JP3845752B2 - Uhf帯基本波水晶振動子及びフィルタ - Google Patents

Uhf帯基本波水晶振動子及びフィルタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基本波振動でUHF帯(300MHz以上)の共振周波数を得るUHF帯基本波水晶振動子及びフィルタにおける周波数温度特性の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
伝送通信機器やOA機器の処理速度の高速化、或は通信データや処理量の大容量化が進むのに伴って、それらに用いる基準周波数信号源としての水晶振動子においては、高周波化の要求が強くなっている。以下、ATカット水晶素板を用いた水晶振動子のUHF帯での高周波化の現状を説明する。
まず、HF、VHF帯に使用されるATカット水晶振動子は、水晶原石の結晶面(R面)から、約3°00’程度z軸方向に傾けた角度で切り出した均一厚の平板状水晶素板上に電極を形成したものである。この水晶素板単体での温度周波数特性は、図7(a) に示すように−35〜80℃の温度範囲にて±40ppm程度の振動周波数偏差を呈する。
このような周波数偏差を有した水晶素板に電極を形成することによって得た水晶振動子にあっては、図7(b) に示すように、−35〜80℃の温度範囲の周波数偏差が、±10ppmと、小さくなることが知られている。この時、水晶素板の膜厚Tと電極の膜厚tを水晶密度換算した膜厚tx の比、tx /Tは、電極の質量負荷効果によるエネルギー閉じ込めを考慮すると、1〜1.5%程度となるように設定されている。また、この電極膜厚は、その絶対値がオーミックロスをもたらさない程度には十分に厚く設定されている。
ところが、UHF帯(300MHz)以上の基本波振動を求められる水晶振動子にあっては、水晶素板の振動部の肉厚が極めて薄くなるため、振動部に形成した電極の膜厚如何が、電極の熱歪みに起因した悪影響をもたらす原因となる。
これを更に詳述すると、UHF帯以上の基本波振動を実現する水晶振動子は、本出願人により初めて開発されたものであり、図8は本出願人が提案した高周波化を目的とした超薄肉部を有するATカット水晶素板の斜視図である。水晶素板1は、ATカット水晶素板の厚みすべり振動を利用した振動子であって、その共振周波数が板厚と反比例することから、機械的強度を保ちつつ、高周波化を図る為に、水晶素板の一方の主面をエッチングによって凹陥せしめ、該凹陥部の超薄肉部分を振動部13aとするとともに、振動部13aの周囲を支持する厚肉の環状囲繞部14を一体的に形成する。更に、水晶素板1の他方の主面上には部分電極11と、これより延出するリード電極15及びパッド電極16をマスク蒸着、又はフォトリソグラフィ等により形成すると共に、上記一方の主面上には全面蒸着により全面電極12を形成したものである。
以上のように構成することで、水晶振動子の基本波振動の高周波化を図れるが、高周波化に従い、振動部13aの素板厚が薄くなる為、質量負荷効果によるエネルギー閉じ込め現象のみを考慮すると、電極膜厚もこれに伴い薄くする必要がある。振動部の肉厚に対して電極膜厚が厚過ぎる場合には、周囲温度の変化によって水晶素板と電極との界面に熱歪みが発生し、これが水晶素板に強制的な応力として加わり、応力感度をもつATカット水晶は、その特質である3次曲線の周波数温度特性を著しく劣化させるという問題があったからである。
【0003】
ところで、本出願人が提案した図8の水晶素板にあっては、150MHzを越える基本波振動周波数、例えば300MHz以上のUHF帯の高周波を得るために必要な超薄肉の振動部13aを十分な機械的な支持強度を確保しつつ形成することが可能であるが、従来の平板状の水晶素板を用いて作成された水晶振動子にあっては機械的強度上の理由から水晶素板の薄肉化に限界があった為、数10MHzが上限とされており、150MHzを越える周波数を得ることは不可能であった。また、上述の如く、従来の水晶振動子の振動部に形成する電極膜の膜厚については、基本波振動が150MHz程度に止まる限りにおいては、振動部の素板厚みに対する電極膜厚を多少厚く構成したとしてもその影響が少ないので、振動部の薄肉化についてはさほど大きな問題は起きなかった。
しかし、本出願人の提案に係る超薄肉振動部を備えた水晶振動子にあっては、300MHz以上のUHF帯の基本波振動を確保する上で、該超薄肉振動部上に形成する電極の膜厚は無視できないものとなる。仮に、電極の質量負荷効果によるエネルギー閉じ込め効果のみを考慮すれば、膜厚比1〜1.5%程度の電極膜厚とすれば十分な筈であるが、超薄肉振動部の肉厚に対する膜厚比が1〜1.5%である場合の電極膜厚は数nmとなり、現状における成膜技術上の制約や、エージング等の信頼性の問題から、このような薄膜を安定して形成することは困難である。そのため、やむを得ず150MHz程度の基本波振動を目的とした水晶振動子と同等の膜厚(絶対値)の電極を超薄肉振動部に形成することが行われていた。この場合の電極の膜厚は、例えば、超薄肉振動部の厚みTと、全面電極を水晶密度換算した膜厚tx との比 tx /T が、38%となる程度の膜厚であるため、電極の熱歪みに起因した悪影響が発生する虞れがある。
本出願人が実際に、図8に示した構造の水晶素板を用いて300MHz以上のUHF帯の基本波振動を確保すべく電極膜厚比について実験、研究したところ、図7(c) に示すようにやはり上記した膜厚比(38%)の厚肉の電極膜によっては十分な温度周波数特性を確保することが難しいことが判明した。
また、研究レベルでUHF帯まで高周波化を図った例として、例えば、F.M.Stern and J.Dowsett:Proc.43rd FCS,p634−639,1989.や、J.R.Hunt and R.C.Smythe:Proc.39th FCS,p292−300,1985.があるが、いずれも周波数温度特性に関する研究や解決手段は開示されておらず、常温における等価回路定数や共振特性を提示するに止まっている。
以上のように、従来UHF帯の基本波水晶振動子を実用化した例はなく、これを実現する為には、ATカット水晶の特質である3次曲線の周波数温度特性の確保が必要不可欠である。なお、この問題は振動子のみならず、フィルタにおいても同様であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、UHF基本波振動子、或はフィルタにおいて、成膜上の制約及び信頼性確保の為、従来薄膜化に限界があるとされていた電極膜厚を超薄肉振動部の肉厚に対応して十分に薄くして、水晶素板と電極との界面に生じる熱歪みを低減し、良好な周波数温度特性を実現して、高性能、高信頼性の水晶振動子、及びフィルタを得ることを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ATカット水晶素板の一方の面に第1の電極を、又他方の面に第1の電極よりも面積の小さい第2の電極を形成することにより300MHz以上の基本波振動を得る水晶振動子において、少なくとも前記第1の電極の膜材料として金を用いると共に、前記ATカット水晶素板の厚みTと、第1の電極を水晶密度換算した膜厚t x との比t x /Tが、7%〜13%となるように設定されていることを特徴とする。請求項2の発明は、ATカット水晶素板の一方の面に第1の電極を、又他方の面に第1の電極よりも面積の小さい第2の電極を形成することにより300MHz以上の基本波振動を得る水晶振動子において、少なくとも前記第1の電極の膜材料として金を用いると共に、前記ATカット水晶素板の厚みTと、第1の電極を水晶密度換算した膜厚t x との比t x /Tが、9%〜13%となるように設定されていることを特徴とする。これにより、周波数偏差を±40ppmの範囲に抑えることが可能となった。請求項3の発明は、前記ATカット水晶素板の面と、少なくとも該面上に形成された第1の電極との間に、両者の密着度を高める為のクロム膜等の中間層電極を配置したことを特徴とする。請求項4の発明は、前記第2の電極から水晶素板端縁に向けて延出したリード電極と、前記リード電極に接続する外部接続用のパッド電極とを備え、前記第2の電極と前記リード電極と前記パッド電極の膜厚を前記第1の電極の膜厚よりも大きく設定したことを特徴とする。請求項5の発明は、前記第2の電極からは水晶素板端縁に向けてリード電極が延出されており、少なくとも該リード電極の膜厚を前記第1の電極の膜厚よりも大きく設定したことを特徴とする。請求項6の発明は、超薄肉のATカット水晶素板の一方の面に第1の電極を、又他方の面に第1の電極よりも面積の小さい分割電極を形成することにより300MHz以上の通過帯域又は阻止帯域を有するモノリシッククリスタルフィルタにおいて、少なくとも前記第1の電極の膜材料として金を用いると共に、前記超薄肉のATカット水晶素板の厚みTと、第1の電極を水晶密度換算した膜厚t x との比t x /T が、7%〜13%となるように設定されていることを特徴とする。請求項7の発明は、ATカット水晶素板の一方の面に第1の電極を、又他方の面に第1の電極よりも面積の小さい分割電極を形成することにより300MHz以上の通過帯域又は阻止帯域を有するモノリシッククリスタルフィルタにおいて、少なくとも前記第1の電極の膜材料として金を用いると共に、前記ATカット水晶素板の厚みTと、第1の電極を水晶密度換算した膜厚tx との比tx/Tが、%〜13%となるように設定されていることを特徴とする。請求項8の発明は、前記ATカット水晶素板の面と、少なくとも該面上に形成された第1の電極との間に、両者の密着度を高める為のクロム膜等の中間層電極を配置したことを特徴とする。請求項9の発明は、前記分割電極から水晶素板端縁に向けて延出したリード電極と、前記リード電極に接続する外部接続用のパッド電極とを備え、前記分割電極と前記リード電極と前記パッド電極の膜厚を前記第1の電極の膜厚よりも大きく設定したことを特徴とする。請求項10の発明は、前記分割電極からは水晶素板端縁に向けてリード電極が延出されており、少なくとも該リード電極の膜厚を前記第1の電極の膜厚よりも大きく設定したことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、図示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1(a) は本発明の水晶振動子の一形態例を示す断面図、(b) は斜視図である。即ち、符号1は例えばカットアングルが3°00’のATカット水晶素板であって、前記従来例の図中に示した振動子と同様に水晶素板1の一方の面の一部をエッチング等の手法によって掘り下げて凹陥部13を形成することによって、凹陥部13の底部に超薄肉振動部13aを形成したものである。この超薄肉振動部13aを振動部として利用する為に、凹陥部13を有する面には全面にわたって全面電極12を被覆形成すると共に、他方の平坦な面上には部分電極11と、部分電極11より素板端縁に向けて延出したリード電極15及び外部接続用のパッド電極16を形成する。これらの電極11、12、リード電極15、及びパッド電極16は、マスク蒸着や、フォトリソグラフィ技術等により形成したものである。
図1に示した形態例の水晶振動子の特徴は、部分電極11と、全面電極12の膜材料を、夫々金(Au)とし、更に前記超薄肉振動部13aの水晶振動子厚みTと、少なくとも全面電極12の膜厚tとの関係を、以下に詳述する様に設定することにより、共振周波数の温度特性を大幅に改善した点にある。
即ち、周波数温度特性を改善する為には、水晶素板1と、電極との間に生じる熱歪みを低減する必要があるが、部分電極11の水晶素板1面に対する占有面積は小さく、熱歪み発生には大きな影響を及ぼさない。これに対して、全面電極12の占有面積は水晶素板1の他方の主面全域に渡る為、熱歪みの発生には全面電極12の膜材料及び膜厚12tが支配的な影響を及ぼすこととなる。ここで、膜厚12tに対する指標として、膜厚比=(水晶密度換算した膜厚12t)/(振動部13aの素板厚13t)%を定義し、基準化する。なお、水晶素板1の共振周波数により素板厚13t及び膜厚12tの絶対値は異なってくるが、この膜厚比が同一であれば全てほぼ等価なものとみなして差し支えない。
【0007】
次に、図2は本発明の実施の形態例の周波数温度特性の改善効果と、実測特性を示すグラフである。ここで、横軸は周囲温度、縦軸は周波数変化量 df/f[ppm](25℃における値からの偏差)を示す。なお、素板理論特性としてはカットアングルが3°00’のATカット水晶の特性を示しており、全ての実測特性はこのカットアングルの水晶素板を用いて製作した水晶振動子である。通常、HF帯やVHF帯の水晶振動子を3°00’の水晶素板を用いて製作すれば、振動周波数が低いので振動子の厚みが大きくなり、電極膜厚の影響が小さいため、通常温度範囲−35〜+85℃において、周波数変化量が約±10ppmの特性を得ることができる。これに対し、本発明が目的とするUHF帯においては電極膜厚が特性に与える影響を無視できなくなり、膜厚が一定の許容値を越えると大幅に温度特性が劣化することが判明している。なお、金からなる電極の場合は、水晶素板と金電極との密着性を高める目的で、中間層電極としてクロム膜やニッケル膜(図中では図示しない)を形成するのが一般的であるが、これらの中間層電極膜は極めて薄い層であるため、ここでは金からなる全面電極12の膜厚比を算出する際に、金電極の一部とみなすことにする。クロム等の膜厚が無視できない程度に厚い場合には適宜これを加味して膜厚比を算出すれば良い。
【0008】
要するに、本発明においては、ATカット水晶素板1の一面又は両面の一部に凹陥部13を形成することによって該凹陥部の底部に超薄肉振動部13aを設け、水晶素板1の一方の面に全面電極12を、又他方の面に部分電極11を形成することにより300MHz以上の基本波振動を得る水晶振動子において、少なくとも全面電極12の膜材料として金(Au)を用いると共に、超薄肉振動部13aの厚みTと、超薄肉振動部における全面電極圧tとの関係が、少なくとも−35℃〜+80℃における振動周波数偏差が±40ppm以下となる様に設定することにより、実用に耐え得る温度周波数特性を確保することを可能としている。
【0009】
図2に示した特性は、図1に示した超薄板型構造の水晶振動子において、電極材料及びその膜厚を種々変えた時の共振周波数の温度特性を示したものである。以下に用いる膜厚比とは、超薄肉部13aの厚みTと、超薄肉部13aの表面に形成された全面電極の膜厚tを水晶密度に換算した膜厚tx との比を%表示したものである。
即ち、水晶の密度は約2,650kg/m3 であるのに対し、アルミニウム(Al)は2,690kg/m3 、金(Au)は18,800kg/m3 と、夫々密度が異なるので、一般に水晶密度換算厚みとして水晶の密度で正規化した値が用いられる。
例えば、金の水晶密度換算厚みは、tx =(18.8/2.65)×t となる。
従って、金(Au)を用いた場合の膜厚比は、
膜厚比={(18.8/2.65)×t}/T
を%表示したものとする。
図2に示したデータのうち、まず全面電極12の膜材料をアルミニウム、膜厚比を5%とした場合には、−35℃〜85℃において、周波数変化量が約±50ppmと大きく劣化している。これは膜厚比が5%と小さいにも拘らず、水晶の線膨張係数が10ppm/℃程度であるのに対し、アルミニウムの線膨張係数は23ppm/℃であるため、この線膨張係数差により大きな熱歪みが発生していることが原因であると考えられる。
一方、膜材料として金(Au)を用いた場合、その線膨張係数は14ppm/℃であることから、アルミニウムを用いた場合と比べると、水晶との線膨張係数差が少なくなるので、熱歪み低減効果はあるものの、共振周波数が高くなると上述した如く膜厚比を小さくできず、温度特性が劣化する。例えば、図2に示す様に、膜材料として金を用いたとしても、膜厚比が38%と大きい場合には、周波数変化量が±80〜90ppmと大きく、素板理論特性に対し1次係数ばかりでなく、3次係数までもが変化し、著しく特性が劣化していることが理解できよう。
【0010】
これに対し、金電極の膜厚比を13%に小さくしたところ、−35℃〜85℃において±30ppm程度となり、更に金の膜厚比を9%にすると、同温度範囲において±10ppmに抑圧することができた。
さらには、温度特性そのもののみならず、温度変化に対する1次係数及び3次係数についても変化が少なくなることが確認された。
なお、金の膜厚比9%(正確には9.3%)とは、この形態例においては共振周波数を525MHz(そのときの超薄肉部の厚みは2.7μm)、金とクロムの下地膜とから成る全面電極の膜厚tを35nmとしたときのものであり、この時の全面電極の膜厚を水晶密度換算すると、0.248(μm)となる。
なお、部分電極については、全面電極と同一厚みとした。
要するに、本発明の水晶振動子は、少なくとも全面電極12の膜材料として金を用いると共に、超薄肉振動部13aの厚みTと、全面電極12を水晶密度換算した膜厚tx との比 tx /T が、5%〜13%となるように設定することによって、実用に耐え得る温度周波数特性を確保している。
なお、この膜厚比は、薄過ぎることによる電気抵抗の増大を考慮すると、実用的には、7〜13%程度が好ましいと考えられる。
また、ATカット水晶素板のカットアングル(R面に対する角度)としては、3°00’±02’の範囲が好ましい。
例えば、図3の温度周波数特性を示すグラフに示すように、カットアングルを3°00’+07’として右上りの傾斜(曲線A)が大きくなるように構成した水晶素板に対して、膜厚比38%の厚肉の電極膜を形成した場合には、曲線Bのようにフラットな温度周波数特性を確保することもできる。
このようなカットアングルを有した水晶素板に厚肉の電極膜を形成した水晶振動子も本発明の範囲に含まれるものではあるが、この場合には相殺すべき周波数偏差が100ppmにもなるので、カットアングルの切り出し誤差や電極膜厚の製造誤差が周波数偏差の劣化をもたらす。例えば、製造誤差が±10%の場合には、±10ppmの周波数偏差が発生する。このため、実用に適したカットアングルとしては、3°00’±02’の範囲が好ましいということができる。
【0011】
次に、図4のフローチャートに基づいて図1に示した水晶振動子をバッチ処理にて製造する工程を説明する。UHF帯においては、基板厚変化量に対する周波数変化量が大きいので、4段階の化学エッチング加工により水晶素板の板厚調整を行うことにより、所望の共振周波数を得ることを可能とした。即ち、第1次主・微調エッチングではVHF帯までの調整を、第2次主・微調エッチングではUHF帯の調整を行った。特に、第2次微調エッチングでは高精度の調整を行う為に、エッチングレートの低いドライエッチングを適用した。
即ち、ステップ1〜4において水晶ウェハ(母材)上にエッチングを施して凹陥部13及び超薄肉振動部13aを形成し、ステップ5において凹陥部13を有しない素板面上に部分電極、リード電極、パッド電極を形成する。続いて、ステップ6において水晶ウェハを個々の水晶素板に分割してからパッケージ実装し(ステップ6、7)、続いてステップ8にて第2次微調エッチングを施して高精度の微調整を行い、ステップ9にて全面電極形成を行う。更に、ステップ10にてパッド電極とパッケージ上の電極との間をワイヤボンディングにて接続し、最後に周波数を調整してからパッケージを封止する(ステップ11、12)。
【0012】
以上、本発明の構成を水晶振動子に適用したときの形態例について説明したが、同様の構成をMCF(モノリシック・クリスタル・フィルタ)に適用することも可能である。
即ち、水晶(圧電)フィルタとしても、図1及び図2に示した如き超薄肉振動部を備えたタイプが知られており、図5はその一例を示すものである。即ち、このフィルタは、図5(a) に示す様に水晶素板30の片面に凹陥部31を形成することにより、凹陥部31の底部に超薄肉振動部31aを形成したものであり、凹陥部31を形成した素板面に全面電極32を形成したものである。また、凹陥部31を形成した主面とは反対側の主面には、超薄肉部31aに対応する位置に2つの分割電極33、34を所定の間隔を隔てて配置し、各分割電極33、34は、リード電極35、36を介して外部接続用の出力パッド37、38に結線されている。
このように水晶等の圧電素板の一部をエッチング等の手法により所要量除去することにより超薄肉振動部31aを形成し、該超薄肉振動部を挟むように該振動部の両面に電極を対向配置せしめることにより、図5(c) に示すような通過帯域を持った圧電フィルタを構成することができ、しかも超薄肉振動部を包囲する厚肉の外枠部による補強作用によって然るべき強度を保ったまま極めて薄い振動部を確保し、その結果、帯域周波数が極めて高い圧電フィルタを実現することができる。
このような構成を備えた圧電フィルタにおいても、前記図2に基づいて説明したものと同様の現象が発生する。即ち、膜厚が一定の許容値を越えると大幅に温度特性が劣化する。
【0013】
このような不具合を解消する為に、本形態例の圧電(水晶)フィルタでは、ATカット水晶素板30の一面又は両面の一部に凹陥部31を形成することによって該凹陥部の底部に超薄肉振動部31aを設け、該水晶素板30の一方の面に全面電極32を、又他方の面に分割電極膜33、34を形成することにより300MHz以上の通過帯域又は阻止帯域を有するモノリシッククリスタルフィルタにおいて、少なくとも全面電極32の膜材料として金(Au)を用いると共に、超薄肉振動部の厚みTと、超薄肉振動部における全面電極圧tとの関係が、少なくとも−35℃〜+80℃における振動周波数偏差が±40ppm以下となる様に設定した。
水晶素板と金との線膨張係数差により大きな熱歪みが発生していることに起因した温度周波数特性の悪化を防止する為に、金の全面電極の膜厚を上記の範囲内に設定することが有効である。
次に、振動周波数偏差を±40ppm以下に抑えることができる金電極の膜厚は、超薄肉振動部31aの厚みTと、全面電極32を水晶密度換算した膜厚tx との比 tx /T が、5%〜13%となるように設定することによって、確保することができる。
また、ATカット水晶素板の面と、この面上に形成された全面電極との間に、両者の密着度を高める為のクロム膜、ニッケル膜等の中間層電極を配置した場合には、中間層電極の膜厚が無視できる程度に薄い場合には、金の膜厚に含めて水晶密度換算を行うことも、上記形態例と同様である。
なお、図4にて説明した水晶振動子の製造工程は、水晶フィルタの製造工程にも適用することができる。この場合には、ステップ5における部分電極の形成工程を、分割電極の形成工程に置換すればよい。
【0014】
以上、本発明に関して基本的な形態例の構成、効果を説明したが、次に、各形態例についての変形例を説明する。
本発明は上述した如く、少なくとも凹陥部を有した水晶素板の片面に形成した全面電極厚を所定値よりも小さくすることによって周波数温度特性の改善を図るものであるが、一般的には全面電極の反対側に形成した部分電極や分割電極、及び夫々に付加されるリード電極等を全面電極と同時に形成する方が製造効率が高まるので好ましい。しかし、全面電極以外の電極部分を、全面電極と同様に薄くすると、少なくとも必然的に薄くなるリード電極部分におけるオーミックロスが大きくなる。このため、このようなリード電極構造を振動子に適用した場合には、CI(クリスタル・インピーダンス=水晶振動子の等価抵抗)が大きくなり、これを用いて発振器を構成するには励振レベル大きくする必要がある為、消費電流が増大すると共に、雑音が発生し易くなるという不具合を生じ、フィルタに適用した場合には挿入損失が大きくなるという不具合を伴うことがある。
そこで、その解決策として、少なくとも分割電極や部分電極に付加されているリード電極(図1においては符号15、図5(a) においては符号35、36)の膜厚を全面電極の膜厚よりも厚くする。或は、リード電極を含めた部分電極11、分割電極33、34、さらには出力用パッド37、38をも含めた片面上の電極の膜厚を共に厚くする。
このように構成すれば、直接的に挿入損失増加やCI増大の原因となるオーミックロスを小さくすることができる。
【0015】
なお、部分電極や分割電極は、反対面の全面電極と比べると、その占める面積割合が非常に小さいので、上記温度周波数特性を劣化させる要因とはならない。仮に、部分電極や分割電極の厚膜化が温度周波数特性に影響を与える場合には、必然的に幅が細くなるリード電極部分のみをリード電極部分の膜厚のみを厚くすることにより、オーミックロスを小さくする効果を発揮できる。
このように部分電極や分割電極、特にリード電極を厚くする効果は、オーミックロスの経年変化改善の点からも好ましい。
即ち、図6はこの効果を説明する為の図であり、図6(a) の振動子の斜視図に示すようにリード電極部分15について考えれば、その長さをl,幅をwとしたときの単位面積当たりの抵抗値をΩ/sqとして表示する。水晶素板1と金電極11、15、16の間には、同図(b) に示すように両者の接着強度を高める為に、0.5×10-2μm程度のクロム(Cr)或はニッケルを中間電極層20として介挿するのが一般的である。ところが、電気抵抗値が高いクロムやニッケルは長期間のうちに金に溶け込み、拡散して、金電極膜全体の電気抵抗を高める現象をもたらす。この現象がリード電極部分15に発生すると、該部のオーミックロスが増大し、挿入損失の増大やCI値の増加を招く。
そこで、本発明に従ってリード電極部分15の金電極膜厚を大きくすれば、クロムやニッケル等の拡散による電気抵抗値の増加を押えることが可能となる。
【0016】
図6(c) は主電極膜の経年変化の度合いを測る実験結果を示すものであって、縦軸は単位面積当たりの抵抗値を示し、横軸は真空中において270℃に加熱する時間を示している。このような手法はクロムやニッケルが金電極膜内に拡散する度合いを短時間に知るために一般的に実施される測定方法である。
このグラフには金電極膜厚tAuを6×10-2μmとしたものと、3×10-2にした場合を示しており、膜厚の大きい6×10-2μmの方が抵抗値増加が著しく小さいことが明らかである。即ち、金膜厚が大きい方が中間電極層としてのクロムやニッケル拡散による抵抗増大が小さく、フィルタの挿入損失や振動子のCI増大を防止する上で効果がある。
なお、超薄肉型振動子やフィルタにおいては、圧電素板の片面に凹陥部を形成するのが一般的であるが、本発明の適用対象となる圧電素板は、素板両面に夫々凹陥部を対向配置し、両凹陥部の共通する底部を超薄肉振動部とする構成であってもよい。この場合、一方の凹陥部側を全面電極とし、他方の凹陥部底部に相当する超薄肉振動部に部分電極や分割電極等を形成する構成となる。
以上のように構成すれば、熱歪みの発生を最小限に止めることができ、UHF帯の基本波振動子においてもHF帯やVHF帯の水晶振動子と同様、信頼性を確保したままATカット水晶の特質である3次曲線の極めて良好な周波数温度特性を得ることが可能となる。
なお、上記形態例では、本発明をカットアングルを3°00’としたATカット水晶素板に適用した場合について説明したが、本発明は目的に応じて3°00’以外のカットアングルを有したAT水晶素板に対して適用してもよく、この場合には水晶素板本来の特質を保ったまま温度周波数特性を改善することができる。
【0017】
【発明の効果】
以上のように本発明は、UHF基本波振動子、或はフィルタにおいて、成膜上の制約及び信頼性確保の為、従来薄膜化に限界があるとされていた電極膜厚を振動部の肉厚に対応して十分に薄くして、水晶素板と電極との界面に生じる熱歪みを低減し、良好な周波数温度特性を実現して、高性能、高信頼性の水晶振動子、及びフィルタを得ることができる。
即ち、まず請求項1又は6の発明では、全面電極の膜材料として金を用いると共に、超薄肉振動部の厚みTと、超薄肉振動部における全面電極圧tとの関係が、少なくとも−35℃〜+80℃における振動周波数偏差が±40ppm以下となる様に設定したので、300MHz以上のUHF帯の基本波周波数を出力可能な水晶振動子、フィルタにおいて、振動部の肉厚に対する電極の膜厚を十分に薄くすることにより、温度周波数特性の劣化を防止できる。即ち、振動部の肉厚に対して電極膜厚が厚過ぎる場合には、周囲温度の変化によって水晶素板と電極との界面に熱歪みが発生し、これが水晶素板に強制的な応力として加わり、応力感度をもつATカット水晶は、その特質である3次曲線の周波数温度特性を著しく劣化させるという問題があったが、本発明では、成膜技術上の制約の範囲内で、しかもエージング等の信頼性を低下させない範囲内で、全面電極の膜厚を十分に小さくしたので、上記問題を解消することができた。
次に、請求項2及び7の発明では、超薄肉振動部の肉厚に対する金電極の膜厚として、超薄肉振動部の厚みTと、全面電極を水晶密度換算した膜厚tx との比tx /T が、5%〜13%となるように設定しているので、UHF帯用の水晶振動子、及びフィルタでありながら、その温度周波数特性を十分に確保することができる。
【0018】
次に、請求項3及び8の発明では、ATカット水晶素板の面と、少なくとも該面上に形成された全面電極との間に、両者の密着度を高める為のクロム膜等の中間層電極を配置したので、水晶と金との間の密着力の低下を有効に防止できる。なお、中間層電極を構成する金属材料が金電極膜内に拡散することによる抵抗増大と、それに起因した不具合についても解消することができる。
請求項4及び9の発明では、前記部分電極又は分割電極の膜厚を全面電極の膜厚よりも大きく設定したので、各電極の抵抗の増大を防止することができる。つまり、このように構成すれば、直接的に挿入損失増加やCI増大の原因となるオーミックロスを小さくすることができる。
請求項5及び10の発明では、部分電極又は分割電極からは夫々水晶素板端縁に向けてリード電極が延出されており、少なくとも該リード電極の膜厚を前記全面電極の膜厚よりも大きく設定したので、リード電極が細幅であることに起因して発生するローミックロスの増大等の不具合を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a) は本発明の水晶振動子の一形態例を示す断面図、(b) は斜視図。
【図2】本発明の実施の形態例の周波数温度特性の改善効果と、実測特性を示すグラフ図。
【図3】カットアングルを異ならせた水晶素板の温度周波数特性を示す図。
【図4】本発明の水晶振動子の製造工程を示すフローチャート。
【図5】 (a) (b) 及び(c) は本発明における水晶フィルタの構成を示す斜視図、等価回路図、及び阻止域減衰特性を示す図。
【図6】 (a) (b) 及び(c) は本発明の他の形態例を説明する為の水晶振動子の斜視図、電極膜における拡散状態を示す断面図、及び電極膜の抵抗を示す図。
【図7】 (a) (b) 及び(c) は従来の水晶振動子の特性を示す図。
【図8】本出願人が提案した高周波化を目的とした超薄肉部を有するATカット水晶素板の斜視図。
【符号の説明】
1 ATカット水晶素板、11 部分電極、12 全面電極、13 凹陥部、13a 超薄肉振動部,15 リード電極、30 ATカット水晶素板、31 凹陥部、31a 超薄肉振動部、32 全面電極、33、34 分割電極膜、
37、38 出力用パッド。

Claims (10)

  1. ATカット水晶素板の一方の面に第1の電極を、又他方の面に第1の電極よりも面積の小さい第2の電極を形成することにより300MHz以上の基本波振動を得る水晶振動子において、少なくとも前記第1の電極の膜材料として金を用いると共に、前記ATカット水晶素板の厚みTと、第1の電極を水晶密度換算した膜厚t x との比t x /Tが、7%〜13%となるように設定されていることを特徴とするUHF帯基本波水晶振動子。
  2. ATカット水晶素板の一方の面に第1の電極を、又他方の面に第1の電極よりも面積の小さい第2の電極を形成することにより300MHz以上の基本波振動を得る水晶振動子において、少なくとも前記第1の電極の膜材料として金を用いると共に、前記ATカット水晶素板の厚みTと、第1の電極を水晶密度換算した膜厚tx との比tx /T が、%〜13%となるように設定されていることを特徴とするUHF帯基本波水晶振動子。
  3. 前記ATカット水晶素板の面と、少なくとも該面上に形成された第1の電極との間に、両者の密着度を高める為のクロム膜又はニッケル膜等の中間層電極を配置したことを特徴とする請求項1又は2記載のUHF帯基本波水晶振動子。
  4. 前記第2の電極から水晶素板端縁に向けて延出したリード電極と、前記リード電極に接続する外部接続用のパッド電極とを備え、前記第2の電極と前記リード電極と前記パッド電極の膜厚を前記第1の電極の膜厚よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1、2又は3の何れかに記載のUHF帯基本波水晶振動子。
  5. 前記第2の電極からは水晶素板端縁に向けてリード電極が延出されており、少なくとも該リード電極の膜厚を前記第1の電極の膜厚よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1、2又は3の何れかに記載のUHF帯基本波水晶振動子。
  6. ATカット水晶素板の一方の面に第1の電極を、又他方の面に第1の電極よりも面積の小さい分割電極を形成することにより300MHz以上の通過帯域又は阻止帯域を有するモノリシッククリスタルフィルタにおいて、少なくとも前記第1の電極の膜材料として金を用いると共に、前記ATカット水晶素板の厚みTと、第1の電極を水晶密度換算した膜厚t x との比t x /Tが、7%〜13%となるように設定されていることを特徴とするUHF帯基本波水晶フィルタ。
  7. ATカット水晶素板の一方の面に第1の電極を、又他方の面に第1の電極よりも面積の小さい分割電極を形成することにより300MHz以上の通過帯域又は阻止帯域を有するモノリシッククリスタルフィルタにおいて、少なくとも前記第1の電極の膜材料として金を用いると共に、前記ATカット水晶素板の厚みTと、第1の電極を水晶密度換算した膜厚tx との比tx/Tが、%〜13%となるように設定されていることを特徴とするUHF帯基本波水晶フィルタ。
  8. 前記ATカット水晶素板の面と、少なくとも該面上に形成された第1の電極との間に、両者の密着度を高める為のクロム膜等の中間層電極を配置したことを特徴とする請求項6又は7記載のUHF帯基本波水晶フィルタ。
  9. 前記分割電極から水晶素板端縁に向けて延出したリード電極と、前記リード電極に接続する外部接続用のパッド電極とを備え、前記分割電極と前記リード電極と前記パッド電極の膜厚を前記第1の電極の膜厚よりも大きく設定したことを特徴とする請求項6、7又は8の何れかに記載のUHF帯基本波水晶フィルタ。
  10. 前記分割電極からは水晶素板端縁に向けてリード電極が延出されており、少なくとも該リード電極の膜厚を前記第1の電極の膜厚よりも大きく設定したことを特徴とする請求項6、7又は8の何れかに記載のUHF帯基本波水晶フィルタ。
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