JP3842385B2 - タイヤ形状調節方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ形状調節方法及びポストキュアインフレーション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤのユニフォミティ特性は、タイヤの半径方向(加重方向)への力の変動(RFV;Radial Force Variation)、横方向への力の変動(LFV;Lateral Force Variation)、前後方向への力の変動(TFV;Tangential Force Variation) によって特定されている。RFV、LFV、TFVは、それぞれ小さい数値である方が、ユニフォミティ特性がよいと評価される。また、タイヤの周上で外側に突出している部分には余計な力が発生するため、ユニフォミティ特性のうちRFVは、このような半径方向での寸法的な不均一さ(RR;Radial Runout)と比較的、相関関係にある。
【0003】
従来、RFVを向上させてタイヤのユニフォミティ特性を修正するために、タイヤのRRを小さくすることが行われている。
【0004】
タイヤのRRを小さくする方法としては、突出した部分を研磨して修正する方法が挙げられる。この方法を適用した装置には、例えば、加硫後のタイヤを一定の状態に保持して形状を安定化させる加硫後工程(ポストキュアインフレーション、以下、PCIと略す)中に、タイヤ径センサによりタイヤ外径が測定されて、タイヤ外径の大きい部分を外径バフ装置により研磨するポストキュアインフレーション装置(ポストキュアインフレータともいう。以下、PCI装置と略す)がある(特開平3−153319号公報参照)。
【0005】
また、加硫タイヤのカーカス補強部材に常温で永久変形を生じさせて、非研磨でユニフォミティ特性を修正する方法もある(特表平6−507858号公報参照)。この方法を適用した装置には、製品タイヤでユニフォミティ特性を試験して、修正を必要とするタイヤの側壁上の箇所を特定し、この部分を拘束リングで拘束して、この状態で比較的高い膨張圧力を所定時間加える装置がある。これにより、タイヤの推奨作動圧力以上の圧力までタイヤが膨張してカーカス補強部材の部分が引っ張られ、永久伸びが生じて、タイヤのユニフォミティが修正される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のタイヤを研磨する方法では、研磨によってタイヤの外見品質が低下することがある。また、タイヤを研磨することによって粉塵が発生し、この粉塵によって工場が汚染されるという問題がある。一方、非研磨によってカーカス補強部材の一部を永久変形する方法では、永久変形を生じさせるために必要な圧力が、カーカス補強部材の種類又は物性によって非常に大きくなる場合があり、このような非常に大きい圧力によってタイヤが破壊されてしまうことがある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、タイヤの外見を損なわず、且つタイヤを破壊することなく、効率よくタイヤのユニフォミティ特性を修正することができるタイヤ形状調節方法及びPCI装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、加硫後のタイヤの形状を調節するタイヤ形状調節方法であって、加硫直後のポストキュアインフレーション時に、前記加硫後のタイヤのショルダー部及びサイド部の少なくとも一方を予め設定した所定時間拘束し、前記タイヤの拘束位置をRRの測定ピーク位置とする、ことを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、PCI時にタイヤのショルダー部及びサイド部の少なくとも一方が所定時間に拘束される。このタイヤのショルダー部及びサイド部の少なくとも一方には、両ビード間に跨がってカーカスのコード部材がトロイダル状に配置されており、この拘束によって、両ビード間のPCI時のコード部材の長さの伸長が制限される。タイヤの半径方向の形状はコード部材の長さに依存しているため、拘束部分のコード部材の伸長が制限されて長さが制御されることにより、PCI後のタイヤの形状を調節することができる。
【0010】
これは、PCI時の温度の変化に応じて、カーカスのコード部材の物性が変化することに基づいている。一例として、図6(A)及び図6(B)には、ポリエステルコードの熱収縮率と引っ張り試験伸度の関係、引っ張り試験伸度と温度の関係がそれぞれ示されている。タイヤの内圧、温度、拘束時間を調節することによって、図6(A)の点Aから点Bへコードの物性を変えることができる。これは、例えば図6(B)に示されるように、タイヤの内圧を一定にして時間を一定にして、タイヤの加熱温度を変化させることにより、引っ張り試験伸度を変化させることが可能であることからわかる。タイヤの物性を図6(A)の点Aから点Bへのように変化することによって、常温でのコード長さが変化を変化させることができる。
【0011】
これにより、タイヤを研磨したり大きな圧力を加えたりする必要がないので、タイヤの外見を損なわず且つタイヤを破壊することなく、効率よくタイヤの形状を調節して、ユニフォミティ特性を修正することができる。
また、この発明によれば、製品タイヤのRR及びRFVと高い相関関係を有するRRの測定ピーク位置でタイヤを拘束するので、容易に製品タイヤのRR及びRFVの均一化を図ることができる。ここで測定されるRRは、加硫前のタイヤでのRRであってもよく、また加硫後の製品タイヤのRRであってもよい。加硫前のタイヤのRRを測定した場合には、このタイヤの拘束位置を直接特定することができるので、一層確実にタイヤの形状を調節することができる。
なお、タイヤのRRを測定したときに得られる波形では、ピークの位置とピークの大きさとが示されるため、ピーク位置を拘束位置とするだけでなく、ピークの大きさから拘束圧力や押し込み量を特定することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1において、加硫前のタイヤの形状特性に基づいて、前記タイヤの拘束位置、拘束圧力、拘束時間及び拘束位置における押し込み量から少なくとも1つを選択して決定することを特徴としている。
【0013】
この発明によれば、拘束位置、拘束圧力、拘束時間及び拘束位置における押し込み量の少なくとも1つを、加硫前のタイヤの形状特性に基づいて決定するので、これらの拘束条件を決定するために別途タイヤを作製する必要がなく、効率よく形状を調節されたタイヤを製造することができる。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記タイヤの拘束位置におけるカーカスコード部材の伸長を制限することを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、両ビード間にトロイダル状に配置されたカーカスコード部材が拘束位置で伸長を制限されるので、両ビード間でのカーカスコード部材の長さが調節されて、タイヤの半径方向での寸法が均一化されて、容易にタイヤの形状を調節することができる。
【0019】
【0020】
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0022】
図1及び図2には、本実施の形態に係るPCI装置100が示されている。このPCI装置100には、加硫直後のタイヤ10が装填される。
【0023】
図3に示されるように、装填されるタイヤ10は、ビードコア12の周りにタイヤ内側から外側に折り返し係止されるカーカス14を備えている。このカーカス14は、繊維コード、例えばポリエステルコードからなるプライコードが実質的に周方向と直行する方向に配列された少なくとも1枚の層から構成されている。
【0024】
また、このタイヤ10は、このカーカス14のクラウン部に位置するトレッド部16と、カーカス14のサイドウォール部18と、トレッド部16とサイドウォール部18との間のショルダ部24とで構成されている。
【0025】
トレッド部16には、内側に配置された少なくとも異方向の二層のベルト層20と、このうちの最外層のベルト層20の外周側に少なくとも1枚よりなるベルト補強層22A(及び22B)とが配置されている。このベルト層20には、スチールコード等の非伸長性コードが周方向(又はタイヤの赤道面)に対して10°〜30°の傾斜角度で配列されており、少なくとも2枚、コードが異なる方向に交差するように重ね合わせている。
【0026】
図1に示されるように、PCI装置100には、PCI装置100に加硫直後のタイヤ10を径方向中心部分で支持するためのリム102が設けられている。タイヤ10は半径方向をPCI装置10の水平方向に向けて、リム102に支持される。
【0027】
このリム102には、リム中心軸104が連結されている。また、リム102に連結されたリム中心軸104の他端側は、内圧付与装置106(図2参照)に連結されている。
【0028】
内圧付与装置106は、空気を圧縮して供給するための図示しないコンプレッサを備えている。内圧付与装置106によってタイヤ10に付与される内圧は、タイヤ10の使用圧力又はPCI圧力程度となっている。また、内圧付与装置106は、圧縮空気を加熱するための図示しない加熱手段を備えており、加熱された圧縮空気がタイヤ10に供給し、タイヤ10の内部を所定の温度に加熱する。タイヤ10の内圧が付与されるときの温度は80℃以上、好ましくは120℃〜180℃である。80℃以下では、タイヤ10のコード物性が変化しにくく、物性をコントロールする観点から好ましくない。
【0029】
リム中心軸104及びリム102は、中空の部材であり、また、リム102には図示しない空気孔が設けられている。このため、内圧付与装置106で作られた圧縮空気は、リム中心軸104及びリム102を介して、タイヤ10の内部へ供給される。
【0030】
リム102の図1上下方向には、タイヤ10を挟むと共にタイヤ10と同心円上に、円弧状の一対の拘束治具108が配置されている。
【0031】
図4に示されるように、拘束治具108は、所定の中心角度θ(図4(B)参照)を有し、円弧の中心から拘束治具108の端部までの寸法L(図4(B)参照)は、リム102に支持されるタイヤ10の半径と略等しくなっている。
【0032】
拘束治具108は、支持面110と拘束面112とを備えている。支持面110は、リム102に支持されたタイヤ10と周方向側面となる面に略水平になっている。支持面110には、駆動部116(図2参照)に連結された支持軸114がそれぞれ着脱自在に取り付けられている。駆動部116は、支持軸114を上下方向に所定量で移動させる。
【0033】
拘束面112は、拘束治具108の中心側端部から外側端部に向かって厚みが大きくなる傾斜面となっている(図4(A)参照)。このため、拘束治具108は、タイヤ10のショルダ部24に拘束面112を対向させている。
【0034】
この拘束治具108は、種々の材料で構成したものを用いることができ、例えば、金属、プラスチック、ゴムなどを適用することができる。このような材料は、タイヤ10の冷却速度を調整する観点から、金属が好ましい。
【0035】
拘束治具108は、中心角度θが異なる複数の拘束治具108からタイヤ10の拘束条件に基づいて選択され、支持軸114に交換可能に取り付けられる。
【0036】
PCI装置100には、図示しないCPU、RAM、ROMで構成されたコントローラ118が備えられている。
【0037】
コントローラ118には、タイヤ10を構成するプライコードの材質やタイヤ10の物性に応じてプライコードの長さを制御して、タイヤ10の形状調節処理を行うプログラムが記憶されている。コントローラ118は、このプログラムに従って、リム102に支持されたタイヤ10を拘束する拘束条件を設定する。
【0038】
コントローラ118には、駆動部116及び内圧付与装置106が接続されている。コントローラ118は、設定された拘束条件に応じた駆動信号を、駆動部116及び内圧付与装置106に出力し、拘束治具108のタイヤ10に対する拘束位置、拘束圧力及び押し込み量とタイヤ10の内圧とを制御する。
【0039】
この拘束治具108による拘束圧力は、内圧、プライコードの材質やタイヤ10のサイズ、ゴム物性などによって変わるが、一般に、0.5K〜5K程度にすることができる。0.5Kよりも拘束圧力が低ければ、プライコードの伸長を制限することができないため、好ましくなく、5Kよりも拘束圧力が高ければ、プライコードがタイヤ10の内側に向かって伸長すると共に、高い拘束圧力によって、拘束されていない部分のプライコードの長さなどが大きく変化するため、好ましくない。好ましくは、内圧+0.1〜1.0Kである。内圧よりもこの範囲で拘束することで、プライコードを良好に拘束することができる。
【0040】
拘束治具108の押し込み量は、押圧により押し込められる寸法的な量であり、0.5〜5mmとすることが好ましく、より好適には2〜3mmである。
【0041】
また、コントローラ118には、コントローラ118にタイヤ10の加硫前状態でのRR波形及び加硫後のユニフォミティ特性などの種々のデータを入力するための入力器120と、入力されたデータなどを表示すると共に各種の操作状態を表示する表示パネル122が接続されている。入力器120は、測定されたRR波形などを測定器から直接入力可能なものにすることができるが、数値の入力が可能なキーボードなどであってもよい。
【0042】
コントローラ118によって行われるタイヤ10の形状調節処理は、タイヤ10の加硫前状態のときのRR波形から、波形のピーク部分に該当するタイヤ10の部分を拘束位置として検出し、拘束位置を拘束することにより、タイヤ10のユニフォミティ特性を修正するものである。この拘束位置は、加硫直後のタイヤ10と同一の条件でPCI工程に付された製品としての加硫後のタイヤ10のRFVが既に明らかである場合には、加硫後のRFVから特定することもできる。
【0043】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
加硫前状態のタイヤ10のRRは、周知の方法で測定されて波形として表される。この得られたRR波形には、通常、波形のピーク部及びボトム部とが認められ、このピーク部は、カーカス14のプライコードの長さが最も長い部分に相当し、一方、ボトム部は、カーカス14のプライコードの長さが最も短い部分に相当する。
【0044】
このカーカス14のプライコードは、PCI工程では80℃以上の高温で所定の内圧が付与されると、安定化するまで伸長する。
【0045】
RR波形のピーク部に相当する部分を拘束位置とし、PCI中にこの拘束位置を拘束することにより、この部分のプライコードの伸長が抑制される。一方、ボトム部に相当する部分を開放状態とすることにより、この部分のプライコードが伸長する。これにより、RR波形のピーク部とボトム部とでプライコードの長さの差が小さくなって寸法の均一化が図られる。この結果、タイヤ10の形状が調節されて、タイヤ10の真円度を高くすることができる。
【0046】
図5には、タイヤ10の形状調節処理の一例を示すフローチャートが示されている。
【0047】
ステップ200において、タイヤ10がPCI装置100に装填されたか否かが判断され装填されるまで判断は否定される。
【0048】
PCI装置100では、モールドで高温での加硫処理が行われたタイヤ10が、図示しないタイヤ運搬手段によって運ばれて、PCI装置100のリム102に保持される。リム102にタイヤ10が保持されたことが感知されるとタイヤ10の装填が完了したとして判断は肯定され、ステップ202に移行する。
【0049】
ステップ202では、プライコードの材質及びタイヤサイズが取り込まれ、ステップ204において、リム102に保持されたタイヤ10のRR波形又はRFVが取り込まれる。これらのデータは、所定の操作によって、PCI装置100に備えられた入力器120から入力される。また、この入力の確認はPCI装置100に設けられた表示パネル122に表示することにより確認することができる。
【0050】
RR波形又はRFVが取り込まれると、ステップ206において、取り込まれたRR波形又はRFVに基づいて演算が行われて、ステップ208において、拘束量及び拘束位置が決定される。拘束量は、形状の調節に必要な負荷の量であり、ピークの大きさに基づいて決定される。
【0051】
拘束量及び拘束位置が決定されると、ステップ210において、拘束圧力又は押し込み量と拘束時間とが決定される。この拘束圧力又は押し込み量は、PCI工程でタイヤ10に付与される内圧と温度及びプライコードの材質に基づいて決定される。拘束時間は、拘束量と拘束圧力又は押し込み量とによって決定される。拘束圧力又は押し込み量としたのは、押し込み量は拘束圧力と密接に関係しており、押し込み量を制御することにより、結果的に拘束圧力を制御するからである。従って、拘束圧力値自体又は押し込み量のいずれか一方を制御すればよく、簡易な方法として、拘束圧力条件は省略することができる。
【0052】
拘束位置、拘束圧力又は押し込み量と拘束時間とを含む各種の拘束条件が決定されると、ステップ212において、PCIをスタートするか否かが判断され、スタートされるまで判断は否定される。
【0053】
拘束条件に対応する拘束治具108が支持軸114に取り付けられ、入力器120を介してスタートの指示が入力されると、判断は肯定されたステップ214に移行し、タイヤ10に内圧の付与が開始され、ステップ216において拘束が行われる。
【0054】
内圧が付与されるときには、内圧付与装置106は80℃以上の圧縮空気を供給する。圧縮空気は、内圧付与装置106からリム中心軸104を介してリム102に供給され、リムに設けられた空気孔を通って、タイヤ10の内部へ供給される。内圧付与装置106は、タイヤ10の使用圧力程度の圧力がタイヤ10に付与されるように、圧縮空気の供給圧力を調整する。
【0055】
拘束が開始されると、タイヤ10の上下方向に配置された一対の拘束治具108が、それぞれタイヤ10に接近する。拘束治具108は、拘束面112をタイヤ10のショルダ部24に当接させ、所定の圧力で押圧してタイヤ10を拘束する。
【0056】
拘束が開始されると、ステップ218において、拘束時間が経過したか否かが判断される。拘束時間が経過するまで判断は否定されて、拘束治具108による拘束が継続される。PCI中に拘束を行うことによって、拘束位置に配置するプライコードの伸長が抑制され、拘束位置に配置されていないプライコードは伸長する。これにより、プライコードの長さがタイヤ10の全周にわたって均一化される。
【0057】
拘束時間が経過した場合には、判断は肯定されてステップ220に移行し、拘束が解除される。拘束が解除されると、拘束治具108が支持軸114の上下動によって互いに離反する。これにより、拘束位置として決定されたタイヤ10のショルダ部24から拘束治具108の拘束面112が離反し、ショルダ部24が開放状態となる。このときにはカーカス14のプライコードの状態は安定化しているため、プライコードが伸長することはない。
【0058】
拘束が解除されると、ステップ222において、PCIを終了するか否かが判断され、PCIを終了するまで判断は否定される。PCIは、タイヤ10が、設定された所定の温度に冷却されるまで継続される。
【0059】
タイヤ10の温度が所定の温度になった場合には、判断は肯定されて一連の処理を完了する。
【0060】
このように、PCIを行いながら拘束位置が所定の圧力又は所定の押し込み量で拘束されることにより、ショルダ部24のプライコードの伸長が制限されてプライコードの長さが均一化されるので、PCI後のタイヤ10の形状が調節されて真円度の高いユニフォミティ特性が優れたタイヤ10を製造することができる。
【0061】
また、PCI中で使用圧力程度の圧力を用いてタイヤ10の形状を調節するので、タイヤ10を削ったり、また高圧で処理する必要がなく、効率よくタイヤ10の形状の調節を行うことができる。
【0062】
なお、同一のRR波形又はRFVを有することが既にわかっている複数のタイヤ10を一度に処理する場合には、拘束条件の設定を一度行った後で、拘束処理及びPCIのみを連続して行うようにしてもよい。
【0063】
本実施の形態では、中心角度θ=160°であり、傾斜面を拘束面112としてタイヤ10のショルダ部24を拘束する拘束治具108を用いたが、これに限定されない。
【0064】
図7(A)には、リング状の拘束治具130の平面図が示されている。この拘束治具130は中心角度θ=360°となっている。これにより、タイヤ10の側面を全周にわたって拘束することができる。
【0065】
また、図7(B)には、他の拘束治具140の断面図が示されている。この拘束治具140は、平坦な拘束面112を有している。これにより、拘束治具140は、拘束面112でサイドウォール部18を拘束して、サイドウォール部18でのプライコードの伸長を制限することができる。
【0066】
本実施の形態では、固定された中心角度θ=160°を有する拘束治具108を用いたが、これに限定されない。拘束治具108の拘束面112の面積が、0<θ<360の範囲で変動可能としたものであってもよい。これにより、タイヤ10毎に拘束位置の面積が異なる場合であっても、この拘束位置の面積に合わせて中心角度θを調節することにより、1つの拘束治具108で複数のタイヤ10を拘束することができる。
【0067】
また、本実施の形態では拘束治具108をタイヤ10に対して一対配置したが、タイヤ10の拘束位置の数に応じて3つ以上配置してもよい。これにより、タイヤ10の周面を複数箇所にわたって細かく拘束することができるので、各拘束位置に応じた条件で拘束することができ、一層寸法の均一化を図ることができる。
【0068】
また、本実施の形態では、タイヤ10の拘束位置を予め測定されたRR波形又は既知のRFVに基づいて決定して拘束したが、これに限定されない。
【0069】
例えば、拘束中のタイヤ10の形状や拘束による調節程度を測定又は予測可能なセンサをPCI装置100に設けて、PCI及び拘束処理中のタイヤ10の形状を逐次取り込み可能とし、拘束処理中のリアルタイムのタイヤ10の形状に基づいて拘束位置などの拘束条件を変更するようにしてもよい。これにより、PCI及び拘束処理後のタイヤ10の真円度を一層高いものにすることができる。
【0070】
【実施例】
サイズが205/70 R14の乗用車用ラジアルタイヤ10を60本作製して、30本ずつに分けた。このタイヤ10のカーカス14には、ポリエステルコードが使用されている。
【0071】
一方の群のタイヤ10(実施例)は、加硫直後に本実施の形態のPCI装置100に装填され、拘束処理及びPCIに付された。拘束条件は、PCI時の内圧を1.5K、押し込み量を2mm、拘束時間を0.5分とし、PCIは20分間とした。拘束治具108には、中心角度θ=160°の鉄製の拘束治具108が用いられた。
【0072】
これに対して他方の群のタイヤ10(比較例)は、加硫直後にPCI装置100に装填され、拘束処理を行わずに、PCIのみを行った。拘束処理を行わない以外は実施例と同様に行った。
【0073】
PCI後の実施例のタイヤ10の群と比較例のタイヤ10の群とについて、それぞれRFV及びRRを測定した。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示されるように、PCI時に拘束処理を行った実施例のタイヤ10は、PCI時に拘束処理を行わなかった比較例のタイヤ10と比較して、RFVの平均値で16N低い値となり、標準偏差も約50%改善されていた。
【0076】
また、実施例のタイヤ10は比較例のタイヤ10と比較して、RRの値も20%改善されていた。
【0077】
これは、実施例のタイヤ10の方が真円度が高く、ユニフォミティ特性が修正されたことを示している。
【0078】
従って、PCIを行いながら拘束位置を拘束することによって、PCI時でのエネルギーを利用して、外観を損なうことなく効率よくユニフォミティ特性を修正することができた。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、PCI時に、加硫直後のタイヤの側面から周面の少なくとも一部が所定時間で拘束されて、コード部材の長さが制御されるので、タイヤの外見を損なわず、且つタイヤを破壊することなく、効率よくタイヤのユニフォミティ特性を修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るPCI装置の概略断面図である。
【図2】 本実施の形態に係るPCI装置のブロック図である。
【図3】 本実施の形態に係るPCI装置に装填可能なタイヤの断面図である。
【図4】 (A)は、本実施の形態に係るPCI装置の拘束治具の側面図、(B)は、(A)の平面図である。
【図5】 本実施の形態に係るPCI装置のPCI処理及び拘束処理を示すフローチャートである。
【図6】 (A)は、プライコードの熱収縮率と引っ張り試験伸度との関係を示したグラフ、(B)は、プライコードの引っ張り試験伸度と温度との関係を示したグラフである。
【図7】 (A)は、本実施の形態に係るPCI装置の他の拘束治具の平面図、(B)は、本実施の形態に係るPCI装置の他の拘束治具の断面図である。
【符号の説明】
10 タイヤ
14 カーカス
18 サイドウォール部
24 ショルダ部
100 PCI装置
102 リム
106 内圧付与装置(内圧供給手段)
108 拘束治具(拘束手段)
118 コントローラ(拘束条件設定手段、制御手段)
Claims (3)
- 加硫後のタイヤの形状を調節するタイヤ形状調節方法であって、
加硫直後のポストキュアインフレーション時に、前記加硫後のタイヤのショルダー部及びサイド部の少なくとも一方を予め設定した所定時間拘束し、前記タイヤの拘束位置をRRの測定ピーク位置とする、
ことを特徴とするタイヤ形状調節方法。 - 加硫前のタイヤの形状特性に基づいて、前記タイヤの拘束位置、拘束圧力、拘束時間及び拘束位置における押し込み量から少なくとも1つを選択して決定することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ形状調節方法。
- 前記タイヤの拘束位置におけるカーカスコード部材の伸長を制限することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ形状調節方法。
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