JP2009150256A - 航空機用転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの運転可能時間を十分に確保できる転がり軸受を提供する。
【解決手段】転がり軸受の軌道輪である内・外輪の間で軸受荷重を支持する転動体3を回転自在に保持する保持器4を備え、航空機に用いられる航空機用転がり軸受であって、該航空機用転がり軸受は、上記保持器4の表面を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなる複層被膜6が形成されてなり、上記第1層は充填材が配合された合成樹脂で構成され、上記第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ドライラン状態で高速回転するように使用される航空機用転がり軸受に関する。
航空機のエンジンや変速機等に組み込まれる転がり軸受は、航空機の飛行状態によっては、潤滑油の供給が遮断され、極少量の初期付着油のみが存在する、いわゆるドライラン状態で高速回転するように使用される場合がある。このようなドライラン状態で使用される転がり軸受は、一定時間焼付きを生じることなく運転可能であることが要求される。この一定時間は数十秒から数十分程度である。
上記ドライラン状態で高速回転するように使用される転がり軸受では、保持器の案内形式が軌道輪案内である場合が多く、転動接触する転動体と軌道輪の軌道面との間よりも、摺動接触する保持器と軌道輪の保持器案内面との間で焼付きを生じやすい。このような保持器と軌道輪の保持器案内面間での焼付きを防止する手段としては、保持器案内面となる外輪の内径面または内輪の外径面と摺接する保持器の外径面または内径面に、さらには転動体と接触する保持器のポケット面に自己潤滑性皮膜である銀めっき皮膜を形成する手段が知られている(例えば、非特許文献1参照)。最近では、自己潤滑性皮膜として、りん酸塩皮膜を形成する場合もある。また、無潤滑条件で使用する転がり軸受の保持器には四ふっ化エチレン樹脂を粉末を含有する無電解ニッケル複合めっき皮膜を形成したものがある(特許文献1参照)。
上述した保持器に形成した銀めっき皮膜は極めて優れたなじみ性や耐焼付き性を有しており、ドライラン状態で運転される転がり軸受の寿命を長くすることができる好ましい表面処理である。一方、これらの軸受を潤滑するための潤滑油には耐焼付き性や酸化劣化を向上させる目的で硫化油脂やジアルキルジチオりん酸亜鉛など硫黄を含む添加剤が配合されている。これらの添加剤は焼付きを防止する過程、ないしは潤滑油の酸化劣化を防止する過程で活性な硫黄化合物を生成する。これらの硫黄化合物が銀めっきと接触すると化学反応を起こし、硫化銀となり、この硫化銀が銀めっき皮膜の表面を被覆する。この硫化銀は銀と比べて脆く、皮膜が剥離したり、耐油性に劣ったりするため、潤滑油により皮膜が溶解する。その結果、銀めっき皮膜が消失した保持器と軌道輪との間の摩擦が増大し、焼付きが生じやすくなるという問題がある。
りん酸塩の自己潤滑性皮膜を形成した転がり軸受は、潤滑油が十分存在する場合は油を表面に保持しやすく摩擦を低減する効果を有するが、ドライランのような厳しい条件では直ちに摩滅し、短時間で効果を失う。また、四ふっ化エチレン樹脂粉末を含有する無電解ニッケル複合めっき皮膜は低速条件では無潤滑でも一定の性能を示すが航空機軸受のように高速で運転される場合には効果がないという問題がある。
転がり軸受工学編集委員会、「転がり軸受工学」、第3版、養賢堂、1978年1月、p.362 特開2004−332899号公報
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの運転可能時間を十分に確保できる転がり軸受を提供することを目的とする。
本発明の航空機用転がり軸受は、転がり軸受の軌道輪である内・外輪の間で軸受荷重を支持する転動体を回転自在に保持する保持器を備え、航空機に用いられる航空機用転がり軸受であって、該航空機用転がり軸受は、上記保持器の表面を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなる複層被膜が形成されてなり、上記第1層は充填材が配合された合成樹脂で構成され、上記第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で形成されることを特徴とする。
上記合成樹脂がポリイミド系樹脂であることを特徴とする。
また、上記ポリイミド系樹脂が、伸び率が 60%〜120%であるポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする。
上記第1層を形成する合成樹脂に配合される充填材が、フラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする。
また、上記第2層以降の層を形成する合成樹脂に配合される固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、二硫化タングステンおよびポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする。
また、上記複層被膜の厚みが 1μm〜100μm であることを特徴とする。
上記保持器の表面は上記複層被膜を形成する前において表面粗さRaが 0.3μm〜1.0μm であることを特徴とする。
また、上記保持器と接触する軌道輪の表面粗さRaが 0.1μm 以下であることを特徴とする。
また、上記複層被膜が保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されたことを特徴とする。
上記複層被膜が軌道輪の保持器案内面に形成され、該複層被膜の第1層が軌道輪の保持器案内面に直接被覆されることを特徴とする。
本発明の航空機用転がり軸受は、保持器に所定の複層被膜を形成しているため馴染み性に優れ、微量の付着油でも有効に活用できるため摩擦が低減できる。また、保持器の表面がこの複層被膜で被覆されていることで不活性であり潤滑油に添加されている硫黄系添加剤とも反応せず、使用中に被膜が消滅しないため、長期間にわたり優れた潤滑特性を維持できる。また、軌道輪と保持器の地肌との金属接触を防止して、ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの運転可能時間を十分に確保することができる。
特に、複層被膜を形成する合成樹脂がポリイミド系樹脂であり、第1層を形成する合成樹脂に配合される充填材が、フラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一つであり、第2層以降の層は合成樹脂、または所定の固体潤滑剤が配合された合成樹脂によって形成されるので、第1層が基材である保持器等との密着性に優れ、第2層以降が下地層との馴染み性に優れるとともに、耐剥離性や耐摩耗性に優れる。
また、上記被膜は、硫黄系添加剤を含有する潤滑油と接触しても、被膜の剥離や潤滑油への被膜成分の溶出を抑えることができ、従来の金属めっきよりも長期間保持器の潤滑性を維持することができる。
ドライラン状態で使用されても、焼付きなしでの運転可能時間を十分に確保できる航空機用転がり軸受について鋭意検討の結果、保持器の表面に被膜を形成する際、充填材が配合された合成樹脂で形成された被膜の上に、無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で形成された被膜を積層することで得られた複層被膜は、硫黄成分を含む潤滑油に浸漬しても膨潤や溶解が生じることなく安定であることがわかった。この複層被膜を表面に有する保持器を作製し、この保持器を航空機に用いられる転がり軸受に取り付けることで、ドライラン状態においても軌道輪と保持器の地肌との金属接触を防止でき、硫黄成分を含む潤滑油と接触しても金属成分の溶出が生じにくい航空機用転がり軸受を得ることが可能となった。本発明の航空機用転がり軸受はこのような知見に基づくものである。
以下、図面に基づき、本発明の航空機用転がり軸受の実施形態を説明する。図1は第1の実施形態を示す一部省略縦断面図である。この転がり軸受は、外輪1と内輪2との軌道輪間に複数のころ3を保持器4で保持した円筒ころ軸受であり、保持器4の外径面に摺接する外輪1の鍔1aの内径面が保持器案内面5とされ、保持器4の全表面に自己潤滑性を有する複層被膜6が形成されている。外輪1は軸受用鋼で形成されている。
複層被膜6は、保持器4の表面を直接被覆する第1層が充填材を配合した合成樹脂で構成され、第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤を配合した合成樹脂で形成されることで得られる複層被膜6である。
図2は第2の実施形態を示す一部省略縦断面図である。この転がり軸受は、外輪11と内輪12との軌道輪間に複数のボール13を保持器14で保持した玉軸受であり、保持器14の外径面に摺接する外輪11の内径面が保持器案内面15とされ、保持器14の全表面に自己潤滑性を有する複層被膜16が形成されている。この外輪11も軸受用鋼で形成されている。この複層被膜16も第1の実施形態と同様に構成されている複層被膜である。
図3は第3の実施形態を示す一部省略縦断面図である。この転がり軸受は、外輪21と内輪22との軌道輪間に複数のボール23を保持器24で保持したアンギュラ玉軸受であり、ボール23と内輪22および外輪21との接触点を結ぶ直線がラジアル方向に対して角度(接触角)αをもっており、ラジアル荷重のほかに一方向からのアキシャル荷重を負荷することができるものである。保持器24の外径面に摺接する外輪21の内径面が保持器案内面25とされ、保持器24の全表面に自己潤滑性を有する複層被膜26が形成されている。この外輪21および内輪22も軸受用鋼で形成されている。この複層被膜26も第1の実施形態と同様に構成されている複層被膜である。
なお、図1〜図3において複層被膜6、16、26は、保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されていればよい。また、該複層被膜6、16、26は、軌道輪の保持器案内面5、15、25にそれぞれ形成することも可能である。
本発明において複層被膜に使用できる合成樹脂としては、耐油性を有し、被膜としたときに被膜強度が強く、耐摩耗性に優れた材料であれは、特に限定されない。そのような例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フッ素樹脂、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等があげられる。これらの中でも好ましいものとして、芳香族ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂、エポキン樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等があげられる。これらの合成樹脂は、必要に応じて、繊維状や粒子状の各種充填材を配合することができる。
本発明において、特に好ましい合成樹脂は被膜形成能に優れるポリイミド系樹脂である。ポリイミド系樹脂は分子内にイミド結合を有するポリイミド樹脂、分子内にイミド結合とアミド結合とを有するポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の中でも、芳香族ポリイミド樹脂が好ましい。芳香族ポリイミド樹脂は、化1で示す繰返し単位を有する樹脂であり、化1で示す繰返し単位を有する樹脂の前駆体であるポリアミック酸も使用できる。R1 は芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体の残基であり、R2 は芳香族ジアミンまたはその誘導体の残基である。そのようなR1 またはR2 としては、フェニル基、ナフチル基、ジフェニル基、およびこれらがメチレン基、エーテル基、カルボニル基、スルホン基等の連結基で連結されている芳香族基が挙げられる。
Figure 2009150256
芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体の例としては、ピロメリット酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して用いられる。
芳香族ジアミンまたはその誘導体の例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエ-テル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニルエーテルなどのジアミン類またはジイソシアネート類が挙げられる。
上記芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体と、芳香族ジアミンまたはその誘導体との組み合わせで得られる芳香族ポリイミド樹脂の例としては、表1に示す繰返し単位を有するものが挙げられる。これらはR1 およびR2 にヘテロ原子を有しない樹脂である。
表1中の芳香族ポリイミド樹脂において、分子中に占める芳香環の比率が高いポリイミドCおよびポリイミドDが好ましく、特にポリイミドDが本発明に好適である。芳香族ポリイミド樹脂ワニスの市販品としては、例えば宇部興産社製:Uワニスが挙げられる。
Figure 2009150256
本発明に使用できるポリアミドイミド樹脂は高分子主鎖内にアミド結合とイミド結合とを有する樹脂であり、ポリカルボン酸またはその誘導体とジアミンまたはその誘導体との反応により得ることができる。
ポリカルボン酸としてはジカルボン酸、トリカルボン酸、およびテトラカルボン酸が挙げられ、ポリアミドイミド樹脂は、(1)ジカルボン酸およびトリカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(2)ジカルボン酸およびテトラカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(3)トリカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(4)トリカルボン酸およびテトラカルボン酸とジアミンとの組み合わせにより得られる。ポリカルボン酸とジアミンとはそれぞれ誘導体であってもよい。ポリカルボン酸の誘導体としては酸無水物、酸塩化物が挙げられ、ジアミンの誘導体としてはジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートはイソシアネート基の経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等が挙げられる。
また、ポリカルボン酸とジアミンとはそれぞれ芳香族および脂肪族化合物を用いることができる。本発明に使用できるポリアミドイミド樹脂は伸び率に優れたものが好ましく、芳香族化合物に脂肪族化合物を併用することが好ましい。
また、エポキシ化合物で変性することができる。
トリカルボン酸またはその誘導体の例としては、トリメリット酸無水物、2,2’,3-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,3’,4-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,3’,4-ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、1,2,5-ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3-ジカルボキシフェニルメチル安息香酸無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して用いられる。
これらの中で量産化されており、工業的利用のしやすさからトリメリット酸無水物が好ましい。
テトラカルボン酸またはその誘導体の例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-スルホニルジフタル酸二無水物、m-タ−フェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(2,3-または3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス[4-(2,3-または3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
ジカルボンまたはその誘導体の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸、ポリブタジエン系オリゴマーの両末端をカルボキシル基とした脂肪族ジカルボン酸(日本曹達社製:Nisso−PB、Cシリーズ、宇部興産社製:Hycar−RLP,CTシリーズ、Thiokol社製:HC−polymerシリーズ、General Tire社製:Telagenシリーズ、Phillips Petroleum社製:Butaretzシリーズ等)、カーボネートジオール類(ダイセル化学社製:PLACCEL、CD-205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HL)の水酸基当量以上のカルボキシル当量となるジカルボン酸を反応させて得られるエステルジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジアミンまたはその誘導体の例として、ジイソシアネートとしては、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4'-[2,2-ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネート、ビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、ビフェニル-3,3'-ジイソシアネート、ビフェニル-3,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジメチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジエチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジエチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水添m-キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、カーボネートジオール類(ダイセル化学社製:PLACCEL、CD-205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HL)の水酸基当量以上のイソシアネート当量となるジイソシアネートを反応させて得られるウレタンジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。
ジアミン類としては、ジメチルシロキサンの両末端にアミノ基が結合したシロキサンジアミン(シリコーンオイルX-22-161AS(アミン当量450)、X-22-161A(アミン当量840)、X-22-161B(アミン当量1500)、X-22-9409(アミン当量700)、X-22-1660B-3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業社製)、BY16-853(アミン当量650)、BY16-853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン社製))、両末端アミノ化ポリエチレン、両末端アミノ化ポリプロピレン等の両末端アミノ化オリゴマーや両末端アミノ化ポリマー、オキシアルキレン基を有するジアミン(ジェファーミンDシリーズ、ジェファーミンEDシリーズ、ジェファーミンXTJ-511、ジェファーミンXTJ-512、いずれもサンテクノケミカル社製)等が挙げられる。
芳香族ポリイミド樹脂と異なり、前駆体を経ることなく樹脂溶液の状態でアミド結合とイミド結合との繰返し単位を有するポリアミドイミド樹脂が本発明において特に好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂のジイソシアネート変性、BPDA変性、スルホン変性、ゴム変性樹脂を使用できる。ポリアミドイミド樹脂ワニスの市販品としては、例えば日立化成社製:HPC5020、HPC7200等が挙げられる。
本発明においてポリアミドイミド樹脂は、樹脂被膜の伸び率が 60〜120%のポリアミドイミド樹脂が好ましい。伸び率が 60%未満であると基材となる保持器等との密着性に劣り剥離しやすくなり、硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境下において被膜剥離または金属成分の溶出が生じやすくなる。伸び率が 120%をこえると耐熱性が低下したり潤滑油に膨潤しやすくなったりする。樹脂被膜の伸び率が 60〜120%のポリアミドイミド樹脂の市販品としては、例えば日立化成社製:HPC5020、HPC7200-30が挙げられる。
本発明においてポリアミドイミド樹脂被膜の伸び率は以下の方法で測定される。
ポリアミドイミド樹脂溶液を、アセトン脱脂後窒素ガスブローにより表面清浄化されたガラス基板上に塗布し、80℃で 30分、その後 150℃で 10分予備乾燥を行ない、最後にポリアミドイミド樹脂の分子構造に適した硬化温度で 30分乾燥する。硬化塗膜をガラス基板より剥離して 80 ± 8μm 厚さの樹脂フィルムを得て、このフィルムを 10 mm×60 mm の短冊状の試験片とし、チャック間距離 20 mm 、引張速度 5 mm/分で室温にて引張試験機により伸び率(%)を測定する。
本発明において複層被膜の第1層は充填材を配合することが必須であり、第2層以降は必要に応じて充填材を配合できる。複層被膜に対する充填材の配合割合は、各層の被膜全体に対して、0.1〜20 体積%、好ましくは 1〜10 体積%配合する。0.1 体積%未満では十分な被膜強化を得られないため耐剥離性を付与できず、また 20 体積%をこえると、逆に密着力が低下する。ここでいう充填材とはフラーレンや炭化ケイ素、酸化ケイ素などの無機微粒子等であり、粉末状のものを用いることができ、分散性や被膜の表面平滑性から、粒子径は 10μm 以下、好ましくは 5μm 以下である。
充填材として用いることができるフラーレンは、炭素五員環と六員環から構成され、球状に閉じた多様な多面体構造を有する炭素分子である。60 個の炭素原子が 12 個の五員環と 20 個の六員環とからなる球状の切頭正二十面体を構成する、いわゆるサッカーボール状の構造のC60 が挙げられ、同様に 70 個の炭素原子からなるC70 を含めた両者が代表的なフラーレンである。また、これらを反応させて多量体が得られる。本発明においては、フラーレンであれば球状、あるいは多量体のいずれも充填材として使用できる。
本発明において複層被膜の2層目以降は、無充填の合成樹脂または固体潤滑剤を配合した合成樹脂で形成する。摩擦係数の安定化や初期馴染み性を向上させる等必要に応じて配合される固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などが挙げられ、それぞれ粉末状のものを用いることができる。分散性や被膜の表面平滑性から、粒子径は 10μm 以下、好ましくは 5μm 以下である。複層被膜に対する固体潤滑剤の配合割合は、被膜全体に対して、0.5〜30 体積%、好ましくは 0.5〜20 体積%、より好ましくは 10〜20 体積%配合する。0.1 体積%未満では十分な摩擦摩耗特性を得ることができず、30 体積%をこえると被膜強度が極端に低下し、剥離や異常摩耗が発生する。
本発明において用いられる複層被膜の構成を図面に基づいて説明する。図5は複層被膜が2層である例を示す模式図である。図5に示すように複層被膜は保持器または軌道輪34を被覆し、充填材が配合された合成樹脂被膜である第1層35と、第1層35を被覆し、無充填の合成樹脂被膜または固体潤滑剤のみが配合された合成樹脂被膜である最表層36とからなる2層で構成される。
図6は複層被膜が3層である例を示す模式図である。複層被膜は2層での構成に限定されるものではなく、図6に示すように例えば保持器または軌道輪34を被覆する第1層35と、最表層36との間に最表層36よりも固体潤滑剤の配合量が少ない中間層37を形成し、固体潤滑剤の配合量を傾斜させることも可能である。
本発明の航空機用転がり軸受に用いる保持器の材料としては、特に限定されるものでなく、鉄系金属材料、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、樹脂材料を使用することができる。
鉄系金属材料としては、肌焼き鋼(SNCM、SCM)、冷間圧延鋼(SPCC)、熱間圧延鋼(SPHC)、炭素鋼(S25C〜S55C)、ステンレス鋼(SUS304〜SUS316)、軟鋼(SS400)、耐熱鋼(M50、M50Nilなど)等を使用できる。
保持器本体としては、軸受鋼、浸炭鋼、または機械構造用炭素鋼、を用いることができ、これらの中で耐熱性が高く高荷重に耐える剛性を有する浸炭鋼を調質して用いることが好ましい。浸炭鋼としては例えばSNCM等を挙げることができる。
また、銅系金属材料としては、銅−亜鉛合金(CAC301、鉄−シリコン−ブロンズ、HBsC1、HBsBE1、BSP1〜3)、銅−アルミニウム−鉄合金(AlBC1)等、アルミニウム系金属としてはアルミ−シリコン合金(ADC12)等を使用できる。
また、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂材料を使用することができる。樹脂材料に補強材としてガラス繊維や炭素繊維等を含有したものも使用できる。
本発明において複層被膜を、転がり軸受保持器用の被膜とする場合は、以下の2層からなる複層被膜を形成させる方法を例示できる。
まず、鉄系金属材料で形成された基材となる保持器を十分に洗浄し、表面の汚染を除去する。この洗浄方法としては、有機溶剤による浸漬洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄、酸・アルカリ洗浄等による方法が挙げられる。
1層目の被膜の密着性を向上させる目的で、基材に前処理としてショットブラスト(ショットピーニング、WPC等を含む)、化学的エッチング、りん酸塩被膜処理を施すことも可能である。基材の表面粗さはRa= 0.3〜1.0μm の範囲で設定することが好ましく、より好ましくはRa= 0.5〜1.0μm である。Ra= 0.3μm 未満であると、十分なアンカー効果を得ることができず、密着性を向上することができない。一方、基材の表面粗さが大きい場合は仕上がり表面が粗くなるが、研磨などの機械加工により表面粗さを小さく調整すれば保持器として使用可能となる。また、Ra= 0.5〜1.0μm であれば十分な密着性と機械加工を施すことなく小さな表面粗さを得ることが可能である。
次いで、スプレーコーティング法、ディップ(浸漬)コーティング法、静電塗装法、タンブラーコーティング法、電着塗装法等によって、第1層を保持器表面や軌道輪の保持器案内面に形成させた後、第2層を第1層の表面に形成する。複層被膜の厚さは、第1層は 0.5〜90μm であることが好ましく、より好ましくは 0.5〜20μm である。第2層は 0.5〜50μm であることが好ましく、より好ましくは 0.5〜10μm である。また、複層被膜全体として好ましい被膜の厚さは 1〜100μm であり、より好ましくは 1〜50μm、さらに好ましくは 1〜30μm である。
また、各層の被膜形成の過程で、余分に付着したワニスはふき取り、遠心分離、エアーブロー等の物理的、化学的方法により除去し、所望の厚さに調整することもできる。
2層目の被膜形成後は、加熱処理によって溶媒除去、乾燥、融解、架橋等を行ない、表面に複層被膜が形成された保持器を完成させる。膜厚を増す場合には、重ね塗りをしてもよい。また、複層被膜完成後に機械加工やタンブラー処理等を行なうことも可能である。
さらに、これら保持器や軌道輪の保持器案内面に施された複層被膜と接触する表面の粗さは小さいほうが好ましい。好ましい範囲はRa 0.1μm 以下であり、この範囲とすることにより複層被膜の耐久性を向上させることが可能となる。表面粗さを小さくする方法としてはラッピング、タンブラ、エアロラッピングなどを挙げることができる。
本発明の実施例と比較例に用いた材料を一括して示すと次のとおりである。[ ]内は表2に示す略称である。
(1)ポリアミドイミド樹脂ワニス[PAI]
日立化成工業社製:HPC-5020、伸び率:70 %
(2)芳香族ポリイミド樹脂ワニス[PI]
宇部興産社製:Uワニス-A
(3)混合フラーレン[ミックスフラーレン]
フロンティアカーボン社製:混合フラーレン、C60(直径:0.71 nm )が約 60 質量%、C70(長軸径:0.796 nm、短軸径:0.712 nm )が約 25 質量%で残部が高次フラーレンの混合物である。
(4)炭化ケイ素[SiC]
添川理化学社製:試薬、平均粒子径 1μm
(5)酸化ケイ素[SiO2
アドマテックス社製:アドマファインSO−C5 平均粒子径 1.6μm
(6)二硫化モリブデン粉末[MoS2
日本モリブデン社製:M5、平均粒子径 0.5μm
(7)二硫化タングステン粉末[WS2
日本潤滑剤社製:WS2A、平均粒子径 1μm
(8)ポリテトラフルオロエチレン粉末[PTFE]
喜多村社製:KD-1000ASディスパージョン(溶媒:N-メチル-2-ピロリドン)、平均粒子径 0.3μm
(9)黒鉛粉末[黒鉛]
ロンザ社製:KS-6、平均粒子径 6μm
実施例1〜実施例4、実施例6〜実施例9および比較例12 [複層被膜]
ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)の固形分に対し各種充填材を表2に記載の割合でボールミルで十分に均一分散するまで混合して、混合液を摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm×内径 20 mm×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )、ショットブラストにより表面粗さRa 0.7μm :図4の27〕の外径面にスプレー法にて2層からなる複層被膜をコーティングした。また、潤滑油浸漬試験用としてSPCC角棒( 3 mm×3 mm×20 mm )の表面にディッピング法により2層からなる複層被膜をコーティングした。
上記各試験片は1層目をコーティング後 100℃で 1 時間乾燥し、さらにその上に2層目をコーティングし、100℃で 1 時間、さらに 150℃で 1 時間乾燥し、250℃で 1 時間焼成した。なお、表2に記載の各成分の配合割合は固形分での割合でありすべて体積%である。
なお、フラーレンを配合したコーティング液は、トルエンとN-メチル-2-ピロリドンとの混合溶媒(混合質量比率 50:50 )にフラーレンを 5 質量%濃度で溶解させた濃縮液をあらかじめ用意し、これをポリアミドイミド樹脂ワニスに所定濃度となるよう添加し調製した。
上記処理によりリング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片を用いて以下に示す摩擦試験に供し、ドライラン状態での耐久性および試験後の被膜の状態を評価した。また得られた角棒状試験片を用いて以下に示す潤滑油浸漬試験に供し、潤滑油中に溶出した被膜成分の濃度を測定した。結果を表2に併記する。
<摩擦試験>
得られたリング状試験片を用いて摩擦試験を行なった。図4は摩擦試験機を示す図である。図4(a)は正面図を、図4(b)は側面図をそれぞれ表す。
回転軸28にリング状試験片27を取り付け、アーム部29のエアスライダー31に鋼鈑30を固定する。リング状試験片27は所定の荷重32を図面上方から印加されながら鋼鈑30〔SCM415浸炭焼入れ焼戻し処理品(Hv 700 、表面粗さ Ra 0.01μm )〕に回転接触する。リング状試験片27を回転させたときに発生する摩擦力はロードセル33により検出される。
潤滑油モービルベロシティオイルNo.3(エクソンモービル社製:VG2)をマイクロシリンジで 1μL 計量し、リング状試験片27に塗布した。この状態で、荷重 50 N 、滑り速度 1.0 m /秒の条件で摩擦試験を実施した。摩擦係数が 0.4 に達するまでの運転時間をドライラン状態での耐久性として評価した。また、所定時間経過後、リング状試験片27の外径面に形成された樹脂被膜の状態を目視により観察し、顕著な摩耗、剥離ともに認められないものを合格と評価し「○」、顕著な摩耗はないが剥離あるものを不十分と評価し「△」、摩耗大のものを不合格と評価し「×」の 3 段階で記録した。なお、試験時間は 60 分を上限とした。
<潤滑油浸漬試験>
得られた角棒状試験片を用いて潤滑油浸漬試験を行なった。被膜処理を施した角棒 3 本を 150℃の潤滑油〔ポリ-α-オレフィン油:ルーカントHL-10(三井化学社製)に代表的な酸化防止剤であるジチオりん酸亜鉛(LUBRIZOL社製:LUBRIZOL677A)を 1 質量%添加したもの〕 2.2 g に 200 時間浸漬した後、潤滑油中に溶出した被膜成分の濃度を測定した。濃度測定は、蛍光X線測定〔蛍光X線測定装置:Rigaku ZSX100e(リガク社製)〕により定量した。
実施例5 [複層被膜]
芳香族ポリイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)を用いて、表2に示す割合で1層目にはフラーレンを配合した被膜、2層目には二硫化モリブデンを配合した被膜をコーティングし、コーティング後の焼成温度を 350℃とする以外は実施例1と同様の方法で試験片を作製し、同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例1 [めっき2層]
実施例1において試験片に被膜を形成する代わりに、試験片に電気めっきにより下地として銅めっき(めっき厚: 5μm )を施し、さらに2層目に銀めっき(めっき厚: 20μm )を施し、リング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例2 [めっき単層]
実施例1において試験片に被膜を形成する代わりに、電気めっきにより銅めっき(めっき厚: 25μm )を施し、リング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例3 [めっき単層]
実施例1において試験片に被膜を形成する代わりに、無電解めっきにより四ふっ化エチレン樹脂粉末含有(20 質量%)ニッケルめっき(めっき厚: 20μm ):日本カニゼン−カニフロンを施し、リング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例4〜比較例11 [被膜単層]
ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)の固形分に対し各種充填材を表2に記載の割合でボールミルで十分に均一分散するまで混合して、混合液を摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm×内径 20 mm×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )、ショットブラストにより表面粗さRa 0.7μm :図4の27〕の外径面にスプレー法にてコーティングした。また、潤滑油浸漬試験用としてSPCC角棒( 3 mm×3 mm×20 mm )の表面にディッピング法によりコーティングした。コーティング後 100℃で 1 時間、さらに 150℃で 1 時間乾燥し、250℃で 1 時間焼成した。スプレー回数を調整し、被膜厚みが 25μm になるようにした。
なお、フラーレンを配合したコーティング液は、トルエンとN-メチル-2-ピロリドンとの混合溶媒(混合質量比率 50:50 )にフラーレンを 5 質量%濃度で溶解させた濃縮液をあらかじめ用意し、これをポリアミドイミド樹脂ワニスに所定濃度となるよう添加し調製した。
上記処理によりリング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例13 [複層被膜]
摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm×内径 20 mm×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )〕の表面粗さをRa 0.08μm に調整し、実施例1と同様の被膜を形成し、摩擦試験のみを行なった。結果を表2に併記する。
比較例14 [複層被膜]
実施例1で得たリング状試験片に対し、鋼鈑30(図4)〔SCM415浸炭焼入れ焼戻し処理品(Hv 700)〕の表面粗さ をRa 0.4μm とし、摩擦試験のみを行なった。結果を表2に併記する。
比較例15 [りん酸マンガン被膜単層]
摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm×内径 20 mm×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )〕の表面と、潤滑油浸漬試験用としてSPCC角棒( 3 mm×3 mm×20 mm )の表面とに、りん酸マンガン被膜(膜厚 3μm )処理を施し、リング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
Figure 2009150256
摩擦係数の経時変化の例として、実施例1、比較例1および比較例15については上記摩擦試験にて得られた摩擦係数の経時変化のデータを図7、図8および図9にそれぞれ示す。
表2からも明らかなように、所定の複層被膜とした実施例1〜実施例9では、1層目に充填材で補強した層を形成しているため剥離が発生せず、また、潤滑油浸漬試験においても潤滑油への溶出は見られなかった。さらに、2層目により摩擦が低減し、優れた耐久性を有していた。
一方、従来から用いられているAgめっきを施した比較例1はドライラン状態でも比較的長寿命であるが、潤滑油浸漬試験において潤滑油に溶出した。Cuめっきを施した比較例2は寿命、溶出性ともに劣った。四ふっ化エチレン樹脂粉末含有無電解ニッケルめっきを施した比較例3は潤滑油への溶出はないが、摩擦試験での寿命が短かった。合成樹脂を母材とする単層の被膜を形成した比較例4〜比較例11では、被膜が剥離、または摩耗するものが多く、焼付き寿命も短寿命となった。比較例12においては、実施例1と同じ組成の樹脂被膜を形成したにもかかわらず、被膜が薄いため長寿命を得ることができなかった。また、実施例1と同じ組成の樹脂被膜を形成した比較例13および比較例14でも、基材の表面粗さが小さかったり、相手鋼鈑の粗さが粗い場合には剥離や摩耗により短寿命となった。さらに、りん酸塩被膜を形成した比較例15でも耐久性は十分でなかった。
本発明の航空機用転がり軸受は、保持器に所定の複層被膜を形成しているため馴染み性に優れ、微量の付着油でも有効に活用できるため摩擦が低減し、さらに不活性であり潤滑油に添加されている硫黄系添加剤とも反応せず、使用中に消滅しないため長期間にわたり優れた潤滑特性を維持できる。このため、ドライラン状態で使用される航空機用転がり軸受として好適に利用できる。
第1の実施形態を示す一部省略縦断面図である。 第2の実施形態を示す一部省略縦断面図である。 第3の実施形態を示す一部省略縦断面図である。 摺動試験機を示す図である。 複層被膜が2層である例を示す模式図である。 複層被膜が3層である例を示す模式図である。 摩擦試験における実施例1の摩擦係数の経時変化を示す図である。 摩擦試験における比較例1の摩擦係数の経時変化を示す図である。 摩擦試験における比較例15の摩擦係数の経時変化を示す図である。
符号の説明
1、11、21 外輪
1a 鍔
2、12、22 内輪
3 ころ(転動体)
4、14、24 保持器
5、15、25 保持器案内面
6、16、26 複層被膜
13、23 ボール
27 リング状試験片
28 回転軸
29 アーム部
30 鋼鈑
31 エアスライダー
32 荷重
33 ロードセル
34 保持器または軌道輪
35 第1層
36 最表層
37 中間層

Claims (10)

  1. 転がり軸受の軌道輪である内・外輪の間で軸受荷重を支持する転動体を回転自在に保持する保持器を備え、航空機に用いられる航空機用転がり軸受であって、
    該航空機用転がり軸受は、前記保持器の表面を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなる複層被膜が形成されてなり、
    前記第1層は充填材が配合された合成樹脂で構成され、前記第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で形成されることを特徴とする航空機用転がり軸受。
  2. 前記合成樹脂がポリイミド系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の航空機用転がり軸受。
  3. 前記ポリイミド系樹脂が、伸び率が 60〜120%であるポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項2記載の航空機用転がり軸受。
  4. 前記第1層を形成する合成樹脂に配合される充填材が、フラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の航空機用転がり軸受。
  5. 前記第2層以降の層を形成する合成樹脂に配合される固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、二硫化タングステンおよびポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
  6. 前記複層被膜の厚みが 1〜100μm であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
  7. 前記保持器の表面は前記複層被膜を形成する前において表面粗さRaが 0.3〜1.0μm であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
  8. 前記保持器と接触する軌道輪の表面粗さRaが 0.1μm 以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
  9. 前記複層被膜が保持器表面の少なくとも軌道輪と接触する部位およびポケット面に形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
  10. 前記複層被膜が軌道輪の保持器案内面に形成され、該複層被膜の前記第1層が軌道輪の保持器案内面に直接被覆されることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項記載の航空機用転がり軸受。
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