JP5473890B2 - ピストンリング - Google Patents

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Description

本発明は、外周摺動面に硬質皮膜を有する内燃機関用ピストンリングに関し、更に詳しくは、摩擦低減剤として作用するモリブデンジチオカーバメートを含む潤滑油中であっても、耐摩耗性及び低摩擦性の両方に優れた硬質皮膜を有するピストンリングに関する。
近年、内燃機関の軽量化と高出力化に伴って、ピストンリングの耐摩耗性及び低摩擦性の更なる向上が要求されている。このような要求に対し、ピストンリングの外周摺動面に硬質膜を形成する様々な発明が提案されている。
例えば、特許文献1には、炭素及び窒素を含む層と、他の化合物層とを交互に積層した皮膜層に関する発明が開示されている。この特許文献1に開示の発明では、前記の他の化合物層に、周期律表第IVa、Va、VIa族元素、鉄族金属、Al及びSi、並びにこれらの炭化物、窒化物及び炭窒化物から選択される少なくとも一種を含ませるようにしている。なお、特許文献1には、皮膜層に、鉄、ニッケル、クロム及び窒素を含有させることについての開示はあるが、その組成の詳細は特に開示されていない。
特許文献2には、皮膜層に第IIb、III、IV、Va、VIa、VIIa及びVIIIから選択される少なくとも1種の金属元素を5〜70原子%(at%)含ませる発明が開示されている。この特許文献2においては、含有させる金属元素として鉄、ニッケル、クロムが挙げられているが、各元素の比率は特に開示されていない。
一方、特許文献3には、Fe、Co、Ni、Cuの1種以上を0.1〜30原子%含有させた皮膜、及び皮膜の形成方法に関する発明が開示されている。そして、この特許文献3に開示の発明では、このような皮膜をアークイオンプレーティング法、イオンビーム法で形成するとしている。
特開2000−192183号公報 特開2001−316686号公報 特開平11−200012号公報
しかしながら、特許文献1乃至特許文献3に開示された硬質膜に関する発明では、ピストンリングを、モリブデンジチオカーバメート(以下「MoDTC」ということがある。)が摩擦低減剤として添加されている潤滑油中で使用すると、硬質膜が大幅に摩耗してしまうという問題が生じていた。
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであって、その目的は、MoDTCが摩擦低減剤として添加された潤滑油中であっても、低摩擦性及び耐摩耗性のいずれの性質にも優れた硬質皮膜を有するピストンリングを提供することにある。
本発明者は、MoDTCが摩擦低減剤として添加された潤滑油中での硬質皮膜の摩耗の増大が、MoDTCの摺動により生成されるMoS(二硫化モリブデン)が硬質皮膜との間では生成されず、MoDTC自体が硬質皮膜の摩耗を促進させるためであると考察し、種々実験を行った結果、所定量の鉄と窒素を含有した硬質皮膜が良好な耐摩構成を示すことが分かった。
上記課題を解決するための本発明に係るピストンリングは、ピストンリング基材と、該ピストンリング基材の少なくとも外周摺動面上に設けられる硬質皮膜とを有し、前記硬質皮膜が、10〜26原子%のCと、18〜28原子%のFeと、35〜65原子%のNとを含有することを特徴とする。
この発明によれば、硬質皮膜中に特定範囲のFe及びNを含有させることで、硬質皮膜の摩耗を低減させることができた。その理由は、摩擦低減剤であるMoDTCを構成するMo元素及びS元素と、硬質皮膜中のFeとが反応し、MoSが生成されるためであると推察される。摺動部材の中でも、とりわけ内燃機関用ピストンリングは、MoDTCを含む潤滑油中でシリンダライナの内周面と摺動するピストンリングに上記の硬質皮膜を設けることで、ピストンリング外周摺動面の摩耗を効果的に阻止することができる。
本発明に係るピストンリングにおいて、前記硬質皮膜が、3〜14原子%のCrをさらに含有することが好ましい。
この発明によれば、硬質皮膜が上記特定範囲のCrをさらに有するので、特に下地層がCr含有層である場合に密着性と耐摩耗性をさらに向上させることができる。
本発明に係るピストンリングにおいて、前記硬質皮膜が、0.5〜18原子%のNiをさらに含有することが好ましい。この発明によれば、低摩擦性及び耐摩耗性をさらに向上させることができる。
本発明に係るピストンリングにおいて、前記硬質皮膜の直下に、少なくともFeを含む密着膜が形成されていることが好ましい。
本発明に係るピストンリングにおいて、前記硬質皮膜の下地膜として、Cr−N膜又はCr−B−N膜が形成されていることが好ましい。
本発明に係るピストンリングにおいて、前記ピストンリング基材の表面に窒化層が形成され、前記硬質皮膜は前記窒化層上に形成されていることが好ましい。
本発明に係るピストンリングによれば、摺動部材、とりわけ内燃機関用ピストンリングについて、少なくとも外周摺動面に形成された硬質皮膜に適切な組成比率で炭素、鉄及び窒素を含有させたことで、優れた低摩擦性と耐摩耗性を実現できる。特に、適切な比率で鉄及び窒素を含有させたことで、低摩擦性と硬度を維持させつつ、FeとMoDTCの反応で摺動特性に優れるMoSを生成し、窒素を含有することで高硬度の鉄窒化物を形成し、MoDTCを摩擦低減剤として含有する潤滑油中での耐摩耗性を向上させることができる。
本発明に係るピストンリングの例を示す模式的な断面構成図である。 本発明に係るピストンリングの使用形態を示す模式的な断面図である。 測定に用いたアムスラー型摩耗試験機の構成原理図である。
以下、本発明のピストンリングの実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、その技術的範囲に含まれるものであれば以下の説明及び図面の記載に限定されない。
[ピストンリング]
ピストンリング10は、図1に示すように、ピストンリング基材1と、ピストンリング基材1の少なくとも外周摺動面21に設けられた硬質皮膜3とを有する。なお、図1中の下地膜2と窒化層6は、必要に応じて適宜に設けられていることが望ましい。例えば、下地膜2は、ピストンリング基材1上に硬質皮膜3の下地膜として設けられ、窒化層6は、ピストンリング基材1の表面に窒化処理により設けられる。
ピストンリング10は、図2に示すように、ピストン31に形成されたピストンリング溝32に装着され、ピストン31の上下運動(往復運動に同じ。)によってシリンダライナ33の内周面34を摺動しながら上下運動する摺動部材である。図2はトップリングの例を示しているが、本発明の特徴は、トップリング、セカンドリング、オイルリングの何れに適用したものであってもよい。リングの形状は、図1においては矩形リングを示しているが、バレルフェースやテーパーフェース等のような外周形状からなるものであってもよい。また、リングの断面形状としては、ハーフキーストンリング、フルキーストンリング、スクレーパリング等の断面形状を有するものでもよい。また、オイルリングとしては、窓付きオイルコントロールリング、ベベルオイルコントロールリング、ダブルベベルオイルコントロールリング等でもよく、さらにそれら以外のコイルエキスパンダ付きオイルリング等であってもよい。
次に、ピストンリングを構成する各要素の詳細について説明する。
(ピストンリング基材)
ピストンリング基材1は、従来使用されている材質からなるものであればよく、特に限定されない。したがって、いかなる材質のピストンリング基材1に対しても本発明を適用でき、従来好ましく用いられている例えばステンレススチール材、鋳物材、鋳鋼材、鋼材製等をピストンリング基材1として適用できる。また、図1(B)に示したように、ピストンリング基材1に窒化処理等を施して窒化層6を形成したものも適用できる。さらに、クロムめっきやPVD(Cr−N、Ti−N、Cr−B−N)を硬質皮膜3の下地膜として形成してなるピストンリング基材1も適用できる。
(密着膜)
密着膜は、硬質皮膜3の直下に少なくともFeを含む密着膜(図示しない)を形成してもよい。
密着膜としては、通常は、純鉄膜、Fe−Cr−Ni膜、Fe−Cr−Ni−Mo膜等が適用される。また、このような密着膜は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法等により形成することが望ましい。そして、この密着膜の膜厚は、0.1〜2.0μmであることが好ましい。
(下地膜)
下地膜2は、必要に応じて設けられる。下地膜2は、ピストンリング基材1に対する硬質皮膜3の密着性を高めて剥離を防ぐために設けられる膜であって、ピストンリング基材1上(窒化層6が形成されている場合には窒化層6上)の少なくとも外周摺動面21に設けられる。通常は、図1に示すように、外周摺動面21のみに設けられるが、外周摺動面21、上面22及び下面23の3面に形成してもよいし、外周摺動面21、上面22、下面23及び内周面24の全周に形成してもよい。
下地膜2としては、Cr−N膜やCr−B−N膜を好ましく適用できる。その他、Ti−N、Cr−O−N、Cr−B−V−N等で形成してもよい。下地膜2は、種々の形成手段で形成することができるが、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の乾式手段で成膜することができる。また、電気めっき等の湿式手段で成膜してもよい。なお、下地膜2の厚さは、特に限定されないが、例えばCr−N膜やCr−B−N膜の場合には、5〜70μm程度であることが好ましい。
(窒化層)
下地膜3に代えて、又は下地膜3に加えて、図1(B)又は図1(C)に示す窒化層6をピストンリング基材1に形成してもよい。窒化層6は、ピストンリング基材1に対して、ガス窒化法、ガス軟窒化法、塩浴軟窒化法、イオン窒化法等の処理を行うことにより、ピストンリング基材1の表面に形成できる。ビッカース硬さHv700以上の窒化層6の厚さは、ピストンリング基材1の表面から10〜110μm程度である。
(硬質皮膜)
硬質皮膜3は、ダイヤモンドライクカーボンと呼ばれ、X線回折測定で特定の結晶性ピークが現れないハロー形態を示す非晶質状(アモルファス状乃至微結晶状)の炭素膜である。この硬質皮膜3は、図1に示すように、下地膜2上に設けられるが、少なくとも下地膜2はピストンリング基材1の外周摺動面21に設けられ、硬質皮膜3も外周摺動面21に設けられる。外周摺動面21に下地膜2と硬質皮膜3を積層することにより、高面圧下での硬質皮膜3の剥離を極力抑制することができるので、高い耐摩耗性と高い耐スカッフ性を実現できる。なお、下地膜2がピストンリング基材1の全周に設けられていれば硬質皮膜3も全周に設けてもよいが、その場合であっても、少なくとも外周摺動面21に設ければよく、上面22、下面23及び内周面24には必要に応じて任意に設ければよい。
本発明において、硬質皮膜3は、ピストン31に装着されたピストンリング10がMoDTCの添加された潤滑油中で使用された場合であっても、硬質皮膜3の摩耗を効果的に阻止することができる組成となっている。
具体的には、硬質皮膜3には、鉄と窒素が含有されている。この点、潤滑油に添加されたMoDTCが摺動により硬質皮膜との間でMoSを生成せず、MoDTC自体の摩耗を促進させることにより硬質皮膜3が摩耗することを考慮すると、硬質皮膜3にMoDTCとの反応性に優れる鉄のみを添加することが考えられる。しかし、鉄のみを添加して硬質皮膜3を形成した場合、ビッカース硬さがHv200〜600程度と低く、耐摩耗性を得ることができない。このため、本発明では、硬質皮膜3に鉄だけなく、窒素も含有させている。
もっとも、硬質皮膜3に含有される炭素量が10原子%に満たないと、低摩擦性を得ることが困難となる。一方、硬質皮膜3に含有される炭素量が26原子%を超えると、耐摩耗性が悪くなる。また、硬質皮膜3に含有される鉄量が、18原子%に満たないと、十分な耐摩耗性を得ることが困難となる。一方、硬質皮膜3に含有され鉄量が28原子%を超えると、低摩擦性を維持することができない。
このことから、硬質皮膜3は、炭素含有量が10〜26原子%、鉄含有量が18〜28原子%範囲であること好ましい。また、窒素についても、硬質皮膜3に含有される窒素量が35〜65原子%となるように含有させるとよい。より好ましくは、炭素が14〜22原子%、鉄が20〜26原子%、窒素が45〜55原子%含有される。また、用途に応じ、適宜、クロムが3〜14原子%、ニッケルが0.5〜18原子%含有される。なお、硬質皮膜3には、本発明の効果を損なわない範囲で、ケイ素、マンガンが含まれていてもよい。
この硬質皮膜3は、種々の形成手段で形成することができ、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などで形成することができるが、制御の容易性の観点からは、スパッタリング法が好ましい。
硬質皮膜3は各種の方法で形成することができる。例えば、スパッタリング法で硬質皮膜3を形成する場合、ステンレス鋼ターゲットと炭素ターゲットの2つを併用し、アルゴンガスと窒素ガスの雰囲気中で硬質皮膜3を形成する。ステンレス鋼ターゲットには、非磁性体であるオーステナイト系(JIS規格のSUS300番台)のステンレス鋼を使用するとよく、中でも、JIS規格のSUS304のオーステナイト系ステンレス鋼を使用するとよい。もっとも、磁性体であるマルテンサイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼をターゲットに使用することを妨げるものではない。
このように、オーステナイト系ステンレス鋼及び炭素をターゲットとして使用すれば、硬質皮膜3には、炭素、鉄、窒素を含有させることができる。また、必要に応じて、クロム、ニッケル等を含有させることもできる。そして、ステンレス鋼ターゲットの組成と、雰囲気中に窒素分圧等を任意に調整すれば、成膜する硬質皮膜3に含まれる、炭素、鉄、窒素等の含有量を、上記した好ましい範囲に調整することができる。
なお、硬質皮膜3の厚さは、特に限定されないが、0.5〜10μm程度であることが好ましい。
硬質皮膜3の硬さは、例えば圧力又は基板バイアス電圧(V)を調整することにより、ビッカース硬さHv800〜Hv2000の範囲で制御可能である。
[製造方法]
本発明に係るピストンリング10の製造例としては、例えば、準備したピストンリング基材1を成膜治具に固定する工程、そのピストンリング基材1をスパッタリング、イオンプレーティング、プラズマCVDのいずれかの装置、又はそれらを兼用可能な装置のチャンバ内にセットし、そのチャンバ内を真空引きする工程、ピストンリング基材1を固定した成膜治具を自転ないし公転させつつ、脱ガスのため、全体に予熱をかける工程、予熱した後、アルゴンガス等の不活性ガスを導入し、イオンボンバードメントによってピストンリング基材1の表面を清浄化する工程、等を備えている。
次いで、ピストンリング基材1上に、硬質皮膜3を形成する工程を備える。形成方法は、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などで形成することができるが、制御の容易性の観点からは、スパッタリング法が好ましい。
スパッタリング法で硬質皮膜3を形成する場合、まず、アルゴンガス雰囲気にてステンレス鋼ターゲットを用い、所定の電力(例えば、ステンレス鋼ターゲット:500W)を投入し、基板バイアス電圧を、例えば、70Vで密着膜を形成する。その後、硬質皮膜3を窒素ガス及びアルゴンガスの雰囲気にて、ステンレス鋼ターゲットと、炭素ターゲットとを併用し、所定の電力(例えば、ステンレス鋼ターゲット:500W、炭素ターゲット:800W)を投入し、基板バイアス電圧を、例えば、300Vで皮膜を形成する。こうすることで、少なくとも鉄と窒素と炭素を含有する硬質皮膜3を形成することができる。
ステンレス鋼ターゲットとしては、非磁性体であるオーステナイト系ステンレス鋼(JIS規格のSUS300番台)を使用するとよいが、マルテンサイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼(JIS規格のSUS400番台)を使用することを妨げるものではない。
形成された硬質皮膜3には、ターゲットとして用いるステンレス鋼の成分が含まれる。上記したJIS規格のSUS304ステンレス鋼をターゲットとすれば、硬質皮膜3には、金属元素として、鉄、クロム、ニッケル等が含まれる、また、JIS規格のSUS304ステンレス鋼に含まれる他の元素、例えば、ケイ素、マンガン等も微量に含まれることがある。ただし、本発明に係るピストンリングにおいて、初期の効果を発現する主要な元素は、上記したように、鉄と窒素であり、さらに付け加えればクロム、ニッケルであり、それ以外は本発明の効果を阻害しない範囲で含まれる。
なお、ピストンリング基材1の外表面に窒化層6を設ける場合には、予め、ガス窒化法、ガス軟窒化法、塩浴軟窒化法、イオン窒化法等で形成しておく。また、下地膜2を形成する場合には、スパッタリング装置を用い、所定の圧力(例えば、0.3Pa)のアルゴンガス雰囲気にて、Crターゲット又はCr−Bターゲットにて所定の電力及びバイアス電圧で、窒素雰囲気においてCr−N膜又はCr−B−N膜を形成する。
以上説明したように、本発明に係るピストンリング10は、特徴的な硬質皮膜3が設けられており、その硬質皮膜3が含有する鉄、炭素及び窒素の作用によって、シリンダライナ33の内周面34との間で生じる摩擦を低減させることができる。さらに、MoDTCを含む潤滑油中で使用した場合でも、硬質皮膜3が含有する鉄がMoDTC内のモリブデン及び硫黄と反応し、二硫化モリブデン(MoS)を生成することで、硬質皮膜3が摩耗することを効果的に防止することができる。
以下に、実施例と比較例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
[実施例1]
ピストンリング基材1として、C:0.85質量%、Si:0.4質量%、Mn:0.3質量%、Cr:17.5質量%、Mo:1.1質量%、P:0.02質量%、S:0.02質量%、残部:鉄及び不可避不純物からなる17Crステンレス鋼製のものを予めガス窒化処理して窒化層6を形成したピストンリング基材1を使用した。そして、下地膜2は、イオンプレーティング法にてCrターゲットを用いて生成し、密着膜及び硬質皮膜3はマグネトロンスパッタリング装置を用い、JIS規格におけるSUS304ターゲット(組成は、C:0.07質量%、Si:0.9質量%、Mn:0.9質量%、P:0.03質量%、S:0.02質量%、Ni:9.5質量%、Cr:19.0質量%、残部:Feである。)及び炭素ターゲットを使用して成膜した。密着膜は、Fe−Cr−Ni膜とした。
先ず、予め窒化層6を形成したピストンリング基材1を治具に取り付けてチャンバ内に設置し、真空排気した後、クロムイオンによる表面クリーニングを実施した。その後、窒化層6が設けられたピストンリング基材1の外周摺動面に下地膜2を形成した。下地膜2は、窒素ガス雰囲気にて、クロムをターゲットとして使用し、アーク電流を150A、基板バイアス電圧25Vで約20μmの膜厚でCr−N膜を形成した。
次いで、アルゴンガス雰囲気にてSUS304ターゲットに500Wの電力を投入し、基板バイアス電圧を70Vで厚さ約0.3μmの密着膜を下地膜2上に形成した。その後、窒素ガスとアルゴンガスの混合雰囲気(N:Ar=2:1)にて、SUS304ターゲットと炭素ターゲットとを併用し、SUS304ターゲットに500W、炭素ターゲットに800Wの電力をそれぞれ投入し、基板バイアス電圧300Vで厚さ約2μmの硬質皮膜3を密着膜上に形成した。
形成された硬質皮膜3の組成は、C:18.0原子%、N:47.6原子%、Ar:0.3原子%、Cr:6.6原子%、Fe:25.2原子%、Ni:2.3原子%であった。この組成は、EPMAの半定量分析により分析した結果である。
[比較例1]
実施例1において、使用した上記マグネトロンスパッタリング装置の諸条件を変更して比較例1のピストンリングを作製した。この比較例1におけるピストンリングに形成された硬質皮膜3の組成は、C:27.4原子%、N:50.0原子%、Ar:0.5原子%、Cr:4.5原子%、Fe:16.3原子%、Ni:1.3原子%であった。
この比較例1は、炭素含有量が27.4原子%であり、炭素含有量が本発明の上限値を外れ、また、鉄含有量が16.3原子%であり、鉄含有量が本発明の下限値を外れている。
[比較例2]
比較例2として、炭素含有量が下限を外れ、かつ、鉄含有量が上限を外れたものを作製した。比較例2における硬質皮膜3の組成は、C:7.6原子%、N:52.0原子%、Cr:9.5原子%、Fe:29.1原子%、Ni:1.8原子%であり、炭素含有量は、7.6原子%と本発明の下限を外れ、鉄含有量は、Fe:29.1原子%と本発明の上限を外れている。
[摩耗試験]
摩耗試験は、図3に示すアムスラー型摩耗試験機50を使用し、上記実施例1、並びに比較例1及び比較例2で得られたピストンリングと同じ条件で得た測定試料51(7mm×8mm×5mm)を固定片とし、相手材52(回転片)にはドーナツ状(外径40mm、内径16mm、厚さ10mm)のものを用い、測定試料51と相手材52を接触させ、荷重Pを負荷して行った。各測定試料51を用いた摩擦係数試験条件は、潤滑油53:有機モリブデン配合モーターオイル(0W−20)、油温:80℃、周速:1m/秒(478rpm)、荷重:1470N、試験時間:7時間の条件下で、ボロン鋳鉄を相手材52として行った。なお、ボロン鋳鉄からなる相手材52は、所定形状に研削加工した後、研削砥石の細かさを変えて順次表面研削を行い、最終的に1〜2μmRz(十点平均粗さ。JIS B0601(1994)に準拠。)となるように調整した。
[摩擦係数試験]
摩擦係数試験も、上記摩耗試験で使用したアムスラー型摩耗試験器50を用い、同様の方法で行った。この摩擦係数試験は上記の摩耗試験において、各測定試料のトルク(摩擦抵抗)を荷重Pで除すことで算出した。この摩擦係数は、実施例1の測定試料の摩擦係数を比較例2に対応する測定試料の摩擦係数に対しての相対比として比較し、摩擦係数指数とした。従って、各測定試料の摩擦係数指数が100より小さいほど摩擦係数が小さいことを表す。
実施例1の測定試料の摩擦係数指数は50であり、比較例2の測定試料の結果に比べて小さい摩擦係数を示した。その結果を表1に示す。
表1に示す摩耗指数は、実施例1に相当する各測定試料の摩耗指数を、比較例2に対応する測定試料の摩耗指数に対しての相対比として比較し、摩耗指数とした。同様に、比較例1に対応する測定試料ついても、比較例2に対応する測定試料の摩耗指数に対しての相対比として比較し、摩耗指数として示した。従って、各測定試料の摩耗指数が100より小さいほど摩耗量が小さく、耐摩耗性が優れることを表す。実施例1に対応する各測定試料は、摩耗指数が小さく、比較例2に対応する測定試料よりも耐摩耗性に優れていた。結果を表1に示した。
[硬さ測定]
硬さ測定は、微小ビッカース硬さ試験機(株式会社フューチュアテック製、FM−ARS9000)を用いて測定した。実施例1、比較例1,2のピストンリングにおける硬質皮膜3のビッカース硬さはいずれもHv800〜2000の範囲であった。
[厚さ測定]
硬質皮膜3の各試料を湿式切断機にて切断し、樹脂に試料を埋め込んで研磨し、断面観察から算出した。
[成分測定]
硬質皮膜3中の成分組成は、電子プローグマイクロアナライザ(EPMA)装置(日本電子製、JXA−8800RL)を用いて定量した。
Figure 0005473890
1 ピストンリング基材
2 下地膜
3 硬質皮膜
6 窒化層
10(10A,10B) ピストンリング
21 外周摺動面(外周面)
22 上面
23 下面
24 内周面
31 ピストン
32 ピストンリング溝
33 シリンダライナ
34 シリンダライナ内周面
50 アムスラー型摩耗試験機
51 測定試料
52 相手材
53 潤滑油

Claims (6)

  1. ピストンリング基材と、該ピストンリング基材の少なくとも外周摺動面上に設けられる硬質皮膜とを有し、前記硬質皮膜が、10〜26原子%のCと、18〜28原子%のFeと、35〜65原子%のNとを含有することを特徴とするピストンリング。
  2. 前記硬質皮膜が3〜14原子%のCrをさらに含有する、請求項1に記載のピストンリング。
  3. 前記硬質皮膜が0.5〜18原子%のNiをさらに含有する、請求項1又は請求項2に記載のピストンリング。
  4. 前記硬質皮膜の直下に、少なくともFeを含む密着膜が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のピストンリング。
  5. 前記硬質皮膜の下地膜として、Cr−N膜又はCr−B−N膜が形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のピストンリング。
  6. 前記ピストンリング基材の表面に窒化層が形成され、前記硬質皮膜は前記窒化層上に形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のピストンリング。
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