JP4443795B2 - 油圧式無段変速装置及び動力伝達装置 - Google Patents
油圧式無段変速装置及び動力伝達装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業機械や車両等、各種の産業分野で広く利用可能な油圧式無段変速装置及び動力伝達装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数のプランジャの往復動によって作動油を吐出,吸入する第1油圧装置と複数のプランジャの当接によって出力回転を得る出力回転部を有する第2油圧装置を備える油圧式無段変速装置が知られている。このような油圧式無段変速装置の第1及び第2油圧装置は、シリンダブロックを共有し、同シリンダブロックは軸心周りに回転する構成とされている。
【0003】
またシリンダブロックには、第1油圧装置における各プランジャが収納される複数のプランジャ室と、第2油圧装置における各プランジャが収納される複数のプランジャ室との間で作動油が循環する油圧閉回路が設けられている。そして、シリンダブロックに設けられた複数の分配弁の往復動によって前記各プランジャ室間で作動油が循環する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような構成の油圧式無段変速装置において、プランジャ室と、前記分配弁が収納される分配弁往復動孔とを連通し、油圧閉回路の一部を構成する連通孔を形成するに当たって、シリンダブロックをコンパクトに形成することが望まれていた。
【0005】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリンダブロックのコンパクト化を図ることができる油圧式無段変速装置及び動力伝達装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、プランジャの往復動によって作動油を吐出,吸入する第1油圧装置とプランジャの当接によって出力回転を得る出力回転部を有する第2油圧装置のシリンダブロックを共有し、同シリンダブロックを軸心周りに回転する構成とし、第1油圧装置の各プランジャ室と第2油圧装置の各プランジャ室との間で作動油が循環する油圧閉回路をシリンダブロックに設け、シリンダブロックに設けた分配弁の往復動によって前記各プランジャ室間で作動油が循環する構成とした油圧式無段変速装置において、第1及び第2油圧装置の各プランジャ室と、それに対応する分配弁往復動孔とを連通する連通孔を形成し、前記連通孔を、シリンダブロックにおける前記プランジャ室の底部側の段部面からシリンダブロック中央部側へ向けて斜状に形成し、前記段部面における前記連通孔の開口部を封止部材により封止したことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の油圧式無段変速装置を用いた動力伝達装置において、シリンダブロックを原動機からの入力軸によって回転する構成とし、入力軸を反原動機側に延出し、延出された入力軸外周に前記出力回転部を設けた構成とし、同出力回転部の回転方向と一致して、或いは逆転して動力伝達する正逆回転切替装置を設け、原動機の入力軸への回転伝達を入り切りする断接手段を設けたことを要旨とする。
【0008】
(作用)
請求項1の発明によれば、シリンダブロック内において、各プランジャ室と、それに対応する分配弁往復動孔とを連通する連通孔は、シリンダブロックにおける前記プランジャ室の底部側の段部面からシリンダブロック中央部側へ向けて斜状に形成される。このため、例えば、前記連通孔をシリンダブロックの軸線との直交断面内で径方向に延設する場合を比較対象とし、連通孔の加工形成時にプランジャ室に穿たれるドリル孔をシールする為の封止部材を設ける構成にすれば、同封止部材の為にシリンダブロックに余計な径方向の肉厚を設ける必要がない。
【0009】
請求項2の発明によれば、コンパクト化が図られる油圧式無段変速装置によって動力伝達装置も小型化が図られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を作業機として作業用車両の走行用に使用される油圧式無段変速装置(以下、無段変速装置20という)、及び油圧式無段変速装置を含む動力伝達装置に具体化した実施の形態を、図1〜図12に従って説明する。
【0011】
図1及び図3に示すように無段変速装置20は、作業用車両のパワーユニットのケース26内に収納されている。無段変速装置20は、第1油圧装置100と、同第1油圧装置100との間に油圧閉回路C(図9及び図10参照)を形成する第2油圧装置200とから構成されている。
【0012】
図8は無段変速装置20を含む動力伝達装置を示す概念図である。無段変速装置20の入力軸21はエンジン22のクランク軸にクラッチ機構300を介して連結され、出力側である後記するヨーク23には、ギヤシフト装置138(CST)が接続されている。前記クラッチ機構300は例えば図示しない足踏みのクラッチペダルに連動して断接するようになっている。
【0013】
ギヤシフト装置138は、第1クラッチ139、第2クラッチ140を備えている。第1クラッチ139は、ヨーク23に連結された駆動側クラッチプレートに対して従動クラッチプレートを連結すると、従動クラッチプレートに連結されたギヤ141が、ギヤ142を介して、図示しない終減速装置に駆動トルクを伝達する。又、第2クラッチ140は、ヨーク23に連結された駆動側クラッチプレートに対して従動クラッチプレートを連結すると、ギヤ143、アイドラギヤ144、145、及びアイドラギヤ145に噛合されたギヤ142を介して図示しない終減速装置に駆動トルクを伝達する。
【0014】
ギヤシフト装置138はシフトレバー146(図11参照)に連係されており、このシフトレバー146の操作に基づいて、前進時には第1クラッチ139を接続し、後進時には、第2クラッチ140を接続する。
【0015】
なお、本実施形態では、前記エンジン22が原動機、クラッチ機構300が断接手段、ギヤシフト装置138が正逆回転切替装置にそれぞれ相当する。
無段変速装置20のケース26は、円筒状の筒部材27と、筒部材27の両端開口に対して塞ぐようにボルト挿通孔28,29(図3参照)を介して図示しないボルトにて一体に連結された一対の側壁部材30,31とから構成されている。
【0016】
無段変速装置20の入力軸21において、入力端側は、ケース26の側壁部材30に対して軸受部32を介して回転自在に支持されている。又、ケース26の側壁部材31には、出力回転部としてのヨーク23が、軸受部33を介して回動自在に支持されている。そして、入力軸21の出力端側は、ヨーク23と同軸上に位置するように、ヨーク23に対して一対の軸受23a及びシール23bを介して回動自在に貫通されて支持されている。同出力端のヨーク23から突出した端部はPTO軸とされている。
【0017】
図4に示すように側壁部材30の中央において、内外両側面には、一対の軸受収納孔34,35が同軸上に配置されるように並設されている。軸受収納孔34,35間には、軸受収納孔34,35よりも縮径した貫通孔36が形成されている。そして、貫通孔36にはスリーブ37が回動自在に配置され、又、両軸受収納孔34、35には貫通孔36を挟んで対称上に円錐コロ軸受38,39が嵌合固定されている。そして、入力軸21は両円錐コロ軸受38,39を介して支持されている。又、軸受収納孔34の開口は、側壁部材30にボルト付けされたカバー15にて覆われている。図4に示すようにカバー15の貫通孔15aにはシール部材16を介して入力軸21が貫通されている。
【0018】
図4に示すように、円錐コロ軸受38の外輪38aは、軸受収納孔34にシム50を介して当接されている。又、円錐コロ軸受39の外輪39aは、軸受収納孔35の奥側の段部に当接固定されている。そして、軸受収納孔34内において、入力軸21の入力端側外周にはナット40が螺合されている。ナット40の螺合により、円錐コロ軸受38の内輪38bは、スリーブ37を介して、円錐コロ軸受39の内輪39bを押圧し、入力軸21に嵌合したスリーブ41を押圧する。スリーブ41はシリンダブロック42を押圧する。そして、シリンダブロック42は、入力軸21外周に突設した係止部46に当接される。よって、シリンダブロック42は入力端側のみからナット40を螺合するのみで軸線方向に固定することができる。又、軸受外輪38aと側壁部材30との間に介在するシム50の枚数や厚みを加減することで軸受38,39の各々の内輪と外輪との密着度合いを調整することができる。
【0019】
円錐コロ軸受38,39及びスリーブ37により、軸受部32が構成されている。
(第1油圧装置100)
第1油圧装置100は、入力軸21と、シリンダブロック42、プランジャ43、及び前記プランジャ43に対して当接する斜板面44を含むクレイドル45とを備えている。前記クレイドル45には、入力軸21が貫通されている。
【0020】
図1に示すように、前記クレイドル45はシリンダブロック42の軸心Oと直交するトラニオン軸線TRを中心としてケース26に対して傾動自在に支持されている。すなわち、前記クレイドル45は、斜板面44を含む仮想平面が、軸心Oと直交する位置を直立位置とする。そして、この直立位置を基準にして、クレイドル45は図1において反時計回り方向に所定角度傾いた位置(第1の位置)と、直立位置を基準にして時計回り方向に所定角度傾いた位置(第2の位置)の間を傾動可能にされている。
【0021】
本実施形態では、斜板面44が直立位置に位置したときを基準に、この図1において、時計回り方向を正とし、反時計回り方向を負という。そして、本実施形態では図12の出力回転数Nout =Ninを境に、Nout >Ninの時に負側に傾動し、Nout <Ninの時に、正側に傾動する。なお、出力回転数とは、ヨーク23の回転数である。
【0022】
なお、図1に示された斜板面44は、クレイドル45が第1の位置に位置したときの負の最大傾動角度位置で傾動した状態を示している。又、クレイドル45が第2の位置に位置したときは、斜板面44については正の最大傾動角度位置という。
【0023】
シリンダブロック42は、入力軸21に対してスプライン21a結合により一体に連結されている。シリンダブロック42は、略円柱状の組合わせ形状で、軸線方向に位置する両端周面は、中央部よりも縮径されている。
【0024】
シリンダブロック42において、前記中央部は、図2に示すように、その回転中心(軸心O)の回りに複数のプランジャ孔47が環状に配列され、軸心Oと平行に延設されている。前記プランジャ孔47がプランジャ室に相当する。図1に示すように、プランジャ孔47は、シリンダブロック42の中央部の段部面42aにおいてクレイドル45側に開口が形成されている。各プランジャ孔47には、プランジャ43が摺動自在に配置されている。プランジャ43の先端には、鋼球48が転動自在に嵌合されており、プランジャ43は鋼球48及び同鋼球48を取着したシュー49を介して斜板面44に当接されている。傾斜状態の斜板面44はシリンダブロック42の回転に伴ってプランジャ43を往復作動させ、吸入、吐出行程の作用を付与する。なお、図1は図2のC−C線断面図である。
【0025】
(第2油圧装置200)
第2油圧装置200は、前記シリンダブロック42に摺動自在に配置された複数のプランジャ58、及び前記プランジャ58に対して当接する回転斜面51をもつ筒状のヨーク23とを備えている。
【0026】
図1,図3に示すように、側壁部材31には、軸受収納孔52、及び同軸受収納孔52よりも小径の貫通孔53が互いに同軸となるようにそれぞれ形成されている。そして、軸受収納孔52には円錐コロ軸受54が嵌合されている。又、筒部材27の出力端部内周面には、玉軸受55が固定されている。ヨーク23は、大径部と小径部を備えており、大径部が玉軸受55に小径部が円錐コロ軸受54に嵌合されることにより、回動自在に支持されている。又、ヨーク23の小径部は、貫通孔53内に止着されたシール部材56を介して外部に突出されている。
【0027】
回転斜面51は、ヨーク23において、シリンダブロック42側の端面に形成されており、回転斜面51を含む仮想平面が軸心Oに対して一定角度傾斜している。
【0028】
前記シリンダブロック42の中央部には、図2に示すように、その回転中心の回りにプランジャ孔47と同数のプランジャ孔57が環状に配列され、軸心Oと平行に延設されている。プランジャ孔57はプランジャ室に相当する。前記プランジャ孔57のピッチ円はプランジャ孔47のピッチ円と同心及び同径とされている。又、各プランジャ孔57は互いに隣接するプランジャ孔47間に位置するように、図2に示すようにシリンダブロック42の周方向において、プランジャ孔47とは互いに1/2ピッチずつずらして配置されている。
【0029】
プランジャ孔57はシリンダブロック42の中央部の段部面42aにおいて、前記ヨーク23側に開口が形成されている。各プランジャ孔57には、プランジャ58が摺動自在に配置され、その先端には、鋼球59が転動自在に嵌合されている。プランジャ58は鋼球59及び同鋼球59を取着したシュー60を介して回転斜面51に当接されている。前記回転斜面51とシリンダブロック42との相対回転に伴ってプランジャ58が往復作動して吸入、吐出行程を繰り返す。本実施形態では、第1油圧装置100の最大行程容積VPmaxは、第2油圧装置200の最大行程容積VMmaxと同じになるように設定されている。
【0030】
(油圧閉回路C)
前記第1油圧装置100と第2油圧装置200との間に形成されている油圧閉回路Cについて説明する。
【0031】
シリンダブロック42の内周面には、ともに環状の第1油室61及び第2油室62が互いにシリンダブロック42の軸線方向に並んで並設されている。なお、説明の便宜上、第1油室61を油室A、第2油室62を油室Bということがある。シリンダブロック42には第1油室61及び第2油室62を共に連通する分配弁往復動孔としての第1弁孔63が、プランジャ孔47と同数個、シリンダブロック42の軸線方向に沿って延設されている。又、シリンダブロック42には前記第1油室61及び第2油室62を共に連通する分配弁往復動孔としての第2弁孔64が、プランジャ孔57と同数個、シリンダブロック42の軸線方向に沿って延設されている。
【0032】
第1弁孔63のピッチ円は第2弁孔64のピッチ円と同心及び同径とされている。又、プランジャ孔47、57よりも内方に位置するように、プランジャ孔47、57のピッチ円よりもそのピッチ円の径は小さくされている。又、各第1弁孔63は隣接する第2弁孔64間に位置するように、図2に示すようにシリンダブロック42の周方向において、第2弁孔64とは互いに1/2ピッチずつずらして配置されている。又、第1弁孔63とプランジャ孔47の各中心、及び第2弁孔64とプランジャ孔57の各中心は、図2に示すように軸心Oから放射状に延びる直線上に位置するように配置されている。
【0033】
図1及び図5に示すように、連通孔としての油路65は、プランジャ孔47の底部と、第1弁孔63の第1油室61及び第2油室62との間の部位間を連通するように形成されている。油路65は、図1及び図5に示すように、シリンダブロック42の段部面42a側から内方へ向けて、即ち、外部からシリンダブロック42中央部側へ向けて斜状に配置されている。
【0034】
詳述すると、各第1弁孔63には、第1油室61と第2油室62との間において、対応するプランジャ孔47に連通する油路65のポートUが形成されている。そして、油路65と連通するプランジャ孔47の底部開口47aと、第1弁孔63のポートUは、シリンダブロック42の軸線方向(軸心Oが延びる方向)において、所定距離tを有するように離間して配置されている。プランジャ孔47の底部開口47aは、第2油室62とオーバラップする位置に配置されており、ポートUは、底部開口47aよりもプランジャ43がシリンダブロック42から突出する方向寄りに位置している。ここで、前記所定距離tとは、ポートUの軸線方向中心点から、底部開口47aの軸線方向中心点までの線方向距離のことである。
【0035】
また、前記油路65は、シリンダブロック42の中央部のヨーク23側段部面42aにおいて、プランジャ孔47の底部側に開口部65aが形成されている。同開口部65aはシールプラグ110にて封止されている。
【0036】
各第1弁孔63には、スプール型の第1切替弁66が摺動自在に配置されている。第1切替弁66が分配弁に相当する。円錐コロ軸受39の外輪39aの外周面には円筒状のホルダ68が固定されている。ホルダ68の内周面において、軸線方向の中央部は縮径されており、同縮径部には、玉軸受69を介してリテーナ70が回動自在に支持されている。リテーナ70は、図6(a)に示すように、円筒状の筒部71と、筒部71のシリンダブロック42側の端部に張出形成されたフランジ72とから構成されている。そして、リテーナ70は、図3に示すようにその軸心が玉軸受69により軸心Oに対して斜交するようにして配置され、この状態で、入力軸21が回動可能に貫通されている。この斜交により、フランジ72のシリンダブロック42に対向する面(以下、フランジ面という)を含む仮想平面は、軸心Oに対して斜交する。
【0037】
図6(a)に示すようにリテーナ70のフランジ72には、係止溝73がその軸心を中心にして等角度毎に外周から軸心に向かって切り込み形成されている。係止溝73には、図6(b)に示すように第1切替弁66に設けられたくびれ部66bが係入されている。なお、くびれ部66bは隣接した大径部66cよりも小径とされている。
【0038】
第1切替弁66は軸心Oと斜交するフランジ面を備えたリテーナ70と係合することにより、リテーナ70がシリンダブロック42と相対回転する際に、シリンダブロック42の軸方向に沿って往復動し、図7に示すような変位を実現する。
【0039】
前記リテーナ70のフランジ72は、図7に示すように、第1切替弁66をポート閉鎖位置n0を中心としてポートUと第2油室62とを連通させる第1開口位置n1と、ポートUと第1油室61とを連通させる第2開口位置n2間を往復移動させる。そして、このリテーナ70により、第1油圧装置100にはシリンダブロック42の軸心Oの周りの回転向に対応して、0度〜180度の範囲で領域H、180度〜360(0)度の範囲で領域Iが付与されている。
【0040】
ここで、領域HとはポートUと第2油室62が連通する区間を全て含む領域のことであり、領域IとはポートUと第1油室61が連通する区間を全て含む領域のことである。
【0041】
前記斜板面44が直立位置から負の最大傾動角度位置へと変位した場合、図12において、このときの第1油圧装置100の行程容積VPは、0からVMmaxとなり、それに応じて入力軸21の入力回転数がNinのとき出力回転数Nout (ヨーク23の回転数)はNinから2Ninの範囲の速度が得られるように本実施形態ではその第1油圧装置100側の作動油の吐出量が設定されている。
【0042】
なお、図12において、縦軸は第1油圧装置100及び第2油圧装置200の1回転当たり行程容積を示し、横軸はヨーク23(出力回転部)の出力回転数Nout を示している。同図において、実線は、第1油圧装置100の行程容積VPの変化を示し、一転鎖線は第2油圧装置200の行程容積VMの変化を示している。
【0043】
第1油圧装置100の行程容積とは、プランジャ43とプランジャ孔47で形成されるプランジャ空間がシリンダブロック42が1回転する間に、第1油室61及び第2油室62と授受する作動油量のことである。第2油圧装置200の行程容積とは、プランジャ58とプランジャ孔57で形成されるプランジャ空間がヨーク23(出力回転部)がシリンダブロック42に対して1回転する間に、第1油室61及び第2油室62と授受する作動油量のことである。
【0044】
また、本実施形態では、図1のように斜板面44が負側へ傾動した場合に、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角0〜180度の範囲で、作動油がポートUを介してプランジャ孔47へ吸入され、180〜360(0)度の範囲で、作動油がポートUを介してプランジャ孔47から吐出される。そして、斜板面44が正側へ傾動した場合に、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角0〜180度の範囲で、作動油がポートUを介してプランジャ孔47から吐出され、180〜360(0)度の範囲で、作動油がポートUを介してプランジャ孔47へ吸入される。吐出する油室及び吸入する油室は、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角に対応した領域H,Iによって決まる。
【0045】
図1及び図4に示すように、連通孔としての油路75は、プランジャ孔57の底部と、第2弁孔64の第1油室61及び第2油室62との間の部位間を連通するように形成されている。前記油路75は、図1及び図4に示すように、シリンダブロック42の段部面42a側から内方へ向けて、即ち、外部からシリンダブロック42中央部側へ向けて斜状に配置されている。
【0046】
詳述すると、各第2弁孔64には、第1油室61と第2油室62との間において、対応するプランジャ孔57に連通する油路75のポートWが形成されている。そして、油路75と連通するプランジャ孔57の底部開口57aと、前記第2弁孔64のポートWとは、シリンダブロック42の軸線方向において、所定距離sを有するように離間して配置されている。プランジャ孔57の底部開口57aは、第1油室61とオーバラップする位置に配置されており、ポートWは、底部開口57aよりもプランジャ58がシリンダブロック42から突出する方向寄りに位置している。ここで、前記所定距離sは、ポートWの軸線方向中心点から、底部開口57aの軸線方向中心点までの軸線方向距離のことである。また第1油圧装置100における所定距離tと第2油圧装置200における所定距離sは同一の長さとされている。
【0047】
また、前記油路75は、シリンダブロック42の中央部のクレイドル45側段部面42aにおいて、プランジャ孔57の底部側に開口部75aが形成されている。同開口部75aはシールプラグ120にて封止されている。
【0048】
各第2弁孔64には、スプール型の第2切替弁76が前記プランジャ58に対して平行となるように摺動自在に配置されている。第2切替弁76は分配弁に相当する。
【0049】
図5に示すようにヨーク23のシリンダブロック42側の端面の中央部には収納孔78が形成されている。収納孔78内には、入力軸21を内挿した筒状の支持部材81が設けられている。同支持部材81は、ヨーク23の収納孔78の底部に対して複数のピン82を介して一体に連結されている(図3参照)。支持部材81の内周には、リテーナ83が玉軸受84を介して回動自在に連結されている。
【0050】
リテーナ83は、前記リテーナ70と同一の構成である筒部、フランジ、係止溝を備えているため、それらの各構成については、同一符号を付してその説明を省略する(図6(a)参照)。
【0051】
リテーナ83は、図3に示すようにその軸心が玉軸受84により軸心Oに対して斜交するようにして配置され、この状態で、入力軸21が回動可能に貫通されている。この斜交により、フランジ72のシリンダブロック42に対向する面(以下、フランジ面という)を含む仮想平面は、軸心Oに対して斜交する。
【0052】
リテーナ83の係止溝73には、図6(b)に示すように第2切替弁76に設けられたくびれ部76bが係入されている。くびれ部76bは隣接した大径部76cよりも小径とされている。
【0053】
第2切替弁76は軸心Oと斜交するフランジ面を備えたリテーナ83と係合することにより、図7に示すような変位を実現する。
なお、図7において、リテーナ70のフランジ72と、リテーナ83のフランジ72との相対位置は、リテーナ70,83が回転自在にされているため変化するが、説明の便宜上、1つにまとめて図示している。
【0054】
そして、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42との相対回転に伴って、リテーナ83のフランジ72により、第2油圧装置200にはヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角0度〜180度の範囲で領域J、180度〜360(0)度の範囲で領域Kが付与されている。
【0055】
ここで、領域JとはポートWと第1油室61が連通する区間を全て含む領域のことであり、領域KとはポートWと第2油室62が連通する区間を全て含む領域のことである。
【0056】
また、本実施形態では、図1のように斜板面44が負側へ傾動した場合に、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角0〜180度の範囲で、作動油がポートWを介してプランジャ孔57へ吸入され、180〜360(0)度の範囲で、作動油がポートWを介してプランジャ孔57から吐出される。斜板面44が正側へ傾動した場合に、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角0〜180度の範囲で、作動油がポートWを介してプランジャ孔57から吐出され、180〜360(0)度の範囲で作動油がポートWを介してプランジャ孔57へ吸入される。吐出する油室及び吸入する油室は、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角に対応した領域J,Kによって決まる。
【0057】
前記プランジャ孔47、プランジャ孔57、第1油室61、第2油室62、第1弁孔63、第2弁孔64、油路65、油路75、ポートU及びポートWとにより、油圧閉回路Cが構成されている。
【0058】
前記油圧閉回路Cに作動油をチャージするために、入力軸21内には軸心Oに沿って軸孔99が穿設されている。軸孔99はスリーブ37に対応する部位において、半径方向に導入油路99aを有している(図1参照)。同導入油路99aはスリーブ37に半径方向に穿設された油路37a及び外周面に形成された周溝37bに連通されている。側壁部材30には周溝37bに連通する油路30aが設けられ、油路30a内には図示しないチャージポンプから作動油が圧送される。また、前記軸孔99において、入力軸21の出力端側の開口部には栓体121が螺入量を調節自在に螺合されている。
【0059】
一方、入力軸21において、第1油室61及び第2油室62には、軸孔99に連通可能な弁体を開閉するチャージ弁90(逆止弁)がそれぞれ配置されている。同チャージ弁90の弁体は油圧閉回路C内の油圧が軸孔99内のチャージ圧に達するまで開口して、軸孔99内の作動油を油圧閉回路Cに供給する。又、チャージ弁90は作動油が軸孔99へ逆流することを防止する。
【0060】
ここで、本実施形態において、斜状に油路65,75を設けたことによる、シリンダブロック42の大きさについて、油路65,75がシリンダブロック42の軸線(軸心O)との直交断面内で径方向に延設された場合と比較して詳しく説明する。尚、以下の説明では、第1油圧装置100側に関する符号を付して説明するが、第2油圧装置200側でも同様のことがいえ、その重複説明は省略する。
【0061】
上述したように、プランジャ孔47の底部開口47aと第1弁孔63のポートUは、シリンダブロック42の軸線方向(軸心Oが延びる方向)において、所定距離tを有して配置されている。そして、油路65は、プランジャ孔47の底部(底部開口47a)と、第1弁孔63の第1油室61及び第2油室62との間の部位間(ポートU)とを連通するように、シリンダブロック42の段部面42a側から内方へ向けて斜状に形成されている。このとき第2油室62はプランジャ孔47の底部開口47aにオーバラップした位置に配置されている。
【0062】
ここで、前記油路65をシリンダブロック42の軸線(軸心O)との直交断面内で径方向に沿って配置した場合を想定すると、プランジャ孔47の底部開口47a及びポートUを第1油室61と第2油室62の間に配置する為に、図1の状態よりも第2油室62をヨーク23側に設けなければならない。それに対して、油路65を斜状に構成したことで、プランジャ孔47の底部開口47aの位置に無関係に第2油室62を配置できる。即ち、第2油室62をシリンダブロック42の中央部寄りに配置でき、このようにしてもポートUは第1油室61と第2油室62の間に位置する。この結果、シリンダブロック42は軸線方向にコンパクトにされる。
【0063】
また、通常、前記油路65を形成する場合、まずドリル等を用いてシリンダブロック42の外側からドリル孔を第1弁孔63に貫通するまで穿設する。その後、油圧閉回路Cを形成するために、その開口部65aをシールプラグ110で封止する。
【0064】
このとき、前記油路65をシリンダブロック42の軸線(軸心O)との直交断面内で径方向に沿って形成する場合を考えると、ドリルによるドリル孔はシリンダブロック42の外周面(即ち、軸心Oに沿った周面)側からプランジャ孔47を貫通して形成される。そして、シールプラグ110は、プランジャ孔47とシリンダブロック42の外周面との間に螺入される。このとき、シールプラグ110のねじ込み量を確保するために、プランジャ孔47とシリンダブロック42の外周面との肉厚を確保しなければならない。この結果、シリンダブロック42が径方向に大きくなってしまう。
【0065】
それに対して、本実施形態のように斜状に油路65を形成して、シールプラグ110をシリンダブロック42におけるプランジャ孔47の底部側に設置する場合においては、元々プランジャ孔47の底部側は、所定の肉厚が必要とされている。この結果、プランジャ孔47とシリンダブロック42の外周面間を肉薄にして、径方向のコンパクト化を図ったとしても、余分に軸線方向にシリンダブロック42が大きくなることはない。
【0066】
従って、油路65をシリンダブロック42の軸線(軸心O)の直交断面内で径方向に延出する場合と比較して、油路65をシリンダブロック42の段部面42a側から内方へ向けて斜状に形成することでシリンダブロック42のコンパクト化が可能になる。
【0067】
(作用)
さて、上記のように構成された無段変速装置20のクレイドル45の傾動に伴う作用を説明する。なお、エンジン22のクランク軸から入力軸21に付与される入力回転数Ninは説明の便宜上、一定のものとして説明する。
【0068】
(出力回転数Nout がNinの場合)
図11に示すシフトレバー146を操作して、クレイドル45を介して斜板面44を直立位置に位置させる。
【0069】
この状態においては、エンジン22の駆動力により入力軸21を介してシリンダブロック42が正方向へNinで回転する。以後、Ninと逆向きにギヤ142が回転する時を正方向の回転という。斜板面44は入力軸21の軸心Oに対して直立位置の中立状態にある。第1油圧装置100のプランジャ43は斜板面44によっては往復動されず、従って、この状態では油圧閉回路C内を作動油が循環しない。このため、第2油圧装置200側においては各プランジャ58の突出端がストローク運動ができない状態でシュー60を介して回転斜面51に当接係合するため、シリンダブロック42と回転斜面51とは直結状態となり、一体回転する。すなわち、この状態は、入力軸21とギヤ142とが直結状態となる。この回転斜面51に付与された正方向への回転は、ヨーク23、連結された第1クラッチ139、ギヤ141、ギヤ142を介して終減速装置へ伝達される。
【0070】
前記斜板面44が直立位置に位置している場合には、図12に示すように第1油圧装置100の行程容積VPは0となり、出力回転数Nout (ヨーク23の回転数)は入力回転数Ninとなる。
【0071】
(出力回転数Nout がNinと2Ninの間の場合)
シフトレバー146を操作して、クレイドル45を介して斜板面44を負側に傾動して所定の負の傾動角度位置と直立位置との間の領域に位置させる。この所定の負の傾動角度位置とは、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値(=VMmax)と等しくなるまでの位置である。
【0072】
この場合、エンジン22の駆動力により入力軸21を介してシリンダブロック42がNinで回転する。すると、第1油圧装置100は、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角0〜180度の範囲で、作動油をポートUを介してプランジャ孔47へ吸入し、180〜360(0)度の範囲で、作動油をポートUを介してプランジャ孔47から吐出する。吐出及び吸入する油室は、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角に対応した領域H,Iによって決まる。尚、第1油圧装置が吐出,吸入する作動油量は、斜板面44の負側への傾動角が大きくなるにつれて、増加する。このとき、第2油圧装置200は、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角0〜180度の範囲で、作動油をポートWを介してプランジャ孔57へ吸入し、180〜360(0)度の範囲で、作動油をポートWを介してプランジャ孔57から吐出する。吐出する油室及び吸入する油室は、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角に対応した領域J,Kによって決まる。
【0073】
この結果、シリンダブロック42が入力軸21を介して駆動される回転数Ninと、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用による正方向の回転数との合成(和)により、回転斜面51は回転される。この回転斜面51に付与される正方向の回転は、ヨーク23、連結された第1クラッチ139、ギヤ141、ギヤ142を介して終減速装置へ正方向の回転として伝達され、増速作用を行う。
【0074】
このとき、斜板面44が直立位置から所定の負の傾動角度位置側へと変位すると、図12において第1油圧装置100の行程容積VPは0からVMmaxへと増加し、それに応じて出力回転数Nout はNinから2Ninへと増速する。なお、出力回転数Nout がNinから2Ninに変化するときの第2油圧装置200の行程容積VMはVMmaxのままである。この状態の作動油の流れ及び回転の様子は、図10に示しており、このとき油圧閉回路Cでは、図に示す矢印で示すような作動油の流れとなっている。また、Nin,Nout に付された矢印は、該当する部材の回転方向を示している。
【0075】
(出力回転数Nout が0とNinの間の場合)
シフトレバー146を操作して、クレイドル45を介して斜板面44を正側に傾動して直立位置から正の傾動角度位置に位置させる。なお、正の傾動角度位置のうち、所定の正の傾動角度位置とは、第1油圧装置100の行程容積VPの絶対値が第2油圧装置200の行程容積VMの絶対値と等しくなるまでの位置である。
【0076】
この場合、斜板面44が正方向へ傾動するため、エンジン22の駆動力により入力軸21を介してシリンダブロック42が回転すると、第1油圧装置100は、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角0〜180度の範囲で、作動油を、ポートUを介してプランジャ孔47から吐出し、180〜360(0)度の範囲で、作動油を、ポートUを介してプランジャ孔47へ吸入する。吐出する油室及び吸入する油室は、シリンダブロック42の軸心O周りの回転角に対応した領域H,Iによって決まる。尚、第1油圧装置100が吐出,吸入する作動油量は、斜板面44の正側への傾動角が大きくなるにつれて、増加する。このとき、第2油圧装置200は、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角0〜180度の範囲で、作動油をポートWを介してプランジャ孔57から吐出し、180〜360(0)度の範囲で、作動油をポートWを介してプランジャ孔57へ吸入する。吐出する油室及び吸入する油室は、ヨーク23(出力回転部)のシリンダブロック42に対する軸心O周りの相対回転角に対応した領域J,Kによって決まる。
【0077】
この結果、プランジャ58の回転斜面51への突出押圧作用により、前記「出力回転数Nout がNinと2Ninの間の場合」とは逆方向の回転を与える。従って、前記逆方向の回転数と、シリンダブロック42の正方向の回転数との合成(和)が、ヨーク23、連結された第1クラッチ139、ギヤ141、ギヤ142を介して終減速装置へ伝達される。このときの回転数の和は、逆方向の回転数分減少した正方向の回転数となるため、出力回転数Nout は「出力回転数Nout がNinの場合」に比較して小さくなる。
【0078】
本実施形態では、このとき、斜板面44が直立位置から正の最大傾動角度位置側へと変位すると、図12において第1油圧装置100の行程容積VPは0から−VMmax(前記「−」はポートUから第2油室62に吐出される場合を意味している。)側へと増加し、それに応じて出力回転数Nout はNinから0へと減速する。
【0079】
なお、このときの出力回転数Nout がNinから0に変化するときの第2油圧装置200の1回転当たりの行程容積VMは−VMmaxである。(前記「−」は第2油室62からポートWへ吸入される場合を意味している。)
図9は、このときの状態の模式図である。第1油室61(油室A)側は、第2油室62(油室B)側よりも高圧側となっており、油圧閉回路Cでは、図に示す矢印で示すような作動油の流れとなっている。また、Nin,Nout に付された矢印は、該当する部材の回転方向を示している。
【0080】
(出力回転数Nout が0の場合)
クラッチ機構300でエンジン22からの入力回転Ninを切断することによって、ヨーク23を停止させる。
【0081】
(出力回転数Nout が0未満の場合)
クラッチ機構300を切断状態でシフトレバー146を後進域側へシフトすると、このシフトレバー146の操作に応動して、ギヤシフト装置138の第1クラッチ139が切り離され、第2クラッチ140が接続される。このとき、エンジン22側からの回転が無段変速装置20に伝わらなくなるため、プランジャ58の回転斜面51に対する押圧作用がなくなり、ヨーク23は第2油圧装置200からフリーとなる。このため、ヨーク23の第2クラッチ140の接続、すなわち後進時の切換えを容易に行うことができる。そして、シフトレバー146を後進域側へシフトし終えた後は、クラッチ機構300を再び接続状態にする。尚、前進側へ戻す時も同じ理由で、足踏みクラッチのクラッチペダルを踏み込み、クラッチ機構300を切断状態にする。
【0082】
(出力回転数Nout が0と−Ninの間の場合)
第2クラッチ140による後進接続が行われた後は、図9に示すように出力回転数Nout と、第1油圧装置100の行程容積の変化状態は、前進(正転)の場合と同じであり、(出力回転数Nout が0とNinの間の場合)の説明と同じため説明を省略する。図9は作動油の流れ及び回転方向を示している。なお、この場合回転斜面51に付与される回転は、ヨーク23、第2クラッチ140、ギヤ143、アイドラギヤ144、アイドラギヤ145、ギヤ142を介して終減速装置へ伝達される。
【0083】
(出力回転数Nout がNinと−2Ninの間の場合)
この場合も、第1油圧装置100と第2油圧装置200の作用は(出力回転数Nout がNinと2Ninの間の場合)と同じであるため、説明を省略する。図10は作動油の流れ及び回転方向を示している。この場合も、回転斜面51に付与される回転は、ヨーク23、第2クラッチ140、ギヤ143、アイドラギヤ144、アイドラギヤ145、ギヤ142を介して終減速装置へ伝達される。
【0084】
従って、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、プランジャ孔47,57の底部開口47a,57aと弁孔63,64のポートU,Wとをシリンダブロック42の軸線方向に所定距離t,sを有するように離間して配置して、油路65,75をシリンダブロック42の段部面42a側から内方へ向けて斜状に配置した。
【0085】
近時において、より小さい油圧装置の実現が望まれるようになっており、このためシリンダブロック42のコンパクト化が望まれている。しかし、例えば、プランジャ孔47,57(プランジャ室)と弁孔63,64(分配弁往復動孔)を連通する油路65,75(連通孔)を、シリンダブロック42における軸線(軸心O)との直交断面内で径方向に沿ってドリル孔を穿設し、その上で、その開口をシールプラグ110,120により封止することで形成すると、シールプラグ110,120の肉厚を考慮しなくてはならない。この結果、シリンダブロック42の径方向の寸法が大きくなってしまう。
【0086】
このため、油路65,75をシリンダブロック42の軸線との直交断面内で径方向に延設する場合と異なり、プランジャ孔47とシリンダブロック42の外周面との間に肉厚を確保する必要がなく、シリンダブロック42を径方向に対してコンパクトにできる。その一方で、シリンダブロック42におけるプランジャ孔47の底部側は、所定の肉厚が必要とされている部位であるため、余分に軸線方向にシリンダブロック42が大きくなることもない。
【0087】
(2)また、弁孔63,64(分配弁往復動孔)と油路65,75(連通孔)の合流部(ポートU,W、底部開口47a,57a)は作動油の流通の関係上、第1及び第2油室61,62の間に必ず位置させる必要がある。この結果、油路65,75をプランジャ孔47,57の底部からシリンダブロック42の軸線との直交断面内で径方向へ延びるように形成すると、第1油室61と第2油室62の距離が大きくなり、シリンダブロック42を軸線方向(軸心Oが延びる方向)にコンパクトにすることが困難であると考えられる。これに対して、上記実施形態では、油室61,62をプランジャ孔47,57の底部開口47a,57aの位置に無関係に配置できる。即ち、第1油室61を出力側(ヨーク23側)へ、第2油室62を入力側(クレイドル45側)へ接近させて、両油室61,62をシリンダブロック42の中央部寄りに配置できる。この結果、第1油室61と第2油室62を接近させて配置することができるので、シリンダブロック42を軸線方向に対してコンパクトにできる。
【0088】
(3)上記実施形態では、無段変速装置20をエンジン22(原動機)からの入力軸21によってシリンダブロック42が回転する構成とし、同入力軸21を反エンジン22側に延出して、延出された入力軸21外周にヨーク23(出力回転部)を設け、ヨーク23の回転方向と一致して、或いは逆転して動力伝達するギヤシフト装置138(正逆回転切替装置)を設け、さらにエンジン22の入力軸21への回転伝達を入り切りするクラッチ機構300(断接手段)を設けて動力伝達装置とした。このため、上記構成のコンパクト化が図られたシリンダブロック42を有する無段変速装置20を用いた動力伝達装置のコンパクト化も図ることができる。
【0089】
(4)上記実施形態では、出力側に延出された入力軸21とヨーク23の双方から出力回転を得ることができる。また、ヨーク23の回転はクレイドル45の傾動角度及びギヤシフト装置138により、終減速装置に対して、正逆に広範囲の駆動トルクを伝達できる。
【0090】
(5)上記実施形態では、クラッチ機構300を切断することにより、ヨーク23の回転を切り換える(正→逆、又は逆→正)際の同ヨーク23に掛かるトルクを解放でき正逆回転切替えを容易に行うことができる。
【0091】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、ギヤシフト装置138の構成を図13に示すギヤシフト装置150(CST)の構成に変えてもよい。
【0092】
ギヤシフト装置150は、同図に示すように、ヨーク23の突出端に出力ギヤ24が形成され、図示しない終減速装置に駆動トルクを伝達する出力軸155に連結された前進クラッチ152、及び後進クラッチ153を備えている。また下記の歯車列を備えている。
【0093】
前進クラッチ152の駆動側クラッチプレートは、出力ギヤ24に噛合されたギヤ151を備えている。そして、シフトレバー146の操作により、前進クラッチ152が連結されると、ヨーク23、出力ギヤ24、ギヤ151、前進クラッチ152、出力軸155を介して、図示しない終減速装置に駆動トルクを伝達する。
【0094】
又、出力ギヤ24には、アイドラギヤ156、アイドラギヤ156と共通軸を有するアイドラギヤ157及び中間ギヤ159を介して後進クラッチ153の駆動側クラッチプレートに連結されたギヤ160からなる歯車列が連結されている。そして、クラッチ機構300の切断後におけるシフトレバー146の後進側操作により、後進クラッチ153が連結されると、前記歯車列、出力軸155を介して、図示しない終減速装置に駆動トルクを伝達する。
【0095】
この実施形態では、ギヤシフト装置150が正逆回転切替装置に相当する。
・上記実施形態において、無段変速装置20、動力伝達装置に用いた第1油圧装置100,又は第2油圧装置200をプランジャ47,57が軸線方向に往復動するアキシャル型に代えて、プランジャが軸線の径方向に往復動するラジアル型にしてもよい。
【0096】
次に、上記実施形態及び各別例から把握できる技術的思想について、それらの効果と共に以下に記載する。
(1)前記分配弁往復動孔には、作動油の流通路となる2つの油室が並設され、分配弁往復動孔と連通孔の第1合流部は、前記油室間に配され、プランジャ室と連通孔の第2合流部は、何れか一方の油室とオーバラップして配されていることを特徴とする油圧式無段変速装置。このようにすれば、第1合流部が径方向において、プランジャ室が形成された領域と重なり、シリンダブロックを軸線方向にコンパクトにできる。なお、前記ポートU,Wが第1合流部に相当し、プランジャ孔47,57の底部開口47a,57aが第2合流部に相当する。
【0097】
(2)前記連通孔は、シリンダブロックにおけるプランジャ室の底部側に開口部を備えており、前記開口部は封止部材にて封止されていることを特徴とする油圧式無段変速装置。このようにすれば、封止部材を備えた油圧式無段変速装置において、径方向のコンパクト化を効果的に実現できる。なお、本実施形態では、シールプラグ110,120が封止部材に相当する。
【0098】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、シリンダブロックのコンパクト化を図ることができる。
【0099】
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の効果を動力伝達装置においても得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した実施形態の無段変速装置の断面図。
【図2】同じく図1におけるB−B線断面図。
【図3】同じく図1のA−A線断面図。
【図4】同じく要部断面図。
【図5】同じく要部断面図。
【図6】同じく(a)はリテーナ70の正面図、(b)は要部拡大図。
【図7】同じく第1切替弁66、第2切替弁76によるポートが開口するタイミングを示す説明図。
【図8】同じく無段変速装置を含む動力伝達装置の概念図。
【図9】同じく実施形態の作用を示す無段変速装置の概念図。
【図10】同じく作用を示す無段変速装置の概念図。
【図11】同じくシフターの平面図。
【図12】同じく行程容積と出力回転数とを表した特性図。
【図13】他の実施形態における動力伝達装置の要部概念図。
【符号の説明】
21…入力軸、22…エンジン(原動機)、23…ヨーク(出力回転部)、42…シリンダブロック、43,58…プランジャ、47,57…プランジャ孔(プランジャ室)、63…第1弁孔(分配弁往復動孔)、64…第2弁孔(分配弁往復動孔)、65,75…油路(連通孔)、66…第1切替弁(分配弁)、76…第2切替弁(分配弁)、100…第1油圧装置、138…ギヤシフト装置(正逆回転切替装置)、200…第2油圧装置、300…クラッチ機構(断接手段)。
Claims (2)
- プランジャの往復動によって作動油を吐出,吸入する第1油圧装置とプランジャの当接によって出力回転を得る出力回転部を有する第2油圧装置のシリンダブロックを共有し、同シリンダブロックを軸心周りに回転する構成とし、第1油圧装置のプランジャ室と第2油圧装置のプランジャ室との間で作動油が循環する油圧閉回路をシリンダブロックに設け、シリンダブロックに設けた分配弁の往復動によって前記プランジャ室間で作動油が循環する構成とした油圧式無段変速装置において、
第1及び第2油圧装置のプランジャ室と、それに対応する分配弁往復動孔とを連通する連通孔を形成し、
前記連通孔を、シリンダブロックにおける前記プランジャ室の底部側の段部面からシリンダブロック中央部側へ向けて斜状に形成し、前記段部面における前記連通孔の開口部を封止部材により封止したことを特徴とする油圧式無段変速装置。 - 請求項1に記載の油圧式無段変速装置を用いた動力伝達装置において、シリンダブロックを原動機からの入力軸によって回転する構成とし、入力軸を反原動機側に延出し、延出された入力軸外周に前記出力回転部を設けた構成とし、出力回転部の回転方向と一致して或いは、逆転して動力伝達する正逆回転切替装置を設け、原動機の回転軸への回転伝達を入り切りする断接手段を設けたことを特徴とする動力伝達装置。
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