JP4520073B2 - 油圧式無段変速装置及び作業機車両の変速装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業機械や車両等、各種の産業分野で広く利用可能な油圧式無段変速装置及び作業機車両の変速装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、流体ポンプ/モータを用いた無段変速装置としては、流体圧伝動装置(HST)が知られている。ところが、この装置は無段変速性に優れてはいるものの、伝達効率の点では必ずしも良くないことが知られており、速度範囲も満足のいくものではない。伝達効率が低くなる理由は、一般にHSTは油圧ポンプ(流体ポンプ)及び油圧モータ(流体モータ)が別体に設けられており、作動油の流れを介してのみ駆動力を伝達するのでそれぞれの弁板部分の油漏れ、及び摺動トルクが大きいためである。
【0003】
図14は、HSTを無段変速装置として使用した例を示している。HSTを構成している可変容量油圧ポンプP1と、固定容量油圧モータM1との間には、油圧閉回路を形成している。すなわち、可変容量油圧ポンプP1から吐出された作動油は固定容量油圧モータM1に送出され、作動油の圧力により、固定容量油圧モータM1を作動した後、油圧閉回路を介して再度、可変容量油圧ポンプP1に戻るようにされている。エンジンEGの出力軸は前記可変容量油圧ポンプP1に連結され、前記固定容量油圧モータM1の出力軸と、図示しない終減速装置との間には、副変速機構F1を備えている。副変速機構F1は図14では、1速副変速段、2速副変速段、3速副変速段用のギヤ列G1,G2,G3をそれぞれ備えており、図示しないシフトレバーにより、手動でシフトできるようにされている。
【0004】
図15は図14の無段変速装置における可変容量油圧ポンプP1の行程容積(1回転当たり、可変容量油圧ポンプP1の1回転当たりの作動油授受量をいう。)と、副変速機構F1の出力軸における出力回転数Nout(単位時間当りの出力回転数である。以下他の出力回転数も同じ)の特性図である。この特性図によれば、油圧ポンプP1の行程容積がVMmax〜−VMmaxまで変化すると、各副変速段においては、図15に示す出力回転数がそれぞれ得られる。なお、出力回転数Noutは0を境として、+側が前進走行の場合、−側が後進走行の場合を意味している。又、行程容積の+,−は油圧閉回路内における作動油の流れる向きを意味している。VMmaxは最大行程容積を示す。
【0005】
前記HSTの使用例以外に、油圧式無段変速装置の例としては、図16に示すものも知られている。この構成は、可変容量油圧ポンプP2と、可変容量油圧モータM2とから構成されており、可変容量油圧ポンプP2と、可変容量油圧モータM2との間には、油圧閉回路を形成している。すなわち、可変容量油圧ポンプP2から吐出された作動油は可変容量油圧モータM2に圧送され、作動油により、可変容量油圧モータM2を作動した後、油圧閉回路を介して再度、可変容量油圧ポンプP2に戻るようにされている。エンジンEGの出力軸は前記可変容量油圧ポンプP2に連結され、前記可変容量油圧モータM2の出力軸と、図示しない終減速装置との間には、減速機構Gaが設けられている。そして、この例では、図示しないシフトレバーの切り替えにより、前後進の切り替えができるようにされている。
【0006】
図17は、図16の無段変速装置における可変容量油圧ポンプP2,可変容量油圧モータM2の1回転当たりのポンプ/モータ行程容積と、減速機構Gaの出力軸における出力回転数Noutの特性図である。
【0007】
この特性図は、出力回転数Noutが0のときは、可変容量油圧ポンプP2の行程容積VP=0であり、可変容量油圧モータM2の行程容積はVMmax(一定)であることを示している。なお、この場合、VP=0であるため、作動油が吐出されないことから、回転力は伝わらず、従って、Noutが0となる。
【0008】
又、出力回転数Noutが0からNEまでの間は、可変容量油圧ポンプP1の行程容積VPを、0からVMmaxにリニアに変化させ、一方、可変容量油圧モータM2の行程容積VMは、VMmaxで一定である。
【0009】
又、同様に出力回転数Noutが0から−NEまでの間は、可変容量油圧ポンプP1の行程容積を、0から−VMmaxにリニアに変化させ、一方、可変容量油圧モータM2の行程容積VMはVMmaxで一定である。
【0010】
この場合、出力回転数Noutが−NEからNEまでの間は、可変容量油圧ポンプP2が吐出した油量(1回転当たりの)VP=可変容量油圧モータM2が吐出(返送)する油量(1回転当たり)VMとなる。従って、VPに比例して速度(出力回転数)が大きくなる。
【0011】
そして、出力回転数NoutがNEから2NEまでの間では、可変容量油圧ポンプP2の行程容積を、VMmaxに固定し、一方、可変容量油圧モータM2の行程容積をVMmaxから0.5VMmaxにリニアに変化させている。
【0012】
又、同様に出力回転数Noutが−NEから−2NEまでの間では、可変容量油圧ポンプP2の行程容積を、−VMmaxに固定し、一方、可変容量油圧モータM2の行程容積を−VMmaxから−0.5VMmaxにリニアに変化させている。
【0013】
この場合、可変容量油圧ポンプP2の回転数をNPとし、可変容量油圧モータM2の回転数をNMとすると、
NP×VMmax=NM×0.5VMmax
であるので、
NM=2NP
となり、可変容量油圧モータM2は可変容量油圧ポンプP2の2倍回転する。
【0014】
この特性図によれば、ポンプの行程容積が図17に示すように変化すると、−2NEから2NEまでの出力回転数がそれぞれ得られる。
上記図14に示すHSTの無段変速装置、あるいは図16に示す無段変速装置の全効率(全伝達効率)について図18を参照して説明する。HSTの場合、1速副変速段(図中、HST副1(1))、2速副変速段(図中、HST副2(2))、3速副変速段(図中、HST副3(3))は図18に示すように、油漏れのため、全効率が各変速段のいずれにおいても、0.8程度が最も良い値となる。
【0015】
一方、図16に示す無段変速装置(図18においては、(4)で示す。)においても、同じく油漏れのため、全効率は0.8程度が最も良い値となる。このように図14,16で表されるような油圧無断変速装置においては、ある出力回転数を得る為に、図15,17に示すように油圧閉回路で作動油の循環が必要となり、これが為に油漏れが生じ、効率が低下する。又、作動油の循環のみで出力回転数を得る構成なので、高速回転の場合には、必然的に大油量を必要とし、装置の大型化を招いていた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来は、その全効率が最も良い値として、0.8程度のものしか、得られない問題があった。
【0017】
さらに、HSTからなる無段変速装置や、図16に示す無段変速装置をトラクタや、ローダなどの作業機車両に搭載した場合、もともと、作業機車両では、後進走行域や、高速走行域を主な作業用領域(主作業速度域)としてはおらず、主作業速度域は、図19に示すような走行域である。図19は、作業機車両に要求される負荷トルクを縦軸に、そのときに必要とされる走行速度(速度)を横軸にして、特に農作業機車両の作業域分布を示している。特に、走行速度が前進域で、特に数km/hから10km/hの範囲内での作業域では、多くの作業機車両の主作業速度域が集中していることがわかる。
【0018】
この作業域において、従来のHSTからなる無段変速装置を搭載した車両では、出力回転数が0のときを中心にして、前進走行、後進走行が行われる。図18を参照すると、車速0km/hを中心にした場合、HSTの場合、HST副1(1)では、前進走行の場合、せいぜい数km/hまでしか賄えず、結局HST副2(2)へのシフト切替を行うことになる。しかし、このHST副2(2)のシフト切替によって図18に示す領域(数km/h〜10km/h)の範囲では、全効率が0.8よりも落ちた状態で、使用せざるを得ないものとなる。すなわち、全効率の観点からは好ましい使用状態ではない。
【0019】
又、このような全効率が低いこと、さらに出力回転数を得る為には必ず作動油の循環が必要であることを前提として、解決するには、HSTや、図16に示す無段変速装置(図18では(4)で示している)のポンプ、モータの容量全体を大きくすることも考えられるが、無段変速装置全体も大型化してしまう問題がある。
【0020】
又、図16に示す無段変速装置においても、図18に示すように数km/h〜10km/hの範囲では、全効率が0.5〜0.7よりも落ちた状態で、使用せざるを得ないものとなり、全効率の観点からは好ましい使用状態ではない。
【0021】
本発明の目的は、可変容量形の第1油圧装置からの吐出量が0のとき、第2油圧装置を介して、油圧式無段変速機の入力側と出力側とを直結することによって、この直結時を中心として増速及び減速の両方に広範囲の無段変速を得ることができ、従って、作業域では全効率が高い油圧式無段変速装置を提供することを目的としている。
【0022】
又、本発明の目的は、可変容量形油圧装置からの吐出量が0のとき、可変容量形の差動油圧装置を介して、油圧式無段変速機の入力側と出力側とを直結することによって、この直結時を中心として増速及び減速の両方に広範囲の無段変速を得ることができ、作業域では全効率が高い作業機車両の変速装置を提供することを目的としている。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、第1プランジャ及びプランジャ当接部を備え、同当接部によって第1プランジャの突出入を行う可変容量形の第1油圧装置と、第2プランジャを備え、第2プランジャの当接によって入力回転に対して相対又は同期回転のいずれかを行う出力回転部を設けた第2油圧装置とを組合せ、双方のプランジャを収納するシリンダブロックを共有し、同シリンダブロックを入力回転にて軸心周りに回転する構成とし、同シリンダブロックに第1プランジャ孔及び第2プランジャ孔を設け、第1プランジャを第1プランジャ孔に収納して第1プランジャ室を形成し、第2プランジャを第2プランジャ孔に収納して第2プランジャ室を形成し、第1プランジャ室と第2プランジャ室間で作動油が循環する油圧閉回路を設け、同回路に第1油室及び第2油室を設け、シリンダブロックが軸心周りに1回転する間に第1プランジャ室が第1油室と連通する区間及び第2油室と連通する区間を有し,出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に第2プランジャ室が第1油室と連通する区間及び第2油室と連通する区間を有する構成とした油圧式無段変速装置であって、第1油圧装置の行程容積が第2油圧装置の行程容積を上回る範囲を有する構成を備えた油圧式無段変速装置において、シリンダブロックが軸心周りに1回転する間に第1プランジャ室が第1油室と連通する区間と比較して、出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に第2プランジャ室が第1油室と連通する区間を小さくし、又は、シリンダブロックが軸心周りに1回転する間に第1プランジャ室が第2油室と連通する区間と比較して、出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に第2プランジャ室が第2油室と連通する区間を小さくし、第1分配弁を設け、第1分配弁に往復動を付与する第1付与部材を設け、同部材がシリンダブロックが軸心周りに1回転する間に同分配弁に軸線方向の往復動を付与し、同分配弁の軸線方向の往復動にて第1プランジャ室が第1油室及び第2油室と連通する構成とし、第2分配弁を設け、第2分配弁に往復動を付与する第2付与部材を設け、同部材が出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に同分配弁に軸線方向の往復動を付与し、同分配弁の軸線方向の往復動にて第2プランジャ室が第1油室及び第2油室と連通する構成とし、第2付与部材が軸線方向に変位され、変位した位置で保持される構成としたことを特徴とする油圧式無段変速装置を要旨とするものである。
【0024】
本明細書では、第1プランジャ室とは、第1油圧装置のプランジャとこれを収納するシリンダブロックのプランジャ孔とで形成される空間をいう。
又、第2プランジャ室とは、第2油圧装置のプランジャとこれらを収納するシリンダブロックのプランジャ孔とで形成される空間をいう。
【0025】
又、第1油室は第1プランジャ室及び第2プランジャ室と作動油の授受を行う油室をいい、第2油室は第1プランジャ室及び第2プランジャ室と作動油の授受を行う第1油室とは、別個の油室をいう。油圧閉回路は第1プランジャ室,第1油室,第2プランジャ室,第2油室の四つの油室を少なくとも含み、これらの油室等で形成される作動油の循環路をいう。
【0026】
又、第1油圧装置の行程容積は、シリンダブロックが軸心周りに1回転する間(1行程の間)に、第1油圧装置のプランジャ室が第1油室及び第2油室と授受する作動油量をいう。第2油圧装置の行程容積は、出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間(1行程の間)に、第2油圧装置のプランジャ室が第1油室及び第2油室と授受する作動油量をいう。
【0030】
請求項の発明は、請求項1に記載の油圧式無段変速装置を用いた作業機車両の変速装置であって、作動油が油圧閉回路を循環しない時の出力回転部の回転速度が作業機車両の主作業速度域に含まれる構成したことを特徴とする作業機車両の変速装置を要旨とするものである。
【0031】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、第1油圧装置と第2油圧装置のシリンダブロックを共有し、シリンダブロック内に第1油圧装置と第2油圧装置との間を作動油が循環する油圧閉回路を形成している。又、入力回転によりシリンダブロックはその軸心周りで回転する。
【0032】
第1油圧装置は可変容量形であるため、プランジャ当接部が第1プランジャに対して突出入作用を付与しない場合がある。すなわち、油圧閉回路において、作動油が循環しない場合には、第2油圧装置のプランジャは、出力回転部に対してストローク作動をしない状態で当接している。このため、出力回転部はシリンダブロックと一体に回転する。このとき、シリンダブロックの回転(数)は入力回転(数)と同じであるため、出力回転部は入力回転と同期回転する。
【0033】
又、プランジャ当接部が第1油圧装置の第1プランジャに対して突出入の作用を付与した場合、シリンダブロックが軸心周りに1回転する間に、第1プランジャ室内の作動油は、油圧閉回路を循環する。この循環時に第2油圧装置の第2プランジャ室に作動油が吸入されると、第2プランジャが作動油により突出入し、出力回転部に対して回転を付与する。
【0034】
そして、第1油圧装置の行程容積が第2油圧装置の行程容積を上回る範囲では、出力回転部は、第2油圧装置の第2プランジャによって入力回転よりも大きな回転速度が与えられるので、出力回転部が与えられる回転が入力回転と同じ向きの場合は、出力回転として入力回転の倍速を超える回転を本装置は得る。
【0035】
又、出力回転部に与えられる回転が入力回転と逆向きの場合は、出力回転として入力回転とは逆向きの回転を本装置は得ることができる。
請求項1に記載の発明によれば、出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に、第2プランジャ室が第1油室と連通する区間を、第1プランジャ室が第1油室と連通する区間よりも小さくする。こうすると、油圧式無段変速装置は、第2油圧装置の行程容積が第1油圧装置100の行程容積より小さくなる。
【0036】
それに伴って、第1油圧装置が1行程の間に第1油室と授受する作動油量と比較して、第2油圧装置が1行程の間に第1油室と授受する作動油量が少なくなる。この結果、1行程の間における第2油圧装置の第2プランジャの突出入が速くなり出力回転部はそれに応じて回転する。
【0037】
或いは、請求項に記載の発明によれば、出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に、第2プランジャ室が第2油室と連通する区間を、シリンダブロックが軸心周りに1回転する間に第1プランジャ室が第2油室と連通する区間よりも、小さくする。こうすると、油圧式無段変速装置は、第2油圧装置の行程容積が第1油圧装置100の行程容積より小さくなる。
【0038】
それに伴って、第1油圧装置が1行程の間に第2油室と授受する作動油量と比較して、第2油圧装置が1行程の間に第2油室と授受する作動油量が少なくなる。この結果、1行程の間における第2油圧装置の第2プランジャの突出入が速くなり出力回転部はそれに応じて回転する。
【0039】
さらに、請求項に記載の発明によれば、第1付与部材は、シリンダブロックが軸心周りに1回転する間に第1分配弁に軸線方向の往復動を付与し、同分配弁の軸線方向の往復動にて第1プランジャ室が第1油室及び第2油室と連通する。
【0040】
一方、第2付与部材は、出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に、第2分配弁に軸線方向の往復動を付与し、同分配弁の軸線方向の往復動にて第2プランジャ室が第1油室及び第2油室と連通する。この第2付与部材は軸線方向に変位され、変位した位置で保持される。
【0041】
請求項に記載の発明によれば、請求項1に記載の油圧式無段変速装置を、作業機車両の変速装置に採用し、作動油が油圧閉回路を循環しない時の出力回転部の回転速度が作業機車両の主作業速度域に含まれるようにする。この結果、作業機車両の変速装置において、請求項1に記載の作用を得る。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を作業機として農作業機車両の走行用に使用される油圧式無段変速装置に具体化した実施形態を、図1〜図13を参照して詳細に説明する。
【0043】
図1は油圧式無段変速装置(以下、無段変速装置という)Tの断面図であり、図4のE−E線断面図である。図2は同じく無段変速装置Tの第1油圧装置側の要部断面図、図3は同じく無段変速装置Tの第2油圧装置側の要部断面図、図4は図1のA−A線断面図、図5は図1のB−B線断面図である。
【0044】
図1に示すように無段変速装置Tは、農作業機車両のパワーユニットのケース11内に収納されている。無段変速装置Tは、第1油圧装置100と、同第1油圧装置100との間に油圧閉回路を形成する第2油圧装置200とから構成されている。
【0045】
無段変速装置Tの入力軸12は図9に示すようにエンジンEGのクランク軸に連結され、出力側である後記するヨーク37に連結された出力ギヤ39は図示しない終減速装置に連結された入力ギヤ10に噛合されている。
【0046】
前記第1油圧装置100は、可変容量形の油圧装置に相当し、第2油圧装置200は差動油圧装置に相当する。
無段変速装置Tの入力軸12の一端は、ケース11に設けた支持板13に対して軸受部14を介して回転自在に支持され、他端はケース11側壁に対してラジアルベアリング15を介して回転自在に支持されており、PTO軸とされている。前記支持板13の内側面には、ホルダ16が固定されている。前記支持板13及びホルダ16には前記入力軸12が貫通する貫通孔13a,16aが形成され、貫通孔13a,16aの相対する部位は、拡径されて、軸受収納孔18が形成されている。
【0047】
前記軸受収納孔18内において、入力軸12は円錐コロ軸受19にて支持されている。又、円錐コロ軸受19に隣接して、入力軸12には大径部20aと小径部20bとを備えたスリーブ20が挿通されており、前記小径部20bは円錐コロ軸受19の内輪19b内に挿入されている。そして、入力軸12に螺合したナット21を外方から内方(図1において、右側方)へ締め付けることにより、スリーブ20を介して、円錐コロ軸受19の外輪19aは、軸受収納孔18内における貫通孔16aの拡径した段部底面及び周面、並びに貫通孔13aの拡径部内周面に当接されている。又、スリーブ20の小径部20b端面は入力軸12の周面に係合した係止リング22に対して当接係止されている。前記貫通孔13aの小径部には、シール部材23が配置されている。
【0048】
前記軸受部14は、円錐コロ軸受19、スリーブ20及びナット21により構成されている。
第1油圧装置100は、入力軸12、同入力軸12に対して圧入嵌合により一体に連結されたシリンダブロック24、シリンダブロック24に摺動自在に配置された複数のプランジャ34、及び前記プランジャ34に対して当接する斜板面26を含むクレイドル27を備えている。前記クレイドル27は、ホルダ16に対しその背面側にて当接支持されているとともに、前記入力軸12が貫通されている。なお、図1及び図2においては、クレイドル27とホルダ16とは説明の便宜上離間して図示されている。
【0049】
前記斜板面26は、本発明の可変容量形の第1油圧装置のプランジャ当接部に相当する。又、プランジャ34は、第1プランジャに相当する。
図2に示すようにクレイドル27とホルダ16の当接する対向面E1,E2は、シリンダブロック24の軸線Oと直交するトラニオン軸線TR1を中心とした半円筒面を備えている。この結果、クレイドル27はトラニオン軸線TR1を中心とした傾動が可能とされている。ここで、斜板面26と直交するとともに、トラニオン軸線TR1を通る線α,β,γを想定し、これらの線α,β,γ(以下、単にα,β,γという)と軸線Oとがなす角をθとする。なお、βは軸線Oと一致している。
【0050】
図1及び図2においては、斜板面26はその位置に応じて、前記α、β、γを付して区別して図示している。βは斜板面26が直立位置に位置したときの位置である。又、α及びγは、斜板面26が直立位置に位置したときを基準に互いに正負(図1、図2において、時計回り方向を正とし、反時計回り方向を負とする。)の反対方向に等角度θで傾動した最大傾動角度の位置である。
【0051】
本実施形態では図10の出力回転数Nout=NEを境に、Nout>NEの時に図1,2に示したように負側に傾動し、Nout<NEの時に、正側に傾動する。
なお、図1及び図2に示された斜板面26は、α位置に位置したときの最大傾動角度で傾動した状態を示している。
【0052】
以下の説明では、α、β、γ位置は、それぞれ斜板面26における負の最大傾動角度位置、直立位置及び正の最大傾動角度位置という。
シリンダブロック24には、その回転中心の回りに複数のシリンダ孔33が環状に配列され、軸線Oと平行に延設されている。同シリンダ孔33は、前記ホルダ16側に開口が形成されている。各シリンダ孔33には、プランジャ34が摺動自在に配置されている。本実施形態では、シリンダ孔33に収納したプランジャ34とシリンダ孔33とにより形成される空間が第1プランジャ室R1に相当する。プランジャ34の先端には、鋼球34aが転動自在に嵌合されており、プランジャ34は鋼球34a及び鋼球34aを取着したシュー35を介して斜板面26に当接されている。傾斜状態の斜板面26はシリンダブロック24の回転に伴ってプランジャ34を往復作動させ、吸入、吐出行程の作用を付与する。
【0053】
前記シリンダ孔33は、第1プランジャ孔に相当する。
第2油圧装置200は、前記シリンダブロック24に摺動自在に配置された複数のプランジャ44、及び前記プランジャ44に対して当接する回転斜板面36をもつ筒状のヨーク37とを備えている。前記入力軸12の第2油圧装置200側の端部には、ボス板40がベアリング38を介して回転自在に支持されている。前記ボス板40は略円板状に形成されている。ボス板40のボス部40aには出力ギヤ39が固定されている。
【0054】
前記プランジャ44は、第2プランジャに相当し、ヨーク37は出力回転部に相当する。
前記ヨーク37は前記ボス板40に対してボルト41により連結固定されている。回転斜板面36はヨーク37において、シリンダブロック24に対向する側面に設けられている。前記回転斜板面36は、シリンダブロック24の軸線Oと直交するトラニオン軸線TR2及びトラニオン軸線TR2を含む平面(仮想平面)を仮想したとき、同トラニオン軸線TR2を中心として、軸線Oに対して一定角度傾斜した前記仮想平面に平行となるように形成されている。
【0055】
又、前記ヨーク37の内周面の出力ギヤ39側は拡径部37aが形成されており、同拡径部37a内において、入力軸12は円錐コロ軸受29にて支持されている。そして、入力軸12に螺合したナット31を出力ギヤ39側からシリンダブロック24側へ締め付けることにより、円錐コロ軸受29の外輪29aは、拡径部37aの段部底面に当接されている。又、円錐コロ軸受29の内輪29bは入力軸12の周溝12aに係合した係止リング32に対して当接係止されている。
【0056】
前記シリンダブロック24には、その回転中心の回りにシリンダ孔33と同数のシリンダ孔43が環状に配列され、軸線Oと平行に延設されている。同シリンダ孔43は第2プランジャ孔に相当する。同シリンダ孔43は前記シリンダ孔33のピッチ円と同心であり、かつ、そのピッチ円よりも大径のピッチ円上に配置されている。又、各シリンダ孔43は互いに隣接するシリンダ孔33間に位置するように、シリンダブロック24の周方向において、シリンダ孔33とは互いに1/2ピッチずつずらして配置されている(図4及び図5参照)。
【0057】
なお、シリンダ孔33,43内に作動油が流入して第1油圧装置100、第2油圧装置200のプランジャ34,44を軸方向に押し出すと、スラスト力が斜板面26,回転斜板面36に働き、同斜板面26,回転斜板面36にはスラスト方向に加え、ラジアル成分の力も働く。前記斜板面26,回転斜板面36は、ラジアル・スラスト荷重兼用軸受である同円錐コロ軸受19,29を介して入力軸12に支持されている。このため、入力軸12がスラスト荷重によって引っ張られ、ラジアル荷重によって曲げられる。しかし、入力軸12の変形のみでスラスト荷重及びラジアル荷重を吸収するのでケース11に振動が伝わることがなくなることにより、ケース11の表面が振動することによる騒音を低減できる。
【0058】
さらに、シリンダ孔43はシリンダ孔33とは図1に示すようにその長さ方向(シリンダブロック24の軸線O方向)において、互いにオーバラップするように配置され、前記ヨーク37側に開口が形成されている。各シリンダ孔43には、プランジャ44が摺動自在に配置され、その先端には、鋼球44aが転動自在に嵌合されている。
【0059】
本実施形態では、シリンダ孔43に収納したプランジャ44とシリンダ孔43とにより形成される空間が第2プランジャ室R2に相当する。プランジャ44は鋼球44a及び鋼球44aを取着したシュー45を介して回転斜板面36に当接されている。前記回転斜板面36とシリンダブロック24との相対回転に伴ってプランジャ44が往復作動して吸入、吐出行程を繰り返す。
【0060】
前記第1油圧装置100と第2油圧装置200との間に形成されている油圧閉回路について説明する。
シリンダブロック24の軸方向両端の内周面には、ともに環状の第1内側油室51及び第2内側油室52が形成されている。又、シリンダブロック24の軸方向両端の外周側寄りにはともに環状の第1外側油室53及び第2外側油室54が形成されている。前記第1内側油室51と第1外側油室53とは放射状に延びる複数の油路55が、又、第2内側油室52と第2外側油室54とは放射状に延びる複数の油路56を介して連通されている。
【0061】
第1外側油室53は第1油室に相当し、第2外側油室54は、第2油室に相当する。
シリンダブロック24には前記第1外側油室53及び第2外側油室54を共に連通する第1弁孔57が、シリンダ孔33と同数個、シリンダブロック24の軸方向に沿って延設されている。又、シリンダブロック24には前記第1外側油室53及び第2外側油室54を共に連通する第2弁孔58が、シリンダ孔43と同数個、シリンダブロック24の軸方向に沿って延設されている。各第1弁孔57と各第2弁孔58とは、図4及び図5に示すように互い隣接するように配置されている。
【0062】
各第1弁孔57には、第1外側油室53と第2外側油室54との間において、対応するシリンダ孔33に連通する油路59のポートUが形成されている。
各第1弁孔57には、スプール型の第1切替弁60が摺動自在に配置されている。第1切替弁60の一端は、図1及び図2に示すようにその周部に巻装されたコイルスプリング63の付勢力により、ホルダ16の外周に形成されたカム61のカム面62に対して常時当接されている。第1切替弁60は、第1分配弁に相当し、カム61は第1付与部材に相当する。
【0063】
図11には、カム61のカムプロフィールを示しており、同図に示すように前記カム61のカム面62は、第1切替弁60をポート閉鎖位置n0を中心としてポートUと第1外側油室53とを連通させる第1開口位置n1と、ポートUと第2外側油室54とを連通させる第2開口位置n2間を往復移動させる。カム面62において、第1切替弁60を第1開口位置n1及び第2開口位置n2に位置させるための部位はその領域においては、第1切替弁60のストローク変化がないようにシリンダブロック24の軸線Oに直交し、互いに平行な一対の仮想平面上に位置している。又、第1切替弁60が第1開口位置n1と第2開口位置n2とを移動するために、カム面62には斜面を有している。
【0064】
そして、このカム61のカム作用により、第1油圧装置100には図11に示すように領域Hと、領域Iとが付与されている。
領域Hはシリンダブロック24の回転に伴って、第1切替弁60が第1開口位置n1に移動されて、シリンダ孔33が、すなわち、第1プランジャ室R1がポートUを介して第1外側油室53に連通する区間である。
【0065】
又、領域Iは、シリンダブロック24の回転に伴って、第1切替弁60が第2開口位置n2に移動されて、シリンダ孔33、すなわち、第1プランジャ室R1がポートUを介して第2外側油室54に連通する区間である。
【0066】
前記斜板面26が直立位置から負の最大傾動角度位置へと変位した場合、図10において、このときの第1油圧装置100の行程容積は、0からVMmax(最大行程容積)となり、それに応じて入力軸12の入力回転数がNEのとき出力回転数Nout(出力ギヤ39の回転数)はNEから2NEへと増速が得られるように本実施形態ではその第1油圧装置100側の作動油の吐出量が設定されている。
【0067】
本実施形態では、図1又は図2のように斜板面26が負側へ傾動した場合に、図11で示すシリンダブロック24の軸心周りの回転角において、0°〜180°の範囲では、シリンダ孔33へ、すなわち、第1プランジャ室R1へポートUを介して作動油が吸入される。180°〜360°(0°)の範囲では、シリンダ孔33から、すなわち、第1プランジャ室R1からポートUを介して作動油が吐出される。
【0068】
逆に斜板面26が正側へ傾動した場合には、0°〜180°の範囲では、シリンダ孔33から、すなわち、第1プランジャ室R1からポートUを介して作動油が吐出される。180°〜360°(0°)の範囲では、シリンダ孔33へ、すなわち、第1プランジャ室R1へポートUを介して作動油が吸入される。尚、吐出する油室及び吸入する油室は、回転角範囲に対応した領域H,Iによって決まる。
【0069】
各第2弁孔58には、第1外側油室53と第2外側油室54との間において、対応するシリンダ孔43に連通する油路69のポートWが形成されている。
各第2弁孔58には、スプール型の第2切替弁70が前記プランジャ44に対して平行となるように摺動自在に配置されている。第2切替弁70は第2分配弁に相当する。第2切替弁70の一端は、図1及び図2に示すようにその周部に巻装されたコイルスプリング73の付勢力により、ヨーク37の外周に設けられた円筒状のカム71のカム面72に対して常時当接されている。前記カム71は弁作動機構及び当接部材に相当し、カム71は第2付与部材に相当する。
【0070】
カム71はヨーク37の外周面に対してシリンダブロック24の軸線O方向に摺動自在に嵌合されている。又、ヨーク37の互いに180度反対位置には、一対のキー74がシリンダブロック24の軸線O方向に沿うように一体に固定されている。そして、カム71はその内周面に設けた一対のガイド溝75がキー74に対してシリンダブロック24の軸線O方向に摺動自在に嵌合されるとともに、同キー74により、ヨーク37に対して周方向への回動が不能にされている。この結果、カム71は、ヨーク37とともに、軸線Oを中心として一体回動可能にされている。
【0071】
又、カム71の内径は、ボス板40の外径よりも小さくされ、カム71はボス板40に対して係止可能にされている。すなわち、カム71とボス板40との係止位置がそれ以上の出力ギヤ39側への移動が不能となったカム71の第1変位位置Q1とされている。
【0072】
図6(a)に示すように、カム71の出力ギヤ側端面には、変位付与部材76がケース11に対して回動自在に支持されている。変位付与部材76はカム71の出力ギヤ側端面に当接可能な当接体77と、同当接体77に軸78aを介して一体連結されたウォームギヤ78とから構成されている。当接体77は図6(b)に示すようにウォームギヤ78の軸78aを中央にして一対のアーム79,80からなっており、ウォームギヤ78の時計回り方向又は反時計回り方向の回転により、いずれか一方のアーム79,80がカム71の出力ギヤ側端面に対して当接可能とされている。
【0073】
本実施形態では、図6(b)において、時計回りにウォームギヤ78が回転したときに、アーム80がカム71の出力ギヤ側端面に当接して、基準位置Q0に位置するカム71を第2変位位置Q2側に移動する。又、図6(b)において、基準位置Q0にカム71を位置させているアーム79が反時計回りに回転して、基準位置Q0に位置するカム71を第1変位位置Q1へ移動する。
【0074】
前記ウォームギヤ78には、ケース11に対して回転自在に支持されたウォーム軸81が噛合されている。同ウォーム軸81は、図示しないアクチュエータに作動連結されている。前記アクチュエータが中立位置にあって、作動されていない状態では、当接体77はカム71に当接して、カム71を基準位置Q0に位置させている。そして、前記アクチュエータの正逆回動及びその回動量により、ウォームギヤ78の回動量、ひいては、基準位置Q0と第1変位位置Q1間の移動量及び基準位置Q0と第2変位位置Q2間の移動量が決定されている。
【0075】
ウォームギヤ78とウォーム軸81とにより、保持機構が構成されている。又、前記アクチュエータ、ウォーム軸81、ウォームギヤ78、当接体77とにより、可変機構が構成されている。
【0076】
図11には、カム71のカムプロフィールを示している。なお、図11において、カム面62とカム面72との相対位置は、カム71がヨーク37とともに回転するため変化するが、説明の便宜上、1つにまとめて図示している。
【0077】
そして、ヨーク37がシリンダブロック24と相対回転することによって、このカム71のカム作用により、第2油圧装置200には領域J、領域Kが付与されている。
【0078】
領域Jはカム面72により変位された第2切替弁70により、シリンダ孔43がポートWを介して第2外側油室54と連通する区間である。
又、領域Kは、シリンダ孔43が、すなわち、第2プランジャ室R2がポートWを介して第1外側油室53と連通する区間である。
【0079】
例えば、図1又は図2のように斜板面26が負側へ傾動した場合に、図11で示すカム71(基準位置Q0に位置する場合)とシリンダブロック24の軸心周りの相対回転角において、0°〜180°の範囲では、シリンダ孔43、すなわち、第2プランジャ室R2へポートWを介して作動油が吸入される。
【0080】
そして、この場合、180°〜360°(0°)の範囲では、シリンダ孔43から,すなわち、第2プランジャ室R2からポートWを介して作動油が排出される。逆に斜板面26が正側へ傾動した場合には、0°〜180°の範囲では、シリンダ孔43から、すなわち、第2プランジャ室R2からポートWを介して作動油が排出される。180°〜360°(0°)の範囲では、シリンダ孔43へ、すなわち、第2プランジャ室R2へポートWを介して作動油が吸入される。尚、排出する油室及び吸入する油室は、回転角範囲に対応した領域J,Kによって決まる。
【0081】
図12は、カム71のカム作用により、第2切替弁70が切替作動されてポートWが第1外側油室53及び第2外側油室54にそれぞれ連通する場合のカム71とシリンダブロック24の相対回転角度範囲を示している。又、図13はカム71とシリンダブロック24の相対回転角度と、第1外側油室53又は第2外側油室54に連通した際に第2切替弁70により開口されるポートWの開口面積との関係を表す本実施形態の特性図である。なお、プラス(+)側は、第1外側油室53に連通時の開口面積を示し、マイナス(−)側は第2外側油室54に連通時の開口面積を意味している。
【0082】
(基準位置Q0に位置する場合)
カム71が基準位置Q0に位置する場合、すなわち、図10において、0≦Nout≦2NEの場合には、図12、図13に示すようにポートWは0°〜180°までが第2外側油室54に連通され、180°〜360°(0°)までは第1外側油室53に連通される。
【0083】
本実施形態では、基準位置Q0に位置する際には、ポートWの第1外側油室53との連通時と、第2外側油室54との連通時の開口区間は互いに同じとなるようにカム面72が設定されている。
【0084】
(第1変位位置Q1〜Q0に位置する場合)
カム71が第1変位位置Q1側に位置している場合、すなわち、図10において、2NE<Noutの場合には、図12及び図13に示すようにポートWは、すなわち、第2プランジャ室R2は数度〜150°までが第2外側油室54に連通され、150°〜数度までは第1外側油室53に連通される。すなわち、領域Jは、基準位置Q0にカム71が位置するときよりもその領域(開口区間)が狭くなるように、逆に領域Kが広がるようにカム71のカム面72が設定されている。
【0085】
このように、領域J,Kを変化させることにより、第2油圧装置200の1行程における第2外側油室54との連通する区間(領域J)が、第1油圧装置100の1行程における第2外側油室54との連通する区間(領域I)よりも小さくなる。すなわち、シリンダブロック24が軸心周りに1回転する間に第1プランジャ室R1が第2外側油室54と連通する領域I(区間)と比較して、ヨーク37がシリンダブロック24に対して軸心周りに1回転する間に、第2プランジャ室R2が第2外側油室54と連通する領域J(区間)が小さくなる。
【0086】
それに伴って、第1油圧装置100が1行程の間に第2外側油室54と授受する作動油量と比較して、第2油圧装置200が1行程の間に第2外側油室54と授受する作動油量が少なくなり、最終的にはQ1の位置でVMmaxに対して0.5VMmaxとなるように領域J,Kの配分を設定している。
【0087】
(第2変位位置Q0〜Q2に位置する場合)
カム71が第2変位位置Q2側に位置している際、いわゆる後進時、図10において、Nout<0の場合には、図12及び図13に示すようにポートWは、すなわち、第2プランジャ室R2は340数度〜240数度までが第2外側油室54に連通され、240数度〜340数度までは第1外側油室53に連通される。
【0088】
このように、領域J,Kを変化させることにより、第2油圧装置200の1行程における第1外側油室53との連通する区間(領域K)が、第1油圧装置100の1行程における第1外側油室53との連通する区間(領域H)よりも小さくなる。すなわち、シリンダブロック24が軸心周りに1回転する間に第1プランジャ室R1が第1外側油室53と連通する区間(領域H)と比較して、ヨーク37がシリンダブロック24に対して軸心周りに1回転する間に第2プランジャ室R2が第1外側油室53と連通する区間(領域K)が、小さくなる。
【0089】
それに伴って、第1油圧装置100が1行程の間に第1外側油室53と授受する作動油量と比較して、第2油圧装置200が1行程の間に第1外側油室53と授受する作動油量が少なくなり、最終的にはQ2の位置でVMmaxに対して0.5VMmaxとなるように領域J,Kの配分を設定している。
【0090】
本実施形態では、シリンダ孔33、シリンダ孔43、第1外側油室53、第2外側油室54、第1弁孔57、第2弁孔58、油路59、油路69、ポートU及びポートWとにより、油圧閉回路が構成されている。
【0091】
前記第1外側油室53と第2外側油室54との間には図4、図5及び図7に示すようにシリンダブロック24の軸線Oに沿うように連通路82、83が形成されている。連通路82内には、第1外側油室53側に設けた弁座84を開閉するリリーフ弁85が設けられ、連通路82内に内装したコイルスプリング86により、同弁座84を閉鎖している。そして、第1外側油室53内の作動油の油圧がコイルスプリング86のバネ圧よりも高いときに、リリーフ弁85が弁座84を開放して第1外側油室53と第2外側油室54間を連通する。
【0092】
連通路83内には、第2外側油室54に設けた弁座87を開閉するリリーフ弁88が設けられ、連通路83内に内装したコイルスプリング89により、同弁座87を閉鎖している。そして、第2外側油室54内の作動油の油圧がコイルスプリング89のバネ圧よりも高いときに、リリーフ弁88が弁座87を開放して第2外側油室54と第1外側油室53間を連通する。
【0093】
前記油圧閉回路に作動油をチャージするために、入力軸12内には軸線Oに沿って軸孔90が穿設されている。軸孔90は、スリーブ20の大径部20aにおいて、半径方向に導入油路91を有しており、同導入油路91は大径部20aに半径方向に穿設された油路92及び大径部20aの外周面に形成された周溝93に連通されている。支持板13には周溝93に連通する油路94が設けられ、油路94内には図示しないチャージポンプから作動油が満たされている。
【0094】
入力軸12において、第1内側油室51及び第2内側油室52と相対する部分には、軸孔90に連通可能な弁座を開閉する一対のチャージ弁95(逆止弁)が配置されている。同チャージ弁95は油圧閉回路の油圧が軸孔90内のチャージ圧に達するまで開口して、軸孔90内の作動油を油圧閉回路に供給する。又、同チャージ弁95は作動油が軸孔90へ逆流するのを防止する。
【0095】
(作用)
さて、上記のように構成された無段変速装置Tの作用を説明する。
なお、説明の便宜上、エンジンEGのクランク軸から入力軸12に付与される入力回転数NEは一定のものとして説明する。
【0096】
(出力回転数NoutがNEの場合)
図8に示すシフトレバー97がF領域内の中間付近位置に操作した場合、クレイドル27を介して斜板面26を直立位置に位置させる。
【0097】
この状態では、カム71と当接体77のアーム79とは当接しており、このときのカム面72は図11に示す基準位置Q0に位置している。
この状態においては、エンジンEGの駆動力により入力軸12を介してシリンダブロック24が正方向へNEで回転するが、斜板面26は入力軸12の軸線Oに対して直立位置の中立状態にある。第1油圧装置100のプランジャ34は斜板面26によっては往復動されず、従って、この状態では油圧閉回路内を作動油が循環しない。このため、第2油圧装置200側においては各プランジャ44の突出端がストローク運動ができない状態でシュー45を介して回転斜板面36に当接係合するため、シリンダブロック24と回転斜板面36とは直結状態となり、一体回転する。すなわち、この状態は、入力軸12と出力ギヤ39とが直結状態となる。この回転斜板面36に付与された正方向への回転は、ヨーク37、ボス板40、出力ギヤ39、入力ギヤ10を介して終減速装置へ伝達される。
【0098】
前記斜板面26が直立位置に位置している場合には、図10に示すように第1油圧装置100の行程容積は0となり、出力回転数Nout(出力ギヤ39の回転数)は入力回転数NEとなる。
【0099】
なお、本実施形態では、この出力回転数Nout(出力ギヤ39の回転数)が入力回転数NEと同じ回転数のときを含めた、すなわち、無段変速装置Tの入力軸12と出力ギヤ39とが直結状態のときを含めた前後の範囲をこの農作業機車両の主作業速度域に設定している。例えば、図19に示すように本実施形態の農作業機車両が耕運機の場合、走行速度が数km/h〜8km/hを主作業速度域の走行速度範囲であるとしており、この走行速度範囲内において、前記直結状態となるように出力回転数Nout(出力ギヤ39の回転数)がNEとなるように設定されている。なお、本実施形態では、主作業速度域は、3km/h〜8km/hである。
【0100】
(出力回転数NoutがNEと2NEの間の場合)
図8に示すシフトレバー97をF領域内において、前記中間位置よりもN位置を基準として遠位位置に操作した場合、クレイドル27を介して斜板面26を図1,2で示すように負側に傾動して負の最大傾動角度位置と直立位置との間の領域に位置させる。
【0101】
この場合、エンジンEGの駆動力により入力軸12を介してシリンダブロック24がNEで回転する。すると、第1油圧装置100の領域Iで、作動油はシリンダ孔33からポートUを介して第2外側油室54へ吐出される。
【0102】
そして、領域Hで、作動油は第1外側油室53からポートUを介してシリンダ孔33に吸入される。
なお、作動油が油圧閉回路を循環する量は斜板面26の負方向への傾動角度が大きくなるにつれ、増大する。
【0103】
第2外側油室54に吐出された作動油は、ポートWを介して、0°〜180°の範囲にあるシリンダ孔43に吸入される。一方、180°〜360°(0°)の範囲にあるシリンダ孔43から作動油は、排出(吐出)される。
【0104】
この結果、シリンダブロック24が入力軸12を介して駆動される回転数NEと、第2油圧装置200のプランジャ44の回転斜板面36への突出押圧作用による正方向の回転数との和により、回転斜板面36は回転される。この回転斜板面36に付与される正方向の回転は、ヨーク37、ボス板40、出力ギヤ39、入力ギヤ10を介して終減速装置へ正方向の回転として伝達され、増速作用を行う。
【0105】
このとき、斜板面26が直立位置から負の最大傾動角度位置へと変位すると、図10において第1油圧装置100の行程容積は0からVMmax(最大行程容積)へと増加し、それに応じて出力回転数NoutはNEから2NEへと増速する。
【0106】
なお、出力回転数NoutがNEから2NEに変化するときの第2油圧装置200の行程容積は最大行程容積VMmaxのままである。
(出力回転数Noutが2NEを越える場合)
前進高速にしたい場合、すなわち、図8に示すシフトレバー97をF領域内において、前記遠位位置よりもさらに反N位置側へ操作した場合、クレイドル27を介して斜板面26を負の最大傾動角度位置に位置させる。
【0107】
このとき、第1油圧装置100の行程容積VPは最大行程容積VMmaxのままである。そして、図示しないアクチュエータを作動させ、基準位置Q0に位置するカム71を基準位置Q0と第1変位位置Q1との間に移動する。
【0108】
例えば、カム71が第1変位位置Q1に位置すると、図12及び図13に示すようにポートWは、数度〜150°までが第2外側油室54に連通され、150°〜数度までは第1外側油室53に連通される。すなわち、領域Jは、基準位置Q0にカム71が位置するときよりもその領域(区間)が狭くなる。
【0109】
このため、第1油圧装置100が1行程の間に第2外側油室54と連通する区間に比して、第2油圧装置200が1行程の間に第2外側油室54と連通する区間が小さくなる。それに伴って、第1油圧装置100が1行程の間に第2外側油室54と授受する作動油量と比較して、第2油圧装置200が1行程の間に第2外側油室54と授受する作動油量が少なくなる。このため、第1油圧装置100が1行程の間に第2外側油室54へ吐出する作動油量と第2油圧装置200が1行程の間に第2外側油室54から吸入する作動油量の比に対応して、第1油圧装置100が1行程を完了するまでに第2油圧装置200の行程数が増加する。
【0110】
その結果、第2油圧装置200が回転斜板面36にNEよりも大きな回転速度を与える。よって、出力回転数Noutは、NEと第2油圧装置200の付与回転速度の和により、2NEよりも大きくなる。
【0111】
又、回転斜板面36に付与された回転トルクは、ヨーク37、ボス板40、出力ギヤ39、入力ギヤ10を介して終減速装置へ伝達される。
このとき、図10において第1油圧装置100の行程容積は前述したように一定量のVMmax(最大行程容積)であり、一方、第2油圧装置200の行程容積はVMmaxから0.5VMmaxへと変化する。その結果、出力回転数Noutは2NEから3NEへと増速する。
【0112】
(出力回転数Noutが0とNEの間の場合)
図8に示すシフトレバー97をF領域内において、前記中間位置よりもN位置側に操作した場合、クレイドル27を介して斜板面26を正側に傾動して正の最大傾動角度位置と直立位置との間の領域に位置させる。
【0113】
この場合、斜板面26が正方向へ傾動するため、エンジンEGの駆動力により入力軸12を介してシリンダブロック24が回転すると、第1油圧装置100において図11に示す領域Hで、シリンダ孔33から、油路59、ポートUを介して第1外側油室53に作動油が吐出される。
【0114】
又、領域Iで第2外側油室54から、ポートU、油路59を介してシリンダ孔33に作動油が吸入される。
なお、作動油が油圧閉回路を循環する量は斜板面26の正方向への傾動角度が大きくなるにつれ、増大する。
【0115】
一方、第2油圧装置200では第1外側油室53側に吐出された作動油は、ポートWを介してシリンダ孔43に受入される。又、0°〜180°の範囲にあるシリンダ孔43からの作動油は、第2外側油室54へ排出される。
【0116】
この結果、第2油圧装置200のプランジャ44の回転斜板面36への突出押圧作用により、前記「出力回転数NoutがNEと2NEの間及び2NEを越える場合」とは逆方向の回転を与える。従って、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック24の正方向の回転数との和により、ヨーク37、ボス板40、出力ギヤ39が回転される。このときの回転数の和は、逆方向の回転数分減少した正方向の回転数となるため、出力回転数Noutは「出力回転数NoutがNEの場合」に比較して小さくなる。
【0117】
本実施形態では、このとき、斜板面26が直立位置から正の最大傾動角度位置側へと変位すると、図10において第1油圧装置100の行程容積は0から−VMmax(前記「−」はポートUから第1外側油室53に吐出される場合を意味している。)側へと増加し、それに応じて出力回転数NoutはNEから0へと減速する。
【0118】
なお、このときの出力回転数NoutがNEから0に変化するときの第2油圧装置200の1回転当たりの行程容積−VMmaxのままである。(前記「−」は第1外側油室53からポートWを介して吸入される場合を意味している。)
(出力回転数Noutが0の場合)
次に、シフトレバー97をN位置に操作した場合、クレイドル27を介して斜板面26を正の最大傾動角度位置に位置させる。
【0119】
この場合、本実施形態では第1油圧装置100の行程容積は−VMmaxと固定される。
この結果、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック24が入力軸12を介して駆動される回転数NEとが釣り合い、すなわち、回転数の和は0(出力回転数Noutは0)となり、出力ギヤ39は停止する。
【0120】
(出力回転数Noutが0未満の場合)
次に、後進したい場合、すなわち、図8に示すシフトレバー97をR領域に操作した場合、クレイドル27を介して斜板面26を正の最大傾動角度位置に位置させる。このとき、第1油圧装置100の行程容積は−VMmaxと固定される。そして、基準位置Q0に位置するカム71を基準位置Q0と第2変位位置Q2との間に移動する。
【0121】
例えば、カム71が第2変位位置Q2に位置すると、図12及び図13に示すようにポートWは、340数度〜240数度までが第2外側油室54に連通され、240数度〜340数度までは第1外側油室53に連通される。すなわち、2NEを越える場合と逆に領域Jは、基準位置Q0にカム71が位置するときよりもその領域(区間)が広くなり、領域Kが狭くなる。
【0122】
このため、第1油圧装置100が1行程の間に第1外側油室53と連通する区間に比して、第2油圧装置200が1行程の間に第1外側油室53と連通する区間が小さくなる。それに伴って、第1油圧装置100が1行程の間に第1外側油室53と授受する作動油量と比較して、第2油圧装置200が1行程の間に第1外側油室53と授受する作動油量が少なくなる。このため、第1油圧装置100が1行程の間に第1外側油室53へ吐出する作動油量と第2油圧装置200が1行程の間に第1外側油室53から吸入する作動油量の比に対応して、第1油圧装置100が1行程を完了するまでに第2油圧装置200の行程数が増加する。
【0123】
その結果、第2油圧装置200が回転斜板面36に−NEよりも大きな回転速度を与える。よって、出力回転数Noutは、NEと第2油圧装置200の付与回転速度の和により、0よりも小さくなる。
【0124】
又、逆方向の回転トルクは、ヨーク37、ボス板40、出力ギヤ39、入力ギヤ10を介して終減速装置へ伝達される。
なお、本実施形態では、このとき、図10において第1油圧装置100の行程容積は前述したように一定量の−VMmaxであり、一方、第2油圧装置200の行程容積は−VMmaxから−0.5VMmaxへと変化するように設定されている。又、それに応じて出力回転数Noutは0から後進方向に増速する。
【0125】
本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の無段変速装置は、第1油圧装置100と第2油圧装置200のシリンダブロック24を共有し、シリンダブロック24内に第1油圧装置100と第2油圧装置200との間を作動油が循環する油圧閉回路を形成し、エンジンEGによって回転駆動する構成とした。
【0126】
この結果、作動油が油圧閉回路を循環しなくても、エンジンEGからの駆動力が第2油圧装置200の回転斜板面36へ伝達される。すなわち、無段変速装置Tの入力軸12(入力側)と出力ギヤ39(出力側)が直結状態となる。この直結状態時を中心として、増速側及び減速側の両方を含む広範囲の無段変速を得ることができる。
【0127】
このことから、シフトレバー97による1レバー操作で、前進又は後進の切替え、及び、前進の最高速から、後進の最高速まで広い変速域をカバーできるという高操作性が得られる。
【0128】
そして、第2油圧装置200を可変容量とすることで、変速範囲を前進高速域、後進域までに広がり、前後進の切替のためのギヤ機構(リバーサ)を省略することができる。
【0129】
(2) 本実施形態では、第1油圧装置100は、正負の最大傾動角度の範囲を有する斜板面26の傾動角度の変位に応じて作動するようにした。又、第2油圧装置200は、斜板面26が正負の最大傾動角度をなしている時に、図12,13の如くシリンダブロック1回転における第1外側油室53又は第2外側油室54と連通する区間を狭くすることができるので、その行程容積が第1油圧装置100の行程容積に対して相対的に小さくできる。
【0130】
そして、第1油圧装置100の行程容積に比して、第2油圧装置200の行程容積が小さくなると、プランジャ44の往復速度が速くなる。このため、第2油圧装置200のプランジャ44の突出押圧作用によって、回転斜板面36にNE又は−NEよりも大きな回転を付与し、油圧式無段変速装置Tは、2NEを超える前進高速域及び0を下回る後進域を得ることができる。
【0131】
(3) 本実施形態では、無段変速装置は、農作業機車両の走行用に使用される無段変速装置とした。この結果、農作業機車両の走行時において、上記(1)又は(2)の作用効果を奏することができる。
【0132】
(4) 本実施形態では、第1油圧装置100の作動油吐出量が0のときの変速域を、作業機の主作業速度域内に設定した。すなわち、出力回転数Nout(出力ギヤ39の回転数)が入力回転数NEと同じ回転数のときを含めた、すなわち、無段変速装置Tの入力軸12と出力ギヤ39とが直結状態のときを含めた前後の範囲をこの農作業機車両の主作業速度領域に設定した。図19に示すように本実施形態の農作業機車両が耕運機の場合、走行速度が数km/h〜8km/hを主作業速度域の走行速度範囲であるとしており、この走行速度範囲内において、前記直結状態となるように出力回転数Nout(出力ギヤ39の回転数)がNEとなるように設定した。この結果、主作業速度域においては、作動油が油圧閉回路を流れなくなるため、油圧閉回路における油漏れが抑制されて、伝達効率を高め、主作業速度域におけるエネルギロスを減らすことができ、非常に効率的な農作業を行うことができる。
【0133】
図18は、本実施形態の場合(図18では(5)で示している)の全効率(全伝達効率)と車速の関係の特性を示している。同図に示すように、本実施形態の場合、全効率が他の従来のHSTの副1、副2、副3の変速の場合には比較しても極めて高い全効率が得られることが分かる。特に、主作業速度域では全効率が高い領域でもあり、効率的な作業が得られることが分かる。
【0134】
(5) 本実施形態では、第2油圧装置200は、シリンダブロック24内の複数のシリンダ孔43(第2プランジャ孔)に挿入されたプランジャ44群と、プランジャ44群にて作動されてシリンダブロック24に対して相対回転又は同期回転する回転斜板面36と、各シリンダ孔43に対する作動油の吸入、吐出を制御する第2切替弁70(弁)群と、第2切替弁70群をシリンダブロック24の回転に応じて作動するカム71(弁作動機構)とで構成した。又、カム71には、ウォーム軸81、ウォームギヤ78、及び当接体77(可変機構)を設け、この可変機構の作動により、第2油圧装置200が1行程の間に、第1外側油室53又は第2外側油室54と連通する区間を変更するようにした。
【0135】
この結果、可変機構の作動により、第2油圧装置200の行程容積が変更され、容量可変を行うことができる。
(6) 本実施形態では、第2切替弁70を、各プランジャ44と対応して平行に設けたタイミングスプールとし、カム71は回転斜板面36と一体に回転するとともに、シリンダブロック24の軸線に沿って変位自在に配置したタイミングカムとした。この結果、カム71は、回転斜板面36と一体に回転し、シリンダブロック24の軸線に沿って変位する。第2切替弁70は、カム71のカム作用により、変位する結果、第2切替弁70の吸入吐出タイミングが変更できる。
【0136】
(7) 本実施形態では、カム71は、シリンダブロック24の軸線方向において、基準位置Q0,第1変位位置Q1,第2変位位置Q2位置間を変位自在に設け、カム71を変位した位置にて保持するウォームギヤ78、及びウォーム軸81(保持機構)を設けた。
【0137】
このため、カム71は特に第1変位位置Q1,第2変位位置Q2の位置のうち、いずれかに位置すると、その位置において、保持できる。カム71の各位置において安定したカム作用を第2切替弁70に付与することができる。
【0138】
又、第1変位位置Q1では、ボス板40がストッパとして機能している。このため、第1変位位置Q1においても、安定したカム作用を第2切替弁70に付与することができる。
【0139】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
1) 前記両実施形態では、主作業速度域を走行速度が数km/h〜8km/hとしたが、この走行速度範囲に限定するものではない。耕運機以外の農作業機車両、例えば、トラクタ、サブソイラ、ディスクモアなどの場合には、その作業機車両に応じた主作業速度域があるため、無段変速装置の入力側と出力側の直結状態をその主作業速度域に合わせて設定すれば全効率の高い状態での作業を行うことができる。
【0143】
2) さらにまた、第1油圧装置100、又は、第2油圧装置200の少なくとも一方をプランジャ34又は、プランジャ44が径方向に突出入するラジアル形としても良い。
【0144】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1に記載の油圧式無段変速装置は、可変容量形の第1油圧装置からの吐出量が0のとき、第2油圧装置を介して、油圧式無段変速機の入力側と出力側とを直結することによって、この直結時を中心として増速及び減速の両方に広範囲の無段変速を得ることができ。従って、作業域では全効率が高い油圧式無段変速装置が得られる。
【0145】
すなわち、作動油が油圧閉回路を循環しない時でも、出力回転部に入力回転を伝達することができる。また、作動油が油圧閉回路を循環することで、本装置は、入力回転を基点にその前後に亘って回転速度を変化することができる。
【0146】
そして、第1油圧装置の行程容積が第2油圧装置の行程容積を上回る範囲では、出力回転部は、第2油圧装置の第2プランジャによって入力回転よりも大きな回転速度を与えられるので、出力回転部が与えられる回転が入力回転と同じ向きの場合は、出力回転として入力回転を超える回転を本装置は、得ることができる。又、出力回転部が与えられる回転が入力回転と逆向きの場合は、出力回転として入力回転とは、逆向きの回転を本装置は、得ることができる。
【0147】
さらに油圧式無段変速装置は、第2油圧装置の行程容積を第1油圧装置100の行程容積から小さくできる。
【0148】
さら油圧式無段変速装置は、第2付与部材を軸線方向に変位するだけで、第2油圧装置の行程容積を、第1油圧装置の行程容積から小さくできる。
【0149】
請求項に記載の作業機車両の変速装置は、その速度域において、作動油が油圧閉回路を循環しなくても出力回転を得ることができるので、作動油の循環による油漏れが無くなり、作業機車両の作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した実施形態の無段変速装置置の断面図であり、図4のE−E線断面図。
【図2】同じく無段変速装置の第1油圧装置側の要部断面図。
【図3】同じく無段変速装置の第2油圧装置側の要部断面図。
【図4】図1のB−B線断面図。
【図5】図1のA−A線断面図。
【図6】(a)は図1のC−C線断面図、(b)は当接部の作用を示す説明図。
【図7】図4のD−D線断面図。
【図8】シフターの平面図。
【図9】本実施形態の無段変速装置の概念図。
【図10】同じく油圧装置の行程容積と出力回転数とを表した特性図。
【図11】カム61,71のカム作用を示す説明図。
【図12】カム作用によるモータポートが開口するタイミングを示す説明図。
【図13】カム71の回転角度に対するモータポートの開口面積の変化を示す説明図。
【図14】従来例のHSTからなる無段変速装置の概念図。
【図15】同じくポンプ/モータ行程容積と出力回転数とを表した特性図。
【図16】従来例の他の油圧式無段変速装置の概念図。
【図17】同じくポンプ/モータ行程容積と出力回転数とを表した特性図。
【図18】車速と、全効率との関係を示す特性図。
【図19】車速と、各種作業車両の負荷トルクとの関係を示す分布図。
【符号の説明】
R1…第1プランジャ室、R2…第2プランジャ室、
24…シリンダブロック、26…斜板面(プランジャ当接部)、
33…シリンダ孔(第1プランジャ孔)、
34…プランジャ(第1プランジャ)、
36…回転斜板面(回転斜板)、37…ヨーク(出力回転部)、
43…シリンダ孔(第2プランジャ孔)、
44…プランジャ(第2プランジャ)、
53…第1外側油室(第1油室)、54…第2外側油室(第2油室)、
60…第1切替弁(第1分配弁)、
61…カム(第1付与部材)、
70…第2切替弁(弁及び第2分配弁)、
71…カム(弁作動機構、当接部材及び第2付与部材)、
81…ウォーム軸(ウォームギヤ78とともに保持機構を構成し、ウォーム軸81、ウォームギヤ78、当接体77、アクチュエータとともに可変機構を構成する。)、
100…第1油圧装置、200…第2油圧装置。

Claims (2)

  1. 第1プランジャ及びプランジャ当接部を備え、同当接部によって第1プランジャの突出入を行う可変容量形の第1油圧装置と、第2プランジャを備え、第2プランジャの当接によって入力回転に対して相対又は同期回転のいずれかを行う出力回転部を設けた第2油圧装置とを組合せ、双方のプランジャを収納するシリンダブロックを共有し、同シリンダブロックを入力回転にて軸心周りに回転する構成とし、同シリンダブロックに第1プランジャ孔及び第2プランジャ孔を設け、第1プランジャを第1プランジャ孔に収納して第1プランジャ室を形成し、第2プランジャを第2プランジャ孔に収納して第2プランジャ室を形成し、第1プランジャ室と第2プランジャ室間で作動油が循環する油圧閉回路を設け、同回路に第1油室及び第2油室を設け、シリンダブロックが軸心周りに1回転する間に第1プランジャ室が第1油室と連通する区間及び第2油室と連通する区間を有し,出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に第2プランジャ室が第1油室と連通する区間及び第2油室と連通する区間を有する構成とした油圧式無段変速装置であって、第1油圧装置の行程容積が第2油圧装置の行程容積を上回る範囲を有する構成を備えた油圧式無段変速装置において、
    シリンダブロックが軸心周りに1回転する間に第1プランジャ室が第1油室と連通する区間と比較して、出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に第2プランジャ室が第1油室と連通する区間を小さくし、
    又は、シリンダブロックが軸心周りに1回転する間に第1プランジャ室が第2油室と連通する区間と比較して、出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に第2プランジャ室が第2油室と連通する区間を小さくし、
    第1分配弁を設け、第1分配弁に往復動を付与する第1付与部材を設け、同部材がシリンダブロックが軸心周りに1回転する間に同分配弁に軸線方向の往復動を付与し、同分配弁の軸線方向の往復動にて第1プランジャ室が第1油室及び第2油室と連通する構成とし、第2分配弁を設け、第2分配弁に往復動を付与する第2付与部材を設け、同部材が出力回転部がシリンダブロックに対して軸心周りに1回転する間に同分配弁に軸線方向の往復動を付与し、同分配弁の軸線方向の往復動にて第2プランジャ室が第1油室及び第2油室と連通する構成とし、第2付与部材が軸線方向に変位され、変位した位置で保持される構成としたことを特徴とする油圧式無段変速装置
  2. 請求項1に記載の油圧式無段変速装置を用いた作業機車両の変速装置であって、作動油が油圧閉回路を循環しない時の出力回転部の回転速度が作業機車両の主作業速度域に含まれる構成したことを特徴とする作業機車両の変速装置。
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