JP5122934B2 - 航空機用転がり軸受 - Google Patents
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Description
転がり軸受工学編集委員会、「転がり軸受工学」、第3版、養賢堂、1978年1月、p.362
また、上記ポリイミド系樹脂が、伸び率が 60%〜120%であるポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする。
また、上記第2層以降の層を形成する合成樹脂に配合される固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、二硫化タングステンおよびポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする。
また、上記複層被膜の厚みが 1μm〜100μm であることを特徴とする。
また、上記保持器と接触する軌道輪の表面粗さRaが 0.1μm 以下であることを特徴とする。
また、上記複層被膜が保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されたことを特徴とする。
また、上記被膜は、硫黄系添加剤を含有する潤滑油と接触しても、被膜の剥離や潤滑油への被膜成分の溶出を抑えることができ、従来の金属めっきよりも長期間保持器の潤滑性を維持することができる。
複層被膜6は、保持器4の表面を直接被覆する第1層が充填材を配合した合成樹脂で構成され、第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤を配合した合成樹脂で形成されることで得られる複層被膜6である。
なお、図1〜図3において複層被膜6、16、26は、保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されていればよい。また、該複層被膜6、16、26は、軌道輪の保持器案内面5、15、25にそれぞれ形成することも可能である。
ポリカルボン酸としてはジカルボン酸、トリカルボン酸、およびテトラカルボン酸が挙げられ、ポリアミドイミド樹脂は、(1)ジカルボン酸およびトリカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(2)ジカルボン酸およびテトラカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(3)トリカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(4)トリカルボン酸およびテトラカルボン酸とジアミンとの組み合わせにより得られる。ポリカルボン酸とジアミンとはそれぞれ誘導体であってもよい。ポリカルボン酸の誘導体としては酸無水物、酸塩化物が挙げられ、ジアミンの誘導体としてはジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートはイソシアネート基の経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等が挙げられる。
また、ポリカルボン酸とジアミンとはそれぞれ芳香族および脂肪族化合物を用いることができる。本発明に使用できるポリアミドイミド樹脂は伸び率に優れたものが好ましく、芳香族化合物に脂肪族化合物を併用することが好ましい。
また、エポキシ化合物で変性することができる。
これらの中で量産化されており、工業的利用のしやすさからトリメリット酸無水物が好ましい。
ポリアミドイミド樹脂溶液を、アセトン脱脂後窒素ガスブローにより表面清浄化されたガラス基板上に塗布し、80℃で 30分、その後 150℃で 10分予備乾燥を行ない、最後にポリアミドイミド樹脂の分子構造に適した硬化温度で 30分乾燥する。硬化塗膜をガラス基板より剥離して 80 ± 8μm 厚さの樹脂フィルムを得て、このフィルムを 10 mm×60 mm の短冊状の試験片とし、チャック間距離 20 mm 、引張速度 5 mm/分で室温にて引張試験機により伸び率(%)を測定する。
図6は複層被膜が3層である例を示す模式図である。複層被膜は2層での構成に限定されるものではなく、図6に示すように例えば保持器または軌道輪34を被覆する第1層35と、最表層36との間に最表層36よりも固体潤滑剤の配合量が少ない中間層37を形成し、固体潤滑剤の配合量を傾斜させることも可能である。
鉄系金属材料としては、肌焼き鋼(SNCM、SCM)、冷間圧延鋼(SPCC)、熱間圧延鋼(SPHC)、炭素鋼(S25C〜S55C)、ステンレス鋼(SUS304〜SUS316)、軟鋼(SS400)、耐熱鋼(M50、M50Nilなど)等を使用できる。
保持器本体としては、軸受鋼、浸炭鋼、または機械構造用炭素鋼、を用いることができ、これらの中で耐熱性が高く高荷重に耐える剛性を有する浸炭鋼を調質して用いることが好ましい。浸炭鋼としては例えばSNCM等を挙げることができる。
また、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂材料を使用することができる。樹脂材料に補強材としてガラス繊維や炭素繊維等を含有したものも使用できる。
まず、鉄系金属材料で形成された基材となる保持器を十分に洗浄し、表面の汚染を除去する。この洗浄方法としては、有機溶剤による浸漬洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄、酸・アルカリ洗浄等による方法が挙げられる。
1層目の被膜の密着性を向上させる目的で、基材に前処理としてショットブラスト(ショットピーニング、WPC等を含む)、化学的エッチング、りん酸塩被膜処理を施すことも可能である。基材の表面粗さはRa= 0.3〜1.0μm の範囲で設定することが好ましく、より好ましくはRa= 0.5〜1.0μm である。Ra= 0.3μm 未満であると、十分なアンカー効果を得ることができず、密着性を向上することができない。一方、基材の表面粗さが大きい場合は仕上がり表面が粗くなるが、研磨などの機械加工により表面粗さを小さく調整すれば保持器として使用可能となる。また、Ra= 0.5〜1.0μm であれば十分な密着性と機械加工を施すことなく小さな表面粗さを得ることが可能である。
また、各層の被膜形成の過程で、余分に付着したワニスはふき取り、遠心分離、エアーブロー等の物理的、化学的方法により除去し、所望の厚さに調整することもできる。
2層目の被膜形成後は、加熱処理によって溶媒除去、乾燥、融解、架橋等を行ない、表面に複層被膜が形成された保持器を完成させる。膜厚を増す場合には、重ね塗りをしてもよい。また、複層被膜完成後に機械加工やタンブラー処理等を行なうことも可能である。
(1)ポリアミドイミド樹脂ワニス[PAI]
日立化成工業社製:HPC-5020、伸び率:70 %
(2)芳香族ポリイミド樹脂ワニス[PI]
宇部興産社製:Uワニス-A
(3)混合フラーレン[ミックスフラーレン]
フロンティアカーボン社製:混合フラーレン、C60(直径:0.71 nm )が約 60 質量%、C70(長軸径:0.796 nm、短軸径:0.712 nm )が約 25 質量%で残部が高次フラーレンの混合物である。
(4)炭化ケイ素[SiC]
添川理化学社製:試薬、平均粒子径 1μm
(5)酸化ケイ素[SiO2 ]
アドマテックス社製:アドマファインSO−C5 平均粒子径 1.6μm
(6)二硫化モリブデン粉末[MoS2 ]
日本モリブデン社製:M5、平均粒子径 0.5μm
(7)二硫化タングステン粉末[WS2 ]
日本潤滑剤社製:WS2A、平均粒子径 1μm
(8)ポリテトラフルオロエチレン粉末[PTFE]
喜多村社製:KD-1000ASディスパージョン(溶媒:N-メチル-2-ピロリドン)、平均粒子径 0.3μm
(9)黒鉛粉末[黒鉛]
ロンザ社製:KS-6、平均粒子径 6μm
ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)の固形分に対し各種充填材を表2に記載の割合でボールミルで十分に均一分散するまで混合して、混合液を摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm×内径 20 mm×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )、ショットブラストにより表面粗さRa 0.7μm :図4の27〕の外径面にスプレー法にて2層からなる複層被膜をコーティングした。また、潤滑油浸漬試験用としてSPCC角棒( 3 mm×3 mm×20 mm )の表面にディッピング法により2層からなる複層被膜をコーティングした。
上記各試験片は1層目をコーティング後 100℃で 1 時間乾燥し、さらにその上に2層目をコーティングし、100℃で 1 時間、さらに 150℃で 1 時間乾燥し、250℃で 1 時間焼成した。なお、表2に記載の各成分の配合割合は固形分での割合でありすべて体積%である。
なお、フラーレンを配合したコーティング液は、トルエンとN-メチル-2-ピロリドンとの混合溶媒(混合質量比率 50:50 )にフラーレンを 5 質量%濃度で溶解させた濃縮液をあらかじめ用意し、これをポリアミドイミド樹脂ワニスに所定濃度となるよう添加し調製した。
得られたリング状試験片を用いて摩擦試験を行なった。図4は摩擦試験機を示す図である。図4(a)は正面図を、図4(b)は側面図をそれぞれ表す。
回転軸28にリング状試験片27を取り付け、アーム部29のエアスライダー31に鋼鈑30を固定する。リング状試験片27は所定の荷重32を図面上方から印加されながら鋼鈑30〔SCM415浸炭焼入れ焼戻し処理品(Hv 700 、表面粗さ Ra 0.01μm )〕に回転接触する。リング状試験片27を回転させたときに発生する摩擦力はロードセル33により検出される。
潤滑油モービルベロシティオイルNo.3(エクソンモービル社製:VG2)をマイクロシリンジで 1μL 計量し、リング状試験片27に塗布した。この状態で、荷重 50 N 、滑り速度 1.0 m /秒の条件で摩擦試験を実施した。摩擦係数が 0.4 に達するまでの運転時間をドライラン状態での耐久性として評価した。また、所定時間経過後、リング状試験片27の外径面に形成された樹脂被膜の状態を目視により観察し、顕著な摩耗、剥離ともに認められないものを合格と評価し「○」、顕著な摩耗はないが剥離あるものを不十分と評価し「△」、摩耗大のものを不合格と評価し「×」の 3 段階で記録した。なお、試験時間は 60 分を上限とした。
得られた角棒状試験片を用いて潤滑油浸漬試験を行なった。被膜処理を施した角棒 3 本を 150℃の潤滑油〔ポリ-α-オレフィン油:ルーカントHL-10(三井化学社製)に代表的な酸化防止剤であるジチオりん酸亜鉛(LUBRIZOL社製:LUBRIZOL677A)を 1 質量%添加したもの〕 2.2 g に 200 時間浸漬した後、潤滑油中に溶出した被膜成分の濃度を測定した。濃度測定は、蛍光X線測定〔蛍光X線測定装置:Rigaku ZSX100e(リガク社製)〕により定量した。
芳香族ポリイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)を用いて、表2に示す割合で1層目にはフラーレンを配合した被膜、2層目には二硫化モリブデンを配合した被膜をコーティングし、コーティング後の焼成温度を 350℃とする以外は実施例1と同様の方法で試験片を作製し、同様に評価した。結果を表2に併記する。
実施例1において試験片に被膜を形成する代わりに、試験片に電気めっきにより下地として銅めっき(めっき厚: 5μm )を施し、さらに2層目に銀めっき(めっき厚: 20μm )を施し、リング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
実施例1において試験片に被膜を形成する代わりに、電気めっきにより銅めっき(めっき厚: 25μm )を施し、リング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
実施例1において試験片に被膜を形成する代わりに、無電解めっきにより四ふっ化エチレン樹脂粉末含有(20 質量%)ニッケルめっき(めっき厚: 20μm ):日本カニゼン−カニフロンを施し、リング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)の固形分に対し各種充填材を表2に記載の割合でボールミルで十分に均一分散するまで混合して、混合液を摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm×内径 20 mm×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )、ショットブラストにより表面粗さRa 0.7μm :図4の27〕の外径面にスプレー法にてコーティングした。また、潤滑油浸漬試験用としてSPCC角棒( 3 mm×3 mm×20 mm )の表面にディッピング法によりコーティングした。コーティング後 100℃で 1 時間、さらに 150℃で 1 時間乾燥し、250℃で 1 時間焼成した。スプレー回数を調整し、被膜厚みが 25μm になるようにした。
なお、フラーレンを配合したコーティング液は、トルエンとN-メチル-2-ピロリドンとの混合溶媒(混合質量比率 50:50 )にフラーレンを 5 質量%濃度で溶解させた濃縮液をあらかじめ用意し、これをポリアミドイミド樹脂ワニスに所定濃度となるよう添加し調製した。
上記処理によりリング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm×内径 20 mm×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )〕の表面粗さをRa 0.08μm に調整し、実施例1と同様の被膜を形成し、摩擦試験のみを行なった。結果を表2に併記する。
実施例1で得たリング状試験片に対し、鋼鈑30(図4)〔SCM415浸炭焼入れ焼戻し処理品(Hv 700)〕の表面粗さ をRa 0.4μm とし、摩擦試験のみを行なった。結果を表2に併記する。
摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm×内径 20 mm×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )〕の表面と、潤滑油浸漬試験用としてSPCC角棒( 3 mm×3 mm×20 mm )の表面とに、りん酸マンガン被膜(膜厚 3μm )処理を施し、リング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
1a 鍔
2、12、22 内輪
3 ころ(転動体)
4、14、24 保持器
5、15、25 保持器案内面
6、16、26 複層被膜
13、23 ボール
27 リング状試験片
28 回転軸
29 アーム部
30 鋼鈑
31 エアスライダー
32 荷重
33 ロードセル
34 保持器または軌道輪
35 第1層
36 最表層
37 中間層
Claims (9)
- 転がり軸受の軌道輪である内・外輪の間で軸受荷重を支持する転動体を回転自在に保持する保持器を備え、航空機に用いられる航空機用転がり軸受であって、
該航空機用転がり軸受は、前記保持器の表面を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなる複層被膜が形成されてなり、
前記第1層はフラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一つの充填材が配合された合成樹脂で構成され、前記第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で形成されることを特徴とする航空機用転がり軸受。 - 前記合成樹脂がポリイミド系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の航空機用転がり軸受。
- 前記ポリイミド系樹脂が、伸び率が 60〜120%であるポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項2記載の航空機用転がり軸受。
- 前記第2層以降の層を形成する合成樹脂に配合される固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、二硫化タングステンおよびポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
- 前記複層被膜の厚みが 1〜100μm であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
- 前記保持器の表面は前記複層被膜を形成する前において表面粗さRaが 0.3〜1.0μm であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
- 前記保持器と接触する軌道輪の表面粗さRaが 0.1μm 以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
- 前記複層被膜が保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
- 前記複層被膜が軌道輪の保持器案内面に形成され、該複層被膜の前記第1層が軌道輪の保持器案内面に直接被覆されることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
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