JP3860259B2 - 球状炭酸カルシウムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば合成樹脂、ゴム、塗料などに配合されるフィラーや医療用材料、食品素材として用いられる球状炭酸カルシウムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、炭酸カルシウムは、合成樹脂、ゴムなどに配合されるフィラー、紙、塗料などの顔料、電子材料など幅広く使用されている。しかしながら、従来の炭酸カルシウムは、各素材との混練特性や分散性が低いことが指摘されている。これらの問題点を解決するためには、炭酸カルシウムの形態を球状にする必要がある。
【0003】
このような球状炭酸カルシウム(バテライト)は微細粒子の集合体であり、水に対する溶解度が他の炭酸カルシウムに比較して非常に大きく、タンパク質やアミノ酸等の吸着や親和性が良いことから、生体模倣材料の前駆体や食品工業への活用に注目されている。しかし、このバテライトは製造時の加熱乾燥工程や長時間の保存中にカルサイトに転移してしまったり、或いはバテライトの合成過程で加えるバリウムイオン、メタノール等の毒性物質が混入したりするため、生体材料、医療材料や食品工業への利用ができないという問題がある。
【0004】
この種の球状炭酸カルシウムを製造する方法としては、低温(30〜70℃)でカルシウムイオンと炭酸イオンとをメタノールの存在下に反応させる方法が知られている。また、タンパク質よりなる分解酵素としてのウレアーゼを用いた製造方法も知られている。さらに、バリウムイオンの共存下で炭酸カルシウムを製造する方法も知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前者の従来方法においては、生成物の結晶形態が変化し易いため、得られる球状炭酸カルシウムの収率が7%程度と低く、後者の従来方法においても球状炭酸カルシウムの収率が非常に低い。しかも、反応時にメタノールを使用するときには、反応後にメタノールを除去、回収する工程が必要となり、工程が増える。このため、球状炭酸カルシウムの生産効率が悪く、製造コストが高くなるという問題点があった。
【0006】
また、ウレアーゼはタンパク質よりなる分解酵素であるため、生体材料、医療材料や食品工業への活用は可能と思われるが、製造コストが極めて高くなる。或いは、メタノールやバリウムイオン等の共存下で製造する方法は、メタノールやバリウムイオン等の生体に毒性を示す物質の混入があり、事実上生体材料、医療材料や食品工業への利用ができないという問題があった。
【0007】
さらに、従来の球状炭酸カルシウム(バテライト)の合成は100℃未満の温度で反応を行っていることから、カルサイトに転移しやすく、乾燥工程で加熱乾燥することができない。このため、真空乾燥方法を採用する必要があり、設備投資やランニングコストが高くなるとともに、長時間の保存中に相転移による形状変化を起こしてしまうという問題があった。
【0008】
加えて、揮発性の高い有機溶剤であるメタノールを用いる場合には、作業環境が悪化し、反応工程における取り扱いに注意を要するという問題点があった。
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、収率が高く、しかも余分な工程を必要とせず、生産効率に優れ、製造コストの低減を図ることができる球状炭酸カルシウムの製造方法を提供することにある。その他の目的とするところは、有機溶剤を使用する必要がなく、取り扱いの容易な球状炭酸カルシウムの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の球状炭酸カルシウムの製造方法は、結晶水を含むカルシウム塩と尿素又は炭酸アンモニウム系化合物とを加熱条件下で反応させるものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の球状炭酸カルシウムの製造方法において、加熱温度は100〜250℃である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明の球状炭酸カルシウムの製造方法において、界面活性剤の共存下に反応させるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態について詳細に説明する。
球状の炭酸カルシウムは、結晶水を含むカルシウム塩と尿素又は炭酸アンモニウム系化合物を加熱反応させることにより製造される。
【0012】
生成物としての球状の炭酸カルシウム(CaCO3 )は、通常バテライト(Vaterite)であるが、六方晶系のカルサイト(Calcite )であってもよい。
反応原料としてのカルシウム塩は、結晶水を含むものであることが必要である。このカルシウム塩としては、例えば硝酸カルシウム4水塩〔Ca(NO3 )2 ・4H2 O〕、塩化カルシウム1水塩(CaCl2 ・H2 O)、塩化カルシウム2水塩(CaCl2 ・2H2 O)、塩化カルシウム6水塩(CaCl2 ・6H2 O)などが挙げられる。
【0013】
カルシウム塩と反応させるもう一方の反応原料は、尿素〔(NH2 )2 CO〕又は炭酸アンモニウム系化合物である。炭酸アンモニウム系化合物としては、例えばカルバミン酸アンモニウム(NH2 CO2 NH4 )などが挙げられる。
【0014】
尿素又は炭酸アンモニウム系化合物は、結晶水を含むカルシウム塩1モルに対し1〜10モルの範囲で用いることが好ましい。1モル未満では球状の炭酸カルシウムを得ることは困難であり、10モルを越えると未反応の尿素又は炭酸アンモニウム系化合物が残存し、回収が必要となって効率が悪い。
【0015】
反応温度は、得られる炭酸カルシウムを球状にするためには100℃以上であればよいが、球状のバテライトを得るためには100〜140℃の範囲であることが望ましく、105〜130℃の範囲であることがさらに望ましい。反応温度を150〜250℃まで上げると、球状のカルサイトが得られる。反応温度を100℃以上に設定することから、得られるバテライトは、緻密で相転移による形態変化はないため、通常の加熱乾燥ができることは勿論、長期間の保存においても形態の変化はない。
【0016】
また、界面活性剤を使用することにより、反応時における反応液の表面張力を下げ、表面エネルギーを小さくすることができる。このため、不純物の少ない単一相としての球状のバテライトを収率良く得ることができる。ここでいう界面活性剤とは、反応液の表面張力を下げ、表面エネルギーを小さくできる有機系または無機系材料を意味するが、揮発性のアルコール、すなわちメタノールとエタノールは除かれる。そのような界面活性剤としては、合成陰イオン界面活性剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(それぞれ有効成分が30〜70重量%)、合成陽イオン界面活性剤、例えばアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(それぞれ有効成分が30〜70重量%)、合成両性界面活性剤、例えばアルキルアミノプロピオン酸塩(有効成分が30〜70重量%)、合成非イオン系界面活性剤、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(有効成分が30〜70重量%)、グリセリン(有効成分が30〜70重量%)、エチレングリコール(有効成分が30〜70重量%)、ポリエチレングリコール(有効成分が30〜70重量%)、ポリビニルアルコール(有効成分が30〜70重量%)、ポリアクリル酸誘導体(有効成分が30〜70重量%)、セルロース誘導体〔ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、それぞれ有効成分が30〜70重量%〕、天然ゲル化剤(ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、アラビアガム、トラガントガム、ガラヤガム、ガッテガム、寒天、カラーギナン、ペクチン、澱粉およびその誘導体の有効成分が30〜99重量%のゾルまたは水溶液)または珪酸ゲル(水ガラス1号から3号)が挙げられる。なお、上記界面活性剤の有効成分の残りは、水である。これらの界面活性剤は、1種または2種以上が混合して使用される。
【0017】
この界面活性剤の使用量は、反応原料に対して0. 1〜15重量%の範囲内であることが好ましい。
前述した例えば硝酸カルシウム4水塩と尿素との反応は、次のような反応式で進む。すなわち、硝酸カルシウム4水塩が加熱分解して生成した水と尿素とが次式で反応する。
【0018】
(NH2 )2 CO + 3H2 O → 2NH4 + + 2OH- + CO2
さらに、次の反応が起こる。
2OH- + CO2 → H2 O + CO3 2-
そして、この炭酸イオン(CO3 2- )は、硝酸カルシウム4水塩が分解して生成したカルシウムイオン(Ca2+)と次式のように反応する。
【0019】
Ca2+ + CO3 2- → CaCO3
このような反応により、球状の炭酸カルシウムであるバテライトが得られる。このバテライトを精製し、乾燥物として取得するために次のような操作を行う。すなわち、まず反応により得られた生成物に所定量の水を加えて溶解する。加える水の量としては、結晶水を含むカルシウム塩1モルに対し、10〜70モル程度である。
【0020】
その後、濾過を行い、得られた濾過物をさらに水洗して、乾燥する。このようにして、所望とする球状のバテライトが得られる。この球状をなすバテライトの収率は15〜65%になる。
【0021】
次に、上記の濾過を行ったときの濾液中には未反応物を多く含むため、さらに所定温度で加熱することにより、別の形態を有する炭酸カルシウムが得られる。例えば、100〜120℃で加熱すると、板状のバテライトが得られる。125〜150℃で加熱すると、柱状の炭酸カルシウムであるアラゴナイト(Aragonite )が得られる。150〜250℃まで加熱すると、立方体状または紡錘状のカルサイトが得られる。
【0022】
上記のように、先ず球状炭酸カルシウム(バテライト)を合成し、未反応物に水分を加え、合成温度を変え、多段的に合成すれば原料を無駄なく使用でき、ほぼ100%の歩留りで各製品を得ることができる。
【0023】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 外部から水を供給することなく、加熱によってカルシウム塩の結晶水から得られる必要量の自由水を利用することから、結晶形態が変化するおそれがない。このため、製造される球状炭酸カルシウムの収率が15〜65%と高くなる。
(2) 反応時にメタノールなどの有機溶剤を使用しないことから、反応後にそのような有機溶剤を除去、回収する工程を必要としない。このため、余分な工程が不要となる。
(3) 従って、球状炭酸カルシウムの製造における生産効率に優れ、製造コストの低減を図ることができる。
(4) 作業環境を悪化させる有機溶剤を使用する必要がなく、作業工程における原料物質の取り扱いが容易である。
(5) 界面活性剤を使用することにより、反応時における反応液の表面張力を下げ、表面エネルギーを小さくすることができ、不純物の少ない球状炭酸カルシウムを収率良く得ることができる。
(6) 球状の炭酸カルシウムであるバテライトは、水に対する溶解度が大きく、蛋白質、アミノ酸との吸着反応性が高いため、医療用材料や機能性食品などの食品素材として利用される。また、混練特性や分散特性に優れていることから、合成樹脂やゴムのフィラー、あるいは紙の顔料、補強材として利用される。さらに、磁気テープのブロッキング防止剤やチューインガムの粘着防止剤としても利用される。
【0024】
また、球状の炭酸カルシウムであるカルサイトは、混練特性や分散特性が良いことから、合成樹脂やゴムのフィラーとして利用される。
【0025】
【実施例】
以下、この発明を具体化した実施例について説明する。
(実施例1)
硝酸カルシウム4水塩を1モル、尿素を2モル及び界面活性剤としてのアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(有効成分30重量%)を前記硝酸カルシウム4水塩と尿素の合計量に対して0. 41重量%混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。
【0026】
この反応生成物に12モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約25%であった。
【0027】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに150℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、柱状の炭酸カルシウム(アラゴナイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約68%であった。
(実施例2)
硝酸カルシウム4水塩を1モル、尿素を2モル及び界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(有効成分30重量%)を前記硝酸カルシウム4水塩と尿素の合計量に対して0. 41重量%混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。
【0028】
この反応生成物に70モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約25%であった。
【0029】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに125℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、柱状の炭酸カルシウム(アラゴナイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約63%であった。
(実施例3)
硝酸カルシウム4水塩を1モル、尿素を2モル及びポリカルボン酸アンモニウムを前記硝酸カルシウム4水塩と尿素の合計量に対して0. 41重量%混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。
【0030】
この反応生成物に70モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約25%であった。
【0031】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに125℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、柱状の炭酸カルシウム(アラゴナイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約63%であった。
(実施例4)
硝酸カルシウム4水塩を1モル、尿素を2モル及びポリカルボン酸アンモニウムを前記硝酸カルシウム4水塩と尿素の合計量に対して0. 41重量%混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。
【0032】
この反応生成物に12モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約25%であった。
【0033】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに125℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、柱状の炭酸カルシウム(アラゴナイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約68%であった。
(実施例5)
硝酸カルシウム4水塩を1モルと尿素を2モルを混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。この反応生成物に12モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約15%であった。
【0034】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに150℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、柱状の炭酸カルシウム(アラゴナイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約68%であった。
(実施例6)
硝酸カルシウム4水塩を1モルと尿素を2モルを混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。この反応生成物に70モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約15%であった。
【0035】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに125℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、柱状の炭酸カルシウム(アラゴナイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約63%であった。
(実施例7)
硝酸カルシウム4水塩を1モルと尿素を2モルを混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。この反応生成物に54モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約15%であった。
【0036】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに200℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、立方体状の炭酸カルシウム(カルサイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約84%であった。
(実施例8)
硝酸カルシウム4水塩を1モルと尿素を2モルを混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。この反応生成物に54モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約15%であった。
【0037】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに105℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、板状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約14%であった。さらに、この濾液を200℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、立方体状の炭酸カルシウム(カルサイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は、約71%であった。このような操作を行うことにより、100%の収率で各製品を得ることができた。
(実施例9)
硝酸カルシウム4水塩を1モルと尿素を2モルを混合し、密閉容器中にて、200℃で4時間加熱して反応を行った。この反応生成物に12モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(カルサイト)が得られた。この球状炭酸カルシウムの収率は、約96%であった。
(実施例10)
硝酸カルシウム4水塩を1モル、尿素を2モルおよび界面活性剤として還元澱粉加水分解物(有効成分50重量%)を前記硝酸カルシウム4水塩と尿素の合計量に対して10重量%混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。
【0038】
この反応生成物に70モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この球状炭酸カルシウムの収率は65%であった。
【0039】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに200℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、立方体状の炭酸カルシウム(カルサイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は35%であった。
(実施例11)
硝酸カルシウム4水塩を1モル、尿素を2モルおよび界面活性剤としてエチレングリコール(有効成分50重量%)を前記硝酸カルシウム4水塩と尿素の合計量に対して10重量%混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。
【0040】
この反応生成物に70モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この球状炭酸カルシウムの収率は53%であった。
【0041】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに200℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、立方体状の炭酸カルシウム(カルサイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は43%であった。
(実施例12)
硝酸カルシウム4水塩を1モル、尿素を2モルおよび界面活性剤としてグリセリン(有効成分50重量%)を前記硝酸カルシウム4水塩と尿素の合計量に対して10重量%混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。
【0042】
この反応生成物に70モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この球状炭酸カルシウムの収率は57%であった。
【0043】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに200℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、立方体状の炭酸カルシウム(カルサイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は41%であった。
(実施例13)
硝酸カルシウム4水塩を1モル、尿素を2モルおよび界面活性剤として還元澱粉加水分解物(有効成分50重量%)を前記硝酸カルシウム4水塩と尿素の合計量に対して8重量%、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムとアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)の混合剤(有効成分30重量%)を同じく0.5重量%混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。
【0044】
この反応生成物に70モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この球状炭酸カルシウムの収率は57%であった。
【0045】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに200℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、立方体状の炭酸カルシウム(カルサイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は43%であった。
(実施例14)
硝酸カルシウム4水塩を1モル、尿素を2モルおよび界面活性剤としてキサンタンガム(有効成分5重量%)を前記硝酸カルシウム4水塩と尿素の合計量に対して5重量%、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムとアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)の混合剤(有効成分30重量%)を同じく0.5重量%混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。
【0046】
この反応生成物に70モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この球状炭酸カルシウムの収率は55%であった。
【0047】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに200℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、立方体状の炭酸カルシウム(カルサイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は43%であった。
(実施例15)
硝酸カルシウム4水塩を1モル、尿素を2モルおよび界面活性剤として水ガラス3号を前記硝酸カルシウム4水塩と尿素の合計量に対して5重量%、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムとアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)の混合剤(有効成分30重量%)を同じく0.5重量%混合し、密閉容器中にて、125℃で4時間加熱して反応を行った。
【0048】
この反応生成物に70モルの水を加えて溶解した後、濾過を行った。そして、得られた濾過物を水洗し、乾燥したところ、球状の炭酸カルシウム(バテライト)が得られた。この球状炭酸カルシウムの収率は57%であった。
【0049】
なお、濾液中には未反応物を多く含むため、さらに200℃で4時間加熱して反応を行った。そして、得られた生成物を水洗し、濾過、乾燥したところ、立方体状の炭酸カルシウム(カルサイト)が得られた。この炭酸カルシウムの収率は41%であった。
【0050】
さらに、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
(1) 加熱温度は100〜140℃である請求項1に記載の球状炭酸カルシウムの製造方法。
【0051】
この方法によれば、医療用材料や機能性食品などの食品素材あるいは合成樹脂やゴムのフィラーなどとして利用可能な球状バテライトを収率良く得ることができる。
(2) 加熱温度は150〜250℃である請求項1に記載の球状炭酸カルシウムの製造方法。
【0052】
この方法によれば、合成樹脂やゴムのフィラーなどとして利用可能な球状のカルサイトを収率良く得ることができる。
(3) 前記界面活性剤の使用量が反応原料に対して0. 1〜15重量%である請求項3に記載の球状炭酸カルシウムの製造方法。
【0053】
この方法によれば、反応液の表面張力を効果的に下げて、より純度の高い球状炭酸カルシウムを確実に得ることができる。
(4) 反応後に所定量の水を加えた後、濾過し、得られた結晶を乾燥する請求項1〜3のいずれかに記載の球状炭酸カルシウムの製造方法。
【0054】
この方法によれば、精製された球状炭酸カルシウムを容易に得ることができる。
(5) 前記濾過後の濾液をさらに125〜150℃に加熱する上記(4)に記載の柱状アラゴナイトの製造方法。
【0055】
この方法によれば、球状のバテライトを得た後の残液から、樹脂やゴムとして利用可能な柱状のアラゴナイトおよび立方体状ないし紡錘状のカルサイトを得ることができ、生産効率を高めることができる。
【0056】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の球状炭酸カルシウムの製造方法によれば、球状炭酸カルシウムの収率が高く、しかも有機溶剤を除去するような余分な工程を必要としない。従って、生産効率に優れ、製造コストの低減を図ることができる。しかも、有機溶剤を使用する必要がなく、反応工程における反応原料の取り扱いの容易性を図ることができる。
【0057】
請求項2に記載の発明によれば、100〜250℃に加熱することによってカルシウム塩の結晶水から反応に必要な水が自由水として得られ、結晶形態の変化を防止して球状炭酸カルシウムの収率を確実に高めることができる。
【0058】
請求項3に記載の発明によれば、界面活性剤により反応時における表面張力を下げ、表面エネルギーを小さくすることができ、不純物の少ない球状炭酸カルシウムを収率良く得ることができる。
Claims (3)
- 結晶水を含むカルシウム塩と尿素又は炭酸アンモニウム系化合物とを加熱条件下で反応させる球状炭酸カルシウムの製造方法。
- 加熱温度は100〜250℃である請求項1に記載の球状炭酸カルシウムの製造方法。
- 界面活性剤の共存下に反応させる請求項1又は2に記載の球状炭酸カルシウムの製造方法。
Priority Applications (1)
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