JP3860843B2 - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、車両用の自動変速機における変速を制御するための装置に関し、特に所定の条件の下では後進段が設定されることを禁止するように制御する変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように車両の自動変速機では、前進走行のための各変速段は、車速やスロットル開度などの走行状態に基づいて自動的に設定されるが、後進段は運転者がシフトレバーを操作して後進レンジ(リバース(R)レンジ)を選択することにより設定される。そこで従来、誤ってシフトレバーを操作しても、前進走行中に後進段が設定されないようにするための装置が開発されている。その一例として、実開昭62−141533号公報には、シフトレバーのシフト操作を阻止するアクチュエータを設けておき、車速が予め設定した車速以上になると、車速スイッチの作用で前記アクチュエータの動作が禁止され、その結果、シフトレバーを所定のシフト位置にシフトできなくなるように構成した装置が記載されている。この装置によれば、前進(D)レンジに設定して所定の車速で前進走行していれば、前記アクチュエータによってシフトレバーのRレンジ位置への移動が阻止されるから、所定車速以上での後進段を禁止することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち上記従来の装置は、後進段禁止のためのアクチュエータの切換動作を、車速に応じて制御するように構成したものであるから、車速がアクチュエータを切換動作させる基準車速を挟んで変化する都度、アクチュエータが切換動作させられることになる。したがって例えば車両が市街地を走行している場合や渋滞に巻き込まれている場合には、加減速あるいは走行・停止を繰り返し行うから、上記従来の装置では、前記アクチュエータが頻繁に切換動作させられ、その耐久性が悪くなるおそれがある。またその種のアクチュエータは、シフト装置と共に車室内に設けられるものであるから、頻繁に繰り返されるアクチュエータの切換動作に伴う異音が不快感の原因になるおそれがある。
【0004】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、耐久性に優れかつ後進段を必要に応じて確実に禁止することのできる変速制御装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の目的を達成するために、図に示す構成としたことを特徴とするものである。すなわち請求項1に記載した発明は、図1に示すように、前進走行のための前進レンジと中立状態を設定するためのニュートラルレンジと後進状態を設定するための後進レンジとの少なくとも三つのレンジをシフトレバー1Aによって選択するシフト操作装置2Aを備え、シフトレバー1Aの後進レンジ位置への移動を選択的に阻止するディテント機構3Aがシフト操作装置2Aに設けられた自動変速機の変速制御装置において、前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れたことを検出するシフト操作検出手段5Aと、前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れた時点の車速が所定車速以上であることにより後進段を禁止するべき走行状態を判定する後進段禁止判定手段4Aと、後進段を禁止する状態であることが前記後進段禁止判定手段4Aによって判定された時点に、シフトレバー1Aが後進段位置に移動することを阻止するよう前記ディテント機構3Aを動作させる後進段禁止指示手段6Aとを具備していることを特徴とするものである。
【0006】
また請求項2に記載した発明は、前進走行のための前進レンジと中立状態を設定するためのニュートラルレンジと後進状態を設定するための後進レンジとの少なくとも三つのレンジをシフトレバー1Bによって選択するシフト操作装置2Bを備え、シフトレバーの後進レンジ位置への移動を阻止するディテント機構3Bと、シフトレバー1Bがニュートラル位置にある場合に信号を出力するニュートラルスイッチ4Bとがシフト操作装置2Bに設けられた自動変速機の変速制御装置において、後進段を禁止するべき走行状態を判定する後進段禁止判定手段5Bと、前記ニュートラルスイッチ4Bのフェールを判定するフェール判定手段6Bと、ニュートラルスイッチ4Bのフェールが判定されない場合には後進段を禁止するべき走行状態が判定されかつニュートラルスイッチ4Bが信号を出力することにより、シフトレバー1Bが後進段位置に移動することを阻止するよう前記ディテント機構3Bを動作させ、かつニュートラルスイッチ4Bのフェールが判定された場合には後進段を禁止するべき走行状態が判定されることにより、シフトレバー1Bが後進段位置に移動することを阻止するよう前記ディテント機構3Bを動作させる後進段禁止指示手段7Bとを具備していることを特徴とするものである。
【0007】
さらに請求項3に記載した発明は、図3に示すように、後進状態を設定するための後進レンジをシフトレバー1Cを操作することにより選択するシフト操作装置2Cに、シフトレバー1Cの後進レンジ位置への移動を阻止するディテント機構3Cが設けられるとともに、後進段を設定するために係合する摩擦係合装置4Cへの油圧の供給を選択的に阻止する禁止バルブ5Cが油圧装置6Cに設けられた自動変速機の変速制御装置において、前記シフトレバー1Cが前進レンジ位置から外れたことおよびその時点の車速が所定車速以上であることにより後進段を禁止するべき走行状態を判定して、前記ディテント機構3Cを前記シフトレバー1Cが後進段位置へ移動することを阻止するように動作させるとともに前記禁止バルブ5Cを動作させる後進段禁止指示手段7Cが設けられていることを特徴とするものである。
さらにまた、請求項4に記載した発明を、前述の請求項1に対応する図1を援用して説明すれば、前進走行のための前進レンジと中立状態を設定するためのニュートラルレンジと後進状態を設定するための後進レンジとの少なくとも三つのレンジをシフトレバー1Aによって選択するシフト操作装置2Aを備え、シフトレバー1Aの後進レンジ位置への移動を選択的に阻止するディテント機構3Aがシフト操作装置2Aに設けられた自動変速機の変速制御装置において、前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れたか否かを検出するシフト操作検出手段5Aと、前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れた時点の車速に基づいて後進段を禁止するべき走行状態か否かを判定する後進段禁止判定手段4Aと、前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れたことが検出されかつその時点の車速が後進段を禁止する車速ではない場合に、前記シフトレバー1Aが後進段位置に移動することを阻止する制御を前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れたことが検出された時点に解除するように、前記ディテント機構3Aを動作させる後進段禁止指示手段6Aとを具備していることを特徴とするものである。
【0008】
【作用】
請求項1に記載した発明は、シフト操作装置2Aのシフトレバー1Aを操作することにより、前進レンジとニュートラルレンジと後進レンジとの少なくとも三つのレンジを選択する。そのシフト操作装置2Aにはディテント機構3Aが設けられており、後進レンジ位置へのシフトレバー1Aのシフトがこのディテント機構3Aによって選択的に阻止される。すなわち、シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れた時点の車速が所定車速以上であることにより後進段を禁止すべき走行状態であれば、その時点に、後進段禁止指示手段6Aがディテント機構3Aを動作させて、シフトレバー1Aが後進レンジ位置に移動することを阻止する。したがって車速などの走行状態が変化しても、後進段を設定するための予備操作であるシフトレバー1Aの前進レンジ位置からの移動が検出されない限り、ディテント機構3Aが切換動作しないので、ディテント機構3Aの切換動作の頻度が少なくなり、そのディテント機構3Aを含んだ後進段禁止のための機構の耐久性の低下などの不都合が生じない。
【0009】
また請求項2に記載した発明では、ニュートラルスイッチ4Bが正常に機能していれば、走行状態が後進段を禁止する状態になったことが後進段禁止判定手段5Bによって判定され、かつニュートラル状態がニュートラルスイッチ4Bによって検出された場合に後進段禁止指示手段7Bがディテント機構3Bを動作させて、シフトレバー1Bが後進レンジ位置に移動することを阻止する。これに対してニュートラルスイッチ4Bのフェールがフェール判定手段6Bで判定されると、後進段禁止判定手段5Bの走行状態の判定のみに基づいて後進段禁止指示手段7Bがディテント機構3Bを動作させて、シフトレバー3Aが後進レンジ位置に移動することを阻止する。すなわち確実に後進段の禁止制御が行われる。
【0010】
さらに請求項3に記載した発明では、ディテント機構3Cによるシフトレバー1Cの後進レンジ位置への移動の阻止と併せて、禁止バルブ5Cの動作を行わせるから、確実な後進段の禁止制御が行われる。
さらにまた請求項4に記載した発明では、走行状態が後進段を禁止する状態ではないと判定され、かつシフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れたことが検出され、かつその時点の車速が後進段を禁止する車速ではない場合に、シフトレバー1Aが後進段位置に移動することを阻止する制御をシフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れた時点に解除するように、ディテント機構3Aが動作させられる。
【0011】
【実施例】
つぎにこの発明を実施例に基づいて詳細に説明する。図4はこの発明の一実施例の基本的な構成を示すブロック図であって、ここに示す例は、前進5段・後進1段を設定することのできる自動変速機を対象とするものである。そこで先ず、その自動変速機の歯車列の構成について説明すると、この自動変速機は、変速機構としてロックアップクラッチ10を有するトルクコンバータ11と、一組の遊星歯車機構を有する副変速部12と、二組の遊星歯車機構によって複数の前進段と後進段とを設定する主変速部13とを備えている。副変速部12は、ハイ・ローの二段の切換えを行うものであって、その遊星歯車機構のキャリヤ14がトルクコンバータ11のタービンランナ15に連結されており、またこのキャリヤ14とサンギヤ16との間にはクラッチC0 および一方向クラッチF0 が相互に並列の関係になるように設けられ、さらにサンギヤ16とハウジングHu との間にブレーキB0 が設けられている。
【0012】
一方、主変速部13の各遊星歯車機構におけるザンギヤ17,18は、共通のサンギヤ軸19に設けられており、この主変速部13における左側(フロント側)の遊星歯車機構におけるリングギヤ20と副変速部12のリングギヤ21との間に第1クラッチC1 が設けられ、また前記サンギヤ軸19と副変速部12のリングギヤ21との間に第2クラッチC2 が設けられている。主変速部13における図の左側の遊星歯車機構のキャリヤ22と右側(リヤ側)の遊星歯車機構のリングギヤ23とが一体的に連結されるとともに、これらのキャリヤ22とリングギヤ23とに出力軸24が連結されている。
【0013】
そしてバンドブレーキである第1ブレーキB1 がサンギヤ軸19の回転を止めるように設けられ、より具体的には第2クラッチC2 のクラッチドラムの外周側に設けられており、またサンギヤ軸19とハウジングHu との間に、多板ブレーキである第2ブレーキB2 が配置されており、さらにリヤ側の遊星歯車機構におけるキャリヤ25とハウジングHu との間に第1一方向クラッチF1 と第3ブレーキB3 とが並列に配置されている。
【0014】
上述した構成の自動変速機においては、各摩擦係合装置を図5に示すように係合・解放することにより前進5段・後進1段の変速段が設定される。なお、図5において○印は係合、×印は解放、◎印はエンジンブレーキ時に係合をそれぞれ示す。
【0015】
上記の自動変速機における各クラッチC0 ,C1 ,C2 および各ブレーキB0 ,B1 ,B2 ,B3 に油圧を給排する油圧制御装置30は、第1速ないし第5速および後進段を主に設定するための第1ないし第3のソレノイドバルブS1 ,S2 ,S3 と、ロックアップクラッチ10の制御およびブレーキB0 の供給圧の調圧を行うリニアソレノイドバルブSLUと、ライン油圧PL をスロットル開度に応じて制御するためのリニアソレノイドバルブSLTと、アキュームレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLNとを備えている。これらのソレノイドバルブを制御するための電子制御装置(T−ECU)31が設けられており、これは中央演算処理装置(CPU)および記憶素子(ROM,RAM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、自動変速機への入力回転数センサーからの信号、第1クラッチC1 のドラムの回転数センサーからの信号、車速信号、ニュートラルスタートスイッチからの信号、油温センサーからの信号、パターンセレクトスイッチからの信号、トランスミッションコントロールスイッチからの信号、ストップランプスイッチからの信号などが入力されている。またこの電子制御装置31にはエンジン用電子制御装置(E−ECU)32が相互にデータ通信可能に接続されている。そしてこのエンジン用電子制御装置32にはスロットルポジションセンサーからの信号や水温センサーからの信号等が入力されている。
【0016】
上記の自動変速機用の電子制御装置31は、入力される各信号および予め記憶させられているマップに基づいて、設定するべき変速段やロックアップクラッチ10の係合・解放を制御し、またエンジン用電子制御装置32に変速の際のトルクダウン制御を実行するよう信号を出力するようになっている。
【0017】
また上記の自動変速機は、パーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)の各レンジと、前進走行のためのドライブ(D)レンジ、4速レンジ、3速レンジ、2速レンジならびにLレンジの各レンジを選択できるように構成されており、そのフト操作装置における各レンジ位置は、図6に示すように配列されている。すなわちPレンジ位置に対してRレンジ位置は車両の後方側に配置され、そのRレンジ位置に対してNレンジ位置はドライバーズシート(図示せず)側に寄った斜め後方に配置されている。Dレンジ位置はNレンジ位置に対して車両後方側に配置され、さらに4速レンジ位置は、Dレンジ位置に対してドライバーズシートとは反対側に配置されている。3レンジ位置は4速レンジ位置に対して車両後方側に配置され、2速レンジ位置は、3速レンジ位置に対してドライバーズシート側に寄った斜め後方に配置され、さらにLレンジ位置は、2速レンジ位置に対してドライバーズシートとは反対側に配置されている。そしてこれらの各レンジ位置は、シフトレバー33をガイドする溝34によって連結されている。
【0018】
なおここで前進走行のための各レンジについて簡単に説明すると、Dレンジは第1速から第5速までの各変速段を設定することのできるレンジであり、また4速レンジは、第4速までのアップシフトを許容する走行レンジである。以下同様に、3速レンジは第3速までのアップシフトを許容し、2速レンジは第2速までのアップシフトを許容するレンジであり、そしてLレンジは第1速固定のレンジである。
【0019】
上述した各レンジ位置のうちNレンジ位置とRレンジ位置との間には、シフトレバー33がNレンジ位置からRレンジ位置に移動することを阻止するためのディテント機構35が設けられ、またNレンジ位置には、シフトレバー33がNレンジ位置にあることすなわちNレンジが選択されていることを検出するためのニュートラルスタートスイッチ36が設けられている。
【0020】
このディテント機構35は、図7に模式的に示すように、前記自動変速機用電子制御装置31にON/OFF制御されてディテントピン37をNレンジ位置とRレンジ位置との間に選択的に突出させるソレノイド38を備えている。またそのディテントピン37を手動操作で溝34から後退させる手動解除機構39が設けられており、これはディテントピン37と一体のレバー40と解除ボタン41とをリンク機構42で連結したものであり、解除ボタン41を押し下げることにより、リンク機構42を介してレバー40およびこれと一体のディテントピン37が溝34から後退移動するように構成されている。
【0021】
上記の自動変速機には、後進段を選択的に禁止するための手段として前記ディテント機構35の他に後進段禁止バルブであるリバースコントロールバルブ43が設けられている。図8にその一例を示してあり、このリバースコントロールバルブ43は一端側に位置する第1ランド44と、この第1ランド44に隣接して設けられかつ第1ランド44より大径の第2ランド45と、この第2ランド45と同一外径でかつ他端部に形成された円筒部46とを有するスプール47を備えている。またその第1ランド44の端部に開口するドレーンポート48と、第1ランド44と第2ランド45との間に常時開口している制御ポート49と、第2ランド45によって制御されるリバース入力ポート50と、そのリバース入力ポート50に対して制御ポート49とは反対側に形成された出力ポート51と、前記円筒部46によって選択的に開閉されるロー入力ポート52と、円筒部46の端部側に開口して形成されたホールドポート53とが設けられている。そしてその円筒部46の内部に、スプール47をその軸線方向に押圧するスプンリグ54が配置されている。
【0022】
また図8において符号55はマニュアルバルブを示し、Rレンジを選択した場合にライン圧が出力されるポート56がリバースコントロールバルブ43の制御ポート49およびリバース入力ポート50に接続されており、またLレンジを選択した場合にライン圧が出力されるポート57がロー入力ポート52に接続されている。
【0023】
さらにリバースコントロールバルブ43の出力ポート51には、第1のシャットルバルブ58およびオリフィス59を介して第2クラッチC2 が接続される一方、他のオリフィス60および第2のシャットルバルブ61を介して第3ブレーキB3 が接続されている。
【0024】
そしてリバースコントロールバルブ43のホールドポート53には、第2ソレノイドバルブS2 が接続されている。この第2ソレノイドバルブS2 は、非通電時にドレーンポートを閉じるいわゆる常閉(ノーマルクローズ)タイプのソレノイドバルブであり、OFF状態でホールドポート53にライン圧を発生させ、ON状態でホールドポート53から排圧するように構成されている。
【0025】
したがってリバースコントロールバルブ43は、スプール47が図8の左半分に示す位置に押し下げられていると、リバース入力ポート50が出力ポー51に対して遮断されるため、Rレンジを選択した際にマニュアルバルブ55から出力されるライン圧を、後進段を設定するための第2クラッチC2 と第3ブレーキB3 とに対して遮断するようになっている。すなわち第2ソレノイドバルブS2 がON状態であれば、制御ポート50にライン圧が供給されることによりスプール47が図8の左半分に示す位置に押し下げられ、後進段の設定が禁止される。また反対に第2ソレノイドバルブS2 がOFFであれば、ホールドポート53にライン圧が作用してスプール47が図8の右半分に示す位置に押し上げられたままとなるので、リバース入力ポート50が出力ポート51に連通して後進段の設定を許容する状態になる。
【0026】
上述した自動変速機を対象としたこの発明の制御装置による後進段の禁止制御についてつぎに説明する。図9はその一例としての制御ルーチンを示すフローチャートであって、ここに示す制御ではシフトレバー33がDレンジ位置から外れた時点での走行状態すなわち車速が所定の速度以上の場合に後進段を禁止する。具体的には、まず入力信号の処理(ステップ1)を行った後に、選択されているレンジがPレンジ、Rレンジ、4速レンジ、3速レンジ、2速レンジあるいはLレンジのいずれかであるか否かを判断する(ステップ2)。これらいずれのレンジでなければNレンジが選択されているか否かを判断する(ステップ3)。Nレンジが選択されていなければ、つぎにDレンジが選択されているか否かを判断する(ステップ4)。
【0027】
このステップ4の判断結果が“ノー”であれば、ステップ5に進んで、フラグFD が“1”にセットされているか否かを判断する。このフラグFD は、Dレンジが選択されていることが検出された場合に“1”にセットされるフラグであり、したがってステップ5の判断結果が“イエス”であれば、シフトレバー33がDレンジ位置から外れたことが検出されたことを意味し、この場合はステップ6に進んでフラグFD をゼロリセットし、ついで車速Vが予め設定した所定の基準車速α以上か否かを判断する(ステップ7)。この基準速度αは、例えば数km/h程度の小さい値であり、実車速Vがこの基準車速α以上であれば、後進段禁止制御を実行する(ステップ8)。そしてフラグFr を“1”にセット(ステップ9)した後にリターンする。
【0028】
このステップ8での後進段の禁止制御は、例えば前記ディテント機構35のソレノイド38を励磁してディテントピン37をNレンジ位置とRレンジ位置との間に突出させることにより実行されるが、このディテントピン37が実際に溝34内に突出するのに所定の時間を要するとしても、上述した制御では、シフトレバー33がDレンジ位置を外れた早い時点でソレノイド38を励磁させるから、シフトレバー33が迅速に操作された場合であっても、シフトレバー33がRレンジ位置に入ることを確実に防止することができる。
【0029】
なお、車速Vが基準車速αより低車速の場合には、後進段の禁止制御を解除し(ステップ10)、かつフラグFr をゼロリセット(ステップ11)した後にリターンする。
【0030】
一方、ステップ4でDレンジが選択されていることが判断された場合には、ステップ12に進んでフラグFD を“1”にセットするとともに、フラグFr が“1”にセットされているか否かを判断する(ステップ13)。このフラグFr が“1”にセットされていれば、後進段の禁止制御が実行されていることになるので、この場合は、実車速Vが基準車速α以上か否かを判断し(ステップ14)、その結果が“イエス”であればリターンし、また“ノー”であれば、走行状態が後進段を禁止しない状態に変化したことになるので、後進段の禁止制御を解除(ステップ15)するとともに、フラグFr をゼロリセット(ステップ16)した後にリータンする。なお、ステップ13の判断結果が“ノー”の場合には、後進段の禁止制御が実行されていないので、直ちにリターンする。
【0031】
さらにシフトレバー33がいずれのレンジ位置にも設定されていないためにステップ5の判断結果が“ノー”となった場合には、直ちにステップ13に進み、またステップ2の判断結果が“イエス”となった場合には、フラグFD をゼロリセット(ステップ17)した後にステップ13に進む。
【0032】
なお、上記の説明では、後進段の禁止制御の内容を、ディテント機構35におけるソレノイド38の励磁としたが、前述した自動変速機はリバースコントロールバルブ43を備えているから、前記ソレノイド38の励磁と併せてこのバルブ43を動作させて後進段を禁止することとしてもよい。これは具体的には、第2ソレノイドバルブS2 を一時的にON動作させてリバースコントロールバルブ43のホールドポート53から排圧することにより行う。このようにすれば、たとえRレンジに切り換えても、マニュアルバルブ55からリバースコントロールバルブ43の制御ポート49に油圧が送られてそのスプール47が図8の左半分に示す位置に押し下げられ、そのリバース入力ポート50が閉じられるから、第2クラッチC2 および第3ブレーキB3 への供給が遮断されて、後進段が禁止される。またこのような制御を予備的に行っておけば、バルブスティックを未然に防止することができる。
【0033】
上記の制御はシフトレバー33がDレンジ位置から外れた時点で後進段禁止制御を実行する例であるが、前進走行状態から後進段に切り換える場合には、必ずシフトレバー33がNレンジ位置を通過するので、Nレンジを検出した場合に後進段の禁止制御を実行することもできる。しかしながらこのような制御は、例えば前述したニューラルスタートスイッチ36の正常な動作を前提とするから、そのスイッチ36のフェール時には異なる制御を行うことが好ましい。
【0034】
図10はその制御の例を示すフローチャートである。まず入力信号の処理(ステップ20)を行い、ついでニュートラルスタートスイッチ(Nsw)がフェールしているか否かを判断する(ステップ21)。ニュートラルスタートスイッチがフェールしていない場合には、Nレンジが選択されているか否かを判断(ステップ22)し、シフトレバー33がNレンジ位置にあればRレンジが選択される可能性が高いので、実車速Vが所定の基準車速α以上か否かを判断する(ステップ23)。実車速Vが基準車速α以上であれば、後進段を禁止する制御を実行する(ステップ24)。これは具体的には、前記ディテント機構35のソレノイド38を励磁してディテントピン37を溝34内に突出させることにより実行する。ついでフラグFr を“1”にセット(ステップ25)し、さらに第2ソレノイドバルブS2 のON・OFFの切換えを繰り返す(ステップ26)。これはバルブスティックを回避するためである。
【0035】
一方、実車速Vが基準車速αより低車速であるためにステップ23の判断結果が“ノー”となった場合には、後進段が設定されても支障がないので、すなわち後進段を許容できる走行状態であるため、後進段禁止の制御を解除する(ステップ27)。そしてフラグFr をゼロリセット(ステップ28)した後にリターンする。
【0036】
またニュートラルスタートスイッチがフェールしていた場合、すなわちステップ21の判断結果が“イエス”の場合には、シフトレバー33がNレンジ位置にあるか否かの判定を行うことができないので、この場合には走行状態のみに基づいて後進段禁止の制御の解除・実行の判断を行う。すなわち直ちにステップ23に進み、上述した制御を実行する。したがって所定車速以上で前進走行している状態での後進段の設定を確実に阻止することができる。
【0037】
なお、Nレンジが選択されていないためにステップ22の判断結果が“ノー”となった場合には、ステップ29に進んでフラグFr が“1”か否かを判断し、“1”でなければ、後進段の禁止制御が解除されていることになるので、そのままリターンする。これとは反対に“1”であれば、後進段の禁止制御が実行されていることになるので、実車速Vが所定の基準車速α以上か否かを判断し(ステップ30)、実車速Vが基準車速α以上であれば、そのままリターンして後進段の禁止制御を継続する。また車速Vが基準車速αより低車速であれば、後進段の禁止制御を解除(ステップ31)するとともに、フラグFr をゼロリセット(ステップ32)し、リターンする。
【0038】
ところで自動変速機で検出することのできる車速は方向を含まない値であり、したがって後進段の禁止制御を行う場合にレンジ位置と車速とをデータとしたのでは、所定車速以上の後進状態でのNレンジからRレンジへの切換えを禁止する事態が生じることが考えられる。このような不都合を解消するためには、Nレンジが設定されている状態での走行が前進走行であることを、後進段の禁止制御に先だって確認すればよく、その制御の一例を示せば、図11のとおりである。
【0039】
まず入力信号の処理(ステップ40)を行い、ついでRレンシが選択されているか否かを判断する(ステップ41)。Rレンジが選択されている場合には、フラグFk を“1”にセット(ステップ42)した後にリターンし、またRレンジが選択されていない場合には、Nレンジが選択されているか否かを判断する(ステップ43)。その判断結果が“イエス”であれば、フラグFk が“1”か否かを判断する(ステップ44)。このフラグFK はRレンジが一時的であっても選択された場合に“1”にセットされるフラグであるから、このステップ44の判断結果が“イエス”であれば、Nレンジの直前のレンジがRレンジであったことになるので、特に制御を行うことなくこのルーチンを抜ける。すなわち後進段の禁止制御は行わない。
【0040】
これに対してステップ44の判断結果が“ノー”であれば、Rレンジを経由することなくNレンジが設定されたことになるので、前述した通常の走行状態に基づいて後進段の禁止制御を行う。すなわち実車速Vが基準車速α以上か否かを判断(ステップ45)し、基準車速α以上であれば、後進段の禁止制御を実行(ステップ46)するとともに、フラグFr を“1”にセットする(ステップ47)。これとは反対に基準車速より低車速であれば、後進段の禁止制御を解除(ステップ48)するとともに、フラグFr をゼロリセットする(ステップ49)。
【0041】
一方、Nレンジが選択されていないことによりステップ43の判断結果が“ノー”となった場合には、Dレンジが選択されているか否かを判断する(ステップ50)。Dレンジが選択されていないければ直ちにステップ51に進んでフラグFr が“1”か否かを判断し、またDレンジが選択されていれば、フラグFk をゼロリセット(ステップ52)した後にステップ51に進む。ステップ51のフラグFr は、後進段禁止制御が実行されていることにより“1”にセットされるフラグであるから、その判断結果が“ノー”であれば直ちにリターンし、また“イエス”であれば実車速Vが基準車速α以上か否かを判断(ステップ53)する。そして基準車速α以上であれば、そのままリターンして後進段の禁止制御を継続、また基準車速αより低車速であれば、後進段の禁止制御を解除(ステップ54)するとともに、フラグFr をゼロリセット(ステップ55)してリターンする。
【0042】
したがって図11に示す制御では、Nレンジの直前のレンジを判断し、その直前のレンジがRレンジ以外、すなわち前進走行のためのレンジであった場合に、走行状態に基づいて後進段の禁止制御を実行するため、後進状態での車速が基準車速α以上であっても、後進段の禁止制御が実行されるなどの不都合を回避できる。
【0043】
なお、以上の実施例では、図4に示す歯車列備えた自動変速機を例に採って説明したが、この発明は、上記の実施例に限定されるものではないのであって、他の歯車列を備えた自動変速機を対象とする変速制御装置に適用することができる。また同様に、図8に示す油圧回路以外の油圧回路を備えた自動変速機を対象とする変速制御装置にもこの発明を適用することができる。さらにこの発明で採用することのできるでディテント機構は図7に示す構成に限定されないことは勿論である。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載した発明では、シフトレバーが所定の前進レンジ位置を外れない限り、車速が高車速になっても、後進段の禁止制御を実行しないから、後進段の禁止制御を実行する頻度が低くなり、したがって例えば後進段の禁止のために所定のアクチュエータを動作させるとしても、その動作回数が少なくなるので、その耐久性を向上させることができ、またその動作時の音が不快感を招来するおそれもなくなる。さらにシフトレバーが所定の前進レンジ位置を外れ、かつその時点の車速が所定の車速以上であることにより後進段が禁止されるため、前進レンジ位置から後進レンジ位置までのシフトレバーの移動距離が、ニュートラルレンジ位置から後進レンジ位置までの距離より長いから、シフト操作が速い場合であっても、ディテント機構による後進段の禁止制御を確実に行うことができる。
【0045】
また請求項2に記載した発明では、ニュートラル位置にシフトレバーがあることを検出するためのスイッチがフェールした場合には、走行状態にのみ基づいて後進段の禁止制御を実行することになるので、フェール時の後進段の禁止を確実に行い、いわゆるフェールセーフを確立することができる。
【0046】
さらに請求項3に記載した発明では、シフトレバーの後進レンジ位置への移動をディテント機構で阻止することと併せて、後進段の設定を阻止するためのバルブを動作させるから、バルブスティックを未然に回避して後進段の禁止制御を確実に行うことができる。
さらにまた、請求項4に記載した発明では、走行状態が後進段を禁止する状態ではないと判定され、かつシフトレバーが前進レンジ位置から外れたことが検出され、かつその時点の車速が後進段を禁止する車速ではない場合に、シフトレバー1Aが後進段位置に移動することを阻止する制御をシフトレバーが前進レンジ位置から外れた時点に解除するように、ディテント機構が動作する。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1および請求項4に記載した発明を機能的手段で示すブロック図である。
【図2】請求項2に記載した発明を機能的手段で示すブロック図である。
【図3】請求項3に記載した発明を機能的手段で示すブロック図である。
【図4】この発明の一実施例で対象とする自動変速機の歯車列を示すスケルトン図である。
【図5】図4に示す自動変速機で各変速段を設定するために係合させる摩擦係合装置の係合作動表を示す図表である。
【図6】この発明の実施例で使用するシフト装置における各レンジ位置の配列を示す図である。
【図7】ディテント機構の一例を模式的に示す斜視図である。
【図8】リバースコントロールバルブおよびこれに関する油圧回路を概略的に示す部分的な油圧回路図である。
【図9】シフトレバーがDレンジ位置から外れた時点で後進段の禁止制御を実行するための制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図10】ニュートラルスタートスイッチのフェールをも判断して後進段の禁止制御を行う制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図11】シフトレバーが経由したレンジ位置から走行方向を判断して後進段の禁止制御を実行する制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1A,1B,1C シフトレバー
2A,2B,2C シフト操作装置
3A,3B,3C ディテント機構
4A,5B 後進段禁止判定手段
4B ニューラルスイッチ
4C 摩擦係合装置
5A シフト操作検出手段
5C 禁止バルブ
6A,7B,6C 後進段禁止指示手段
6B フェール判定手段
【産業上の利用分野】
この発明は、車両用の自動変速機における変速を制御するための装置に関し、特に所定の条件の下では後進段が設定されることを禁止するように制御する変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように車両の自動変速機では、前進走行のための各変速段は、車速やスロットル開度などの走行状態に基づいて自動的に設定されるが、後進段は運転者がシフトレバーを操作して後進レンジ(リバース(R)レンジ)を選択することにより設定される。そこで従来、誤ってシフトレバーを操作しても、前進走行中に後進段が設定されないようにするための装置が開発されている。その一例として、実開昭62−141533号公報には、シフトレバーのシフト操作を阻止するアクチュエータを設けておき、車速が予め設定した車速以上になると、車速スイッチの作用で前記アクチュエータの動作が禁止され、その結果、シフトレバーを所定のシフト位置にシフトできなくなるように構成した装置が記載されている。この装置によれば、前進(D)レンジに設定して所定の車速で前進走行していれば、前記アクチュエータによってシフトレバーのRレンジ位置への移動が阻止されるから、所定車速以上での後進段を禁止することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち上記従来の装置は、後進段禁止のためのアクチュエータの切換動作を、車速に応じて制御するように構成したものであるから、車速がアクチュエータを切換動作させる基準車速を挟んで変化する都度、アクチュエータが切換動作させられることになる。したがって例えば車両が市街地を走行している場合や渋滞に巻き込まれている場合には、加減速あるいは走行・停止を繰り返し行うから、上記従来の装置では、前記アクチュエータが頻繁に切換動作させられ、その耐久性が悪くなるおそれがある。またその種のアクチュエータは、シフト装置と共に車室内に設けられるものであるから、頻繁に繰り返されるアクチュエータの切換動作に伴う異音が不快感の原因になるおそれがある。
【0004】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、耐久性に優れかつ後進段を必要に応じて確実に禁止することのできる変速制御装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の目的を達成するために、図に示す構成としたことを特徴とするものである。すなわち請求項1に記載した発明は、図1に示すように、前進走行のための前進レンジと中立状態を設定するためのニュートラルレンジと後進状態を設定するための後進レンジとの少なくとも三つのレンジをシフトレバー1Aによって選択するシフト操作装置2Aを備え、シフトレバー1Aの後進レンジ位置への移動を選択的に阻止するディテント機構3Aがシフト操作装置2Aに設けられた自動変速機の変速制御装置において、前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れたことを検出するシフト操作検出手段5Aと、前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れた時点の車速が所定車速以上であることにより後進段を禁止するべき走行状態を判定する後進段禁止判定手段4Aと、後進段を禁止する状態であることが前記後進段禁止判定手段4Aによって判定された時点に、シフトレバー1Aが後進段位置に移動することを阻止するよう前記ディテント機構3Aを動作させる後進段禁止指示手段6Aとを具備していることを特徴とするものである。
【0006】
また請求項2に記載した発明は、前進走行のための前進レンジと中立状態を設定するためのニュートラルレンジと後進状態を設定するための後進レンジとの少なくとも三つのレンジをシフトレバー1Bによって選択するシフト操作装置2Bを備え、シフトレバーの後進レンジ位置への移動を阻止するディテント機構3Bと、シフトレバー1Bがニュートラル位置にある場合に信号を出力するニュートラルスイッチ4Bとがシフト操作装置2Bに設けられた自動変速機の変速制御装置において、後進段を禁止するべき走行状態を判定する後進段禁止判定手段5Bと、前記ニュートラルスイッチ4Bのフェールを判定するフェール判定手段6Bと、ニュートラルスイッチ4Bのフェールが判定されない場合には後進段を禁止するべき走行状態が判定されかつニュートラルスイッチ4Bが信号を出力することにより、シフトレバー1Bが後進段位置に移動することを阻止するよう前記ディテント機構3Bを動作させ、かつニュートラルスイッチ4Bのフェールが判定された場合には後進段を禁止するべき走行状態が判定されることにより、シフトレバー1Bが後進段位置に移動することを阻止するよう前記ディテント機構3Bを動作させる後進段禁止指示手段7Bとを具備していることを特徴とするものである。
【0007】
さらに請求項3に記載した発明は、図3に示すように、後進状態を設定するための後進レンジをシフトレバー1Cを操作することにより選択するシフト操作装置2Cに、シフトレバー1Cの後進レンジ位置への移動を阻止するディテント機構3Cが設けられるとともに、後進段を設定するために係合する摩擦係合装置4Cへの油圧の供給を選択的に阻止する禁止バルブ5Cが油圧装置6Cに設けられた自動変速機の変速制御装置において、前記シフトレバー1Cが前進レンジ位置から外れたことおよびその時点の車速が所定車速以上であることにより後進段を禁止するべき走行状態を判定して、前記ディテント機構3Cを前記シフトレバー1Cが後進段位置へ移動することを阻止するように動作させるとともに前記禁止バルブ5Cを動作させる後進段禁止指示手段7Cが設けられていることを特徴とするものである。
さらにまた、請求項4に記載した発明を、前述の請求項1に対応する図1を援用して説明すれば、前進走行のための前進レンジと中立状態を設定するためのニュートラルレンジと後進状態を設定するための後進レンジとの少なくとも三つのレンジをシフトレバー1Aによって選択するシフト操作装置2Aを備え、シフトレバー1Aの後進レンジ位置への移動を選択的に阻止するディテント機構3Aがシフト操作装置2Aに設けられた自動変速機の変速制御装置において、前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れたか否かを検出するシフト操作検出手段5Aと、前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れた時点の車速に基づいて後進段を禁止するべき走行状態か否かを判定する後進段禁止判定手段4Aと、前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れたことが検出されかつその時点の車速が後進段を禁止する車速ではない場合に、前記シフトレバー1Aが後進段位置に移動することを阻止する制御を前記シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れたことが検出された時点に解除するように、前記ディテント機構3Aを動作させる後進段禁止指示手段6Aとを具備していることを特徴とするものである。
【0008】
【作用】
請求項1に記載した発明は、シフト操作装置2Aのシフトレバー1Aを操作することにより、前進レンジとニュートラルレンジと後進レンジとの少なくとも三つのレンジを選択する。そのシフト操作装置2Aにはディテント機構3Aが設けられており、後進レンジ位置へのシフトレバー1Aのシフトがこのディテント機構3Aによって選択的に阻止される。すなわち、シフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れた時点の車速が所定車速以上であることにより後進段を禁止すべき走行状態であれば、その時点に、後進段禁止指示手段6Aがディテント機構3Aを動作させて、シフトレバー1Aが後進レンジ位置に移動することを阻止する。したがって車速などの走行状態が変化しても、後進段を設定するための予備操作であるシフトレバー1Aの前進レンジ位置からの移動が検出されない限り、ディテント機構3Aが切換動作しないので、ディテント機構3Aの切換動作の頻度が少なくなり、そのディテント機構3Aを含んだ後進段禁止のための機構の耐久性の低下などの不都合が生じない。
【0009】
また請求項2に記載した発明では、ニュートラルスイッチ4Bが正常に機能していれば、走行状態が後進段を禁止する状態になったことが後進段禁止判定手段5Bによって判定され、かつニュートラル状態がニュートラルスイッチ4Bによって検出された場合に後進段禁止指示手段7Bがディテント機構3Bを動作させて、シフトレバー1Bが後進レンジ位置に移動することを阻止する。これに対してニュートラルスイッチ4Bのフェールがフェール判定手段6Bで判定されると、後進段禁止判定手段5Bの走行状態の判定のみに基づいて後進段禁止指示手段7Bがディテント機構3Bを動作させて、シフトレバー3Aが後進レンジ位置に移動することを阻止する。すなわち確実に後進段の禁止制御が行われる。
【0010】
さらに請求項3に記載した発明では、ディテント機構3Cによるシフトレバー1Cの後進レンジ位置への移動の阻止と併せて、禁止バルブ5Cの動作を行わせるから、確実な後進段の禁止制御が行われる。
さらにまた請求項4に記載した発明では、走行状態が後進段を禁止する状態ではないと判定され、かつシフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れたことが検出され、かつその時点の車速が後進段を禁止する車速ではない場合に、シフトレバー1Aが後進段位置に移動することを阻止する制御をシフトレバー1Aが前進レンジ位置から外れた時点に解除するように、ディテント機構3Aが動作させられる。
【0011】
【実施例】
つぎにこの発明を実施例に基づいて詳細に説明する。図4はこの発明の一実施例の基本的な構成を示すブロック図であって、ここに示す例は、前進5段・後進1段を設定することのできる自動変速機を対象とするものである。そこで先ず、その自動変速機の歯車列の構成について説明すると、この自動変速機は、変速機構としてロックアップクラッチ10を有するトルクコンバータ11と、一組の遊星歯車機構を有する副変速部12と、二組の遊星歯車機構によって複数の前進段と後進段とを設定する主変速部13とを備えている。副変速部12は、ハイ・ローの二段の切換えを行うものであって、その遊星歯車機構のキャリヤ14がトルクコンバータ11のタービンランナ15に連結されており、またこのキャリヤ14とサンギヤ16との間にはクラッチC0 および一方向クラッチF0 が相互に並列の関係になるように設けられ、さらにサンギヤ16とハウジングHu との間にブレーキB0 が設けられている。
【0012】
一方、主変速部13の各遊星歯車機構におけるザンギヤ17,18は、共通のサンギヤ軸19に設けられており、この主変速部13における左側(フロント側)の遊星歯車機構におけるリングギヤ20と副変速部12のリングギヤ21との間に第1クラッチC1 が設けられ、また前記サンギヤ軸19と副変速部12のリングギヤ21との間に第2クラッチC2 が設けられている。主変速部13における図の左側の遊星歯車機構のキャリヤ22と右側(リヤ側)の遊星歯車機構のリングギヤ23とが一体的に連結されるとともに、これらのキャリヤ22とリングギヤ23とに出力軸24が連結されている。
【0013】
そしてバンドブレーキである第1ブレーキB1 がサンギヤ軸19の回転を止めるように設けられ、より具体的には第2クラッチC2 のクラッチドラムの外周側に設けられており、またサンギヤ軸19とハウジングHu との間に、多板ブレーキである第2ブレーキB2 が配置されており、さらにリヤ側の遊星歯車機構におけるキャリヤ25とハウジングHu との間に第1一方向クラッチF1 と第3ブレーキB3 とが並列に配置されている。
【0014】
上述した構成の自動変速機においては、各摩擦係合装置を図5に示すように係合・解放することにより前進5段・後進1段の変速段が設定される。なお、図5において○印は係合、×印は解放、◎印はエンジンブレーキ時に係合をそれぞれ示す。
【0015】
上記の自動変速機における各クラッチC0 ,C1 ,C2 および各ブレーキB0 ,B1 ,B2 ,B3 に油圧を給排する油圧制御装置30は、第1速ないし第5速および後進段を主に設定するための第1ないし第3のソレノイドバルブS1 ,S2 ,S3 と、ロックアップクラッチ10の制御およびブレーキB0 の供給圧の調圧を行うリニアソレノイドバルブSLUと、ライン油圧PL をスロットル開度に応じて制御するためのリニアソレノイドバルブSLTと、アキュームレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLNとを備えている。これらのソレノイドバルブを制御するための電子制御装置(T−ECU)31が設けられており、これは中央演算処理装置(CPU)および記憶素子(ROM,RAM)ならびに入出力インターフェースを主体とするものであって、自動変速機への入力回転数センサーからの信号、第1クラッチC1 のドラムの回転数センサーからの信号、車速信号、ニュートラルスタートスイッチからの信号、油温センサーからの信号、パターンセレクトスイッチからの信号、トランスミッションコントロールスイッチからの信号、ストップランプスイッチからの信号などが入力されている。またこの電子制御装置31にはエンジン用電子制御装置(E−ECU)32が相互にデータ通信可能に接続されている。そしてこのエンジン用電子制御装置32にはスロットルポジションセンサーからの信号や水温センサーからの信号等が入力されている。
【0016】
上記の自動変速機用の電子制御装置31は、入力される各信号および予め記憶させられているマップに基づいて、設定するべき変速段やロックアップクラッチ10の係合・解放を制御し、またエンジン用電子制御装置32に変速の際のトルクダウン制御を実行するよう信号を出力するようになっている。
【0017】
また上記の自動変速機は、パーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)の各レンジと、前進走行のためのドライブ(D)レンジ、4速レンジ、3速レンジ、2速レンジならびにLレンジの各レンジを選択できるように構成されており、そのフト操作装置における各レンジ位置は、図6に示すように配列されている。すなわちPレンジ位置に対してRレンジ位置は車両の後方側に配置され、そのRレンジ位置に対してNレンジ位置はドライバーズシート(図示せず)側に寄った斜め後方に配置されている。Dレンジ位置はNレンジ位置に対して車両後方側に配置され、さらに4速レンジ位置は、Dレンジ位置に対してドライバーズシートとは反対側に配置されている。3レンジ位置は4速レンジ位置に対して車両後方側に配置され、2速レンジ位置は、3速レンジ位置に対してドライバーズシート側に寄った斜め後方に配置され、さらにLレンジ位置は、2速レンジ位置に対してドライバーズシートとは反対側に配置されている。そしてこれらの各レンジ位置は、シフトレバー33をガイドする溝34によって連結されている。
【0018】
なおここで前進走行のための各レンジについて簡単に説明すると、Dレンジは第1速から第5速までの各変速段を設定することのできるレンジであり、また4速レンジは、第4速までのアップシフトを許容する走行レンジである。以下同様に、3速レンジは第3速までのアップシフトを許容し、2速レンジは第2速までのアップシフトを許容するレンジであり、そしてLレンジは第1速固定のレンジである。
【0019】
上述した各レンジ位置のうちNレンジ位置とRレンジ位置との間には、シフトレバー33がNレンジ位置からRレンジ位置に移動することを阻止するためのディテント機構35が設けられ、またNレンジ位置には、シフトレバー33がNレンジ位置にあることすなわちNレンジが選択されていることを検出するためのニュートラルスタートスイッチ36が設けられている。
【0020】
このディテント機構35は、図7に模式的に示すように、前記自動変速機用電子制御装置31にON/OFF制御されてディテントピン37をNレンジ位置とRレンジ位置との間に選択的に突出させるソレノイド38を備えている。またそのディテントピン37を手動操作で溝34から後退させる手動解除機構39が設けられており、これはディテントピン37と一体のレバー40と解除ボタン41とをリンク機構42で連結したものであり、解除ボタン41を押し下げることにより、リンク機構42を介してレバー40およびこれと一体のディテントピン37が溝34から後退移動するように構成されている。
【0021】
上記の自動変速機には、後進段を選択的に禁止するための手段として前記ディテント機構35の他に後進段禁止バルブであるリバースコントロールバルブ43が設けられている。図8にその一例を示してあり、このリバースコントロールバルブ43は一端側に位置する第1ランド44と、この第1ランド44に隣接して設けられかつ第1ランド44より大径の第2ランド45と、この第2ランド45と同一外径でかつ他端部に形成された円筒部46とを有するスプール47を備えている。またその第1ランド44の端部に開口するドレーンポート48と、第1ランド44と第2ランド45との間に常時開口している制御ポート49と、第2ランド45によって制御されるリバース入力ポート50と、そのリバース入力ポート50に対して制御ポート49とは反対側に形成された出力ポート51と、前記円筒部46によって選択的に開閉されるロー入力ポート52と、円筒部46の端部側に開口して形成されたホールドポート53とが設けられている。そしてその円筒部46の内部に、スプール47をその軸線方向に押圧するスプンリグ54が配置されている。
【0022】
また図8において符号55はマニュアルバルブを示し、Rレンジを選択した場合にライン圧が出力されるポート56がリバースコントロールバルブ43の制御ポート49およびリバース入力ポート50に接続されており、またLレンジを選択した場合にライン圧が出力されるポート57がロー入力ポート52に接続されている。
【0023】
さらにリバースコントロールバルブ43の出力ポート51には、第1のシャットルバルブ58およびオリフィス59を介して第2クラッチC2 が接続される一方、他のオリフィス60および第2のシャットルバルブ61を介して第3ブレーキB3 が接続されている。
【0024】
そしてリバースコントロールバルブ43のホールドポート53には、第2ソレノイドバルブS2 が接続されている。この第2ソレノイドバルブS2 は、非通電時にドレーンポートを閉じるいわゆる常閉(ノーマルクローズ)タイプのソレノイドバルブであり、OFF状態でホールドポート53にライン圧を発生させ、ON状態でホールドポート53から排圧するように構成されている。
【0025】
したがってリバースコントロールバルブ43は、スプール47が図8の左半分に示す位置に押し下げられていると、リバース入力ポート50が出力ポー51に対して遮断されるため、Rレンジを選択した際にマニュアルバルブ55から出力されるライン圧を、後進段を設定するための第2クラッチC2 と第3ブレーキB3 とに対して遮断するようになっている。すなわち第2ソレノイドバルブS2 がON状態であれば、制御ポート50にライン圧が供給されることによりスプール47が図8の左半分に示す位置に押し下げられ、後進段の設定が禁止される。また反対に第2ソレノイドバルブS2 がOFFであれば、ホールドポート53にライン圧が作用してスプール47が図8の右半分に示す位置に押し上げられたままとなるので、リバース入力ポート50が出力ポート51に連通して後進段の設定を許容する状態になる。
【0026】
上述した自動変速機を対象としたこの発明の制御装置による後進段の禁止制御についてつぎに説明する。図9はその一例としての制御ルーチンを示すフローチャートであって、ここに示す制御ではシフトレバー33がDレンジ位置から外れた時点での走行状態すなわち車速が所定の速度以上の場合に後進段を禁止する。具体的には、まず入力信号の処理(ステップ1)を行った後に、選択されているレンジがPレンジ、Rレンジ、4速レンジ、3速レンジ、2速レンジあるいはLレンジのいずれかであるか否かを判断する(ステップ2)。これらいずれのレンジでなければNレンジが選択されているか否かを判断する(ステップ3)。Nレンジが選択されていなければ、つぎにDレンジが選択されているか否かを判断する(ステップ4)。
【0027】
このステップ4の判断結果が“ノー”であれば、ステップ5に進んで、フラグFD が“1”にセットされているか否かを判断する。このフラグFD は、Dレンジが選択されていることが検出された場合に“1”にセットされるフラグであり、したがってステップ5の判断結果が“イエス”であれば、シフトレバー33がDレンジ位置から外れたことが検出されたことを意味し、この場合はステップ6に進んでフラグFD をゼロリセットし、ついで車速Vが予め設定した所定の基準車速α以上か否かを判断する(ステップ7)。この基準速度αは、例えば数km/h程度の小さい値であり、実車速Vがこの基準車速α以上であれば、後進段禁止制御を実行する(ステップ8)。そしてフラグFr を“1”にセット(ステップ9)した後にリターンする。
【0028】
このステップ8での後進段の禁止制御は、例えば前記ディテント機構35のソレノイド38を励磁してディテントピン37をNレンジ位置とRレンジ位置との間に突出させることにより実行されるが、このディテントピン37が実際に溝34内に突出するのに所定の時間を要するとしても、上述した制御では、シフトレバー33がDレンジ位置を外れた早い時点でソレノイド38を励磁させるから、シフトレバー33が迅速に操作された場合であっても、シフトレバー33がRレンジ位置に入ることを確実に防止することができる。
【0029】
なお、車速Vが基準車速αより低車速の場合には、後進段の禁止制御を解除し(ステップ10)、かつフラグFr をゼロリセット(ステップ11)した後にリターンする。
【0030】
一方、ステップ4でDレンジが選択されていることが判断された場合には、ステップ12に進んでフラグFD を“1”にセットするとともに、フラグFr が“1”にセットされているか否かを判断する(ステップ13)。このフラグFr が“1”にセットされていれば、後進段の禁止制御が実行されていることになるので、この場合は、実車速Vが基準車速α以上か否かを判断し(ステップ14)、その結果が“イエス”であればリターンし、また“ノー”であれば、走行状態が後進段を禁止しない状態に変化したことになるので、後進段の禁止制御を解除(ステップ15)するとともに、フラグFr をゼロリセット(ステップ16)した後にリータンする。なお、ステップ13の判断結果が“ノー”の場合には、後進段の禁止制御が実行されていないので、直ちにリターンする。
【0031】
さらにシフトレバー33がいずれのレンジ位置にも設定されていないためにステップ5の判断結果が“ノー”となった場合には、直ちにステップ13に進み、またステップ2の判断結果が“イエス”となった場合には、フラグFD をゼロリセット(ステップ17)した後にステップ13に進む。
【0032】
なお、上記の説明では、後進段の禁止制御の内容を、ディテント機構35におけるソレノイド38の励磁としたが、前述した自動変速機はリバースコントロールバルブ43を備えているから、前記ソレノイド38の励磁と併せてこのバルブ43を動作させて後進段を禁止することとしてもよい。これは具体的には、第2ソレノイドバルブS2 を一時的にON動作させてリバースコントロールバルブ43のホールドポート53から排圧することにより行う。このようにすれば、たとえRレンジに切り換えても、マニュアルバルブ55からリバースコントロールバルブ43の制御ポート49に油圧が送られてそのスプール47が図8の左半分に示す位置に押し下げられ、そのリバース入力ポート50が閉じられるから、第2クラッチC2 および第3ブレーキB3 への供給が遮断されて、後進段が禁止される。またこのような制御を予備的に行っておけば、バルブスティックを未然に防止することができる。
【0033】
上記の制御はシフトレバー33がDレンジ位置から外れた時点で後進段禁止制御を実行する例であるが、前進走行状態から後進段に切り換える場合には、必ずシフトレバー33がNレンジ位置を通過するので、Nレンジを検出した場合に後進段の禁止制御を実行することもできる。しかしながらこのような制御は、例えば前述したニューラルスタートスイッチ36の正常な動作を前提とするから、そのスイッチ36のフェール時には異なる制御を行うことが好ましい。
【0034】
図10はその制御の例を示すフローチャートである。まず入力信号の処理(ステップ20)を行い、ついでニュートラルスタートスイッチ(Nsw)がフェールしているか否かを判断する(ステップ21)。ニュートラルスタートスイッチがフェールしていない場合には、Nレンジが選択されているか否かを判断(ステップ22)し、シフトレバー33がNレンジ位置にあればRレンジが選択される可能性が高いので、実車速Vが所定の基準車速α以上か否かを判断する(ステップ23)。実車速Vが基準車速α以上であれば、後進段を禁止する制御を実行する(ステップ24)。これは具体的には、前記ディテント機構35のソレノイド38を励磁してディテントピン37を溝34内に突出させることにより実行する。ついでフラグFr を“1”にセット(ステップ25)し、さらに第2ソレノイドバルブS2 のON・OFFの切換えを繰り返す(ステップ26)。これはバルブスティックを回避するためである。
【0035】
一方、実車速Vが基準車速αより低車速であるためにステップ23の判断結果が“ノー”となった場合には、後進段が設定されても支障がないので、すなわち後進段を許容できる走行状態であるため、後進段禁止の制御を解除する(ステップ27)。そしてフラグFr をゼロリセット(ステップ28)した後にリターンする。
【0036】
またニュートラルスタートスイッチがフェールしていた場合、すなわちステップ21の判断結果が“イエス”の場合には、シフトレバー33がNレンジ位置にあるか否かの判定を行うことができないので、この場合には走行状態のみに基づいて後進段禁止の制御の解除・実行の判断を行う。すなわち直ちにステップ23に進み、上述した制御を実行する。したがって所定車速以上で前進走行している状態での後進段の設定を確実に阻止することができる。
【0037】
なお、Nレンジが選択されていないためにステップ22の判断結果が“ノー”となった場合には、ステップ29に進んでフラグFr が“1”か否かを判断し、“1”でなければ、後進段の禁止制御が解除されていることになるので、そのままリターンする。これとは反対に“1”であれば、後進段の禁止制御が実行されていることになるので、実車速Vが所定の基準車速α以上か否かを判断し(ステップ30)、実車速Vが基準車速α以上であれば、そのままリターンして後進段の禁止制御を継続する。また車速Vが基準車速αより低車速であれば、後進段の禁止制御を解除(ステップ31)するとともに、フラグFr をゼロリセット(ステップ32)し、リターンする。
【0038】
ところで自動変速機で検出することのできる車速は方向を含まない値であり、したがって後進段の禁止制御を行う場合にレンジ位置と車速とをデータとしたのでは、所定車速以上の後進状態でのNレンジからRレンジへの切換えを禁止する事態が生じることが考えられる。このような不都合を解消するためには、Nレンジが設定されている状態での走行が前進走行であることを、後進段の禁止制御に先だって確認すればよく、その制御の一例を示せば、図11のとおりである。
【0039】
まず入力信号の処理(ステップ40)を行い、ついでRレンシが選択されているか否かを判断する(ステップ41)。Rレンジが選択されている場合には、フラグFk を“1”にセット(ステップ42)した後にリターンし、またRレンジが選択されていない場合には、Nレンジが選択されているか否かを判断する(ステップ43)。その判断結果が“イエス”であれば、フラグFk が“1”か否かを判断する(ステップ44)。このフラグFK はRレンジが一時的であっても選択された場合に“1”にセットされるフラグであるから、このステップ44の判断結果が“イエス”であれば、Nレンジの直前のレンジがRレンジであったことになるので、特に制御を行うことなくこのルーチンを抜ける。すなわち後進段の禁止制御は行わない。
【0040】
これに対してステップ44の判断結果が“ノー”であれば、Rレンジを経由することなくNレンジが設定されたことになるので、前述した通常の走行状態に基づいて後進段の禁止制御を行う。すなわち実車速Vが基準車速α以上か否かを判断(ステップ45)し、基準車速α以上であれば、後進段の禁止制御を実行(ステップ46)するとともに、フラグFr を“1”にセットする(ステップ47)。これとは反対に基準車速より低車速であれば、後進段の禁止制御を解除(ステップ48)するとともに、フラグFr をゼロリセットする(ステップ49)。
【0041】
一方、Nレンジが選択されていないことによりステップ43の判断結果が“ノー”となった場合には、Dレンジが選択されているか否かを判断する(ステップ50)。Dレンジが選択されていないければ直ちにステップ51に進んでフラグFr が“1”か否かを判断し、またDレンジが選択されていれば、フラグFk をゼロリセット(ステップ52)した後にステップ51に進む。ステップ51のフラグFr は、後進段禁止制御が実行されていることにより“1”にセットされるフラグであるから、その判断結果が“ノー”であれば直ちにリターンし、また“イエス”であれば実車速Vが基準車速α以上か否かを判断(ステップ53)する。そして基準車速α以上であれば、そのままリターンして後進段の禁止制御を継続、また基準車速αより低車速であれば、後進段の禁止制御を解除(ステップ54)するとともに、フラグFr をゼロリセット(ステップ55)してリターンする。
【0042】
したがって図11に示す制御では、Nレンジの直前のレンジを判断し、その直前のレンジがRレンジ以外、すなわち前進走行のためのレンジであった場合に、走行状態に基づいて後進段の禁止制御を実行するため、後進状態での車速が基準車速α以上であっても、後進段の禁止制御が実行されるなどの不都合を回避できる。
【0043】
なお、以上の実施例では、図4に示す歯車列備えた自動変速機を例に採って説明したが、この発明は、上記の実施例に限定されるものではないのであって、他の歯車列を備えた自動変速機を対象とする変速制御装置に適用することができる。また同様に、図8に示す油圧回路以外の油圧回路を備えた自動変速機を対象とする変速制御装置にもこの発明を適用することができる。さらにこの発明で採用することのできるでディテント機構は図7に示す構成に限定されないことは勿論である。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載した発明では、シフトレバーが所定の前進レンジ位置を外れない限り、車速が高車速になっても、後進段の禁止制御を実行しないから、後進段の禁止制御を実行する頻度が低くなり、したがって例えば後進段の禁止のために所定のアクチュエータを動作させるとしても、その動作回数が少なくなるので、その耐久性を向上させることができ、またその動作時の音が不快感を招来するおそれもなくなる。さらにシフトレバーが所定の前進レンジ位置を外れ、かつその時点の車速が所定の車速以上であることにより後進段が禁止されるため、前進レンジ位置から後進レンジ位置までのシフトレバーの移動距離が、ニュートラルレンジ位置から後進レンジ位置までの距離より長いから、シフト操作が速い場合であっても、ディテント機構による後進段の禁止制御を確実に行うことができる。
【0045】
また請求項2に記載した発明では、ニュートラル位置にシフトレバーがあることを検出するためのスイッチがフェールした場合には、走行状態にのみ基づいて後進段の禁止制御を実行することになるので、フェール時の後進段の禁止を確実に行い、いわゆるフェールセーフを確立することができる。
【0046】
さらに請求項3に記載した発明では、シフトレバーの後進レンジ位置への移動をディテント機構で阻止することと併せて、後進段の設定を阻止するためのバルブを動作させるから、バルブスティックを未然に回避して後進段の禁止制御を確実に行うことができる。
さらにまた、請求項4に記載した発明では、走行状態が後進段を禁止する状態ではないと判定され、かつシフトレバーが前進レンジ位置から外れたことが検出され、かつその時点の車速が後進段を禁止する車速ではない場合に、シフトレバー1Aが後進段位置に移動することを阻止する制御をシフトレバーが前進レンジ位置から外れた時点に解除するように、ディテント機構が動作する。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1および請求項4に記載した発明を機能的手段で示すブロック図である。
【図2】請求項2に記載した発明を機能的手段で示すブロック図である。
【図3】請求項3に記載した発明を機能的手段で示すブロック図である。
【図4】この発明の一実施例で対象とする自動変速機の歯車列を示すスケルトン図である。
【図5】図4に示す自動変速機で各変速段を設定するために係合させる摩擦係合装置の係合作動表を示す図表である。
【図6】この発明の実施例で使用するシフト装置における各レンジ位置の配列を示す図である。
【図7】ディテント機構の一例を模式的に示す斜視図である。
【図8】リバースコントロールバルブおよびこれに関する油圧回路を概略的に示す部分的な油圧回路図である。
【図9】シフトレバーがDレンジ位置から外れた時点で後進段の禁止制御を実行するための制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図10】ニュートラルスタートスイッチのフェールをも判断して後進段の禁止制御を行う制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図11】シフトレバーが経由したレンジ位置から走行方向を判断して後進段の禁止制御を実行する制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1A,1B,1C シフトレバー
2A,2B,2C シフト操作装置
3A,3B,3C ディテント機構
4A,5B 後進段禁止判定手段
4B ニューラルスイッチ
4C 摩擦係合装置
5A シフト操作検出手段
5C 禁止バルブ
6A,7B,6C 後進段禁止指示手段
6B フェール判定手段
Claims (4)
- 前進走行のための前進レンジと中立状態を設定するためのニュートラルレンジと後進状態を設定するための後進レンジとの少なくとも三つのレンジをシフトレバーによって選択するシフト操作装置を備え、シフトレバーの後進レンジ位置への移動を選択的に阻止するディテント機構がシフト操作装置に設けられた自動変速機の変速制御装置において、
前記シフトレバーが前進レンジ位置から外れたことを検出するシフト操作検出手段と、前記シフトレバーが前進レンジ位置から外れた時点の車速が所定車速以上であることにより後進段を禁止するべき走行状態を判定する後進段禁止判定手段と、後進段を禁止する状態であることが前記後進段禁止判定手段によって判定された時点に、シフトレバーが後進段位置に移動することを阻止するよう前記ディテント機構を動作させる後進段禁止指示手段とを具備していることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 - 前進走行のための前進レンジと中立状態を設定するためのニュートラルレンジと後進状態を設定するための後進レンジとの少なくとも三つのレンジをシフトレバーによって選択するシフト操作装置を備え、シフトレバーの後進レンジ位置への移動を阻止するディテント機構と、シフトレバーがニュートラル位置にある場合に信号を出力するニュートラルスイッチとがシフト操作装置に設けられた自動変速機の変速制御装置において、
後進段を禁止するべき走行状態を判定する後進段禁止判定手段と、前記ニュートラルスイッチのフェールを判定するフェール判定手段と、ニュートラルスイッチのフェールが判定されない場合には後進段を禁止するべき走行状態が判定されかつニュートラルスイッチが信号を出力することにより、シフトレバーが後進段位置に移動することを阻止するよう前記ディテント機構を動作させ、かつニュートラルスイッチのフェールが判定された場合には後進段を禁止するべき走行状態が判定されることにより、シフトレバーが後進段位置に移動することを阻止するよう前記ディテント機構を動作させる後進段禁止指示手段とを具備していることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 - 後進状態を設定するための後進レンジをシフトレバーを操作することにより選択するシフト装置に、シフトレバーの後進レンジ位置への移動を阻止するディテント機構が設けられるとともに、後進段を設定するために係合する摩擦係合装置への油圧の供給を選択的に阻止する禁止バルブが油圧装置に設けられた自動変速機の変速制御装置において、
前記シフトレバーが前進レンジ位置から外れたことおよびその時点の車速が所定車速以上であることにより後進段を禁止するべき走行状態を判定して、前記ディテント機構を前記シフトレバーが後進段位置へ移動することを阻止するように動作させるとともに前記禁止バルブを動作させる後進段禁止指示手段が設けられていることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 - 前進走行のための前進レンジと中立状態を設定するためのニュートラルレンジと後進状態を設定するための後進レンジとの少なくとも三つのレンジをシフトレバーによって選択するシフト操作装置を備え、シフトレバーの後進レンジ位置への移動を選択的に阻止するディテント機構がシフト操作装置に設けられた自動変速機の変速制御装置において、
前記シフトレバーが前進レンジ位置から外れたか否かを検出するシフト操作検出手段と、前記シフトレバーが前進レンジ位置を外れた時点の車速に基づいて後進段を禁止するべき走行状態か否かを判定する後進段禁止判定手段と、前記シフトレバーが前進レンジ位置から外れたことが検出されかつその時点の車速が後進段を禁止する車速ではない場合に、前記シフトレバーが後進段位置に移動することを阻止する制御を前記シフトレバーが前進レンジ位置から外れたことが検出された時点に解除するように、前記ディテント機構を動作させる後進段禁止指示手段とを具備していることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
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JPH07113468A JPH07113468A (ja) | 1995-05-02 |
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JP (1) | JP3860843B2 (ja) |
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1993
- 1993-10-15 JP JP28166993A patent/JP3860843B2/ja not_active Expired - Fee Related
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