JP3869001B2 - 芳香族酸の製造に際しての共沸蒸留による酢酸の脱水 - Google Patents

芳香族酸の製造に際しての共沸蒸留による酢酸の脱水 Download PDF

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Description

本発明は、水および少なくとも1種の他の成分を含有する液相媒質から水を分離することに関する。
本発明は、脂肪族カルボン酸、たとえば酢酸を含有する水性供給流からの水の分離に特に利用される。
本発明の利用は特に芳香族ジカルボン酸、たとえばテレフタル酸の製造方法においてであって、その際、このジカルボン酸の製造中に生成した水を除去するために、酢酸/水の蒸気流を反応器頭部から取り出し、蒸留して水を酢酸から分離する。次いでこの脱水された酢酸を少なくとも一部は酸化反応器へ再循環する。伝統的に、この作業には分留が用いられる。テレフタル酸の製造は、高圧(一般に20バール(bara))で操作した場合に著しい廃熱を発生する方法であり、これを蒸留塔の再沸騰熱として利用できるからである。
しかし、より効果的な熱回収方式を求める傾向と合わせて、テレフタル酸製造のための低圧法に関心が向けられるのに伴って、分留より不均一共沸蒸留の方が資本経費および変動費上の利点をもたらす可能性があると認識されるようになった。
酢酸/水の分離のための不均一共沸蒸留は、米国特許第A−2050234号、米国特許第A−4250330号および英国特許出願公開第A−1576787号に開示されている。英国特許出願公開第A−1576787号に述べられるように、共沸蒸留の著しい利点は、低い還流比、したがって蒸留のためのエネルギー要求の低下である。還流比は共沸蒸留のために選ばれる個々の共留剤(entrainer)に依存する。低い還流比という点では、酢酸n−ブチル(沸点:約126.2℃)を考慮しなければならない。この共留剤は英国特許出願公開第A−1576787号において、酢酸と水の分離用として好ましいとされている。還流比という見地からはこれより劣るものは、より低沸点の共留剤である酢酸イソブチル(沸点:約117℃)であり、これは米国特許第A−4250330号によって好ましいとされている;これに関してさらに劣るものは酢酸n−プロピル(沸点:約101℃)であり、これは酢酸n−ブチルが卓越した共留剤であることが認識される以前に1930年代に、共留剤として有用であることが見出された(実質的に純粋な“氷”酢酸を水性酢酸から製造することに関する米国特許第A−2050234号を参照されたい)。酢酸n−ブチルが有利であるのは、この共留剤中にはより多量の水が連行され、このため有機相還流のみを用いた場合に、より低い還流比が可能だからである。
本発明が特に関係する種類の用途では、実質的に無水の酢酸を製造するように蒸留を行う必要はない。酢酸は少なくとも一部は酸化反応器へ再循環されるので、酢酸/水を合わせた含量を基準として一般に5重量%程度の水を含有する部分脱水された酢酸を製造するのが適切である。米国特許第A−4250330号および英国特許出願公開第A−1576787号は両方とも若干の水を含有する塔底生成物(bottom product)製造の可能性を意図したものであり、米国特許第A−4250330号は共留剤酢酸イソブチルの使用による10重量%以下(好ましくは5重量%以下)の水分につき述べており、一方英国特許出願公開第A−1576787号は共留剤酢酸n−ブチルを用いて脱水酢酸生成物の水分が6.3重量%である具体例を示している。
英国特許出願公開第A−1576787号においては、共留剤酢酸n−ブチルの使用により水を含有する塔底生成物が得られ、蒸留塔の底部に多数個のトレーを用いているのを別としても、塔底生成物中への共留剤の混入(slippage)は、高い水分の供給流を用いることによって、および/または有機相(共留剤)と水相の両方を合わせた還流を採用することによって初めて避けられる。たとえば英国特許出願公開第A−1576787号に示された例においては、供給ライン5から供給される供給流の水分は、供給流の酢酸含量に対して水56.51重量%からなる。現在ではテレフタル酸製造装置は、腐食および酢酸の燃焼、したがって溶剤の損失を最小限に抑えるために、酸化反応器内に比較的低い水分(たとえば液相の酢酸/水含量を基準として約8重量%)を採用する傾向にある。したがって、酸化反応器内において比較的低い水分で操作するプラントでは、蒸留塔への供給流が反応器頭部から導かれる場合、供給流においてたとえば56重量%の水分を達成するためには、凝縮した酢酸/水−反応器頭部生成物(overhead product)の比較的低い水分から共沸蒸留塔内で処理するための高水分の供給流を得るために、精留塔またはこれに相当する水濃縮装置を共沸蒸留塔の上流に用いる必要があろう。さらに英国特許出願公開第A−1576787号の例においては、蒸留塔への還流は有機相と水相を合わせた供給材料であることが留意されるであろう。
米国特許第A−4250330号においては、蒸留塔への供給流の水分は明記されていないが、例1によれば供給流は母液を補充した部分脱水塔由来の酢酸/水の蒸気(ライン1)およびプラントの他の部分に由来する70重量%の水性酢酸の液流(ライン8)から構成される。重要なことであるが、図面の図1には水相の一部を蒸留塔へ再循環するのに有効なライン17の設置が示されており、したがって還流は有機相成分と水相成分を合わせた供給材料からなる。明らかに水相成分は塔底生成物中への共留剤の混入を避けるために必要であったと考えられる。
米国特許第A−4250330号および英国特許出願公開第A−1576787号の共沸蒸留システムは、共留剤である酢酸n−ブチルまたはイソブチルを用いて操作できるが、以上のことから、実質的に共留剤を含有しない含水塔底生成物を確実に得るためにはある種の譲歩をしなければならないことが分かるであろう。
本発明の1態様においては、ジカルボン酸の前駆物質を、低級脂肪族カルボン酸を含む水性液相媒質中で重金属触媒系の存在下に酸化し、この酸化に伴って該脂肪族カルボン酸および水を含む頭部蒸気流が生成し、この頭部蒸気流を凝縮させて脂肪族カルボン酸および水を含有する液相供給流を生成させ、そしてこの供給流を共沸蒸留して脂肪族カルボン酸および減少した量の水を含有する塔底生成物を得ることを含む、芳香族ジカルボン酸の製造方法であって、
(a)共沸蒸留される供給流が供給流中の脂肪族カルボン酸と水を合わせた重量を基準として20〜40重量%の範囲内の水分を有し;
(b)酢酸イソブチル、酢酸n−プロピル、または酢酸イソブチルと酢酸n−プロピルの沸点の間の沸点を有する共留剤を共留剤として使用し;
(c)該共留剤を含む単一有機相還流により蒸留を操作し;そして
(d)塔底生成物中の脂肪族カルボン酸と水を合わせた重量を基準として2〜12重量%の範囲内の量の水を含有する、実質的に共留剤を含有しない塔底生成物を得る
ことを特徴とする方法が提供される。
本発明の第2態様においては、ジカルボン酸の前駆物質を、低級脂肪族カルボン酸を含む水性液相媒質中で重金属触媒系の存在下に酸化し、この酸化に伴って該脂肪族カルボン酸および水を含む頭部蒸気流が生成し、この頭部蒸気流を凝縮させて脂肪族カルボン酸および水を含有する液相供給流を生成させ、そしてこの供給流を蒸留塔内で共沸蒸留して脂肪族カルボン酸および減少した量の水を含有する塔底生成物を得ることを含む、芳香族ジカルボン酸の製造方法であって、
反応器からの頭部蒸留流を、他の供給源からの水を添加して、または添加せずに処理して、供給流中の酢酸と水を合わせた重量に対して20〜40重量%の水分を有する供給流を生成させ、これにより共留剤として酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、または中間の沸点を有する共留剤を用いかつ有機相還流のみを用いて共沸蒸留を行うことができ、一方、酢酸と水を合わせた含量を基準として2〜12重量%の範囲内の量の水を含有しかつ実質的に共留剤を含有しない塔底生成物が確実に得られることを特徴とする方法が提供される。
上記に定める本発明の態様に定める方法を実施するに際しては水相の還流があることは意図しないが、有意でない量(たとえば全還流の1重量%より多くなく、もちろん2重量%より多くない)の水相が還流する可能性を排除するものではない。
供給流の水分が30重量%未満である場合、現在好ましい共留剤は酢酸n−プロピルである。
好ましくは供給流の水分は、供給流の酢酸と水と合わせた含量を基準として20〜30重量%(より好ましくは23〜27重量%)からなる。
通常は塔底生成物の水分は、塔底生成物の酢酸と水を合わせた含量を基準として3〜10重量%(好ましくは3〜7重量%、より好ましくは4〜5重量%)からなる。
供給流に他の供給源からの水を添加する場合、その添加量は全水分のうち小さな割合であろう。一般に添加量は、供給流の酢酸と水を合わせた含量を基準として5重量%以下(より一般的には3重量%以下)を構成するであろう。
米国特許第A−4250330号および英国特許出願公開第A−1576787号と対照的に、本発明の蒸留方法は有機相と有意量の水相からなる還流に頼ることなく行われ、これにより塔頭部システムにおける複雑さが避けられる。また、共留剤が塔底生成物中へ混入するのを避けるために供給流の水分を高める特別な処置をとる必要がない。
本発明方法により保証される他の利点は、分留塔または酢酸n−ブチルを共留剤として用いて操作する共沸蒸留塔と比較して、塔の高さを著しく低くできることである。たとえば一般的な分留塔は52の理論段数を採用し、酢酸n−ブチルを共留剤として用いて操作する共沸蒸留塔は40の理論段数を必要とするのに対し、本発明方法に従って操作する塔は共留剤酢酸イソブチルの場合は35の理論段数、また酢酸n−プロピルの場合は24という少ない理論段数をもつものでよい。
単相還流の採用により得られる重要な利点は、棚段塔(trayed column)の代わりに充填塔(ランダムまたは組織化(structured)充填物を備えたもの)を使用できることである。還流が2相からなる場合、充填塔を用いると分布の問題が生じ、これには均一な液組成を保証するために特別に設計されたリディストリビューター(redistributor)を用いる必要がある。したがって本発明の好ましい態様によれば、共沸蒸留を充填塔(ランダム充填物、たとえばラシヒリングもしくはポールリング、または組織化充填物を備えたもの)内で行う。これは棚段塔に優る多数の潜在的な利点を与え、たとえば塔の大きさおよび塔のホールドアップ残留量(hold−up inventory)を低下させることができ、これによって制御安定性が増し、塔への供給材料の部分的もしくは完全な損失または供給材料組成の変化などの異常に対する応答速度が高まり、かつボイラー熱の損失が起こった場合に塔底へ投入される材料の容量が少なくなる。
テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を製造する際には、回収するのが望ましい前駆物質(たとえばパラキシレン)を多量に反応器頭部蒸気流が持ち逃げする(carry over)傾向がある。本発明は、そのさらに他の態様においては前駆物質を効果的に回収することに関する。
本発明のこの態様によれば、ジカルボン酸の前駆物質を、低級脂肪族カルボン酸を含む水性液相媒質中で重金属触媒系の存在下に酸化し、この酸化に伴って該脂肪族カルボン酸、該前駆物質および水を含む頭部蒸気流が生成し、この頭部蒸気流を凝縮させて脂肪族カルボン酸、水および前駆物質を含有する液相供給流を生成させ、そしてこの供給流を塔内で蒸留して脂肪族カルボン酸および減少した量の水を含有する塔底生成物を得ることを含む、芳香族ジカルボン酸の製造方法であって、
水と不均一共沸混合物を形成しうる共留剤を用いて蒸留を行い;
共留剤の浸透を制御し、これにより塔底生成物は実質的に共留剤を含まず;
供給流を共沸帯域の下限より上方の位置で塔に導入し;そして
該前駆物質を供給流の導入位置の領域で塔から取り出す
ことにより前駆物質を回収することを特徴とする方法が提供される。
実際には、供給流を塔の導入する地点は塔の上端で取り出す塔頂生成物(top product)中の脂肪族酸の濃度を最小限に抑える必要性と一致し、塔の頂部より共沸蒸留帯域の下限に若干近いであろう。
本発明のこの態様は、前駆物質濃度が供給流の進入地点付近で実質的に上昇するという意外な知見に基づく。特に、前駆物質と共留剤の濃度比は、供給流の進入地点よりわずかに下の位置でピークに達することが見出された。
本発明の1態様においては、ジカルボン酸はテレフタル酸であり、前駆物質はパラキシレンである。
共留剤は、有機相還流のみを用いて共沸蒸留を行うことができるものが好都合である。これは、蒸留塔への供給流が供給流の脂肪族酸/水を合わせた含量を基準として40重量%以下(より普通には35重量%以下)の水分を含有する場合、また塔底生成物が実質的に共留剤を含有せずかつ塔底生成物の脂肪族酸/水の含量を基準として2〜12重量%の水分を含有することが要求される場合、特にそうである。
本発明のこの態様においては、共留剤は好ましくは酢酸アルキル、たとえば酢酸イソブチルまたは酢酸イソブチルより低い沸点をもつ共留剤(たとえば酢酸n−プロピル)から構成される。
本明細書全体を通して用いる“共沸帯域”とは、合わせた液相中の共留剤の濃度が少なくとも0.1重量%である蒸留塔領域を表す。
本発明の他の態様は、共沸蒸留塔を塔への供給材料(1またはそれ以上)の組成変化および/または実質的もしくは完全な供給材料喪失に対処するように制御することに関する。
本発明のこの態様によれば、少なくとも1種の他の成分を含有する液相媒質からの水の分離を共沸蒸留により行い、その際塔頂成分が主として水を含み、一方塔底生成物が前記他の成分および減少した量の水を含む方法であって、塔底生成物中の水の量を塔の下部セクションへの分離水供給の調節により制御することを特徴とする方法が提供される。
さらに、塔底生成物中の水の量を制御するために、好ましくは還流比の調節を採用する。
還流比および分離水供給の調節は、好ましくは塔底生成物中の水の濃度に依存して行われ、このような調節は水の濃度を、たとえば後記の予め定めた限度内に維持するように行うのが好都合である。
本発明の好ましい態様においては、分離水供給は共沸帯域の下限に相当する位置またはそれより下で塔に導入される。
本発明の1用途は、塔底生成物の水濃度を制御するために採用される還流比の調節が極めて遅い応答速度を示す傾向にある棚段塔に特に好適であるが、必ずしもこれに限定されない。塔の基底部に分離水を供給すると、迅速に応答する制御ループが確立され、これと還流比の調節によって確立される遅効性の制御ループとが一緒になって、塔底生成物の水濃度を目的限度内に維持することが可能になる。
分離水の供給(棚段塔および充填塔の両方に利用できる)により保証される他の利点は、供給流により塔に供給される水の突然の減少または喪失(たとえば供給流がテレフタル酸の製造に伴う酸化プロセスに由来するものである場合に、反応器トリップ(trip)の結果として)を直ちに補償できることである。たとえば反応器が停止した結果として供給流が失われた場合、共留剤は蒸留塔の基底部からすべての水を直ちにストリップし、その結果塔のプロフィルが失われ(正常な操作を再開するのをさらに困難にする)、最終的にはその帯域の腐食という難題を生じるであろう。塔基底部の水の濃度を監視することによって(たとえば温度の監視および/またはオンライン分析による)、塔への分離水の供給を制御することによりこのような状況に対する予防策を講じることができる。
液相媒質は脂肪族カルボン酸、たとえば酢酸、および水を含むことができる。
本発明方法は、たとえば塔底生成物がその後の塔底生成物の使用、たとえばテレフタル酸製造プラントにおける酸化反応器への酢酸の再循環に適合させるために一定の水分をもつことが要求される場合、予め定めた量の水が塔底生成物中に保証されるように行われる共沸蒸留に特に利用される。
液相媒質が脂肪族カルボン酸、たとえば酢酸、および水を含む場合、水と不均一共沸混合物を形成する好適な化合物、たとえば酢酸アルキル、たとえば酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルおよび酢酸n−プロピルを使用できる。
この最後に定めた本発明の態様は、先に定めた本発明の態様による方法に簡便に利用できるが、これらの方法にのみ限定されず、たとえば有機相および水相の両方を蒸留に還流する方法にも利用できる。
本発明を添付の図面を参照して以下に記載する:
図1は、本発明による共沸蒸留プラントの模式図である;
図2は、図1のものと同様な図であって、制御方式の変法を示す;および
図3は、図2のものと同様な図であって、制御方式の他の変法を示す。
本発明を、パラキシレンの液相酸化によりテレフタル酸を製造するプラントに由来する水性酢酸流の処理を参照して説明する。この酸化は、液相媒質がパラキシレン、酢酸溶剤、若干の水、ならびにコバルト化合物およびマンガン化合物を含む触媒系を含むものである反応器内で行われる。このような酸化法は本出願人による先の欧州特許出願公開第A−498501およびA−502628号に記載されており、それらの記載が本明細書に参考として含まれるものとする。この酸化法により、主として酢酸および反応水、ならびに他の化合物、たとえば酢酸メチルおよびパラキシレンを含む頭部蒸気が生成する。この頭部蒸気を反応器から取り出し、頭部冷却器システムで部分的に凝縮させて、液相水性酢酸成分、すなわち水分の少ない成分(これは反応器へ還流として返送される)と水分に富む成分(蒸留塔へ導通される)を得る。後者の成分は、液流の酢酸および水成分を合わせたものを基準として20〜30重量%(一般に25〜28重量%)程度の水分を含有する。この水性酢酸流は通常は若干のパラキシレンおよび酢酸メチルをも含有する。
本発明方法においては、水分の低下した(酢酸/水成分を合わせたものを基準として一般に5重量%)酢酸を含む塔底生成物を生成するような共沸蒸留を用いてこのような回収が行われ、こうして過剰の水を分離し、かつ残存量を再循環酢酸と共に返送することにより、酸化反応器の水分を調節できる。酢酸n−ブチルなどの高沸点共留剤を用いることにより採用できる低い還流比からみて、共沸蒸留のためにこのような共留剤を選択するのは当然である。酸化反応に際して発生する多量の熱をより有効に利用すること、または酸化プロセスを減圧下で操作し、これに伴ってエネルギー入力要求を低下させることが目的である場合は、特にそうである。しかし頭部水性酢酸流中に存在する水分、および共沸蒸留に由来する酢酸生成物中に存在する水分は少ないため、共留剤が塔底生成物中へ混入するのを防止するためには、高沸点共留剤が特別な工程を要求する:たとえば有機相と水相の混合還流を用いた操作、および/または塔底生成物を蒸留塔から取り出す地点の上方で、実質的にすべての共留剤をストリップするのに有効な水準にまで反応器頭部流の水分を高める処理。
これらの繁雑さは、蒸留プロセスを単一有機相還流により操作することと連結して、また酢酸塔底生成物が実質的に共留剤を含有せずかつ酸化反応器へ再循環するのに適合した必要水準の水分を含有するように、頭部水性酢酸流の処理を限定することによって避けられる。これは、比較的低い沸点の共留剤、たとえば酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、または中間の沸点をもち、目的とする分離に適合しかつ不均一共沸混合物を形成する化合物を用いることにより達成される。“反応器頭部水性酢酸流の処理を限定する”とは、蒸気相反応器の頭部生成物を、追加の精留装置により水分を高めるための特別な追加工程を行うことなしに凝縮処理することを意味する。
図面を参照すると、蒸留塔12(充填塔または棚段塔のいずれであってもよい)への供給材料10は、テレフタル酸の製造プラントの酸化反応器に付随する頭部冷却器システム14から直接に、すなわち40%を越える高い水分をもつ供給材料を得るために介在する精留プロセスなしに得られる。低沸点の共留剤、たとえば酢酸n−プロピルを使用し、そして共留剤が供給材料10より下の位置まで浸透し、これにより供給材料10が共留剤に富む領域で塔に進入することを保証するように塔を操作する。図面には1供給材料のみを示すが、追加の水性供給材料(液相および/または蒸気相)、たとえば酸化反応器に付随する高圧吸収塔ならびに第1および第2晶析装置に由来する供給材料を、塔の高さに沿って他の地点で塔に供給してもよい。このような追加の供給材料は共沸帯域で塔に進入してもよく、そうでなくてもよい。主な供給材料は頭部冷却器システム14に由来するものであり、これは一般に、存在する他のいずれの供給材料より多くの水を与えるであろう。場合により、このような他の供給材料を頭部冷却器システム14からの供給材料と一緒にして単一供給材料として塔に導入してもよい。
塔12の塔頂生成物を塔の頭部冷却器システム16で冷却し、この凝縮液を相分離器18へ供給し、ここで凝縮液を有機相(主として共留剤、ならびに少量の水、ならびに若干の酢酸メチル、パラキシレンおよび他の有機化合物)と、少量の共留剤および特に若干の酢酸メチルを含有する水相とに分離する。図示されてはいないが、相分離器18は不活性ガスを系からパージするための出口を備えている。塔12内の圧力を調節するために、冷却器システム16に供給される冷却剤はライン50を経て、圧力制御器54により制御される弁52の制御下に供給される。こうして塔12内の圧力をライン50内の流れの調節により調節できる。あるいは塔内の圧力は、他の手段、たとえば不活性ブランケティング(blanketing)または冷却器16の液体ロギング(logging)により調節できる。凝縮した水相はライン20を経てストリッピング塔(図示されてはいない)へ供給され、ここで共留剤が蒸留塔への再循環用として回収され、酢酸メチルが後続処理のため塔頂生成物として分離される。ライン20中の流れは、相分離器18内の相界面に応答するレベル制御器58により制御される弁56によって調節される。こうして塔頂の物質収支は弁56の制御下にある水相の取り除きにより維持される。有機相は、蒸留塔12内の温度プロフィルに応答する温度制御器62により制御されるライン22を経て、還流として塔12へ返送される。本発明のある態様によれば、分離器18から得た水相は塔へ還流として返送されない。したがって単相還流が採用され、これにより前記の利点が保証される。しかし前記のように、水相還流の可能性を排除するものではなく、この可能性については図面中に、付随する流れ制御器66および流れ調節弁68を伴うライン64を含ませることにより用意されている。
塔12の基底部においては、ライン34を経て、レベル制御器72により調節される弁70の設定により決定される速度で塔底生成物を取り出すことにより、物質収支が維持される。分離効率は、塔基底部またはその付近の温度を感知するための温度制御器74に連結した弁73によりリボイラー32へ補給される熱を制御することによって維持される。
前記のように、塔は供給材料10が導入される地点より下の位置まで塔の下方へ共留剤が浸透するのが保証されるように操作される。共留剤は酢酸の沸点と十分に離れた低い沸点をもつので、共留剤浸透の制御はライン34を経て取り出される塔底生成物中へ浸透する危険性なしに容易に達成できる。このような制御は、塔内で縦方向に間隔をおいた多数の場所で温度を監視することにより行うことができる。塔内で共留剤濃度が急激に低下する位置には、これに対応してその領域の温度プロフィルの急激な変化が伴うからである。制御器62で温度プロフィルを監視することにより共留剤浸透の程度を判定し、弁60による還流比および/または再沸騰速度(リボイラー32による)の適切なフィードバック制御を利用して、共留剤の浸透を予め定めた限界内に調節することができる。また浸透は他の手段で、たとえば米国特許第A−2050234号に開示されるように還流を2以上の流れに分割し、そのうち1つを塔の頂部に導入し、他をそれより低い1またはそれ以上の地点に導入することにより制御してもよい。
より低い沸点の共留剤、たとえば酢酸n−プロピルを用いる場合(その結果、有機相のみの還流につき酢酸n−ブチルより高い還流比が得られる)、冷却器システム16内で行われる二次冷却(sub−cooling)の程度を変化させることにより、還流比、より詳細には塔内部還流比を最小限に抑えることができる。本発明者らは、冷却器システム16からの適切な出口温度を選択することにより、内部還流比が最小限に抑えられることを見出した。たとえば酢酸n−プロピル共留剤の場合、冷却器システム16の出口温度を約75℃に設定すると塔内部還流比はその最小値またはそれに近いことを本発明者らは見出した。たとえば、冷却器出口温度は最小の塔内部還流比に対応する値から約10℃以内、より好ましくは約5℃以内にあることが好ましい。こうして塔内部還流比を最小限に抑えることにより、塔の直径および蒸留のエネルギー要求を共に低下させることができる。
酸化反応器に由来する供給材料10中に存在する傾向がある主要な不純物の1つはパラキシレンであり、これは比較的高い沸点をもち、水と共沸混合物を形成する。供給材料中に存在するパラキシレンは、蒸留塔から除去されないと蓄積する傾向があり、その濃度上昇の結果、塔の性能が損なわれやすいであろう。本発明者らは、少量のパラキシレンが供給材料10中に存在すると、供給材料10の導入地点付近で塔内のパラキシレンの濃度プロフィルが予想外に著しく上昇する傾向があると判断した。したがってパラキシレンの除去は、供給材料10の導入地点付近のライン24を経て行われる。こうして、必要な共留剤を塔から過度の量除去することなく極めて効果的にこの不純物を除去できる。これに対し共留剤として酢酸n−ブチルを使用すると、パラキシレンは塔全体に、より均一に分散する傾向があり、1箇所では有意量を除去することはできない。
実際には、共留剤濃度と対比してパラキシレンをそのピーク濃度に達する地点からわずかに離れて位置で除去するのが適切であることを本発明者らは見出した。実験作業により、共留剤濃度に対するパラキシレン濃度の比率は水性酢酸供給材料流10の導入地点の直下の位置でそのピーク濃度に達することが確認された。しかし、供給材料流10中に存在する傾向がある他の不純物であるトルエンの相対濃度は供給材料流10の導入地点より下では著しく低下することも確認された。供給材料流10の導入地点のすぐ上の位置(すなわち共留剤濃度に対するパラキシレン濃度の比がその最大値より小さい位置)で塔からパラキシレンをパージすることにより、同時に著しい量のトルエンを除去でき、これによりパラキシレン不純物とトルエン不純物について別個に取出しする必要性が避けられる。
次いで図2を参照すると、これは蒸留塔への供給材料(1またはそれ以上)の導入の乱れまたは喪失に適応する制御方式を示す。図2に示すこの方式は多くの点で図1のものと類似するので、同様な部品を表すのに同一の参照番号を用いた。図2の制御方式の重要な特色は、弁78の制御下に(これは温度制御器74により制御される)塔の下部セクションに水の補給を行う(ライン76を経て)ことである。図示したように、補給水はこの系からライン20を経て排出される水に由来する。しかしこの目的で用いる水は他の供給源に由来するものであってもよい。たとえば制御器74により検知される塔基底部の温度が上昇している(たとえば塔への供給材料の実質的または完全な喪失の結果として)状況では、弁78の設定は塔基底部へ水を進入させて温度上昇を相殺するように調整され、塔が差動しうる水を供給する。この方式の変法においては、温度制御器62と74の役割を逆転させ、したがって温度制御器62が弁73を制御し、一方、温度制御器74が弁60(および弁78)を制御する。
より精巧な制御方式を図3に示す。この場合も図2と3において類似の部品を表すために同一の参照番号を用いる。この方式では基底部温度制御器74が弁60と弁78を制御し、一方、制御器62が弁73を制御する。これは、弁78(水の補給)は制御器74により塔への水の補給を停止するように設定できるのに対し、弁60は固定した最小設定を有し、これがいったん達成されるとこれにより常に少なくとも予め定めた共留剤還流比が得られ、これを制御器74でさらに低下させることはできない配列である。塔の操作が正常である場合、還流比は共留剤の浸透度を塔の最適位置に制限するように固定されるであろう。この場合、水がライン76から塔内へ導入されないように、弁78をその閉鎖位置に設定できる。
塔への供給が変化した状況では、たとえば共留剤が最適位置を越えて浸透したことに応答して塔12の基底部の温度が上昇した場合、この温度上昇は制御器74により検知され、これが弁78を開いて水を進入させ、これにより温度変化に対して迅速に応答できる。同時に制御器74からの上昇サインが検知されると弁60は塔への還流比を低下させるように変更される。次いでこれにより塔への共留剤の浸透度が低下し、その結果、塔の温度プロフィルが変化する。塔内の共留剤の浸透レベルが上昇するのに伴って、リボイラーの出力が低下し(制御器62の制御下に)、これに伴って塔基底部の温度が降下し、かつ弁78が閉じる(部分的または完全に)。こうして水進入弁は変動に対する迅速な応答ループを提供し、一方、還流弁60は弁78による水の導入が全くまたは最小限しか要求されない状態に塔の操作を徐々に戻す、より緩慢な応答ループを提供する。
塔への供給が実質的または完全に失われる極端な状況では、これにより塔基底部の温度が上昇し、これは水進入弁78の開放により相殺される。前述のように、弁60も塔への共留剤の還流を低下させるように調整される。しかしこれらの状況では、弁60の閉鎖は予め定めた最小還流比に達するまで行われるにすぎず、還流比の低下に伴ってリボイラー32が制御器62の発する信号に応答して、最小還流比により決定される程度にまで出力低下する。もちろん弁60の閉鎖に対して課される制限は、リボイラーが出力低下しうる程度に対しても制限を課す。こうしてこれらの状況下で塔基底部の温度は、塔が作動しうる水で供給しかつ塔底生成物中への共留剤の混入を防止するために十分な、弁78による塔への水の補給を維持するのに有効なものになる。
以上から、塔底生成物の水の濃度(たとえば温度変化またはオンライン分析により判定されるもの)に従ったこの水の供給の調節に伴って塔の下部セクションに補給される少量の分離水の供給76によって、水濃度のいかなる変化に対しても迅速に応答でき、これにより塔底生成物水分の厳密な制御が維持されることが分かるであろう。塔底生成物の水濃度を制御するために2つの変数、すなわち分離水の供給および有機相還流比が採用される。水の供給は迅速な応答を提供し、一方、有機相還流の変化は水の供給を最小限に抑えかつその濃度を目的限度内に戻すように徐々に変化する。分離水の供給および有機相還流比は両方とも塔底生成物の水濃度(たとえば温度測定またはオンライン分析により判定されるもの)に依存して制御される。
同様に前述したように、ライン76を経た分離水の供給を反応器トリップに対する安全策として採用できる。さもなければ塔底の水が実質的にすべてストリッピングされる結果となるであろう。この場合、分離水の供給は、塔基底部領域の有意の温度上昇が起こった際に作動する。
単一有機相還流を採用した共沸蒸留に関して記載したが、塔の下部セクションへの水の補給を伴う方式は有機相および水相の両方を塔へ還流する共沸蒸留にも適用できることを理解すべきである。

Claims (1)

  1. ジカルボン酸の前駆物質を、低級脂肪族カルボン酸を含む水性液相媒質中で重金属触媒系の存在下に酸化し、この酸化に伴って該脂肪族カルボン酸、水および該酸化反応から持ち越される前駆物質を含む頭部蒸気流が生成し、この頭部蒸気流を凝縮させて脂肪族カルボン酸、水および該頭部蒸気流中に存在している前駆物質を含有する液相供給流を生成させ、そして蒸留塔中の供給流を共留剤を用いて共沸蒸留して脂肪族カルボン酸および減少した量の水を含有する塔底生成物および有機相と水性相を有する塔頂生成物を得ることを含む、芳香族ジカルボン酸の製造方法であって、
    (a)供給流中の脂肪族カルボン酸と水を合わせた重量を基準として20〜40重量%の範囲内の水分を有する供給流を共沸蒸留塔で操作し、前記供給流を該塔内の共沸ゾーンの下限か、それより下方又はそれより上方の位置で共沸蒸留塔に導入し、前記前駆物質を前記供給流を導入した位置か、それより下方又はそれより上方の区域から取り出し回収し、;
    (b)前記共留剤として酢酸イソブチル、酢酸n−プロピル、又は酢酸イソブチルの沸点と酢酸n−プロピルの沸点との間の沸点を有する化合物を使用し;
    (c)該塔頂生成物を共留剤を含む有機相と水性相に分離し、該有機相を蒸留塔に単一有機相還流としてリサイクルさせ;そして
    (d)上記の操作により、該塔底生成物が塔底生成物中の脂肪族カルボン酸と水を合わせた重量を基準として2〜12重量%の範囲内の量の水を含有し、かつ実質的に共留剤を含有しないことを特徴とする方法。
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