JP2005060241A - 溶剤の精製方法およびそれに用いる装置 - Google Patents
溶剤の精製方法およびそれに用いる装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005060241A JP2005060241A JP2003207307A JP2003207307A JP2005060241A JP 2005060241 A JP2005060241 A JP 2005060241A JP 2003207307 A JP2003207307 A JP 2003207307A JP 2003207307 A JP2003207307 A JP 2003207307A JP 2005060241 A JP2005060241 A JP 2005060241A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- distillation
- pressure
- distillation column
- liquid
- dimethylamide
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Vaporization, Distillation, Condensation, Sublimation, And Cold Traps (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
Abstract
【課題】本発明は、カルボン酸とジメチルアミドの混合溶液を蒸留分離する溶剤の精製方法、およびそれに用いる装置を提供することを目的とする。
【解決手段】カルボン酸及びジメチルアミドを含む溶液を蒸留する溶剤の精製方法であって、(a)圧力の低い蒸留操作にて蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させる工程、及び(b)圧力の高い蒸留操作にて蒸留塔上部からカルボン酸を留出させる工程を有することを特徴とする、溶剤の精製方法、およびそれに用いる装置。
【選択図】 なし
【解決手段】カルボン酸及びジメチルアミドを含む溶液を蒸留する溶剤の精製方法であって、(a)圧力の低い蒸留操作にて蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させる工程、及び(b)圧力の高い蒸留操作にて蒸留塔上部からカルボン酸を留出させる工程を有することを特徴とする、溶剤の精製方法、およびそれに用いる装置。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、共沸混合組成を示すジメチルアミドとカルボン酸の混合溶液を蒸留分離する溶剤の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジメチルアミドは、各種樹脂の重合や成形工程における溶剤等として幅広く利用されている。この使用済みのジメチルアミドは、廃棄或いは焼却処分されることが多いが、経済的な面だけでなく廃棄物放出量を減少する目的からも、回収して再利用することが望まれている。しかしながら、工程から回収した溶剤には、各種原料若しくは反応により発生した成分等が混入するのが一般的であるため、目的の溶剤を得るためには、上記不要成分を分離精製する操作が必要である。
【0003】
例えば、ポリイミドフィルムの製造工程でジメチルホルムアミドを溶剤として用いる場合(例えば、特許文献1参照。)、脱水剤として添加された無水酢酸や反応により生じた酢酸が回収された溶剤中に混入する。酢酸とジメチルホルムアミドを含む混合溶液から各成分を分離して取り出すために蒸留操作を行なう場合、これらの2成分が最高共沸混合物を形成するので分離することが困難である。
具体的には、酢酸の沸点は常圧で118℃、ジメチルホルムアミドの沸点は同様に153℃であるにもかかわらず、常圧の条件で分離操作を行った場合、酢酸とジメチルホルムアミドの比率を重量基準で約33対66とする混合溶液は、沸点が165℃程度まで上昇し、その混合比率を維持したまま蒸発してくるので分離することができない。
【0004】
上記の問題を解決するため、キノリン類をエントレーナーとして利用してカルボン酸とジメチルアミドの共沸組成混合溶液を分離する方法(例えば、特許文献2参照。)、若しくはトルエンをエントレーナーとして添加することにより酢酸と最低共沸を形成して分離する方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。
【0005】
また、ポリウレタン弾性繊維製造工程から回収されるジメチルホルムアミドに含有される蟻酸に対して、アミノ化合物を中和点まで添加してから蒸留し、ジメチルホルムアミドを精製する方法(例えば、特許文献4参照。)が開示されている。この方法においては 中和剤を消費するとともに中和塩が発生する。
【0006】
【特許文献1】特開平6−87958号公報
【0007】
【特許文献2】特開2002−348270号公報
【0008】
【特許文献3】特開2002−363150号公報
【0009】
【特許文献4】特公昭58−57421号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
カルボン酸とジメチルアミドの共沸混合液を蒸留分離するには、エントレーナーや中和反応を行なうための添加剤を必要としていた。特に、中和処理を行なう場合には中和塩の廃棄物が副生することが問題であった。
【0011】
本発明は、カルボン酸とジメチルアミドの混合溶液を蒸留分離する溶剤の精製方法を提供することを目的とする。更に詳しくは、上記添加剤等を用いなくとも、カルボン酸とジメチルアミドを蒸留分離することが可能な溶剤の精製方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、添加物等を用いること無く、カルボン酸とジメチルアミドを蒸留分離するために鋭意検討した結果、蒸留操作圧力の変更により気液平衡関係に差異が生じることを利用した精製方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち本発明の第1は、カルボン酸及びジメチルアミドを含む溶液を蒸留する溶剤の精製方法であって、(a)圧力の低い蒸留操作にて蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させる工程、及び(b)圧力の高い蒸留操作にて蒸留塔上部からカルボン酸を留出させる工程を有することを特徴とする、溶剤の精製方法に関する。
【0014】
好ましくは、前記(a)の蒸留における塔底部液を、(b)の蒸留原料液に混入する前記の方法に関する。
【0015】
更に好ましくは、前記(b)の蒸留における塔底部液を、(a)の蒸留原料液に混入する上記何れかに記載の方法に関する。
【0016】
更に好ましくは、前記ジメチルアミドがジメチルアセトアミド若しくはジメチルホルムアミドであり、前記カルボン酸が酢酸、蟻酸、及びプロピオン酸から選ばれることを特徴とする、上記何れかに記載の方法に関する。
【0017】
更に好ましくは、前記(a)の蒸留塔操作圧力と(b)の蒸留塔操作圧力との差異が、少なくとも0.4MPa以上であることを特徴とする、上記何れかに記載の方法に関する。
【0018】
更に好ましくは、前記(a)の蒸留塔操作圧力が0.1MPa以下であり、(b)の蒸留塔操作圧力が0.5MPa以上であることを特徴とする、上記何れかに記載の方法に関する。
【0019】
更に好ましくは、回分式蒸留操作を行なうことを特徴とする、上記何れかに記載の方法に関する。
【0020】
更に好ましくは、連続式蒸留操作を行なうことを特徴とする、上記何れかに記載の方法に関する。
【0021】
本発明の第2は、溶剤精製を行なうための装置であって、異なった圧力にて蒸留を行う2塔の蒸留塔から構成されており、第1塔底部液を抜き出して第2塔中間高さ位置へ供給する配管が接続されており、第2塔底部液を抜き出して第1塔中間高さ位置への原料供給配管へと循環供給する配管が接続されており、それぞれの蒸留塔の上部から留出液取り出し配管を備えている装置に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る溶剤の精製方法、およびそれに用いる装置について説明する。
【0023】
本発明の溶剤の精製方法において、蒸留に供される原料液は、カルボン酸とジメチルアミドを含む混合液である。例えば、ポリイミド樹脂を合成し、成形する工程から排出される溶剤のジメチルホルムアミドは、酢酸や無水酢酸を含む場合が多いが、これらの溶剤の蒸留精製にも本発明の精製方法及び装置を利用することが可能で、回収された溶剤を再利用することができる。例えば、上記溶剤が成形加工段階や乾燥工程から蒸発気体状態で排出される場合には、コンデンサーやスクラバーなどの方式によって冷却液化捕集してから、前述の蒸留に供することができる。また、捕集された溶剤中にジメチルホルムアミドとの相対揮発度が小さく、通常の蒸留操作での分離が困難である無水酢酸が含まれている場合は、水を添加して無水酢酸を加水分解し酢酸に変換してから、前述の蒸留に供することもできる。上記の様に、添加により、若しくは溶剤捕集段階で予め水を含む場合には、蒸留に先だって、脱水処理を目的とした蒸留を行うこともできる。
【0024】
本発明において、カルボン酸とは、カルボキシル基を有する化合物であって、本発明の溶剤の精製方法に用いることが可能なものであれば特に制限されることはないが、組成式:CnH2n+1COOHで示され、nが0,1,2の化合物(即ち、蟻酸、酢酸、プロピオン酸)であることが好ましい。
【0025】
本発明において、ジメチルアミドとは、ジメチルアミド基を有する化合物であって、本発明の溶剤の精製方法に用いることが可能なものであれば特に制限されることはないが、組成式:(CH3)2NCORで示され、RがH、CH3、CHCH2などの化合物(即ち、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアクリルアミド)であることが好ましい。中でも、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミドであることがより好ましい。
【0026】
本発明に用いる蒸留塔は底部の液を加熱蒸発させるリボイラーを備えていることが好ましい。塔上部に炊き上がった蒸気をコンデンサーで冷却凝縮して、その一部を留出液として取出し、残りの液は塔上部へ還流させることができる。蒸留塔内部の気液接触部の構造は、各種の段構造や充填剤構造を採用することができる。
【0027】
本発明の最大の特徴は、蒸留操作において低圧操作と高圧操作とを行なう点である。低圧操作は、例えば、真空ポンプで排気して実施できる。低圧蒸留操作を行う圧力は、好ましくは1kPa以上、100kPa(0.1MPa)以下とすることができ、更に好ましくは5kPa以上、20kPa以下である。圧力が低い方が操作温度を低くできるので、副反応の抑制やカルボン酸による設備材質腐食の観点から好ましく、また高圧操作時の圧力と比較し、相対的に圧力差が大きくなるので蒸留分離性能にとっても好ましい。高圧蒸留操作を行う圧力は、例えば0.5MPa以上、2MPa以下にて実施することできるが、より好ましい範囲は0.5MPa以上、1MPa以下である。圧力が高いほど蒸留分離性能が良好になるが、操作温度は高くなるので副反応が増大する傾向がある。
【0028】
前述したように、上記蒸留操作圧力の差異が大きいほどカルボン酸とジメチルアミドの分離を効率的に行うことができるので、低圧操作と高圧操作における蒸留操作圧力の差異が、0.4MPa以上、更には0.5MPa以上、特には1.0MPa以上であることが好ましい。
【0029】
例えば、低圧蒸留操作を9.33kPaで実施すると、酢酸40重量%とジメチルホルムアミド60重量%の混合比率にて最高共沸混合物となることが知られている(特開2002−348270)。ところが、本発明では、0.1MPaにおける共沸点は酢酸25重量%とジメチルホルムアミド75重量%であり、0.5MPaでは酢酸14重量%とジメチルホルムアミド86重量%であり、1MPaでは酢酸10重量%とジメチルホルムアミド90重量%のように変化し、圧力が高くなる程、共沸点における酢酸混合比率が小さくなるという現象を見出した。
【0030】
本発明においては、蒸留操作を回分式で実施することができる。例えば、原料液中のカルボン酸とジメチルアミドの混合比率が共沸組成比率よりもジメチルアミドに富んでいる場合には、低圧操作の蒸留を行なうことによって蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させることができる。ジメチルアミドが留出減少して低圧における共沸混合組成比率に接近した段階で高圧の蒸留操作に変更すると、共沸混合組成比率が変化してカルボン酸が富んだ状態になり蒸留塔上部からカルボン酸を留出させることができる。
【0031】
これに対し、原料液中のカルボン酸とジメチルアミドの混合比率が共沸組成比率よりもカルボン酸に富んでいる場合には、高圧蒸留操作を行なって蒸留塔上部からカルボン酸を留出させることができる。その後、カルボン酸が留出減少して高圧における共沸混合組成比率に接近した段階で低圧の蒸留操作に変更すると、共沸混合組成比率が変化してジメチルアミドが富んだ状態になり蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させることができる。このようにして低圧蒸留と高圧蒸留を行い、蒸留塔底部の液が減少したら、原料液を追加して蒸留を繰り返すことができる。
【0032】
本発明においては、蒸留操作を連続的に行なうこともできる。原料液中のカルボン酸とジメチルアミドの混合比率が共沸組成比率よりもジメチルアミドに富んでいる場合には、低圧操作の蒸留塔へ原料液を連続的に供給して蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させることができる。低圧操作蒸留塔底部からはカルボン酸を濃縮して取り出すことができるので、この液を高圧操作蒸留塔に供給すると蒸留塔上部からカルボン酸を留出させることができる。高圧操作蒸留塔底部からはジメチルアミドが濃縮された液を取り出すことができるので、この液を再び低圧操作蒸留塔へ供給することができる。
【0033】
原料液中にカルボン酸が富んでいる場合には高圧蒸留塔へ原料液を連続的に供給して蒸留塔上部からカルボン酸を留出させ、高圧操作蒸留塔底部のジメチルアミド濃縮液を抜き出して、低圧蒸留塔へ供給すれば蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させることができる。ここで、低圧蒸留塔底部のカルボン酸濃縮液は再び高圧操作蒸留塔へ供給することができる。
【0034】
本発明の溶剤の精製方法における連続式蒸留実施形態に好適に用いることができる装置について説明する。説明の便宜上、まずジメチルアミドに富む原料液を取り扱うのに適した本発明に係る装置について、図1の例に従って説明する。
【0035】
カルボン酸及びジメチルアミドを含む溶液である原料は、原料供給配管(1)により低圧蒸留塔(2)に供給される。ここで原料供給配管(1)は、低圧蒸留塔(2)の塔頂より2理論段以下、且つ塔底より2理論段以上の位置に接続するのが好ましい。更に、低圧蒸留塔(2)の塔頂より3理論段以下、且つ塔底より3理論段以上に接続すると、還流比、蒸留塔に投入するエネルギーを小さくすることができるため、より好ましい。なお本発明において、中間高さ位置という場合は、蒸留塔の塔頂より2理論段以下、塔底より2理論段以上の部分を意味する。原料供給配管(1)には流量制御弁を設けることができるが、低圧操作するに際しては圧力開放弁(21)を取りつけることが好ましい。低圧蒸留塔(2)内部には棚段あるいは充填剤を設置して蒸気と液を接触させることが好ましい。塔頂蒸気配管(5)を経てコンデンサー(4)にて凝縮された液の一部は留出配管(6)から抜き出されるとともに残りの凝縮液は還流配管(22)で蒸留塔へ還流することができる。コンデンサー(4)を通過したあとの非凝縮気体を真空ポンプ(23)で排気することにより低圧操作をすることができ、調節弁(24)によって圧力を制御することができる。低圧蒸留塔底部にはリボイラー(3)を設けることが好ましい。低圧蒸留塔(2)底部より取り出した液を高圧蒸留塔(8)へ供給する送液配管(7)を接続することができる。送液配管(7)には送液ポンプ(25)を設けることによって低圧蒸留塔(2)の液を高圧蒸留塔(8)へ供給することができる。この場合の送液配管(7)は、高圧蒸留塔(8)の塔頂より2理論段以下、且つ塔底より2理論段以上に接続されるのが好ましいが、塔頂より3理論段以下、且つ塔底より3理論段以上に接続されれば還流比、蒸留塔に投入するエネルギーを削減することができるので、より好ましい。高圧蒸留塔(8)内部には棚段あるいは充填剤を設置して蒸気と液を接触させることが好ましい。塔頂蒸気配管(11)を経てコンデンサー(10)にて凝縮された液の一部は留出配管(13)から抜き出されるとともに残りの凝縮液は還流配管(26)で蒸留塔へ還流することができる。コンデンサー(10)を通過したあとの非凝縮気体を圧力調節弁(27)で放出することによって高圧操作を制御することができる。高圧蒸留塔底部にはリボイラー(9)を設けることが好ましい。
高圧蒸留塔(8)底部より取り出した液を低圧蒸留塔(2)へ送る循環配管(12)を接続することができる。蒸留操作を継続することによって液中に高沸点成分が濃縮されてくる場合には、この循環配管(12)の液の一部を抜き出すことによって定常運転をすることができる。
【0036】
次に、カルボン酸に富む原料液を取り扱うのに適した本発明に係る装置について図2の例に従って説明する。
【0037】
原料は原料供給配管(31)により高圧蒸留塔(32)に供給される。ここで原料供給配管(31)は、高圧蒸留塔(32)の中間高さ位置へ接続されることが好ましい。この場合の原料供給配管(31)は、高圧蒸留塔(32)の塔頂より2理論段以下、且つ塔底より2理論段以上に接続されるのが好ましいが、塔頂より3理論段以下、且つ塔底より3理論段以上に接続されれば還流比、蒸留塔に投入するエネルギーを削減することができるので、より好ましい。原料供給配管(31)には送液ポンプと流量制御弁(51)を設けて高圧蒸留塔へ供給することができる。高圧蒸留塔(32)内部には棚段あるいは充填剤を設置して蒸気と液を接触させることが好ましい。塔頂蒸気配管(35)を経てコンデンサー(34)にて凝縮された液の一部は留出配管(36)から抜き出されるとともに残りの凝縮液は還流配管(52)で蒸留塔へ還流することができる。コンデンサー(34)を通過したあとの非凝縮気体を圧力調節弁(54)で放出することによって高圧操作を制御することができる。高圧蒸留塔底部にはリボイラー(33)を設けることが好ましい。高圧蒸留塔(32)底部より取り出した液を低圧蒸留塔(38)へ供給する送液配管(37)を接続することができる。送液配管(37)には流量制御弁とともに圧力開放弁(58)を設けることによって高圧蒸留塔(32)の液を低圧蒸留塔(38)へ供給することができる。ここで、送液配管(37)を、低圧蒸留塔(38)の塔頂より2理論段以下、且つ塔底より2理論段以上に接続するのが好ましいが、低圧蒸留塔(38)の塔頂より3理論段以下、且つ塔底より3理論段以上に接続すると還流比、蒸留塔に投入するエネルギーをより小さくすることができるので、より好ましい。低圧蒸留塔(38)内部には棚段あるいは充填剤を設置して蒸気と液を接触させることが好ましい。塔頂蒸気配管(41)を経てコンデンサー(40)にて凝縮された液の一部は留出配管(43)から抜き出されるとともに残りの凝縮液は還流配管(56)で蒸留塔へ還流することができる。コンデンサー(40)を通過したあとの非凝縮気体を真空ポンプ(53)で排気することにより低圧操作をすることができ、調節弁(57)によって圧力を制御することができる。 低圧蒸留塔底部にはリボイラー(39)を設けることが好ましい。低圧蒸留塔(38)底部より取り出した液を送液ポンプ(55)を使って高圧蒸留塔(32)へ送る循環配管(42)を接続することができる。蒸留操作を継続することによって液中に高沸点成分が濃縮されてくる場合には、この循環配管(42)の液の一部を抜き出すことによって定常運転をすることができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
図1と同様の装置を用いて本実施例を実施した。低圧蒸留塔(2)として濃縮部10段、回収部10段からなる連続式蒸留塔を、高圧蒸留塔(8)として濃縮部15段、回収部15段からなる連続式蒸留塔を用いた。両蒸留塔とも充填材としてディクソンパッキング(6mmφ)を使用した。低圧蒸留塔(2)の圧力は10kPa、高圧蒸留塔(8)の圧力は995kPa(0.995MPa)にて操作した。低圧蒸留塔(2)の還流比は2にて、高圧蒸留塔(8)の還流比は4にて運転を行った。ジメチルホルムアミド(DMF)80重量%、酢酸20重量%の混合溶液からなる原料を100g/hrにて低圧蒸留塔(2)へ供給して蒸留し、塔上部の留出配管(6)より純度99.1重量%のDMFが71g/hrにて得られた。低圧蒸留塔(2)底部の液は高圧蒸留塔(8)へ供給して蒸留し、塔上部の留出配管(13)から70%に濃縮された酢酸が29g/hrにて得られた。また、このときの高圧蒸留塔(8)底部液を循環配管(12)で低圧蒸留塔(2)へ供給した。循環流量は約109g/hrだった。
【0040】
原料液中のジメチルホルムアミド量を基準にして89重量%程度の量を精製して取り出すことができた。
【0041】
(比較例1)
1本の連続式蒸留塔で濃縮部15段、回収部15段からなる蒸留装置を用いて酢酸、DMFの分離実験を行った。DMF80重量%、酢酸20重量%からなる液を100g/hr供給し、圧力10kPaにて蒸留分離を行ったところ、塔頂より純度99.8重量%のDMFを30g/hrにて得た。塔底の液はDMF50g/hrと酢酸20g/hrが共沸混合組成となっており、各成分に分離することはできなかった。原料液中のジメチルホルムアミド量を基準にして精製して取り出すことができた量は38重量%程度であった。
【0042】
(実施例2)
内径50mmの20段の理論段を持つ回分式蒸留塔を用いて実験を行った。塔にはディクソンパッキン(6mmφ)を充填した。塔底に原料液としてDMF80重量%、酢酸20重量%からなる混合溶液を1000g仕込み、真空ポンプを用いて5kPaとなるようにした。塔底液を加熱して蒸気を発生させ塔頂コンデンサーで凝縮して全量を還流させたあと、凝縮液の一部を少しずつ抜き出して合計で360gのDMFを得た。更に凝縮液を抜き出すと酢酸濃度が上昇してきたのでその留出分は蒸留塔に戻した。得られたDMFの純度は99.5重量%であった。
【0043】
続いて真空ポンプによる排気を停止し、排気配管に窒素ガスを送気して蒸留塔の圧力が0.7MPaとなるように調節した。塔底液を更に加熱して蒸気を発生させ塔頂コンデンサーで凝縮して全量を還流させると酢酸が塔頂に濃縮されてきており、凝縮液の一部を少しずつ抜き出して合計で100gの酢酸濃縮液を得た。更に凝縮液を抜き出すとDMF濃度が上昇してきたのでその留出分は蒸留塔に戻した。蒸留操作を停止してから、塔底部に残っている液は540g程度であり、概ねDMF80重量%、酢酸20重量%となって原料液と同程度の組成であった。
【0044】
従って、原料液の減少量460g中に含まれてたDMF量368gを基準にして精製DMFとして得られた割合は約97重量%であった。
【0045】
(比較例2)
実施例2において、5kPaの蒸留の段階で得られた精製DMFは360gであり、その後も同条件で蒸留を継続したが、残りの液からは精製DMFを得ることができなかった。従って原料液に含まれていたDMF量を基準にして、精製DMFの得られた割合は45重量%であった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によって低圧蒸留操作と高圧蒸留操作とを行なうことにより、実施例1,2に見られるように、カルボン酸及びジメチルアミドを含む溶液である原料混合液から純度の高いジメチルアミドを高収率で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ジメチルアミドに富む原料液を連続的に蒸留する装置
【図2】カルボン酸に富む原料液を連続的に蒸留する装置
【符号の説明】
1:原料供給配管
2:低圧蒸留塔
3:リボイラー
4:コンデンサー
5:塔頂蒸気配管
6:留出配管
7:送液配管
8:高圧蒸留塔
9:リボイラー
10:コンデンサー
11:塔頂蒸気配管
12:循環配管
21:圧力開放弁
22:還流配管
23:真空ポンプ
24:調節弁
25:送液ポンプ
26:還流配管
27:圧力調節弁
28:圧力開放弁
31:原料供給配管
32:高圧蒸留塔
33:リボイラー
34:コンデンサー
35:塔頂上蒸気配管
36:留出配管
37:送液配管
38:低圧蒸留塔
39:リボイラー
40:コンデンサー
41:塔頂蒸気配管
42:循環配管
51:流量制御弁
52:還流配管
53:真空ポンプ
54:圧力調節弁
55:送液ポンプ
56:還流配管
57:圧力調節弁
58:圧力開放弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、共沸混合組成を示すジメチルアミドとカルボン酸の混合溶液を蒸留分離する溶剤の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジメチルアミドは、各種樹脂の重合や成形工程における溶剤等として幅広く利用されている。この使用済みのジメチルアミドは、廃棄或いは焼却処分されることが多いが、経済的な面だけでなく廃棄物放出量を減少する目的からも、回収して再利用することが望まれている。しかしながら、工程から回収した溶剤には、各種原料若しくは反応により発生した成分等が混入するのが一般的であるため、目的の溶剤を得るためには、上記不要成分を分離精製する操作が必要である。
【0003】
例えば、ポリイミドフィルムの製造工程でジメチルホルムアミドを溶剤として用いる場合(例えば、特許文献1参照。)、脱水剤として添加された無水酢酸や反応により生じた酢酸が回収された溶剤中に混入する。酢酸とジメチルホルムアミドを含む混合溶液から各成分を分離して取り出すために蒸留操作を行なう場合、これらの2成分が最高共沸混合物を形成するので分離することが困難である。
具体的には、酢酸の沸点は常圧で118℃、ジメチルホルムアミドの沸点は同様に153℃であるにもかかわらず、常圧の条件で分離操作を行った場合、酢酸とジメチルホルムアミドの比率を重量基準で約33対66とする混合溶液は、沸点が165℃程度まで上昇し、その混合比率を維持したまま蒸発してくるので分離することができない。
【0004】
上記の問題を解決するため、キノリン類をエントレーナーとして利用してカルボン酸とジメチルアミドの共沸組成混合溶液を分離する方法(例えば、特許文献2参照。)、若しくはトルエンをエントレーナーとして添加することにより酢酸と最低共沸を形成して分離する方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。
【0005】
また、ポリウレタン弾性繊維製造工程から回収されるジメチルホルムアミドに含有される蟻酸に対して、アミノ化合物を中和点まで添加してから蒸留し、ジメチルホルムアミドを精製する方法(例えば、特許文献4参照。)が開示されている。この方法においては 中和剤を消費するとともに中和塩が発生する。
【0006】
【特許文献1】特開平6−87958号公報
【0007】
【特許文献2】特開2002−348270号公報
【0008】
【特許文献3】特開2002−363150号公報
【0009】
【特許文献4】特公昭58−57421号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
カルボン酸とジメチルアミドの共沸混合液を蒸留分離するには、エントレーナーや中和反応を行なうための添加剤を必要としていた。特に、中和処理を行なう場合には中和塩の廃棄物が副生することが問題であった。
【0011】
本発明は、カルボン酸とジメチルアミドの混合溶液を蒸留分離する溶剤の精製方法を提供することを目的とする。更に詳しくは、上記添加剤等を用いなくとも、カルボン酸とジメチルアミドを蒸留分離することが可能な溶剤の精製方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、添加物等を用いること無く、カルボン酸とジメチルアミドを蒸留分離するために鋭意検討した結果、蒸留操作圧力の変更により気液平衡関係に差異が生じることを利用した精製方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち本発明の第1は、カルボン酸及びジメチルアミドを含む溶液を蒸留する溶剤の精製方法であって、(a)圧力の低い蒸留操作にて蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させる工程、及び(b)圧力の高い蒸留操作にて蒸留塔上部からカルボン酸を留出させる工程を有することを特徴とする、溶剤の精製方法に関する。
【0014】
好ましくは、前記(a)の蒸留における塔底部液を、(b)の蒸留原料液に混入する前記の方法に関する。
【0015】
更に好ましくは、前記(b)の蒸留における塔底部液を、(a)の蒸留原料液に混入する上記何れかに記載の方法に関する。
【0016】
更に好ましくは、前記ジメチルアミドがジメチルアセトアミド若しくはジメチルホルムアミドであり、前記カルボン酸が酢酸、蟻酸、及びプロピオン酸から選ばれることを特徴とする、上記何れかに記載の方法に関する。
【0017】
更に好ましくは、前記(a)の蒸留塔操作圧力と(b)の蒸留塔操作圧力との差異が、少なくとも0.4MPa以上であることを特徴とする、上記何れかに記載の方法に関する。
【0018】
更に好ましくは、前記(a)の蒸留塔操作圧力が0.1MPa以下であり、(b)の蒸留塔操作圧力が0.5MPa以上であることを特徴とする、上記何れかに記載の方法に関する。
【0019】
更に好ましくは、回分式蒸留操作を行なうことを特徴とする、上記何れかに記載の方法に関する。
【0020】
更に好ましくは、連続式蒸留操作を行なうことを特徴とする、上記何れかに記載の方法に関する。
【0021】
本発明の第2は、溶剤精製を行なうための装置であって、異なった圧力にて蒸留を行う2塔の蒸留塔から構成されており、第1塔底部液を抜き出して第2塔中間高さ位置へ供給する配管が接続されており、第2塔底部液を抜き出して第1塔中間高さ位置への原料供給配管へと循環供給する配管が接続されており、それぞれの蒸留塔の上部から留出液取り出し配管を備えている装置に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る溶剤の精製方法、およびそれに用いる装置について説明する。
【0023】
本発明の溶剤の精製方法において、蒸留に供される原料液は、カルボン酸とジメチルアミドを含む混合液である。例えば、ポリイミド樹脂を合成し、成形する工程から排出される溶剤のジメチルホルムアミドは、酢酸や無水酢酸を含む場合が多いが、これらの溶剤の蒸留精製にも本発明の精製方法及び装置を利用することが可能で、回収された溶剤を再利用することができる。例えば、上記溶剤が成形加工段階や乾燥工程から蒸発気体状態で排出される場合には、コンデンサーやスクラバーなどの方式によって冷却液化捕集してから、前述の蒸留に供することができる。また、捕集された溶剤中にジメチルホルムアミドとの相対揮発度が小さく、通常の蒸留操作での分離が困難である無水酢酸が含まれている場合は、水を添加して無水酢酸を加水分解し酢酸に変換してから、前述の蒸留に供することもできる。上記の様に、添加により、若しくは溶剤捕集段階で予め水を含む場合には、蒸留に先だって、脱水処理を目的とした蒸留を行うこともできる。
【0024】
本発明において、カルボン酸とは、カルボキシル基を有する化合物であって、本発明の溶剤の精製方法に用いることが可能なものであれば特に制限されることはないが、組成式:CnH2n+1COOHで示され、nが0,1,2の化合物(即ち、蟻酸、酢酸、プロピオン酸)であることが好ましい。
【0025】
本発明において、ジメチルアミドとは、ジメチルアミド基を有する化合物であって、本発明の溶剤の精製方法に用いることが可能なものであれば特に制限されることはないが、組成式:(CH3)2NCORで示され、RがH、CH3、CHCH2などの化合物(即ち、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアクリルアミド)であることが好ましい。中でも、ジメチルホルムアミド若しくはジメチルアセトアミドであることがより好ましい。
【0026】
本発明に用いる蒸留塔は底部の液を加熱蒸発させるリボイラーを備えていることが好ましい。塔上部に炊き上がった蒸気をコンデンサーで冷却凝縮して、その一部を留出液として取出し、残りの液は塔上部へ還流させることができる。蒸留塔内部の気液接触部の構造は、各種の段構造や充填剤構造を採用することができる。
【0027】
本発明の最大の特徴は、蒸留操作において低圧操作と高圧操作とを行なう点である。低圧操作は、例えば、真空ポンプで排気して実施できる。低圧蒸留操作を行う圧力は、好ましくは1kPa以上、100kPa(0.1MPa)以下とすることができ、更に好ましくは5kPa以上、20kPa以下である。圧力が低い方が操作温度を低くできるので、副反応の抑制やカルボン酸による設備材質腐食の観点から好ましく、また高圧操作時の圧力と比較し、相対的に圧力差が大きくなるので蒸留分離性能にとっても好ましい。高圧蒸留操作を行う圧力は、例えば0.5MPa以上、2MPa以下にて実施することできるが、より好ましい範囲は0.5MPa以上、1MPa以下である。圧力が高いほど蒸留分離性能が良好になるが、操作温度は高くなるので副反応が増大する傾向がある。
【0028】
前述したように、上記蒸留操作圧力の差異が大きいほどカルボン酸とジメチルアミドの分離を効率的に行うことができるので、低圧操作と高圧操作における蒸留操作圧力の差異が、0.4MPa以上、更には0.5MPa以上、特には1.0MPa以上であることが好ましい。
【0029】
例えば、低圧蒸留操作を9.33kPaで実施すると、酢酸40重量%とジメチルホルムアミド60重量%の混合比率にて最高共沸混合物となることが知られている(特開2002−348270)。ところが、本発明では、0.1MPaにおける共沸点は酢酸25重量%とジメチルホルムアミド75重量%であり、0.5MPaでは酢酸14重量%とジメチルホルムアミド86重量%であり、1MPaでは酢酸10重量%とジメチルホルムアミド90重量%のように変化し、圧力が高くなる程、共沸点における酢酸混合比率が小さくなるという現象を見出した。
【0030】
本発明においては、蒸留操作を回分式で実施することができる。例えば、原料液中のカルボン酸とジメチルアミドの混合比率が共沸組成比率よりもジメチルアミドに富んでいる場合には、低圧操作の蒸留を行なうことによって蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させることができる。ジメチルアミドが留出減少して低圧における共沸混合組成比率に接近した段階で高圧の蒸留操作に変更すると、共沸混合組成比率が変化してカルボン酸が富んだ状態になり蒸留塔上部からカルボン酸を留出させることができる。
【0031】
これに対し、原料液中のカルボン酸とジメチルアミドの混合比率が共沸組成比率よりもカルボン酸に富んでいる場合には、高圧蒸留操作を行なって蒸留塔上部からカルボン酸を留出させることができる。その後、カルボン酸が留出減少して高圧における共沸混合組成比率に接近した段階で低圧の蒸留操作に変更すると、共沸混合組成比率が変化してジメチルアミドが富んだ状態になり蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させることができる。このようにして低圧蒸留と高圧蒸留を行い、蒸留塔底部の液が減少したら、原料液を追加して蒸留を繰り返すことができる。
【0032】
本発明においては、蒸留操作を連続的に行なうこともできる。原料液中のカルボン酸とジメチルアミドの混合比率が共沸組成比率よりもジメチルアミドに富んでいる場合には、低圧操作の蒸留塔へ原料液を連続的に供給して蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させることができる。低圧操作蒸留塔底部からはカルボン酸を濃縮して取り出すことができるので、この液を高圧操作蒸留塔に供給すると蒸留塔上部からカルボン酸を留出させることができる。高圧操作蒸留塔底部からはジメチルアミドが濃縮された液を取り出すことができるので、この液を再び低圧操作蒸留塔へ供給することができる。
【0033】
原料液中にカルボン酸が富んでいる場合には高圧蒸留塔へ原料液を連続的に供給して蒸留塔上部からカルボン酸を留出させ、高圧操作蒸留塔底部のジメチルアミド濃縮液を抜き出して、低圧蒸留塔へ供給すれば蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させることができる。ここで、低圧蒸留塔底部のカルボン酸濃縮液は再び高圧操作蒸留塔へ供給することができる。
【0034】
本発明の溶剤の精製方法における連続式蒸留実施形態に好適に用いることができる装置について説明する。説明の便宜上、まずジメチルアミドに富む原料液を取り扱うのに適した本発明に係る装置について、図1の例に従って説明する。
【0035】
カルボン酸及びジメチルアミドを含む溶液である原料は、原料供給配管(1)により低圧蒸留塔(2)に供給される。ここで原料供給配管(1)は、低圧蒸留塔(2)の塔頂より2理論段以下、且つ塔底より2理論段以上の位置に接続するのが好ましい。更に、低圧蒸留塔(2)の塔頂より3理論段以下、且つ塔底より3理論段以上に接続すると、還流比、蒸留塔に投入するエネルギーを小さくすることができるため、より好ましい。なお本発明において、中間高さ位置という場合は、蒸留塔の塔頂より2理論段以下、塔底より2理論段以上の部分を意味する。原料供給配管(1)には流量制御弁を設けることができるが、低圧操作するに際しては圧力開放弁(21)を取りつけることが好ましい。低圧蒸留塔(2)内部には棚段あるいは充填剤を設置して蒸気と液を接触させることが好ましい。塔頂蒸気配管(5)を経てコンデンサー(4)にて凝縮された液の一部は留出配管(6)から抜き出されるとともに残りの凝縮液は還流配管(22)で蒸留塔へ還流することができる。コンデンサー(4)を通過したあとの非凝縮気体を真空ポンプ(23)で排気することにより低圧操作をすることができ、調節弁(24)によって圧力を制御することができる。低圧蒸留塔底部にはリボイラー(3)を設けることが好ましい。低圧蒸留塔(2)底部より取り出した液を高圧蒸留塔(8)へ供給する送液配管(7)を接続することができる。送液配管(7)には送液ポンプ(25)を設けることによって低圧蒸留塔(2)の液を高圧蒸留塔(8)へ供給することができる。この場合の送液配管(7)は、高圧蒸留塔(8)の塔頂より2理論段以下、且つ塔底より2理論段以上に接続されるのが好ましいが、塔頂より3理論段以下、且つ塔底より3理論段以上に接続されれば還流比、蒸留塔に投入するエネルギーを削減することができるので、より好ましい。高圧蒸留塔(8)内部には棚段あるいは充填剤を設置して蒸気と液を接触させることが好ましい。塔頂蒸気配管(11)を経てコンデンサー(10)にて凝縮された液の一部は留出配管(13)から抜き出されるとともに残りの凝縮液は還流配管(26)で蒸留塔へ還流することができる。コンデンサー(10)を通過したあとの非凝縮気体を圧力調節弁(27)で放出することによって高圧操作を制御することができる。高圧蒸留塔底部にはリボイラー(9)を設けることが好ましい。
高圧蒸留塔(8)底部より取り出した液を低圧蒸留塔(2)へ送る循環配管(12)を接続することができる。蒸留操作を継続することによって液中に高沸点成分が濃縮されてくる場合には、この循環配管(12)の液の一部を抜き出すことによって定常運転をすることができる。
【0036】
次に、カルボン酸に富む原料液を取り扱うのに適した本発明に係る装置について図2の例に従って説明する。
【0037】
原料は原料供給配管(31)により高圧蒸留塔(32)に供給される。ここで原料供給配管(31)は、高圧蒸留塔(32)の中間高さ位置へ接続されることが好ましい。この場合の原料供給配管(31)は、高圧蒸留塔(32)の塔頂より2理論段以下、且つ塔底より2理論段以上に接続されるのが好ましいが、塔頂より3理論段以下、且つ塔底より3理論段以上に接続されれば還流比、蒸留塔に投入するエネルギーを削減することができるので、より好ましい。原料供給配管(31)には送液ポンプと流量制御弁(51)を設けて高圧蒸留塔へ供給することができる。高圧蒸留塔(32)内部には棚段あるいは充填剤を設置して蒸気と液を接触させることが好ましい。塔頂蒸気配管(35)を経てコンデンサー(34)にて凝縮された液の一部は留出配管(36)から抜き出されるとともに残りの凝縮液は還流配管(52)で蒸留塔へ還流することができる。コンデンサー(34)を通過したあとの非凝縮気体を圧力調節弁(54)で放出することによって高圧操作を制御することができる。高圧蒸留塔底部にはリボイラー(33)を設けることが好ましい。高圧蒸留塔(32)底部より取り出した液を低圧蒸留塔(38)へ供給する送液配管(37)を接続することができる。送液配管(37)には流量制御弁とともに圧力開放弁(58)を設けることによって高圧蒸留塔(32)の液を低圧蒸留塔(38)へ供給することができる。ここで、送液配管(37)を、低圧蒸留塔(38)の塔頂より2理論段以下、且つ塔底より2理論段以上に接続するのが好ましいが、低圧蒸留塔(38)の塔頂より3理論段以下、且つ塔底より3理論段以上に接続すると還流比、蒸留塔に投入するエネルギーをより小さくすることができるので、より好ましい。低圧蒸留塔(38)内部には棚段あるいは充填剤を設置して蒸気と液を接触させることが好ましい。塔頂蒸気配管(41)を経てコンデンサー(40)にて凝縮された液の一部は留出配管(43)から抜き出されるとともに残りの凝縮液は還流配管(56)で蒸留塔へ還流することができる。コンデンサー(40)を通過したあとの非凝縮気体を真空ポンプ(53)で排気することにより低圧操作をすることができ、調節弁(57)によって圧力を制御することができる。 低圧蒸留塔底部にはリボイラー(39)を設けることが好ましい。低圧蒸留塔(38)底部より取り出した液を送液ポンプ(55)を使って高圧蒸留塔(32)へ送る循環配管(42)を接続することができる。蒸留操作を継続することによって液中に高沸点成分が濃縮されてくる場合には、この循環配管(42)の液の一部を抜き出すことによって定常運転をすることができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
図1と同様の装置を用いて本実施例を実施した。低圧蒸留塔(2)として濃縮部10段、回収部10段からなる連続式蒸留塔を、高圧蒸留塔(8)として濃縮部15段、回収部15段からなる連続式蒸留塔を用いた。両蒸留塔とも充填材としてディクソンパッキング(6mmφ)を使用した。低圧蒸留塔(2)の圧力は10kPa、高圧蒸留塔(8)の圧力は995kPa(0.995MPa)にて操作した。低圧蒸留塔(2)の還流比は2にて、高圧蒸留塔(8)の還流比は4にて運転を行った。ジメチルホルムアミド(DMF)80重量%、酢酸20重量%の混合溶液からなる原料を100g/hrにて低圧蒸留塔(2)へ供給して蒸留し、塔上部の留出配管(6)より純度99.1重量%のDMFが71g/hrにて得られた。低圧蒸留塔(2)底部の液は高圧蒸留塔(8)へ供給して蒸留し、塔上部の留出配管(13)から70%に濃縮された酢酸が29g/hrにて得られた。また、このときの高圧蒸留塔(8)底部液を循環配管(12)で低圧蒸留塔(2)へ供給した。循環流量は約109g/hrだった。
【0040】
原料液中のジメチルホルムアミド量を基準にして89重量%程度の量を精製して取り出すことができた。
【0041】
(比較例1)
1本の連続式蒸留塔で濃縮部15段、回収部15段からなる蒸留装置を用いて酢酸、DMFの分離実験を行った。DMF80重量%、酢酸20重量%からなる液を100g/hr供給し、圧力10kPaにて蒸留分離を行ったところ、塔頂より純度99.8重量%のDMFを30g/hrにて得た。塔底の液はDMF50g/hrと酢酸20g/hrが共沸混合組成となっており、各成分に分離することはできなかった。原料液中のジメチルホルムアミド量を基準にして精製して取り出すことができた量は38重量%程度であった。
【0042】
(実施例2)
内径50mmの20段の理論段を持つ回分式蒸留塔を用いて実験を行った。塔にはディクソンパッキン(6mmφ)を充填した。塔底に原料液としてDMF80重量%、酢酸20重量%からなる混合溶液を1000g仕込み、真空ポンプを用いて5kPaとなるようにした。塔底液を加熱して蒸気を発生させ塔頂コンデンサーで凝縮して全量を還流させたあと、凝縮液の一部を少しずつ抜き出して合計で360gのDMFを得た。更に凝縮液を抜き出すと酢酸濃度が上昇してきたのでその留出分は蒸留塔に戻した。得られたDMFの純度は99.5重量%であった。
【0043】
続いて真空ポンプによる排気を停止し、排気配管に窒素ガスを送気して蒸留塔の圧力が0.7MPaとなるように調節した。塔底液を更に加熱して蒸気を発生させ塔頂コンデンサーで凝縮して全量を還流させると酢酸が塔頂に濃縮されてきており、凝縮液の一部を少しずつ抜き出して合計で100gの酢酸濃縮液を得た。更に凝縮液を抜き出すとDMF濃度が上昇してきたのでその留出分は蒸留塔に戻した。蒸留操作を停止してから、塔底部に残っている液は540g程度であり、概ねDMF80重量%、酢酸20重量%となって原料液と同程度の組成であった。
【0044】
従って、原料液の減少量460g中に含まれてたDMF量368gを基準にして精製DMFとして得られた割合は約97重量%であった。
【0045】
(比較例2)
実施例2において、5kPaの蒸留の段階で得られた精製DMFは360gであり、その後も同条件で蒸留を継続したが、残りの液からは精製DMFを得ることができなかった。従って原料液に含まれていたDMF量を基準にして、精製DMFの得られた割合は45重量%であった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によって低圧蒸留操作と高圧蒸留操作とを行なうことにより、実施例1,2に見られるように、カルボン酸及びジメチルアミドを含む溶液である原料混合液から純度の高いジメチルアミドを高収率で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ジメチルアミドに富む原料液を連続的に蒸留する装置
【図2】カルボン酸に富む原料液を連続的に蒸留する装置
【符号の説明】
1:原料供給配管
2:低圧蒸留塔
3:リボイラー
4:コンデンサー
5:塔頂蒸気配管
6:留出配管
7:送液配管
8:高圧蒸留塔
9:リボイラー
10:コンデンサー
11:塔頂蒸気配管
12:循環配管
21:圧力開放弁
22:還流配管
23:真空ポンプ
24:調節弁
25:送液ポンプ
26:還流配管
27:圧力調節弁
28:圧力開放弁
31:原料供給配管
32:高圧蒸留塔
33:リボイラー
34:コンデンサー
35:塔頂上蒸気配管
36:留出配管
37:送液配管
38:低圧蒸留塔
39:リボイラー
40:コンデンサー
41:塔頂蒸気配管
42:循環配管
51:流量制御弁
52:還流配管
53:真空ポンプ
54:圧力調節弁
55:送液ポンプ
56:還流配管
57:圧力調節弁
58:圧力開放弁
Claims (9)
- カルボン酸及びジメチルアミドを含む溶液を蒸留する溶剤の精製方法であって、(a)圧力の低い蒸留操作にて蒸留塔上部からジメチルアミドを留出させる工程、及び(b)圧力の高い蒸留操作にて蒸留塔上部からカルボン酸を留出させる工程を有することを特徴とする、溶剤の精製方法。
- 前記(a)の蒸留における塔底部液を、(b)の蒸留原料液に混入する請求項1に記載の方法。
- 前記(b)の蒸留における塔底部液を、(a)の蒸留原料液に混入する請求項1又は2に記載の方法。
- 前記ジメチルアミドがジメチルアセトアミド若しくはジメチルホルムアミドであり、前記カルボン酸が酢酸、蟻酸、及びプロピオン酸から選ばれることを特徴とする、請求項1乃至3に記載の方法。
- 前記(a)の蒸留塔操作圧力と(b)の蒸留塔操作圧力との差異が、少なくとも0.4MPa以上であることを特徴とする、請求項1乃至4に記載の方法。
- 前記(a)の蒸留塔操作圧力が0.1MPa以下であり、(b)の蒸留塔操作圧力が0.5MPa以上であることを特徴とする、請求項1乃至5に記載の方法。
- 回分式蒸留操作を行なうことを特徴とする、請求項1乃至6に記載の方法。
- 連続式蒸留操作を行なうことを特徴とする、請求項1乃至6に記載の方法。
- カルボン酸及びジメチルアミドを含む溶液を蒸留する溶剤精製装置であって、異なった圧力にて蒸留を行う2塔の蒸留塔から構成されており、第1塔底部液を抜き出して第2塔中間高さ位置へ供給する配管が接続されており、第2塔底部液を抜き出して第1塔中間高さ位置への原料供給配管へと循環供給する配管が接続されており、それぞれの蒸留塔の上部から留出液取り出し配管を備えている装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003207307A JP2005060241A (ja) | 2003-08-12 | 2003-08-12 | 溶剤の精製方法およびそれに用いる装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003207307A JP2005060241A (ja) | 2003-08-12 | 2003-08-12 | 溶剤の精製方法およびそれに用いる装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005060241A true JP2005060241A (ja) | 2005-03-10 |
Family
ID=34363829
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003207307A Pending JP2005060241A (ja) | 2003-08-12 | 2003-08-12 | 溶剤の精製方法およびそれに用いる装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005060241A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013248614A (ja) * | 2013-07-23 | 2013-12-12 | Mitsubishi Chemical Engineering Corp | 溶剤回収ユニットおよび溶剤回収方法 |
CN103861310A (zh) * | 2014-04-03 | 2014-06-18 | 泰兴市裕廊化工有限公司 | 一种高纯度醋酸精馏的制备系统 |
CN109569004A (zh) * | 2019-01-31 | 2019-04-05 | 成都沃枘科技有限公司 | 有机溶剂废液连续分离回收装置及其用途 |
CN112961200A (zh) * | 2021-02-08 | 2021-06-15 | 天津大学 | 一种从蔗糖-6-乙酯的dmf溶液中脱除醋酸的方法 |
WO2022019507A1 (ko) * | 2020-07-24 | 2022-01-27 | 한국석유공업 주식회사 | 압력 스윙 증류를 이용한 카르복실산과 아미드 화합물의 회수 방법 |
CN115353450A (zh) * | 2022-09-26 | 2022-11-18 | 河北康壮环保科技股份有限公司 | 一种稀甲酸浓缩的工艺 |
WO2023214694A1 (ko) * | 2022-05-02 | 2023-11-09 | 한국석유공업 주식회사 | 압력스윙증류를 이용한 초산과 디메틸포름아미드의 회수 방법 |
-
2003
- 2003-08-12 JP JP2003207307A patent/JP2005060241A/ja active Pending
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013248614A (ja) * | 2013-07-23 | 2013-12-12 | Mitsubishi Chemical Engineering Corp | 溶剤回収ユニットおよび溶剤回収方法 |
CN103861310A (zh) * | 2014-04-03 | 2014-06-18 | 泰兴市裕廊化工有限公司 | 一种高纯度醋酸精馏的制备系统 |
CN109569004A (zh) * | 2019-01-31 | 2019-04-05 | 成都沃枘科技有限公司 | 有机溶剂废液连续分离回收装置及其用途 |
WO2022019507A1 (ko) * | 2020-07-24 | 2022-01-27 | 한국석유공업 주식회사 | 압력 스윙 증류를 이용한 카르복실산과 아미드 화합물의 회수 방법 |
CN112961200A (zh) * | 2021-02-08 | 2021-06-15 | 天津大学 | 一种从蔗糖-6-乙酯的dmf溶液中脱除醋酸的方法 |
WO2023214694A1 (ko) * | 2022-05-02 | 2023-11-09 | 한국석유공업 주식회사 | 압력스윙증류를 이용한 초산과 디메틸포름아미드의 회수 방법 |
CN115353450A (zh) * | 2022-09-26 | 2022-11-18 | 河北康壮环保科技股份有限公司 | 一种稀甲酸浓缩的工艺 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5689904B2 (ja) | アクリル酸の生成方法 | |
JP6716597B2 (ja) | (メタ)アクリル酸の改良された製造方法 | |
KR20080063349A (ko) | 아세트산 탈수 시스템 및 방법 | |
KR20140018791A (ko) | (메트)아크릴산의 연속 회수 방법 및 회수 장치 | |
KR100513187B1 (ko) | 물 분리 방법 | |
KR20180064432A (ko) | 폴리머 등급의 (메트)아크릴산의 개선된 제조 방법 | |
KR100710858B1 (ko) | 감소된 수함량 (메트)아크릴산 제조방법 | |
US9005532B2 (en) | Process for continuous recovering (meth) acrylic acid and apparatus for the process | |
JP4271423B2 (ja) | ジメチルアミド化合物とカルボン酸を蒸留分離する方法及びその装置 | |
KR100530967B1 (ko) | 프로필렌 및/또는 아크롤레인의 산화로 수득한 아크릴산의정제 방법 | |
JP2005060241A (ja) | 溶剤の精製方法およびそれに用いる装置 | |
CN110099889B (zh) | 经由分隔壁塔的丙烯酸提纯 | |
JP2001520213A (ja) | (メタ)アクリル酸の製造方法 | |
JP2002348270A (ja) | カルボン酸とジメチルアミドの蒸留分離方法およびその装置 | |
US6494996B2 (en) | Process for removing water from aqueous methanol | |
JP3832868B2 (ja) | アクリル酸の精製法 | |
JPS6059889B2 (ja) | ハイドロキノンの回収方法 | |
KR101842095B1 (ko) | 아세트산 정제 공정 및 장치 | |
KR101947130B1 (ko) | 방향족 화합물 산화 공정에서 초산을 회수하는 방법 | |
KR101362353B1 (ko) | (메트)아크릴레이트의 제조방법 | |
US20230103803A1 (en) | Process for recovering acrylic acid | |
KR20210146383A (ko) | 폴리머 등급 아크릴산 생성 | |
KR20130140091A (ko) | 방향족 카르복실산의 제조 | |
KR20220164564A (ko) | (메트)아크릴산을 정제하기 위한 방법 | |
JPH0291044A (ja) | 酢酸/水/酢酸ビニル混合物の分離法 |