JP3843968B2 - ヘッドランプの車体位置決め方法および車体位置決め構造 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ヘッドランプを車体前部に組み付ける際のヘッドランプの車体位置決め方法および車体位置決め構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般に、自動車におけるヘッドランプは、車体組立工程でラジエータコアサポートに組み付けるようにしている。このようなヘッドランプを備えたラジエータコアサポートに、バンパフェイシャなど他の部品をさらに組み付けてフロントエンドモジュールとし、このフロントエンドモジュールを車体前部に組み付ける方法が近年行われている。
【０００３】
例えば特許文献１には、ヘッドランプ取付部を備えたバンパフェイシャを、車体前部に組み付ける構造が開示されている。
【０００４】
【特許文献１】
特開２００２−２６４７４５号公報
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来では、ラジエータコアサポートに固定してあるヘッドランプを、車体前部のフードリッジに固定してあるフロントフェンダに位置決めする構造であるために、ラジエータコアサポート，フードリッジ，ヘッドランプ，フロントフェンダそれぞれの取り付け位置ばらつきの影響を受けて、ヘッドランプとフロントフェンダとの位置合わせが不均一となり、これら相互間の隙間や表面の段差も不均一となって外観品質が悪化するという問題がある。
【０００６】
そこで、この発明は、ヘッドランプの車体前部への位置合わせを確実なものとすることを目的としている。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、この発明は、車体前部ユニットにヘッドランプを仮保持させ、この仮保持状態で、前記車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、前記ヘッドランプを、前記車体前部ユニットに対し相対移動させて前記車体前部に位置決めするヘッドランプの車体位置決め方法であって、前記ヘッドランプを、前記車体前部ユニットに対して正規の取付位置より車体後方側となるよう仮保持させ、この仮保持状態で、前記車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、前記車体前部ユニットの車体後方への移動に伴って、前記ヘッドランプが、前記車体前部に当接することで、前記車体前部ユニットに対して車体前方側に相対移動し、この相対移動により、前記ヘッドランプの仮保持状態を解除して前記ヘッドランプを前記車体前部に位置決めする構成としてある。
【０００８】
【発明の効果】
この発明によれば、車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、ヘッドランプを、車体前部ユニットに対して正規の取付位置より車体後方側となるよう仮保持させ、この仮保持状態でヘッドランプを、車体前部ユニットの車体後方への移動に伴って、車体前部に当接させて車体前部ユニットに対して車体前方側に相対移動させることにより、その仮保持状態を解除して車体前部に位置決めするようにしたため、ヘッドランプの車体前部に対する位置合わせを確実なものとすることができ、外観品質を向上させることができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【００１０】
図１は、この発明の実施の一形態に係わるヘッドランプの車体位置決め構造を示している。これは、車体本体１の前部に、車体前部ユニットとしてのフロントエンドモジュール３を組み付ける構造である。この際、フロントエンドモジュール３は、図示しない搭載用の治具によって把持した状態で助力装置を用いて車体本体１に接近させるか、あるいはロボットを用いて接近させてもよい。
【００１１】
上記したフロントエンドモジュール３は、ラジエータコアサポート５を備え、このラジエータコアサポート５の車幅方向両端の上部に形成してあるランプ取付部７に、ヘッドランプ９を仮保持状態で取り付けてある。一方、車体本体１の前部には、車幅方向両側に、フードリッジ１１に固定してあるフロントフェンダ１３を備え、下部には、車幅方向両側に、車体前方に向けて突出するフロントサイドメンバ１５を備える。
【００１２】
図２は、図１の状態から、フロントエンドモジュール３を車体本体１の前部に向けて接近させた状態の車体前部の左側部分を示す斜視図である。以後この左側部分のみを図示して説明するが、右側部分については、左側部分と左右対称な同一構造であるので図示省略する。
【００１３】
ヘッドランプ９の下部には、仮保持用のピン１７を下方に向けて突出して設けてある。一方、ラジエータコアサポート５のヘッドランプ９の下方に形成した平面部１９には、上記した仮保持用のピン１７を挿入する仮保持孔用の孔２１を設けてある。上記した仮保持用のピン１７と仮保持孔用の孔２１とで仮保持部を構成している。
【００１４】
図３は、仮保持用のピン１７および孔２１を拡大して示した斜視図である。仮保持用のピン１７は、先端部（下端部）１７ａから所定距離離れた位置に、円形の溝部１７ｂを備え、さらにその上部に円盤状のフランジ１７ｃを備える。一方仮保持用の孔２１は、矩形状の開口部２１ａと、この開口部２１ａの車体後方側の側縁に連通部２１ｂを通して連続する仮保持部２１ｃとを備える。
【００１５】
仮保持部２１ｃは、円形であり、その内径は溝部２１ｂの外径とほぼ同等としてある。このため、ピン１７の溝部１７ｂが仮保持部２１ｃに入り込むことで、ピン１７が仮保持部２１ｃに係止され、これによりヘッドランプ９がフロントエンドモジュール３に仮保持されることになる。
【００１６】
一方、連通部２１ｂの開口幅は、溝部１７ｂの外径より若干小さくする。このため、溝部１７ｂを仮保持部２１ｃに入り込ませる際には、連通部２１ｂの開口縁が多少弾性変形する。これにより、仮保持部２１ｃに挿入した溝部１７ｂが、連通部２１ｂを通して開口部２１ａへ移動しにくくなり、ヘッドランプ９の仮保持状態が容易に解除されないようにしている。
【００１７】
上記した仮保持状態でのヘッドランプ９は、フロントエンドモジュール３に対し正規の取付位置より車体後方側にあり、この状態で車体前方側へ向けて移動可能である。
【００１８】
また、仮保持用のピン１７における円盤状のフランジ１７ｃは、矩形状の開口部２１ａに対して充分大きく形成してある。これにより、上記した仮保持状態が外れたときに、フランジ１７ｃがラジエータコアサポート５の平面部１９に係止され、ヘッドランプ９の必要以上の落下を防止する。
【００１９】
上記したヘッドランプ９の車体前方側の内側部には、車幅方向内側に突出する前側固定部２３を設けてある。一方ラジエータコアサポート５には、上記した仮保持状態で、前側固定部２３の車体前方側に所定間隔をおいてランプ固定部２５を設けてある。このランプ固定部２５に対し車体前方側から前部固定用ボルト２６を挿入し、その先端をヘッドランプ９の前側固定部２３に仮締結しておく。
【００２０】
また、ヘッドランプ９の車体後方側の内側部には、車体後方へ突出する後側固定部２７を設け、この後側固定部２７には、後部固定用ボルト２８およびクリップ２９をそれぞれ挿入するボルト挿入孔２７ａおよびクリップ挿入孔２７ｂを設ける。
【００２１】
一方、フロントフェンダ１３の上部内側縁に形成してあるランプ取付面３１には、ボルト挿入孔３１ａおよびクリップ係合孔３１ｂをそれぞれ設け、ボルト挿入孔３１ａに対応するランプ取付面３１の下面には、後部固定用ボルト２８を締結する図示しないナットを固定する。
【００２２】
さらに、ヘッドランプ９の外側部には、固定用ブロック３３を設けてある。図４（ａ）は、この固定用ブロック３３を拡大して示す斜視図である。固定用ブロック３３は、ブロック状のフェンダ固定部３５と、フェンダ固定部３５の上部に位置する板状のフェンダガイド部３７とを備える。
【００２３】
フェンダ固定部３５の車幅方向外側の側面３５ａには、ねじ孔３５ｂを設け、一方フロントフェンダ１３の前端下部に設けた下端取付部３９には、ボルト挿入孔３９ａを設ける。ボルト挿入孔３９ａにはボルト４１が挿入され、このボルト４１は固定用ブロック３３のねじ孔３５ｂに締結される。
【００２４】
フェンダガイド部３７は、フェンダ固定部３５の上部から車幅方向外側に向けて突出するとともに、車体後方側へ向けて突出している。このフェンダガイド部３７の車体後方側の端部から車体前方側に向けて、ガイド溝３７ａを形成する。ガイド溝３７ａの入口部は、車体後方側ほど広くなるようテーパ状の切欠３７ｂを形成する。
【００２５】
上記ガイド溝３７ａは、フロントフェンダ１３の下端取付部３９が入り込んでガイドするもので、図４（ａ）のＡ−Ａ断面図である図４（ｂ）に示すように、ガイド溝３７ａの内側壁部３７ｃと、フェンダ固定部３５の側面３５ａとが、ほぼ同一面となるよう設定してある。
【００２６】
すなわち、上記したフェンダガイド部３７は、車体前部におけるフロントフェンダ前縁の車幅方向両側を挟むようにして嵌合するものである。
【００２７】
また、ヘッドランプ９は、上記した固定用ブロック３３を備えた部位から車体後方側が、上方に向けて傾斜しており、この上方部位に、位置決め突起４５を車体後方に向けて突出して設けてある。この位置決め突起４５の先端は先細形状となっている。
【００２８】
一方、この位置決め突起４５に対応してフロントフェンダ１３の上下方向ほぼ中央の前端縁には、ヘッドランプ９の上記した傾斜と整合する傾斜面４７を、車幅方向内側へ突出して設け、この傾斜面４７に設けた位置決め孔４７ａに位置決め突起４５を挿入して位置決めを行う。
【００２９】
次に、作用を説明する。まず、ヘッドランプ９をラジエータコアサポート５に仮保持させる。この仮保持は、仮保持用のピン１７を、仮保持用の孔２１の開口部２１ａに挿入後、車体後方へ移動させ、前記図３に示したように、ピン１７の溝部１７ｂを仮保持部２１ｃに入り込ませることで行う。また、前部固定用ボルト２６をランプ固定部２５に挿入し、前部固定用ボルト２６の先端をヘッドランプ９の前側固定部２３に仮締結する。
【００３０】
このようにしてヘッドランプ９をラジエータコアサポート５に仮保持させたフロントエンドモジュール３を、図２の状態から、車体本体１の前部に向けて接近させる。
【００３１】
上記した接近動作により、図５に示す状態になると、図６に拡大して示すように、フェンダガイド部３７のガイド溝３７ａにフロントフェンダ１３の下端取付部３９が入り込み始める。すなわち、このとき、フェンダガイド部３７は、フロントフェンダ１３前縁の下端取付部３９の両側を挟むようにして嵌合する。ここで、ガイド溝３７ａの入口開口部に切欠３７ｂを形成してあるので、下端取付部３９をガイド溝３７ａに容易に入り込ませることができる。
【００３２】
図５の状態から、フロントエンドモジュール３をさらに車体本体１に接近させると、図７に示すように、フロントフェンダ１３の下端取付部３９がガイド溝３７ａの奥にさらに入り込むと同時に、図８にも拡大して示すように、先細の位置決め突起４５が位置決め孔４７ａに入り込み始める。
【００３３】
この位置決め突起４５の位置決め孔４７ａへの入り込む動作は、この動作に先立って、ガイド溝３７ａにフロントフェンダ１３の下端取付部３９がガイドされて嵌合しているとともに、位置決め突起４５が先細となっているので容易になされる。
【００３４】
図７の状態から、フロントエンドモジュール３をさらに車体本体１に接近させると、図９のＢ−Ｂ断面図である図１０に示すように、位置決め突起４５の基端部の周囲に設けてある当て面４９が傾斜面４７に当接する。これにより、ヘッドランプ９の車体本体１に対する車体前後方向，車幅方向および上下方向の位置出しを行う。
【００３５】
このとき、ヘッドランプ９における後側固定部２７が、フロントフェンダ１３のランプ取付面３１上に載置され、ボルト挿入孔２７ａとボルト挿入孔３１ａとが整合するとともに、クリップ挿入孔２７ｂとクリップ係合孔３１ｂとが互いに整合する状態となる。
【００３６】
図１０の当接状態から、フロントエンドモジュール３をさらに車体本体１側に押し込むと、ラジエータコアサポート５がヘッドランプ９に対して車体後方側に移動する。この移動により、図９および図１１に示すように、仮保持用のピン１７が仮保持部２１ｃから外れて開口部２１ａに移動し、ヘッドランプ９の仮保持状態が解除される。
【００３７】
このときピン１７のフランジ１７ｃが開口部２１ａの周縁に接触してヘッドランプ９の必要以上の落下を防ぐ。
【００３８】
上記したヘッドランプ９の仮保持状態が解除されるのに合わせて、ラジエータコアサポート５と一体のランプ固定部２５も車体後方へ移動する。このときの動きを、図１２（ａ），（ｂ）に示す。すなわち、図１２（ａ）の状態から、ランプ固定部２５が車体後方へ移動することで、図１２（ｂ）に示すように、ランプ固定部２５がヘッドランプ９の前側固定部２３に接触し、前部固定用ボルト２６は、ランプ固定部２５から車体前方へ突出した状態となる。
【００３９】
この状態で、前部固定用ボルト２６を締結することで、前側固定部２３をラジエータコアサポート５のランプ固定部２５に固定する。また、図９に示すように、クリップ２９をクリップ挿入孔２７ｂに挿入するとともに、後部固定用ボルト２８をボルト挿入孔２７ａに挿入して締結することで、ヘッドランプ９の後側固定部２７をフロントフェンダ１３のランプ取付面３１に固定する。
【００４０】
さらに、車体側方からボルト４１をフロントフェンダ１３下部における下部取付部３９のボルト挿入孔３９ａに挿入し、フェンダ固定部３５のねじ孔３５ｂに締結することで、下端取付部３９をヘッドランプ９の固定用ブロック３３に固定する。これにより、ヘッドランプ９のフロントフェンダ１３への位置決め固定作業が完了する。
【００４１】
上記した実施形態によれば、ヘッドランプ９を、フロントエンドモジュール３に対して正規の取付位置より車体後方側となる状態で、ラジエータコアサポート５に仮保持させ、この仮保持状態で、フロントエンドモジュール３を車体前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、フロントエンドモジュール３の車体後方への移動に伴って、ヘッドランプ９が、車体前部に当接して位置決めされ、その後ラジエータコアサポート５に対して車体前方側となるよう相対移動する。
【００４２】
このため、ヘッドランプ９をフロントフェンダ１３に位置決めする際に、ラジエータコアサポート５，フードリッジ１１，ヘッドランプ９，フロントフェンダ１３それぞれの取り付け位置ばらつきの影響を排除でき、ヘッドランプ９とフロントフェンダ１３との位置合わせを均一化することができ、これら相互間の隙間や表面の段差も均一化できて外観品質が向上する。
【００４３】
また、上記した位置決め作業時において、フロントエンドモジュール３が、剛性不足から、その自重によって多少変形したとしても、ヘッドランプ９はフロントエンドモジュール３に対し仮保持状態として相対移動可能としてあるので、ヘッドランプ９のフロントフェンダ１３に対する位置合わせを確実にできる。
【００４４】
さらに、この場合、ヘッドランプ９は、ラジエータコアサポート５に仮保持させてフロントエンドモジュール３に組み込んであるので、ヘッドランプ９を単品で後付けする作業が不要となり、作業工数を削減できる。
【００４５】
また、フロントエンドモジュール３の車体本体１への取り付けについては、車幅方向両側の上部を、図１に示すフードリッジ１１に固定するとともに、下部をフロントサイドメンバ１５の前端に固定する。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の実施の一形態を示すヘッドランプの車体位置決め構造を示す分解斜視図である。
【図２】図１の状態から、フロントエンドモジュールを車体前部に接近させた状態の車体前部の左側を示す斜視図である。
【図３】図２における仮保持用のピンおよび孔を拡大した斜視図である。
【図４】（ａ）は図２における固定用ブロックを拡大して示す斜視図、（ｂ）は（ａ）のＡ−Ａ断面である。
【図５】図２の状態から、フロントエンドモジュールを車体前部に向けて接近移動させた状態を示す動作説明図である。
【図６】図５における固定用ブロック周辺の拡大した斜視図である。
【図７】図５の状態から、フロントエンドモジュールをさらに車体前部に接近させた状態を示す動作説明図である。
【図８】図７における位置決め突起周辺の拡大した斜視図である。
【図９】図７の状態から、フロントエンドモジュールをさらに車体前部に接近させた状態を示す動作説明図である。
【図１０】図９のＢ−Ｂ断面図である。
【図１１】図９の仮保持部周辺の拡大した斜視図である。
【図１２】ヘッドランプ側の前側固定部と、ラジエータコアサポート側のランプ固定部との相対位置を示す動作説明図で、（ａ）は図５に対応し、（ｂ）は図９に対応している。
【符号の説明】
１ 車体本体
３ フロントエンドモジュール（車体前部ユニット）
９ ヘッドランプ
１３ フロントフェンダ
１７ 仮保持用のピン（仮保持部）
２１ 仮保持用の孔（仮保持部）
３７ フェンダガイド部
４５ 位置決め突起
４７ａ 位置決め孔
【発明の属する技術分野】
この発明は、ヘッドランプを車体前部に組み付ける際のヘッドランプの車体位置決め方法および車体位置決め構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般に、自動車におけるヘッドランプは、車体組立工程でラジエータコアサポートに組み付けるようにしている。このようなヘッドランプを備えたラジエータコアサポートに、バンパフェイシャなど他の部品をさらに組み付けてフロントエンドモジュールとし、このフロントエンドモジュールを車体前部に組み付ける方法が近年行われている。
【０００３】
例えば特許文献１には、ヘッドランプ取付部を備えたバンパフェイシャを、車体前部に組み付ける構造が開示されている。
【０００４】
【特許文献１】
特開２００２−２６４７４５号公報
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来では、ラジエータコアサポートに固定してあるヘッドランプを、車体前部のフードリッジに固定してあるフロントフェンダに位置決めする構造であるために、ラジエータコアサポート，フードリッジ，ヘッドランプ，フロントフェンダそれぞれの取り付け位置ばらつきの影響を受けて、ヘッドランプとフロントフェンダとの位置合わせが不均一となり、これら相互間の隙間や表面の段差も不均一となって外観品質が悪化するという問題がある。
【０００６】
そこで、この発明は、ヘッドランプの車体前部への位置合わせを確実なものとすることを目的としている。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、この発明は、車体前部ユニットにヘッドランプを仮保持させ、この仮保持状態で、前記車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、前記ヘッドランプを、前記車体前部ユニットに対し相対移動させて前記車体前部に位置決めするヘッドランプの車体位置決め方法であって、前記ヘッドランプを、前記車体前部ユニットに対して正規の取付位置より車体後方側となるよう仮保持させ、この仮保持状態で、前記車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、前記車体前部ユニットの車体後方への移動に伴って、前記ヘッドランプが、前記車体前部に当接することで、前記車体前部ユニットに対して車体前方側に相対移動し、この相対移動により、前記ヘッドランプの仮保持状態を解除して前記ヘッドランプを前記車体前部に位置決めする構成としてある。
【０００８】
【発明の効果】
この発明によれば、車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、ヘッドランプを、車体前部ユニットに対して正規の取付位置より車体後方側となるよう仮保持させ、この仮保持状態でヘッドランプを、車体前部ユニットの車体後方への移動に伴って、車体前部に当接させて車体前部ユニットに対して車体前方側に相対移動させることにより、その仮保持状態を解除して車体前部に位置決めするようにしたため、ヘッドランプの車体前部に対する位置合わせを確実なものとすることができ、外観品質を向上させることができる。
【０００９】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【００１０】
図１は、この発明の実施の一形態に係わるヘッドランプの車体位置決め構造を示している。これは、車体本体１の前部に、車体前部ユニットとしてのフロントエンドモジュール３を組み付ける構造である。この際、フロントエンドモジュール３は、図示しない搭載用の治具によって把持した状態で助力装置を用いて車体本体１に接近させるか、あるいはロボットを用いて接近させてもよい。
【００１１】
上記したフロントエンドモジュール３は、ラジエータコアサポート５を備え、このラジエータコアサポート５の車幅方向両端の上部に形成してあるランプ取付部７に、ヘッドランプ９を仮保持状態で取り付けてある。一方、車体本体１の前部には、車幅方向両側に、フードリッジ１１に固定してあるフロントフェンダ１３を備え、下部には、車幅方向両側に、車体前方に向けて突出するフロントサイドメンバ１５を備える。
【００１２】
図２は、図１の状態から、フロントエンドモジュール３を車体本体１の前部に向けて接近させた状態の車体前部の左側部分を示す斜視図である。以後この左側部分のみを図示して説明するが、右側部分については、左側部分と左右対称な同一構造であるので図示省略する。
【００１３】
ヘッドランプ９の下部には、仮保持用のピン１７を下方に向けて突出して設けてある。一方、ラジエータコアサポート５のヘッドランプ９の下方に形成した平面部１９には、上記した仮保持用のピン１７を挿入する仮保持孔用の孔２１を設けてある。上記した仮保持用のピン１７と仮保持孔用の孔２１とで仮保持部を構成している。
【００１４】
図３は、仮保持用のピン１７および孔２１を拡大して示した斜視図である。仮保持用のピン１７は、先端部（下端部）１７ａから所定距離離れた位置に、円形の溝部１７ｂを備え、さらにその上部に円盤状のフランジ１７ｃを備える。一方仮保持用の孔２１は、矩形状の開口部２１ａと、この開口部２１ａの車体後方側の側縁に連通部２１ｂを通して連続する仮保持部２１ｃとを備える。
【００１５】
仮保持部２１ｃは、円形であり、その内径は溝部２１ｂの外径とほぼ同等としてある。このため、ピン１７の溝部１７ｂが仮保持部２１ｃに入り込むことで、ピン１７が仮保持部２１ｃに係止され、これによりヘッドランプ９がフロントエンドモジュール３に仮保持されることになる。
【００１６】
一方、連通部２１ｂの開口幅は、溝部１７ｂの外径より若干小さくする。このため、溝部１７ｂを仮保持部２１ｃに入り込ませる際には、連通部２１ｂの開口縁が多少弾性変形する。これにより、仮保持部２１ｃに挿入した溝部１７ｂが、連通部２１ｂを通して開口部２１ａへ移動しにくくなり、ヘッドランプ９の仮保持状態が容易に解除されないようにしている。
【００１７】
上記した仮保持状態でのヘッドランプ９は、フロントエンドモジュール３に対し正規の取付位置より車体後方側にあり、この状態で車体前方側へ向けて移動可能である。
【００１８】
また、仮保持用のピン１７における円盤状のフランジ１７ｃは、矩形状の開口部２１ａに対して充分大きく形成してある。これにより、上記した仮保持状態が外れたときに、フランジ１７ｃがラジエータコアサポート５の平面部１９に係止され、ヘッドランプ９の必要以上の落下を防止する。
【００１９】
上記したヘッドランプ９の車体前方側の内側部には、車幅方向内側に突出する前側固定部２３を設けてある。一方ラジエータコアサポート５には、上記した仮保持状態で、前側固定部２３の車体前方側に所定間隔をおいてランプ固定部２５を設けてある。このランプ固定部２５に対し車体前方側から前部固定用ボルト２６を挿入し、その先端をヘッドランプ９の前側固定部２３に仮締結しておく。
【００２０】
また、ヘッドランプ９の車体後方側の内側部には、車体後方へ突出する後側固定部２７を設け、この後側固定部２７には、後部固定用ボルト２８およびクリップ２９をそれぞれ挿入するボルト挿入孔２７ａおよびクリップ挿入孔２７ｂを設ける。
【００２１】
一方、フロントフェンダ１３の上部内側縁に形成してあるランプ取付面３１には、ボルト挿入孔３１ａおよびクリップ係合孔３１ｂをそれぞれ設け、ボルト挿入孔３１ａに対応するランプ取付面３１の下面には、後部固定用ボルト２８を締結する図示しないナットを固定する。
【００２２】
さらに、ヘッドランプ９の外側部には、固定用ブロック３３を設けてある。図４（ａ）は、この固定用ブロック３３を拡大して示す斜視図である。固定用ブロック３３は、ブロック状のフェンダ固定部３５と、フェンダ固定部３５の上部に位置する板状のフェンダガイド部３７とを備える。
【００２３】
フェンダ固定部３５の車幅方向外側の側面３５ａには、ねじ孔３５ｂを設け、一方フロントフェンダ１３の前端下部に設けた下端取付部３９には、ボルト挿入孔３９ａを設ける。ボルト挿入孔３９ａにはボルト４１が挿入され、このボルト４１は固定用ブロック３３のねじ孔３５ｂに締結される。
【００２４】
フェンダガイド部３７は、フェンダ固定部３５の上部から車幅方向外側に向けて突出するとともに、車体後方側へ向けて突出している。このフェンダガイド部３７の車体後方側の端部から車体前方側に向けて、ガイド溝３７ａを形成する。ガイド溝３７ａの入口部は、車体後方側ほど広くなるようテーパ状の切欠３７ｂを形成する。
【００２５】
上記ガイド溝３７ａは、フロントフェンダ１３の下端取付部３９が入り込んでガイドするもので、図４（ａ）のＡ−Ａ断面図である図４（ｂ）に示すように、ガイド溝３７ａの内側壁部３７ｃと、フェンダ固定部３５の側面３５ａとが、ほぼ同一面となるよう設定してある。
【００２６】
すなわち、上記したフェンダガイド部３７は、車体前部におけるフロントフェンダ前縁の車幅方向両側を挟むようにして嵌合するものである。
【００２７】
また、ヘッドランプ９は、上記した固定用ブロック３３を備えた部位から車体後方側が、上方に向けて傾斜しており、この上方部位に、位置決め突起４５を車体後方に向けて突出して設けてある。この位置決め突起４５の先端は先細形状となっている。
【００２８】
一方、この位置決め突起４５に対応してフロントフェンダ１３の上下方向ほぼ中央の前端縁には、ヘッドランプ９の上記した傾斜と整合する傾斜面４７を、車幅方向内側へ突出して設け、この傾斜面４７に設けた位置決め孔４７ａに位置決め突起４５を挿入して位置決めを行う。
【００２９】
次に、作用を説明する。まず、ヘッドランプ９をラジエータコアサポート５に仮保持させる。この仮保持は、仮保持用のピン１７を、仮保持用の孔２１の開口部２１ａに挿入後、車体後方へ移動させ、前記図３に示したように、ピン１７の溝部１７ｂを仮保持部２１ｃに入り込ませることで行う。また、前部固定用ボルト２６をランプ固定部２５に挿入し、前部固定用ボルト２６の先端をヘッドランプ９の前側固定部２３に仮締結する。
【００３０】
このようにしてヘッドランプ９をラジエータコアサポート５に仮保持させたフロントエンドモジュール３を、図２の状態から、車体本体１の前部に向けて接近させる。
【００３１】
上記した接近動作により、図５に示す状態になると、図６に拡大して示すように、フェンダガイド部３７のガイド溝３７ａにフロントフェンダ１３の下端取付部３９が入り込み始める。すなわち、このとき、フェンダガイド部３７は、フロントフェンダ１３前縁の下端取付部３９の両側を挟むようにして嵌合する。ここで、ガイド溝３７ａの入口開口部に切欠３７ｂを形成してあるので、下端取付部３９をガイド溝３７ａに容易に入り込ませることができる。
【００３２】
図５の状態から、フロントエンドモジュール３をさらに車体本体１に接近させると、図７に示すように、フロントフェンダ１３の下端取付部３９がガイド溝３７ａの奥にさらに入り込むと同時に、図８にも拡大して示すように、先細の位置決め突起４５が位置決め孔４７ａに入り込み始める。
【００３３】
この位置決め突起４５の位置決め孔４７ａへの入り込む動作は、この動作に先立って、ガイド溝３７ａにフロントフェンダ１３の下端取付部３９がガイドされて嵌合しているとともに、位置決め突起４５が先細となっているので容易になされる。
【００３４】
図７の状態から、フロントエンドモジュール３をさらに車体本体１に接近させると、図９のＢ−Ｂ断面図である図１０に示すように、位置決め突起４５の基端部の周囲に設けてある当て面４９が傾斜面４７に当接する。これにより、ヘッドランプ９の車体本体１に対する車体前後方向，車幅方向および上下方向の位置出しを行う。
【００３５】
このとき、ヘッドランプ９における後側固定部２７が、フロントフェンダ１３のランプ取付面３１上に載置され、ボルト挿入孔２７ａとボルト挿入孔３１ａとが整合するとともに、クリップ挿入孔２７ｂとクリップ係合孔３１ｂとが互いに整合する状態となる。
【００３６】
図１０の当接状態から、フロントエンドモジュール３をさらに車体本体１側に押し込むと、ラジエータコアサポート５がヘッドランプ９に対して車体後方側に移動する。この移動により、図９および図１１に示すように、仮保持用のピン１７が仮保持部２１ｃから外れて開口部２１ａに移動し、ヘッドランプ９の仮保持状態が解除される。
【００３７】
このときピン１７のフランジ１７ｃが開口部２１ａの周縁に接触してヘッドランプ９の必要以上の落下を防ぐ。
【００３８】
上記したヘッドランプ９の仮保持状態が解除されるのに合わせて、ラジエータコアサポート５と一体のランプ固定部２５も車体後方へ移動する。このときの動きを、図１２（ａ），（ｂ）に示す。すなわち、図１２（ａ）の状態から、ランプ固定部２５が車体後方へ移動することで、図１２（ｂ）に示すように、ランプ固定部２５がヘッドランプ９の前側固定部２３に接触し、前部固定用ボルト２６は、ランプ固定部２５から車体前方へ突出した状態となる。
【００３９】
この状態で、前部固定用ボルト２６を締結することで、前側固定部２３をラジエータコアサポート５のランプ固定部２５に固定する。また、図９に示すように、クリップ２９をクリップ挿入孔２７ｂに挿入するとともに、後部固定用ボルト２８をボルト挿入孔２７ａに挿入して締結することで、ヘッドランプ９の後側固定部２７をフロントフェンダ１３のランプ取付面３１に固定する。
【００４０】
さらに、車体側方からボルト４１をフロントフェンダ１３下部における下部取付部３９のボルト挿入孔３９ａに挿入し、フェンダ固定部３５のねじ孔３５ｂに締結することで、下端取付部３９をヘッドランプ９の固定用ブロック３３に固定する。これにより、ヘッドランプ９のフロントフェンダ１３への位置決め固定作業が完了する。
【００４１】
上記した実施形態によれば、ヘッドランプ９を、フロントエンドモジュール３に対して正規の取付位置より車体後方側となる状態で、ラジエータコアサポート５に仮保持させ、この仮保持状態で、フロントエンドモジュール３を車体前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、フロントエンドモジュール３の車体後方への移動に伴って、ヘッドランプ９が、車体前部に当接して位置決めされ、その後ラジエータコアサポート５に対して車体前方側となるよう相対移動する。
【００４２】
このため、ヘッドランプ９をフロントフェンダ１３に位置決めする際に、ラジエータコアサポート５，フードリッジ１１，ヘッドランプ９，フロントフェンダ１３それぞれの取り付け位置ばらつきの影響を排除でき、ヘッドランプ９とフロントフェンダ１３との位置合わせを均一化することができ、これら相互間の隙間や表面の段差も均一化できて外観品質が向上する。
【００４３】
また、上記した位置決め作業時において、フロントエンドモジュール３が、剛性不足から、その自重によって多少変形したとしても、ヘッドランプ９はフロントエンドモジュール３に対し仮保持状態として相対移動可能としてあるので、ヘッドランプ９のフロントフェンダ１３に対する位置合わせを確実にできる。
【００４４】
さらに、この場合、ヘッドランプ９は、ラジエータコアサポート５に仮保持させてフロントエンドモジュール３に組み込んであるので、ヘッドランプ９を単品で後付けする作業が不要となり、作業工数を削減できる。
【００４５】
また、フロントエンドモジュール３の車体本体１への取り付けについては、車幅方向両側の上部を、図１に示すフードリッジ１１に固定するとともに、下部をフロントサイドメンバ１５の前端に固定する。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の実施の一形態を示すヘッドランプの車体位置決め構造を示す分解斜視図である。
【図２】図１の状態から、フロントエンドモジュールを車体前部に接近させた状態の車体前部の左側を示す斜視図である。
【図３】図２における仮保持用のピンおよび孔を拡大した斜視図である。
【図４】（ａ）は図２における固定用ブロックを拡大して示す斜視図、（ｂ）は（ａ）のＡ−Ａ断面である。
【図５】図２の状態から、フロントエンドモジュールを車体前部に向けて接近移動させた状態を示す動作説明図である。
【図６】図５における固定用ブロック周辺の拡大した斜視図である。
【図７】図５の状態から、フロントエンドモジュールをさらに車体前部に接近させた状態を示す動作説明図である。
【図８】図７における位置決め突起周辺の拡大した斜視図である。
【図９】図７の状態から、フロントエンドモジュールをさらに車体前部に接近させた状態を示す動作説明図である。
【図１０】図９のＢ−Ｂ断面図である。
【図１１】図９の仮保持部周辺の拡大した斜視図である。
【図１２】ヘッドランプ側の前側固定部と、ラジエータコアサポート側のランプ固定部との相対位置を示す動作説明図で、（ａ）は図５に対応し、（ｂ）は図９に対応している。
【符号の説明】
１ 車体本体
３ フロントエンドモジュール（車体前部ユニット）
９ ヘッドランプ
１３ フロントフェンダ
１７ 仮保持用のピン（仮保持部）
２１ 仮保持用の孔（仮保持部）
３７ フェンダガイド部
４５ 位置決め突起
４７ａ 位置決め孔
Claims (6)
- 車体前部ユニットにヘッドランプを仮保持させ、この仮保持状態で、前記車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、前記ヘッドランプを、前記車体前部ユニットに対し相対移動させて前記車体前部に位置決めするヘッドランプの車体位置決め方法であって、前記ヘッドランプを、前記車体前部ユニットに対して正規の取付位置より車体後方側となるよう仮保持させ、この仮保持状態で、前記車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、前記車体前部ユニットの車体後方への移動に伴って、前記ヘッドランプが、前記車体前部に当接することで、前記車体前部ユニットに対して車体前方側に相対移動し、この相対移動により、前記ヘッドランプの仮保持状態を解除して前記ヘッドランプを前記車体前部に位置決めすることを特徴とするヘッドランプの車体位置決め方法。
- 前記車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、前記ヘッドランプに設けたフェンダガイド部が、前記車体前部におけるフロントフェンダ前縁の車幅方向両側を挟むようにして嵌合することを特徴とする請求項１記載のヘッドランプの車体位置決め方法。
- 前記フェンダガイド部が前記フロントフェンダ前縁に嵌合した後に、前記ヘッドランプに設けた位置決め突起が、前記フロントフェンダに設けた位置決め孔に入り込むことを特徴とする請求項２記載のヘッドランプの車体位置決め方法。
- ヘッドランプを車体前部ユニットに対して正規の取付位置より車体後方側となるよう仮保持させる仮保持部を設け、この仮保持部により、前記ヘッドランプを前記車体前部ユニットに仮保持させた状態で、前記車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、前記車体前部ユニットの車体後方への移動に伴って、前記ヘッドランプが、前記車体前部に当接することで、前記仮保持部による仮保持状態が解除されて前記車体前部に位置決めされるように、前記車体前部ユニットに対して車体前方側に相対移動可能となることを特徴とするヘッドランプの車体位置決め構造。
- 前記車体前部ユニットを車体本体の前方から車体前部に接近させて組み付ける際に、前記車体前部におけるフロントフェンダ前縁の車幅方向両側を挟むようにして嵌合するガイド部を、前記ヘッドランプに設けたことを特徴とする請求項４記載のヘッドランプの車体位置決め構造。
- 前記ヘッドランプに位置決め突起を設ける一方、前記フロントフェンダには、前記位置決め突起が入り込む位置決め孔を設け、前記位置決め突起が前記位置決め孔に入り込む動作は、前記ガイド部が前記フロントフェンダ前縁に嵌合した後になされるよう設定したことを特徴とする請求項５記載のヘッドランプの車体位置決め構造。
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