JP2009052733A - 複層被膜および転がり軸受 - Google Patents

複層被膜および転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】機械部品の摺動表面に形成され、該機械部品との密着性や耐剥離性に優れ、かつ、潤滑油や大気等に含まれる硫黄成分によって劣化することのない複層被膜、および、この複層被膜を用いた転がり軸受を提供する。
【解決手段】機械部品の摺動表面に形成する複層被膜であって、該複層被膜は、上記機械部品の摺動表面を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなり、上記第1層は充填材が配合された合成樹脂で形成され、上記第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で形成される。転がり軸受1は複数の転動体3と、この転動体3を保持する保持器2とを備え、該保持器2の表面部位に上記複層被膜を形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は合成樹脂を含む複層被膜およびこの複層被膜を用いた転がり軸受、特に、硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境または硫黄系化合物を含む雰囲気で使用される転がり軸受に関する。
2サイクルエンジンは、混合気の燃焼により直線往復運動を行なうピストンと、回転運動を出力するクランク軸と、ピストンとクランク軸とを連結し、直線往復運動を回転運動に変換するコンロッドとを有する。
コンロッドは、直線状棒体の下方に大端部を、上方に小端部を設けたものからなる。クランク軸は、コンロッドの大端部に、ピストンとコンロッドを連結するピストンピンは、コンロッドの小端部に、それぞれ係合穴に取り付けられたころ軸受を介して回転自在に支持されている。回転軸を支持するころ軸受は、複数のころと、複数のころを保持する保持器とからなる。
上記したコンロッドの小端部および大端部に設けられた係合穴に取り付けられ、ピストンピンおよびクランク軸を支持するころ軸受は、軸受投影面積が小さいにもかかわらず、高荷重の負荷を受けることができ、かつ、高剛性である針状ころ軸受が使用される。ここで、針状ころ軸受は、複数の針状ころと、複数の針状ころを保持する保持器とを含む。保持器には、針状ころを保持するためのポケットが設けられ、各ポケットの間に位置する柱部で、各針状ころの間隔を保持する。コンロッドの小端部および大端部における針状ころ軸受は、針状ころの自転運動および公転運動により針状ころ軸受にかかる荷重を軽減するために、積極的に小端部および大端部に設けられた係合穴の内径面に保持器の外径面を接触させる外径案内で使用される。
一方、一般の転がり軸受は、内輪と外輪とシール材等とで軸受内部が密閉され、その軸受内部に転動体と保持器とが設けられ、グリースが充填され、そのグリースで転動体と保持器が常に潤滑される。それに対して、上記針状ころ軸受は、内輪と外輪とシール材等とを有しないので軸受内部が密閉されず、グリースをその軸受内部に充填することができない。そのため、上記針状ころ軸受の回転の際には、ポンプ等で潤滑油を摺動部に常に供給する必要がある。
上記ポンプ等は、上記針状ころ軸受の回転と同時に稼動を開始するので、回転開始直後は針状ころ軸受の全体に潤滑油がまだ行きわたっておらず、十分な潤滑がなされない。そのため、保持器と針状ころとの間に大きな摩擦が生じ、保持器や針状ころの表面が摩耗したり、保持器外径面と実機ハウジング内径面とが摩耗し、最悪の場合、両者が焼き付いたりするおそれがある。
そのため、上記針状ころ軸受の回転開始直後の摩耗や焼き付きを防止すべく、保持器の表面に潤滑性を有する被膜を予め形成する技術が提案されている。
例えば、浸炭処理で表面に硬化層を形成した鋼材からなる保持器の転動体の案内面に、硬質なダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCと記す)の被膜をスパッタ法等で形成し、さらに、銀等の軟質金属被膜を形成する方法が知られている(特許文献1参照)。この軟質金属被膜が保持器と針状ころの間の摩擦、および保持器外径面とハウジング内径面との摩擦を低減するので、潤滑が不十分な回転開始直後でも保持器や針状ころの焼き付きが防止でき、しかも、この軟質金属被膜が使用に伴い摩耗しても、その下地のDLC被膜が新たに露出し、そのDLC被膜が摩耗を阻止するとされている。
また、保持器の表面に上記軟質金属被膜をめっき法で直接形成する技術も提案されている。例えば、低炭素鋼の表面に約 25〜50μm の銀めっき被膜を形成する方法が知られている(特許文献2参照)。この銀めっき被膜が保持器と針状ころとの間、保持器外径面とハウジングとの間の摩擦を、それぞれ低減するので、上記と同様に、潤滑が不十分な回転開始直後でも焼き付きを防止できるとされている。さらに、銅めっき被膜も銀めっき被膜と同様に、保持器と針状ころとの間の摩擦を低減する作用を有するので、焼き付きを防止できるとされている。
しかしながら、特許文献1に示す方法では、軟質金属が摩耗して消失したあと硬質被膜が露出し、ハウジング内径部は硬質被膜と摺動することになる。この場合、保持器は摩耗しないが保持器表面の硬質被膜によりハウジング内径部が摩耗するおそれがある。また、製造の観点では保持器に浸炭処理を行ない、スパッタ装置でDLC被膜を形成し、軟質金属被膜を形成するので、作業工程が複雑で多くの工数を要する。しかも、スパッタ装置は高価で生産効率も良くないので、その装置を用いた処理はコストが嵩むという問題がある。
また、特許文献2に示す方法では、硫黄系添加剤を含有する潤滑系において、保持器表面に形成された銀めっき被膜が、潤滑油に含まれる硫黄成分と結合して硫化銀となり、この硫化銀が銀めっき被膜の表面を被覆する。この硫化銀は銀と比べて脆く、被膜が剥離したり、耐油性に劣ったりするため、潤滑油により被膜が溶解する。その結果、銀めっき被膜が消失した保持器外径面とハウジング内径面との間の摩擦が増大し、焼き付きが生じやすくなるという問題がある。また、銅めっき被膜も同様に、硫化銅が生成され、被膜の剥離や溶解により保持器の潤滑性が劣化するという問題がある。
特開2005−147306号公報 特開2002−195266号公報
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、機械部品の摺動表面に形成され、該機械部品との密着性や耐剥離性に優れ、かつ、潤滑油や大気等に含まれる硫黄成分によって劣化することのない複層被膜、および、この複層被膜を用いた転がり軸受の提供を目的とする。
本発明の複層被膜は、機械部品の摺動表面に形成する複層被膜であって、該複層被膜は、上記機械部品の摺動表面を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなり、上記第1層は充填材が配合された合成樹脂で形成され、上記第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で形成されることを特徴とする。なお、摺動表面とは、機械部品の表面であって、他部材と摺接する面である。
上記合成樹脂がポリイミド系樹脂であることを特徴とする。
また、上記第1層を形成する合成樹脂に配合される充填材が、フラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする。
また、上記第2層以降の層を形成する合成樹脂に配合される固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、二硫化タングステンおよびポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す)樹脂から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする。
本発明の転がり軸受は、複数の転動体と、この転動体を保持する保持器とを備え、硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境、または硫黄系化合物を含む雰囲気で使用される転がり軸受であって、上記保持器は、上記複層被膜を該保持器の表面部位に形成したことを特徴とする。
上記保持器が鉄系金属材料の成形体であることを特徴とする。また、上記転動体がころ形状を有することを特徴とする。また、上記ころ形状が針状ころ形状であることを特徴とする。
上記転がり軸受が、回転運動を出力するクランク軸を支持し、直線往復運動を回転運動に変換するコンロッドの大端部に設けられた係合穴に取り付けられることを特徴とする。
本発明の複層被膜は、機械部品の摺動表面に形成する複層被膜であって、該複層被膜は、機械部品の摺動表面を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなり、上記第1層が充填材が配合された合成樹脂で形成され、上記第2層以降の層が無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で形成されるので、被膜全体として馴染み性と耐剥離性を併せ持った被膜を得ることができる。
特に、合成樹脂がポリイミド系樹脂であり、第1層を形成する合成樹脂に配合される充填材が、フラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一つであり、第2層以降の層を形成する合成樹脂に固体潤滑剤が配合される場合、その固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、二硫化タングステンおよびPTFE樹脂から選ばれる少なくとも一つであるので、第1層が基材である機械部品との密着性に優れ、第2層以降が下地層との馴染み性に優れるとともに、耐剥離性や耐摩耗性に優れる。
本発明の転がり軸受は、複数の転動体と、この転動体を保持する保持器とを備えてなる転がり軸受であって、上記本発明の複層被膜を該保持器の表面部位に形成したので、硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境、または硫黄系化合物を含む雰囲気で使用しても、被膜の剥離や潤滑油への被膜成分の溶出を抑えることができ、従来の金属めっきよりも長期間保持器の潤滑性を維持することができる。
上記転動体がころ形状を有するので、高荷重の負荷を受けることができる。また、高剛性である針状ころ軸受を使用することにより、さらに高荷重の負荷を受けることができる。
本発明の転がり軸受は、回転運動を出力するクランク軸を支持し、直線往復運動を回転運動に変換するコンロッドの大端部に設けられた係合穴に取り付けられ、上記保持器の外径面で案内されるころ軸受であるので、上記複層被膜が従来の金属めっきよりも長期間保持器の潤滑性を維持でき、保持器外径面や係合穴内径面の摩耗が防止され、装置全体の長寿命化を図ることができる。
本発明の複層被膜に使用できる合成樹脂としては、耐油性を有し、被膜としたときに被膜強度が強く、耐摩耗性に優れた材料であれは、特に限定されない。そのような例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フッ素樹脂、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等があげられる。これらの中でも好ましいものとして、芳香族ポリアミドイミド樹脂、芳香族ポリイミド樹脂、エポキン樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等があげられる。これらの合成樹脂は、必要に応じて、繊維状や粒子状の各種充填材を配合することができる。
本発明において、特に好ましい合成樹脂は被膜形成能に優れるポリイミド系樹脂である。ポリイミド系樹脂は分子内にイミド結合を有するポリイミド樹脂、分子内にイミド結合とアミド結合とを有するポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の中でも、芳香族ポリイミド樹脂が好ましい。芳香族ポリイミド樹脂は、化1で示す繰返し単位を有する樹脂であり、化1で示す繰返し単位を有する樹脂の前駆体であるポリアミック酸も使用できる。R1 は芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体の残基であり、R2 は芳香族ジアミンまたはその誘導体の残基である。そのようなR1 またはR2 としては、フェニル基、ナフチル基、ジフェニル基、およびこれらがメチレン基、エーテル基、カルボニル基、スルホン基等の連結基で連結されている芳香族基が挙げられる。
Figure 2009052733
芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体の例としては、ピロメリット酸二無水物、2,2´,3,3´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して用いられる。
芳香族ジアミンまたはその誘導体の例としては、4,4´-ジアミノジフェニルエ-テル、3,3´-ジアミノジフェニルスルホン、4,4´-ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニルエーテルなどのジアミン類またはジイソシアネート類が挙げられる。
上記芳香族テトラカルボン酸またはその誘導体と、芳香族ジアミンまたはその誘導体との組み合わせで得られる芳香族ポリイミド樹脂の例としては、表1に示す繰返し単位を有するものが挙げられる。これらはR1 およびR2 にヘテロ原子を有しない樹脂である。
表1中の芳香族ポリイミド樹脂において、分子中に占める芳香環の比率が高いポリイミドCおよびポリイミドDが好ましく、特にポリイミドDが本発明に好適である。芳香族ポリイミド樹脂ワニスの市販品としては、例えば宇部興産社製Uワニスが挙げられる。
Figure 2009052733
本発明に使用できるポリアミドイミド樹脂は高分子主鎖内にアミド結合とイミド結合とを有する樹脂であり、ポリカルボン酸またはその誘導体とジアミンまたはその誘導体との反応により得ることができる。
ポリカルボン酸としてはジカルボン酸、トリカルボン酸、およびテトラカルボン酸が挙げられ、ポリアミドイミド樹脂は、(1)ジカルボン酸およびトリカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(2)ジカルボン酸およびテトラカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(3)トリカルボン酸とジアミンとの組み合わせ、(4)トリカルボン酸およびテトラカルボン酸とジアミンとの組み合わせにより得られる。ポリカルボン酸とジアミンとはそれぞれ誘導体であってもよい。ポリカルボン酸の誘導体としては酸無水物、酸塩化物が挙げられ、ジアミンの誘導体としてはジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートはイソシアネート基の経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等が挙げられる。
また、ポリカルボン酸とジアミンとはそれぞれ芳香族および脂肪族化合物を用いることができる。本発明に使用できるポリアミドイミド樹脂は伸び率に優れたものが好ましく、芳香族化合物に脂肪族化合物を併用することが好ましい。
また、エポキシ化合物で変性することができる。
トリカルボン酸またはその誘導体の例としては、トリメリット酸無水物、2,2´,3-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,3´,4-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,3´,4-ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、1,2,5-ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3-ジカルボキシフェニルメチル安息香酸無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して用いられる。
量産化されており、工業的利用のしやすさからトリメリット酸無水物が好ましい。
テトラカルボン酸またはその誘導体の例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-スルホニルジフタル酸二無水物、m-タ−フェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-または3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス[4-(2,3-または3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-[2,2,2]-オクト-7-エン-2:3:5:6-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
ジカルボンまたはその誘導体の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸、ポリブタジエン系オリゴマーの両末端をカルボキシル基とした脂肪族ジカルボン酸(日本曹達社製 Nisso−PB,Cシリーズ、宇部興産社製 Hycar−RLP,CTシリーズ、Thiokol社製 HC−polymerシリーズ、General Tire社製 Telagenシリーズ、Phillips Petroleum社製 Butaretzシリーズ等)、カーボネートジオール類(ダイセル化学社製 PLACCEL、CD-205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HL)の水酸基当量以上のカルボキシル当量となるジカルボン酸を反応させて得られるエステルジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジアミンまたはその誘導体の例として、ジイソシアネートとしては、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4'-[2,2-ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネート、ビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、ビフェニル-3,3'-ジイソシアネート、ビフェニル-3,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジメチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジエチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジエチルビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、3,3'-ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、2,2'-ジメトキシビフェニル-4,4'-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水添m-キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、カーボネートジオール類(ダイセル化学社製PLACCEL、CD-205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HL)の水酸基当量以上のイソシアネート当量となるジイソシアネートを反応させて得られるウレタンジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。
ジアミン類としては、ジメチルシロキサンの両末端にアミノ基が結合したシロキサンジアミン(シリコーンオイルX-22-161AS(アミン当量450)、X-22-161A(アミン当量840)、X-22-161B(アミン当量1500)、X-22-9409(アミン当量700)、X-22-1660B-3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業社製)、BY16-853(アミン当量650)、BY16-853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン社製))、両末端アミノ化ポリエチレン、両末端アミノ化ポリプロピレン等の両末端アミノ化オリゴマーや両末端アミノ化ポリマー、オキシアルキレン基を有するジアミン(ジェファーミンDシリーズ、ジェファーミンEDシリーズ、ジェファーミンXTJ-511、ジェファーミンXTJ-512、いずれもサンテクノケミカル社製)等が挙げられる。
芳香族ポリイミド樹脂と異なり、前駆体を経ることなく樹脂溶液の状態でアミド結合とイミド結合との繰返し単位を有するポリアミドイミド樹脂が本発明において特に好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂のジイソシアネート変性、BPDA変性、スルホン変性、ゴム変性樹脂を使用できる。ポリアミドイミド樹脂ワニスの市販品としては、例えば日立化成社製HPC5020、HPC7200等が挙げられる。
本発明においてポリアミドイミド樹脂は、樹脂被膜の伸び率が 60〜120%のポリアミドイミド樹脂が好ましい。伸び率が 60%未満であると基材である機械部品との密着性に劣り剥離しやすくなり、硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境下において被膜剥離または金属成分の溶出が生じやすくなる。伸び率が 120%をこえると耐熱性が低下したり潤滑油に膨潤しやすくなったりする。樹脂被膜の伸び率が 60〜120%のポリアミドイミド樹脂の市販品としては、例えば日立化成社製HPC7200-30が挙げられる。
本発明においてポリアミドイミド樹脂被膜の伸び率は以下の方法で測定される。
ポリアミドイミド樹脂溶液を、アセトン脱脂後窒素ガスブローにより表面清浄化されたガラス基板上に塗布し、80 ℃で 30分、その後 150℃で 10分予備乾燥を行ない、最後にポリアミドイミド樹脂の分子構造に適した硬化温度で 30分乾燥する。硬化塗膜をガラス基板より剥離して 80 ± 8μm 厚さの樹脂フィルムを得て、このフィルムを 10 mm×60 mm の短冊状の試験片とし、チャック間距離 20 mm 、引張速度 5 mm/分で室温にて引張試験機により伸び率(%)を測定する。
本発明の複層被膜において、第1層は充填材を配合することが必須であり、第2層以降は必要に応じて充填材を配合できる。複層被膜に対する充填材の配合割合は、各層の被膜全体に対して、0.1〜20 体積%、好ましくは 0.5〜10 体積%配合する。0.1 体積%未満では十分な被膜強化を得られないため耐剥離性を付与できず、また 20 体積%をこえると、逆に密着力が低下する。ここでいう充填材とはフラーレンや炭化ケイ素、酸化ケイ素などの無機微粒子等であり、粉末状のものを用いることができ、分散性や被膜の表面平滑性から、粒径は 10μm 以下、好ましくは 5μm 以下である。
本発明の複層被膜は、2層目以降は必要に応じ固体潤滑剤を配合し、その固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛、PTFE樹脂などが挙げられ、それぞれ粉末状のものを用いることができる。分散性や被膜の表面平滑性から、粒径は 10μm 以下、好ましくは 5μm 以下である。複層被膜に対する固体潤滑剤の配合割合は、被膜全体に対して、0.5〜30 体積%、好ましくは 0.5〜15 体積%配合する。0.1 体積%未満では十分な摩擦摩耗特性を得ることができず、30 体積%をこえると被膜強度が極端に低下し、剥離や異常摩耗が発生する。
本発明の複層被膜の構成を図面に基づいて説明する。図4は本発明の複層被膜が2層である例を示す模式図である。図4に示すように複層被膜は機械部品25を被覆し、充填材が配合された合成樹脂被膜である第1層26と、第1層26を被覆し、充填材と固体潤滑剤または固体潤滑剤のみが配合された合成樹脂被膜である最表層27とからなる2層で構成される。
図5は本発明の複層被膜が3層である例を示す模式図である。複層被膜は2層での構成に限定されるものではなく、図5に示すように例えば機械部品25を被覆する第1層26と、最表層27との間に最表層27よりも固体潤滑剤の配合量が少ない中間層28を形成し、固体潤滑剤の配合量を傾斜させることも可能である。
上記本発明の複層被膜を、硫黄成分を含む潤滑油と接触する環境下または硫黄系化合物を含む雰囲気下において溶出が生じにくい被膜として、転がり軸受に適用する場合について説明する。該転がり軸受について鋭意検討の結果、密着性と耐熱性とに優れたポリイミド系樹脂被膜等は、硫黄成分を含む潤滑油に浸漬しても膨潤したり、溶解したりすることなく、そのため耐硫化性の低い金属であっても表面にポリイミド系樹脂被膜等を形成することにより、潤滑油中への金属溶出が生じにくいことがわかった。このため、ポリイミド系樹脂被膜等を表面に有する保持器を作製し、この保持器を取り付けることにより硫黄成分を含む潤滑油と接触する環境下において溶出が生じにくい被膜を有する転がり軸受を得ることが可能となった。
本発明の転がり軸受の使用態様を図面に基づいて説明する。図1は本発明の転がり軸受として針状転がり軸受を使用した2サイクルエンジンの縦断面図である。図1に示すように2サイクルエンジンは、ガソリンと、エンジンオイルである潤滑油とを混合した混合気の燃焼により直線往復運動を行なうピストン8と、回転運動を出力するクランク軸6と、ピストン8とクランク軸6とを連結し、直線往復運動を回転運動に変換するコンロッド7とを有する。クランク軸6は、回転中心軸12を中心に回転し、バランスウェイト13によって回転のバランスをとっている。
コンロッド7は、直線状棒体の下方に大端部15を、上方に小端部16を設けたものからなる。クランク軸6は、コンロッド7の大端部15の係合穴に取り付けられた針状ころ軸受1aを介して回転自在に支持されている。また、ピストン8とコンロッド7を連結するピストンピン14は、コンロッド7の小端部16の係合穴に取り付けられた針状ころ軸受1bを介して回転自在に支持されている。
ガソリンと潤滑油とを混合した混合気は、吸気孔9からクランク室5へ送り込まれてから、ピストン8の上下動作に応じてシリンダ4の上方の燃焼室11へ導かれ燃焼される。燃焼された排気ガスは排気孔10から排出される。
図2は本発明の転がり軸受の一実施例である針状ころ軸受を示す斜視図である。図2に示すように、針状ころ軸受1は複数の針状ころ3と、この針状ころ3を一定間隔、もしくは不等間隔で保持する保持器2とで構成される。内輪および外輪は設けられず、直接に、保持器3の内径側にクランク軸6やピストンピン14等の軸が挿入され、保持器3の外径側がハウジングであるコンロッド7の係合穴に嵌め込まれる(図1参照)。内外輪を有さず、長さに比べて直径が小さい針状ころ3を転動体として用いるので、この針状ころ軸受1は、内外輪を有する一般の転がり軸受に比べて、コンパクトなものとなる。
保持器2には、針状ころ3を保持するためのポケット2aが設けられ、各ポケットの間に位置する柱部2bで、各針状ころ3の間隔を保持する。保持器2の表面部位には上述のポリイミド系樹脂からなる複層被膜が形成されている。この被膜を形成する保持器の表面部位は潤滑油と接触する部位であり、針状ころ3と接触するポケット2aの表面を含めた保持器2の全表面が好ましい。
また、保持器2の表面部位に加えて転動体である針状ころ3の表面またはコンロッド内径面7にも同様の被膜を形成することができる。
本発明において転がり軸受に用いる転動体は、ころ形状を有するので、本発明の転がり軸受は上記コンロッドの小端部および大端部に設けられた係合穴に取り付けられ、ピストンピンおよびクランク軸を支持することができ、軸受投影面積が小さいにもかかわらず、高荷重の負荷を受けることができる。
本発明の転がり軸受は、回転運動を出力するクランク軸を支持し、直線往復運動を回転運動に変換するコンロッドの大端部に設けられた係合穴に取り付けられ、上記被膜を有する保持器の外径面で案内されるころ軸受であるので、被膜の剥離や潤滑油への金属の溶出がほとんどなく、従来の金属めっきよりも長期間保持器の潤滑性を維持することができ、保持器外径面や係合穴内径面の摩耗が防止され、装置全体の長寿命化を図ることができる。
また、本発明の転がり軸受は、図1で示したように、直線往復運動を出力するピストンピンを支持し、直線往復運動を回転運動に変換するコンロッドの小端部に設けられた係合穴に取り付けることもできる。
本発明の転がり軸受は、硫黄系添加剤を配合した潤滑油に接触する環境下などにおいて適用可能である。潤滑油に接触する環境としては、例えば上記したように、転がり軸受が2サイクルまたは4サイクルエンジンのコンロッドに取付けられて、ガソリンとエンジンオイルである潤滑油とを混合した混合気またはエンジンオイルに接触する場合や、転がり軸受の保持器ポケット部等への注油等により接触する場合が挙げられる。
硫黄系添加剤とは、硫黄系化合物を含む添加剤であり、この添加剤種類としては、酸化防止剤、防錆剤、極圧剤、清浄分散剤、金属不活性剤、摩耗防止剤などが挙げられる。
硫黄系化合物を含む添加剤が添加される潤滑油としては、鉱油、合成油、エステル油、エーテル油などが挙げられる。
硫黄系化合物としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(以下、ZnDTPと記す)、ジアリルジチオリン酸亜鉛等のチオリン酸塩、硫化テルペン、フェノチアジン、メルカプトベンゾチアゾール、石油スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリブテン-P25 反応生成物塩、有機スルホン酸のアンモニウム塩、アルカリ土類金属の有機スルホン酸塩、1-メルカプトステアリン酸等のメルカプト脂肪酸類あるいはその金属塩、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、2-メルカプトチアジアゾール等のチアゾール類、2-(デシルジチオ)-ベンズイミダゾール、2,5-ビス(ドデシルジチオ)-ベンズイミダゾール等のジスルフィド系化合物、ジラウリルチオプロピオネート等のチオカルボン酸エステル系化合物、二硫化ジベンジル、二硫化ジフェニル、硫化スパーム油などの硫化油脂、硫化オレフィン、硫化脂肪エステルなどの硫化エステル、ジベンジルジサルファイド、アルキルポリサルファイド、オレフィンポリサルファイド、ザンチックサルファイド等のサルファイド、カルシウムスルホネート、マグネシウムスルホネート、アルキルジチオリン酸アミン等を挙げることができる。
上記硫黄系化合物の中でコンロッド用のころ軸受に影響を与えやすい化合物はZnDTPである。
本発明において「硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境下において剥離または溶出が生じにくい」とは、例えば、3 mm×3 mm×20 mm の寸法(表面積 258 mm2 )を有するSCM415製試験片に上記被膜を形成したもの 3 個をZnDTPを 1 質量%含有させたポリ-α-オレフィン 2.2 g 中に 150℃にて 200 時間浸漬処理したときに、試験片から上記潤滑油中に溶出する被膜成分量が蛍光X線測定装置による測定にて、潤滑油中で 200 ppm 以下であることをいう。
転がり軸受に用いる保持器の材料としては、特に限定されるものでなく、鉄系金属材料、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、樹脂材料を使用することができる。
鉄系金属材料としては、肌焼き鋼(SCM)、冷間圧延鋼(SPCC)、熱間圧延鋼(SPHC)、炭素鋼(S25C〜S55C)、ステンレス鋼(SUS304〜SUS316)、軟鋼(SS400)等を使用できる。
保持器本体としては、軸受鋼、浸炭鋼、または機械構造用炭素鋼を用いることができ、これらの中で耐熱性が高く高荷重に耐える剛性を有する浸炭鋼を用いることが好ましい。浸炭鋼としては例えばSCM415等を挙げることができる。
また、銅系金属材料としては、銅-亜鉛合金(HBsC1、HBsBE1、BSP1〜3)、銅-アルミニウム-鉄合金(AlBC1)等、アルミニウム系金属としてはアルミ-シリコン合金(ADC12)等を使用できる。
また、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂材料を使用することができる。樹脂材料に補強材としてガラス繊維や炭素繊維等を含有したものも使用できる。
本発明の複層被膜を、転がり軸受保持器用の被膜とする場合は、以下の2層からなる被膜を形成させる方法を例示できる。
まず、鉄系金属材料で形成された基材である保持器を十分に洗浄し、表面の汚染を除去する。この洗浄方法としては、有機溶剤による浸漬洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄、酸・アルカリ洗浄等による方法が挙げられる。
被膜の密着性を向上させる目的で、前処理としてショットブラスト(ショットピーニング、WPC等を含む)、化学的エッチング、リン酸塩被膜処理を施すことも可能である。基材の表面粗さはRa=0.3 以上の範囲で設定することが可能であり、好ましくはRa=0.5〜1.0 である。Ra=0.3 未満であると、十分なアンカー効果を得ることができず、密着性を向上することができない。一方、基材の表面粗さが大きい場合は仕上がり表面が粗くなるが、研磨などの機械加工により表面粗さを小さく調整すれば保持器として使用可能となる。また、Ra=0.5〜1.0 であれば十分な密着性と機械加工を施すことなく小さな表面粗さを得ることが可能である。
次いで、スプレーコーティング法、ディップ(浸漬)コーティング法、静電塗装法、タンブラーコーティング法、電着塗装法等によって、第1層を保持器表面に形成させた後、第2層を第1層の表面に形成する。複層被膜の厚さは第1層が 0.5〜90μm 、好ましくは 0.5〜30μm 、第2層が 0.5〜50μm 、好ましくは 0.5〜20μm である。また被膜全体として好ましい被膜の厚さは、1〜100μm 、より好ましくは 1〜50μm である。また、被膜形成の過程で、余分に付着したワニスはふき取り、遠心分離、エアブロー等の物理的、化学的方法により除去し、所望の厚さに調整することもできる。
被膜形成後は、加熱処理によって溶媒除去、乾燥、融解、架橋等を行ない、表面に被膜が形成された保持器を完成させる。膜厚を増す場合には、重ね塗りをしてもよい。また、被膜完成後に機械加工やタンブラー処理等を行なうことも可能である。
本発明に係る転がり軸受の形式は、ラジアル軸受、スラスト軸受のいずれの場合であってもよい。また、転動体の形状は特に限定されないが、特に上記ころ形状、針状ころ形状の場合に、この発明の効果をより享受することができる。上記ころ形状には円筒形の他、円すいころ、球面ころなどが含まれる。
また、本発明に係る転がり軸受は、上記コンロッド用や、圧縮機、特にエアコンやカーエアコン等の空気調和機用の圧縮機など、希薄な潤滑条件で使用される転がり軸受に好適に使用できる。
本発明の実施例と比較例に用いた材料を一括して示すと次のとおりである。[ ]内は表2に示す略称である。
(1)ポリアミドイミド樹脂ワニス[PAI]
日立化成工業社製HPC-5020、伸び率:70 %
(2)芳香族ポリイミド樹脂ワニス[PI]
宇部興産社製Uワニス-A
(3)混合フラーレン[ミックスフラーレン]
フロンティアカーボン社製混合フラーレン、C60(直径:0.71 nm )が約 60 質量%、C70(長軸径:0.796 nm、短軸径:0.712 nm )が約 25 質量%で残部が高次フラーレンの混合物である。
(4)炭化ケイ素[SiC]
添川理化学社製試薬、平均粒径 1μm
(5)酸化ケイ素[SiO2
アドマテックス社製 アドマファインSO−C5 平均粒径 1.6μm
(6)二硫化モリブデン粉末[MoS2−0.5μm ]
日本モリブデン社製M5、平均粒径 0.5μm
(7)二硫化タングステン粉末[WS2−1μm ]
日本潤滑剤社製WS2A、平均粒径 1μm
(8)ポリテトラフルオロエチレン粉末[PTFE−0.3μm ]
喜多村社製KD-1000ASディスパージョン(溶媒:NMP)、平均粒径 0.3μm
実施例1〜実施例4、実施例6〜実施例8および比較例9[樹脂2層]
ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)の固形分に対し各種充填材を表2に記載の割合でボールミルで十分に均一分散するまで混合して、混合液を摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm ×内径 20 mm ×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )、ショットブラストにより表面粗さRa 0.7 μm :図3の17〕の外径面にスプレー法にて2層からなる被膜をコーティングした。また、潤滑油浸漬試験用としてSPCC角棒( 3 mm×3 mm×20 mm )の表面にディッピング法により2層からなる被膜をコーティングした。
上記各試験片は 1 層目をコーティング後 100℃で 1 時間乾燥し、さらにその上に 2 層目をコーティングし、100℃で 1 時間、さらに 150℃で 1 時間乾燥し、250℃で 1 時間焼成した。なお、表2に記載の各成分の配合割合は固形分での割合でありすべて体積%である。被膜の厚さは 1 層目が 20μm、2 層目が 10μmとなるように各試験片に形成した。
なお、フラーレンを配合したコーティング液は、トルエンとN-メチル-2-ピロリドンとの混合溶媒(混合質量比率 50:50 )にフラーレンを 5 質量%濃度で溶解させた濃縮液をあらかじめ用意し、これをポリアミドイミド樹脂ワニスに所定濃度となるよう添加し調製した。
上記処理によりリング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片を用いて以下に示す摩擦試験に供し、摩擦係数と試験後の被膜の状態を評価した。また得られた角棒状試験片を用いて以下に示す潤滑油浸漬試験に供し、潤滑油中に溶出した被膜成分の濃度を測定した。結果を表2に併記する。
<摩擦試験>
得られたリング状試験片を用いて摺動試験を行なった。図3は摺動試験機を示す図である。図3(a)は正面図を、図3(b)は側面図をそれぞれ表す。
回転軸18にリング状試験片17を取り付け、アーム部19のエアスライダー21に鋼鈑20を固定する。リング状試験片17は所定の荷重22を図面上方から印加されながら鋼鈑20に回転接触すると共に潤滑油が含浸されたフェルトパッド24より潤滑油がリング状試験片17の外径面に供給される。リング状試験片17を回転させたときに発生する摩擦力はロードセル23により検出される。また、所定時間経過後、リング状試験片17の外径面に形成されたポリアミドイミド樹脂塗膜の状態は目視により、〇:顕著な摩耗および剥離なし、△:顕著な摩耗はないが剥離あり、の 2 段階で表記した。
鋼鈑20はSCM415浸炭焼入れ焼戻し処理品(Hv 700 、表面粗さ Ra 0.01μm )を、潤滑油はモービルベロシティオイルNo.3(VG2、エクソンモービル社製)をそれぞれ用いた。荷重は 50 N 、滑り速度は 5.0 m /秒、試験時間は 30 分である。摩擦係数は試験終了前 10 分間の平均値として表した。
<潤滑油浸漬試験>
また、得られた角棒状試験片を用いて潤滑油浸漬試験を行なった。被膜処理を施した角棒 3 本を 150 ℃の潤滑油〔ポリ-α-オレフィン:ルーカントHL-10(三井化学社製)にZnDTP(LUBRIZOL677A、LUBRIZOL社製)を 1 質量%添加したもの〕 2.2 g に 200 時間浸漬した後、潤滑油中に溶出した被膜成分の濃度を測定した。濃度測定は、蛍光X線測定〔蛍光X線測定装置:Rigaku ZSX100e(リガク社製)〕により定量した。
実施例5[樹脂2層]
芳香族ポリイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)を用いて、表2に示す割合で 1 層目にはフラーレンを配合した被膜、2 層目には二硫化モリブデンを配合した被膜をコーティングし、コーティング後の焼成温度を 350℃とする以外は実施例1と同様の方法で試験片を作製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例1[めっき2層]
実施例1において試験片に被膜を形成する代わりに、試験片に電気めっきにより下地として銅めっき(めっき厚:5μm)処理を施し、さらに 2 層目に銀めっき(めっき厚:20μm)処理を施し、リング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例2[めっき単層]
実施例1において試験片に被膜を形成する代わりに、電気めっきにより銅めっき(めっき厚: 25 μm )を施し、リング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
比較例3〜比較例8[樹脂単層]
ポリアミドイミド樹脂ワニス(溶剤:N-メチル-2-ピロリドン)の固形分に対し各種充填材を表2に記載の割合でボールミルで十分に均一分散するまで混合して、混合液を摩擦試験用SUJ2リング〔外径 40 mm ×内径 20 mm ×厚さ 10 mm (副曲率R 60 )、ショットブラストにより表面粗さRa 0.7 μm :図3の17〕の外径面にスプレー法にてコーティングした。また、潤滑油浸漬試験用としてSPCC角棒( 3 mm×3 mm×20 mm )の表面にディッピング法によりコーティングした。コーティング後 100 ℃で 1 時間、さらに 150℃で 1 時間乾燥し、250℃で 1 時間焼成した。スプレー回数を調整し、被膜厚みが 20〜30μm になるようにした。
なお、フラーレンを配合したコーティング液は、トルエンとN-メチル-2-ピロリドンとの混合溶媒(混合質量比率 50:50 )にフラーレンを 5 質量%濃度で溶解させた濃縮液をあらかじめ用意し、これをポリアミドイミド樹脂ワニスに所定濃度となるよう添加し調製した。
上記処理によりリング状試験片および角棒状試験片を得た。得られたリング状試験片および角棒状試験片を実施例1と同様に評価した。結果を表2に併記する。
Figure 2009052733
表2に示す結果から明らかなように、従来から使用されている金属めっきである比較例1および比較例2は潤滑油浸漬試験において潤滑油に溶出する。特に、比較例2は銅めっきの溶出が多い結果となった。充填材で強化した層を含まない樹脂被膜を形成した比較例3および比較例5〜比較例7は潤滑油への溶出もなく摩擦係数も小さいが、摩擦試験中に剥離を生じた。逆に充填材で強化した層のみの樹脂被膜を形成した比較例4(フラーレンのみ)は摩擦試験中の剥離はないものの、樹脂単体(比較例3)に比べ摩擦係数が増加し、比較例8(SiCのみ)は相手材への攻撃性が強く、相手材の摩耗が大きかった。比較例9は 1 層目にMoS2 を添加した層である剥離が発生し、さらに2層目はフラーレンを添加した層で形成されているため、比較例4と同様に摩擦係数が高い結果となった。
一方、実施例1〜実施例8は、1層目に充填材で補強した層を形成しているため剥離が発生せず、また、潤滑油浸漬試験においても潤滑油への溶出は見られなかった。さらに、2層目により低摩擦係数であり、優れたなじみ性を有していた。
本発明の複層被膜は、充填材を配合した第1層の樹脂被膜(芳香族ポリイミド系)と、無充填または固体潤滑剤を配合した表層の樹脂被膜(芳香族ポリイミド系)とからなるので、例えば、該複層被膜を転がり軸受の保持器に形成すると、保持器との密着性に優れ、かつ、保持器と軌道輪の接触による摩擦が小さく摩耗や剥離もないため、焼付きが発生しがたく、長寿命、高信頼性が得られる。そのため、潤滑油が希薄にしか存在しない過酷な条件下において使用される転がり軸受の保持器に好適に利用できる。
本発明の転がり軸受を使用した2サイクルエンジンの縦断面図である。 本発明の転がり軸受の一実施例である針状ころ軸受を示す斜視図である。 摺動試験機を示す図である。 本発明の複層被膜が2層である例を示す模式図である。 本発明の複層被膜が3層である例を示す模式図である。
符号の説明
1 針状ころ軸受(転がり軸受)
1a 針状ころ軸受
1b 針状ころ軸受
2 保持器
2a ポケット部
2b 柱部
3 針状ころ(転動体)
4 シリンダ
5 クランク室
6 クランク軸
7 コンロッド
8 ピストン
9 吸気孔
10 排気孔
11 燃焼室
12 回転中心軸
13 バランスウェイト
14 ピストンピン
15 大端部
16 小端部
17 リング状試験片
18 回転軸
19 アーム部
20 鋼鈑
21 エアスライダー
22 荷重
23 ロードセル
24 フェルトパッド
25 機械部品
26 第1層
27 最表層
28 中間層

Claims (10)

  1. 機械部品の摺動表面に形成する複層被膜であって、該複層被膜は、前記機械部品の摺動表面を直接被覆する第1層と、第(n−1)層を被覆する第n層(ただし、nは2以上の整数)とからなり、
    前記第1層は充填材が配合された合成樹脂で形成され、前記第2層以降の層は無充填の合成樹脂または固体潤滑剤が配合された合成樹脂で形成されることを特徴とする複層被膜。
  2. 前記合成樹脂がポリイミド系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の複層被膜。
  3. 前記第1層を形成する合成樹脂に配合される充填材が、フラーレン、炭化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の複層被膜。
  4. 前記第2層以降の層を形成する合成樹脂に配合される固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、二硫化タングステンおよびポリテトラフルオロエチレン樹脂から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の複層被膜。
  5. 複数の転動体と、この転動体を保持する保持器とを備えてなる転がり軸受であって、
    前記保持器は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の複層被膜を該保持器の表面部位に形成したことを特徴とする転がり軸受。
  6. 前記転がり軸受は硫黄系添加剤を含有する潤滑油に接触する環境、または、硫黄系化合物を含む雰囲気で使用されることを特徴とする請求項5記載の転がり軸受。
  7. 前記保持器が鉄系金属材料の成形体であることを特徴とする請求項5または請求項6記載の転がり軸受。
  8. 前記転動体がころ形状を有することを特徴とする請求項5、請求項6または請求項7記載の転がり軸受。
  9. 前記ころ形状が針状ころ形状であることを特徴とする請求項8記載の転がり軸受。
  10. 前記転がり軸受が、回転運動を出力するクランク軸を支持し、直線往復運動を回転運動に変換するコンロッドの大端部に設けられた係合穴に取り付けられることを特徴とする請求項5ないし請求項9のいずれか一項記載の転がり軸受。
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