JP2007002912A - 転がり軸受 - Google Patents

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啓之 内田
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Abstract

【課題】 外輪がハウジングに嵌合され、内輪が軸部材に嵌合された状態で使用される転がり軸受において、外輪のハウジングとの嵌合面や内輪の軸部材との嵌合面にクリープが発生した場合であっても、それらの嵌合面に摩耗を生じ難くする。
【解決手段】 外輪(固定輪)1の外周面 (嵌合面)1bを含む表面に、面積率75%以上の固体潤滑被膜1Aを形成する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、転がり軸受に関する。
図4は、自動車用トランスミッション等の回転機械装置の一構成を示す図である。
この回転機械装置は、図4に示すように、ハウジング40の内側に軸部材50を配置し、この軸部材50を複数の転がり軸受により回転自在に支持している。この転がり軸受は、外輪10と、内輪20と、各軌道面10a,20a間に転動自在に配設された複数の玉30と、から構成されている。また、外輪10の外周面10bはハウジング40の内周面40bに締り嵌め等により嵌合され、内輪20の内周面20bは軸部材50の外周面50bに締り嵌め等により嵌合されている。そして、この転がり軸受は、外輪10を固定輪として、内輪20を回転輪として使用されるようになっている。
このような回転機械装置では、装置全体の軽量化を図るために、アルミニウム合金製のハウジング40を用いることが多い。この場合、ハウジング40を構成するアルミニウム合金の熱膨張係数が、外輪10を構成する軸受鋼の熱膨張係数よりも大きくなるため、装置の使用に伴って軸受温度が上昇すると、ハウジング40に対する外輪10の締め代が低下して、ハウジング40の内周面40bで外輪10が回転することにより、クリープが発生する可能性がある。
このようなクリープは、ハウジング40と外輪10との嵌合面に適切な締め代を持たせないと、常温でも発生する可能性がある。このため、軸受温度が想定した所定温度(例えば、60℃)まで上昇してもクリープの発生を防止できるように、ハウジング40と外輪10との締め代を決定する手段が用いられている。しかし、上述した装置では想定した所定温度を超えることが多いため、クリープの発生を完全に防止することは難しい。
また、図4に示す回転機械装置では、軸部材50が、別体の複数の部材50A,50Bを組み合わせて構成されているため、製造上避けられない組み付け誤差や加工上の誤差等に基づいて、複数の部材50A,50Bの中心軸が互いに偏心した状態になり易い。その結果、ハウジング40と外輪10との間に加わるラジアル荷重が円周方向の一部で大きくなり、外輪10がハウジング40に対して、転がり接触に近い状態となるため、クリープが発生し易くなる。
なお、図4に示す転がり軸受において、外輪10を固定輪として、内輪20を回転輪として使用する場合には、上述したクリープが内輪20と軸部材50との間に発生し易くなる。
図5は、自動車用トランスミッション等の回転機械装置の他の例を示す図である。
この回転機械装置は、図5に示すように、図4に示した回転機械装置のハウジング40が、別体の複数の部材40A、40Bを組み合わせた構成となっている。
この回転機械装置は、回転機械装置の軸部材50及びハウジング40の両方が、別体の複数の部材を組み合わせて構成されているため、上述した図4に示す回転機械装置よりも、クリープが発生し易くなっている。
このようなクリープが発生すると、ハウジング40と外輪10との嵌合面(クリープの発生時に互いに摺接する面)や、軸部材50と内輪20との嵌合面に摩耗が生じる。この結果、回転機械装置の回転支持部にがたつきが生じて、回転機械装置の性能が劣化する。
そこで、クリープの発生を防止するための技術として、特許文献1〜特許文献4に記載の技術が提案されている。
特許文献1では、ハウジングの一部に植設したピンを、外輪の軸方向端面に形成した受孔内に係合させることが提案されている。
特許文献2では、外輪の外周面の全周にわたって形成した偏心溝内に、合成樹脂製の偏心リングを嵌装し、ハウジングの内周面で外輪が回転する傾向になった場合に、偏心リングを偏心溝底面とハウジングの内周面との間で突っ張らせることが提案されている。
特許文献3では、外輪の外周面の全周にわたって形成した凹溝内に弾性材料からなるOリングを装着し、このOリングを、凹溝の底面とハウジングの内周面との間で径方向に圧縮するとともに、このOリングの一部をハウジングの内周面の円周方向一部に形成した凹溝内に嵌合させることが提案されている。
特許文献4では、外輪の外周面の全周にわたって形成した凹溝内に、外輪を構成する軸受鋼よりも熱膨張係数の大きい合成樹脂製の樹脂リングを嵌挿し、軸受温度が上昇した時に、膨張した樹脂リングを、凹溝の底面とハウジングの内周面との間で突っ張らせることが提案されている。
ところが、これらの特許文献1〜特許文献4に記載の技術では、外輪やハウジングに溝等を形成するための加工コストや、装着するリング等の部品コストがかかり、軸受全体の製造コストが上昇するという問題や、ハウジングに対する外輪の組み立て作業性が良好ではないという問題があった。
また、これらの特許文献1〜特許文献4に記載の技術では、溝等を形成することで部材強度が低下したり、リング等が破損したりする可能性があるため、採用可能な装置が限定されるという問題があった。
そこで、上述した特許文献1〜特許文献4に記載の諸問題を解決し、ハウジングと外輪との嵌合面や、軸部材と内輪との嵌合面にクリープが発生した場合であっても、これらの嵌合面に摩耗を生じ難くするための技術として、特許文献5に記載の技術が提案されている。
特許文献5では、内輪軌道面、外輪軌道面、転動体の転走面及び保持器案内面のうち少なくとも一つに、少なくとも二硫化モリブデン、四フッ化エチレンを含む固体潤滑被膜を結合剤を介して形成することが提案されている。
実開昭51−148544号公報 特開平10−82428号公報 特開平10−299785号公報 特開平9−269009号公報 特許第3567942号公報
しかしながら、上述した特許文献5に記載の技術では、固体潤滑被膜を結合剤を介して形成しているため、固体潤滑被膜を構成する固体潤滑剤自体の性能が効果的に得られず、且つ、固体潤滑被膜が剥離し易いという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、外輪がハウジングに嵌合され、内輪が軸部材に嵌合された状態で使用される転がり軸受において、それらの嵌合面にクリープが発生した場合であっても、それらの嵌合面に摩耗を生じ難くすることを課題としている。
このような課題を解決するために、本発明は、外輪と、内輪と、前記外輪及び前記内輪の間に転動自在に配設される転動体と、を備え、前記外輪の外周面をハウジングに嵌合させ、前記内輪の内周面を軸部材に嵌合させるとともに、前記外輪及び前記内輪のうち少なくとも一方を固定輪として、他方を回転輪として使用する転がり軸受において、少なくとも前記回転輪又は前記固定輪は、金属素材からなり、その嵌合面の少なくとも一部の表面に、面積率75%以上の固体潤滑被膜が形成されていることを特徴とする転がり軸受を提供する。
これによれば、外輪及び内輪のうち、少なくともクリープが発生し易い構成部材において、ハウジングや軸部材との嵌合面(外輪の外周面や内輪の内周面)の少なくとも一部の表面に特定面積率の固体潤滑被膜を形成したことにより、構成部材の表面に固体潤滑被膜を密着して形成できるため、この固定潤滑被膜が形成された構成部材に摩耗が生じ難くなる。
本発明の転がり軸受において、前記固体潤滑被膜の面積率は、95%以下であることが好ましい。
これによれば、構成部材の表面に固体潤滑被膜がさらに密着して形成されるため、この固体潤滑被膜が形成された構成部材に摩耗がさらに生じ難くなるとともに、固体潤滑被膜が剥離することによる異音発生や振動上昇を防止できる。
また、本発明の転がり軸受において、前記固体潤滑被膜は、0.10μm以上8.0μm以下の厚さで形成されていることが好ましい。
これによれば、この固体潤滑被膜が形成された構成部材において、摩耗の発生を効果的に抑制しつつ、転がり軸受の構成部材として必要な強度を確保できる。
ここで、固体潤滑被膜の厚さが0.10μm未満であると、構成部材において摩耗の発生を効果的に抑制出来なくなり、一方、8.0μm超過であると、構成部材に対して被膜の付着強度が得られなくなるとともに、固体潤滑被膜が剥離することによる音響不良や振動上昇が生じ易くなる。
さらに、本発明の転がり軸受において、前記固体潤滑被膜は、中心線平均粗さ(Ra)が0.10μm以上1.00μm以下の表面に形成されていることが好ましく、0.10μm以上0.50μm以下の表面に形成されていることがより好ましい。
これによれば、構成部材の表面に固体潤滑被膜をさらに密着して形成できるため、この固体潤滑被膜が形成された構成部材に摩耗がさらに生じ難くなる。
ここで、表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.10μm未満であると、構成部材の表面と固体潤滑被膜との密着性が不十分になり、一方、1.00μmを超えると、構成部材において摩耗の発生を効果的に抑制出来なくなる。
さらに、本発明の転がり軸受において、前記固体潤滑被膜は、0.10μm以上5.0μm以下の深さの微小くぼみを有する表面に形成されていることが好ましい。
これによれば、表面に形成された微小くぼみに固体潤滑被膜が充填されて、構成部材の表面に固体潤滑被膜をさらに密着して形成できる。
ここで、表面の微小くぼみが0.10μm未満であると、構成部材の表面と固体潤滑被膜との密着性が不十分になり、一方、5.0μmを超えると、微小くぼみにより得られる効果が飽和する。
なお、本発明において固体潤滑被膜を形成する表面とは、ハウジングとの嵌合面となる外輪の外周面や、軸部材との嵌合面となる内輪の内周面を含むのであれば特に限定されないが、例えば、外輪の内周面及び軸方向端面や、内輪の外周面及び軸方向端面が挙げられる。
また、本発明で用いられる固体潤滑被膜の素材としては、転がり軸受の構成部材として必要な強度が得られ、且つ、固体潤滑被膜が形成される構成部材と密着性がよいものであれば特に限定されない。例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、金属石けん、フッ素樹脂、ナイロン、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、黒鉛、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、スズ、スズ合金、銅合金等が挙げられる。
さらに、本発明において固体潤滑被膜を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、焼成法、スプレー噴霧法、浸漬法、ショットピーニング法が挙げられる。
特に、優れた潤滑特性を有する固体潤滑被膜を構成部材の表面に密着して形成するとともに、固体潤滑被膜を形成した後の構成部材の表面硬さを向上させるという観点から、固体潤滑被膜をショットピーニング法により形成することが好ましい。
さらに、本発明において構成部材の表面に微小くぼみを形成する方法としては、例えば、ショットピーニング法やバレル法を単独又は組み合わせて行う方法が挙げられる。具体的に、ショットピーニング法では、JIS R 6001に規定された平均粒径45μmの鋼球や、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、アルミナ、ガラスビーズ等のショット材を用いることで、表面に微小くぼみを形成することができる。また、バレル法では、種々のメディアや添加剤を配合して表面に大きな凹凸をつける粗加工と、プラトー部(平坦部)の粗さを整える仕上げ加工とを行うことで、表面に微小くぼみを形成することができる。
さらに、本発明で構成部材に用いられる金属素材としては、特に限定されず、例えば、SUJ2等の軸受鋼や、SCR420等の肌焼鋼や、SUS440等のステンレス鋼に、焼入れ及び焼戻し処理を施したり、浸炭又は浸炭窒化処理と焼入れ及び焼戻し処理とを施したりしたものが挙げられる。
本発明の転がり軸受によれば、少なくとも固定輪又は回転輪として使用される構成部材において、ハウジングや軸部材との嵌合面の少なくとも一部の表面に特定面積率の固体潤滑被膜を形成したことにより、それらの嵌合面に摩耗を生じ難くできる。よって、外輪がハウジングに嵌合され、内輪が軸部材に嵌合された状態で使用される転がり軸受において、外輪とハウジングとの嵌合面や、内輪と軸部材との嵌合面にクリープが発生した場合であっても、それらの嵌合面に摩耗を生じ難くできる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の転がり軸受の一例として玉軸受を示す断面図である。
この玉軸受は、軌道面1aを有する外輪1と、軌道面2aを有する内輪2と、両軌道面1a,2a間に転動自在に配設された複数の玉3と、からなる。また、この玉軸受は、外輪1が固定輪として、内輪2が回転輪として使用されるように構成されている。
そして、この玉軸受は、外輪1の外周面(嵌合面)1bがハウジング4の内周面4bに締め嵌めにより嵌合され、内輪2の外周面(嵌合面)2bが軸部材5の外周面5bに締め嵌めにより嵌合されている。また、外輪1は、ハウジング4の内周面4bの全周にわたって形成された段差部4Aと、ハウジング4の内周面4bに内嵌された間座4Bとの間で挟持されることにより、軸方向の位置決めがなされている。さらに、内輪2は、軸部材5の外周面5bの全周にわたって形成された段差部5Aと、軸部材5の外周面5bに内嵌された間座5Bとの間で挟持されることにより、軸方向の位置決めがなされている。
外輪1は、その外周面1bを含む表面(本実施形態では、外輪1の軌道面1aを除く全表面)に、二硫化モリブデンからなる面積率75%以上の固体潤滑被膜1Aが0.10〜8.0μmの厚さで形成されている。また、この固体潤滑被膜1Aが形成された外輪1の表面は、0.10〜5.0μmの深さの微小くぼみが形成されており、中心線平均粗さ(Ra)が0.10〜1.00μmとなっている。
本実施形態の玉軸受によれば、固定輪となる外輪1において、その外周面1bを含む面積率で75%以上の表面に固体潤滑被膜1Aが形成されているため、ハウジング4の内周面4bと外輪1の外周面1bとの間にクリープが発生した状態で使用されても、それらの嵌合面(ハウジング4の内周面4bや外輪1の外周面1b)に摩耗を生じ難くできる。
また、本実施形態では、外輪1の軌道面1aを除いた全表面に固体潤滑被膜1Aを形成した場合について説明したが、固体潤滑被膜1Aを形成する表面はこれに限らない。
例えば、図2(A)に示すように、外輪1の外周面1bのみに固体潤滑被膜1Aを形成してもよいし、図2(B)に示すように、外輪1の外周面1b及び軸方向端面1cに固体潤滑被膜1Aを形成してもよい。
また、図2(C)に示すように、外輪1の外周面1bに、従来技術と同様、クリープ防止の溝部1Bを形成し、この溝1Bの内面を含み、且つ、軌道面1aを除く全表面に固体潤滑被膜1Aを形成してもよい。
さらに、図2(D),図2(E)に示すように、軌道面1aを除く全表面に固体潤滑被膜1Aを形成するとともに、外輪1及び内輪2の間の軸方向端部の一方又は両方に、シールリングやシールド板等の密封部材6を形成してもよい。
なお、特定部位を除いた表面に固体潤滑被膜1Aを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、外輪1の全表面に固体潤滑被膜1Aを形成した後、特定部位(例えば、軌道面1a)の固体潤滑被膜1Aを研削加工等の仕上げ加工により除去する方法が挙げられる。
また、本実施形態では、本発明を、固定輪となる外輪1のみに適用した場合について説明したが、これに加えて、回転輪となる内輪2に適用してもよい。また、外輪1を回転輪として、内輪2を固定輪として使用する転がり軸受においては、固定輪となる内輪2や回転輪となる外輪1に本発明を適用することができる。
さらに、本実施形態では、本発明を、玉軸受に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、円筒ころ軸受や円錐ころ軸受等、その他の転がり軸受に適用してもよい。
次に、本発明の効果を、以下の実施例 (本発明例及び比較例)に基づいて検証した。
本実施形態では、日本精工株式会社製の呼び番号6308(内径:40mm,外径:90mm,幅:23mm)の玉軸受を、以下に示す方法で作製した。
外輪は、以下に示すようにして作製した。
まず、高炭素クロム軸受鋼二種(SUJ2)からなる素材を所定形状に加工した後、840℃の混合ガス雰囲気(RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス)で3時間浸炭窒化した後、油焼入れ及び焼戻しを行った。
次に、このようにして得られた外輪に対して以下に示す処理を行い、表1に示すNo.1〜26の外輪を完成させた。
まず、表1に示す前処理が「有」の外輪において、その表面に微小くぼみ(以下、「ディンプル」と記す。)を形成する前処理を行った。
なお、表1に示す前処理「有(ショット)」とは、ショットピーニング装置を用いて、噴射圧力196〜882KPa(2.0〜9.0kg/cm2 )、噴射時間10〜20分の条件下で、ショット材としてJIS R 6001に規定された平均粒径45μmの鋼球を大気中で加速して噴射することにより、外輪の表面にディンプルを形成した処理を指す。なお、一回の処理に供する外輪の重量は1〜6kgとした。
また、表1に示す前処理「有(SF)」とは、超仕上げ加工により、外輪の表面にディンプルを形成した処理を指す。
その後、外輪の表面におけるディンプルの深さを、以下に示すようにして測定した。
まず、三次元非接触表面形状測定機を用いて、100倍で30視野分の観察を行った。次に、得られた画像を断面プロファイルに変換して、XY方向のそれぞれ5断面を測定した結果の平均値を算出した。この結果は、表1に併せて示した。
また、外輪の表面における中心線平均粗さ(Ra)を、公知の粗さ測定機を用いて測定した。この結果は、表1に併せて示した。
次に、表1に示す各方法を用いて、外輪の外周面を含む表面に、表1に示す各被膜形成方法で固体潤滑被膜を形成した。
なお、表1に示す被膜形成方法「ショット」は、以下に示す条件で行った。まず、ショットピーニング装置を用いて、噴射圧力196〜882KPa(2.0〜9.0kg/cm2 )、噴射時間10〜20分の条件下で、ショット材としてJIS R 6001に規定された平均粒径45μmのスズ粉末を大気中で加速して噴射することにより、外輪の外周面を含む表面に固体潤滑被膜を形成した。なお、一回の処理に供する外輪の重量は1〜6kgとした。
また、表1に示す被膜形成方法「焼成」は、以下に示す条件で行った。まず、上述した特許文献5に記載の方法と同様に、結合剤としてポリアミドイミドを混入させたアルコール系溶剤中に、固体潤滑剤として二硫化モリブデンを添加して緩衝液を調整した。次に、得られた緩衝液を噴射した後、熱処理で焼成させることにより、外輪の外周面を含む表面に固体潤滑被膜を形成した。
その後、形成された固体潤滑被膜の面積率を、以下に示すようにして測定した。
まず、EPMA(電子プローブマイクロアナライザ)を用いて、外輪の表面の観察(2000倍、30視野分)を行った。次に、外輪の表面の200μm四方を1000倍に拡大し、固体潤滑被膜が形成される前の元素特性X線強度の10倍以上のX線強度が検出された部分を固体潤滑被膜が形成されている領域として判定した。そして、30視野分の結果を画像解析し、固体潤滑被膜の面積率の平均値を算出した。この結果は、表1に併せて示した。なお、表1に示す面積率は、観察視野の面積を100%とした時の値であり、例えば、面積率75%の固体潤滑被膜とは、観察視野に空孔部(固体潤滑被膜が形成されていない部分)が25%存在する固体潤滑被膜を指す。
また、固体潤滑被膜の厚さを、各実施例と同様の条件で固体潤滑被膜が形成された破壊検査用の外輪を用いて、以下に示すようにして測定した。
まず、固体潤滑被膜の保護を目的として、破壊検査用の外輪の表面に、熱硬化性樹脂であるポリアミドイミドをピロリンドンに溶解した化合物を形成した後、100℃で2時間保持することにより表面層を硬化させた。次に、破壊検査用の外輪を切断してエポキシ樹脂に埋め込み、その切断面にバフ研磨で鏡面仕上げを施した後、3%ピクラールで5秒間腐食させることで、切断面に凹凸を形成した。次に、スパッタリング法により、切断面にナノオーダーのクロム層を形成して通電性を付与した後、電子顕微鏡を用いて5000倍で30視野分の観察を行った。
このとき、1視野中で、横方向に固体潤滑被膜の断面層が観察されるように設置し、縦方向(固体潤滑被膜の厚さ方向)に沿って6区間に分割して、各区間の被膜厚さを算出した。そして、6区間の被膜厚さの平均値から算出される1視野の平均被膜厚さを用いて、30視野分の平均被膜厚さを算出した。この結果は、表1に併せて示した。
さらに、固体潤滑被膜が形成された後の外輪において、微小硬度計を用いた硬さ試験を行った。その結果、固体潤滑被膜が形成された外輪の表層部(表面から2〜15μmの深さまでの部分)に硬さの勾配が見られ、固体潤滑被膜が形成される前の外輪の表層部の硬さと比べて5〜20%増大していることが分かった。
続いて、このようにして得られた外輪と、SUJ2製の内輪と、SUJ2製の玉とからなる玉軸受を組み立てた。次に、この玉軸受の外輪の外周面を、アルミニウム合金(A5056)製のハウジングの内周面に嵌合させ、内輪の内周面を炭素鋼製の軸部材の外周面に嵌合させた。
そして、外輪の外周面とハウジングの内周面との間でクリープが発生するように、以下の条件で玉軸受の内輪を回転させることにより、摩耗試験を行った。
この摩耗試験の結果は、試験終了後、公知の摩耗試験機を用いてハウジングの内周面の摩耗量を測定し、No.21の摩耗量を1.00とした場合の比を、表1に合わせて示した。
<摩耗試験条件>
外輪とハウジングとの嵌め合い:締り嵌め(H7)
玉軸受に負荷するラジアル荷重:5880N
回転速度:8000min-1
軸部材の偏心角:10°
潤滑油:VG68相当
潤滑油温度:130℃
回転時間:100時間
Figure 2007002912
表1に示すように、外周面を含む表面に面積率75%以上の固体潤滑被膜が形成されたNo.1〜20の外輪を用いた玉軸受では、表面に焼成により固体潤滑被膜が形成されたNo.21の外輪や、表面に固体潤滑被膜が形成されていないNo.22の外輪や、固体潤滑被膜が上記範囲外の面積率で形成されたNo.23〜26の外輪を用いた場合と比べて、ハウジングの内周面の摩耗量が少なくなっており、No.21の0.70倍以下であった。
特に、No.1〜No.5とNo.6との結果、及び、No.7〜No.11とNo.12との結果から、固体潤滑被膜の面積率を75%以上95%以下とすることにより、ハウジングの内周面の摩耗量がさらに少なくなっていることが分かる。
また、No.1〜No.5とNo.13,No.14との結果、及び、No.7〜No.11とNo.17,No.18との結果から、固体潤滑被膜の厚さを0.10μm以上8.0μm以下とすることにより、ハウジングの内周面の摩耗量がさらに少なくなっていることが分かる。
さらに、No.7〜No.11とNo.17,No.18との結果から、固体潤滑被膜を形成する表面のディンプルの深さを0.10μm以上5.0μm以下に調整することにより、ハウジングの内周面の摩耗量がさらに少なくなっていることが分かる。
さらに、No.1〜No.5とNo.19との結果、及び、No.7〜No.11とNo.20との結果から、表面の中心線平均粗さ(Ra)を0.10μm以上1.00μm以下とすることにより、ハウジングの内周面の摩耗量がさらに少なくなっていることが分かる。
続いて、表1で示す結果のうち、No.1〜No.12と、No.23〜No.26の結果を用いて、固体潤滑被膜の面積率と、ハウジングの内周面の摩耗量と、の関係を示す図3のグラフを作成した。
図3に示すように、面積率75%以上の固体潤滑被膜を形成した外輪を用いた玉軸受では、面積率75%未満の固体潤滑被膜を形成した外輪を用いた場合と比べて、ハウジングの内周面の摩耗量が少なくなっていることが分かる。
また、ディンプルの深さを調節するための前処理を行った後に固体潤滑被膜を形成した外輪を用いた玉軸受では、前処理を行わずに固体潤滑被膜を形成した外輪を用いた場合と比べて、ハウジングの内周面の摩耗量が少なくなっていることが分かる。
以上の結果から、ハウジングと嵌合する外周面に面積率75%以上の固体潤滑被膜が形成された外輪を用いることにより、ハウジングの内周面と外輪の外周面との嵌合面にクリープが発生した状態で使用された場合であっても、ハウジングの内周面の摩耗量を少なくできることが確認できた。
また、外輪の表面に形成する固体潤滑被膜の厚さや、表面のディンプルの深さ及び中心線平均粗さについても特定することにより、ハウジングの内周面と外輪の外周面との嵌合面にクリープが発生した状態で使用された場合であっても、ハウジングの内周面の摩耗量をさらに少なくできることが確認できた。
本発明の転がり軸受の一例として、玉軸受の一構成を示す断面図である。 本発明の転がり軸受の一例として、玉軸受の他の構成を示す断面図である。 固体潤滑被膜の面積率と、ハウジングの内周面の摩耗量との関係を示すグラフである。 回転機械装置の一構成を示す断面図である。 回転機械装置の他の構成を示す断面図である。
符号の説明
1 外輪
1a 軌道面
1b 外周面(嵌合面)
1c 軸方向端面
1A 固体潤滑被膜
2 内輪
2a 軌道面
2b 内周面(嵌合面)
3 玉 (転動体)
4 ハウジング
4b 内周面
5 軸部材
5b 外周面
6 密封部材

Claims (6)

  1. 外輪と、内輪と、前記外輪及び前記内輪の間に転動自在に配設される転動体と、を備え、前記外輪の外周面をハウジングに嵌合させ、前記内輪の内周面を軸部材に嵌合させ、前記外輪及び前記内輪のうち一方を固定輪として、他方を回転輪として使用する転がり軸受において、
    少なくとも前記回転輪又は前記固定輪は、金属素材からなり、
    その嵌合面の少なくとも一部の表面に、面積率75%以上の固体潤滑被膜が形成されていることを特徴とする転がり軸受。
  2. 前記固体潤滑被膜の面積率は、95%以下であることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記固体潤滑被膜は、0.10μm以上8.0μm以下の厚さで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の転がり軸受。
  4. 前記固体潤滑被膜は、中心線平均粗さ(Ra)が0.10μm以上1.00μm以下の表面に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  5. 前記固体潤滑被膜は、0.10μm以上5.0μm以下の深さの微小くぼみを有する表面に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  6. 前記固体潤滑被膜は、ショットピーニング法により形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の転がり軸受。
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