JP2009150439A - 自在継手 - Google Patents

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Abstract

【課題】過酷な条件下で使用されてもその効果が長期にわたり発揮され、長寿命で、エネルギーロスの小さい自在継手を提供する。
【解決手段】ボール転動溝4、5をそれぞれ有するインナーレース3およびアウターレース2と、ボール転動溝4、5内に嵌め入れられた複数のボール6と、インナーレース3の外周面およびアウターレース2の内周面の間に介在させられてボール6を保持するためのポケット部が貫通して形成された環状のケージ7とを有する自在継手であって、ケージ表面の、少なくともインナーレース3、アウターレース2、およびボール6と接触する部位に、該部位を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなる複層被膜が形成されてなり、上記第1層は充填材が配合された合成樹脂で構成され、上記第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、十分な耐久性を持った自在継手に関する。
軸心が交差する駆動軸および被駆動軸を結合し回転力を伝える機能を有し、車両等に用いられる自在継手(ジョイント)の一種として、いかなるジョイント角度においても駆動軸と被駆動軸との間の回転角速度差が無く、等角速度で回転を伝達する等速ジョイントが知られている。この等速ジョイントの代表的な構造は、ボール転動溝をそれぞれ有するインナーレースおよびアウターレースと、そのボール転動溝内に嵌め入れられた複数のボールと、そのインナーレースの外周面およびそのアウターレースの内周面の間に介在させられてそのボールを保持するためのポケット部が貫通して形成された環状のケージを備え構成されており、上記インナーレースおよびアウターレースの転動溝に嵌め入れられた複数のボールを介して、駆動軸側からのトルクが被駆動軸側に伝達されるものである。ここで、上記ケージが、その複数のボールを、駆動軸と被駆動軸とが成す角の補角を二等分する面上に常に維持することにより、動力の等速伝達が可能とされている。
このような等速ジョイントにおいては上述の通り、複数のボールが、インナーレースおよびアウターレースのボール転動溝を転動することにより、動力の等速伝達を可能にしている。この時のレースとボール間の運動形態は低速高面圧条件下での、いわゆる転がり・滑り状態となっている。そのため、転がり・滑り面には油膜が形成されにくく、ボールが転動せず、滑りが主となると、摩擦による発熱を生じ、インナーレース、アウターレースおよびボールの剥離(フレーキング)が生じやすくなる。ケージは、前述のようにボールを、駆動軸と被駆動軸とが成す角の補角を二等分する面上に常に維持するために設けられているが、その際、ケージの内周面はインナーレースの外周面と、またケージ外周面はアウターレースの内周面と常に摺動している。この部分の摺動抵抗が大きいと発熱が生じるばかりでなく、ボールへの干渉力が大きくなり、ボールのスムーズな転動を妨げることになる。すなわちボールとレースの運動状態において、滑り率が大きくなり、結果的にインナーレース、アウターレースおよびボールの剥離を助長することとなる。
また、発熱による温度上昇は潤滑油の粘度低下を招き、油膜形成に悪影響を及ぼす。さらに温度上昇は潤滑油の酸化劣化を促進するため、潤滑寿命の点からも好ましくない。これに加えて、近年の車両の小型軽量化、高出力化、高性能化に伴い、等速ジョイントの使用環境は益々厳しくなる傾向にある。また、燃費向上のため等速ジョイント内部の摩擦抵抗を低減し、エネルギーロスを小さくすることも求められている。このように過酷化する使用環境のもとでも使用に耐える等速ジョイントの開発が期待されている。
このような課題に対し、りん酸マンガン処理を施すとともに、特定のグリースを封入した等速ジョイントが提案されている(特許文献1参照)。また、等速ジョイントのアウターレースおよびインナーレースの両方または一方のボール転動溝表面に、ショットブラスト処理により所定の表面粗さとした後に、固体潤滑被膜を形成させた等速ジョイントが提案されている(特許文献2参照)。さらにはケージの表面に固体潤滑剤を含む被膜を供えた等速ジョイントが提案されている(特許文献3参照)。
特許文献1および特許文献2では、等速ジョイントのアウターレースおよびインナーレースの両方または一方のボール転動溝表面に、ショットブラスト処理により所定の表面粗さとした後に、被膜処理を施している。この場合、ボールの転動面においては油膜のできにくい状態でも金属接触が起こりにくいため、転動疲労寿命が長くなる。しかし、ケージによるボールの転動阻害は考慮されていないため、根本的な解決にいたるものではない。
また、特許文献3では、ケージに形成する固体潤滑被膜として熱硬化性樹脂をバインダーとし固体潤滑剤を固定化させた被膜や、固体潤滑剤を分散させためっきが提案されている。しかし、等速ジョイントの高面圧条件では耐摩耗性が十分でなく、また繰り返し応力を受けた際に被膜の剥離が起こり、長期にわたって性能を維持する点で、十分な性能を有しているとはいえない状態である。特に等速ジョイントのアウターレース、インナーレースなどの比較的表面粗さの大きな相手材と摺動するような過酷な条件下においては上記被膜では耐摩耗性が不足するという問題がある。
特開2000‐46061号公報 特開2000‐145804号公報 特開2002‐372066号公報
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、ケージとレースの摺動抵抗を低減し、過酷な条件下で使用されてもその効果が長期にわたり発揮され、長寿命で、エネルギーロスの小さい自在継手を提供することを目的とする。
本発明の自在継手は、ボール転動溝をそれぞれ有するインナーレースおよびアウターレースと、該ボール転動溝内に嵌め入れられた複数のボールと、該インナーレースの外周面および該アウターレースの内周面の間に介在させられて該ボールを保持するためのポケット部が貫通して形成された環状のケージとを有する自在継手であって、上記ケージ表面の、少なくとも上記インナーレース、上記アウターレース、および上記ボールと接触する部位に、該部位を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなる複層被膜が形成されてなり、上記第1層は充填材が配合された合成樹脂で構成され、上記第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で構成される複層被膜を形成したことを特徴とする。
上記複層被膜が、上記ケージの上記インナーレースに摺接する内周面、および上記ケージの上記アウターレースに摺接する外周面に形成されることを特徴とする。また、上記複層被膜が、上記ケージの上記ボールに摺接するポケット部内周面に形成されることを特徴とする。
上記合成樹脂が、ポリイミド系樹脂であることを特徴とする。特に、上記ポリイミド系樹脂が、伸び率が 60%〜120%であるポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする。
上記第1層を形成する合成樹脂に配合される充填材が、フラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする。
また、上記第2層以降の層を形成する合成樹脂に配合される固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、二硫化タングステンおよびポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする。
また、上記複層被膜の厚みが 1μm〜100μm であることを特徴とする。
上記ケージの表面は上記複層被膜を形成する前において表面粗さRaが 0.3μm〜2.0μm であることを特徴とする。
また、上記ケージと接触する上記アウターレースおよび上記インナーレースの表面粗さRaが 1.0μm 以下であることを特徴とする。
上記複層被膜がアウターレースおよび上記インナーレースの少なくとも上記ケージと接触する部位に形成され、該複層被膜の上記第1層が上記ケージと接触する部位に直接被覆されることを特徴とする。
上記自在継手が、自動車のドライブトレインの車輪側に用いられる固定式等速自在継手、または、自動車のドライブトレインのデファレンシャル側に用いられる摺動式等速自在継手であることを特徴とする。
本発明の自在継手は、ケージのインナーレースに摺接する内周面、アウターレースに摺接する外周面、ボールに摺接するポケット部内周面などに、耐摩耗性、耐剥離性に優れた所定の複層被膜を形成するので、潤滑油に対するなじみ性に優れ、微量の付着油でも摩擦が低減され、ケージとレース等との摺動抵抗を低減できる。また、焼付かないため、運転中の摺動発熱が小さい。また、ボールへの干渉力も低減されることから、インナーレースおよびアウターレースの転動溝やボール表面の剥離の発生も抑制される。さらに、自在継手におけるエネルギーロスが小さくなり、自動車の低燃費化に貢献することが可能となる。
特に、複層被膜を形成する合成樹脂がポリイミド系樹脂であり、第1層を形成する合成樹脂に配合される充填材が、フラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一つであり、第2層以降の層は合成樹脂、または所定の固体潤滑剤が配合された合成樹脂によって形成されるので、第1層が基材であるケージ等との密着性に優れ、第2層以降が下地層との馴染み性に優れるとともに、耐剥離性や耐摩耗性に優れる。また、上記被膜は、極圧剤などの硫黄系添加剤を含有する潤滑油やグリースと接触しても、被膜の剥離や潤滑油等への被膜成分の溶出を抑えることができる。
これらの結果、等速ジョイントの高面圧条件においても、長期にわたって上記の優れた摺動性能を維持できる。
本発明の自在継手を図1および図2に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態を示す図であり、固定式等速ジョイントとしてボールフィクストジョイントを例示したものである。図2は本発明の第2の実施形態を示すであり、摺動式等速ジョイントとしてダブルオフセットジョイントを例示したものである。
図1に示すように、ボールフィクストジョイント1はアウターレース2の内面および球形のインナーレース3の外面に軸方向の六本のボール転動溝4、5を等角度に形成し、そのボール転動溝4、5間に組み込んだボール6をケージ7で支持し、このケージ7の外周を球面7aとし、かつ内周をインナーレース3の外周に適合する球面7bとしている。かかるボールフィクストジョイント1のケージ7のアウターレース2に摺接する外周面、ケージ7のインナーレース3に摺接する内周面、およびケージ7のボール6に摺接するポケット部内周面に所定の複層被膜が形成されるものである。
また、アウターレース2の外周とシャフト8の外周とをブーツ9で覆い、アウターレース2と、球形のインナーレース3と、ボール転動溝4、5と、ボール6と、ケージ7と、シャフト8とに囲まれた空間にグリース10が封入されている。
上記複層被膜は、ケージ7の上記表面を直接被覆する第1層が充填材を配合した合成樹脂で構成され、第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤を配合した合成樹脂で形成されることで得られる複層被膜である。なお、この複層被膜は、ケージとレースとの、およびケージとボールとの摺動抵抗を低減するため、ケージ7の表面において、少なくともインナーレース3、アウターレース2、およびボール6と接触する部位に形成されていればよい。また、この複層被膜はアウターレース2およびインナーレース3のケージ7との接触面にも形成することが好ましい。
図2に示すように、ダブルオフセットジョイント11はアウターレース12の内面および球形のインナーレース13の外面に軸方向の六本のボール転動溝14、15を等角度に形成し、そのボール転動溝14、15間に組み込んだボール16をケージ17で支持し、このケージ17の外周を球面17aとし、かつ内周をインナーレース13の外周に適合する球面17bとし、各球面17a、17bの中心(イ)、(ロ)をアウターレース12の軸心上において軸方向に位置をずらしてある。かかるダブルオフセットジョイント11のケージ17のアウターレース12に摺接する外周面、ケージ17のインナーレース13に摺接する内周面、およびケージ17のボール16に摺接するポケット部内周面に所定の複層被膜が形成されるものである。この複層被膜の構成および作用等は図1の場合と同様である。
また、アウターレース12の外周とシャフト18の外周とをブーツ19で覆い、アウターレース12と、球形のインナーレース13と、ボール転動溝14、15と、ボール16と、ケージ17と、シャフト18とに囲まれた空間にグリース20が封入されている。
本発明の自在継手を固定式等速ジョイントに利用した例としては、上述のボールフィクストジョイントの他、アンダーカットフリージョイントなどが挙げられる。このようなボールフィクストジョイントやアンダーカットフリージョイントのボール数は6個または8個の場合がある。この固定式等速ジョイントは、例えば、自動車のドライブトレインの車輪側に用いられる等速ジョイントとして適用できる。
摺動式等速ジョイントに利用した例としては、ダブルオフセットジョイント、トリポードジョイント、クロスグルーブジョイントなどが挙げられる。ダブルオフセットジョイントのボール数は6個または8個の場合がある。この摺動式等速ジョイントは、例えば、自動車のドライブトレインのデファレンシャル側に用いられる等速ジョイントとして使用できる。
また、不等速ジョイントとしては、クロスジョイントなどが挙げられる。
本発明において複層被膜に使用できる合成樹脂としては、耐油性を有し、被膜としたときに被膜強度が強く、耐摩耗性に優れた材料であれは、特に限定されない。そのような例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フッ素樹脂、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等があげられる。これらの中でも好ましいものとして、芳香族ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂、エポキン樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等があげられる。これらの合成樹脂は、必要に応じて、繊維状や粒子状の各種充填材を配合することができる。
本発明において、特に好ましい合成樹脂は被膜形成能に優れるポリイミド系樹脂である。ポリイミド系樹脂は分子内にイミド結合を有するポリイミド樹脂、分子内にイミド結合とアミド結合とを有するポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。ポリイミド系樹脂を用いることで、被膜のケージ表面との密着性および耐熱性に優れる。
ポリイミド樹脂の中でも、芳香族ポリイミド樹脂が好ましい。芳香族ポリイミド樹脂は、化1で示す繰返し単位を有する樹脂であり、化1で示す繰返し単位を有する樹脂の前駆体であるポリアミック酸も使用できる。R1 は芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体の残基であり、R2 は芳香族ジアミンまたはその誘導体の残基である。そのようなR1 またはR2 としては、フェニル基、ナフチル基、ジフェニル基、およびこれらがメチレン基、エーテル基、カルボニル基、スルホン基等の連結基で連結されている芳香族基が挙げられる。
Figure 2009150439
芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体の例としては、ピロメリット酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して用いられる。
芳香族ジアミンまたはその誘導体の例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエ-テル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニルエーテルなどのジアミン類またはジイソシアネート類が挙げられる。
上記芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体と、芳香族ジアミンまたはその誘導体との組み合わせで得られる芳香族ポリイミド樹脂の例としては、表1に示す繰返し単位を有するものが挙げられる。これらはR1 およびR2 にヘテロ原子を有しない樹脂である。
表1中の芳香族ポリイミド樹脂において、分子中に占める芳香環の比率が高いポリイミドCおよびポリイミドDが好ましく、特にポリイミドDが本発明に好適である。芳香族ポリイミド樹脂ワニスの市販品としては、例えば宇部興産社製:Uワニスが挙げられる。
Figure 2009150439
本発明に使用できるポリアミドイミド樹脂は高分子主鎖内にアミド結合とイミド結合とを有する樹脂であり、ポリカルボン酸またはその誘導体とジアミンまたはその誘導体との反応により得ることができる。
ポリカルボン酸としてはジカルボン酸、トリカルボン酸、およびテトラカルボン酸が挙げられ、ポリアミドイミド樹脂は、(1)ジカルボン酸およびトリカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(2)ジカルボン酸およびテトラカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(3)トリカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(4)トリカルボン酸およびテトラカルボン酸とジアミンとの組み合わせにより得られる。ポリカルボン酸とジアミンとはそれぞれ誘導体であってもよい。ポリカルボン酸の誘導体としては酸無水物、酸塩化物が挙げられ、ジアミンの誘導体としてはジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートはイソシアネート基の経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等が挙げられる。
また、ポリカルボン酸とジアミンとはそれぞれ芳香族および脂肪族化合物を用いることができる。本発明に使用できるポリアミドイミド樹脂は伸び率に優れたものが好ましく、芳香族化合物に脂肪族化合物を併用することが好ましい。
また、エポキシ化合物で変性することができる。
トリカルボン酸またはその誘導体の例としては、トリメリット酸無水物、2,2’,3-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,3’,4-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,3’,4-ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、1,2,5-ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3-ジカルボキシフェニルメチル安息香酸無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して用いられる。
これらの中で、量産化されており、工業的利用のしやすさからトリメリット酸無水物が好ましい。
テトラカルボン酸またはその誘導体の例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-スルホニルジフタル酸二無水物、m-タ−フェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(2,3-または3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス[4-(2,3-または3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
ジカルボンまたはその誘導体の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸、ポリブタジエン系オリゴマーの両末端をカルボキシル基とした脂肪族ジカルボン酸(日本曹達社製:Nisso−PB,Cシリーズ、宇部興産社製:Hycar−RLP,CTシリーズ、Thiokol社製:HC−polymerシリーズ、General Tire社製:Telagenシリーズ、Phillips Petroleum社製:Butaretzシリーズ等)、カーボネートジオール類(ダイセル化学社製:PLACCEL、CD-205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HL)の水酸基当量以上のカルボキシル当量となるジカルボン酸を反応させて得られるエステルジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジアミンまたはその誘導体の例として、ジイソシアネートとしては、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4'-[2,2-ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネート、ビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、ビフェニル-3,3'-ジイソシアネート、ビフェニル-3,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジメチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジエチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジエチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水添m-キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、カーボネートジオール類(ダイセル化学社製:PLACCEL、CD-205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HL)の水酸基当量以上のイソシアネート当量となるジイソシアネートを反応させて得られるウレタンジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。
ジアミン類としては、ジメチルシロキサンの両末端にアミノ基が結合したシロキサンジアミン(シリコーンオイルX-22-161AS(アミン当量450)、X-22-161A(アミン当量840)、X-22-161B(アミン当量1500)、X-22-9409(アミン当量700)、X-22-1660B-3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業社製)、BY16-853(アミン当量650)、BY16-853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン社製))、両末端アミノ化ポリエチレン、両末端アミノ化ポリプロピレン等の両末端アミノ化オリゴマーや両末端アミノ化ポリマー、オキシアルキレン基を有するジアミン(ジェファーミンDシリーズ、ジェファーミンEDシリーズ、ジェファーミンXTJ-511、ジェファーミンXTJ-512、いずれもサンテクノケミカル社製)等が挙げられる。
芳香族ポリイミド樹脂と異なり、前駆体を経ることなく樹脂溶液の状態でアミド結合とイミド結合との繰返し単位を有するポリアミドイミド樹脂が本発明において特に好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂のジイソシアネート変性、BPDA変性、スルホン変性、ゴム変性樹脂を使用できる。ポリアミドイミド樹脂ワニスの市販品としては、例えば日立化成社製:HPC5020、HPC7200等が挙げられる。
本発明においてポリアミドイミド樹脂は、樹脂被膜の伸び率が 60〜120%のポリアミドイミド樹脂が好ましい。伸び率が 60%未満であると基材となる保持器等との密着性に劣り剥離しやすくなり、硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境下において被膜剥離または金属成分の溶出が生じやすくなる。伸び率が 120%をこえると耐熱性が低下したり潤滑油に膨潤しやすくなったりする。樹脂被膜の伸び率が 60〜120%のポリアミドイミド樹脂の市販品としては、例えば日立化成社製:HPC5020、HPC7200-30が挙げられる。
本発明においてポリアミドイミド樹脂被膜の伸び率は以下の方法で測定される。
ポリアミドイミド樹脂溶液を、アセトン脱脂後窒素ガスブローにより表面清浄化されたガラス基板上に塗布し、80℃で 30分、その後 150℃で 10分予備乾燥を行ない、最後にポリアミドイミド樹脂の分子構造に適した硬化温度で 30分乾燥する。硬化塗膜をガラス基板より剥離して 80 ± 8μm 厚さの樹脂フィルムを得て、このフィルムを 10 mm×60 mm の短冊状の試験片とし、チャック間距離 20 mm 、引張速度 5 mm/分で室温にて引張試験機により伸び率(%)を測定する。
本発明において複層被膜の第1層は充填材を配合することが必須であり、第2層以降は必要に応じて充填材を配合できる。複層被膜に対する充填材の配合割合は、各層の被膜全体に対して、0.1〜20 体積%であることが好ましく、より好ましくは 1〜10 体積%である。0.1 体積%未満では十分な被膜強化を得られないため耐剥離性を付与できず、また 20 体積%をこえると、逆に密着力が低下する。ここでいう充填材とはフラーレンや炭化ケイ素、酸化ケイ素などの無機微粒子等であり、粉末状のものを用いることができ、分散性や被膜の表面平滑性から、粒子径は 10μm 以下、好ましくは 5μm 以下である。
充填材として用いることができるフラーレンは、炭素五員環と六員環から構成され、球状に閉じた多様な多面体構造を有する炭素分子である。60 個の炭素原子が 12 個の五員環と 20 個の六員環とからなる球状の切頭正二十面体を構成する、いわゆるサッカーボール状の構造のC60 が挙げられ、同様に 70 個の炭素原子からなるC70 を含めた両者が代表的なフラーレンである。また、これらを反応させて多量体が得られる。本発明においては、フラーレンであれば球状、あるいは多量体のいずれも充填材として使用できる。
本発明において複層被膜の2層目以降は、無充填の合成樹脂または固体潤滑剤を配合した合成樹脂で形成する。摩擦係数の安定化や初期馴染み性を向上させる等必要に応じて配合される固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などが挙げられ、それぞれ粉末状のものを用いることができる。分散性や被膜の表面平滑性から、粒子径は 10μm 以下であることが好ましく、より好ましくは 5μm 以下である。複層被膜に対する固体潤滑剤の配合割合は、各層の被膜全体に対して、0.5〜30 体積%であることが好ましく、より好ましくは 0.5〜20 体積%であり、さらに好ましくは 10〜20 体積%である。0.1 体積%未満では十分な摩擦摩耗特性を得ることができず、30 体積%をこえると被膜強度が極端に低下し、剥離や異常摩耗が発生する。
本発明において用いられる複層被膜の構成を図面に基づいて説明する。図4は複層被膜が2層である例を示す模式図である。図4に示すように複層被膜はケージまたはレース29を被覆し、充填材が配合された合成樹脂被膜である第1層30と、第1層30を被覆し、無充填の合成樹脂被膜または固体潤滑剤のみが配合された合成樹脂被膜である最表層31とからなる2層で構成される。
図5は複層被膜が3層である例を示す模式図である。複層被膜は2層での構成に限定されるものではなく、図5に示すように例えばケージまたはレース29を被覆する第1層30と、最表層31との間に最表層31よりも固体潤滑剤の配合量が少ない中間層32を形成し、固体潤滑剤の配合量を傾斜させることも可能である。
本発明の自在継手に用いるケージの材料としては、特に限定されるものでなく、鉄系金属材料、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、樹脂材料を使用することができるが、例えばSCr420などの構造用合金鋼が好適に用いられる。これらに適度の材料強度を付与するため、適宜焼入れ、焼戻しのような熱処理が施され、材料表面の硬度はビッカース硬さHV 750 程度に調整される。
本発明の自在継手に用いるレースの材料としては、アウターレースにはS50CやS60Cなどの構造用炭素鋼が、インナーレースにはSCr420などの構造用合金鋼が用いられる。
本発明において複層被膜を、自在継手ケージ用の被膜とする場合は、以下の2層からなる複層被膜を形成させる方法を例示できる。
まず、鉄系金属材料で形成された基材となるケージを十分に洗浄し、表面の汚染を除去する。この洗浄方法としては、有機溶剤による浸漬洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄、酸・アルカリ洗浄等による方法が挙げられる。
1層目の被膜の密着性を向上させる目的で、基材に前処理としてショットブラスト(ショットピーニング、WPC等を含む)、化学的エッチング、りん酸塩被膜処理を施すことも可能である。基材の表面粗さはRa= 0.3〜2.0μm の範囲で設定することが好ましく、より好ましくはRa= 0.5〜2.0μm である。Ra= 0.3μm 未満であると、十分なアンカー効果を得ることができず、密着性を向上することができない。一方、基材の表面粗さが大きい場合は仕上がり表面が粗くなるが、研磨などの機械加工により表面粗さを小さく調整すればケージとして使用可能となる。また、Ra= 0.5〜2.0μm であれば十分な密着性と機械加工を施すことなく小さな表面粗さを得ることが可能である。
次いで、スプレーコーティング法、ディップ(浸漬)コーティング法、静電塗装法、タンブラーコーティング法、電着塗装法等によって、第1層をケージ表面やレースのケージ案内面に形成させた後、第2層を第1層の表面に形成する。複層被膜の厚さは、第1層は 0.5〜90μm であることが好ましく、より好ましくは 0.5〜20μm である。第2層は 0.5〜50μm であることが好ましく、より好ましくは 0.5〜10μm である。また、複層被膜全体として好ましい被膜の厚さは 1〜100μm であり、より好ましくは 1〜50μm、さらに好ましくは 1〜30μm である。
また、各層の被膜形成の過程で、余分に付着したワニスはふき取り、遠心分離、エアーブロー等の物理的、化学的方法により除去し、所望の厚さに調整することもできる。
2層目の被膜形成後は、加熱処理によって溶媒除去、乾燥、融解、架橋等を行ない、表面に複層被膜が形成されたケージを完成させる。膜厚を増す場合には、重ね塗りをしてもよい。また、複層被膜完成後に機械加工やタンブラー処理等を行なうことも可能である。
さらに、これら表面に複層被膜が形成されたケージと接触するアウターレースおよびインナーレースの表面の粗さは小さいほうが好ましい。好ましい範囲はRa 1.0μm 以下、より好ましくはRa 0.8μm 以下であり、この範囲とすることにより複層被膜の耐久性を向上させることが可能となる。表面粗さを小さくする方法としてはラッピング、タンブラ、エアロラッピングなどをあげることができる。
本発明の実施例および比較例に用いた材料を一括して示すと次のとおりである。[ ]内は表2に示す略称である。
(1)ポリアミドイミド樹脂ワニス[PAI]
日立化成工業社製:HPC-5020、伸び率:70 %
(2)芳香族ポリイミド樹脂ワニス[PI]
宇部興産社製:Uワニス-A
(3)混合フラーレン[ミックスフラーレン]
フロンティアカーボン社製:混合フラーレン、C60(直径:0.71 nm )が約 60 質量%、C70(長軸径:0.796 nm 、短軸径:0.712 nm )が約 25 質量%で残部が高次フラーレンの混合物である。
(4)炭化ケイ素[SiC]
添川理化学社製:試薬、平均粒子径 1μm
(5)酸化ケイ素[SiO2
アドマテックス社製:アドマファインSO−C5 平均粒子径 1.6μm
(6)二硫化モリブデン粉末[MoS2
日本モリブデン社製:M5、平均粒子径 0.5μm
(7)二硫化タングステン粉末[WS2
日本潤滑剤社製:WS2A、平均粒子径 1μm
(8)ポリテトラフルオロエチレン粉末[PTFE]
喜多村社製:KD-1000ASディスパージョン(溶媒:N-メチル-2-ピロリドン)、平均粒子径 0.3μm
(9)黒鉛粉末[黒鉛]
ロンザ社製:KS-6、平均粒子径 6μm
実施例1〜実施例5、実施例7〜9および比較例12 [複層被膜]
ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)の固形分に対し各種充填材、固体潤滑剤を表2に記載の割合でボールミルで十分に均一分散するまで混合して、混合液を摩擦試験用SCr420リング〔外径 40 mm×内径 20 mm×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )、ショットブラストにより表面粗さRa 0.7μm :図3の21〕の外径面にスプレー法にて2層からなる複層被膜をコーティングした。
上記各試験片は1層目をコーティング後 100℃で 1 時間乾燥し、さらにその上に2層目をコーティングし、100℃で 1 時間、さらに 150℃で 1 時間乾燥し、250℃で 1 時間焼成した。なお、表2に記載の各成分の配合割合は固形分での割合でありすべて体積%である。
なお、フラーレンを配合したコーティング液は、トルエンとN-メチル-2-ピロリドンとの混合溶媒(混合質量比率 50:50 )にフラーレンを 5 質量%濃度で溶解させた濃縮液をあらかじめ用意し、これをポリアミドイミド樹脂ワニスに所定濃度となるよう添加し調製した。
上記処理によりリング状試験片を得た。得られたリング状試験片を用いて以下に示す摩擦試験に供し、摩擦係数、比摩耗量および試験後の被膜の状態を評価した。結果を表2に併記する。
実施例6 [複層被膜]
芳香族ポリイミド樹脂ワニス(溶剤:N−メチル−2−ピロリドン)を用いて、表2に示す割合で1層目にはフラーレンを配合した被膜、2層目には二硫化モリブデンを配合した被膜をコーティングし、コーティング後の焼成温度を 350℃とする以外は実施例1と同様の方法で試験片を作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例1 [被膜なし]
実施例1に用いた試験片を無処理のまま使用し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例2 [めっき単層]
実施例1に用いた試験片に、無電解めっきにより四ふっ化エチレン樹脂粉末含有( 30 質量%)ニッケルめっき(めっき厚: 20μm ):日本カニゼン−カニフロンを施した。得られた試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例3 [りん酸マンガン単層被膜]
実施例1に用いた試験片にりん酸マンガン被膜(膜厚 3μm )処理を施した。得られた試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例4〜比較例11 [単層被膜]
ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:N−メチル−2−ピロリドン)の固形分に対し各種充填材を表2に記載の割合でボールミルで十分に均一分散するまで混合して、混合液を実施例1に用いた試験片に一層コーティングした。得られた試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例13 [複層被膜]
摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm×内径 20 mm×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )の表面粗さをRa 0.08μm に調整し、実施例1と同様の被膜を形成し、摩擦試験を行った。結果を表2に併記する。
比較例14 [複層被膜]
実施例1に用いた試験片に対し、鋼鈑24〔SCr420焼入れ焼戻し処理品(Hv 700)〕の表面粗さをRa 3.0μm とし、摩擦試験を行なった。結果を表2に併記する。
<摩擦試験>
得られたリング状試験片を用いて摩擦試験を行なった。図3は摩擦試験機を示す図である。図3(a)は正面図を、図3(b)は側面図をそれぞれ表す。
回転軸22にリング状試験片21を取り付け、アーム部23のエアスライダー25に鋼鈑24を固定する。リング状試験片21は所定の荷重26を図面上方から印加されながら鋼鈑24〔SCr420浸炭焼入れ焼戻し処理品(Hv 700 、表面粗さRa 1.0μm )〕に回転接触する。リング状試験片21を回転させたときに発生する摩擦力はロードセル27により検出される。
潤滑油モービルベロシティオイルNo.3(エクソンモービル社製:VG2)をフェルトパッド28に含浸し、フェルトパッド28をリング状試験片21に接触させることにより潤滑油を摺動面に供給した。この状態で、リング試験片21にかかる荷重は 50 N 、リング試験片21と鋼鈑24の滑り速度は毎秒 0.05 m とした。なお、試験時間は 60分とした。
試験終了前 10分間の摩擦係数の平均値を算出した。鋼鈑24の摩耗痕より摩耗体積を求め、比摩耗量(×10-10mm3/(N・m))を算出した。また、試験後、リング状試験片21の外径面に形成された被膜の状態を目視により観察し、顕著な摩耗、剥離ともに認められないものを合格と評価し「○」、顕著な摩耗はないが剥離あるものを不十分と評価し「△」、摩耗大のものを不合格と評価し「×」の 3 段階で記録した。
Figure 2009150439
表2に示すように、所定の複層被膜とした実施例1〜実施例9では、1層目に充填材で補強した層を形成しているため剥離が発生せず、さらに、2層目により低摩擦係数であり、優れた耐久性を有していた。
一方、表2から明らかなように、無処理の比較例1は摩擦係数、鋼鈑の比摩耗量いずれも大きな値を示した。四ふっ化エチレン樹脂粉末含有ニッケルめっきを施した比較例2は試験中に剥離し、特性向上に貢献しなかった。りん酸塩被膜を形成した比較例3は耐久性は十分でなかった。合成樹脂を母材とする単層の被膜を形成した比較例4〜比較例11では、被膜が剥離、または摩耗するか摩擦係数が大きいなどして特性が劣った。比較例12においては、実施例1と同じ組成の樹脂被膜を形成した場合でも、被膜が薄いため剥離した。また、さらに、実施例1と同じ組成の樹脂被膜を形成した比較例13および比較例14でも、基材の表面粗さが小さい比較例13や相手鋼鈑の粗さが粗い比較例14では剥離や摩耗により特性が劣った。
本発明の自在継手は、ケージ表面や、アウターレース、インナーレースのケージとの摺動面等に所定の複層被膜を形成している。この複層被膜により、ケージとレースの接触による摩擦が小さく摩耗や剥離もないため、焼付きが発生しがたく、長寿命であり、高信頼性が得られる。そのため、小型軽量で、エネルギーロスが小さく、過酷な使用環境において使用される自在継手として好適に利用できる。
本発明の自在継手の第1の実施形態を示す一部省略縦断面図である。 本発明の自在継手の第2の実施形態を示す一部省略縦断面図である。 摩擦試験機を示す図である。 複層被膜が2層である例を示す模式図である。 複層被膜が3層である例を示す模式図である。
符号の説明
1 ボールフィクストジョイント
2、12 アウターレース
3、13 インナーレース
4、5、14、15 ボール転動溝
6、16 ボール
7、17 ケージ
7a、7b、17a、17b 球面
8、18 シャフト
9、19 ブーツ
10、20 グリース
11 ダブルオフセットジョイント
21 リング状試験片
22 回転軸
23 アーム部
24 鋼鈑
25 エアスライダー
26 荷重
27 ロードセル
28 フェルトパッド
29 ケージまたはレース
30 第1層
31 最表層
32 中間層

Claims (13)

  1. ボール転動溝をそれぞれ有するインナーレースおよびアウターレースと、該ボール転動溝内に嵌め入れられた複数のボールと、該インナーレースの外周面および該アウターレースの内周面の間に介在させられて該ボールを保持するためのポケット部が貫通して形成された環状のケージとを有する自在継手であって、
    前記ケージ表面の、少なくとも前記インナーレース、前記アウターレース、および前記ボールと接触する部位に、該部位を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなる複層被膜が形成されてなり、
    前記第1層は充填材が配合された合成樹脂で構成され、前記第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で構成される複層被膜を形成したことを特徴とする自在継手。
  2. 前記複層被膜が、前記ケージの前記インナーレースに摺接する内周面、および前記ケージの前記アウターレースに摺接する外周面に形成されることを特徴とする請求項1記載の自在継手。
  3. 前記複層被膜が、前記ケージの前記ボールに摺接するポケット部内周面に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の自在継手。
  4. 前記合成樹脂が、ポリイミド系樹脂であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の自在継手。
  5. 前記ポリイミド系樹脂が、伸び率が 60〜120%であるポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項4記載の自在継手。
  6. 前記第1層を形成する合成樹脂に配合される充填材が、フラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の自在継手。
  7. 前記第2層以降の層を形成する合成樹脂に配合される固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、二硫化タングステンおよびポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載の自在継手。
  8. 前記複層被膜の厚みが 1〜100μm であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載の自在継手。
  9. 前記ケージの表面は前記複層被膜を形成する前において表面粗さRaが 0.3〜2.0μm であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項記載の自在継手。
  10. 前記ケージと接触する前記アウターレースおよび前記インナーレースの表面粗さRaが 1.0μm 以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項記載の自在継手。
  11. 前記複層被膜が前記アウターレースおよび前記インナーレースの少なくとも前記ケージと接触する部位に形成され、該複層被膜の前記第1層が前記ケージと接触する部位に直接被覆されることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項記載の自在継手。
  12. 前記自在継手が、自動車のドライブトレインの車輪側に用いられる固定式等速自在継手であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項記載の自在継手。
  13. 前記自在継手が、自動車のドライブトレインのデファレンシャル側に用いられる摺動式等速自在継手であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項記載の自在継手。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014219071A (ja) * 2013-05-09 2014-11-20 本田技研工業株式会社 固定型等速ジョイント

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