JP2009115255A - 航空機用転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの運転可能時間を十分に確保できる航空機用転がり軸受を提供する。
【解決手段】内輪2と、外輪1と、これら内・外輪間に介在する転動体3と、該転動体3を回転自在に保持する保持器4とを備え、航空機に用いられる航空機用転がり軸受であって、上記保持器4の表面に、合成樹脂にフラーレンと、二硫化モリブデンおよび二硫化タングステンから選ばれた少なくとも1つの二硫化物とが含まれる樹脂組成物からなる被膜6が形成され、上記樹脂組成物全体に対して、上記フラーレンが 0.1〜10 容量%、上記二硫化物が 0.5〜20 容量%含まれる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ドライラン状態で高速回転するように使用される航空機用転がり軸受に関する。
航空機のエンジンや変速機等に組み込まれる転がり軸受は、航空機の飛行状態によっては、潤滑油の供給が遮断され、極少量の初期付着油のみが存在する、いわゆるドライラン状態で高速回転するように使用される場合がある。このようなドライラン状態で使用される転がり軸受は、一定時間焼付きを生じることなく運転可能であることが要求される。この一定時間は数十秒から数十分程度である。
上記ドライラン状態で高速回転するように使用される転がり軸受では、保持器の案内形式が軌道輪案内である場合が多く、転動接触する転動体と軌道輪の軌道面との間よりも、摺動接触する保持器と軌道輪の保持器案内面との間で焼付きを生じやすい。このような保持器と軌道輪の保持器案内面間での焼付きを防止する手段としては、保持器案内面となる外輪の内径面または内輪の外径面と摺接する保持器の外径面または内径面に、さらには転動体と接触する保持器のポケット面に自己潤滑性皮膜である銀めっき皮膜を形成する手段が知られている( 例えば、非特許文献1参照)。最近では、自己潤滑性皮膜として、燐酸塩皮膜を形成する場合もある。また、無潤滑条件で使用する転がり軸受の保持器には四ふっ化エチレン樹脂粉末を含有する無電解ニッケル複合めっき皮膜を形成したものがある(特許文献1参照)。
上述した保持器に形成した銀めっき皮膜は極めて優れたなじみ性や耐焼付き性を有しており、ドライラン状態で運転される転がり軸受の寿命を長くすることができる好ましい表面処理である。一方、これらの軸受を潤滑するための潤滑油には耐焼付き性や酸化劣化防止性を向上させる目的で硫化油脂やジアルキルジチオリン酸亜鉛など硫黄を含む添加剤が配合されている。これらの添加剤は焼付きを防止する過程、ないしは潤滑油の酸化劣化を防止する過程で活性な硫黄化合物を生成する。これらの硫黄化合物が銀めっきと接触すると化学反応を起こし、硫化銀となり、この硫化銀が銀めっき皮膜の表面を被覆する。この硫化銀は銀と比べて脆く、皮膜が剥離したり、耐油性に劣ったりするため、潤滑油により皮膜が溶解する。その結果、銀めっき皮膜が消失した保持器と軌道輪との間の摩擦が増大し、焼付きが生じやすくなるという問題がある。
燐酸塩の自己潤滑性皮膜を形成した転がり軸受は、潤滑油が十分存在する場合は油を表面に保持しやすく摩擦を低減する効果を有するが、ドライランのような厳しい条件では直ちに摩滅し、短時間で効果を失うという問題がある。また、四ふっ化エチレン樹脂粉末を含有する無電解ニッケル複合めっき皮膜は、低速条件では無潤滑でも一定の性能を示すが、航空機軸受のように高速で運転される場合には効果がないという問題がある。
転がり軸受工学編集委員会、「転がり軸受工学」、第3版、養賢堂、1978年1月、P.362 特開2004−332899号公報
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの運転可能時間を十分に確保できる航空機用転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明の航空機用転がり軸受は、転がり軸受の軌道輪である内・外輪の間で軸受荷重を支持する転動体を回転自在に保持する保持器を備え、航空機に用いられる航空機用転がり軸受であって、上記保持器の表面に、合成樹脂にフラーレンと、二硫化モリブデンおよび二硫化タングステンから選ばれた少なくとも1つの二硫化物とが含まれる樹脂組成物からなる被膜が形成され、上記樹脂組成物全体に対して、上記フラーレンが 0.1 容量%〜10 容量%、上記二硫化物が 0.5 容量%〜20 容量%含まれることを特徴とする。
上記合成樹脂がポリイミド系樹脂であることを特徴とする。
また、上記ポリイミド系樹脂が、伸び率が 60%〜120%であるポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする。
また、上記被膜の厚みが 1μm〜50μm であることを特徴とする。
上記保持器の表面は上記被膜を形成する前において表面粗さRaが 0.3μm〜1.0μm であることを特徴とする。
また、上記保持器と接触する軌道輪の表面粗さRaが 0.1μm 以下であることを特徴とする。
また、上記被膜が保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されたことを特徴とする。
また、上記被膜が軌道輪の保持器案内面に形成されたことを特徴とする。
本発明の航空機用転がり軸受は、保持器の表面に所定の被膜を形成しているため潤滑油に対するなじみ性に優れ、微量の付着油でも有効に活用できるため摩擦を低減できる。また、保持器の表面が所定の被膜で被覆されていることで不活性であり潤滑油に添加されている硫黄系添加剤とも反応せず、使用中に被膜が消滅しないため、長期間にわたり優れた潤滑特性を維持できる。また、軌道輪と保持器の地肌との金属接触を防止して、ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの所定の運転可能時間を十分に確保することができる。
本発明において樹脂組成物中に、合成樹脂と、フラーレンと、二硫化物とが所定量配合されるので、この樹脂組成物から得られる被膜には微粒子形状のフラーレンと二硫化物粉末とが均一に配合されている。その結果、これらの相乗効果により被膜の耐摩耗性、耐剥離性が向上すると同時に摩擦係数が低下する。
また、上記被膜は、硫黄系添加剤を含有する潤滑油と接触しても、被膜の剥離や潤滑油への被膜成分の溶出を抑えることができ、従来の金属めっきよりも長期間保持器の潤滑性を維持することができる。
ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの運転可能時間を十分に確保できる航空機用転がり軸受について鋭意検討の結果、合成樹脂に、フラーレンと、二硫化モリブデンおよび二硫化タングステンから選ばれた少なくとも1つの二硫化物とを含む樹脂組成物から得られる被膜は、硫黄成分を含む潤滑油に浸漬しても膨潤や溶解が生じることなく安定であることがわかった。この被膜を表面に有する保持器を作製し、この保持器を航空機に用いられる転がり軸受に取り付けることで、ドライラン状態においても軌道輪と保持器の地肌との金属接触を防止でき、硫黄成分を含む潤滑油と接触しても金属成分の溶出が生じにくい転がり軸受を得ることが可能となった。本発明の航空機用転がり軸受はこのような知見に基づくものである。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1は、第1の実施形態を示す。この転がり軸受は、外輪1と内輪2との軌道輪間に複数のころ3を保持器4で保持した円筒ころ軸受であり、保持器4の外径面に摺接する外輪1の鍔1aの内径面が保持器案内面5とされ、保持器4の全表面に自己潤滑性を有する被膜6が形成されている。外輪1は軸受用鋼で形成されている。
上記被膜は、合成樹脂に、フラーレンと、二硫化モリブデンおよび二硫化タングステンから選ばれた少なくとも1つの二硫化物とが所定量含まれる樹脂組成物から得られる被膜である。
図2は、第2の実施形態を示す。この転がり軸受は、外輪11と内輪12との軌道輪間に複数のボール13を保持器14で保持した玉軸受であり、保持器14の外径面に摺接する外輪11の内径面が保持器案内面15とされ、保持器14の全表面に自己潤滑性を有する被膜16が形成されている。この外輪11も軸受用鋼で形成されている。この被膜も第1の実施形態と同様の被膜である。
図3は、第3の実施形態を示す。この転がり軸受は、外輪21と内輪22との軌道輪間に複数のボール23を保持器24で保持したアンギュラ玉軸受であり、ボール23と内輪22および外輪21との接触点を結ぶ直線がラジアル方向に対して角度(接触角)αをもっており、ラジアル荷重のほかに一方向からのアキシャル荷重を負荷することができるものである。保持器24の外径面に摺接する外輪21の内径面が保持器案内面25とされ、保持器24の全表面に自己潤滑性を有する被膜26が形成されている。この外輪21および内輪22も軸受用鋼で形成されている。この被膜も第1の実施形態と同様の被膜である。
なお、図1〜図3において被膜6、16、26は、保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されていればよい。また、該被膜は、軌道輪の保持器案内面5、15、25にそれぞれ形成することも可能である。
本発明に使用できる合成樹脂としては、耐油性を有し、被膜としたときに被膜強度が強く、耐摩耗性に優れた材料であれは、特に限定されない。そのような例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フッ素樹脂、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらの中でも好ましいものとして、芳香族ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂、エポキン樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。これらの合成樹脂は、必要に応じて、繊維状や粒子状の各種充填材を配合することができる。
本発明において、特に好ましい合成樹脂は被膜形成能に優れるポリイミド系樹脂である。ポリイミド系樹脂は分子内にイミド結合を有するポリイミド樹脂、分子内にイミド結合とアミド結合とを有するポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。ポリイミド系樹脂を用いることで、被膜の保持器表面との密着性および耐熱性に優れる。
ポリイミド樹脂の中でも、芳香族ポリイミド樹脂が好ましく、芳香族ポリイミド樹脂は、化1で示す繰返し単位を有する樹脂であり、化1で示す繰返し単位を有する樹脂の前駆体であるポリアミック酸も使用できる。R1 は芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体の残基であり、R2 は芳香族ジアミンまたはその誘導体の残基である。そのようなR1 またはR2 としては、フェニル基、ナフチル基、ジフェニル基、およびこれらがメチレン基、エーテル基、カルボニル基、スルホン基等の連結基で連結されている芳香族基が挙げられる。
Figure 2009115255
芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体の例としては、ピロメリット酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して用いられる。
芳香族ジアミンまたはその誘導体の例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエ-テル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニルエーテルなどのジアミン類またはジイソシアネート類が挙げられる。
上記芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体と、芳香族ジアミンまたはその誘導体との組み合わせで得られる芳香族ポリイミド樹脂の例としては、表1に示す繰返し単位を有するものが挙げられる。これらはR1 およびR2 にヘテロ原子を有しない樹脂である。
表1中の芳香族ポリイミド樹脂において、分子中に占める芳香環の比率が高いポリイミドCおよびポリイミドDが好ましく、特にポリイミドDが本発明に好適である。芳香族ポリイミド樹脂ワニスの市販品としては、例えば宇部興産社製:Uワニスが挙げられる。
Figure 2009115255
本発明に使用できるポリアミドイミド樹脂は高分子主鎖内にアミド結合とイミド結合とを有する樹脂であり、ポリカルボン酸またはその誘導体とジアミンまたはその誘導体との反応により得ることができる。
ポリカルボン酸としてはジカルボン酸、トリカルボン酸、およびテトラカルボン酸が挙げられ、ポリアミドイミド樹脂は、(1)ジカルボン酸およびトリカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(2)ジカルボン酸およびテトラカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(3)トリカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(4)トリカルボン酸およびテトラカルボン酸とジアミンとの組み合わせにより得られる。ポリカルボン酸とジアミンとはそれぞれ誘導体であってもよい。ポリカルボン酸の誘導体としては酸無水物、酸塩化物が挙げられ、ジアミンの誘導体としてはジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートはイソシアネート基の経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等が挙げられる。
また、ポリカルボン酸とジアミンとはそれぞれ芳香族および脂肪族化合物を用いることができる。本発明に使用できるポリアミドイミド樹脂は伸び率に優れたものが好ましく、芳香族化合物に脂肪族化合物を併用することが好ましい。
また、エポキシ化合物で変性することができる。
トリカルボン酸またはその誘導体の例としては、トリメリット酸無水物、2,2’,3-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,3’,4-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,3’,4-ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、1,2,5-ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3-ジカルボキシフェニルメチル安息香酸無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して用いられる。
量産化されており、工業的利用のしやすさからトリメリット酸無水物が好ましい。
テトラカルボン酸またはその誘導体の例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-スルホニルジフタル酸二無水物、m-タ−フェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(2,3-または3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス[4-(2,3-または3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
ジカルボンまたはその誘導体の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸、ポリブタジエン系オリゴマーの両末端をカルボキシル基とした脂肪族ジカルボン酸(日本曹達社製:Nisso−PB、Cシリーズ、宇部興産社製:Hycar−RLP,CTシリーズ、Thiokol社製:HC−polymerシリーズ、General Tire社製:Telagenシリーズ、Phillips Petroleum社製:Butaretzシリーズ等)、カーボネートジオール類(ダイセル化学社製:PLACCEL、CD-205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HL)の水酸基当量以上のカルボキシル当量となるジカルボン酸を反応させて得られるエステルジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジアミンまたはその誘導体の例として、ジイソシアネートとしては、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4'-[2,2-ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネート、ビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、ビフェニル-3,3'-ジイソシアネート、ビフェニル-3,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジメチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジエチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジエチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水添m-キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、カーボネートジオール類(ダイセル化学社製:PLACCEL、CD-205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HL)の水酸基当量以上のイソシアネート当量となるジイソシアネートを反応させて得られるウレタンジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。
ジアミン類としては、ジメチルシロキサンの両末端にアミノ基が結合したシロキサンジアミン(シリコーンオイルX-22-161AS(アミン当量450)、X-22-161A(アミン当量840)、X-22-161B(アミン当量1500)、X-22-9409(アミン当量700)、X-22-1660B-3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業社製)、BY16-853(アミン当量650)、BY16-853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン社製))、両末端アミノ化ポリエチレン、両末端アミノ化ポリプロピレン等の両末端アミノ化オリゴマーや両末端アミノ化ポリマー、オキシアルキレン基を有するジアミン(ジェファーミンDシリーズ、ジェファーミンEDシリーズ、ジェファーミンXTJ-511、ジェファーミンXTJ-512、いずれもサンテクノケミカル社製)等が挙げられる。
芳香族ポリイミド樹脂と異なり、前駆体を経ることなく樹脂溶液の状態でアミド結合とイミド結合との繰返し単位を有するポリアミドイミド樹脂が本発明において特に好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂のジイソシアネート変性、BPDA変性、スルホン変性、ゴム変性樹脂を使用できる。ポリアミドイミド樹脂ワニスの市販品としては、例えば日立化成社製:HPC5020、HPC7200等が挙げられる。
本発明においてポリアミドイミド樹脂は、樹脂被膜の伸び率が 60〜120%のポリアミドイミド樹脂が好ましい。伸び率が 60%未満であると基材となる保持器等との密着性に劣り剥離しやすくなり、硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境下において被膜剥離または金属成分の溶出が生じやすくなる。伸び率が 120%をこえると耐熱性が低下したり潤滑油に膨潤しやすくなったりする。樹脂被膜の伸び率が 60〜120%のポリアミドイミド樹脂の市販品としては、例えば日立化成社製:HPC5020、HPC7200-30が挙げられる。
本発明においてポリアミドイミド樹脂被膜の伸び率は以下の方法で測定される。
ポリアミドイミド樹脂溶液を、アセトン脱脂後窒素ガスブローにより表面清浄化されたガラス基板上に塗布し、80℃で 30分、その後 150℃で 10分予備乾燥を行ない、最後にポリアミドイミド樹脂の分子構造に適した硬化温度で 30分乾燥する。硬化塗膜をガラス基板より剥離して 80 ± 8μm 厚さの樹脂フィルムを得て、このフィルムを 10 mm×60 mm の短冊状の試験片とし、チャック間距離 20 mm 、引張速度 5 mm/分で室温にて引張試験機により伸び率(%)を測定する。
ポリイミド系樹脂に配合されるフラーレンは、炭素5員環と6員環から構成され、球状に閉じた多様な多面体構造を有する炭素分子である。グラファイト、ダイヤモンドに続く第3の炭素同素体として1985年にH.W.KrotoとR.E.Smalley等によって発見された新規な炭素材料である。代表的な分子構造としては、60個の炭素原子が12個の五員環と20個の六員環からなる球状の切頭正二十面体を構成する、いわゆるサッカーボール状の構造のC60 が挙げられ、同様に70個の炭素原子からなるC70、さらに炭素数の多い高次フラーレン、例えばC76、C78、C82、C84、C90、C94、C96 などが存在する。これらのうちのC60 およびC70 が代表的なフラーレンである。また、これらを反応させて多量体が得られる。本発明においては、フラーレンであれば球状、あるいは多量体のいずれも使用できる。
フラーレンの製造法には、レーザ蒸発法、抵抗加熱法、アーク放電法、熱分解法などがあり、具体的には、例えば特許第2802324号に開示されており、これらは、減圧下あるいは不活性ガス存在下、炭素蒸気を生成し、冷却、クラスター成長させることによりフラーレン類を得ている。
一方、近年、経済的で効率のよい大量製造法として燃焼法が実用化されている。燃焼法の例としては、減圧チャンバー内にバーナーを設置した装置を使用し、系内を真空ポンプにて換気しつつ炭化水素原料と酸素とを混合してバーナーに供給し、火炎を生成する。その後、上記火炎により生成した煤状物質を下流に設けた回収装置により回収する。この製造法において、フラーレンは煤中の溶媒可溶分として得られ、溶媒抽出、昇華等により単離される。得られたフラーレンは通常C60、C70 および高次フラーレンの混含物であり、さらに精製してC60、C70 等を単離することもできる。
本発明で用いるフラーレンとしては、構造や製造法を特に限定するものではないが、特にC60、C70 の炭素数のもの、あるいはこれらの混合物が好ましい。
フラーレンは固体状の配合剤として、あるいはフラーレンを有機溶剤に溶解、分散させて得られる配合剤として用いることができる。いずれの場合においても、フラーレンはC60、C70 および高次フラーレン単独でも、混含状態でも用いることが可能であるが、樹脂への分散性等の観点から、これらを混合状態で用いることが好ましい。
さらにより分散性を良好にするため、混合時の平均粒子径は 100μm 以下、好ましくは 50μm 以下、より好ましくは 10μm 以下である。
本発明においてフラーレンの配合割合は、樹脂組成物全体に対して、固体状のフラーレンを 0.1〜10 容量%、好ましくは 0.1〜5 容量%配合する。0.1 容量%未満では十分な耐摩耗性を得ることができず、10 容量%をこえると分散不良となり耐摩耗性が悪化する。
二硫化モリブデン、二硫化タングステンは粉末状のものを用いることができる。分散性や被膜の表面平滑性から、粒子径は 10μm 以下、好ましくは 5μm 以下である。二硫化モリブデン、二硫化タングステンの配合割合は、樹脂組成物全体に対して、0.5〜20 容量%、好ましくは 0.5 〜 15 容量%配合する。0.5 容量%未満では十分な摩擦摩耗特性を得ることができず、20 容量%をこえると耐摩耗性が悪化する。
本発明において被膜の耐摩耗性を低下させずに、摩擦係数の安定化や初期馴染み性を向上させることを目的に、該被膜を構成する樹脂組成物に、ポリテトラフルオロエチレン、黒鉛等の固体潤滑剤をフラーレンおよび二硫化モリブデンないしは二硫化タングステンと併用して配合することができる。
本発明において被膜の好ましい態様としては、ポリイミド系樹脂に、フラーレンと、二硫化モリブデンおよび二硫化タングステンから選ばれた少なくとも1つの二硫化物とが分散配合された樹脂組成物からなる被膜である。
転がり軸受に用いる保持器の材料としては、特に限定されるものでなく、鉄系金属材料、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、樹脂材料を使用することができる。
鉄系金属材料としては、肌焼き鋼(SNCM、SCM)、冷間圧延鋼(SPCC)、熱間圧延鋼(SPHC)、炭素鋼(S25C〜S55C)、ステンレス鋼(SUS304〜SUS316)、軟鋼(SS400)、耐熱鋼(M50、M50Nilなど)等を使用できる。
保持器本体としては、軸受鋼、浸炭鋼、または機械構造用炭素鋼、を用いることができ、これらの中で耐熱性が高く高荷重に耐える剛性を有する浸炭鋼を調質して用いることが好ましい。浸炭鋼としては例えばSNCM等を挙げることができる。
また、銅系金属材料としては、銅−亜鉛合金(CAC301、鉄−シリコン−ブロンズ、HBsC1、HBsBE1、BSP1〜3)、銅−アルミニウム−鉄合金(AlBC1)等、アルミニウム系金属としてはアルミ−シリコン合金(ADC12)等を使用できる。
また、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂材料を使用することができる。樹脂材料に補強材としてガラス繊維や炭素繊維等を含有したものも使用できる。
本発明において軸受保持器等に被膜を形成する方法としては、任意の被膜形成方法を採用でき、例えば下記の方法を例示できる。
まず、鉄系金属材料で形成された基材となる保持器等を十分に洗浄し、表面の汚染を除去する。この洗浄方法としては、有機溶剤による浸漬洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄、酸・アルカリ洗浄等による方法が挙げられる。
被膜の密着性を向上させる目的で、前処理としてショットブラスト(ショットピーニング、WPC等を含む)、化学的エッチング、リン酸塩被膜処理を保持器に施すことも可能である。基材の表面粗さはRa=0.3μm 以上の範囲で設定することが可能であり、好ましくはRa=0.3〜1.0μm である。Ra=0.3μm 未満であると、十分なアンカー効果を得ることができず、密着性を向上することができない。一方、基材の表面粗さが大きい場合は仕上がり表面が粗くなるが、研磨などの機械加工により表面粗さを小さく調整すれば保持器として使用可能となる。また、Ra=0.3〜1.0μm であれば機械加工を施すことなく小さな表面粗さを得ることができ、十分な密着性を得ることが可能である。
次いで、スプレーコーティング法、ディップ(浸漬)コーティング法、静電塗装法、タンブラーコーティング法、電着塗装法等によって、被膜を保持器表面や軌道輪の保持器案内面に形成させる。好ましい被膜の厚さは、1〜50μm、より好ましくは 5〜35μm である。1μm 未満であると運転中に摩滅したり、剥離し十分な耐久性が得られなくなり、50μm をこえると保持器の回転精度に影響を及ぼす寸法精度、例えば真円度が悪化し、さらにコストも高くなり好ましくない。
また、被膜形成の過程で、余分に付着したワニスはふき取り、遠心分離、エアーブロー等の物理的、化学的方法により除去し、所望の厚さに調整することもできる。
被膜形成後は、加熱処理によって溶媒除去、乾燥、融解、架橋等を行ない、表面に被膜が形成された保持器を完成させる。膜厚を増す場合には、重ね塗りをしてもよい。また、被膜完成後に機械加工やタンブラー処理等を行なうことも可能である。
さらに、これら保持器や軌道輪の保持器案内面に形成された被膜と接触する表面の粗さは小さいほうが好ましい。好ましい範囲はRa 0.1μm 以下であり、この範囲とすることにより被膜の耐久性を向上させることが可能となる。表面粗さを小さくする方法としてはラッピング、タンブラ、エアロラッピングなどを挙げることができる。
本発明の実施例と比較例に用いた材料を一括して示すと次のとおりである。[ ]内は表2に示す略称である。
(1)ポリアミドイミド樹脂ワニス[PAI]
日立化成工業社製:HPC-5020、伸び率:70 %
(2)芳香族ポリイミド樹脂ワニス[PI]
宇部興産社製:Uワニス-A
(3)混合フラーレン[ミックスフラーレン]
フロンティアカーボン社製:混合フラーレン、C60(直径:0.71 nm )が約 60 質量%、C70(長軸径:0.796 nm、短軸径:0.712 nm )が約 25 質量%で残部が高次フラーレンの混合物である。
(4)炭化ケイ素[SiC]
添川理化学社製:試薬、平均粒子径 1μm
(5)二硫化モリブデン粉末[MoS2
日本モリブデン社製:M5、平均粒子径 0.5μm
(6)二硫化タングステン粉末[WS2
日本潤滑剤社製:WS2A、平均粒子径 1μm
(7)ポリテトラフルオロエチレン粉末[PTFE]
喜多村社製:KD-1000ASディスパージョン(溶媒:N-メチル-2-ピロリドン)、平均粒子径 0.3μm
(8)黒鉛粉末[黒鉛]
ロンザ社製:KS-6、平均粒子径 6μm
実施例1〜実施例6および比較例4〜比較例12
ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)の固形分に対し各種充填材を表2に記載の割合でボールミルで十分に均一分散するまで混合して、混合液を摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm ×内径 20 mm ×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )、ショットブラストにより表面粗さRa 0.7μm:図3の17〕の外径面にスプレー法にてコーティングした。また、潤滑油浸漬試験用としてSPCC角棒( 3 mm ×3 mm × 20 mm )の表面にディッピング法によりコーティングした。コーティング後 100℃で 1 時間、さらに 150℃で 1 時間乾燥し、250℃で 1 時間焼成した。スプレー回数を変化させ、被膜厚みを調整した。なお、フラーレンを配合したコーティング液は、トルエンとN-メチル-2-ピロリドンとの混合溶媒(混合重量比率 50:50 )にフラーレンを 5 重量%濃度で溶解させた濃縮液をあらかじめ用意し、これをポリアミドイミド樹脂ワニスに所定濃度となるよう添加し調製した。なお、表2に記載の各成分の配合割合は固形分での割合であり、すべて容量%である。
上記処理によりリング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片を用いて以下に示す摩擦試験に供し、ドライラン状態での耐久性および試験後の被膜の状態を評価した。また得られた角棒状試験片を用いて以下に示す潤滑油浸漬試験に供し、潤滑油中に溶出した被膜成分の濃度を測定した。結果を表2に併記する。
実施例7
芳香族ポリイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)を用いて、表2に示す割合でフラーレンと二硫化モリブデンを配合し、コーティング後の焼成温度を 350℃とする以外は実施例1と同様の方法で試験片を作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例1
実施例1と同様の試験片に、電気めっきにより下地として銅めっき(めっき厚:5μm)を施し、さらに表層に銀めっき(めっき厚:20μm )を施した。得られた試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例2
実施例1と同様の試験片に、電気めっきにより銅めっき(めっき厚:25μm )を施した。得られた試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例3
実施例1と同様の試験片に、無電解めっきにより四ふっ化エチレン樹脂粉末含有(20 質量%)ニッケルめっき(めっき厚:20μm ):日本カニゼン−カニフロンを施した。得られた試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例13
実施例1と同様の試験片にリン酸マンガン被膜処理を施した。得られた試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例14
摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm ×内径 20 mm ×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )〕の表面粗さをRa 0.08μm に調整し、実施例1と同様の被膜を形成し、摩擦試験のみを行なった。結果を表2に併記する。
比較例15
実施例1と同じリングに対し、鋼鈑20〔SCM415浸炭焼入れ焼戻し処理品(Hv 700)〕の表面粗さをRa 0.4μm とし、摩擦試験のみを行なった。結果を表2に併記する。
<摩擦試験>
得られたリング状試験片を用いて摩擦試験を行なった。図4は摩擦試験機を示す図である。図4(a)は正面図を、図4(b)は側面図をそれぞれ表す。
回転軸28にリング状試験片27を取り付け、アーム部29のエアスライダー31に鋼鈑30を固定する。リング状試験片27は所定の荷重32を図面上方から印加されながら鋼鈑30〔SCM415浸炭焼入れ焼戻し処理品(Hv 700 、表面粗さRa 0.01μm )〕に回転接触する。リング状試験片27を回転させたときに発生する摩擦力はロードセル33により検出される。
潤滑油モービルベロシティオイルNo.3(エクソンモービル社製:VG2)をマイクロシリンジで1μl計量し、リング状試験片27に塗布した。この状態で、荷重 50 N 、滑り速度 1.0 m /秒の条件で摩擦試験を実施した。摩擦係数が 0.4 に達するまでの運転時間をドライラン状態での耐久性として評価した。また、所定時間経過後、リング状試験片27の外径面に形成された樹脂被膜の状態を目視により観察し、顕著な摩耗および剥離が認められなかったものをドライラン状態での耐久性に優れると評価して「○」を、顕著な摩耗はないが剥離が認められたものはドライラン状態での耐久性が不十分であると評価して「△」を、摩耗大のものはドライラン状態での耐久性に劣ると評価して「×」を記録する。なお、試験時間は 60 分を上限とした。
<潤滑油浸漬試験>
得られた角棒状試験片を用いて潤滑油浸漬試験を行なった。被膜処理を施した角棒 3 本を 150℃の潤滑油〔ポリ-α-オレフィン(三井化学社製:ルーカントHL-10)に代表的な酸化防止剤であるZnDTP(LUBRIZOL社製:LUBRIZOL677A)を 1 質量%添加したもの〕 2.2 g に 200 時間浸漬した後、潤滑油中に溶出した被膜成分の濃度を測定した。濃度測定は、蛍光X線測定〔蛍光X線測定装置:Rigaku ZSX100e(リガク社製)〕により定量した。
Figure 2009115255
摩擦係数の経時変化の例として、実施例1、比較例1および比較例13については上記摩擦試験にて得られた摩擦係数の経時変化のデータを図5、図6および図7に、それぞれ示す。
表2からも明らかなように、実施例1〜実施例7は、フラーレンと、二硫化モリブデンまたは二硫化タングステンを所定量配合したポリイミド系樹脂被膜であるので、摩擦係数が低く、摩擦試験中の剥離や顕著な摩耗は見られなかった。また、潤滑油浸漬試験においても被膜成分の潤滑油への溶出は見られなかった。
一方、従来から用いられているAgめっきを施した比較例1はドライラン状態でも比較的長寿命であるが、潤滑油浸漬試験において潤滑油に溶出する。Cuめっきを施した比較例2は寿命、溶出性ともに劣る。四ふっ化エチレン樹脂粉末含有無電解ニッケルめっきを施した比較例3は潤滑油への溶出はないが、摩擦試験での寿命が短い。合成樹脂を母材とする被膜を形成した比較例4〜比較例11では、被膜に所定量のフラーレンおよび、所定の二硫化物が所定量配合されていないため、被膜が剥離、または摩耗するなどして短寿命となった。比較例12においては、被膜にフラーレンと、二硫化モリブデンとをそれぞれ所定量配合したにもかかわらず被膜が薄いため、長寿命を得ることができなかった。また、燐酸塩被膜を形成した比較例13でも耐久性は十分でない。さらに、実施例1と同じ組成の樹脂被膜を形成した比較例14および比較例15でも、基材の表面粗さが小さかったり、相手鋼鈑の粗さが粗い場合には剥離や摩耗により短寿命となった。
本発明の航空機用転がり軸受は、保持器表面にフラーレンと、所定の二硫化物とを配合した被膜を形成する。この被膜は保持器との密着性に優れ、かつ、保持器と軌道輪の接触による摩擦が小さく摩耗や剥離もないため、焼付きが発生しがたく、長寿命、高信頼性が得られる。そのため、本発明の航空機用転がり軸受は潤滑油が希薄にしか存在しない過酷な条件下において使用される転がり軸受として好適に利用できる。
第1の実施形態の転がり軸受を示す一部省略縦断面図である。 第2の実施形態の転がり軸受を示す一部省略縦断面図である。 第3の実施形態の転がり軸受を示す一部省略縦断面図である。 摺動試験機を示す図である。 摩擦試験における実施例1の摩擦係数の経時変化を示す図である。 摩擦試験における比較例1の摩擦係数の経時変化を示す図である。 摩擦試験における比較例13の摩擦係数の経時変化を示す図である。
符号の説明
1、11、21 外輪
1a 鍔
2、12、22 内輪
3 ころ(転動体)
4、14、24 保持器
5、15、25 保持器案内面
6、16、26 被膜
13、23 ボール
27 リング状試験片
28 回転軸
29 アーム部
30 鋼鈑
31 エアスライダー
32 荷重
33 ロードセル

Claims (8)

  1. 転がり軸受の軌道輪である内・外輪の間で軸受荷重を支持する転動体を回転自在に保持する保持器を備え、航空機に用いられる航空機用転がり軸受であって、
    前記保持器の表面に、合成樹脂にフラーレンと、二硫化モリブデンおよび二硫化タングステンから選ばれた少なくとも1つの二硫化物とが含まれる樹脂組成物からなる被膜が形成され、
    前記樹脂組成物全体に対して、前記フラーレンが 0.1〜10 容量%、前記二硫化物が 0.5〜20 容量%含まれることを特徴とする航空機用転がり軸受。
  2. 前記合成樹脂がポリイミド系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の航空機用転がり軸受。
  3. 前記ポリイミド系樹脂が、伸び率が 60〜120%であるポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項2記載の航空機用転がり軸受。
  4. 前記被膜の厚みが 1〜50μm であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の航空機用転がり軸受。
  5. 前記保持器の表面は前記被膜を形成する前において表面粗さRaが 0.3〜1.0μm であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
  6. 前記保持器と接触する軌道輪の表面粗さRaが 0.1μm 以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
  7. 前記被膜が保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
  8. 前記被膜が軌道輪の保持器案内面に形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
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