JP4136717B2 - シクロペンタジエン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロペンタジエン誘導体の製造方法に関し、より詳しくはアセチレン類の3量化によるシクロペンタジエン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
シクロペンタジエン誘導体は、農薬、医薬の合成中間体として有用である。従来、ジルコノセンを用いてシクロペンタジエン誘導体を得る方法が知られている。しかしながら、この方法では、ジルコノセンを量論量用いることになる。また、アセチレン類を3量化する方法も知られているが、生成物は、通常ベンゼン誘導体であり、この方法でシクロペンタジエン誘導体を得ることは困難であった。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アルキル化剤で処理したメタロセンをニトリルと反応させた化合物と、遷移金属化合物を用いることにより、アセチレン類の3量化という非常に簡便な方法で、しかも触媒的にシクロペンタジエン誘導体を生成する方法を見いだし、本発明を完成させた。
【0004】
すなわち、本発明では、下記式(1)で示されるシクロペンタジエン誘導体の製造方法であって、
【化8】
[式中、Rは、置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基であり、R'は、炭素数がRの炭素数よりも1つ多い、置換基を有していてもよい、不飽和結合を含むC2〜C21炭化水素基である。]下記式(2)で示される有機金属化合物と、
【化9】
[式中、Mは、遷移金属を示し、L1及びL2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。但し、L1及びL2は、架橋されていてもよい。X1及びX2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、脱離基である。]還元剤とを反応させ、第1の反応混合物を得る工程と、前記第1の前記反応混合物と、下記式(3)で示されるニトリルとを反応させ、第2の反応混合物を得る工程と、
【化10】
[式中、Aは、置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。]遷移金属化合物存在下、前記第2の反応混合物と下記式(4)で示されるアルキンとを反応させる工程と
【化11】
[式中、Rは、上記の意味を有する。]を含むことを特徴とするシクロペンタジエン誘導体の製造方法が提供される。
【0005】
本発明においては、遷移金属化合物が、パラジウム錯体又はニッケル錯体であることが好ましい。
【0006】
また、本発明においては、Mが、周期表第4族から第6族の遷移金属であることが好ましく、Mが、ジルコニウムであることがさらに好ましい。
【0007】
また、本発明においては、前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子であって、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基であることが好ましい。
【0008】
また、本発明においては、前記式(4)で示されるアルキンが、2−ブチンであり、前記式(1)でシクロペンタジエン誘導体が、下記式(1a)
【化12】
で示されるシクロペンタジエン誘導体であってもよい。
【0009】
また、本発明においては、前記式(4)で示されるアルキンが、3−ヘキシンであり、前記式(1)でシクロペンタジエン誘導体が、下記式(1b)、(1b)'
【化13】
で示されるシクロペンタジエン誘導体の混合物であってもよい。
【0010】
また、本発明においては、前記式(4)で示されるアルキンが、4−オクチンであり、前記式(1)でシクロペンタジエン誘導体が、下記式(1c)、(1c)'、(1c)"
【化14】
で示されるシクロペンタジエン誘導体の混合物であってもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明では、下記式(2)で示される有機金属化合物と還元剤とを反応させ、第1の反応混合物を得る工程(第1工程)と、前記第1の前記反応混合物と、下記式(3)で示されるニトリルとを反応させ、第2の反応混合物を得る工程(第2工程)と、遷移金属化合物存在下、前記第2の反応混合物と下記式(4)で示されるアルキンとを反応させる工程(第3工程)とを含むことを特徴とする下記式(1)で示されるシクロペンタジエン誘導体の製造方法が提供される。
【0012】
【化15】
[式中、R、R'、A、X1、X2、M、L1およびL2は、上記の意味を有する。]
【0013】
上記式中、Rは、置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基である。
【0014】
本明細書において、「C1〜C20炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C1〜C20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C1〜C20炭化水素基」には、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C4〜C20アルキルジエニル基、C6〜C18アリール基、C6〜C20アルキルアリール基、C6〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、C4〜C20シクロアルケニル基、(C3〜C10シクロアルキル)C1〜C10アルキル基などが含まれる。
【0015】
本明細書において、「C1〜C20アルキル基」は、C1〜C10アルキル基であることが好ましく、C1〜C6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0016】
本明細書において、「C2〜C20アルケニル基」は、C2〜C10アルケニル基であることが好ましく、C2〜C6アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0017】
本明細書において、「C2〜C20アルキニル基」は、C2〜C10アルキニル基であることが好ましく、C2〜C6アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
【0018】
本明細書において、「C4〜C20アルキルジエニル基」は、C4〜C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C4〜C6アルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
【0019】
本明細書において、「C6〜C18アリール基」は、C6〜C10アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「C6〜C20アルキルアリール基」は、C6〜C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「C6〜C20アリールアルキル基」は、C6〜C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルキル基」は、C4〜C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルケニル基」は、C4〜C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0024】
Rで示される「C1〜C20炭化水素基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
本発明において、Rは、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基であることが好ましく、C1〜C10アルキル基;C6〜C10アリール基であることが更に好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、フェニルであることがより好ましい。
【0026】
本発明において、R'は、炭素数がRの炭素数よりも1つ多い、置換基を有していてもよい、不飽和結合を含むC2〜C21炭化水素基である。
【0027】
ここで、R'は、炭素数がRの炭素数よりも1つ多く、また、Rの有する不飽和結合の数よりも1つ多い不飽和結合を有する。R'の取りうる基の種類は、Rの有する不飽和結合の数よりも1つ多い分の不飽和結合の取りうる位置によって定まる。たとえば、Rが不飽和結合を有さない場合は、R'中の不飽和結合の数は1つとなり、R'の取りうる基の数は、この不飽和結合の取りうる位置の数(=R'中の炭素数−1)ということになる。
ここで、R'が有する、Rの持つ不飽和結合の数以上に有する不飽和結合は、二重結合であることが好ましい。
【0028】
たとえば、Rがメチル基である場合には、R'の取りうる基はビニル基の1つであり、Rがエチル基である場合には、R'の取りうる基は1−プロペニル基、2−プロペニル基の2つである。
【0029】
上記式(1)で示されるシクロペンタジエン誘導体が、
1,2,3,4,5−ペンタエチル−1−(1−プロピニル)−2,4−シクロペンタジエン、
1,2,3,4,5−ペンタエチル−1−(2−プロピニル)−2,4−シクロペンタジエン
であることが好ましい。
【0030】
本発明にかかるシクロペンタジエン誘導体の製造方法の第1工程では、下記式(2)で示される有機金属化合物が用いられる。
【0031】
【化16】
【0032】
上記式中、Mは、遷移金属を示す。Mとしては、周期表第4族〜第6族の遷移金属であることが好ましく、周期表第4族の金属、即ち、チタン、ジルコニウム及びハフニウムであることが更に好ましく、ジルコニウムであることが特に好ましい。
【0033】
L1及びL2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。ただし、L1及びL2は、架橋されていてもよい。前記アニオン性配位子は、非局在化環状η5−配位系配位子、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリールオキシ基又はジアルキルアミド基であることが好ましく、非局在化環状η5−配位系配位子であることが更に好ましい。非局在化環状η5−配位系配位子としては、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基を挙げることができ、無置換のシクロペンタジエニル基、及び置換されたシクロペンタジエニル基であることが好ましい。
【0034】
この置換シクロペンタジエニル基は、例えば、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、n−ブチルシクロペンタジエニル、t−ブチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、ジエチルシクロペンタジエニル、ジイソプロピルシクロペンタジエニル、ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、インデニル基、2−メチルインデニル基、2−メチル−4−フェニルインデニル基、テトラヒドロインデニル基、ベンゾインデニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、オクタヒドロフルオレニル基及びアズレニル基である。
【0035】
非局在化環状η5−配位系配位子は、非局在化環状π系の1個以上の原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。水素の他に、周期表第14族の元素及び/又は周期表第15、16及び17族の元素のような1個以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0036】
非局在化環状η5−配位系配位子、例えば、シクロペンタジエニル基は、中心金属と、環状であってもよい、一つの又は複数の架橋配位子により架橋されていてもよい。架橋配位子としては、例えば、CH2、CH2CH2、CH(CH3)CH2、CH(C4H9)C(CH3)2、C(CH3)2、(CH3)2Si、(CH3)2Ge、(CH3)2Sn、(C6H5)2Si、(C6H5)(CH3)Si、(C6H5)2Ge、(C6H5)2Sn、(CH2)4Si、CH2Si(CH3)2、o−C6H4又は2、2'−(C6H4)2が挙げられる。
【0037】
上記式中、X1及びX2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、脱離基を示す。脱離基としては、例えば、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン原子、n−ブチル基等のC1−C20アルキル基、フェニル基等のC6−C20アリール基等が含まれる。脱離基としては、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン原子が好ましく、Clであることがより好ましい。
【0038】
上記式(2)で示される有機金属化合物は、二つ以上のメタロセン部分 (moiety)を有する化合物も含む。このような化合物は多核メタロセンとして知られている。前記多核メタロセンは、いかなる置換様式及びいかなる架橋形態を有していてもよい。前記多核メタロセンの独立したメタロセン部分は、各々が同一種でも、異種でもよい。前記多核メタロセンの例は、例えばEP−A−632063、特開平4−80214号、特開平4−85310、EP−A−654476に記載されている。
【0039】
本発明において、上記式(2)で示される有機金属化合物としては、たとえば、下記のジルコノセンを用いることができる。
【0040】
ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム
【0041】
本発明にかかるシクロペンタジエン誘導体の製造方法の第1工程では、還元剤が用いられる。還元剤としては、リチウム試薬;グリニャール試薬;アルカリ金属アルコキシド;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属等が挙げられる。還元剤としては、リチウム試薬又はグリニャール試薬であることが好ましい。
【0042】
本発明の第1工程では、上記式(2)で示される有機金属化合物と還元剤とを反応させ、第1の反応混合物を得る。
【0043】
本発明の第1工程において、還元剤の量は、上記式(2)で示される有機金属化合物1モルに対し、0.1モル〜100モルであり、好ましくは1モル〜5モルであり、更に好ましくは1.5モル〜3モルである。
【0044】
本発明の第1工程において、典型的には、上記式(2)で示される有機金属化合物の溶液に、還元剤を添加し、攪拌して第1の反応混合物を得る。有機金属化合物(2)は単離されたものを用いる必要はなく、溶液中で調製された有機金属化合物をそのまま用いても良い。
【0045】
本発明の第1工程において、反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜200℃の温度範囲、更に好ましくは−80℃〜60℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0046】
本発明の第1工程において、溶媒としては、上記式(2)で示される有機金属化合物を溶解することができる溶媒が好ましい。溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。
【0047】
本発明にかかるシクロペンタジエン誘導体の製造方法の第2工程では、第1工程で得られた前記第1の前記反応混合物と、下記式(3)で示されるニトリルとを反応させ、第2の反応混合物を得る。
【化17】
【0048】
上記式中、Aは、置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。
【0049】
本明細書において、「C1〜C20アルコキシ基」は、C1〜C10アルコキシ基であることが好ましく、C1〜C6アルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
【0050】
本明細書において、「C6〜C20アリールオキシ基」は、C6〜C10アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
【0051】
Aで示される「C1〜C20炭化水素基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「アミノ基」、「シリル基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C10アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
本明細書において、「置換基を有していてもよいアミノ基」の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0053】
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル基」の例としては、制限するわけではないが、ジメチルシリル、ジエチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
【0054】
本発明において、Aは、置換基を有していてもよいC1〜C10炭化水素基であることが好ましく、C1〜C10アルキル基;C6〜C10アリール基であることが更に好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、フェニルであることがより好ましい。
【0055】
本発明の第2工程において、ニトリルの量は、第1工程で得られた第1の反応混合物1モルに対し、0.1モル〜100モルであり、好ましくは1モル〜5モルであり、更に好ましくは1.5モル〜3モルである。
【0056】
本発明の第2工程において、典型的には、第1工程で得られた第1の反応混合物の溶液に、ニトリル(3)を添加し、攪拌して第2の反応混合物を得る。第1の反応混合物は単離されたものを用いる必要はなく、溶液中で調製されたものをそのまま用いても良い。
【0057】
本発明の第2工程において、反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜200℃の温度範囲、更に好ましくは−80℃〜60℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0058】
本発明の第2工程において、溶媒としては、第1工程で得られた第1の反応混合物を溶解することができる溶媒が好ましい。溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。
【0059】
本発明にかかるシクロペンタジエン誘導体の製造方法の第3工程では、遷移金属化合物存在下、第2工程で得られた前記第2の反応混合物と上記式(4)で示されるアルキンとを反応させ、上記式(1)で示されるシクロペンタジエンを得る。
【0060】
本発明の第3工程では、下記式(4)で示されるアルキンを用いる。
【化18】
[式中、Rは、上記の意味を有する。]
【0061】
本発明の第3工程において、上記式(4)で示されるアルキンの量は、第2工程で得られた第2の反応混合物1モルに対し、3モル〜100モルであり、好ましくは3モル〜50モルであり、更に好ましくは3モル〜40モルである。
【0062】
また、本発明の第3工程では、遷移金属化合物が用いられる。遷移金属化合物は、金属塩でもよいし、金属錯体でもよい。金属塩の場合には、例えば、ニッケル、パラジウム、銅、ルテニウム又はロジウムと、塩酸、硫酸等の無機酸又はカルボン酸のような有機酸の塩であってもよい。例えば、ハロゲン化ニッケル(II)、ハロゲン化パラジウム(II)、ハロゲン化銅(I)、ハロゲン化ルテニウム(III)、ハロゲン化ロジウム(III)のような金属塩であってもよく、特に、ハロゲン化ニッケル(II)等が好ましく、用いられる。
【0063】
遷移金属化合物が金属錯体の場合には、4配位又は6配位であることが好ましい。配位子としては、ホスフィン、ホスファイト、アミン、ニトリル、又は、ハロゲン原子等が好ましい。配位子は、1座(unidentate)であってもよいし、2座(bidentate)、3座(tridentate)、又は、4座(tetradentate)であってもよい。
【0064】
ホスフィンは、ジフェニルホスフィンのようなジアリールホスフィン、トリフェニルホスフィンのようなトリアリールホスフィン、トリエチルホスフィンのようなトリアルキルホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタンのようなα,ω−ビス(ジアリールホスフィノ)アルカン、P,P,P',P',P",P"−ヘキサフェニル−トリスエチレンテトラホスフィンのようなP,P,P',P',P",P"−六置換−トリスアルキレンテトラホスフィン等であってもよい。ホスファイトは、ホスフィンと同様である。
【0065】
アミンは、配位子としては、ピリジン、ビピリジン、キノリン等の芳香族アミンであってもよいし、エチレンジアミンのようなアルキレンジアミン、N,N,N',N'−テトラアルキルエチレンジアミンのようなN,N,N',N'−四置換アルキレンジアミン、トリスエチレンジアミンのようなトリスアルキレンジアミン等の脂肪族アミンであってもよい。
【0066】
本発明において、遷移金属化合物はパラジウム錯体又はニッケル錯体であることが好ましく、パラジウム錯体であることがより好ましい。
【0067】
ニッケル錯体は、4配位であることが好ましい。ニッケル錯体は、たとえば、NiX2P1P2(式中、Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示し、P1及びP2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ホスフィン、ホスファイト又はアミンを示し、好ましくは、ホスフィン又はアミンを示し、更に好ましくはホスフィンを示す。ただし、P1及びP2は、互いに架橋していてもよい。)であってもよい。ホスフィン、ホスファイト又はアミンについては、上述の通りである。
【0068】
ニッケル錯体としては、たとえば、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロニッケル、ジクロロ(2,2'−ビピリジン)ニッケルが挙げられる。NiX2P1P2で示されるニッケル錯体は、NiX2で示されるニッケル塩と比べて、有機溶媒中での溶解度が向上するので、用途によっては、好ましい。たとえば、NiX2で示されるニッケル塩を反応系が含まれている溶媒に添加し、所望により、更にホスフィンを溶媒に添加して in situで、ニッケルホスフィン錯体を形成してもよい。
【0069】
パラジウム錯体は、Pd(Q1)(Q2)(Q3)(Q4)(式中、Q1、Q2、Q3及びQ4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ホスフィン、ホスファイト、アミン、ハロゲン原子を含む置換基を有していてもよいC1〜C40アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子を含む置換基を有していてもよいC1〜C40アリールカルボニルオキシ基、ニトリル、又は、ハロゲン原子を示し、好ましくは、ホスフィン、アミン、ハロゲン原子を含む置換基を有していてもよいC1〜C20アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子を含む置換基を有していてもよいC1〜C20アリールカルボニルオキシ基、又は、ハロゲン原子を示し、ただし、Q1、Q2、Q3及びQ4の任意の2つ、3つ及び4つが、互いに架橋していてもよい。)であってもよい。ホスフィン、ホスファイト又はアミンについては、上述の通りである。パラジウム錯体としては、たとえば、Pd(O−C(=O)R)4(式中、Rはアルキル基又はアリール基であり、互いに架橋していてもよい。)、[PdX4]2-(Xはハロゲン原子である。)、テトラキス(トリアリールホスフィン)、PdCl2(2,2'-ビピリジン)等が挙げられる。
【0070】
本発明の第3工程において、遷移金属化合物の量は、第2工程で得られた第2の反応混合物1モルに対し、0.0001モル〜10モルであり、好ましくは0.0005モル〜3モルであり、更に好ましくは0.001モル〜1.5モルである。
【0071】
本発明の第3工程において、典型的には、第2工程で得られた第2の反応混合物の溶液に、遷移金属化合物、アルキン(4)を添加し、攪拌してシクロペンタジエン誘導体(1)を得る。第2の反応混合物は単離されたものを用いる必要はなく、溶液中で調製されたものをそのまま用いても良い。
【0072】
本発明の第3工程において、反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜200℃の温度範囲、更に好ましくは−80℃〜60℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0073】
本発明の第3工程において、溶媒としては、第2工程で得られた第2の反応混合物を溶解することができる溶媒が好ましい。溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。
【0074】
本発明において、反応は以下の中間体(5)を経て、遷移金属存在下、アルキン(4)が3量化して、シクロペンタジエン誘導体(1)が製造されると考えられる。
【0075】
【化19】
[式中、R、R'、A、X1、X2、M、L1およびL2は、上記の意味を有する。
]
【0076】
もっともこのような反応経路は推論に過ぎず、本発明はこのような反応経路に限定されるものではない。
【0077】
本発明において、上記式(4)で示されるアルキンが2−ブチンである場合、得られるシクロペンタジエン誘導体(1)は、下記式(1a)となる。
【化20】
【0078】
また、本発明において、上記式(4)で示されるアルキンが、3−ヘキシンである場合には、得られるシクロペンタジエン誘導体(1)は、下記式(1b)及び(1b)'の混合物となる。
【化21】
【0079】
さらに、本発明において、上記式(4)で示されるアルキンが、4−オクチンである場合には、得られるシクロペンタジエン誘導体(1)は、下記式(1c)、(1c)'、(1c)"の混合物となる。
【化22】
【0080】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0081】
すべての反応は、特に言及しない限り、乾燥した窒素雰囲気下のもとで行われた。溶媒として用いたテトラヒドロフラン(THF)は窒素気流下、ナトリウム金属、ベンゾフェノンで蒸留して無水とした。試薬は、市販品を購入し、そのまま用いた。
【0082】
1H及び13C NMRスペクトルは、室温のCDCl3又はC6D6(1% TMS含有)溶液を用いて、JEOL NMRスペクトロメター上で測定した。ガスクロマトグラフ分析は、シリカガラスキャピラリカラムSHIMADZU CBP1-M25-O25 及び SHIMADZU C-R6A-Chromatopac integrator を備えたSHIMADZU GC-14A ガスクロマトグラフで測定した。
【0083】
実施例1
【化23】
【0084】
Cp2ZrCl2 (29mg, 0.1mmol)のTHF (5 mL)溶液に、 EtMgBr (0.2 mmol)を−78℃で加え、反応混合物を1時間、同じ温度で放置した。次いで、EtCN (0.2 mmol)を加え、反応混合物を室温まで1時間かけて昇温させた。次いで、3-ヘキシン(3 mmol)及びNiCl2(PPh3)2 (10 mol%)を加えた。反応混合物を50℃まで、3時間かけて加熱した。3N塩酸を添加し、反応を終了させ、ヘキサンで抽出した。有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。シリカゲル(ヘキサン)のカラムクロマトグラフィーを行い、標題化合物を得た。黄色液体。(a:b = 4:1): GC収率 94%、単離収率 80%。
【0085】
a: 1H NMR (CDCl3) δ 0.38(t, J = 7.3Hz, 3H), 0.95-1.10 (m, 12H), 1.53(q, J = 7.2Hz, 2H), 2.00-2.30(m, 10H), 4.60-5.20(m, 3H); 13C NMR(CDCl3) δ 7.68, 14.04, 15.26, 18.23, 18.84, 27.47, 39.07, 60.99, 114.28, 135.63, 142.39, 142.76.
b: 1H NMR (CDCl3) δ0.41(t, J = 7.2Hz, 3H), 0.95-1.10 (m, 12H), 1.60-1.75 (m, 5H), 1.90-2.30 (m, 8H), 4.75-5.50(m, 2H); 13C NMR(CDCl3) δ7.34, 14.80, 15.23, 18.18, 18.56, 18.92, 22.34, 63.44, 121.44, 135.51, 142.16, 144.21.
【0086】
【発明の効果】
本発明の方法により、アセチレン類の3量化という非常に簡便な方法で、しかも触媒的にシクロペンタジエン誘導体を生成することができる。
Claims (7)
- 下記式(1)で示されるアルキンの3量化により得られるシクロペンタジエン誘導体の製造方法であって、
R'は、炭素数がRの炭素数よりも1つ多い、置換基を有していてもよい、炭素−炭素二重結合を含むC2〜C21炭化水素基である。]
下記式(2)で示される有機金属化合物と、
L1及びL2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、アニオン性配位子を示す。但し、L1及びL2は、架橋されていてもよい。
X1及びX2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、脱離基である。]
エチルマグネシウムブロミドとを反応させ、第1の反応混合物を得る工程と、前記第1の前記反応混合物と、下記式(3)で示されるニトリルとを反応させ、第2の反応混合物を得る工程と、
遷移金属化合物存在下、前記第2の反応混合物と下記式(4)で示されるアルキンとを反応させる工程と
を含むことを特徴とするシクロペンタジエン誘導体の製造方法。 - 遷移金属化合物が、パラジウム錯体又はニッケル錯体である、請求項1に記載のシクロペンタジエン誘導体の製造方法。
- Mが、ジルコニウムである、請求項1又は2に記載のシクロペンタジエン誘導体の製造方法。
- 前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子であって、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基である、請求項1〜3のいずれかに記載のシクロペンタジエン誘導体の製造方法。
- 前記式(4)で示されるアルキンが、2−ブチンであり、前記式(1)で示されるシクロペンタジエン誘導体が、下記式(1a)
- 前記式(4)で示されるアルキンが、3−ヘキシンであり、前記式(1)でシクロペンタジエン誘導体が、下記式(1b)、(1b)'
- 前記式(4)で示されるアルキンが、4−オクチンであり、前記式(1)でシクロペンタジエン誘導体が、下記式(1c)、(1c)'、(1c)"
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