JP3879698B2 - 衝撃吸収装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両が前面衝突した歩行者に対する衝撃を吸収して、その歩行者を保護しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
歩行者を保護する車両用エアバッグ装置として、下記特許文献1に記載されたものが従来から知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−36986号公報
【0004】
この装置では、車両が歩行者と衝突する危険があると判断されたとき、エンジンフードの後端部を跳ね上げてフロントウインドシールとの間隙からエアバッグを膨出させ、エアバッグがフロントピラーの前面側を覆うようにしているが、車両の走行速度が比較的大きい場合には、歩行者の頭部がフロントウインドシールに衝突する可能性が急激に増大するため、歩行者を十分に保護することが困難になるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、車両が前面衝突した歩行者を確実に保護しようとすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明にかかる衝撃吸収装置は、車両前面に対する歩行者の衝突を予知または検出する第1手段と、上記車両のボンネットを持ち上げる第2手段と、上記ボンネットの下方に格納され膨出時には上記車両のフロントウインドウ前面をほぼ全体的に覆うエアバッグと、上記第1手段が上記歩行者の衝突を予知または検出したとき上記第2手段を作動させると共に上記エアバッグを膨出させる第3手段とを有し、上記第3手段の作動により膨出した上記エアバッグは上記車両前方から上記フロントウインドウ前面に達する複数の窓部を形成し、かつ、複数の上記窓部が略格子状、または、蜂の巣状に配列されている。
【0007】
すなわち、第1手段が歩行者の衝突を予知または検出したとき第2手段が作動して車両のボンネットを持ち上げるため、車両に衝突した歩行者がボンネットに乗り上げてそのボンネットを変形させることにより、その歩行者が受ける衝撃を効果的に緩和させ、また、ボンネットの下方に格納されたエアバッグが第3手段により膨出してフロントウインドウ前面をほぼ全体的に覆うので、歩行者の頭部等がフロントウインドウ前面に衝突することを防止して、歩行者を確実に保護することができる一方、エアバッグが車両前方からフロントウインドウ前面に達する複数の窓部を形成し、かつ、複数の上記窓部が略格子状、または、蜂の巣状に配列されているので、上記窓部により運転者の視界を確保することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す本発明の各実施形態例について、同等部分にはそれぞれ同一符号を付けて説明する。
【0009】
図1において、車両1の前面にボンネット2及びフロントガラス3が配置され、ボンネット2の後端下方にはボンネット2の略車幅方向一杯にエアバッグ4が折り畳まれて格納されていると共に、車体先端には車幅方向に間隔をおいて複数の距離センサ5が配置され、さらに、車体先端下部の略車幅方向一杯にエアバッグ6が折り畳まれて格納されている。
【0010】
また、図2に示されているように、車両1に搭載されたコントローラ10は、車速センサ11からの車速信号や距離センサ5により検知された車両前方の障害物信号を受け、車両1の走行中に、上記障害物信号から車両1の前方に接近して歩行者が存在し、かつ、上記車速信号から車両1がその歩行者に衝突することは避けられないと判断したとき、エアバッグ6の作動機構12に指示して、図1に2点鎖線で示されているようにエアバッグ6を車両1の下部前方へ膨出させることにより、歩行者の足首に加えられる衝撃を緩和させる一方、ボンネット2の持ち上げ機構13を作動させる。
【0011】
ボンネット2の持ち上げ機構13は、図3(A)に示されているように、ボンネット2における後端の左右下方にそれぞれ圧縮された状態で配置されたリンク機構あるいは金属製ベロー20、または、図3(B)に示されているように、ボンネット2における四隅の下方にそれぞれ圧縮された状態で配置されたリンク機構あるいは金属製ベロー21、または、図3(C)に示されているように、ボンネット2のアウタパネル22とアンダカバー23との間に収縮状態で配置された略四角形の環状エアバッグ24をそなえ、コントローラ10からの指示に従ってそれぞれ、図3(A)に2点鎖線で示されているように各リンク機構あるいは金属製ベロー20がエア圧等で急速に上方へ伸長することによりボンネット2の後端を持ち上げ、または、図3(B)に2点鎖線で示されているように各リンク機構あるいは金属製ベロ21がエア圧等で上方へ急速に伸長することによりボンネット2を全体的に持ち上げ、または、図3(C)に2点鎖線で示されているようにエアバッグ24がエア圧で上方へ急速に膨張することによりボンネット2におけるアウタパネル22の四辺を全体的に持ち上げることができる。
【0012】
従って、車両1が歩行者に衝突して、その歩行者がボンネット2に乗り上げたとき、歩行者がボンネット2または比較的変形しやすいアウタパネル22が変形できるストロークを大きく確保して、ボンネット2またはアウタパネル22の大きな変形を許容することにより、歩行者が受ける衝撃を効果的に緩和して、歩行者を容易に保護することができるようになる。
【0013】
さらに、車速センサ11からの車速信号が約40km/h以上を示す場合には、コントローラ10がエアバッグ4の作動機構14に指示して(図2参照)、図4に示されているように、ボンネット2の後端下方からフロントガラス3の前面へエアバッグ4を略格子状に膨出させ、エアバッグ4はフロントガラス3の前面をほぼ全体的に覆い、かつ、フロントガラス3の前面上端部付近及び前面の左右端部付近で、それぞれ縦断面が1点鎖線で示されているように上方への大きな張り出し部31、32を形成する。
【0014】
すなわち、膨出したエアバッグ4がフロントガラス3の前面をほぼ全体的に覆っているため、車両1が約40km/h以上の比較的高速で歩行者に前面衝突した結果、歩行者の頭部等がフロントガラス3の前方にまで到達しても、歩行者が受ける衝撃はエアバッグ4の存在によって確実に緩和され、しかも、ボンネット2の上方へ乗り上げられた歩行者をエアバッグ4の張り出し部31、32が囲い込むことにより、上記歩行者がフロントガラス3を越えて車両後方へ放出されたり、あるいは、フロントガラス3の左右へ横すべりして車両側方へ放出されることを防止できるので、これらの面からも歩行者を容易に保護することができる特色がある。
【0015】
また、車両1が約40km/h以上の比較的高速で歩行者に前面衝突した場合には、運転者が車両1を停止させるまでの走行距離が比較的長くなるが、フロントガラス3の前面に展開されたエアバッグ4が略格子状であって、少なくとも運転者の前方を部分的に除いてフロントガラス3の前面を覆っているため、運転者の視界を確保することができるので、車両1が停止するまでに障害物と2次衝突したり、対向車と衝突したりする危険性を回避し、車両1の安全性に止まらず上記歩行者の安全性をも高めることが可能となる。
【0016】
なお、フロントガラス3の前面に展開されるエアバッグ4は、上記実施形態例の場合のように略格子状とする外、蜂の巣状等として、歩行者が受ける衝撃を緩和できると同時に運転者の視界を最低限確保できるようにしても、上記実施形態例と同等の作用効果を奏することができるのはいうまでもない。
【0017】
また、上記各実施形態例では、エアバッグ4の張り出し部31、32がそれぞれ単一のもので構成されているが、図5に例示されているように、膨出したエアバッグ4を個々の小エアバッグ4a、4b、4c、4dが上下に連結された多重構造として、小エアバッグ4aはフロントガラス3の前面に接する中央部分が略格子状で、フロントガラス3の前面上端部付近及び前面の左右端部付近にそれぞれ上方への小張り出し部31a、32aを形成し、その他の小エアバッグ4b、4c、4dはそれぞれ平面視が略コ字状で、フロントガラス3の前面上端部付近及び前面の左右端部付近にそれぞれ小張り出し部31b、31c、31dと、32b、32c、32dとを形成し、各小張り出し部31a、31b、31c、31dを順次積み重ねて張り出し部31を形成させると共に、各小張り出し部32a、32b、32c、32dを順次積み重ねて張り出し部32を形成させるようにすることも可能である。
【0018】
さらに、車両が比較的高速で歩行者に衝突することをセンサにより予知して、フロントガラスの前面にエアバッグを膨出させているが、上記予知に代えて、車両に装備された減速度センサにより歩行者との衝突を検出して、フロントガラスの前面にエアバッグを膨出させるようにしても、上記各実施形態例と同様な作用効果を奏することができるものである。
【0019】
【発明の効果】
本発明にかかる衝撃吸収装置にあっては、第1手段が歩行者の衝突を予知または検出したとき第2手段が作動して車両のボンネットを持ち上げるため、車両に衝突した歩行者がボンネットに乗り上げてそのボンネットを変形させることにより、その歩行者が受ける衝撃を効果的に緩和させ、また、ボンネットの下方に格納されたエアバッグが膨出してフロントウインドウ前面をほぼ全体的に覆い、歩行者の頭部等がフロントウインドウ前面に衝突することを防止するので、歩行者を確実に保護することができる一方、エアバッグが車両前方からフロントウインドウ前面に達する複数の窓部を形成し、かつ、複数の上記窓部が略格子状、または、蜂の巣状に配列されているので、上記窓部により運転者の視界を確保することができて、車両が停止するまでに障害物と2次衝突したり、対向車と衝突したりする危険性を回避し、車両の安全性に止まらず歩行者の安全性をも高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態例における側面図。
【図2】上記実施形態例の制御ブロック図。
【図3】上記実施形態例の作用説明図。
【図4】上記実施形態例の作用説明図。
【図5】本発明の他の実施形態例における要部の概略縦断面図。
【符号の説明】
1 車両
2 ボンネット
3 フロントガラス
4 エアバッグ
5 距離センサ
10 コントローラ
11 車速センサ
13 持ち上げ機構
31、32 張り出し部

Claims (2)

  1. 車両前面に対する歩行者の衝突を予知または検出する第1手段と、上記車両のボンネットを持ち上げる第2手段と、上記ボンネットの下方に格納され膨出時には上記車両のフロントウインドウ前面をほぼ全体的に覆うエアバッグと、上記第1手段が上記歩行者の衝突を予知または検出したとき上記第2手段を作動させると共に上記エアバッグを膨出させる第3手段とを有し、上記第3手段の作動により膨出した上記エアバッグは上記車両前方から上記フロントウインドウ前面に達する複数の窓部を形成し、かつ、複数の上記窓部が略格子状に配列された衝撃吸収装置。
  2. 車両前面に対する歩行者の衝突を予知または検出する第1手段と、上記車両のボンネットを持ち上げる第2手段と、上記ボンネットの下方に格納され膨出時には上記車両のフロントウインドウ前面をほぼ全体的に覆うエアバッグと、上記第1手段が上記歩行者の衝突を予知または検出したとき上記第2手段を作動させると共に上記エアバッグを膨出させる第3手段とを有し、上記第3手段の作動により膨出した上記エアバッグは上記車両前方から上記フロントウインドウ前面に達する複数の窓部を形成し、かつ、複数の上記窓部が蜂の巣状に配列された衝撃吸収装置。
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