JP3874834B2 - 被覆組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は主として常温で硬化可能な新規被覆組成物に関するものである。
【0002】
【発明の背景】
近年、建築外装一般または屋根瓦等の塗装には高耐久性、高耐候性が要求される分野が増えている。そのなかで特にラインによって連続的に生産される製品を塗装する場合においては作業性、例えば可使時間が長く、使用時に樹脂に硬化剤を混合する二液タイプのものよりも一液タイプのものの要望が高まっている。
【0003】
【従来の技術】
従来は、このような用途には主にポリイソシアネートを硬化剤とし水酸基含有樹脂とのウレタン硬化による架橋系塗料が一般的に使用されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ウレタン硬化による架橋系塗料では、塗膜の耐久性、耐候性が不充分であり、可使時間も短く、二液タイプであるため作業性に劣ると言う問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、分子中にエポキシ基と加水分解性シリル基および/またはシラノール基を有する樹脂とケチミン化シラン化合物との混合物のみからなる被覆組成物を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔分子中にエポキシ基と加水分解性シリル基および/またはシラノール基を有する樹脂A〕
該樹脂Aはエポキシ基を有するビニル単量体の1種または2種以上と、加水分解性シリル基および/またはシラノール基を有するビニル単量体と、上記ビニル単量体と共重合可能な他のビニル単量体の1種または2種以上との共重合体である。
【0007】
<エポキシ基を有するビニル単量体>
上記樹脂Aに使用されるエポキシ基を有するビニル単量体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルや
【化2】
【化3】
こゝに
RはHあるいはCH3 である。
等の脂環式エポキシ基を有するアクリレートやメタクリレート等が使用出来る。
【0008】
<加水分解性シリル基および/またはシラノール基を含むビニル単量体>
本発明の樹脂Aには更に加水分解性シリル基および/またはシラノール基を導入する。
該加水分解性シリル基および/またはシラノール基を該樹脂Aに導入するには、上記樹脂Aにおいて加水分解性シリル基および/またはシラノール基を含むビニル単量体を共重合する。
上記加水分解性シリル基を有するビニル単量体としては、例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤が使用出来る。
加水分解性シリル基および/またはシラノール基を含むビニル単量体としては、上記加水分解性シリル基を有するビニル単量体とテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、トリメトキシネオペントキシシラン等のテトラアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン化合物等のシラン化合物との部分加水分解物も使用出来る。
【0009】
<他のビニル単量体>
上記エポキシ基を有するビニル単量体および加水分解性シリル基および/またはシラノール基を含むビニル単量体と共重合可能な他のビニル単量体としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、iso-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、iso-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、iso-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等の脂肪族または環式アクリレートおよび/またはメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のハロゲン含有単量体、エチレン、プロピレン、イソプレン等のオレフィン類、クロロプレン、ブタジエン等のジエン類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、アトロパ酸、シトラコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メチルアクリルアミドグリコレートメチルエーテル等のアミド類、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノ基含有単量体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、カージュラEとアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸等との反応物、その他ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等があり、更に末端不飽和二重結合を有するポリジメチルシロキサンマクロモノマー例えばFM−0701、0711、0721(チッソ株式会社製、商品名)やAK−5、AK−30、AK−32(東亞合成株式会社製、商品名)等が使用出来る。上記単量体は一種または二種以上混合使用される。上記例示は本発明を限定するものではない。
【0010】
<重合体の製造>
本発明の樹脂Aは溶液重合によって製造される。上記溶液重合においては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤の単独または二種以上の混合溶剤として使用出来る。
また上記溶液重合においては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーベンゾエート、ジ-t- ブチルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等の重合開始剤が使用される。
樹脂Aである重合体中に含有されるエポキシ基を有するビニル単量体は樹脂A固形分中1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%とすることが硬化性、密着性の点で望ましい。エポキシ基を有するビニル単量体がこの範囲より少なくなると、後記するケチミン化シラン化合物の解離で生ずるアミノシランのアミノ基との反応が充分でなく硬化不良となり、またこの範囲を上回ると本発明の被覆組成物の塗膜の機械的物性が劣るようになり脆弱で密着性も不充分となり易い。
加水分解性シリル基および/またはシラノール基を含むビニル単量体を共重合する場合には、該ビニル単量体は樹脂A固形分中0.1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%とすることが最も好ましい。加水分解性シリル基および/またはシラノール基を含むビニル単量体がこの範囲より少なくなるとアミノシラン中の加水分解性シリル基と樹脂A成分中のシリル基および/またはシラノール基との反応が期待出来なくなり硬化性が若干劣ることとなる。またこの範囲より多くなると本発明の被覆組成物の塗膜の表面硬化が優先し、塗膜内部とに硬化ひずみを生じ、ちぢみ現象や塗膜の脆弱化も生じる。
【0011】
<ケチミン化シラン化合物B>
本発明に使用されるケチミン化シラン化合物Bは、下記式で示される化合物である。
【化4】
こゝに
R1 、R2 のいずれか一方は炭素数1〜3の脂肪族炭化水素であり、他方は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素であり、R3 、R4 、R5 のうち少なくとも1個は炭素数1〜4のアルコキシル基であり、R3 、R4 、R5 のうち1個または2個がアルコキシル基である場合には、その他は炭素数1〜8の脂肪族炭化水素であり、nは1〜6の整数である。
上記ケチミン化シラン化合物Bは、ケトン類とアミノシランとのケチミン化反応により合成されたものである。該ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等が使用出来る。また該アミノシランとしてはアミノメチルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチルアミノエチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノアルキルアルコキシシラン等が使用出来る。
【0012】
〔樹脂Aとケチミン化シラン化合物Bの硬化反応〕
これらのケチミン化シラン化合物Bは空気中の水分によりケトンとアミノシランに可逆的に加水分解されケトンは系外に放出されアミノシランのアミノ基はエポキシ基と、また加水分解性シリル基は樹脂A骨格中の水酸基、加水分解性シリル基、シラノール基と反応する。
即ち、最初にケチミン化シラン化合物Bが空気中の湿気、水分により以下のように解離する。
【化5】
次いでケチミン化シラン化合物Bによって生じたケトン化合物とアミノシランのうちケトン化合物は系外に放出され、残るアミノシランと樹脂Aである重合体中のエポキシ基との反応がアミノ基の活性水素が消費されるまで進行する。
【化6】
同時にR3 、R4 、R5 のうちのアルコキシル基において加水分解反応も生じ次のような架橋構造を形成する。
【化7】
上記反応以外に
エポキシ基とOH基との反応
樹脂A中の加水分解性シリル基および/またはシラノール基とはそれらとOH基との反応 等が硬化反応として起こる。
またこれらのケチミン化シラン化合物Bの使用量は樹脂Aである重合体中のエポキシ基に対するアミン化でエポキシ基/アミン=0.1〜2.0好ましくは0.5〜1.5の範囲で使用するのが好ましい。この範囲より少なくなると硬化不充分となり本発明が達成しずらくなる。またこの範囲より多くなると反応に寄与出来なかったアミノシランが残存するために耐候性に悪影響を及ぼす。
本発明は樹脂Aとケチミン化シラン化合物Bにより完成されるものであるが、両者の反応はケチミン化シラン化合物B加水分解されることにより開始されるものであるから、一液としての保存安定性を高める場合は上記ケトン系溶剤を全溶剤中1〜50重量%含有させることにより高まるが、必要であれば更にオルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル等の脱水剤やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類を添加してもよい。
【0013】
上記のように本発明によればエポキシ基と加水分解性シリル基および/またはシラノール基を必須成分として有する重合体である樹脂Aとケチミン化シラン化合物Bからなる一液被覆組成物を基材に塗布した場合、塗膜において空気中の水分によりケチミン化シラン化合物Bがケトンとアミノシランに分解し、アミノシランのアミノ基は樹脂A中のエポキシ基と開環反応、加水分解性シリル基および/またはシラノール基とは水酸基およびシリル基同志の反応が進行する。その結果架橋密度が高まるとともに基材への密着性、耐候性、耐薬品性等に優れた塗膜が得られる。
【0014】
【実施例】
〔実施例1〕(樹脂Aの製造)
攪拌機、温度計、コンデンサー、窒素ガス導入管を備えた500mlフラスコにイソプロピルアルコール90部を仕込み、80℃に昇温し別に準備したメチルメタクリレート30部、ブチルメタクリレート30部、グリシジルメタクリレート20部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アゾビスイソブチロニトリル1部の混合溶液を滴下ロートにより2時間で滴下し、その後同温度で4時間保持した後、更にアゾビスイソブチロニトリル0.1部、トルエン10部の溶液を滴下した後2時間保持した。このようにして固形分50%(以下単に%とする)の樹脂溶液を得た。これを樹脂Aとする。
【0015】
〔比較例1〕(比較樹脂A’−1の製造)
実施例1と同様の設備で、トルエン40重量部(以下単に部とする)、メチルイソブチルケトン50部を仕込み、80℃に昇温し別に準備したメチルメタクリレート40部、ブチルメタクリレート30部、グリシジルメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アゾビスイソブチロニトリル1部の混合溶液を滴下ロートにより2時間で滴下し、その後同温度で4時間保持した後、更にアゾビスイソブチロニトリル0.1部、トルエン10部の溶液を滴下した後2時間保持した。このようにして固形分50重量%の樹脂溶液を得た。これを樹脂A’−1とする。
【0016】
〔比較例2〕(比較樹脂A’−2の製造)
比較例1でグリシジルメタクリレートをサイクロマーM−100(ダイセル化学工業株式会社製エポキシ含有メタクリレートの商品名)に変えた以外は全て同じ配合、同じ操作で重合を行ない固形分50%の樹脂溶液を得た。これを樹脂A’−2とする。
【0017】
〔比較例3〕(比較樹脂A’−3の製造)
比較例1でグリシジルメタクリレート20部をイソブチルメタクリレート20部に変えた以外は全て同じ配合、同じ操作で重合を行ない固形分50%の樹脂溶液を得た。これを樹脂A’−3とする。
【0018】
〔比較例4〕(比較樹脂A’−4の製造)
実施例1と同様の設備で、トルエン40部、酢酸ブチル50部を仕込み80℃に昇温する。別に準備したメチルメタクリレート40部、ブチルメタクリレート26部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート23部、アクリル酸ブチル10部、メタクリル酸1部、アゾビスイソブチロニトリル1部の混合溶液を2時間かけて滴下し、その後同温度で4時間保持した後、更にアゾビスイソブチロニトリル0.1部、トルエン10部の溶液を滴下した後2時間保持した。このようにして固形分50%の樹脂溶液を得た。これを樹脂A’−4とする。
【0019】
上記実施例および比較例で得られた樹脂溶液を使用して表1に示す配合にしたがって試料1および比較試料1,2,3,4を調整し、該試料の性能試験を行なった。その結果を表1に示す。
【表1】
乾燥条件:25℃、湿度65%で7日間硬化乾燥
*1:ケチミン化シランa
【化8】
*2:ケチミン化シランb
【化9】
*3:ポリイソシアネート
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
*4:保存安定性
室温3ケ月放置後の状態
*5:ゲル分率
調整した塗料をポリプロピレン板に塗布し、所定の硬化乾燥後塗膜をはがし、ソ
ックスレー抽出器で還流温度にてアセトンで10時間抽出した後の残分の百分率
*6:耐酸性
5%硫酸水溶液にて25℃、65%湿度下で24時間スポット試験した後の塗膜
状態の目視判定。
*7:耐水性
アルミ板に塗装した試験片を40℃で96時間浸漬後の目視判定。
*8:密着性
上記耐水性試験後の試験片を碁盤目試験で判定した二次密着試験結果
*9:耐候性
QUV試験機にて3000時間の促進耐候性試験結果
【0020】
【発明の効果】
(1) 試料1および比較試料3の結果を対比すると本発明の被覆組成物では樹脂A中のエポキシ基と空気中の水分により解離したアミノシランとは速やかに反応する。
(2) その結果本発明の被覆組成物は常温の硬化性に優れ、表1によれば本発明の試料1は7日間で98%以上のゲル分率が得られる。
(3) 更に試料1と比較試料1の結果を対比すると樹脂A中に加水分解性シリル基が存在すると架橋密度はより向上する。
(4) 試料1の結果より一液で充分な保存安定性を有する。
(5) 比較試料4のように従来のウレタン樹脂塗料より耐候性、密着性に優れる。
(6) ポリイソシアネートのような毒性のある硬化剤を必要としない。
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