JP4638769B2 - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材 Download PDF

Info

Publication number
JP4638769B2
JP4638769B2 JP2005152159A JP2005152159A JP4638769B2 JP 4638769 B2 JP4638769 B2 JP 4638769B2 JP 2005152159 A JP2005152159 A JP 2005152159A JP 2005152159 A JP2005152159 A JP 2005152159A JP 4638769 B2 JP4638769 B2 JP 4638769B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sliding
test
piston ring
test piece
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2005152159A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006328463A (ja
Inventor
典孝 宮本
滋 堀田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp, Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2005152159A priority Critical patent/JP4638769B2/ja
Publication of JP2006328463A publication Critical patent/JP2006328463A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4638769B2 publication Critical patent/JP4638769B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、互いに摺動し合う摺動部材に係り、特に低フリクション化を実現する摺動部材の組み合わせに関するものである。
近年、例えば自動車の内燃機関におけるピストンリングとシリンダ内面等のように、互いに摺動し合う摺動部材の摺動特性の改善が求められており、特に耐摩耗性の向上や低フリクション化(低μ化)が求められている。
一般には、こうした摺動特性の改善を実現するのに、摺動部材における摺動面の表面改質が行われる。具体的には、例えば表面改質処理によって互いに摺動する摺動部材の少なくとも一方の摺動面に固体潤滑皮膜を形成させることで、耐摩耗性の向上や低フリクション化を実現する。
例えば、液体潤滑剤の使用が不可能な370℃以上の高温大気中において摺動部を有する高温用機械装置の稼働を実現する技術として、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化クロムの三種類の混合物からなる高温固体潤滑剤を用いた減圧プラズマ溶射により、耐熱材料製の摺動部の摺動面に固体潤滑剤皮膜を形成させるという技術がある。
特開平6−306380号公報 特開2003−64463号公報 特開2003−301282号公報
しかしながら、上記の従来技術によっては、摺動部材の摺動特性の改善において画期的な低フリクション化が実現できるとは言い難く、さらなる改善の余地がある。以下、この点について具体的に説明する。
フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化クロムの三種類の混合物からなる高温固体潤滑剤を用いる場合、フッ化カルシウム及びフッ化バリウムは、減圧プラズマ溶射中における高温状態下で酸化する。そして、酸化によりフッ化カルシウム及びフッ化バリウムは分解し、酸化物(酸化カルシウム及び酸化バリウム)が生成される。すなわち、この分解によって、固体潤滑剤であるフッ化カルシウム及びフッ化バリウムの量は減少する。このように、従来技術によると、溶射により形成される固体潤滑剤皮膜中には、フッ化カルシウム及びフッ化バリウムが有効に残存しにくい。従って、固体潤滑剤であるフッ化カルシウム及びフッ化バリウムの固体潤滑剤皮膜中における残存量が減少することから、従来技術によって画期的な低フリクション化を実現できるとは言い難い。
また、上記従来技術において、フッ化カルシウム及びフッ化バリウムを固体潤滑剤皮膜中に有効な量だけ残存させるため、減圧プラズマ溶射前の混合粉末中により多くのフッ化カルシウム及びフッ化バリウムを混入することで、画期的な低フリクション化を図ることも考えられる。しかしながら、このようにフッ化カルシウム及びフッ化バリウムの混合量を増加した場合、溶射中の酸化・分解により劣化したフッ化カルシウム及びフッ化バリウムの他に、酸化により生成した酸化カルシウム及び酸化バリウムも固体潤滑剤皮膜中に多く含まれるようになり、これらが摩擦係数μを増大させてしまうと共に、皮膜を脆くさせる原因ともなってしまう。従って、減圧プラズマ溶射前の混合粉末中のフッ化カルシウム及びフッ化バリウムの量を多くしても、画期的な低フリクション化が実現できるとは言い難い。また、皮膜の脆化が生じる虞があることから、十分な摺動特性を実現するためにも改善の余地があると言える。
本発明の目的は、従来に比して一層の低フリクション化を実現できる摺動部材を提供することにある。
本発明は、第一の部材と、該第一の部材と摺動する第二の部材とによる摺動部材であって、前記第一の部材は、前記第二の部材との摺動面に、二硫化タングステンを7〜27重量%含有する酸化クロム皮膜を有し、前記第二の部材は、前記第一の部材との摺動面にダイヤモンドライクカーボン皮膜を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、2個の部材が互いに摺動し合う構成の摺動部材において、互いの部材の摺動面に形成される皮膜の組み合わせを、(Cr23+7〜27質量%WS2)とDLCとの組み合わせとすることで、大きなフリクション低減を実現できる。また、良好な耐摩耗性を得ることも可能となる。
図1は、本発明の一実施形態に係る摺動部材の構成を示しており、例えばピストンリングとシリンダ内面のように、2個の部材が互いに摺動し合う構成となっている。
一方の部材10は、母材11の表面(摺動面)に皮膜12が形成された構成となっている。この皮膜12は、マトリックス材としての酸化クロム(Cr23)、固体潤滑剤としての二硫化タングステン(WS2)及びバインダー(PVA(ポリビニルアルコール)等)を混合、造粒して得られた造粒粉末を母材11の表面にプラズマ溶射して形成されたものである。尚、こうして形成された溶射皮膜12は、酸化クロム中に7〜27質量%の二硫化タングステンが含有されている。これは、二硫化タングステンの含有量を7質量%未満とすると、自己潤滑性に優れた固体潤滑剤としての効果が出にくくなるためである。また、二硫化タングステンの含有量を27質量%より多くすると、形成された皮膜が脆くなり、耐摩耗性の低下、すなわち摺動特性の低下を招くためである。
また、上記のような一方の部材10と摺動し合う他方の部材20は、母材21の表面(摺動面)にダイヤモンドライクカーボン(DLC)皮膜22が形成された構成となっている。
以上のように、2個の部材10,20が互いに摺動し合う構成の摺動部材において、互いの部材10,20の摺動面に形成される皮膜の組み合わせを、二硫化タングステンを含有する酸化クロム皮膜12及びダイヤモンドライクカーボン皮膜22とすることで、他の種類の皮膜による組み合わせに比して特に大きなフリクション低減を実現できる。また耐摩耗性についても、他の種類の皮膜による組み合わせに比して良好な特性が得られる。
以下、本実施形態に係る摺動部材を、実施例と比較例とについて行った評価試験結果に基づいて説明する。尚、以下では、本実施形態に係る摺動部材を自動車用エンジンのピストンリングとシリンダ内面に適用する場合を想定して評価試験(具体的には、往復摺動試験及び熱サイクル試験)を行った。
<往復摺動試験用の試験片作製方法>
互いに摺動し合う2個の部材10,20の試験片10Aを、それぞれ次のように作製した。一方の部材10の試験片(シリンダ内面に相当する試験片)10Aについては、まずエンジンのボア径と略同一形状の中空円筒状のスリーブの内面に溶射材料をプラズマ溶射し、次にプラズマ溶射後のスリーブ内面にホーニング加工を施し、ホーニング加工後のスリーブから試験片を切り出した。尚、本実施例では、サイズが内径82mm、高さ135mm、厚さ9mmのアルミニウム合金(A5056)製スリーブを用いた。
表1に、プラズマ溶射に用いられる溶射材料を示す。ここで、固体潤滑剤を含む溶射材料については、マトリックス材料、固体潤滑剤及びバインダー(PVA(ポリビニルアルコール)等)を混合、造粒して得られた造粒粉末を用いた。
図2に、スリーブ内面に溶射材料をプラズマ溶射する溶射方法を示す。本実施例では、スリーブ内部に溶射ガンの先端を挿入し、溶射ガンの先端をスリーブの軸周りに200rpmの回転数で回転させながらスリーブの軸方向(図2における上下方向)に動かすことで、スリーブ内面に溶射皮膜を形成させた。尚、表1に示す溶射材料の内、Fe−1C−1.2Si−0.5MnとFe−26Mo−2.6S以外は、Ni−Cr−Al合金膜をアンダーコート材料としてスリーブ内面にプラズマ溶射してから、溶射材料のプラズマ溶射を行った。
プラズマ溶射後のホーニング加工では、スリーブ内面の溶射皮膜が所定の厚さ及び面粗さになるよう仕上げ加工を施した。具体的には、例えば図3のように、厚さ200μm程度の溶射材料皮膜を100μm程度の厚さに仕上げ加工した。
そして、ホーニング加工後のスリーブからスリーブ側面の一部を切り出し、後述の往復摺動試験にて使用する往復摺動試験片として、例えば図4のような形状の試験片に加工して、上記の各溶射材料をプラズマ溶射した一方の試験片(シリンダ内面に相当する試験片)を作製した。
他方の部材20の試験片(ピストンリングに相当する試験片)20Aについては、表面に窒化チタン(TiN)、窒化クロム(CrN)又はダイヤモンドライクカーボン(DLC)がコーティングされたピストンリングから、例えば図5のように一切片を切り出して、これを試験片20Aとした。
尚、上記の各材料がそれぞれコーティングされたピストンリングは、公知の技術(プラズマCVD技術など)によって作製される。
<往復摺動試験方法>
以上のようにして作製された各試験片10A,20Aについて、図6に示す装置を用いて往復摺動試験を行い、摩擦係数及び耐摩耗性の評価を行った。図6の装置30は、エンジンにおけるシリンダ内のピストンの運動を再現し、これによりエンジン動作時におけるピストンリングとシリンダ内面との摺動状態を再現するものである。
本装置30は、一方の試験片(シリンダ内面に相当する試験片)10Aを固定するための可動壁31と、他方の試験片(ピストンリングに相当する試験片)20Aを固定するための昇降テーブル32と、を備えている。可動壁31は、昇降テーブル32の方へ水平方向に動くようになっている。そして、試験中には、可動壁31の面上に固定された一方の試験片10Aを昇降テーブル32に固定された他方の試験片20Aに接触させた状態で、図6のように荷重がかかるようになっている。そして可動壁31の上端に、摺動試験中に発生した摩擦力を測定するためのロードセル33を有している。また、昇降テーブル32は上下方向に往復運動するようになっている。さらに本装置30は、往復運動中の両試験片10A,20Aの接触面(摺動面)上に潤滑油を供給する手段(図示せず)を備えている。
そして、各試験片10A,20Aを固定した後に、可動壁31に荷重をかけて両試験片10A,20Aを接触させ、この状態で、接触面(摺動面)上に潤滑油を供給しながら昇降テーブル32を上下方向に往復運動させる。これにより、両試験片10A,20Aが互いに摺動し合い、エンジン動作時におけるピストンリングとシリンダ内面との摺動状態が再現される。こうして両試験片10A,20Aを互いに摺動させることにより生じた摩擦力は、ロードセル33によって測定され、摩擦係数の評価が行われる。
本実施例では、昇降テーブル32の最上位置(ピストンの上死点に相当)をクランク角0°とし、この最上位置から昇降テーブル32の往復運動を開始した。つまり、昇降テーブル32の最下位置(ピストンの下死点に相当)はクランク角180°に相当し、1サイクルの往復運動により再び最上位置に戻ってきた場合、クランク角360°に相当することとなる。そして、このような往復運動を続けて行い、10サイクルにつき2000点のデータを取得し、その平均値を平均摩擦係数として算出して評価を行った。得られた摩擦係数のデータの一例を図7に示す。図7では、昇降テーブル32が下方向に運動しているときの摩擦係数を負、上方向に運動しているときの摩擦係数を正としている。
尚、上記の往復摺動試験における試験条件は、以下の通りである。
負荷荷重:160MPa
リングスピード:500〜1400cpm(毎分往復回数)
(リングの往復運動の)ストローク長さ:40mm
潤滑油の供給量:0.08ml/min
潤滑油:エンジンオイル
<往復摺動試験結果>
図8に、表1の各溶射材料の溶射皮膜を有する一方の試験片(シリンダ内面、ボア材)10Aと、表面に窒化チタン、窒化クロム又はダイヤモンドライクカーボンがコーティングされた他方の試験片(ピストンリング材)20Aと、をそれぞれ組み合わせて往復摺動試験を行い、得られた結果を示す。尚、図8には、一般的な組み合わせとして、鋳鉄(FC230)ボア材と窒化ピストンリングの組み合わせ、及び鋳鉄(FC230)ボア材とクロム(Cr)めっきのピストンリングの組み合わせによる往復摺動試験結果についても示す。また、NiOマトリックス材を用いた一方の試験片(シリンダ内面)10Aについては、リング材質が変わっても摩擦係数が比較的低いCr23マトリックス材を用いたものについて詳細検討を行うという観点から、説明の便宜上、固体潤滑剤を含むもののデータを省略し、代表例として固体潤滑剤を含まないNiOマトリックス材によるものを用いて得られたデータのみを示した。また、Cr23マトリックス材を用いた一方の試験片(シリンダ内面)10Aについても、BaFを用いたものについては皮膜強度が低いため、MoO3を用いたものについては、固体潤滑剤としての効能が低いと思われる等の理由から、説明の便宜上、固体潤滑剤としてBaFやMoO3を用いたもののデータを省略した。
図8に示すように、Cr23マトリックス材とWS2固体潤滑剤とを含むボア材(シリンダ内面の皮膜材)を用いた場合の平均摩擦係数は、他のボア材を用いた場合の平均摩擦係数に比べて小さく、さらにダイヤモンドライクカーボン(DLC)皮膜がコーティングされたピストンリングと組み合わせると、一段と小さい。特に、平均摩擦係数が0.03以下となっているのは、(Cr23+WS2)ボア材とDLCピストンリングとの組み合わせのみである。以上より、(Cr23+WS2)ボア材とDLCピストンリングとの組み合わせによって、一層の低フリクション化を実現できる。また、TiN,CrNピストンリングを用いたときに対する、DLCリングを用いたときの平均摩擦係数の低下率を図9に示す。図9からも、(Cr23+WS2)ボア材とDLCピストンリングとの組み合わせによって、一層の低フリクション化を実現できることが分かる。
さらに、上記の往復摺動試験がなされた各ピストンリングについて、リングの摩耗量を測定した。具体的には図10のように、ボア材との往復摺動によってピストンリング表面に形成された摩耗面の幅(摩耗幅)を測定し、得られた摩耗幅でリングの摩耗量の評価を行った。
図11に、ボア材及びピストンリングの各組み合わせごとのリング摩耗幅を示す。図11に示すように、(Cr23+WS2)ボア材とDLCピストンリングとの組み合わせの場合、リング摩耗幅は小さい、すなわちリング摩耗量は少ない。従って、耐摩耗性の観点からも、(Cr23+WS2)ボア材とDLCピストンリングとの組み合わせは最適な組み合わせであることが分かる。
また、固体潤滑剤が低フリクション化に寄与していることが伺えるため、シリンダ内面の皮膜材における固体潤滑剤の含有量と、DLCピストンリングとの往復摺動試験により得られた平均摩擦係数との関係を調べた。その結果を図12に示す。尚、シリンダ内面の皮膜材のマトリックス材として、Cr23とNiOの二種類を選択して行った。また、固体潤滑剤の含有量(質量%)は、溶射皮膜の組成分析(例えばEPMAを用いた表面組成分析、など)により測定した。
図12に示すように、(Cr23+WS2)ボア材においてWS2が7〜27質量%含有される場合、平均摩擦係数が特に小さくなることが分かる。尚、図中に「ワレ」と記載したものは、断面観察(例えばSEMやEPMAを用いた断面観察)の結果、一部に割れが生じていたものである。これは皮膜の応力によるものと考えられるが、酸化カリウムや酸化バリウムが悪影響を及ぼしたと思われる。
以上述べたように、2個の部材が互いに摺動し合う構成の摺動部材(ボア材とピストンリング)において、互いの部材の摺動面に形成される皮膜の組み合わせを、WS2が7〜27質量%含有される(Cr23+WS2)と、DLCとの組み合わせにすることで、特に大きなフリクション低減を実現でき、良好な耐摩耗性を得ることができる。
<熱サイクル試験>
ところで本実施例では、上記の往復摺動試験の他にも、(Cr23+WS2)ボア材とDLCピストンリングとはエンジンに使用されることを考慮して、ボア材における溶射皮膜の熱衝撃性を確認するために、熱サイクル試験を行った。
図13に、本実施例での熱サイクル試験方法を示す。試験片として、例えば円筒形の母材の上面に溶射皮膜を形成したものを、各溶射材料ごとに作製した。また、この母材の内部に、図13のように先端が皮膜から例えば約0.5mm下方の深さに位置するように熱電対を配置して、皮膜付近の温度を測定可能な構成とした。
そして、熱電対により計測される温度履歴が例えば図13のように室温から200℃まで加熱手段(例えばO2−C22バーナー)により試験片の溶射皮膜を加熱しては、加熱を停止して試験片(すなわち皮膜)を室温まで冷却(空冷)し、冷却後の室温状態を所定時間(例えば20秒)保持してから再度200℃まで加熱する、という加熱・冷却サイクルを繰り返し行った。以上のような条件で熱サイクル試験を行い、目視により溶射皮膜における割れの有無を観察し、割れの発生するサイクル数を測定した。
図14に、本実施例における熱サイクル試験の試験結果を示す。図14に示すように、熱衝撃性の面から見ても、(Cr23+WS2)ボア材が最も優れていることが分かる。他のものについて考察すると、Cr23単体のものについては、熱応力を吸収する軟質剤(固体潤滑剤)が存在しないため、低サイクル数で割れが発生すると言える。また、固体潤滑剤としてCaF2やBaF2を含有するものについては、WS2と同程度の固体潤滑剤の含有量を実現するために、Fの分離を考慮して溶射用の造粒粉末にかなりの量のCaF2やBaF2を混合しなければならないが、その多くが酸化カルシウムや酸化バリウムとなって皮膜を脆化させてしまい、(Cr23+WS2)ボア材に比べて低サイクル数で割れが発生したと言える。以上のことから、エンジンに使用されるボア材としても、(Cr23+WS2)材が好ましいと言える。また図14に示す結果から、特にWS2の含有量が16〜27質量%であることが、熱衝撃性の面から見て好ましい。
<面粗さの影響>
また上記試験結果より、(Cr23+7〜27質量%WS2)とDLCとの組み合わせにより最適な摺動特性を得られることが分かったが、この(Cr23+7〜27質量%WS2)皮膜の面粗さと、平均摩擦係数及びリング摩耗幅との関係についても調べた。尚、本実施例では、ホーニング加工による仕上げ加工後の面粗さを変化させる目的で、造粒粉末の粒径を変化させて溶射し、上記と同様の条件でホーニング加工して得られた試験片(シリンダ内面)を用いて、往復摺動試験を行った。
図15に、面粗さの異なる(Cr23+7〜27質量%WS2)ボア材と、DLCピストンリング材との組み合わせによる往復摺動試験の試験結果(平均摩擦係数及びリング摩耗幅)を示す。ここで、本実施例では、公知の表面粗さ測定機により測定されたRk(コア部のレベル差)とRpk(突出山部高さ)との和を溶射皮膜の面粗さRとして用いた。また本実施例では、リング摩耗幅が0.13mmを超えると、試験片におけるDLCコーティング層がなくなり下地(母材)が現れてしまうため、リング摩耗幅については限界値を0.13mmとして、それ以下の摩耗幅となるような面粗さについて検討した。
図15に示すように、ボア材(Cr23+7〜27質量%WS2)の面粗さR(=Rk+Rpk)が0.1≦R≦0.55のとき、平均摩擦係数は0.03以下となり、R=0.025のとき平均摩擦係数は最小の0.025となった。また、上記の通りリング摩耗幅が0.13mm以下となるためには、R≦0.4にする必要があった。このように、DLCピストンリング材と摺動し合うボア材(Cr23+7〜27質量%WS2)の面粗さRを、0.1≦R≦0.55となるように仕上げ加工することで、低フリクション化を実現できる。さらに、ボア材(Cr23+7〜27質量%WS2)の面粗さRを、0.1≦R≦0.4とすることで、良好な耐摩耗性をも実現できる。
尚、以上のような本発明の摺動部材は、例えばレース用エンジン等のような特殊環境下において使用する場合に好適である。
本発明の一実施形態に係る摺動部材の概略構成を示す図である。 スリーブ内面に溶射材料をプラズマ溶射する溶射方法を示す図である。 プラズマ溶射後のホーニング加工処理前後の状態を示す図である。 ホーニング加工後のスリーブから往復摺動試験片として切り出された一方の試験片を示す図である。 ピストンリングから往復摺動試験片として切り出された他方の試験片を示す図である。 往復摺動試験装置の構成を示す図である。 往復摺動試験により得られた平均摩擦係数のデータの一例を示す図である。 各種試験片の組み合わせごとの平均摩擦係数を示す図である。 TiN,CrNピストンリングを用いたときに対する、DLCリングを用いたときの平均摩擦係数の低下率を示す図である。 往復摺動試験がなされた各ピストンリングの摩耗量の測定方法を示す図である。 ボア材及びピストンリングの各組み合わせごとのリング摩耗幅を示す図である。 シリンダ内面の皮膜材における固体潤滑剤の含有量と、DLCピストンリングとの往復摺動試験により得られた平均摩擦係数との関係を示す図である。 熱サイクル試験方法を示す図である。 熱サイクル試験の試験結果を示す図である。 面粗さの異なる(Cr23+WS2)ボア材と、DLCピストンリング材との組み合わせによる往復摺動試験の試験結果を示す図である。
符号の説明
10 一方の部材、10A 一方の部材の試験片、11 母材(一方の部材側)、12 溶射皮膜(一方の部材側)、20 他方の部材、20A 他方の部材の試験片、21 母材(他方の部材側)、22 ダイヤモンドライクカーボン(DLC)皮膜(他方の部材側)、30 往復摺動試験装置、31 可動壁、32 昇降テーブル、33 ロードセル。

Claims (1)

  1. 第一の部材と、該第一の部材と摺動する第二の部材とによる摺動部材であって、
    前記第一の部材は、前記第二の部材との摺動面に、二硫化タングステンを7〜27重量%含有する酸化クロム皮膜を有し、
    前記第二の部材は、前記第一の部材との摺動面にダイヤモンドライクカーボン皮膜を有する、
    ことを特徴とする摺動部材
JP2005152159A 2005-05-25 2005-05-25 摺動部材 Expired - Fee Related JP4638769B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005152159A JP4638769B2 (ja) 2005-05-25 2005-05-25 摺動部材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005152159A JP4638769B2 (ja) 2005-05-25 2005-05-25 摺動部材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006328463A JP2006328463A (ja) 2006-12-07
JP4638769B2 true JP4638769B2 (ja) 2011-02-23

Family

ID=37550461

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005152159A Expired - Fee Related JP4638769B2 (ja) 2005-05-25 2005-05-25 摺動部材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4638769B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102010046941A1 (de) * 2010-09-29 2012-03-29 Wittenstein Ag Tribologisches System
US20120180747A1 (en) * 2011-01-18 2012-07-19 David Domanchuk Thermal spray coating with a dispersion of solid lubricant particles
EP3414356B1 (de) * 2016-02-12 2021-04-21 Oerlikon Surface Solutions AG, Pfäffikon Tribologisches system eines verbrennungsmotors mit beschichtung
JP7032469B2 (ja) * 2020-03-26 2022-03-08 大同メタル工業株式会社 摺動部材

Citations (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4973309A (ja) * 1972-11-15 1974-07-16
JPS58164785A (ja) * 1982-03-25 1983-09-29 Showa Denko Kk 耐摩耗用複合溶射粉末
JPS5950223A (ja) * 1982-09-14 1984-03-23 Toyota Motor Corp 摺動部材
JPS60231457A (ja) * 1984-04-26 1985-11-18 科学技術庁航空宇宙技術研究所長 固体潤滑複合材料
JPS63266210A (ja) * 1987-04-17 1988-11-02 Brother Ind Ltd 摺動装置
JPH06306380A (ja) * 1993-03-18 1994-11-01 Agency Of Ind Science & Technol 固体潤滑剤及び固体潤滑剤被膜の形成方法
JPH0741779A (ja) * 1993-05-28 1995-02-10 Nippon Seiko Kk 摺動部材
JP2001280497A (ja) * 2000-03-29 2001-10-10 Teikoku Piston Ring Co Ltd アルミニウム合金製シリンダとピストンリングの組合せ
JP2003064463A (ja) * 2001-06-15 2003-03-05 Nippon Piston Ring Co Ltd 摺動部材の耐摩耗性溶射皮膜
JP2003301282A (ja) * 2002-04-10 2003-10-24 Kobe Steel Ltd 高面圧下での摺動特性に優れる摺動部材
JP2004068815A (ja) * 2002-07-25 2004-03-04 Riken Corp ピストンリング
JP2004100645A (ja) * 2002-09-12 2004-04-02 Toyota Motor Corp シリンダブロック
JP2004138128A (ja) * 2002-10-16 2004-05-13 Nissan Motor Co Ltd 自動車エンジン用摺動部材

Patent Citations (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4973309A (ja) * 1972-11-15 1974-07-16
JPS58164785A (ja) * 1982-03-25 1983-09-29 Showa Denko Kk 耐摩耗用複合溶射粉末
JPS5950223A (ja) * 1982-09-14 1984-03-23 Toyota Motor Corp 摺動部材
JPS60231457A (ja) * 1984-04-26 1985-11-18 科学技術庁航空宇宙技術研究所長 固体潤滑複合材料
JPS63266210A (ja) * 1987-04-17 1988-11-02 Brother Ind Ltd 摺動装置
JPH06306380A (ja) * 1993-03-18 1994-11-01 Agency Of Ind Science & Technol 固体潤滑剤及び固体潤滑剤被膜の形成方法
JPH0741779A (ja) * 1993-05-28 1995-02-10 Nippon Seiko Kk 摺動部材
JP2001280497A (ja) * 2000-03-29 2001-10-10 Teikoku Piston Ring Co Ltd アルミニウム合金製シリンダとピストンリングの組合せ
JP2003064463A (ja) * 2001-06-15 2003-03-05 Nippon Piston Ring Co Ltd 摺動部材の耐摩耗性溶射皮膜
JP2003301282A (ja) * 2002-04-10 2003-10-24 Kobe Steel Ltd 高面圧下での摺動特性に優れる摺動部材
JP2004068815A (ja) * 2002-07-25 2004-03-04 Riken Corp ピストンリング
JP2004100645A (ja) * 2002-09-12 2004-04-02 Toyota Motor Corp シリンダブロック
JP2004138128A (ja) * 2002-10-16 2004-05-13 Nissan Motor Co Ltd 自動車エンジン用摺動部材

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006328463A (ja) 2006-12-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5248379B2 (ja) 複層被膜組成物が施された内燃機関のピストン及び該ピストンの表面処理方法
JP6112203B2 (ja) 鉄系溶射被膜、これを用いた内燃機関用シリンダーブロック及び内燃機関用摺動機構
JP5545774B2 (ja) ピストンリング及びピストン装置
KR20140034142A (ko) 고체 윤활제 입자의 분산물을 갖는 용사 코팅
JP5903085B2 (ja) シリンダボアとピストンリングの組合せ
JP4638769B2 (ja) 摺動部材
WO2011161346A1 (fr) Procede pour l'application d'un revetement sur un carter cylindre en alliage d'aluminium
JP6861217B2 (ja) トライボロジーシステムとこれを有する内燃エンジン
RU2563912C2 (ru) Способ изготовления поршневого кольца с внедренными частицами
RU2635119C2 (ru) Износостойкое покрытие для поршневых колец
JP2009155720A (ja) 鉄系溶射被膜、その形成方法及び摺動部材
JP5981013B1 (ja) 内燃機関用ピストンリング
JP5307208B2 (ja) 複層被膜組成物が施された内燃機関のピストン
JP2011025346A (ja) 摺動性と表面圧縮残留応力を同時に付与するショットピーニング用粉末およびそれを用いた摺動性部材の製造方法
JP7343843B2 (ja) 摺動機構
JP5826958B1 (ja) 内燃機関用ピストンリング
KR101922159B1 (ko) 피스톤 스커트부 코팅재 조성물 및 이를 이용한 피스톤 스커트부의 코팅방법
US11585289B2 (en) Thermally sprayed coating for sliding member and sliding device provided with said thermally sprayed coating for sliding member
JP7315153B2 (ja) 摺動部材用被膜組成物及び摺動部材
WO2021161728A1 (ja) 摺動機構
US11746405B2 (en) Thermal sprayed coating for sliding member, and sliding device provided with thermal sprayed coating for sliding member
JP2015127560A (ja) 内燃機関用ピストンリング
KR20060017341A (ko) 저마찰특성이 우수한 용사코팅 실린더 블록용 세라믹플라즈마 용사코팅제 조성물
JP2007177760A (ja) 内燃機関用シリンダブロック、ピストン及びピストンリング
JPS62280339A (ja) 摺動用部材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080119

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100708

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100713

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100910

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20101116

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20101126

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131203

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131203

Year of fee payment: 3

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313532

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131203

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees