JP3850982B2 - 農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法に関する。詳しくは、脆性破壊し難い農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、施設園芸の発展が目ざましく、ハウス栽培、トンネル栽培等により種々の作物が栽培されている。農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、光線透過率、保温性、機械的強度、耐候性等に優れていることからこのような施設園芸に使用されている。しかし、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを寒冷地に展張した場合、ハウスの外気温が極端に低下すると、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの柔軟性が極度に低下する。このような状況下では、強風や多大な積雪、又は何らかの振動等によってフィルムが破れ、穴があくことがある。従って、耐脆性破壊性に優れた(脆性破壊率の低い)農業用塩化ビニル系樹脂フィルムが望まれている。
【0003】
このような問題を解決する手法として、例えば、特開昭62−177050号公報には、塩化ビニル樹脂100重量部に対し、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク及び酸化ケイ素から選ばれた不活性固体微粒子を1〜15重量部添加することにより脆性破壊率を低下させる方法が開示されている。しかし、不活性固体微粒子は、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの透明性を低下させたり、白化する原因となることがあるので必ずしも好ましい方法とはいえない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、特殊な添加剤を用いることなしに耐脆性破壊性に優れた農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを成形する段階で、塩化ビニル系樹脂の粒子の形態が変化することに注目した。すなわち、安定剤、可塑剤等の添加剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物を混練する際に、塩化ビニル系樹脂の粒子の崩壊が進行する。混練の後、溶融・ゲル化状態を経て、粒子が融着してフィルム状に成形され、冷却、固化して塩化ビニル系樹脂フィルムが成形される。賦形された塩化ビニル系樹脂フィルム中には、混練・崩壊の程度に応じた大きさの粒子が存在する。
【0006】
本発明者らは、塩化ビニル系樹脂フィルム中の粒子の形態を定量化し、且つ、粒子の形状と脆性破壊との関係を検討した結果、成形品である塩化ビニル系樹脂フィルム中の粒子径が0.4μm以下となるように樹脂組成物を混練することにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到った。
【0007】
すなわち、本発明は、懸濁重合された塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、安定剤1〜10重量部、及び可塑剤30〜60重量部を含む樹脂組成物を混練、溶融、賦形して、厚さ30〜500μmの農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを製造する方法であって、樹脂組成物を溶融する前に、温度10〜130℃、ギャップ0.5〜1mm、周速度10〜100m/minに調整された対をなす混練ロールの間隙を通過させて混練し、塩化ビニル系樹脂フィルム中に存在する塩化ビニル系樹脂の粒子径を0.4μm以下にすることを特徴とする農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法である。
【0008】
本発明の特徴は、懸濁重合された塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂組成物をフィルム状に成形、賦形する前に、充分に混練して塩化ビニル系樹脂の粒子を崩壊させ、賦形されたフィルム中に含まれる粒子径を0.4μm以下に制御することにある。微細化された粒子を含む本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、低温における機械的強度が優れており、特に、−5℃における耐脆性破壊性に優れている。そのため、本発明の農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを展張した施設園芸ハウスが氷点以下の低温に晒された場合であっても、フィルム破れ等を起こすことがない。寒冷地において、特に有用である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の方法が適用できる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの組成には特に制限がなく、公知の樹脂組成物が適用できる。一般的には、塩化ビニル系樹脂に安定剤、可塑剤等の添加剤を添加した樹脂組成物をリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いて混合する。次いで、得られた樹脂組成物を押出成形機、カレンダーロール等の混練機で加熱、混練、溶融してフィルム状に成形した後、冷却ロール等を用いて冷却、賦形し、巻取ロールによって巻き取り、巻物状の製品とすることにより製造される。
【0010】
本発明に係わる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムには、熱安定剤、可塑剤の他、必要に応じて、防霧剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、無機物、抗酸化剤、安定化助剤、着色剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0011】
本発明に用いる塩化ビニル系樹脂は、懸濁重合された樹脂である。塩化ビニル系樹脂は、ポリ塩化ビニルばかりでなく、塩化ビニルを主成分とする共重合体も使用できる。塩化ビニルと共重合させることのできる単量体としては、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂の重合度は700〜2000程度が好ましい。また、平均粒子径は20〜300μm程度のものが好ましい。
【0012】
熱安定剤ないし滑剤としては、一般的に農業用塩化ビニル系樹脂フィルムに使用されるものが用いられる。例えば、ポリエチレンワックス、流動パラフィン、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、脂肪族アルコール、ステアリルアミド、メチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズマレート、フェノール類、有機フォスファイト化合物、β−ジケトン化合物等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の混合物でも良い。熱安定剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜10重量部である。好ましくは1〜5重量部である。
【0013】
可塑剤としては、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート等のフタル酸誘導体、ジオクチルフタレート等のイソフタル酸誘導体、ジ−n−ブチルアジベート、ジオクチルアジベート等のアジピン酸誘導体、ジ−n−ブチルマレート等のマレイン酸誘導体、トリ−n−ブチルシトレート等のクエン酸誘導体、モノブチルイタコネート等のイタコン酸誘導体、ブチルオレエート等のオレイン酸誘導体、グリセリンモノリシノレート等のリシノール酸誘導体、その他、エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂系可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し30〜60重量部の範囲内である。
【0014】
その他、エポキシ系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤等を用いることができる。エポキシ系可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等の植物油のエポキシ化物、エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ系可塑剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部である。
【0015】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、モノキシレニル・ジクレジルホスフェート、ジキシレニルフォスフェート、ジクレジル・エチルホスフェート、クレジル・ジエチルフェノールホスフェート、ジキシレニル・エチルフェノールホスフェート、キシレニル・ジエチルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、クレジル・ジフェニルホスフェート、ジクレジル・フェニルホスフェート、キシレニル・ジフェニルホスフェート、ジキシレニル・フェニルホスフェート等が挙げられる。リン酸エステル系可塑剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し1〜10重量部の範囲内である。
【0016】
防霧剤としては、フッ素系界面活性剤が挙げられる。具体的には、通常の界面活性剤の疎水基の炭素に結合した水素のかわりにその一部または全部を弗素で置換した界面活性剤で、特に、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤である。フッ素系界面活性剤の配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し0.01〜0.5重量部である。
【0017】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、ハイドロキノン系、シアノアクリレート系等各種の紫外線吸収剤が挙げられる。具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチルフェニル)−5−ブトキシカルボニルベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−メチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンジサリチレート等のハイドロキノン系紫外線吸収剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独又は、二種以上を組み合わせて使用することができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が特に好ましい。その配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し0.01〜3.0重量部である。
【0018】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−4−ベンゾエート、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバゲート、1,2,3,4−テトラ(4−カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)−ブタン、チヌビン−チヌビン−622(チバガイギー社製)、LS−944(チバガイギー社製)、LA−55(アデカアーガス化学社製)、のような2,2,6,6−テトラメチルピリジン単位含有ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。これら光安定剤は一種類、または二種類以上組み合わせて使用してもよい。その配合量は、塩化ビニル樹脂100重量部に対し0.05〜5重量部である。
【0019】
本発明において、保温性向上の目的で、紫外域に吸収のある無機物を配合することができる。具体的には次のようなものがあげられる。炭酸マグネシウム、マグネシウム珪酸塩(タルク)、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、リン酸金属塩、ハイドロタルサイト類(含水−又は無水−アルミニウム/マグネシウム塩基性炭酸塩)、アルミニウム/亜鉛塩基性炭酸塩炭酸リチウム−水酸化アルミニウム包接化合物等が挙げられる。
【0020】
これらの内、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化珪素、炭酸マグネシウム、及びハイドロタルサイト類がフィルムの透明性を低下させることが少なく特に好ましい。これらの無機物は一種でも二種以上を添加することもできる。その配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し0.5〜10重量部である。
【0021】
抗酸化剤として使用可能な化合物としては、フェノール系及び硫黄系抗酸化剤が使用できる。具体的には、2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、ジラウリルチオジプロピオネート等を挙げることができる。これらの抗酸化剤は、単独又は、二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
安定化助剤として使用可能な化合物としては、トリフェニルホスファイト、ジオクチルフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト等をあげることができる。これらの安定化助剤は、単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
着色剤として使用可能なものとしては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、アリザリンレーキ、酸化チタン、亜鉛華、パーマネントレッド、キナクリドン、カーボンブラック等を挙げることができる。これらの着色剤も、単独又は二種以上を組み合わせて使用することができる。以上の抗酸化剤、安定化助剤、着色剤は、フィルムの性質を悪化させない範囲、通常は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5重量部以下の範囲で選ぶことができる。
【0024】
塩化ビニル系樹脂に上記の各種添加物を配合して樹脂組成物とするには、各々必要量秤量し、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、スーパーミキサーその他の従来公知の配合機、混合機を使用すればよい。このようにして得られた樹脂組成物をフィルム化するには、それ自体公知の方法、例えば、溶融押出成形法(T−ダイ法、インフレーション法)、カレンダー成形法等の従来から知られている方法によってフィルム化すればよい。
【0025】
本発明では、上記樹脂組成物から各種成形法によりフィルム成形する前に、樹脂組成物を特定の条件で混練し、塩化ビニル系樹脂の粒子を微細に崩壊させることに特徴がある。通常、塩化ビニル系樹脂組成物をフィルム成形する場合、150〜200℃程度の温度で溶融、ゲル化するが、本発明では、溶融、ゲル化する前に、比較的低温において樹脂を混練し、粒子に剪断力を加えて微細に崩壊させる。このときの温度が高すぎると局部的にゲル化が始まり、粒子の崩壊が充分に起こらない。かかる点を考慮すると、樹脂を混練する温度は10〜130℃の温度範囲が好ましい。
【0026】
塩化ビニル系樹脂の粒子に剪断力を加える方法として、対をなす混練ロールを用いる方法が挙げられる。剪断力は、対をなす混練ロールのギャップ及び周速度に関係する。剪断力が小さいと粒子の崩壊が充分に起こらず、また、剪断力が大き過ぎると粒子の崩壊が不充分のうちにゲル化が開始する。成形品である塩化ビニル系樹脂フィルム中に存在する粒子径を0.4μm以下とすることを考慮すると、対をなす混練ロールのギャップは0.5〜1mm、該ロールの周速度は10〜100m/min.であることが好ましい。尚、本発明における混練ロールのギャップとは、対をなす混練ロールの相対する表面の最短距離をいう。
【0027】
本発明では、上記の如くして比較的低温において塩化ビニル系樹脂組成物を混練し、樹脂粒子に剪断力を加えて微細に崩壊させた後、公知の方法により、溶融、ゲル化させてフィルム成形する。成形温度は、150〜200℃程度の温度範囲である。溶融状態のフィルムを冷却ロール等を用いて冷却してフィルム状に賦形する。通常、フィルムの厚みは30〜500μmである。
【0028】
従来公知の方法、例えば、上記樹脂組成物をヘンシェルミキサー(槽径:800mm、4本羽、回転数500rpm)を用いて、最高温度100℃程度において5分間混合し、次いで、対をなすミキシングロール(800mm径、周速度40m/min)を用いて、180℃で混練した後、逆L型カレンダーロール(900mm径、180℃)で成形した場合、成形されたフィルム中に存在する塩化ビニル系樹脂の粒子径は0.5〜2μm程度である。
【0029】
一方、本発明の方法により製造したフィルム中に存在する塩化ビニル系樹脂の粒子径は0.4μm以下である。フィルム中に存在する塩化ビニル系樹脂の粒子を0.4μm以下に微細化した農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、低温における機械的特性が良好である。特に、耐脆性破壊性に優れ、低温における脆性破壊率が低いものである。
【0030】
本発明の方法により製造される農業用塩化ビニル系樹脂フィルムが、優れた耐脆性破壊性を有する理由は定かではないが、樹脂を溶融、ゲル化させてフィルム状に成形する際に、塩化ビニル系樹脂の粒子同士が熱によって融着する時、小さい粒子程、単位体積当たりの融着面積が大きい。そのため、大きい粒子を含むフィルムよりも強固に融着しており、特に低温における機械的特性が改善されるものと推定する。
【0031】
本発明に係わる農業用塩化ビニル系樹脂フィルムは、特に、寒冷地における施設園芸用ハウス(温室)、トンネル等の被覆用資材として用いられる。その他、マルチング用にも使用することができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明について更に詳細に説明する。尚、実施例に示した、塩化ビニル系樹脂フィルム中に存在する塩化ビニル系樹脂の粒子径、及びフィルムの脆性破壊率は下記方法により測定した。
(1)粒子径(μm)
塩化ビニル系樹脂フィルムを液体窒素中で凍結した後、切断して試験片とし、24時間アセトン(23℃)に浸漬する。切断面に金をスパッタ蒸着する。切断面を走査型電子顕微鏡〔(株)日立製作所製、形式:S−4500、加速電圧:10KV、倍率:20000倍〕撮影した写真からランダムに30個の塩化ビニル系樹脂の粒子を選定する。各粒子の粒子径(最長径)を測定し、その平均値を粒子径とする。
(2)脆性破壊率(%)
JIS P8134に準拠し(但し、三角錐は半径が1/2インチの半球状のもの、試験温度:−5℃)容量110Kg・cm、衝撃速度2.2m/秒の条件下で試料フィルム(試料数:30枚)に衝撃を与える。試料フィルムを目視観察し、穴あき破れと脆性破壊に区別し、脆性破壊した試料の割合を求める。
【0033】
調製例1(樹脂組成物の製造)
懸濁重合で得られたポリ塩化ビニル樹脂(平均重合度:1300)100重量部、ジオクチルフタレート45重量部、トリクレジルフォスフェート5重量部、エポキシ樹脂2.5重量部、Ca−Ba−Zn系安定剤2.5重量部、及び、ソルビタンパルミテート2重量部を、90℃においてリボンブレンダーを用いて5分間混合して、ポリ塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0034】
実施例1
調製例1で得られたポリ塩化ビニル樹脂組成物を一対の混練ロールA(径:250mm、ロール温度:10℃、ロールギャップ:1mm、ロール周速度:100m/min)を用いて混練した。次いで、110℃においてヘンシェルミキサーで10分間撹拌、混合し、更に、一対の混練ロールB(径:250mm、ロール温度:165℃、ロールギャップ:3mm、ロール周速度:20m/min)を用いて混練した後、逆L型カレンダー装置を用いてフィルム成形し、厚み75μmの農業用塩化ビニル樹脂フィルムを製造し、紙管に巻き取った。得られた農業用塩化ビニル樹脂フィルム中に存在する塩化ビニル樹脂の粒子径、及び、該フィルムの脆性破壊率を上記方法により測定した。得られた結果を〔表1〕に示す。
【0035】
実施例2〜7、比較例1〜6
一対の混練ロールAの温度、ギャップ、周速度を〔表1〕に記載した条件に変更した以外、実施例1と同様にして厚み75μmの農業用塩化ビニル樹脂フィルムを製造した。塩化ビニル樹脂の粒子径及び該フィルムの脆性破壊率を実施例1と同様にして測定した。得られた結果を〔表1〕に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明により、特殊な添加剤を用いることなしに、耐脆性破壊性に優れた農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法が提供される。本発明により製造される農業用塩化ビニル系樹脂フィルム中に存在する塩化ビニル系樹脂の粒子径は0.4μm以下であり、耐脆性破壊性に優れ、低温における脆性破壊率が低い。そのため、寒冷地における施設園芸用資材として有用である。
Claims (1)
- 懸濁重合された塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、安定剤1〜10重量部、及び可塑剤30〜60重量部を含む樹脂組成物を混練、溶融、賦形して、厚さ30〜500μmの農業用塩化ビニル系樹脂フィルムを製造する方法であって、樹脂組成物を溶融する前に、温度10〜130℃、ギャップ0.5〜1mm、周速度10〜100m/minに調整された対をなす混練ロールの間隙を通過させて混練し、塩化ビニル系樹脂フィルム中に存在する塩化ビニル系樹脂の粒子径を0.4μm以下にすることを特徴とする農業用塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法。
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