨウ素(10.0g, 39.0mmol)と過ヨウ素酸(3.89g, 17.0mmol)とともに1時間加熱した。飽和亜硫酸水素ナトリウムを加えて余分なヨウ素を除去した。白色析出物を濾過で集めて、エタノールで再結晶させ、表題化合物を得た。白色固体。3.80g,単離収率 86%。
【0093】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ1.15 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 1.17 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 2.70 (q, J = 7.5 Hz, 4H), 3.09 (q, J = 7.5 Hz, 4H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ14.09, 15.43, 23.75,.36.10, 115.90, 141.17, 145.53; 高分解能質量分析: 計算値C14H20I2 441.9655, 実測値 441.9672, 元素分析: 計算値C14H20I2: C 38.03; H 4.56; I 57.41、実測値: C 37.68; H 4.55; I 57.81。
【0094】
参考例6
1,2,3,4-テトラプロピルジヨードベンゼン
【化19】
参考例5と同様の手順で行った。ただし、参考例1で得られた1,2,3,4-テトラエチルベンゼンの代わりに、参考例2で得られた1,2,3,4-テトラプロピルベンゼン(5.0mmol)を用いた。白色固体。1.37g, 単離収率 55%。
【0095】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ 1.03 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.04 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.45-1.58 (m, 8H), 2.54-2.58 (m, 4H), 2.93-3.00 (m, 4H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ14.49, 14.96, 23.11, 24.60, 33.44, 45.11, 116.14, 140.10, 144.40; 高分解能質量分析: 計算値 C18H28I2 498.0269、実測値 498.0281、元素分析: 計算値C18H28I2: C 43.39; H 5.66; I 50.94、実測値: C 43.58; H 5.64; I 50.77。
【0096】
参考例7
1,2,3,4-テトラブチルジヨードベンゼン
【化20】
参考例5と同様の手順で行った。ただし、参考例1で得られた1,2,3,4-テトラエチルベンゼンの代わりに、参考例3で得られた1,2,3,4-テトラブチルベンゼン(3.0mmol)を用いた。白色固体。1.15g, 単離収率 69%。
【0097】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ 0.98 (t, J = 6.9 Hz, 12H), 1.45-1.57 (m, 16H), 2.59 (t, J = 7.9, Hz 4H), 2.98 (t, J = 8.0 Hz, 4H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ13.80, 13.85, 23.07, 23.41, 30.75, 31.76, 33.32, 42.73, 116.00, 140.11, 144.41; 高分解能質量分析: 計算値 C22H36I2 554.0906、実測値 544.0885、元素分析: 計算値C22H36I2: C 47.67; H 6.55; I 45.79、実測値: C 47.45; H 6.32; I 45.84。
【0098】
参考例8
1,2,3,4-テトラメチルジヨードベンゼン
【化21】
参考例5と同様の手順で行った。ただし、参考例1で得られた1,2,3,4-テトラエチルベンゼンの代わりに、参考例4で得られた1,2,3,4-テトラメチルベンゼンを用いた。
【0099】
実施例1〜5を下記の反応スキームAに従って行った。
【化22】
【0100】
実施例1
1,2,3,4,5,6,7,8-オクタプロピルナフタレン
【化23】
Cp2ZrCl2 (2.2mmol, 0.643 g)のTHF溶液に、n-ブチルリチウム(4.4 mmol, 1.6 M ヘキサン溶液, 2.75 ml)を-78℃にて加え、反応混合物を1時間、同じ温度で攪拌した。4−オクチン(4.0 mmol)を加えた後、反応混合物の温度を徐々に室温に上げ、3時間攪拌し、ジルコノセンシクロペンタジエンが定量的に得られた。こうして得られた溶液に、塩化銅(4.2 mmol, 0.416 g)、DMPU(N,N'-ジメチルプロピレンウレア)(6.0 mmol, 0.726 ml)及び参考例6で得られたテトラプロピルジヨードベンゼン(1.0 mmol)を加え、混合物を50℃で、6〜24時間攪拌した。3N HClを加えて反応を終了させ、通常の処理をした後、溶離液としてヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによって表題化合物を得た。上記反応スキームA中、R1 = R2 = Pr、無色油、GC収率34%、単離収率26%。
【0101】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ0.75 (t, J = 7.1 Hz, 12H), 1.04 (t, J = 7.1 Hz, 12H), 1.30-1.37, (m, 8H), 1.50-1.58 (m, 8H), 2.62 (t, J = 7.8 Hz, 8H), 2.86 (t, J = 7.4 Hz, 8H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ14.28, 14.91, 24.92, 25.03, 32.12, 33.58, 133.26, 133.55, 134.96; 高分解能質量分析: 計算値 C34H56 464.4394、実測値464.4382。
【0102】
実施例2
1,2,3,4,5,6,7,8-オクタブチルナフタレン
【化24】
【0103】
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに5−デシンを用い、参考例6で得られたテトラプロピルジヨードベンゼンの代わりに、参考例7で得られたテトラブチルジヨードベンゼンを用いた。上記反応スキームA中、R1 = R2 = Bu、無色油、GC収率52%、単離収率40%。
【0104】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ0.81 (t, J = 7.2 Hz, 12H), 0.99 (t, J = 6.9 Hz, 12H), 1.11-1.23 (m, 8H), 1.26-1.36 (m, 8H), 1.41- 1.57 (m, 16H), 2.66 (t, J = 7.5, Hz 8H), 2.89 (t, J = 7.5 Hz, 8H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ14.03, 23.06, 23.54, 29.47, 31.37, 33.91, 34.02, 133.25, 133.68, 134.95; 高分解能質量分析: 計算値 C42H72 576.5634、実測値576.5641。
【0105】
実施例3
1,2,3,4-テトラメチル-5,6,7,8-テトラエチルナフタレン
【化25】
【0106】
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに2−ブチンを用い、参考例6で得られたテトラプロピルジヨードベンゼンの代わりに、参考例5で得られたテトラエチルジヨードベンゼンを用いた。上記反応スキームA中、R1 =Me, R2 = Et、白色固体、GC収率70%、単離収率62%。
【0107】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ1.15 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 1.20 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 2.32 (s, 6H), 2.53 (s, 6H), 2.81 (q, J = 7.5 Hz, 4H), 2.97 (q, J = 7.5 Hz, 4H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ15.85, 16.75, 16.98, 21.51, 22.18, 24.47, 128.37, 131.96, 134.54, 134.72, 137.19; 高分解能質量分析: 計算値C22H32 296.2504。
【0108】
実施例4
1,2,3,4-テトラフェニル-5,6,7,8-テトラプロピルナフタレン
【化26】
【0109】
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに1,2−ジフェニルアセチレンを用いた。上記反応スキームA中、R1=Ph, R2=Pr、黄色固体、単離収率21%。
【0110】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ0.50 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.02 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.07-1.14, (m, 4H), 1.53-1.62 (m, 4H), 2.13 (t, J = 8.1 Hz, 4H), 2.57-2.63 (m, 4H), 6.57-6.60 (m, 4H), 6.76-6.80 (m, 6H), 6.94-7.05 (m, 10H) ; 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ14.07, 14.98, 24.93, 25.15, 32.18, 32.59, 124.57, 125.54, 126.14, 126.94, 131.35, 131.57, 132.58, 135.31, 136.38, 137.12, 138.12, 141.23, 143.49; 高分解能質量分析: 計算値 C46H48 600.3756、実測値 600.3758。
【0111】
実施例5
1,2,3,4,9,10-ヘキサエチル-6,7,8,9-テトラヒドロアントラセン
【化27】
【0112】
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチン(4.0 mmol)の代わりにドデカ−3,9−ジイン(2.0 mmol)を用い、参考例6で得られたテトラプロピルジヨードベンゼンの代わりに、参考例5で得られたテトラエチルジヨードベンゼンを用いた。上記反応スキームA中、R 2= Et、白色固体、GC収率50%、単離収率29%。
【0113】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ1.07 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 1.15 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.16 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 1.74, (br, 4H), 2.73 (q, J = 7.5 Hz, 4H), 2.77 (br, 4H), 2.83 (q, J = 6.9 Hz, 4H), 2.85 (q, J = 7.5 Hz, 4H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ14.92, 15.78, 16.80, 22.19, 23.38, 24.34, 24.47, 27.36, 132.71, 134.07, 134.31, 134.61, 136.90; 高分解能質量分析: 計算値 C26H38 350.2973、実測値350.2964。
【0114】
実施例6〜7を下記の反応スキームBに従って行った。
【化28】
【0115】
実施例6
1,2,3,4-テトラメチル-5,6-ジエチル-7,8-ジプロピルナフタレン
【化29】
【0116】
Cp2ZrCl2 (2.2mmol, 0.643 g)のTHF溶液に、エチルマグネシウムブロマイド (4.4 mmol, 0.89 M;THF 溶液, 4.94 ml)を-78℃にて加え、反応混合物を1時間、同じ温度で攪拌した。第1のアルキンとして3−ヘキシン(2.0 mmol)を加えた後、反応混合物を0℃で3時間攪拌した。続いて、第2のアルキンとして4−オクチン (2.0 mmol)を加え、反応混合物を50℃にて1時加熱し、こうして得られた溶液に、塩化銅(4.2 mmol, 0.416 g)、DMPU (6.0 mmol, 0.726 ml)及び参考例8で得られたテトラメチルジヨードベンゼン(1.0 mmol)を加え、反応混合物を50℃で6〜24時間攪拌した。3N HClを加えて反応を終了させ、通常の処理をした後、溶離液としてヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーによって表題化合物を得た。上記反応スキームB中、R1 = Et, R2 = Pr, R3 = Me、白色固体、GC収率59%、単離収率41%。
【0117】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ0.91 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.04 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.15 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.19 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.44-1.55 (m, 4H), 2.31 (s, 6H), 2.51 (s, 3H), 2.52 (s, 3H), 2.67-2.73 (m, 2H), 2.79 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 2.86-2.91 (m, 2H), 2.96(q, J = 7.5 Hz, 2H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ14.90, 14.97, 15.85, 16.72, 16.94, 21.26, 21.49, 22.34, 24.45, 25.07, 25.43, 31.94, 34.28, 128.35, 128.37, 131.83, 131.88, 133.66, 134.51, 134.55, 135.95, 137.30; 高分解能質量分析: 計算値 C24H36 324.2817、実測値324.2791。
【0118】
実施例7
1,2,3,4-テトラメチル-5,6-ジエチル-7,8-ジフェニルナフタレン
【化30】
【0119】
実施例6と同様の手順で行った。ただし、第2のアルキンとして、4−オクチンの代わりに1,2−ジフェニルアセチレンを用いた。上記反応スキームB中、R1 = Et, R2 = Ph, R3 = Me、白色固体、GC収率60%、単離収率53%。
【0120】
1H-NMR (CDCl3, Me4Si): δ0.97 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.22 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.70 (s, 3H), 2.22 (s, 3H), 2.39 (s, 3H), 2.64 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 2.68 (s, 3H), 3.20 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 6.87-7.14 (m,10H); 13C-NMR (CDCl3, Me4Si): δ15.77, 16.70, 17.05, 17.37, 20.83, 21.95, 23.73, 24.81, 125.06, 125.49, 126.70, 126.80, 128.19, 130.44, 131.02, 131.76, 132.20, 133.32, 133.83, 134.91, 135.70, 136.50, 137.13, 138.94, 141.73, 144.05;
高分解能質量分析: 計算値 C24H36 392.2504。
【0121】
【発明の効果】
本発明の方法により、置換基を任意に選ぶことができる全置換ナフタレン誘導体を高収率で簡便に得ることができる。
Claims (7)
- 下記式(1)で示される全置換ナフタレン誘導体の製造方法であって、
ただし、R1及びR2、R2及びR3、R3及びR4、A1及びA2、A2及びA3、並びにA3及びA4は、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよい。]
第1の遷移金属化合物存在下、下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンと、
M1は、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを示し、
L1及びL2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。但し、L1及びL2は、架橋されていてもよい。]
下記式(3)で示されるビニル化合物とを反応させ、第1の反応混合物を得る工程と、
前記第1の反応混合物をハロゲン化して、第2の反応生成物を得る工程と、
第2の遷移金属化合物存在下、前記第2の反応生成物と下記式(4)で示されるメタラシクロペンタジエンとを反応させる工程と、
M2は、チタン、ジルコニウム又はハフニウムを示し、
L3及びL4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。但し、L3及びL4は、架橋されていてもよい。]
を含むことを特徴とする全置換ナフタレン誘導体の製造方法。 - 第1の遷移金属化合物が、パラジウム錯体又はニッケル錯体である、請求項1に記載の全置換ナフタレン誘導体の製造方法。
- 第2の遷移金属化合物が、銅イオン、ニッケルイオン、ビスマスイオン、または、パラジウムイオンを含む塩である、請求項1又は2に記載の全置換ナフタレン誘導体の製造方法。
- M1及びM2が、ジルコニウムである、請求項1〜3のいずれかに記載の全置換ナフタレン誘導体の製造方法。
- 前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子であって、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の全置換ナフタレン誘導体の製造方法。
- R1、R2、R3、R4、A1、A2、A3及びA4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基又はハロゲン原子である、請求項1〜5のいずれかに記載の全置換ナフタレン誘導体の製造方法。
- Xが、ハロゲン原子である、請求項1〜6のいずれかに記載の全置換ナフタレン誘導体の製造方法。
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