JP3853932B2 - 斜板式無段変速機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、斜板式の油圧ポンプ及び油圧モータ間を油圧閉回路により接続し、その油圧モータを可変容量型とした斜板式無段変速機に関し、特に、シリンダブロック軸線に平行且つ該軸線を囲む環状に配列された多数のポンプシリンダ孔及びモータシリンダ孔、並びにポンプシリンダ孔に個別に連なる多数のポンプポート及びモータシリンダ孔に個別に連なる多数のモータポートを有するシリンダブロックと、多数のポンプシリンダ孔に摺動自在に嵌合する多数のポンププランジャと、多数のモータシリンダ孔に摺動自在に嵌合する多数のモータプランジャと、シリンダブロックの一端面に対向して配設され、それとの相対回転に伴いポンププランジャに往復動を与えるポンプ斜板と、シリンダブロックの他端面に対向して配設され、それとの相対回転に伴いモータプランジャに往復動を与えると共に、その往復ストロークをゼロにする、前記軸線と直交する直立位置及び、その往復ストロークを最大にする最大傾斜位置間を傾動し得るモータ斜板と、前記軸線を囲む環状の高圧油路及び低圧油路と、シリンダブロックに設けられ、ポンプポート及びモータポートをそれぞれ高圧油路及び低圧油路の何れとも遮断するストローク中点を経て両油路に交互に連通切換えするように往復動するスプール型の多数の第1分配弁及び第2分配弁とを備えたもので、モータ斜板の直立時には伝動効率の向上を図るべくモータポートを遮断するロックアップ機能を具備した斜板式無段変速機の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝる斜板式無段変速機は、例えば特公平6−89828号公報に開示されているように、既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に開示された斜板式無段変速機は、多数の第2分配弁をシリンダブロックに放射状に配設すると共に、これら第2分配弁をポンプシリンダの回転に伴い往復動させるための偏心輪をミッションケースに支持させている。そしてロックアップ機能を具備するために、上記偏心輪をモータ斜板に連動させて、モータ斜板の直立時に偏心輪の偏心量がゼロとなるようにし、これにより第2分配弁をストローク中点に停止させてモータポートを遮断するようにしている。
【0004】
しかしながら、上記のように互いに異なる動きをするモータ斜板と偏心輪とを連動させる機構を有することは、無段変速機の構造を複雑化するのみならず、そのコンパクト化を妨げることになる。
【0005】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、特別な連動機構を持たずとも、モータ斜板の直立時には、第2分配弁をストローク中点に停止させてモータポートを遮断するロックアップ状態が自動的に得られようにした、構造簡単でコンパクトな前記斜板式無段変速機を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、シリンダブロック軸線に平行且つ該軸線を囲む環状に配列された多数のポンプシリンダ孔及びモータシリンダ孔、並びにポンプシリンダ孔に個別に連なる多数のポンプポート及びモータシリンダ孔に個別に連なる多数のモータポートを有するシリンダブロックと、多数のポンプシリンダ孔に摺動自在に嵌合する多数のポンププランジャと、多数のモータシリンダ孔に摺動自在に嵌合する多数のモータプランジャと、シリンダブロックの一端面に対向して配設され、それとの相対回転に伴いポンププランジャに往復動を与えるポンプ斜板と、シリンダブロックの他端面に対向して配設され、それとの相対回転に伴いモータプランジャに往復動を与えると共に、その往復ストロークをゼロにする、前記軸線と直交する直立位置及び、その往復ストロークを最大にする最大傾斜位置間を傾動し得るモータ斜板と、前記軸線を囲む環状の高圧油路及び低圧油路と、シリンダブロックに設けられ、ポンプポート及びモータポートをそれぞれ高圧油路及び低圧油路の何れとも遮断するストローク中点を経て両油路に交互に連通切換えするように往復動するスプール型の多数の第1分配弁及び第2分配弁とを備えた、斜板式無段変速機において、モータポートを高圧油路及び低圧油路に交互に連通切換えする多数の第2分配弁を前記軸線と平行にしてシリンダブロックに配設し、シリンダブロックとの相対回転に伴いこれら第2分配弁を往復動させる弁斜板をモータ斜板に同一斜面上で一体に結合し、各モータシリンダ孔のモータポートを、これが該モータシリンダ孔に対してシリンダブロックの周方向へ位相が90°ずれた位置で第2分配弁により切換え制御されるように形成し、弁斜板がモータ斜板と共に直立位置を占めるときは、第2分配弁をストローク中点に留めるようにしたことを特徴とする。
【0007】
この特徴によれば、弁斜板をモータ斜板に同一斜面上で結合するも、各モータシリンダ孔のモータポートを、これが該モータシリンダ孔に対してシリンダブロックの周方向へ位相が90°ずれた位置で第2分配弁により切換え制御されるように形成したので、モータ斜板の傾斜時には、それと共に傾斜した弁斜板が第2分配弁に往復動を与えることにより、膨張行程のモータシリンダ孔に対応するモータポートを高圧油路に、収縮行程のモータシリンダ孔に対応するモータポートを低圧油路にそれぞれ的確に連通させて油圧伝動を行うことができ、またモータ斜板の直立時には、それと共に直立した弁斜板が第2分配弁をストローク中点に保持することにより、全てのモータポートを高圧油路及び低圧油路の何れとも遮断したロックアップ状態を自動的に得ることができる。したがって、ロックアップ状態を自動的に得るための連動機構を特別に持つ必要がない。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、添付図面に示す本発明の実施例に基づいて説明する。
【0009】
先ず、図1及び図2において、斜板式無段変速機Tを収容するミッションケース1の左右両端壁に出力軸2がボールベアリング3,3を介して支承され、この出力軸2には、ミッションケース1の左端壁に隣接して入力ギア5aを固着した入力部材5がアンギュラコンタクトベアリング6を介して回転自在に支承される。入力ギヤ5aには図示しないエンジンの動力が入力され、出力軸2の右端部から動力が図示しない負荷、例えば自動二輪車の駆動装置に出力されるようになっている。
【0010】
入力部材5には、出力軸2にニードルベアリング7を介して支承される斜板ホルダ8が一体に形成されており、この斜板ホルダ8に第1斜板組立体9がボールベアリング10及びアンギュラコンタクトベアリング11を介して回転自在に支承される。第1斜板組立体9は、ポンプ斜板9aと、これに囲繞されると共に同一斜面上に配置される第1弁斜板9bとを一体に備えており、これらポンプ斜板9a及び第1弁斜板9bを出力軸2の軸線Xに対して一定角度傾斜させるように、前記斜板ホルダ8は配置される。
【0011】
出力軸2の中間部には、該軸2と同心のシリンダブロック4がスプライン結合されると共に、該軸2上のフランジ12及びスリーブ13により軸方向移動不能に固定される。
【0012】
このシリンダブロック4を挟んで第1斜板組立体9と反対側において、ミッションケース1にボルト14で固着される斜板アンカ15が出力軸2にアンギュラコンタクトベアリング16を介して支承される。この斜板アンカ15に、出力軸2の軸線Xと直交する軸線Yを持つ半円筒状のトラニオン18が一定角度範囲で回転可能に支承され、このトラニオン18の中央部に第2斜板組立体19がボールベアリング20及びアンギュラコンタクトベアリング21を介して回転自在に支承される。第2斜板組立体19は、モータ斜板19aと、これに囲繞されると共に同一斜面に配置される第2弁斜板19bとを一体に備えている。トラニオン18は、その軸方向一端に作動腕(図示せず)を備えており、その作動腕によりトラニオン18を回転することにより、モータ斜板19a及び第2弁斜板19bの出力軸2軸線Xに対する傾斜角度を変え得るようになっている。
【0013】
斜板アンカ15には、シリンダブロック4をボールベアリング31を介して回転自在に支承するシリンダホルダ17がボルト38により固着される。
【0014】
出力軸2上に配設されて入力部材5及び第1斜板組立体9を支持する左側のアンギュラコンタクトベアリング6、並びに出力軸2上に配設されて斜板アンカ15を支持する右側のアンギュラコンタクトベアリング16の各外側面には、出力軸2上の一対の環状溝22,22に係合した2つ割りコッタ23,23が当接するように配置され、各コッタ23の外周にはリテーナ環24が嵌合される。而して、無段変速機Tの作動により、第1斜板組立体9及びシリンダブロック4間に発生するスラスト荷重は左右のアンギュラコンタクトベアリング6,16から左右のコッタ23,23を介して出力軸2に支持され、また斜板アンカ15及びシリンダブロック4間に発生するスラスト荷重は前記フランジ12及び右側のコッタ23を介して出力軸2に支持され、これによりミッションケース1への荷重負担を軽減させることができる。
【0015】
シリンダブロック4には、奇数で多数(図示例では各5本)のポンプシリンダ孔25がシリンダブロック4と同心の第1ピッチ円C1 (図2参照)上で環状に配列して形成され、またポンプシリンダ孔25と同数の第1弁孔26が第1ピッチ円C1 より小径でそれと同心の第2ピッチ円C2 上で環状に配列して形成される。ポンプシリンダ孔25は、その一端をシリンダブロック4の左端面に開口すると共に他端を閉塞しており、第1弁孔26はポンプシリンダ孔25より小径に形成されると共に、シリンダブロック4を軸方向に貫通している。
【0016】
ポンプシリンダ孔25及び第1弁孔26には、ポンププランジャ27及びスプール型の第1分配弁28がそれぞれ摺動自在に嵌装される。これらポンププランジャ27及び第1分配弁28は、それぞれ先端をシリンダブロック4の左端面から突出させて、前記ポンプ斜板9a及び第1弁斜板9bに当接させている。而して、ポンプ斜板9a及び第1弁斜板9bは、入力部材5の回転時、ポンププランジャ27及び第1分配弁28に軸方向の往復動を与えるものであり、これらによって斜板式油圧ポンプPが構成される。
【0017】
図1及び図6に示すように、ポンププランジャ27及び第1分配弁28の各先端は球状端部29a,30aに形成されており、これら球状端部29a,30aが係合する、それらより大径の球状凹部29b,30bがポンプ斜板9a及び第1弁斜板9bに形成され、これによりポンプ斜板9aとポンププランジャ27、第1弁斜板9bと第1分配弁28の各間の回転方向の滑りを防止すると共に、ポンププランジャ27及び第1分配弁28が各対応する斜板9a,9bから受ける曲げモーメントを少なくすることができる。
【0018】
図1及び図7に示すように、第1斜板組立体9には、ポンププランジャ27及び第1分配弁28の各球状端部29a,30aを各対応する斜板9a,9bの球状凹部29b,30bとの係合状態に保持する環状のリテーナ板32がサークリップ33により回転可能に取付けられる。このリテーナ板32には、環状配列のポンププランジャ27に対応する、それと同数のプランジャ保持孔34と、環状配列の第1分配弁28に対応する、それと同数の弁保持孔35とが設けられる。プランジャ保持孔34は、ポンププランジャ27の球状端部29aより小径に、且つ球状端部29aの頸部29a1 より大径に形成されると共に、切欠き36によりリテーナ板32の外周に開放される。この切欠き36の幅は、上記球状端部29aの頸部29a1 より若干大きくなっている。而して、ポンププランジャ27の頸部29aを、切欠き36を経てプランジャ保持孔34に配置した後、ポンププランジャ27をポンプシリンダ孔25に挿入し、またリテーナ板32を第1斜板組立体9に装着すれば、頸部29a1 の切欠き36からの離脱を防ぐことができると共に、プランジャ保持孔34により球状端部29aを球状凹部29bとの係合位置に保持することができる。したがって、ポンプ斜板9a及びシリンダブロック4の相対回転に伴いポンププランジャ27を強制的に往復動させることができるから、ポンププランジャ27を突出方向へ付勢する戻しばねを設ける必要はない。
【0019】
また弁保持孔35は、第1分配弁28の球状端部30aより小径に、且つ球状端部30aの頸部30a1 より大径に形成されると共に、切欠き37によりリテーナ板32の内周に開放される。この切欠き37の幅は、上記球状端部30aの頸部30a1 より若干大きくなっている。したがって、ポンププランジャ27の場合と同様の組立要領により、頸部30a1 の切欠き37からの離脱を防ぐことができると共に、球状端部30aを球状凹部30bとの係合位置に保持することができるから、第1弁斜板9b及びシリンダブロック4の相対回転に伴い第1分配弁28を強制的に往復動させることができる。
【0020】
再び図1及び図2において、シリンダブロック4には、また、ポンプシリンダ孔25と同数のモータシリンダ孔39がポンプシリンダ孔25群の第1ピッチ円C1 上で環状に且つ前記ポンプシリンダ孔25と交互に配列して形成され、またモータシリンダ孔39と同数の第2弁孔40が第1弁孔26群の第1ピッチ円C2 上で環状に且つ第1分配弁28と交互に配列して形成される。モータシリンダ孔39は、その一端をシリンダブロック4の右端面に開口すると共に、他端を閉塞しており、第2弁孔40は、モータシリンダ孔39より小径に形成されると共に、シリンダブロック4を軸方向に貫通している。また図示例では、ポンプシリンダ孔25とモータシリンダ孔39、第1弁孔26と第2弁孔40がそれぞれ同径になっている。したがって、第2弁孔40はモータシリンダ孔39より小径になっている。
【0021】
モータシリンダ孔39及び第2弁孔40には、モータプランジャ41及びスプール型の第2分配弁42がそれぞれ摺動自在に嵌装される。これらモータプランジャ41及び第2分配弁42は、それぞれ先端をシリンダブロック4の右端面から突出させて、前記モータ斜板19a及び第2弁斜板19bに当接させている。而して、モータ斜板19a及び第2弁斜板19bは、シリンダブロック4の回転時、モータプランジャ41及び第2分配弁42に軸方向の往復動を与えるものであり、これらによって斜板式油圧モータMが構成される。
【0022】
モータプランジャ41及び第2分配弁42の各先端は球状端部43a,44aに形成されており、これら球状端部43a,44aが係合する、それらより大径の球状凹部43b,44bがモータ斜板19a及び第2弁斜板19bに形成され、これによりモータ斜板19aとモータプランジャ41、第2弁斜板19bと第2分配弁42の各間の回転方向の滑りを防止すると共に、モータプランジャ41及び第2分配弁42が各対応する斜板19a,19bから受ける曲げモーメントを少なくすることができる。
【0023】
第2斜板組立体19には、モータプランジャ41及び第2分配弁42の各球状端部43a,44aを各対応する斜板19a,19bの球状凹部43b,44bとの係合状態に保持する環状のリテーナ板45がサークリップ46により回転可能に取付けられる。このリテーナ板45とモータプランジャ41及び第2分配弁42との連結構造は、前記リテーナ板32とポンププランジャ27及び第1分配弁28との連結構造と同様である。
【0024】
シリンダブロック4には、第1、第2弁孔26,40の何れとも交差する環状の高圧油路47及び低圧油路48が軸方向に間隔を存して形成され、また各ポンプシリンダ孔25から延びて、それとシリンダブロック4の反回転方向(図2の矢印Rはシリンダブロック4の回転方向を示す)へ90°位相がずれた第1弁孔26に達する多数のポンプポート25aと、各モータシリンダ孔39から延びて、それとシリンダブロック4の反回転方向へ90°位相がずれた第2弁孔40に達する多数のモータポート39aとが形成される。
【0025】
図9に示すように、各第1分配弁28は、その球状端部29a側から順次並ぶ第1ランド部28a、第1環状溝28d、第2ランド部28b、第2環状溝28e及び第3ランド部28cを備えており、この第1分配弁28の第1弁斜板9bによる右動限では、第1環状溝28dがポンプポート25a及び高圧油路47間を連通すると共に、第2ランド部28bがポンプポート25a及び低圧油路48間を遮断し、またその左動限では、第2環状溝28eがポンプポート25a及び低圧油路48間を連通させると共に、第2ランド部28bがポンプポート25a及び高圧油路47間を遮断し、またそのストローク中点では、第1及び第2ランド部28a,28bがポンプポート25aを両油路57,58の何れとも遮断する。
【0026】
一方、各第2分配弁42は、図10に示すように、その球状端部44a側から順次並ぶ第1ランド部42a、環状溝42c及び第2ランド部42bを備えており、この第2分配弁42の第2弁斜板19bによる左動限では、環状溝42cがモータポート39a及び低圧油路48間を連通すると共に、第2ランド部42bがモータポート39a及び高圧油路47間を遮断し、またその右動限では、環状溝42cがモータポート39a及び高圧油路47間を連通すると共に、第1ランド部42aがモータポート39a及び低圧油路48間を遮断し、またそのストローク中点では、第1及び第2ランド部42a,42bがモータポート39aを両油路47,48の何れとも遮断する。
【0027】
図1に示すように、出力軸2の中心部には、図示しないエンジンにより駆動される補給ポンプ49の吐出側に連なる補給油路50が形成されており、この補給油路50と、低圧油路48及び高圧油路47との各間を連通すべく出力軸2に穿設された第1連通孔51及び第2連通孔52に、第1チェック弁53及び第2チェック弁54がそれぞれ装着される。第1チェック弁53は、補給油路50から低圧油路48への一方向のみの油の流れを許容し、また第2チェック弁54は、補給油路50から高圧油路47への一方向のみの油の流れを許容する。
【0028】
図3、図4及び図8に示すように、シリンダブロック4は、その軸線X(前記出力軸2の軸線Xと同一)と直交する分割面で分割された複数枚、図示例では5枚のブロック板41 〜45 から構成され、これらは相互に結合される。各ブロック板41 〜45 はプレス成形されたものであり、したがって、それぞれプレス加工に適した板厚になっている。これらブロック板41 〜45 の結合構造については後述する。
【0029】
5枚のブロック板は、図3で左から第1ブロック板41 〜第5ブロック板45 と呼ぶことゝし、前記ポンプシリンダ孔25、モータシリンダ孔39、第1弁孔26及び第2弁孔40は、第1ブロック板41 〜第5ブロック板45 にわたり形成される。この場合、特に、ポンプシリンダ孔25は、ポンププランジャ27を摺動自在に支承するよう、第1、第2ブロック板41 ,42 に形成される入口孔25iと、この入口孔25iより若干大径でポンププランジャ27の内端面及び外周面との間に油室を画成するよう、第3〜第5ブロック板41 ,45 に形成される奥孔25oとで構成される。またモータシリンダ孔39は、モータプランジャ41を摺動自在に支承するよう、第4、第5ブロック板44 ,45 に形成される入口孔39iと、この入口孔39iより若干大径でモータプランジャ41の内端面及び外周面との間に油室を画成するよう、第1〜第3ブロック板41 〜43 に形成される奥孔39oとで構成される。
【0030】
ポンプポート25aは、ポンプシリンダ孔25の奥孔25o内周面に形成される軸方向溝25a1 と、第3ブロック板43 の、第2ブロック板42 側分割面に形成されて奥孔25oから前述のように90°ずれた位置の第1弁孔26に達する曲線溝25a2 とで構成される。またモータポート39aも同様に、モータシリンダ孔39の奥孔39o内周面に形成される軸方向溝39a1 と、第3ブロック板43 の、第4ブロック板44 側分割面に形成されて、奥孔39oから前述のように90°ずれた位置の第2弁孔40に達する曲線溝39a2 とで構成される。
【0031】
高圧油路47は第2ブロック板42 と出力軸2との嵌合面間に、また低圧油路48は第4ブロック板44 と出力軸2との嵌合面間にそれぞれ形成される。
【0032】
また、第1ブロック板41 〜第5ブロック板45 にかけて一連の位置決め孔55が少なくとも2本、図示例ではシリンダブロック軸線X周りに90°間隔を置いて4本形成され、それらに位置決めピン56を嵌入することにより、各ブロック板41 〜45 のポンプ、モータシリンダ孔25,39、第1、第2弁孔26,40をそれぞれ一直線上に整列させる。而して、上記位置決め孔55及び位置決めピン56は位置決め手段58を構成する。
【0033】
第1〜第5ブロック板41 〜45 の各外周縁には面取りが施され、これらの面取りは、第1〜第5ブロック板41 〜45 を重ねたとき、それらの外周に各分割面に臨む環状溝59を形成する。
【0034】
而して、位置決めピン56により位置決めされながら重ねられた第1〜第5ブロック板41 〜45 を相互に結合するに当たり、上記環状溝59に線状のロー材mを環状に巻き付け、第1〜第5ブロック板41 〜45 を相互に圧着しながらロー材mを加熱、溶融させれば、溶融したロー材が毛細管現象により各ブロック板41 〜45 の分割面間のみならず、位置決めピン56及び位置決め孔55間にも浸透して、その後の固化により各部を結合することができる。こうして、ブロック板41 〜45 は相互に結合されると共に、位置決めピン56とも結合されるので、位置決めピン56が連結部材の機能を果たすことになり、大なる結合力を発揮することができる。また第1〜第5ブロック板41 〜45 を相互に圧着することにより、ブロック板相互間隙が極微細なものとなり、毛細管現象によるロー材の各部への浸透を良好にすることができる。
【0035】
また上記のように、環状溝69にセットされたロー材mは、その溶融時、該環状溝69に規制されて、無用な箇所への流出を回避することができるから、高価なロー材mの歩留りが極めてよい。
【0036】
尚、図5に示すように、上記ロー付けの前に、位置決めピン56の両端56a,56aをかしめて、第1〜第5ブロック板41 〜45 相互に圧接力を加えると共に、該ピン56の位置決め孔55からの抜け止めをしておくことは、第1〜第5ブロック板41 〜45 の積層状態を保持する特別の治具を用いることなく、良好なロー付け状態を得る上に有効である。
【0037】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0038】
いま、モータ斜板19aを或る傾斜角度に保持した状態で、図示しないエンジンの動力により、入力ギヤ5aを介して第1斜板組立体9を回転させれば、前述のように、ポンプ斜板9a及び第1弁斜板9bとリテーナ板32との協働によりポンププランジャ27及び第1分配弁28に軸方向の往復動を強制的且つ各タイミング良く与えることができ、したがって、それらの適正な往復動は高速運転時でも保証される。
【0039】
而して、図9に示すように、ポンププランジャ27が、ポンプシリンダ孔25内の油室を拡大していく吸入領域Sを通過する間は、第1分配弁28がポンプポート25aを低圧油路48に連通するので、低圧油路48の作動油が上記ポンプシリンダ孔25内の油室に吸入される。またポンププランジャ27が、ポンプシリンダ孔25内の油室を縮小していく吐出領域Dを通過する間は、第1分配弁28がポンプポート25aを高圧油路47に連通するので、上記ポンプシリンダ孔25内の高圧の作動油が高圧油路47に吐出される。
【0040】
一方、油圧モータMでは、図10に示すように、モータプランジャ41が、モータシリンダ孔39内の油室を拡大していく膨張領域Exに存する間は、第2分配弁42がモータポート39aを高圧油路47に連通し、またモータプランジャ41が、モータシリンダ孔39内の油室を縮小していく収縮領域Reに存する間は、第2分配弁42がモータポート39aを低圧油路48に連通するので、先刻のように、ポンプシリンダ孔25から高圧油路47に吐出された高圧の作動油は、膨張領域Exに存するモータプランジャ41のシリンダ孔39に供給されて該モータプランジャ41に推力を与える。また収縮領域Reに存するモータプランジャ41は、収縮行程の進行に応じて、モータシリンダ孔39から低圧油路48へ作動油を排出していく。モータシリンダ孔39内の高圧の作動油により推力を受けたモータプランジャ41は、モータ斜板19aを押圧して、それに回転トルクを及ぼし、その反力トルクによりシリンダブロック4が入力ギヤ5aと同方向へ回転し、その回転トルクは出力軸2から外部の負荷へと伝達される。こゝにおいても、モータ斜板19a及び第2弁斜板19bとリテーナ板45との協働により、モータプランジャ41及び第2分配弁42の往復動は、強制的且つタイミング良く行われる。
【0041】
このような通常運転時、シリンダブロック4各部からの油圧の漏洩により、低圧油路48が減圧すれば、第1チェック弁53が開いて、補給油路50から低圧油路48に作動油が補給される。またエンジンブレーキ時には高圧油路47が低圧、低圧油路48が高圧となるから、このときの油圧の漏洩分の補給は、第2チェック弁54を通して行われる。
【0042】
而して、油圧ポンプPは、ポンプ斜板9aの傾斜角度が固定の固定容量型であるのに対し、油圧モータMは、モータ斜板19aの傾斜角度が可変の可変容量型であるから、モータ斜板19aの傾斜角度を変えて油圧モータMの容量を増減することにより、入力部材5及び出力軸2間の変速比を変えることができる。即ち、モータ斜板19aを、油圧モータMの容量を最大にする最大傾斜位置(シリンダブロック軸線Xに対する垂直面から最大に傾斜した位置)から、該容量をゼロにする直立位置(シリンダブロック軸線Xに対して垂直となる位置)まで変位させることにより、変速比をローレシオからトップレシオの1まで制御し得る。
【0043】
しかも、モータ斜板19aは、これと同一斜面に配置される第2弁斜板19bとで第2斜板組立体19を構成しているので、第2弁斜板19bはモータ斜板19aと一体となって変位する。したがってモータ斜板19aが直立位置までくると、第2弁斜板19bも直立することになるが、第2弁斜板19bの直立によれば、図11に示すように、第2分配弁42がそのストローク中点に保持されてモータポート39aを高圧及び低圧油路47,48の何れとも遮断し続けるようになり、油圧ポンプP及び油圧モータM間の連通油路を遮断した、所謂ロックアップ状態となる。
【0044】
その結果、油圧ポンプPに連通する油路容積が半減して、該油路の作動油の非圧縮性が向上し(該油路容積の減少に伴い作動油中に含まれる気泡の総量が半減することによる)、また油圧モータMでの油漏れが伝動効率に影響しなくなることにより、入力部材5及び出力軸2間の相対回転を極少に抑えることができて、トップレシオの状態での伝動効率を高めることができる。しかも、第2分配弁42をこのように作動するものは、モータ斜板19aと一体の第2弁斜板19bであるから、第2弁斜板19bを作動する専用の連動機構は不要であり、構造の簡素化に寄与し得る。
【0045】
このような無段変速機Tにおいて、環状の高圧油路47及び低圧油路48をシリンダブロック4の軸方向に並設し、何れも上記両油路47,48と交差してシリンダブロック軸線Xと平行に延びるようにシリンダブロック4に設けられる多数の第1弁孔26及び第2弁孔40に多数の第1分配弁26及び第2分配弁42をそれぞれ摺動自在に嵌合したので、ポンプシリンダ孔、モータシリンダ孔、第1弁孔26及び第2弁孔40が全てシリンダブロック軸線Xと平行に配置されることになり、これらを平行多軸工具をもってシリンダブロック4に容易且つ迅速に加工することが可能である。しかも、シリンダブロック4との相対回転に伴い第1及び第2分配弁26,42をそれぞれ作動する第1及び第2弁斜板9b,19bが、ポンプ及びモータ斜板9a,19aと同様に、シリンダブロックの両端側に配置されるので、シリンダブロック4の外周に配設される部材が少なくなり、無段変速機の径方向のコンパクト化に大いに寄与し得る。
【0046】
また、シリンダブロック4には、第1ピッチ円C1 上でポンププランジャ27及びモータプランジャ41を配列し、第1ピッチ円C1 より小径の第2ピッチ円C2 上で、上記各プランジャ27,41より小径の第1及び第2分配弁28,42を配列したので、各プランジャ27,41群の半径方向内側のデッドスペースに各分配弁28,42群が配置されることになり、したがって、第1ピッチ円C1 を充分な大きさに設定して、斜板9a,19aにより各プランジャ17,41に与える往復動ストロークを充分に確保しても、各分配弁28,42群の存在がシリンダブロック4を大径化させることはなく、無段変速機Tの径方向のコンパクト化を図ることができる。また各分配弁28,42は、各プランジャ27,41より小径に形成してあるから、各プランジャ27,41群の内側でも各分配弁28,42群を容易に配置することができる。
【0047】
しかも、ポンププランジャ27及びモータプランジャ41を同一の第1ピッチ円C1 上で交互に配列したので、シリンダブロック4を大径化することなく、その軸方向寸法を減少することができ、これにより無段変速機Tの径方向及び軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0048】
また、高圧油路47及び低圧油路48を、ポンププランジャ27群及びモータプランジャ41群の内側に配置したので、高、低圧油路47,48を極力短く形成でき、これにより、これら油路内の作動油中に介在する気泡の絶対量を少なくして、油圧伝動効率の向上を図ることができる。
【0049】
また、第1斜板組立体9には、同一斜面上に配置されるポンプ斜板9a及び第1弁斜板9bを一体に設け、第2斜板組立体19には、同一斜面上に配置されるモータ斜板19a及び第2弁斜板19bを一体に設けたので、複数の斜板による無段変速機Tの軸方向寸法の増加を抑えることができる。しかも、ポンプ斜板9a及び第1斜板9bを第1斜板組立体9に、モータ斜板19a及び第2弁斜板19bを第2斜板組立体19にそれぞれ一挙に加工することができ、量産性が高い。
【0050】
また、各分配弁28,42は、その往復動ストロークの中点で各ポート25a,39aを低圧油路48及び高圧油路47の何れとも遮断するするものであるが、各ポンプシリンダ孔25のポンプポート25aを、それに対してシリンダブロック4の反回転方向へ90°位相がずれた第1弁孔26に接続し、また各モータシリンダ孔39のモータポート39aを、それに対してシリンダブロック4の反回転方向へ90°位相がずれた第2弁孔40に接続したので、ポンプ斜板9aと第1弁斜板9b、モータ斜板19aと第2弁斜板19bの各同一傾斜配置によるも、各プランジャ27,41が往動限又は復動限にきたとき、それに対応するポート25a,39aは低圧油路48及び高圧油路47の何れとも遮断されることになり、したがって、各プランジャ27,41が次いで復動又は往動に動きを変えるとき、上記ポート25a,39aの低圧油路48又は高圧油路47への連通切換えを的確に行うことができる。
【0051】
また、シリンダブロック4は、その軸線Xと直交する分割面で分割され、プレス成形された第1〜第5ブロック板41 〜45 を相互にロー付けして構成され、その際、ポンプシリンダ孔25の入口側半部に当たる入口孔25iを第1、第2ブロック板41 ,42 に、その奥側半部に当たる、入口孔25iより大径の奥孔25oを第3〜第5ブロック板43 〜45 にそれぞれ形成し、またモータシリンダ孔39の入口側半部に当たる入口孔39iを第4、第5ブロック板44 ,45 に、その奥側半部に当たる、入口孔39iより大径の奥孔39oを第1〜第3ブロック板41 〜43 にそれぞれ形成したので、各ブロック板41 〜45 に形成される多数の入口孔25i,39i若しくは奥孔25o,39oは比較的浅く、これら多数の孔を有するブロック板41 〜45 のプレス加工による量産は容易に行うことができ、したがって、これらブロック板41 〜45 相互を、位置決め手段58により位置決めしながら結合することにより、シリンダブロック4を能率良く製造することができる。
【0052】
しかも多少の加工誤差や組立誤差があっても、その誤差を入口孔25i,39iと、それより大径の奥孔25o,39oとの直径差に吸収させることができるから、各プランジャ27,41の摺動に支障を来すこともないと共に、奥孔25o,39oの加工精度をラフにして量産性の更なる向上を図ることができる。
【0053】
その上、各奥孔25o,39oにおいては、各プランジャ27,41の内端面のみならず外周面が臨む油室が形成されるので、該油室内の作動油により各プランジャ27,41の摺動面を常に良好に潤滑し、その円滑な作動を保証することができる。
【0054】
また、ポンプポート25a及びモータポート39aの曲線溝25a2 ,39a2 は、形状が比較的複雑であるが、これら曲線溝25a2 ,39a2 は第3ブロック板43 の分割面に形成されるので、第3ブロック板43 のプレス加工時、それら曲線溝25a2 ,39a2 を一挙に形成することが可能である。
【0055】
本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0056】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、斜板式無段変速機において、モータポートを高圧油路及び低圧油路に交互に連通切換えする多数の第2分配弁をシリンダブロック軸線と平行にしてシリンダブロックに配設し、シリンダブロックとの相対回転に伴いこれら第2分配弁を往復動させる弁斜板をモータ斜板に同一斜面上で一体に結合し、各モータシリンダ孔のモータポートを、これが該モータシリンダ孔に対してシリンダブロックの周方向へ位相が90°ずれた位置で第2分配弁により切換え制御されるように形成し、弁斜板がモータ斜板と共に直立位置を占めるときは、第2分配弁をストローク中点に留めるようにしたので、モータ斜板の直立時には、特別な連動機構を用いることなく、同時に弁斜板を直立させて第2分配弁をストローク中点に保持するロックアップ状態を自動的に得ることができ、したがってロックアップ機能を有する斜板式無段変速機の構造の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る無段変速機の縦断側面図。
【図2】図1の2−2線断面図。
【図3】図1の要部拡大図。
【図4】図2の4−4線断面図。
【図5】図4の一部変形例を示す断面図。
【図6】図1の5−5線断面図。
【図7】図1の6−6線断面図。
【図8】シリンダブロックの分解斜視図。
【図9】ポンププランジャ及び第1分配弁の作動タイミング図。
【図10】モータプランジャ及び第2分配弁の作動タイミング図。
【図11】モータ斜板直立時の作用説明図。
【符号の説明】
T・・・・・斜板式無段変速機
X・・・・・シリンダブロック軸線
4・・・・・シリンダブロック
9a・・・・ポンプ斜板
19a・・・モータ斜板
19b・・・弁斜板(第2弁斜板)
25・・・・ポンプシリンダ孔
25a・・・ポンプポート
27・・・・ポンププランジャ
28・・・・第1分配弁
39・・・・モータシリンダ孔
39a・・・モータポート
41・・・・モータプランジャ
42・・・・第2分配弁
47・・・・高圧油路
48・・・・低圧油路

Claims (1)

  1. シリンダブロック軸線(X)に平行且つ該軸線(X)を囲む環状に配列された多数のポンプシリンダ孔(25)及びモータシリンダ孔(39)、並びにポンプシリンダ孔(25)に個別に連なる多数のポンプポート(25a)及びモータシリンダ孔(39)に個別に連なる多数のモータポート(39a)を有するシリンダブロック(4)と、多数のポンプシリンダ孔(25)に摺動自在に嵌合する多数のポンププランジャ(27)と、多数のモータシリンダ孔(39)に摺動自在に嵌合する多数のモータプランジャ(41)と、シリンダブロック(4)の一端面に対向して配設され、それとの相対回転に伴いポンププランジャ(27)に往復動を与えるポンプ斜板(9a)と、シリンダブロック(4)の他端面に対向して配設され、それとの相対回転に伴いモータプランジャ(41)に往復動を与えると共に、その往復ストロークをゼロにする、前記軸線(X)と直交する直立位置及び、その往復ストロークを最大にする最大傾斜位置間を傾動し得るモータ斜板(19a)と、前記軸線(X)を囲む環状の高圧油路(47)及び低圧油路(48)と、シリンダブロック(4)に設けられ、ポンプポート(25a)及びモータポート(39a)をそれぞれ高圧油路(47)及び低圧油路(48)の何れとも遮断するストローク中点を経て両油路(47,48)に交互に連通切換えするように往復動するスプール型の多数の第1分配弁(28)及び第2分配弁(42)とを備えた、斜板式無段変速機において、
    モータポート(39a)を高圧油路(47)及び低圧油路(48)に交互に連通切換えする多数の第2分配弁(42)を前記軸線(X)と平行にしてシリンダブロック(4)に配設し、シリンダブロック(4)との相対回転に伴いこれら第2分配弁(42)を往復動させる弁斜板(19b)をモータ斜板(19a)に同一斜面上で一体に結合し、各モータシリンダ孔(39)のモータポート(39a)を、これが該モータシリンダ孔(39)に対してシリンダブロック(4)の周方向へ位相が90°ずれた位置で第2分配弁(42)により切換え制御されるように形成し、弁斜板(19b)がモータ斜板(19a)と共に直立位置を占めるときは、第2分配弁(42)をストローク中点に留めるようにしたことを特徴とする、斜板式無段変速機。
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