JP3849818B2 - エアバッグ用基布およびエアバッグとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両衝突時に乗員の衝撃を吸収し、その保護を図るエアバッグに関するものであり、さらに詳しくは、軽量で機械的特性に優れ、かつ低通気性を有するエアバッグ用基布およびエアバッグとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、エアバッグには300〜1000デニールのナイロン66またはナイロン6フィラメント糸を用いた平織物に、耐熱性、難燃性、空気遮断性などの向上のため、クロロプレン、クロルスルホン化オレフィン、シリコーンなどの合成ゴムなどのエラストマー樹脂を塗布、積層した基布を裁断し、袋体に縫製して作られていた。
【0003】
しかしながら、これらのエラストマー樹脂を基布の片面に塗布、積層する際、一般に、ナイフコート、ロールコート、リバースコートなどによるコーティング方式が採用されているが、フィラメント織物で構成されるエアバッグ基布に対しては、通常、クロロプレンエラストマー樹脂の場合では、基布表面に90〜120g/m2 塗布されており、厚みが厚くなり、収納性の面においても、パッケージボリュームが大きくなる問題があった。また、クロロプレンエラストマー樹脂に比べ、より耐熱性、耐寒性の優れたシリコーンエラストマー樹脂の場合では、塗布量が40〜60g/m2 で、軽量化しつつ、収納性の面でもかなり向上したが、まだ十分とは言えず、またエラストマーの塗布、積層は工程がまだまだ煩雑で生産性の面に問題があった。
【0004】
一方、エアバッグ用基布においては、低価格化ならびにモジュールカバーの縮小化のため、エアバッグ用基布の収納性向上が強く要望されおり、ノンコート基布を使用したエアバッグが注目されてきた。その対応技術として、ナイロン66、ナイロン6などのポリアミド系繊維織物およびポリエステル系繊維織物から構成される高密度ノンコートエアバッグの検討が進められている。例えば、特開平4−2835号公報は、コーティングをされていない低通気性の織布を提案しているが、原糸、特にポリマーについての特定の開示はない。また好適な素材としてポリエステルが記載され、さらに低通気性を付与するためにカレンダー加工の採用が開示されている。この提案により得られるエアバッグ用基布は、低通気性はかなり改善されるが、エアバッグとしての機械的特性、すなわち引裂強力がやや低く、またポリアミドに比べ伸度が低いため、顔面接触時の衝撃緩和の面においても十分とは言え難く、満足したエアバッグ用基布が得られていないのが実状である。また製造工程の面においても、工程が煩雑で製造コストも高くなり生産性の面にも問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来のエアバッグの欠点に鑑み、難燃性を保持しつつ、優れた機械的特性を有し、軽量でかつ通気性の低い安価なエアバッグ用基布およびエアバッグとその製造方法を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明のノンコートエアバッグ用基布は、相対粘度が2.7〜4.7で、アミノ末端基を2.0〜7.5(×10−5mol/g)含有するナイロン6・6系繊維の、単糸繊度が2〜8デニールで、総繊度が100〜600デニールで、フィラメント数が30〜300本で、引張強力が5.5g/d以上で、破断伸度が13%以上で、150℃乾熱収縮率が1.5〜5%で、沸騰水中収縮率が3.5〜10%であるフィラメント糸から構成された織物であって、かつ、該織物の通気度が、流体(空気)を0.2kg/cm2の圧力に調整して流し、その時通過する空気流量を測定した時に、40cc/cm2/sec以下であることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のノンコートエアバッグは、かかるノンコートエアバッグ用基布を用いて構成されていることを特徴とするものであり、また、さらに本発明のノンコートエアバッグの製造方法は、相対粘度が2.7〜4.7で、アミノ末端基を2.0〜7.5(×10−5mol/g)含有するナイロン6・6系繊維の、単糸繊度が2〜8デニールで、総繊度が100〜600デニールで、フィラメント数が30〜300本で、引張強力が5.5g/d以上で、破断伸度が13%以上で、150℃乾熱収縮率が1.5〜5%で、沸騰水中収縮率が3.5〜10%であるフィラメント糸を用いて織機で製織した生機を袋体に縫製することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、コーティングやカレンダー加工、さらにはヒートセットも施さずに優れた機械的特性および低通気性を有するエアバッグ用基布を提供することについて、鋭意検討したところ、相対粘度が2.7〜4.7で、アミノ末端基を2.0〜7.5×10-5mol/g含有したナイロン6・6系繊維を用い、単糸繊度が2〜8デニール、総繊度が100〜600デニール、フィラメント数が30〜300本、引張強力が5.5g/d以上、破断伸度が13%以上、150℃乾熱収縮率が1.5〜5.0%、沸騰水中収縮率が3.5〜10%のフィラメント糸から構成された高密度な織物が、難燃性を保持しつつ、優れた機械的特性を有し、軽量でかつ通気性の低いエアバッグを提供することができることを究明したものである。
【0009】
本発明におけるナイロン6・6系繊維としては、ナイロン6・6、および、ナイロン6・6とナイロン6との共重合体、ナイロン6・6にポリアルキレングリコール、ジカルボン酸やアミンなどを共重合したポリアミド系繊維を言う。なお、かかる繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用される各種添加剤を含んでいても良い。例えば熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、顔料、難燃剤などを含有せしめることができる。また本発明を達成するためには、かかる延伸糸の相対粘度が2.7〜4.7、アミノ末端基を2.0〜7.5×10-5mol/g含有していることが必須である。相対粘度が2.7未満では、高強度糸が得られず、エアバッグ用原糸として十分な強伸度特性が得られない。また相対粘度が4.7を越えるものでは、溶融粘度が高く、安定な吐出条件が得られず、弱糸および細糸が発生する。したがって、原糸強度や伸度は低下し、毛羽も多発する。なお、ここで言う相対粘度とは、試料2.5gを濃硫酸(98%)25ccに溶解し、恒温槽(25℃)の一定温度下においてオストワルド粘度計を用いて測定し求めたものである。
【0010】
また、アミノ末端基量が2.0×10-5mol/g以下では、重合速度が著しく低下し、ポリマー重合コストが高くなる。また紡糸過程で溶融粘度が高いため、安定な吐出条件が得られず、弱糸および細糸が発生しやすい。上記アミノ末端基量では一般的に高重合度ポリマーであり、延伸過程で著しく高い張力となるため、擦過による糸切れを生じやすく、均一な原糸強伸度特性を付与することが難しい。また、操業面においては、原糸や織物の毛羽品位を損ない、著しく収率が低下する。一方、7.5×10-5mol/g以上では、溶融重合および溶融紡糸過程でゲル化反応を生じやすく、紡糸機内で生成したゲルは、瀘過フィルターでは除去されず、吐出糸中に節(欠陥)として取り込まれ延伸過程で糸切れの原因となり、著しく、原糸強伸度特性を損なう。また操業面においても原糸や織物の毛羽品位を損ない、著しく収率が低下する。
【0011】
一方、本発明で言う糸条を構成する単糸繊度、総繊度、フィラメント数は、エアバッグとしての機械的特性ならびに収納性の面に大きく影響するため、単糸繊度は2〜8デニール、好ましくは5〜7デニール、総繊度は100〜600デニール、好ましくは200〜450デニール、フィラメント数は30〜300本、好ましくは50〜150本である。単糸繊度、総繊度が細すぎるとエアバッグとしての強力が低下し、反面、必要以上に太いと嵩高な織物になり収納性に劣る。単糸繊度、総繊度、フィラメント数については、上記の各範囲内で適宜組合せると良い。
【0012】
また本発明を達成するには織物を構成するフィラメント糸は、引張強力は5.5g/d以上、破断伸度が13%以上、150℃乾熱収縮率が1.5〜5.0%、沸騰水中収縮率が3.5〜10%であることが必要である。なお、ここで言うフィラメント糸の特性は、織物を構成したフィラメント糸(分解糸)の特性を表わす。なお、引張強力は5.5g/d以上、好ましくは6.5g/d以上であり、5.5g/d以下ではエアバッグとしての強力特性が劣る。また破断伸度が13%以下では織物は粗硬になり、また150℃乾熱収縮率が5.0%以上、沸騰水中収縮率が10%以上では織物の形態安定性が劣り、耐環境性すなわち耐熱性、耐湿性などの面で好ましくない。反面、150℃乾熱収縮率が1.5%以下、沸騰水中収縮率が3.5%以下では延伸過程で糸切れの原因となり、原糸強伸度特性を損なう。また操業面においても原糸や織物の毛羽品位を損ない、収率が低下する。一方、マルチフィラメント糸から構成される織物組織としては、平織、綾織、朱子織およびこれらの変化織、多軸織などの織物が使用されるが、これらの中でも、特に機械的特性に優れ、また地薄な面から平織物が好ましい。
【0013】
また本発明を達成するには、上記フィラメント糸から構成された織物の通気度が、流体(空気)を0.2kg/cm2 の圧力に調整して流し、その時通過する空気流量を測定した時に、40cc/cm2 /sec 以下、好ましくは30cc/cm2 /sec 以下であることが必要である。40cc/cm2 /sec 以上では、エアバッグの最も必要な特性であるガス遮断性が不充分になり好ましくはない。また、エアバッグとしての必要な機械的特性ならびに燃焼性、収納性、低通気性などの面から、上記フィラメント糸条から構成された織物が次の要件を同時に満足することにより、さらに効果が発揮される。
【0014】
(a) 目付W(g/m2 ) W≦250
(b) 厚さTh(mm) Th≦0.35
(c) 織密度D(本/in) 40≦D≦80
(d) 引張強力S(N/cm) S≧500
(e) 破断伸度E(%) E≧15
(f) 引裂強力Te(N) Te≧100
(g) カバーファクターK 1800≦K≦2500
(h) 油分Y(%) Y≦0.2
(i) クリンプ率C(%)経糸と緯糸の平均 C≦10
ここで、カバーファクターとは経糸総繊度をD1 (デニール)、経糸密度をN1 (本/インチ)とし、緯糸総繊度をD2 (デニール)、緯糸密度をN2 (本/インチ)とすると(D1 )1/2 ×N1 +(D2 )1/2 ×N2 で表され、低通気性の面から、2000〜2500が好ましい。また、織機としては、ウォータージェットルーム、エアージェットルーム、レピア織機を適宜使用することができる。また、クリンプ率とは織物分解糸のクリンプ率を表わす。すなわち、織物を構成している所定の糸長さをL1 、その織物の分解糸に0.1g/デニールの荷重をかけた時の糸長さをL2 とすると(L2 −L1 )/L1 で表わされる。好ましくはクリンプ率が経糸と緯糸の平均で10%以下、さらに好ましくは緯糸クリンプ率/経糸クリンプ率の比が0.4〜0.7、特に好ましくは、経糸が7〜15%、かつ緯糸が2〜8%である。また油分としては、燃焼性の面から好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.04%以下である。なお、かかる織物を用いたエアバッグ用基布は、運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグ、後部座席用エアバッグ、側面用エアバッグなどに適宜使用することができる。
【0015】
また本発明におけるエアバッグは通常ノンコート基布に対してよく行われるヒートセットを施さずに、製織後袋体縫製する、あるいは製織後精練/乾燥した基布を袋体縫製するのが良い。ヒートセットを施すと織物を構成する糸条が収束されて織物に隙間が生ずるために低通気性の面で好ましくなく、また織物構造の自由度が減少するために引裂強力が低下する。また、ヒートセットを施さないことから、製造工程が簡略化されるので製造コストが安くなるというメリットもある。また精練/乾燥は精練剤を含む20〜100℃の温水浴中に浸漬し、マングルで絞り、80〜150℃で乾燥するのが良い。
【0016】
また、上記エアバッグにおいては、インフレータ取り付け口やベントホール部分などに用いられる補強布またはバッグ展開形状を規制する部材が、該エアバッグ用基布と同一基布であることが縫製性の面から有利であり好ましい。またエアバッグの縫製にあたっては、打抜きまたは溶断によって形成された1枚もしくは複数枚のかかるエアバッグ用基布を用い、その周縁部を縫製することが好ましく、さらには周縁部の縫製が、一重または二重の合せ縫製のみで構成されたエアバッグが好ましい。
【0017】
本発明のエアバッグ用基布の特徴は、難燃性を損なわず、優れた機械的特性を有し、かつ通気度をエアバッグに好適な範囲に低下せしめることができるという点にある。すなわち、本発明で得られる基布は、コーティング加工およびカレンダー加工、さらにはヒートセットも施さずにして、難燃性を維持し、かつ軽量で機械的特性および低通気性に優れたものを提供することができる。
【0018】
【実施例】
次に実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
なお、実施例中のエアバッグ用基布の特性は下記の方法によりを測定した。
【0020】
引張強力 :JIS L1096(ストリップ法)により求めた。
破断伸度 :JIS L1096(ストリップ法)により求めた。
【0021】
引裂強力 :JIS L1096(シングルタング法)により求めた。
乾熱収縮率 :150℃で30分間処理した後、収縮率(%) を求めた。
【0022】
沸騰収縮率 :98℃で30分間処理した後、収縮率(%) を求めた
通気度 :層流管式通気度測定機を用い、流体(空気)を0.2kg/cm2 の圧力に調整して流し、その時通過する空気流量(cc/cm2 /sec) を測定した。
【0023】
難燃性 :FMVSS−302法(水平法)に基づいて、燃焼速度(mm/min)を求めた。
【0024】
膨脹展開特性:電気着火式インフレータにて膨脹展開特性をシリコーンゴムコート品と相対比較した。
【0025】
実施例1
相対粘度3.65、アミノ末端基3.80×10-5mol/gを含有した延伸糸からなるナイロン6・6繊維で、総繊度420デニール、フィラメント数72本のフィラメント糸を用い、ウォータージェットルームにて経糸と緯糸の織密度がともに53本/インチの平織物を織り、60℃で乾燥させ、エアバッグ用基布を得た。このエアバッグ用基布を構成するフィラメント糸(分解糸)の引張強力は7.3g/d、破断伸度16.3%、150℃乾熱収縮率が経糸1.6%、緯糸2.2%、沸騰水中収縮率が経糸5.1%、緯糸5.7%であった。またエアバッグ用基布の通気度は0.2kg/cm2 の圧力下で20.2cc/cm2 /sec であった。しかる後、該エアバッグ用基布から直径725mmの円状布帛2枚を打抜き法にて裁断し、一方の円状布帛の中央に同一布帛からなる直径200mmの円状補強布を3枚積層して、直径110mm、145mm、175mmの円周上を上下糸ともナイロン6・6繊維の420D/1×3から構成される縫糸で本縫いによるミシン縫製し、直径90mmの孔を設け、インフレータ取付け口とした。さらに中心部よりバイアス方向に255mmの位置に相反して同一布帛からなる直径75mmの円状補強布を一枚当て直径50mm、60mmの線上を上下糸ともナイロン6・6繊維の420D/1×3から構成される縫糸で本縫いによるミシン縫製し、直径40mmの孔を設けたベントホールを2カ所設置した。次いで、本円状布帛の補強布帛側を外にし、他方の円状布帛と経軸を45度ずらして重ね合わせ、直径700mm、710mmの円周状を上下糸ともナイロン6・6繊維の1260D/1から構成される縫糸で二重環縫いによるミシン縫製した後、袋体を裏返し、図1に示した60L容量の運転席用エアバッグを作製した。
【0026】
このようにして得られたエアバッグ用基布およびエアバッグの特性を評価し表1に示した。表1から明らかなように、実施例のエアバッグは、エアバッグに必要な機械的特性ならびに膨脹展開特性を有していた。
【0027】
比較例1,2
相対粘度5.15、アミノ末端基2.55×10-5mol/gを含有した延伸糸からなるナイロン6・6繊維[比較例1]および相対粘度2.80、アミノ末端基8.30×10-5mol/gを含有した延伸糸からなるナイロン6・6繊維[比較例2]で総繊度420デニール、フィラメント数72本のフィラメント糸を用い、ウォータージェットルームにて経糸と緯糸の織密度がともに53本/インチの平織物を織り、60℃で乾燥させ、エアバッグ用基布を得た。
【0028】
このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を実施例1と同様に評価し表1に示した。
【0029】
表1から明らかなように、比較例1,2のエアバッグは、原糸強度が低く、また毛羽により製織性が劣り、さらに織物での均一な強伸度特性が得られず、エアバッグ用基布として十分な基布が得られなかった。
【0030】
比較例3
実施例1と同一のナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を用い、ウォータージェットルームにて経糸と緯糸の織密度がともに53本/インチの平織物を得た。次いで、該織物をアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5g/lおよびソーダ灰0.5g/lを含んだ80℃温水浴中に3分間浸漬した後、130℃で3分間乾燥させ、次いで180℃で1分間熱ヒートセットし、エアバッグ用基布を得た。次いで、このエアバッグ用基布についても実施例1と同様に60L容量の運転席用エアバッグを作製した。
【0031】
このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を実施例1と同様に評価し日表1に示した。比較例3のエアバッグは、軽量性および低通気性の面で劣り、また引裂強力が低いという問題があった。
【0032】
比較例4
実施例1と同一のナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を用い、ウォータージェットルームにて経糸と緯糸の織密度がともに45本/インチの平組織の織物を得た。次いで、該織物を比較例3と同様の方法にて精練、乾燥した後、180℃で25秒間熱セットした。しかる後、該織物をコンマコーターを用い、塗工量が45g/m2 になるようにメチルビニル系シリコーンゴムにてコーティングを行ない、180℃で3分間の加硫処理調整し、エアバッグ用基布を得た。次いで、このエアバッグ用基布についても実施例1と同様に60L容量の運転席用エアバッグを作製した。
【0033】
このようにして得られたエアバッグ用基布およびエアバッグの特性を実施例1と同様に評価し表1に示した。比較例3のエアバッグは、低通気性に優れていたが、基布の重量が大きく、また加工工程が煩雑で生産性の面にも問題があった。
実施例2
相対粘度3.35、アミノ末端基3.12×10-5mol/gを含有した延伸糸からなるナイロン6・6繊維で、単糸繊度4.4デニール、総繊度315デニール、フィラメント数72本のフィラメント糸を用い、ウォータージェットルームにて経糸と緯糸の織密度がともに63本/インチの平織物を織り、比較例3と同様の方法で精練、乾燥を行ない、エアバッグ用基布を得た。このエアバッグ用基布を構成するフィラメント糸(分解糸)の引張強力は7.9g/d、破断伸度16.5%、150℃乾熱収縮率が経糸1.7%、緯糸2.4%、沸騰水中収縮率が経糸5.4%、緯糸5.9%であった。またエアバッグ用基布の通気度は、0.2kg/cm2 の圧力下で20.5cc/cm2 /sec であった。しかる後、該エアバッグ用基布から本体布を1枚、側面布を2枚溶融裁断し、図2に示した120L容量の助手席用エアバッグを作製した。
【0034】
このようにして得られたエアバッグ用基布およびエアバッグの特性を評価し表1に示した。本発明のエアバッグは、エアバッグに必要な機械的特性ならびに膨脹展開特性を有していた。
【0035】
比較例5
実施例2と同一のナイロン6・6繊維からなるフィラメント糸を用い、ウォータージェットルームにて経糸と緯糸の織密度がともに63本/インチの平織物を得た。次いで、該織物を比較例3と同様の方法にて精練、乾燥し、次いで180℃で1分間熱ヒートセットし、エアバッグ用基布を得た。次いで、これらのエアバッグ用基布についても実施例2と同様に120L容量の助手席バッグを作製した。
【0036】
このようにして得られたエアバッグ用基布の特性を実施例1と同様に評価し表1に示した。比較例5のエアバッグは、軽量性および低通気性の面で劣り、また引裂強力が低いという問題があった。
【0037】
比較例6
総繊度420デニール、144フィラメント、強度8.8g/デニール、伸度18%のポリエチレンテレフタレート系繊維からなるフィラメント糸を用い、レピア織機にて経糸と緯糸の織密度がともに53本/インチの平組織の織物を得た。次いで、該織物を比較例3と同様の方法にて精練、乾燥した後、180℃で25秒間熱セットした後、150℃に加熱した表面がフラットな金属ロールとプラスチックロールとの間で圧力25トン速度15m/分で片面に加圧圧縮加工を施し、エアバッグ用基布を得た。しかる後、実施例2と同様に120L容量の助手席用エアバッグを作製した。
【0038】
このようにして得られたエアバッグ用基布およびエアバッグの特性を実施例1と同様に評価し表1に示した。比較例6のエアバッグは、低通気性は優れるが、基布の重量が大きく、引裂強力が低いという問題があった。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、エアバッグとしての必要な機械的特性を保持しつつ、低通気性に優れたエアバッグを提供でき、また従来のコーティングを施したものやカレンダー加工品、さらにはヒートセット品に比べて、安価なエアバッグの提供が可能になり、エアバッグによる乗員保護システムを普及促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図は、運転席用エアバッグの斜視図である。
【図2】この図は、助手席用エアバッグの斜視図である。
【符号の説明】
1:乗員側布
2:インフレータ側布
3:開口部
4:ベントホール
5:本体布
6:側面布
Claims (17)
- 相対粘度が2.7〜4.7で、アミノ末端基を2.0〜7.5(×10−5mol/g)含有するナイロン6・6系繊維の、単糸繊度が2〜8デニールで、総繊度が100〜600デニールで、フィラメント数が30〜300本で、引張強力が5.5g/d以上で、破断伸度が13%以上で、150℃乾熱収縮率が1.5〜5%で、沸騰水中収縮率が3.5〜10%であるフィラメント糸から構成された織物であって、かつ、該織物の通気度が、流体(空気)を0.2kg/cm2の圧力に調整して流し、その時通過する空気流量を測定した時に、40cc/cm2/sec以下であることを特徴とするノンコートエアバッグ用基布。
- 該フィラメント糸が、単糸繊度が4〜7デニールで、総繊度が200〜450デニールで、引張強力が6.5g/d以上であるもので構成されている請求項1に記載のノンコートエアバッグ用基布。
- 該フィラメント糸が、50〜150本の範囲のフィラメント数で構成されている請求項1または2に記載のノンコートエアバッグ用基布。
- 該フィラメント糸が、150℃乾熱収縮率が1.5〜3.0%で、沸騰水中収縮率が5.0〜7.0%であるもので構成されている請求項1または2に記載のノンコートエアバッグ用基布。
- 該織物が、2000〜2350の範囲のカバーファクターを有するものである請求項1または2に記載のノンコートエアバッグ用基布。
- 該織物が、緯糸クリンプ率/経糸クリンプ率の比が0.4〜0.7であるクリンプ率(%)を有するものである請求項1または2に記載のノンコートエアバッグ用基布。
- 該織物が、経糸が7〜15%で、かつ、緯糸が2〜8%のクリンプ率を有するものである請求項1または2に記載のノンコートエアバッグ用基布。
- 該織物が、1×1の平織物である請求項1または2に記載のノンコートエアバッグ用基布。
- 該織物が、流体(空気)を0.2kg/cm2の圧力に調整して流し、その時通過する空気流量を測定した時に、30cc/cm2/sec以下の通気度を有するものである請求項1または2に記載のノンコートエアバッグ用基布。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のノンコートエアバッグ用基布を用いて構成されていることを特徴とするノンコートエアバッグ。
- 請求項10記載のノンコートエアバッグにおいて、補強布が、該ノンコートエアバッグ用基布と同一基布であることを特徴とするノンコートエアバッグ。
- 請求項10記載のノンコートエアバッグにおいて、バッグ展開形状を規制する部材が、該ノンコートエアバッグ用基布と同一基布であることを特徴とするノンコートエアバッグ。
- 該ノンコートエアバッグが、該ノンコートエアバッグ用基布を打抜きまたは溶断によって形成された該バッグ展開形状を縫製して構成されたものである請求項10記載のノンコートエアバッグ。
- 請求項13記載のノンコートエアバッグにおいて、該周縁部の縫製が、一重または二重の合せ縫製のみで構成されることを特徴とするノンコートエアバッグ。
- 相対粘度が2.7〜4.7で、アミノ末端基を2.0〜7.5(×10−5mol/g)含有するナイロン6・6系繊維の、単糸繊度が2〜8デニールで、総繊度が100〜600デニールで、フィラメント数が30〜300本で、引張強力が5.5g/d以上で、破断伸度が13%以上で、150℃乾熱収縮率が1.5〜5%で、沸騰水中収縮率が3.5〜10%であるフィラメント糸を用いて織機で製織した生機を袋体に縫製することを特徴とするノンコートエアバッグの製造方法。
- 該生機を袋体に縫製する前に、精練剤を含む20〜100℃の温水浴中に浸漬し、マングルで絞り、さらに80〜150℃で乾燥する請求項15記載のノンコートエアバッグの製造方法。
- 該生織の通気度が、流体(空気)を0.2kg/cm2の圧力に調整して流し、その時通過する空気流量を測定した時に、40cc/cm2/sec以下である請求項15または16に記載のノンコートエアバッグの製造方法。
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