JP3873741B2 - 転がり軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転がり軸受に関し、特に、滑り接触を伴う環境下や、潤滑剤の少ない条件下、潤滑剤が枯渇するような環境下で使用される転がり軸受に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、転がり軸受は軌道面と転動面との間における転がり運動によって接触応力を繰り返し受ける。特に、円錐ころ軸受は、ころの転動面が内外輪の軌道面に接触し、ころ端面が内輪の案内鍔と接触するため、ころ端面と鍔部との間で滑り運動が生じる。
そこで、軸受材料には、硬く、不可に耐え、転がり寿命が長く、滑りに対する耐摩耗性が良好であること等が要求され、一般的に、軸受鋼であればSUJ2が使用される。また、肌焼鋼であればSCR420相当の鋼材を焼入れ或いは浸炭窒化又は浸炭処理した後、焼入れして硬さをHRC58〜64とすることにより、必要とされる寿命や耐摩耗性を得るようにしている。
【0003】
しかしながら、転がり軸受は、玉軸受の差動滑り、ころ軸受のころのスキュー或いは鍔部における滑り接触等を伴うので、潤滑条件が厳しいと、焼付きや摩擦による異常摩耗が生じる。そして、摩耗粉が異物となり、異物の噛み込みによって転動寿命が低下したり、或いは焼き付いたりして早期破損を引き起こすといった問題がある。
これに対して、例えば特開平10−96660号公報に記載されるように、ころ端面や案内鍔の表面粗さを制御することで、できるだけ両者の直接的金属接触を避ける技術や、特公平5−79280号公報に記載されるように、潤滑膜が破れ、表面の直接的な接触が生じる場合には耐焼付性や耐摩耗性を向上させる極圧添加剤を潤滑油に添加する技術、或いは特開平5−240254号公報に記載されるように、電解放電加工によって微小ピットを転動面或いは軌道面に形成し、それを規則的に配列することにより接触部に潤滑油を確保し、潤滑特性を向上させる技術などが提案されている。
【0004】
また、材料面では、特開平11−80838号公報に記載されるように、滑り接触を伴う潤滑部品を黒鉛、セメンタイト及びフェライトを主成分とする素材で構成し、黒鉛の平均粒径を1〜5μmとすると共に、黒鉛の総含有量を面積率で0.1〜2.5%とする技術が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特公平5−79280号公報に記載される技術に関しては、前記極圧添加剤としてモリブデンジアルキルジチオカーバメイト等を潤滑油に添加するとあるが、潤滑が枯渇するような環境下においては金属接触を起こしやすいことから、前記極圧添加剤の効果が発揮されないという問題がある。
また、前記特開平5−240254号公報に記載される技術に関しては、前記微小ピット径は電解液がジェット噴射されるノズル径に左右されることから、実質的に微小ピット径は直径100μm程度に限定され、しかもピット縁起点破壊が懸念されると共に、加工に多大な時間を有するので大幅なコストアップが避けられないという問題がある。
【0006】
また、前記特開平11−80838号公報に記載される技術に関しては、摩擦や摩耗に対する有効性は記載されているものの、焼付き性や転動疲労に関しては考慮されていない。
本発明は前記諸問題を解決すべく開発されたものであり、転動疲労を損なうことなく、差動滑りが生じる環境下や、潤滑が枯渇する環境下でも焼付き性を向上し、摩擦摩耗を低減することができる転がり軸受を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者等は、差動滑りが生じる環境下や潤滑性が枯渇する環境下において、焼付き性並びに摩耗性について種々の検討を行った結果、浸炭窒化又は浸炭による硬化熱処理で転がり表面層を形成し、その転がり表面層にSi或いはSi−X(X=Mn、Mo、Crのうちの一つ以上)を含有する炭化物或いは炭窒化物を分散析出させることにより、当該炭化物或いは炭窒化物の自己潤滑効果により、転動寿命を損なうことなく、焼付き性並びに耐摩耗性が大幅に向上することを見出した。これは、二流化モリブデンを始めとする自己潤滑作用と同様の効果を示し、金属接触を防止して焼き付き寿命及び摩耗寿命を向上させることができるためである。
【0008】
かかる諸問題を解決するために、本発明のうち請求項1に係る転がり軸受は、内輪及び外輪及び転動体とを備えた転がり軸受において、前記内輪及び外輪及び転動体のうちの少なくとも一つが、wt%で、C:0.2〜1.2%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:2.5%以下、含有し、Moを含まないか1.5%以下含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、転がり表面に浸炭窒化又は浸炭による硬化熱処理で転がり表面層を形成し、その転がり表面層にSiを含有する炭窒化物又は炭化物を1〜12面積%分散析出し、前記炭窒化物又は炭化物の大きさが0.5〜10μmであることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のうち請求項2に係る転がり軸受は、内輪及び外輪及び転動体とを備えた転がり軸受において、前記内輪及び外輪及び転動体のうちの少なくとも一つが、wt%で、C:0.2〜1.2%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:2.5%以下、含有し、Moを含まないか1.5%以下含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、転がり表面に浸炭窒化又は浸炭による硬化熱処理で転がり表面層を形成し、その転がり表面層に、Si−Mn及びSi−Mo及びSi−Crの少なくとも一つ以上を含有する炭窒化物又は炭化物を1〜12面積%分散析出し、前記炭窒化物又は炭化物の大きさが0.5〜10μmであることを特徴とするものである。
また、本発明のうち請求項3に係る転がり軸受は、前記転がり軸受において、滑り接触を伴う環境下や、潤滑剤の少ない条件下、潤滑剤が枯渇するような環境下で使用されることを特徴とするものである。
【0011】
前記転がり表面層におけるSi又はSi−X(X=Mn、Mo、Crのうちの一つ以上)を含有する炭化物又は炭窒化物の大きさが10μmを越えると、応力集中が大きくなり、転がり寿命の低下を引き起こす。なお、前記転がり表面層におけるSi又はSi−X(X=Mn、Mo、Crのうちの一つ以上)を含有する炭化物又は炭窒化物の大きさの実質的な下限は0.5μmである。
また、前記転がり表面層におけるSi又はSi−X(X=Mn、Mo、Crのうちの一つ以上)を含有する炭化物又は炭窒化物の含有量が1%未満だと、それら炭化物又は炭窒化物による潤滑効果が不十分であり、当該炭化物又は炭窒化物の含有量が12%を越えると、それら炭化物又は炭窒化物による潤滑効果が飽和するだけでなく、靭性の低下を引き起こし、転がり寿命が低くなる。
【0012】
例えば、円錐ころ軸受の軌道輪の鍔部では、滑り運動による異常摩耗が生じやすいが、前記転がり表面層におけるSi又はSi−X(X=Mn、Mo、Crのうちの一つ以上)を含有する炭化物又は炭窒化物の含有量を1%以上30%以下とすることにより、それら炭化物又は炭窒化物の潤滑効果によって初期摩耗を低減することができると共に、それら炭化物又は炭窒化物が脱落した後には微小ピットが形成されることとなり、その微小ピット内に潤滑油を保持して油溜まり効果(M−EHL効果)を発揮し、摩擦摩耗の抑制に著しい効果が発揮される。
【0013】
なお、本発明の転がり軸受は、転動体と転がり接触及び滑り接触を行う鍔部が内輪に設けられたころ軸受だけでなく、差動滑りが生じる環境下で使用される場合には、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、自動調心玉軸受においても、前記転がり表面層におけるSi又はSi−X(X=Mn、Mo、Crのうちの一つ以上)を含有する前記炭化物又は炭窒化物の自己潤滑効果並びに前記M−EHL効果によって有効な作用・効果が得られる。
【0014】
その他の元素の成分について説明する。
[C:0.2wt%〜1.2wt%]
転がり軸受として要求される清浄度を得るためには炭素Cは0.20wt%以上が必要である。また、炭素Cが1.2wt%を越えると、残留オーステナイトが増加して軸受の寸法安定性を低下させたり、共晶炭化物を形成して短寿命になったりする。清浄度を向上し、残留オーステナイト過多防止、共晶炭化物形成防止のためには炭素C含有量が1.20wt%以上1.2wt%以下、好ましくは0.35wt%以上1.1wt%以下が望ましい。
【0015】
[Si:0.5wt%〜1.5wt%]
珪素Siは、焼付き、摩擦摩耗に効果のあるSi含有の炭化物又は炭窒化物、或いはSi−X(X=Mn、Mo、Crのうちの一つ以上)を含有する炭化物又は炭窒化物を形成する上で必要不可欠である。製鋼時の脱酸のために必要なSi濃度0.15〜0.35wt%では、耐焼付き、耐摩耗性を向上するのは困難であり、0.5wt%以上の添加が必要である。しかし、添加量が多すぎると、炭化物又は炭窒化物の耐焼付き、耐摩耗性効果が低下するので1.5wt%以下が好ましい。
【0016】
[Mn:0.1wt%〜1.5wt%]
マンガンMnは、シリコンSiと同様に製鋼時の脱酸のために必要な元素であり、0.1wt%以上添加される。また、マンガンMnは焼入性を高め、熱処理後の強度や転動疲労寿命の向上にも寄与する。しかし、添加量が多すぎると、寸法安定性に有害な残留オーステナイトが生成したり、加工性も劣化したりするので、1.5wt%以下であることが望ましい。
【0017】
[Cr:2.5wt%以下]
クロムCrは、焼入性を高め、熱処理後の強度や転動疲労強度の向上に寄与する。但し、添加量が多いと、加工性が低下したり、共晶炭化物が生成したりするので、その上限は2.5wt%以下であることが望ましい。
[Mo:1.5wt%以下]
モリブデンMoは、焼入性を高め、熱処理後の強度及び転動疲労寿命の向上に寄与するので選択的に添加されるが、多量に炭化されると素材コストが高くなり、加工性も低下するので、その上限は1.5wt%以下であることが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施形態の転がり軸受の断面図である。この転がり軸受は、外径φ130mm、内径φ85mm、幅30mmの円錐ころ軸受である。図中の符号1は内輪、符号2は外輪、符号3は転動体(円錐ころ)である。前述したように、この円錐ころ軸受の内輪1には、転動体3を支持するための鍔部が形成されている。
【0019】
まず、下記表1に示すように、前述した推奨範囲の化学成分からなる実施例の供試材A〜Hと、下線の元素が前記推奨範囲から外れる化学成分の比較例の供試材I〜Mを用意した。
【0020】
【表1】
【0021】
前記表1に示す供試材A〜Mを用いて、下記表2に示すような種々の条件で熱処理を行った。熱処理の条件は、850〜950℃の範囲で、時間を1〜10時間の間で変化させた。そして、得られた転がり軸受(試験片)を光学顕微鏡で観察(倍率×1000、30視野)し、夫々の視野の炭化物又は炭窒化物の最大粒径を測定し、30視野分の最大粒径を平均して炭化物又は炭窒化物の粒径を算出した。また、面積率については、0.5μm以上の炭化物並びに炭窒化物について、前記30視野を光学顕微鏡で観察(倍率×1000)し、夫々画像解析によって測定して平均値を求めた。実施例1〜13は何れも本発明の推奨範囲内にあり、比較例1〜9は、夫々、下線を付した部分が本発明の推奨範囲から外れている。
【0022】
【表2】
【0023】
これらの転がり軸受(試験片)を用いて寿命試験を行った。試験の仕様は以下の通りである。
軸受寸法:φ85×φ130×30(円錐ころ軸受)
回転速度:1500rpm
荷重:動定格荷重の25%(P/C=0.25)
計算寿命:1130時間
潤滑油:鉱油VG10
周囲温度:室温(約28℃)
軸受温度:外輪外径で100〜110℃
試験個数:10個
なお、計算寿命が1130時間であることから、2000時間を打ち切り時間とした。
【0024】
実施例1、2は、共に表1の供試材Aから作製したものであり、熱処理に関して、実施例1は浸炭処理、実施例2は浸炭窒化処理を行った点だけが異なる。何れも、Siを含有する炭化物又は炭窒化物を析出させたことにより、焼付き、摩耗寿命が向上し、長寿命傾向が見られた。また、浸炭窒化処理を行うことにより、Siを含有する炭窒化物の面積率が大きくなり、より寿命が向上した。
実施例3、4は、共に表1の供試材Bから作製したものであり、熱処理に関しては何れも浸炭窒化処理を行った。実施例3は、実施例1と比較してSiを含有する炭窒化物の面積割合が大きくなったため、長寿命傾向を示した。また、実施例4は、実施例3と供試材、熱処理条件に関して同一のものであるが、実施例3は転動体を供試材Bから作製し、実施例4は転動体をSUJ2から作製し、浸炭窒化処理を施した。転動体を内輪、外輪と異なる材質で作製することにより、格段に寿命が向上した。
【0025】
実施例6(供試材C)は、実施例3の供試材BのMnの含有量を1.0wt%に増加したものであるが、Mnの含有量を増加させることによって、格段に長寿命傾向が得られた。これは、図2の走査型電子顕微鏡(SEM)写真並びにエネルギ分散型X線分析装置(EDX)分析結果に示すように、Mn含有量を増加させることで,Si−Mn−Nの炭窒化物の生成量を増加させ、焼付き性、摩耗性が更に向上したため、長寿命となった。実施例7は、供試材CにMoを1.0wt%添加したものであるが、これによりSi−Mn−N、Si−Mo−N或いはSi−Mn−Mo−Nの炭窒化物が生成し、寿命が向上した。
【0026】
実施例8〜13に関しても、上記と同様に、長寿命傾向が観察された。これは、Siを始めとする化学成分が最適値であるだけでなく、熱処理において浸炭或いは浸炭窒化処理を行い、前記炭化物又は炭窒化物を析出させたためであると考えられる。また、実施例12、実施例13においては、化学成分、析出物の最大粒径並びに面積率が同一なものであり、これはSiを含有する炭化物より、Siを含有する炭窒化物の方が自己潤滑性が良好なためであると考えられる。
【0027】
これに対し、比較例1はSUJ2であり、通常の熱処理、つまり浸炭或いは浸炭窒化処理を行っていないため、表層部にSiを含有する炭化物又は炭窒化物が析出しておらず、焼付きや摩耗を引き起こし、L10寿命は160時間と、前記実施例と比較して著しく低いものであった。
また、比較例2は、SUJ2に浸炭窒化処理を施したものであるが、Si含有量が0.25wt%と低く、図3に示すSEM写真並びにEDX分析結果に示すように、析出物は主にセメンタイト(Fe3 C)であり、Siを含有する炭化物又は炭窒化物は面積率で0.5%程度であったため、十分な自己潤滑効果が得られなかった。また、同様の理由で比較例3も、Si含有量が低いため、寿命延長効果は見られなかった。
【0028】
比較例4は供試材Kから作製したものであるが、炭素量が1.3wt%と高いため、共晶炭化物が生成したのに加え、浸炭処理を行うことによってSiを含有する巨大炭化物が生成し、寿命が短くなった。また、比較例5はSiを1.8wt%含有したものであるが、炭化物又は炭窒化物の自己潤滑作用が低下し、寿命が低下した。また、比較例6は、Crを3.5wt%含有したものであるが、浸炭窒化処理を行うことにより、巨大炭化物が生成し、寿命が低下した。
【0029】
比較例7〜10は、表1に示す本発明の推奨範囲内の供試体を用いている。しかしながら、比較例7は、Siを含有する炭化物又は炭窒化物の面積率が高いため、剥離を起こし、寿命も低下した。また、比較例8は、Siを含有する炭化物又は炭窒化物の面積率が低いため、自己潤滑さ用が十分ではなく、焼付きを起こし、寿命が低下した。また、比較例9は、熱処理として浸炭又は浸炭窒化処理を行っていないため、Siを含有する炭化物又は炭窒化物が析出しておらず、短寿命であった。
【0030】
また、前期実施例1〜13及び比較例7〜9(化学成分は共に最適範囲)に関して、Si又はSi−X(X=Mn、Mo、Crの一つ以上)を含有する炭化物又は炭窒化物を析出させ、焼付き性、摩耗性を向上させる面積率は1〜12%である。面積率がこれより小さいと十分な自己潤滑作用が得られずに焼付き性、摩耗性が向上せず、これより多いと靭性が低下し、剥離を生じるようになるので、何れも寿命が低下する。自己潤滑作用を確保し、焼付き性、摩耗性の向上を図るには面積率が3〜12%とするのが好ましい。
【0031】
なお、前記実施形態では、円錐ころ軸受についてのみ詳述したが、本発明の転がり軸受は、差動滑りが生じる環境下であれば、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、自動調心玉軸受、スラスト玉軸受等においても同様の作用・効果が得られ、スキューが発生する環境下であれば、円筒ころ軸受、自動調心ころ軸受、スラストころ軸受、針状ころ軸受等においても同様の作用効果が得られる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の転がり軸受によれば、10μm以下のSi又はSi−X(X=Mn、Mo、Crの一つ以上)を含有する炭化物又は炭窒化物を1〜12%の含有率で転がり表面層に分散析出したことにより、十分な自己潤滑作用によって焼付き性、摩耗性の向上を図ると共に、剥離などを防止して、滑り接触を伴う環境下や潤滑油が枯渇する環境下での大幅な寿命向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転がり軸受の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の転がり軸受の実施例の走査型電子顕微鏡の写真及びエネルギ分散型X線分積層値による分析結果であり、(a)はSEI写真、(b)はCOMPO像、(c)はEDX分析結果である。
【図3】比較例の転がり軸受の走査型電子顕微鏡の写真及びエネルギ分散型X線分積層値による分析結果であり、(a)はSEI写真、(b)はCOMPO像、(c)はEDX分析結果である。
【図4】炭化物又は炭窒化物の面積率と寿命との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1は内輪
2は外輪
3は転動体
Claims (3)
- 内輪及び外輪及び転動体とを備えた転がり軸受において、前記内輪及び外輪及び転動体のうちの少なくとも一つが、wt%で、C:0.2〜1.2%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:2.5%以下、含有し、Moを含まないか1.5%以下含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、転がり表面に浸炭窒化又は浸炭による硬化熱処理で転がり表面層を形成し、その転がり表面層にSiを含有する炭窒化物又は炭化物を1〜12面積%分散析出し、前記炭窒化物又は炭化物の大きさが0.5〜10μmであることを特徴とする転がり軸受。
- 内輪及び外輪及び転動体とを備えた転がり軸受において、前記内輪及び外輪及び転動体のうちの少なくとも一つが、wt%で、C:0.2〜1.2%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:2.5%以下、含有し、Moを含まないか1.5%以下含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、転がり表面に浸炭窒化又は浸炭による硬化熱処理で転がり表面層を形成し、その転がり表面層に、Si−Mn及びSi−Mo及びSi−Crの少なくとも一つ以上を含有する炭窒化物又は炭化物を1〜12面積%分散析出し、前記炭窒化物又は炭化物の大きさが0.5〜10μmであることを特徴とする転がり軸受。
- 前記転がり軸受において、滑り接触を伴う環境下や、潤滑剤の少ない条件下、潤滑剤が枯渇するような環境下で使用されることを特徴とする請求項1又は2の転がり軸受。
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