JPH0741779A - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材

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JPH0741779A
JPH0741779A JP23494493A JP23494493A JPH0741779A JP H0741779 A JPH0741779 A JP H0741779A JP 23494493 A JP23494493 A JP 23494493A JP 23494493 A JP23494493 A JP 23494493A JP H0741779 A JPH0741779 A JP H0741779A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】鉄鋼で形成された摺動面に、ダイヤモンドライ
クカーボン(DLC)または二硫化タングステン(WS
2 )からなる固体潤滑剤被膜を有する摺動部材におい
て、前記固体潤滑剤被膜の摺動面に対する付着強度を向
上させる。 【構成】鉄鋼で形成された摺動面とDLCまたはWS2
からなる固体潤滑剤被膜との間に、珪素、珪素化合物、
またはWとSとOとからなる化合物で構成される中間層
を設ける。図1は、本発明の一実施例について、固体潤
滑剤被膜の寿命を調べるためのボールオンディスク試験
機用の試験片であり、例えばSUS440Cからなる円
板1の上に0.05μm厚のSiO2 を中間層2として
形成し、その上に1.0μm厚のDLCを固体潤滑剤被
膜3として形成したものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、摺動面に固体潤滑剤の
被膜を有する摺動部材に関するものであり、特に、航空
機、原子力機器、および半導体製造装置などのように、
大気中における高温下、真空中における高温下、または
腐食雰囲気下などの特殊な環境下で使用される滑り軸受
や転がり軸受などを構成する摺動部材として好適なもの
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、高温、真空、および腐食雰囲
気などのように、潤滑油やグリースを使用できない環境
下で摺動部材を潤滑する場合には、摺動面に固体潤滑剤
の被膜を設けることが行われている。このような固体潤
滑剤としては、金、銀、鉛等の軟質金属、二硫化モリブ
デン(MoS2 )、二硫化タングステン(WS2 )、お
よびグラファイトなどが用いられている。
【0003】これらの固体潤滑剤は、使用雰囲気によっ
て潤滑特性が異なり、銀、鉛、MoS2 、およびWS2
は、真空中において良好な潤滑特性を発揮することが知
られている。そして、特にWS2 は、MoS2 と比べて
酸化温度が50℃以上も高いことから、真空かつ高温下
において好適に使用されるものである。これに対して、
グラファイトは大気中での潤滑特性に優れており、炭化
水素系のガスを原料としてPVDやCVDにより得られ
るDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜も、グラフ
ァイトと類似の潤滑特性を示す。特に、このDLC膜
は、硬質膜でありながら大気中における摩擦係数が0.
1以下と低く、さらに、耐熱性も高い(400〜500
℃において使用可能)ため、有用な固体潤滑剤となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなダイヤモンドライクカーボンまたは二硫化タングス
テンの被膜を、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼、
析出硬化系ステンレス鋼、またはM50等の鉄鋼で形成
された摺動面に直接形成すると、摺動面と被膜とにおけ
る熱膨張率の違いにより、被膜にクラックが発生して摺
動面から剥離するという不具合があった。
【0005】また、ダイヤモンドライクカーボンおよび
二硫化タングステンの鉄鋼面に対する親和性があまり高
くないために、このような組み合わせでは、固体潤滑剤
被膜の摺動面に対する付着強度を十分に大きくすること
ができないことから、被膜の耐久性が不十分であるとい
う問題点があった。本発明は、このような従来技術の問
題点に着目してなされたものであり、鉄鋼で形成された
摺動面と、ダイヤモンドライクカーボンまたは二硫化タ
ングステンからなる被膜との間に、特定成分からなる中
間層を設けることにより、被膜の摺動面に対する付着強
度を十分に大きくして、ダイヤモンドライクカーボンま
たは二硫化タングステンからなる被膜の耐久性を向上さ
せ、摺動部材としての耐久寿命を長くし、信頼性を高く
することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、鉄鋼で形成された摺動面に、ダイヤモン
ドライクカーボンまたは二硫化タングステンからなる固
体潤滑剤被膜を有する摺動部材において、前記摺動面と
固体潤滑剤被膜との間に、珪素、珪素化合物、またはW
とSとOとからなる化合物で構成される中間層を設けた
ことを特徴とする摺動部材を提供する。
【0007】前記中間層は従来より公知の成膜手段によ
り形成されるものであり、珪素および珪素化合物の中間
層は、例えば当該珪素および珪素化合物をターゲットと
してスパッタリング法により形成され、WとSとOとか
らなる化合物の中間層は、例えば二硫化タングステン
(WS2 )をターゲットとしスパッタガスに酸素を加え
て行う反応性スパッタリング法や、タングステン(W)
をターゲットとしスパッタガスに硫化水素(H2 S)と
酸素を加えて行う反応性スパッタリング法等により形成
される。
【0008】なお、二硫化タングステンを固体潤滑剤被
膜とし、WとSとOとからなる化合物を中間層とする場
合には、二硫化タングステン(WS2 )をターゲットと
し酸素を加えたスパッタガスで反応性スパッタリングを
行うことにより摺動面にWとSとOとからなる化合物の
中間層を成膜してから、酸素の導入を止めて通常のスパ
ッタリングを行うことにより二硫化タングステンを成膜
すると、両者の成膜を効率的に行うことができる。
【0009】
【作用】本発明によれば、摺動面と固体潤滑剤被膜との
間に中間層を設けたことにより、前記被膜の内部ひずみ
を緩和できるため、被膜にクラックが発生して摺動面か
ら剥離することを防止できる。また、この中間層を珪
素、珪素化合物、またはWとSとOとからなる化合物で
構成したことにより、この中間層が、ダイヤモンドライ
クカーボンまたは二硫化タングステンからなる固体潤滑
剤被膜と、鉄鋼で形成された摺動面との接着剤として作
用して、摺動面に対する固体潤滑剤の付着強度を高くで
きることが本発明者等の研究により確認された。
【0010】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明す
る。 <実施例1>図1に示すような試験片により、摩擦・摩
耗試験を行った。試験片は、次のようにして作製した。
すなわち、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS440
C(焼入れ,焼戻しを施して硬さHR C58としたも
の)からなる直径52mm、厚さ10mmの円板1の片
面に、中間層2として、SiC、SiO2 、Siのいず
れかを、図2に示す高周波マグネトロンスパッタリング
装置により0.05μmの膜厚に形成し、その上に固体
潤滑剤被膜3として、プラズマCVD装置でDLC(ダ
イヤモンドライクカーボン)膜を表1に示す各膜厚で形
成した。また、中間層2を形成しないでDLC膜を同様
に形成した試験片も作製した。
【0011】なお、図2から分かるように、この高周波
マグネトロンスパッタリング装置内部には、アノード1
1を備えた基台12の上に被コーテイング物Wを置き、
これにターゲットTを備えたカソード13が対置してあ
る。また、外部には高周波電源14(13.56MH
z)、排気システム15、Arボンベ16、真空計17
等を備えている。したがって、低圧アルゴン(Ar)雰
囲気中で両電極11,13間に低圧グロー放電を行わせ
ると、発生したアルゴンイオン(Ar+ )の衝撃を受け
てターゲットTから飛び出したスパッタ原子Aが被コー
テイング物Wの表面に堆積する。
【0012】試験装置としては、図3に示すような、真
空中ボールオンディスク試験機40を使用した。この装
置は、真空度が制御可能な真空チャンバー41内に、回
転軸42が軸受43によって回転自在に支持された回転
ワークテーブル44が回転自在に配設され、この回転ワ
ークテーブル44に試験片Wを載置し、この試験片Wの
上面側に試験片と同一材質の5/16インチのボール4
5を重り46およびバランス重り47で調節された垂直
荷重0.5kgfで押下するように構成されている。そ
して、回転軸42が磁性流体シールユニット48を介し
てモータ49に連結されて、ボール45に対する滑り速
度が1.5m/sとなるように回転駆動され、そのとき
のボール45と試験片Wとの摩擦係数すなわち接触抵抗
に応じたトルクがロードセルLで検出されるようになっ
ている。
【0013】この真空中ボールオンディスク試験機に前
述の試験片をそれぞれセットして、大気圧下で試験を行
い、摩擦係数を測定するとともに、摩擦係数が0.3を
超えるまでの総回転数を固体潤滑剤被膜3の寿命として
測定した。結果を下記の表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】表1から分かるように、中間層がない No.
1−1の試験片ではDLC膜が試験前に剥離してしまっ
たが、 No.1−2〜1−4,1−6の各試験片では1.
0×105 rev.以上の寿命となり、摺動部材として
十分な寿命を備えたものとなっている。また、 No.1−
5の試験片ではDLCの膜厚が0.05μmと薄いため
に寿命が1.0×105 rev.に達していない。 <実施例2>実施例1と同様に、図1に示すような試験
片により同様にして摩擦・磨耗試験を行った。ただし、
中間層2として、SiC、SiO2 、Si3 4 のいず
れかを0.10μmの膜厚で形成し、固体潤滑剤被膜3
として高周波マグネトロンスパッタリングにより二硫化
タングステン(WS2 )を1.0μmの膜厚に形成し
た。また、真空中ボールオンディスク試験機の真空チャ
ンバー41内の真空度を2.0×10-4Pa以下に設定
し、荷重を1.0kgfに変えて試験を行った。結果を
下記の表2に示す。
【0016】
【表2】
【0017】表2から分かるように、中間層がない No.
2−1の試験片と比較して No.2−2〜2−4の各試験
片では一桁上の1.0×105 rev.以上の寿命とな
り、摩擦係数も小さいため、摺動部材として十分な寿命
を備えたものとなっている。 <実施例3>SUS440C(焼入れ,焼戻しにより硬
さをHR C58〜61としたもの)からなる内輪および
外輪と、同材質の玉に、表3に示す各膜厚のSiO2
らなる中間層を形成し、その上に二硫化タングステン
(WS2 )を表3に示す各膜厚で形成してなる転動体
と、材料の組成がポリテトラフルオロエチレン(PTF
E)80重量%,ガラス繊維15重量%,二硫化モリブ
デン(MoS2 )5重量%である保持器とで構成され
た、内径8mm、外径22mm、幅7mm、接触角30
°のアンギュラ玉軸受を用いて、図4に示す真空中軸受
試験装置により真空中における軸受の性能評価試験を行
った。
【0018】図4の真空中軸受試験装置50において
は、真空度2×10-5Pa以下、温度を常温とした真空
チャンバー51内に、水平方向に延びる回転軸52が軸
受装置53で支持されて回転自在に配設され、この回転
軸52に二組の試験軸受54a,54bが装着してあ
り、その外輪に円筒状のハウジング56が外嵌してあ
る。ハウジング56には回動アーム57が固着してあ
り、この回動アーム57の先端は微小荷重変換器58に
当接してある。また、前記回転軸52の端部は、磁性流
体シールユニット59でシールして真空チャンバー51
外に出してある。
【0019】そして、試験軸受54a,54bに対して
スプリング55により100Nのアキシャル荷重を作用
させ、前記回転軸52の端部に取り付けたプーリ60
を、ベルト61を介して駆動モータ62の回転軸に固定
したプーリ63に連結することにより、1000rpm
で回転駆動した時のハウジング56に生じるトルクが、
微小荷重変換器58により検出されるようになってい
る。
【0020】この真空中軸受試験装置に前述の試験用軸
受をそれぞれセットして、トルクの測定を行い、トルク
が5×10-3Nmになるまでの総回転数を調べてこれを
寿命とした。結果を下記の表3に示す。なお、 No.3−
1と3−3とについて、回転数に対するトルクの推移を
調べたグラフを図5に示す。
【0021】
【表3】
【0022】図5のグラフから分かるように、 No.3−
1は1×105 rev.を少し超えた辺りでトルクが急
激に高くなるのに対し、 No.3−3は1×107 re
v.を超えてもトルクの変化が見られなかった。また、
表3から分かるように、 No.3−3、 No.3−5〜3−
7では、総回転数が1.0×107 rev.を超えても
トルクが5×10-3Nm未満であり軸受寿命が高い。こ
れに比べて、SiO2 のない No.3−1は寿命が二桁以
上短く、No.3−2,3−8はSiO2 の膜厚が薄すぎ
るためやや寿命が短くなっている。また、 No.3−4は
No.3−3とSiO2 の膜厚は同じであるがWS2 の膜
厚が薄すぎるため、寿命が短くなっている。 <実施例4>実施例1と同様に、図1に示すような試験
片により同様にして摩擦・磨耗試験を行った。ただし、
中間層2としてはWとSとOとからなる化合物(W−S
−O)を、固体潤滑剤被膜3としては二硫化タングステ
ン(WS2 )をそれぞれ表4の各膜厚で形成した。
【0023】中間層2と固体潤滑剤被膜3の成膜は、円
板1を図2に示す高周波マグネトロンスパッタリング装
置にかけ、WS2 をターゲットとし、酸素を用いた反応
性スパッタリングを行うことによりW−S−O(中間
層)を成膜した後に、酸素の導入を止めて通常のスパッ
タリングを行うことによりWS2 (固体潤滑剤被膜)を
成膜することにより行った。
【0024】反応性スパッタリングは図6のフローチャ
ートに基づき以下のようにして行った。すなわち、装置
内に試験片をセットし(S1)、装置内を真空にするた
めの排気を行って(S2)から、アルゴンガスを導入し
て10-4Pa以下の圧力に保持する(S3)。その後、
圧力0.93Pa、高周波電力800Wの条件でイオン
ボンバードを行い(S4)、まず酸素を所定流量で導入
し、酸素が所定量だけ導入された後にアルゴンガスを2
0〜25ml/minで導入し、酸素とアルゴンとの流
量比(O2 /Ar)を0.5〜60%とした(S5)状
態で、圧力0.8Pa、高周波電力600Wの条件でプ
リスパッタを行った(S6)後、同じ条件で本スパッタ
を所定時間行う(S7)。
【0025】また、真空中ボールオンディスク試験機の
真空チャンバー41内の真空度と荷重は実施例2と同様
にした。結果を下記の表4に示す。
【0026】
【表4】
【0027】表4から分かるように、 No.4−1〜4−
3,4−8の各試験片では1.0×105 rev.以上
の寿命となり、摺動部材として十分な寿命を備えたもの
となっている。これに対して、中間層がない No.4−4
の試験片、中間層の膜厚が薄い試験片 No.4−6、WS
2 の膜厚が薄い No.4−7の試験片は寿命が1.0×1
5 rev.に達していない。
【0028】なお、試験片 No.4−2,4−5はWS2
を設けていないが、 No.4−2はW−S−Oの膜厚が
1.0μmで1.0×105 rev.以上の寿命となっ
たが、No.4−5はW−S−Oの膜厚が0.10μmで
あり寿命は1.1×104 rev.となって1.0×1
5 rev.に達していない。これにより、WとSとO
とからなる化合物自身が潤滑作用を有しており、これが
所定の膜厚以上で摺動面に形成されていれば、その上に
WS2 を設けなくても摺動部材として十分な寿命を備え
たものになることが分かる。このことは、W−S−Oか
らなる膜と基板である円板(SUS440C)との界面
にW,S,O,Feからなる化合物層が生じることによ
り、W−S−Oからなる膜と基板(SUS440C)と
の付着強度が高くなるためであると考えられる。
【0029】一方、W−S−Oを1.0μmの膜厚で円
板1上に形成しただけでWS2 を設けていない試験片 N
o.4−2と、W−S−Oを設けずに円板1上に直接WS
2 を1.0μmの膜厚で形成した試験片 No.4−4とに
ついて、XPS(X-ray photo-electronic spectroscop
y ;X線光電子分光法)により、アルゴンイオンでエッ
チングしながら深さ方向分析を行った結果のグラフを、
図7および8にそれぞれ示す。
【0030】これらのグラフにおいて、縦軸は原子濃
度、横軸はアルゴンイオンによるエッチング時間を示す
が、横軸は深さに対応し、Feが立ち上がる点(図7の
A、図8のB)が膜と基板である円板(SUS440
C)との境界点に相当する。WS 2 をSUS440Cか
らなる基板上に成膜した試験片 No.4−4でも、図8の
グラフから分かるように、膜と基板との界面には酸素が
存在している。すなわち積極的に成膜しなくてもW−S
−Oの中間層が存在している。また、各グラフから分か
るように、膜と基板との界面付近における酸素の原子濃
度は、膜がW−S−Oである場合は約40%であり、膜
がWS2 である場合は約30%である。
【0031】この分析結果と、試験片 No.4−2(基板
+W−S−O)の寿命は1.0×105 rev.に達し
ているが、試験片 No.4−4(基板+WS2 )の寿命は
1.0×105 rev.に達していないという前記試験
の結果(表4参照)とから、膜と基板との界面付近にお
ける酸素の原子濃度が約30%では、膜の基板に対する
密着性が不十分であり、約40%であれば十分であるこ
とが分かる。このことから、W−S−Oからなる膜と基
板(SUS440Cからなる摺動面)との界面付近にお
ける酸素の原子濃度が35%以上であれば、摺動部材と
して十分な寿命を達成できることが予想される。 <実施例5>実施例1と同様に、図1に示すような試験
片により同様にして摩擦・磨耗試験を行った。ただし、
中間層2としてはWとSとOとからなる化合物(W−S
−O)を、固体潤滑剤被膜3としてはDLCをそれぞれ
表5の各膜厚で形成した。
【0032】W−S−Oの成膜は実施例4と同様に行
い、DLCの成膜は実施例1と同様に行った。結果を下
記の表5に示す。
【0033】
【表5】
【0034】表5から分かるように、 No.5−1,5−
2,5−5の各試験片では1.0×105 rev.以上
の寿命となり、摺動部材として十分な寿命を備えたもの
となっている。これに対して、W−S−Oの薄い No.5
−3の試験片、DLCの膜厚が薄い試験片 No.5−4は
寿命が1.0×105 rev.に達していない。 <実施例6>実施例3と同様のアンギュラ玉軸受を構成
できる内輪、外輪、転動体(ボール)、および保持器を
SUS440Cで成形し、焼入れ,焼戻しにより硬さを
RC58〜61としたものを母材とし、この母材その
ままの状態のもの(表6に「×」で表示)と、この母材
に実施例4と同様にしてW−S−Oからなる中間層を
0.1μm形成し、さらにこの中間層の上にWS2 から
なる固形潤滑剤被膜を0.5μm形成したもの(表6に
「◎」で表示)、母材に直接固体潤滑剤被膜を0.5μ
m形成したもの(表6に「○」で表示)を、内輪、外
輪、転動体、および保持器についてそれぞれ用意し、こ
れらを表6に示す組み合わせで組み立てた軸受試験体に
より、実施例3と同様にして、図4に示す真空中軸受試
験装置により真空中における軸受の性能評価試験を行っ
た。その結果を表6に併せて示す。
【0035】
【表6】
【0036】表6から分かるように、母材に中間層と固
体潤滑剤被膜とが形成してある転動体を組み込んだ No.
6−1〜6−3では、寿命が1.0×107 rev.ま
たはそれ以上となった。これに対して、内外輪と保持器
は母材に中間層と固体潤滑剤被膜とを形成したものであ
るが、転動体は母材のみである No.6−4は寿命が一桁
短く、内外輪、転動体、および保持器がすべて母材に直
接中間層なしで固体潤滑剤被膜を形成したものである N
o.6−5は寿命が二桁以上短くなった。
【0037】以上の各実施例の結果より、寿命の点から
は、DLCまたはWS2 からなる固体潤滑剤被膜の膜厚
は0.5μm以上であることが、珪素、珪素化合物、ま
たはWとSとOとからなる化合物で構成される中間層の
膜厚は0.05μm以上であることが好ましいが、膜厚
が1.0μmを超えると成膜時間が長くなりコストアッ
プにつながるため、寿命とコストとを加味すると、前記
固体潤滑剤被膜の膜厚の好適範囲は0.5〜1.0μ
m、前記中間層の膜厚の好適範囲は0.05〜1.0μ
mとなる。
【0038】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、鉄鋼で形成された摺動面に、ダイヤモンドライクカ
ーボンまたは二硫化タングステンからなる固体潤滑剤被
膜を有する摺動部材において、前記摺動面と固体潤滑剤
被膜との間に、特定成分からなる中間層を設けたことに
より、被膜の摺動面に対する付着強度を十分に大きくし
て、ダイヤモンドライクカーボンまたは二硫化タングス
テンからなる被膜の耐久性を向上させ、摺動部材として
の耐久寿命を長くし、信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を真空中ボールオンディスク試
験機により評価するために作製した試験片を示す断面図
である。
【図2】実施例において使用した高周波マグネトロンス
パッタリング装置を示す概要図である。
【図3】真空中ボールオンディスク試験機を示す概略構
成図である。
【図4】真空中軸受試験装置を示す概略構成図である。
【図5】図4の試験装置を使用した試験結果を示す、総
回転数に対する動トルクの関係を示すグラフである。
【図6】実施例において行った反応性スパッタリングの
手順を示すフローチャートである。
【図7】試験片 No.4−2について、XPSにより深さ
方向分析を行った結果のグラフを示す。
【図8】試験片 No.4−4について、XPSにより深さ
方向分析を行った結果のグラフを示す。
【符号の説明】
2 中間層 3 固体潤滑剤被膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10N 30:06 40:02 50:08

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄鋼で形成された摺動面に、ダイヤモン
    ドライクカーボンまたは二硫化タングステンからなる固
    体潤滑剤被膜を有する摺動部材において、 前記摺動面と固体潤滑剤被膜との間に、珪素、珪素化合
    物、またはWとSとOとからなる化合物で構成される中
    間層を設けたことを特徴とする摺動部材。
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