JP3848200B2 - 高面圧下での摺動特性に優れる摺動部材 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、治工具類、自動車に代表される輸送機、産業機械、レジャー用品などの各分野において、特に高面圧下で使用される摺動部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
治工具類、自動車に代表される輸送機、産業機械、レジャー用品などの各分野においては、各部に多くの摺動部材が用いられている。その使用形態も純粋な摺動のみならず摺動の要素を含んだ転動など多岐に渡っている。代表的な摺動部材としては治工具、ピストンリング、バルブリフター、シム、軸受け、等速ジョイント、レールガイド等を挙げることができる。
【0003】
このような摺動部材としては、例えば特開平1−119683号公報に記載されているように、金属基材の上に固体潤滑皮膜を形成するにあたり、基材表面に基材よりも高硬度の中間層を形成し、その上に固体潤滑皮膜を形成したものがある。前記中間層は、基材自体が軟質金属もしくは軟質金属を含む複合材料の場合に、相手側部材との接触力によって基材表面が変形し、相手部材と凝着摩耗を生じるのを防止するためのものである。そして、前記中間層として具体的には窒素イオン注入層、TiC層を用いることが記載されている。
また、特開平11−323362号公報には、前記公報の技術に対して更に摺動特性を向上させるべく、ドロップレットを持つ硬質皮膜を形成し、この硬質皮膜に固体潤滑皮膜を被覆した摺動部材が記載されている。そして、前記硬質皮膜の材料として具体的にはHv1000〜3000のTiN、VNが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、各種部品の小型化に伴い、これに使用される摺動部材は使用環境が過酷な高面圧下で使用される傾向にある。前記公報の技術では、中間層、硬質皮膜の材質は耐摩耗性の観点から選定されており、高面圧下における硬質皮膜として必要な靭性について配慮されていないため、高面圧下での摺動部材として耐ピッチング性に劣り、十分な摺動特性、耐久性を有しているとは言えない。実際、硬質皮膜を窒素イオン注入材、TiC、TiN、VNで形成したものでは高面圧下では摺動特性が不足し、耐久性(寿命)に劣る。
本発明はかかる問題に鑑みなされたものであり、特に高面圧下においても優れた摺動特性、耐久性を発揮する摺動部材を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、硬質皮膜の高面圧下における摩耗状況(ピッチング発生状況)について鋭意研究した結果、硬質皮膜の靭性を向上させるだけでは十分な耐ピッチング性が得られず、高面圧下において摺動する際の相手材との摩擦により、基材に形成した硬質皮膜に過大な応力が発生し、これが原因となって損傷に至ることが見出された。上記応力の内、摺動部材の硬質皮膜表面(摺動面)に対して水平に作用する応力は、基本的には面圧および相手材と硬質皮膜の摩擦係数によって決まる。本発明では上記知見に基づき、基材にその硬度より高硬度でかつ靭性に富んだ硬質皮膜を形成すると共に相手材との間に固体潤滑皮膜を設け、摩擦係数の低減を測ることによって更なる高面圧摺動下において、より優れた耐久性を有する摺動部材の開発に成功した。
【0006】
すなわち、本発明の摺動部材は、基材の表面に硬質皮膜が被覆形成された第1摺動部材と、前記第1摺動部材の硬質皮膜側に設けられ、前記第1摺動部材と当接して相対運動により摺動する第2摺動部材とを備え、前記第1摺動部材の硬質皮膜あるいは前記第2摺動部材の摺動側表面に固体潤滑皮膜が被覆形成され、前記硬質皮膜がNi、CrおよびNを含有し、残部実質的にFeからなり、オーステナイト相を62 vol %以上有し、かつN含有量が23 at %以上、40 at %以下で、表面硬度がHv1080以上のオーステナイト相含有皮膜によって形成されたものである。
この摺動部材の好ましい態様として、前記固体潤滑皮膜はMoS2 、DLC、あるいはW、Cr、Ti、Moから選ばれる1種以上の金属元素を5〜30原子%含有し、残部がC又はC及びHからなる金属含有炭素皮膜で形成される。
本発明の摺動部材は、特に高面圧下における摺動特性に優れるので、前記第1摺動部材と第2摺動部材との接触面圧が1GPa以上の摺動環境で好適に使用される。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の摺動部材の各種形態を示すものであり、(A)に示した実施形態は、一方の摺動部材1の基材11の上に硬質皮膜12を形成し、この硬質皮膜12の上にさらに固体潤滑皮膜13を形成したものである。この場合、他方の摺動部材2は基材11のみでもよく、また(B)に示すように基材11の上に硬質皮膜12のみを形成したもの、あるいは(C)に示すように硬質皮膜12の上に更に固体潤滑皮膜13を形成したものでもよい。また、他の実施形態として、(D)に示すように、一方の摺動部材1の基材11の上に硬質皮膜12のみを形成し、他方の摺動部材2の基材11の上に固体潤滑皮膜13のみを形成したものでもよい。もっとも、この場合、他方の摺動部材2においても、(B)や(C)のように基材11の上に硬質皮膜12を形成してもよい。前記硬質皮膜12の厚みとしては、2〜50μm 程度でよく、固体潤滑皮膜13の厚さは0.5〜3μm 程度でよい。
【0008】
前記基材11としては、機械構造用鋼、工具用鋼、軸受け鋼等のFe基合金;Ti合金;Al合金等の各種金属材、超硬材、セラミックスなどを用いることができる。特に、高硬度材が好適である。局部的に高い面圧がかかる環境下で使用しても、基材の変形による皮膜の破壊、剥離を防止することができるからである。また、ヤング率は高い方が高面圧下における基材の弾性変形は小さく、皮膜と基材との界面に生じるせん断応力を抑制して密着性を向上させることができるので好ましい。かかる観点よりFe基合金、特にHv800以上、より好ましくはHv900以上の高硬度のFe基合金が好適である。
【0009】
前記硬質皮膜12としては、基材より高硬度であることが必要であるが、Ni、Cr、Nを含み、残部実質的にFeからなる硬質皮膜であって、皮膜中に窒化物を含むオーステナイト相(以下、「γ相」と表記する場合がある。)が62 vol %以上含有され、かつN含有量が23 at %以上、40 at %以下で、表面硬度がHv1080以上のγ相含有皮膜が好適であり、高面圧下での耐久性寿命に優れる。
【0010】
前記γ相含有皮膜については、靭性を有する大量のγ相中に、Nが過飽和に含まれ、さらに微細な窒化物が析出しているため、靭性と耐摩耗性とを兼ね備えており、特に高面圧下での摺動に対する耐久性が高い。γ相が62 vol %未満の場合には、23 at %以上の高N含有量の下では靭性が低下するため、その下限を62 vol %とする。また、表面硬度はHv1080未満では耐摩耗性が不足するので、下限をHv1080とする。
【0011】
γ相の含有率はXRD(X線回折)によって測定することができる。γ相にはNが固溶限を超えて含まれる場合が多く、Nを過飽和に含んだγ相を形成することによって膜の高硬度化及び高靭性化を図ることができる。尚、γ相にNが固溶している場合、XRDで測定されるγ相のピークは低角度側にシフトする。そのシフト量はγ相のN固溶量を反映しており、XRDのピーク分離を行なった結果についてソートベルト法に基づいたシミュレーションで相対感度係数を求め、各相の定量を行なう方法によってγ相量を定量する。またNが過飽和状態であるかどうかの判断は、加熱処理を行なって窒化物などの析出相が生じるかどうかをXRDなどで測定することによって確認することができる。
【0012】
前記γ相含有皮膜に含まれるNiは、γ相の生成を促進するために含有される。含有量は特に制限されないが、金属成分における分率(割合)で、Niは3原子%以上含まれることが望ましく、より好ましくは5原子%以上とするのがよい。また、Ni量の上限については、Niは高価な金属であるので多量の添加はコスト上昇になるとともに、過度に添加してもγ相生成促進効果が飽和する傾向となるので、好ましくは30原子%を上限とする。
【0013】
また、同皮膜に含まれるCrは、皮膜の硬度上昇に有効な元素である。十分な硬度上昇をもたらすためには金属成分における分率で5原子%以上が望ましく、より好ましくは10原子%以上である。
【0014】
また、同皮膜に含まれるN量に関しては、N量が少ないと皮膜を硬質化するFe−N、Cr−Nあるいはこれらの複合窒化物の析出が起こらないようになる。62 vol %以上の多量のγ相の下で硬度をHv1080以上に硬質化するには、N量は金属成分における分率(割合)で、少なくとも23原子%以上、より好ましくは30原子%以上とするのがよい。一方、窒素が過剰に含有されると逆に皮膜に靭性を付与するγ相が窒素化合物相に変化してしまうことから、窒素量は45原子%以下とすることが好ましく、より好ましくは40原子%以下である。
【0015】
前記γ相含有皮膜を形成する金属成分において、NiおよびCr以外の残部は実質的にFeで形成される。Fe含有量は、使用目的に応じて調節すればよく、特に限定されない。「実質的にFe」とは、皮膜の靭性、耐摩耗性を実質的に損なわない範囲で、Fe系合金中に通常含まれているC,B,P,Si,S,Nb等やその他金属元素およびその窒化物,炭化物若しくは炭窒化物、さらには酸化物や棚化物などが含まれてもよいことを意味する。もっとも、Fe組織において、皮膜の62 vol%以上はオーステナイト相で形成されることは先に説明したとおりである。
【0016】
なお、CrNは、Fe基材料に対する摺動特性が優れており、またその表面硬度をHv1600以下、好ましくは1400以下に調整することにより、皮膜の靭性が向上するが、前記γ相含有皮膜に対して高面圧下での耐久性寿命は劣る。
【0017】
一方、前記固体潤滑皮膜13としては、MoS2 、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)あるいはW、Cr、Ti、Moから選ばれる1種以上の金属元素を30原子%以下含有し、残部C(DLCの場合を含む。)、あるいはC(DLCの場合を含む。)およびHよりなる金属含有炭素皮膜を用いる。これらの材質を適用することで、特に高面圧下において寿命延長効果が著しいことが見出された。その理由は必ずしも明らかではないが、上記材質で形成した固体潤滑皮膜は、前記硬質皮膜あるいは基材との密着性に優れ、高面圧下においても剥離することなくその機能を維持するためと考えられる。
【0018】
前記金属含有炭素皮膜において、前記金属元素を30原子%以下とする理由は、30原子%超の金属元素を含有する場合、皮膜が軟質になり過ぎるとともに相手材に対する摩擦係数が上昇し、固体潤滑皮膜としての役割を果たさないようになるからである。好ましくは金属元素の含有量は25原子%以下、さらに好ましくは20原子%以下にするのがよい。特に高面圧下で使用する場合、前記金属元素がある程度含まれていた方が皮膜の靭性が高くなり、剥離し難くなるので、高面圧下での用途には金属元素が5原子%以上含有することが望ましい。さらに、最も好ましい金属炭素皮膜の材質としては、Fe基合金との摺動特性が優れていることから、5〜20原子%のWを含有するDLCである。
【0019】
前記金属含有炭素皮膜の金属成分以外の成分は基本的には炭素(DLCの場合を含む。)であるが、形成プロセスによっては、炭素源としてメタン等の炭化水素ガスを用いることもできる。この場合には、通常、皮膜中に10原子%程度以下の水素が混入し、皮膜中に含有されることになるが、これによって潤滑性が損なわれることはない。
【0020】
前記硬質皮膜12、固体潤滑皮膜13は、通常、アークイオンプレーティングやスパッタリングなどの気相コーティング法によって容易に形成することができる。また、固体潤滑皮膜としてMo2S を用いる場合、固体含浸法によっても形成可能であり、気相コーティング法に比較して安価に形成することができる。
ここでは前記γ相含有皮膜を気相コーティング法により形成する場合を例として詳しく説明する。
【0021】
前記γ相含有皮膜は、Fe、Ni、Crを含有するターゲットを用いて、窒素を含むプラズマ雰囲気中で成膜することにより簡単に形成される。すなわち、皮膜形成時のプロセスガスとして、窒素ガスあるいは窒素−メタン混合ガスなどの窒素含有ガスを用い、このプロセスガス雰囲気中でプラズマを発生させ、基材に向って蒸発あるいは飛散させたターゲット材料とプラズマとを反応させながら成膜する。前記ターゲット材としては、Fe,Ni,Crを含有するものであれよく、例えば市販のオーステナイト系ステンレス鋼もしくはニッケルクロムモリプデン鋼等の合金鋼をターゲット材として用いることができる。
【0022】
この際、皮膜が過飽和なNを含有する非平衡な状態を保つには、成膜時の基材温度およびバイアス電圧を低く設定することが推奨される。もっとも、バイアス電圧を低く設定し過ぎると、皮膜の緻密度が低下して靭性が低下することがあるので、好ましくは−100V以上、−10V以下、より好ましくは−80V以上、−30V以下とすることが望ましい。
また、基材の温度はターゲットの組成や成膜条件によって変わるが、窒化物生成をできるだけ抑制してγ相を安定化させるためには、成膜時の最高温度を200℃未満とすることが好ましい。200℃以上であるとフェライト相(α相)が生成しやすくなって、γ相が生成し難くなる。これに伴って皮膜の靭性が劣化するようになるので好ましくない。
また、γ相の生成を促進すると共にγ相中の窒化物の生成を抑制するには、成膜時のカノード電流を低くすることが望ましい。カノード電流を低くすることによって基材の温度上昇を抑制することができる。これによって窒化物の生成を抑制できると共に皮膜の緻密さが向上し、靭性が向上する。なお、γ相の生成量は、成膜時のバイアス電圧を変えることによっても変化させることができる。
また、γ相含有皮膜の硬度は、主に膜中の窒素量すなわち成膜時の窒素分圧を制御することによって制御することができる。なお、バイアス電圧によっても硬度は若干変化し、低い方が軟らかくなる。また、成膜時の窒素分圧によってγ相の生成を制御することができる。もっとも、窒素分圧が高過ぎるとγ相中の窒化物の析出が捉進されるため、実質的にγ相の比率が低下し、皮膜靭性が低下するようになる。
【0023】
本発明の摺動部材は、特に高面圧摺動環境下で使用される用途に好適である。近年、摺動部材においても軽量化のために小型化が要請されており、これに伴い部材が受ける面圧が1GPa以上と高くなる傾向にあるが、従来の摺動部材では十分な耐久性を有しているとは言えない状況にあった。本発明の摺動部材では、面圧が1GPa以上の高い領域で使用されても耐久性に優れ、寿命延長効果は接触面圧が2〜3GPa以上の高い領域でも顕著であり、本発明はこのような高い接触面圧で使用される摺動部品に好適に適用される。
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【0025】
【実施例】
[実施例1]
図1に示す種々の構成の摺動部材(図2に示すように第1摺動部材1としてディスク1A、第2摺動部材2としてベーン2A)を準備した。摺動部材の基材は、工具鋼(JIS−SKD11,焼き戻し温度200℃)に窒化を施して表面硬度をHv900としたものを用いた。硬質皮膜は、前記基材にAIP(アークイオンプレーティング)法あるいはスパッタ法により形成した。また、固体潤滑皮膜はスパッタ法により形成した。
【0026】
硬質皮膜の形成に適用したAIP法については、カソード放電型のアークイオンフレーティング装置を用い、JIS−SUS304、CrあるいはTiのターゲットを使用して成膜を実施した。成膜は基材をチャンバに導入し、真空排気後、それぞれの金属ターゲットを用いてメタルボンバード(基板バイアス電圧700V)による表面クリーニングを実施した後、窒素ガスを2.66Paの圧力まで導入し、アーク電流60〜80A、基板バイアス50〜70Vの条件で皮膜形成を行った。
一方、硬質皮膜の形成に適用したスバッタ法については、DCマグネトロンスバッタ装置を用い、JIS−SUS304、CrあるいはTiのターゲットを使用して成膜を実施した。成膜は基材をチャンバに導入し、真空排気後、Arイオンによる表面クリーニングを実施後、0.3Paの窒素ガス+Arガス雰囲気にて、投入電力500Wとして、基板バイアス電圧50Vで皮膜形成を行った。成膜時の基板温度はAIP法、スパッタ法ともに、前記工具鋼の焼き戻し温度を超えない範囲で200℃未満とした。硬質皮膜の膜厚は、前記AIP法の場合とも、すべて約5μm とした。
【0027】
また、固体潤滑皮膜の形成に適用したはスパッタ法については、Cr、Wの金属ターゲットおよび/またはCターゲットを用いて炭素系皮膜を成膜した。真空排気後、Arイオンによる表面クリーニングを実施した後、0.3PaのArガスあるいは場合に応じてArガス+CH4 ガス雰囲気にて、投入電力を500W、基板バイアス100〜200Vとして皮膜形成を行った。成膜時の基板温度は、前記工具鋼の焼き戻し温度を超えない範囲で200℃未満とした。膜厚はすべて約1.5μm とした。DLC皮膜の形成に関してはCターゲットのみを用い、金属含有炭素皮膜の場合は各々の金属ターゲットとCターゲットを同時放電させることで成膜した。また、MoS2 については、スパッタ法のほか、固体含浸法によっても形成した。
【0028】
以上のようにして形成した皮膜の組成はEPMAによる定量分析により、また皮膜硬度はミクロビッカース硬度計を用い、荷重25gf(0.25N)、保持時間15秒で測定した。また硬質皮膜の靭性は、スクラッチ試験により皮膜にチッピングが生じる荷重で決定した。スクラッチ試験の圧子には先端径200μm Rのダイアモンドを用い、荷重増加速度100N/分、ひっかき速度10mm/分で200Nまで実施した。これらの測定結果を表1に併せて示す。表1中、Fe−Cr−Ni−N硬質皮膜の金属成分の組成は、全て原子%でFe73%、Cr19%、Ni8%であった。また、金属含有炭素皮膜における金属元素量は10原子%程度であった。また、前記Fe−Cr−Ni−N皮膜におけるγ相の体積率を後述するX線回折によるリートベルト法により測定した結果、80%程度であった。
【0029】
以上のようにして準備された摺動部材を用いて、ベーンオンディスク試験を行った。この試験は、図2に示すように、ディスク(第1摺動部材)1Aの摺動面に、先端部を半径Rに加工した2本のベーン(第2摺動部材)2Aを押し付けて、荷重すなわち面圧を付与しながら、ディスク1Aを回転させることで、相対摺動運動を模擬するものである。試験条件を下記に示す。寿命の判断はディスクあるいはベーン側にピッチングが生じ、振動が発生した時点の摺動距離で評価した。ディスク1Aおよびべーン2Aの摺動部の表面粗度は各々Raで0.1μm とした。評価結果を表1に併せて示す。
ベーン形状:3mmR(幅3mm)
面圧:3.OGPa
摺動速度:2m/秒
潤滑油:ディーゼルオイル(2L/分、油温90℃)
表1より、実施例にかかる試料No. 11〜15は優れた耐久性(寿命)が得られているが、固体潤滑皮膜が形成されていても硬質皮膜がTiNで形成されたNo. 7では耐久性が低下している。また、本発明にかかる硬質皮膜が形成されていても、固体潤滑皮膜を有しないNo. 2,3および5では十分な耐久性が得られていない。
【0030】
【表1】
【0031】
[実施例2]
実施例1と同様にして皮膜構造が図1(A)の摺動部材試料を作製した。但し、ターゲット材はJIS−SUS304を用い、成膜時の窒素ガス圧を0.5〜3Paの間で変化させて、窒素含有量の異なるFe−Cr−Ni−N硬質皮膜をAIP法により形成した。また、実施例1と同様にして硬質皮膜の上に固体潤滑皮膜をWおよびCターゲット材、あるいはMoS2 ターゲット材を用いてスパッタ法により成膜した。膜厚は実施例1と同様、硬質皮膜は5μm 、固体潤滑皮膜は1.5μm とした。
得られた皮膜について、実施例1と同様、皮膜組成、硬質皮膜硬度、γ相体積率を測定した。この摺動部材試料に対して実施例1と同様の条件でベーンオンディスク試験を行った。これらの測定結果を表2に示す。硬質皮膜の金属成分割合は窒素含有量の残部であり、金属成分のみの組成は原子%で、Fe73%、Cr19%、Ni8%であり、γ相体積率は80 vol%であった。また、金属含有炭素皮膜における金属元素量は10原子%程度であった。
表2より、硬質皮膜の窒素含有量が4.5原子%の試料No. 1では硬度がHv570と低くなっている。窒素含有量が23%以上の他の試料では硬度がHv1080以上であり、No. 1の試料はこれらの試料に比して耐久性が半分以下に低下していることがわかる。
【0032】
【表2】
【0033】
[実施例3]
実施例1と同様にして皮膜構造が図1(A)の摺動部材試料を作製した。但し、硬質皮膜は、γ相生成促進元素であるNiの含有量が異なる下記Fe基合金ターゲットを用い、実施例1と同様の条件で2.6Paの窒素雰囲気中にてAIP法により形成された。この際、一部の試料についてはバイアス電圧を変化させてγ相の生成量をさらに調整した。また、実施例1と同様にして硬質皮膜の上に固体潤滑皮膜をWおよびCターゲット材、CrおよびCターゲット材あるいはMoS2 ターゲット材を用いてスパッタ法により成膜した。膜厚は実施例1と同様、硬質皮膜は5μm 、固体潤滑皮膜は1.5μm とした。
・ターゲット材質と適用試料番号
SUS430:No. 1
FeCrNi(原子%Fe85、Cr13、Ni2):No. 2
FeCrNi(原子%Fe75、Cr17、Ni8):No. 3
SUS304:No. 4,5
得られた皮膜について、実施例1と同様、皮膜組成、表面硬度、γ相体積率を測定した。γ相体積率の測定については、硬質皮膜に対してX線回折を実施し、リートベルト法により下記の条件で皮膜中のγ相の体積率を決定した。この摺動部材試料に対して実施例1と同様の条件でベーンオンディスク試験を行った。これらの測定結果を表3に示す。同表における硬質皮膜組成は金属成分に関するものであり、窒素含有量は全て30原子%程度(残部金属成分)であった。また、金属含有炭素皮膜における金属量は10原子%程度であった。
使用ピーク:γ(111),(200),(220)の強度総和、α(200)の強度、窒化物(110)の強度
相対感度係数γ相:0.1523、α相:1.0、Fe3N :1.5755、(Cr、Fe)XN1-X:1.5223
表3より、γ相生成促進元素であるNiの含有量が0.5原子%と低く、このためγ相の量が8 vol%に止まった試料No. 1では摺動距離が640km未満であり、耐久性が十分ではない。一方、Ni含有量が9原子%の No. 4、5では、γ相が62 vol %以上得られ、1387km以上であり、良好な耐久性が得られていることが分かる。
【0034】
【表3】
【0035】
[実施例4]
実施例1と同様にして皮膜構造が図1(A)の摺動部材試料を作製した。但し、全てSUS304オーステナイトステンレス鋼のターゲット材を用いて、AIP法(試料No. 2,3および6)あるいはスパッタ法(試料No. 1,4および5)にて表3に示す組成のFe−Cr−Ni−N硬質皮膜をディスク基材上に形成した。引き続いてその上に各々金属添加量の異なるW−CあるいはCr−C固体潤滑皮膜を形成した。この際、Cターゲットおよび金属ターゲットへの投入電力を変化させることによって蒸発量を制御し、固体潤滑皮膜中に含有する金属元素量を制御した。膜厚は実施例1と同様、硬質皮膜は5μm 、W−C皮膜あるいはCr−C皮膜は1.5μm とした。
得られた皮膜について、実施例1と同様、皮膜組成、硬度、γ相体積率を測定した。この摺動部材試料に対して実施例1と同様の条件でベーンオンディスク試験を行った。これらの内、固体潤滑皮膜の組成、ベーンオンディスク試験結果を表4に示す。硬質皮膜組成については、全て金属成分70原子%、N30原子%であり、金属成分についての組成は原子%でFe73%、Cr19%、Ni8%であり、γ相体積率は90 vol%であった。また、硬質皮膜の硬度はHv1200であった。
表4より、固体潤滑皮膜における金属元素量が0%の試料No. 1および43%の試料No. 6は、摺動距離が1000km未満となって、金属元素量が5〜30原子%の発明例の試料に比して耐久性がやや低下していることが分かる。
【0036】
【表4】
【0037】
【発明の効果】
本発明の摺動部材によれば、靭性に優れた特定の組成、組織、硬度を有する硬質皮膜と固体潤滑皮膜とを備えるので、従来に比して高面圧摺動時の耐久性に優れ、長寿命である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の摺動部材における硬質皮膜、固体潤滑皮膜の配置例を示す断面説明図である。
【図2】相対摺動運動を模擬するベーンオンディスク試験の要領を示す説明図である。
【符号の説明】
1 第1摺動部材
2 第2摺動部材
11 基材
12 硬質皮膜
13 固体潤滑皮膜
Claims (5)
- 基材の表面に硬質皮膜が被覆形成された第1摺動部材と、前記第1摺動部材の硬質皮膜側に設けられ、前記第1摺動部材と当接して相対運動により摺動する第2摺動部材とを備え、
前記第1摺動部材の硬質皮膜あるいは前記第2摺動部材の摺動側表面に固体潤滑皮膜が被覆形成され、
前記硬質皮膜がNi、CrおよびNを含有し、残部実質的にFeからなり、オーステナイト相を62 vol %以上有し、かつN含有量が23 at %以上、40 at %以下で、表面硬度がHv1080以上のオーステナイト相含有皮膜によって形成された、高面圧下での摺動特性に優れる摺動部材。 - 前記固体潤滑皮膜がMoS 2 で形成された請求項1に記載した摺動部材。
- 前記固体潤滑皮膜がDLCで形成された請求項1に記載した摺動部材。
- 前記固体潤滑皮膜がW、Cr、Ti、Moから選ばれる1種以上の金属元素を5〜30原子%含有し、残部がC又はC及びHからなる金属含有炭素皮膜で形成された請求項1に記載した摺動部材。
- 第1摺動部材と第2摺動部材との接触面圧が1GPa以上の摺動環境で使用される請求項1から4のいずれか1項に記載された摺動部材。
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