JP3840313B2 - 電動パワーステアリング制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動パワーステアリング制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図14に示すように、ステアリングホイールWに連係する入力軸1の先端に、ピニオン2を設けている。また、両端に車輪3R、3Lが連係するロッド4に、ラック5を形成している。そして、上記入力軸1のピニオン2を、このロッド4のラック5にかみ合せている。
また、電動モータ6を設け、そのモータ出力を、減速機7を介して上記ロッド4に伝達するようにしている。
さらに、入力軸1に作用する操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ8と、車速を検出する車速センサ9とを設け、コントローラーCに接続している。
【0003】
このコントローラーCは、図15に示すように、基本アシスト指令値決定回路10とモータ電流制御回路11とを備えている。
基本アシスト指令値決定回路10では、操舵トルク及び車速に応じて基本アシスト指令値を決定している。そして、モータ電流制御回路11は、その基本アシスト指令値に基づいて、電動モータ6にモータ電流を流す。したがって、電動モータ6には、操舵トルク及び車速に応じたモータトルクが発生し、アシスト力を付与することになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような電動パワーステアリング装置では、電動モータ6が回転すると、その磁気抵抗の変化によりコギングトルクが発生してしまう。つまり、電動モータ6が回転しているとき、電動モータ6内部のロータがその周囲の磁石に吸引されたり、反発したりするため、モータトルクに脈動が発生してしまう。
いま、説明を簡単にするため、図2(b)の一点鎖線に示すように、一定の操舵トルクがステアリングホイールWに入力されているとする。このとき、電動モータ6には一定のモータ電流が流れ、図2(a)の一点鎖線に示すように、一定のモータトルクが発生するはずである。ところが、上記コギングトルクが発生して、図2(a)の実線に示すように、モータトルクに脈動が発生してしまう。
【0005】
コギングトルクによってモータトルクが増大するときは、その分ステアリングが軽くなるので、操舵トルクが小さく検出される。逆に、コギングトルクによってモータトルクが減少するときは、その分ステアリングが重くなるので、操舵トルクが大きく検出される。したがって、図2(b)の二点鎖線に示すように、操舵トルク信号にも脈動が発生し、モータトルクの脈動とは反転して生じることになる。そして、その操舵トルク信号に応じてモータ電流も変化するので、結局は、コギングトルクが打ち消され、その影響はなくなるはずである。
【0006】
ところが、実際には、モータトルクが変化してから、操舵トルクセンサにまで伝わるまでに、ラックとピニオンとのかみ合い等を原因とする時間差が発生してしまう。したがって、図2(b)の実線に示すように、操舵トルク信号の脈動は、モータトルクの脈動に対してやや遅れて発生することになる。そして、その操舵トルク信号に応じてモータ電流が変化すると、モータトルクの脈動がきれいには打ち消されず、それがドライバーの手に微振動として伝わって、操舵フィーリングが悪くなってしまう。
この発明の目的は、電動モータに発生するコギングトルクによる影響をなくし、操舵フィーリングを向上させることのできる電動パワーステアリング制御装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、アシスト力を発生する電動モータと、操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、少なくとも操舵トルクに応じて基本アシスト指令値を決定する基本アシスト指令値決定手段と、基本アシスト指令値に基づいて、電動モータにモータ電流を流すモータ電流制御手段とを備えた電動パワーステアリング制御装置を前提とする。
そして、第1の発明は、操舵トルク検出手段で検出された操舵トルク信号を微分して、操舵トルク微分指令値を決定する操舵トルク微分指令値決定手段を備え、上記モータ電流制御手段は、上記操舵トルク微分指令値決定手段が決定した操舵トルク微分指令値と上記基本アシスト指令値とからなるモータ電流指令値に基づいて、電動モータにモータ電流を流す構成にするとともに、この操舵トルク微分指令値決定手段は、上記操舵トルク信号の脈動に対するモータ電流指令値の脈動の位相を、モータトルクの脈動を反転させた信号に対する操舵トルク信号の脈動の遅れ分だけ進めるように、操舵トルク微分指令値の大きさを決定し、その結果、モータ電流指令値の脈動がモータトルクの脈動と反転する構成にした点に特徴を有する。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、車速検出手段を設け、操舵トルク微分指令値の大きさを車速に応じて変化させる構成にした点に特徴を有する。
第3の発明は、第1または第2の発明において、モータ角速度検出手段を設け、操舵トルク微分指令値の大きさをモータ角速度に応じて変化させる構成にした点に特徴を有する。
第4の発明は、第3の発明において、車両の据え切り・低速走行域でのみ、操舵トルク微分指令値の大きさをモータ角速度に応じて変化させる構成にした点に特徴を有する。
【0009】
第5の発明は、第1〜4の発明において、設定周波数以上の操舵トルク微分指令値をカットするローパスフィルタを設け、その設定周波数を、予め設定したコギング周波数の最高値よりも高くしておく点に特徴を有する。
第6の発明は、第1〜4の発明において、モータ角速度検出手段と、設定周波数以上の操舵トルク微分指令値をカットする可変型ローパスフィルタとを備え、可変型ローパスフィルタの設定周波数を、モータ角速度から算出されるコギング周波数よりも高く変化させる点に特徴を有する。
第7の発明は、第6の発明において、車両の据え切り・低速走行域でのみ、可変型ローパスフィルタの設定周波数を、モータ角速度から算出されるコギング周波数よりも高く変化させ、車両の中・高速走行域では、その設定周波数を固定しておく構成にした点に特徴を有する。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜3に、この発明の電動パワーステアリング制御装置の第1実施例を示す。ただし、上記従来例と同一の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図1に示すように、コントローラーCには、操舵トルク微分指令値回路12を設けている。この操舵トルク微分指令値回路12は、上記操舵トルクセンサ8で検出された操舵トルク信号を微分して、操舵トルク微分指令値を決定するものである。そして、この操舵トルク微分指令値を、基本アシスト指令値に加算して、モータ電流制御回路11に伝えるようにしている。
【0011】
以下では、操舵トルク信号を微分して、操舵トルク微分指令値を決定する理由を説明する。
既に説明したように、操舵トルク信号の脈動は、モータトルクの脈動に対してやや遅れて生じることになる。
そこで、操舵トルク信号を微分するのであるが、例えば、図2(b)の実線に示す操舵トルク信号を微分すると、図2(c)に示すように、操舵トルク信号の脈動部分だけを抽出して、その位相を90度すすませた信号となる。
【0012】
ここで、モータ制御回路11に伝えられるモータ電流指令値は、基本アシスト指令値と操舵トルク微分指令値とを加算したものである。そして、このモータ電流指令値を、図2(d)に示すように、モータトルクの脈動と反転させれば、コギングトルクを打ち消すことができる。
上記モータ電流指令値に含まれるコギング成分の大きさa及び操舵トルク信号に対する位相θは、図3に示す関係で表すことができる。
つまり、基本アシスト指令値は、操舵トルクに応じて決められる。そして、操舵トルクには、前述したようにやや遅れて発生したコギング成分が含まれるので、この基本アシスト指令値にも、そのコギング成分が含まれることになる。
それに対して、操舵トルク微分指令値は、操舵トルク信号に含まれるコギング成分とは90度ずれた脈動を有するものである。
【0013】
そして、図3に示すように、モータ電流指令値に含まれるコギング成分の大きさa及び操舵トルク信号に対する位相θは、基本アシスト指令値に含まれるコギング成分(図3の横軸)と、それとは90度位相のずれた操舵トルク微分指令値(図3の縦軸)とを合成して決めることができる。
したがって、操舵トルク微分指令値の大きさを変えて、モータ電流指令値に含まれるコギング成分の大きさaが、電動モータ6にコギングトルクと同じ大きさのトルクを発生させる値となり、かつ、操舵トルク信号に対する位相θが、操舵トルク信号の遅れと同位相になれば、モータ電流指令値をモータトルクの脈動と反転させて、電動モータ6に発生するコギングトルクを完全に打ち消すことができる。
【0014】
なお、図3の横軸、すなわち、基本アシスト指令値に含まれるコギング成分の大きさは、車両の走行状態に応じて決められるものである。そのため、モータ電流指令値に含まれるコギング成分の大きさa及び操舵トルク信号に対する位相θといった2つのパラメータを、操舵トルク微分指令値の大きさだけで決めることになり、常に、コギングトルクを完全に打ち消すことができるわけではない。
ここでは、操舵トルク微分指令値の大きさを変えて、操舵トルク信号に対する位相θを操舵トルク信号の遅れと同位相になるようにしている。このとき、モータ電流指令値に含まれるコギング成分の大きさaが、必ずしも、電動モータ6にコギングトルクと同じ大きさのトルクを発生させる値と一致しないこともある。ただし、完全ではないがコギングトルクを打ち消すことはできるので、その効果は十分であり、ドライバーが微振動を感じることはほとんどない。
【0015】
以上述べた第1実施例の電動パワーステアリング制御装置によれば、操舵トルク微分指令値によって、操舵トルクに重畳するコギング成分の遅れを補正してモータ電流指令値を決めることができる。したがって、電動モータに発生するコギングを打ち消すことができ、ドライバーが微振動を感じることがなく、操舵フィーリングを向上させることができる。
しかも、この電動パワーステアリング制御装置によれば、操舵トルク信号を微分するだけなので、コストアップすることもなく、信頼性を十分に確保することができる。
【0016】
つまり、コギングトルクはモータ回転角によって決まることから、モータ回転角センサを使用して、このコギングトルクを検出するものは従来からあった。しかし、モータ回転角センサは一般的に高価なものであり、その分コストアップしてしまう。また、センサ類が増えることで、故障の可能性も高くなり、システム全体の信頼性も低下してしまう。
それに対して、この実施例で用いた操舵トルクセンサ8は、電動パワーステアリング制御装置には不可欠のものであり、車両に必ず搭載されている。そして、その操舵トルクセンサを利用すれば、コントローラー内のソフトウェア処理をするだけでよいので、コストアップすることなく、信頼性も十分に確保することができる。
【0017】
さらに、この電動パワーステアリング制御装置によれば、操舵トルク微分指令値を、基本アシスト指令値に合成してモータ電流を流すので、ステアリングの応答性をよくすることができる。
つまり、電動モータ6にはロータ慣性が作用するため、操舵トルク信号に対して、モータトルクが遅れて発生することがある。この場合、操舵トルク微分指令値を基本アシスト指令値に合成してやれば、電動モータ6に発生するモータトルクの立ち上がりを早くして、ステアリングの応答性をよくすることができる。
【0018】
図4に示す第2実施例では、操舵トルク微分指令値を、ローパスフィルター13を介して基本アシスト指令値に加算するようにしている。そして、それ以外の構成については上記第1実施例と同じなので、以下ではこのローパスフィルター13を中心に説明する。
例えば、ステアリングホイールWを大きく、しかも、速く切ったような場合、操舵トルクセンサ8から出力される操舵トルク信号の周波数fは高くなる。
いま、操舵トルクセンサ8から出力される操舵トルク信号Tを
T=a・sin2πft
とすれば、それを微分して得られる操舵トルク微分指令値は、
k・(dT/dt)=k・a・2πf・cos2πft
と表される。したがって、その微分作用によるゲインは、
|k・(dT/dt)|/|T|=k/2πf・・・式(1)
となる。
【0019】
この式(1)からもわかるが、操舵トルク信号の周波数fが高くなると、微分作用によるゲインが大きくなるため、わずかなノイズも増幅されることとなる。そのため、ステアリングホイールWを大きく、しかも、速く切ったような場合には、異音や微振動が発生してしまうことがある。
そこで、ローパスフィルター13を設け、設定周波数fcよりも高い周波数範囲にある操舵トルク微分指令値のノイズをカットして、モータ電流制御回路11に伝えないようにしている。
ここでは、この設定周波数fcを、以下に述べるコギング周波数fcogmaxよりも高くしている。
【0020】
コギング周波数fcogは、
fcog=(b・ω)/2π
ただし、b:コギング係数(電動モータ1回転当りのコギングの山あるいは谷の数)
ω:モータ角速度
で表される。そして、モータ角速度ωの最大値ωmaxを予め車両実験等から決めておき、設定周波数fcを、この最大モータ角速度ωmaxにおけるコギング周波数fcogmaxよりも高くしておく。
【0021】
このようして設定周波数fcを決めれば、コギング周波数fcogmaxよりも高い周波数範囲で、操舵トルク微分指令値をカットするので、その範囲にある不要なノイズが増大されることはなく、異音や微振動が発生するのを防止することができる。
もちろん、コギング周波数fcogmaxよりも低い周波数範囲では、操舵トルク微分指令値がローパスフィルタ13を通過するので、コギング対策に必要な操舵トルク微分指令値を減衰させてしまうことはない。
【0022】
図5、6に示す第3実施例では、車速テーブル部14を設け、操舵トルク微分指令値のゲインを車速に応じて変化させている。
第1実施例で説明したように、操舵トルク微分指令値の大きさを変えてやれば、モータ電流指令値の脈動をモータトルクの脈動と反転させて、コギングトルクを打ち消すことができる。同時に、電動モータ6に発生するモータトルクの立ち上がりを早くして、ステアリングの応答性をよくすることができる。
ところで、コギングトルクによる微振動が問題となるのは、車両の据え切り時や低速走行時だけである。
それに対して、車両の中・高速走行時には、その走行自体の振動等により、ドライバーはコギングトルクによる微振動をほとんど感じない。しかも、高速走行時に、ステアリングの応答性をよくすると、逆に軽くなり過ぎることもある。
【0023】
そこで、車速テーブル部14に、図6に示すように、車速に応じて変化させたゲインをメモリしておき、そのゲインを操舵トルク微分指令値に乗算するようにしている。
据え切り・低速走行域では、そのゲインを1としている。つまり、この場合は、コギングトルクによる微振動をなくすことに重点をおくべきであり、第1実施例で説明した操舵トルク微分指令値を、そのままの大きさで基本アシスト指令値に加算して、コギングトルクを十分に打ち消すようにしている。
【0024】
それに対して、中・高速走行域では、そのゲインを1よりも小さくしている。つまり、この場合は、コギングトルクによる微振動をなくすことよりも、ステアリングの応答性を適切にセッティングし、軽くなり過ぎないようにすることに重点をおくべきである。そして、第1実施例で説明した操舵トルク微分指令値を、そのままの大きさで基本アシスト指令値に加算すると、操舵が軽くなり過ぎることがあるので、その大きさを小さくしている。
【0025】
このときは、モータ電流指令値の脈動を、モータトルクの脈動ときれいに反転させることができず、コギングトルクを十分に打ち消すことができない。しかし、前述のように、ドライバーはコギングトルクによる微振動をほとんど感じないのでなんら問題はない。それよりも、ステアリングが軽くなり過ぎることがなく、ある程度の剛性感を残して、高速走行を安定させることができる。
もちろん、図6に示す特性はほんの一例に過ぎず、車種やユーザーからの要望に応じて設定すれば、任意に操舵フィーリングを変えてやることができる。
【0026】
図7〜9に示す第4実施例では、モータ角速度センサ15とモータ角速度テーブル部16とを設け、操舵トルク微分指令値のゲインをモータ角速度ωに応じて変化させている。
電動モータ6に発生するコギングトルクは、コギング周波数fcogが低ければ大きくなり、コギング周波数fcogが高くなると小さくなる。
ところが、微分作用によるゲインは、式(1)からも分かるように、操舵トルク信号の周波数fによって変わってしまう。つまり、大きなコギングトルクが発生する低いコギング周波数範囲では、そのゲインが小さく、逆に、さほどコギングトルクが発生しない高いコギング周波数範囲では、そのゲインが大きくなってしまう。
【0027】
そのため、第1実施例で説明したように、操舵トルク信号に対する位相θを操舵トルク信号の遅れと同位相になるように操舵トルク微分指令値の大きさを決めると、大きなコギングトルクが発生する低いコギング周波数範囲では、モータ電流指令値に含まれるコギング成分の大きさaが小さく、コギングトルクをほとんど打ち消せないことになる。逆に、小さなコギングトルクが発生する高いコギング周波数範囲では、モータ電流指令値に含まれるコギング成分の大きさaが大きくなり過ぎ、コギングトルクを打ち消し過ぎて、モータトルクの脈動を増大させる結果となりかねない。
【0028】
そこで、図8に示すように、モータ角速度テーブル部16に、モータ角速度ωに応じて変化させたゲインをメモリしておき、そのゲインを操舵トルク微分指令値に乗算するようにしている。
そして、コギング周波数fcogが低い、すなわち、モータ角速度ωが小さな範囲では、ゲインを大きくして、操舵トルク微分指令値の大きさを大きくしている。この場合、モータ電流指令値の脈動を、モータトルクの脈動ときれいに反転させることができず、モータトルクに脈動が残ったままとなる。しかし、電動モータ6には、コギングトルクを十分に打ち消すだけの大きさのトルクが発生するので、その脈動は小さく、微振動はほとんど発生しない。
【0029】
逆に、コギング周波数fcogが高い、すなわち、モータ角速度ωが大きな範囲では、ゲインを小さくして、操舵トルク微分指令値の大きさを小さくしている。この場合も、モータ電流指令値の脈動を、モータトルクの脈動ときれいに反転させることができず、モータトルクに脈動が残ったままとなる。しかし、電動モータ6には、小さなコギングトルクを十分に打ち消すだけの大きさのトルクしか発生しないので、モータトルクの脈動を逆に増大させることもなく、微振動はほとんど発生しない。
【0030】
もちろん、図8に示す特性はほんの一例に過ぎず、車種やユーザーからの要望に応じて設定すれば、任意に操舵フィーリングを変えてやることができる。
例えば、車両の走行中に操舵トルク微分指令値のゲインを変化させると、ドライバーが違和感を感じてしまうことも考えられる。そこで、図9に示すように、車両の据え切り・低速走行域でのみ、モータ角速度ωに応じて操舵トルク微分指令値のゲインを変化させるようにして、中・高速走行域では、そのゲインを一定に保つようにしてもよい。こうすれば、車両の中・高速走行中に違和感が生じるのを避けて、操舵フィーリングを安定させることができる。
【0031】
図10〜12に示す第5実施例では、第2実施例で説明したローパスフィルター13を可変型としている。そしてモータ角速度センサ15を設け、このローパスフィルター13の設定周波数fcを、モータ角速度ωに応じて変化させている。
上記第2実施例では、コギング周波数の最高値fcogmaxを基準として、ローパスフィルター13の設定周波数fcを固定している。
ところが、例えば、ステアリングホイールWをゆっくりと切ったような場合、モータ角速度ωは小さく、コギング周波数fcogが低くなる。そのため、図11に示すように、実際に発生したコギング周波数fcogと、ローパスフィルター13の設定周波数fcとの間には、使用されない周波数範囲が広くできてしまう。そして、この周波数範囲でノイズが増幅されてしまい、わずかではあるが異音や微振動が発生することがある。
【0032】
そこで、モータ角速度センサ15でモータ角速度ωを検出し、実際に発生したコギング周波数fcogを算出している。そして、図12に示すように、ローパスフィルター13の設定周波数fcを、そのコギング周波数fcogよりも一定量だけ高くするように変化させている。
このようにすれば、ステアリングホイールをゆっくりと切ったような場合であっても、実際に発生した低いコギング周波数fcogに合わせて、ローパスフィルターの設定周波数fcを決めることができる。したがって、使用されない周波数範囲を狭くすることができ、設定周波数fcを固定した場合に比べて、異音や微振動が発生するのを効果的に防止することができる。
【0033】
もちろん、実際に発生したコギング周波数fcogが高ければ、それに合わせて設定周波数fcも高くなるので、コギング対策に必要な操舵トルク微分指令値を減衰させてしまうこともない。
なお、設定周波数fcを決める上記一定量については、実験的に決めればよいが、ある程度余裕を持たせて、実際に発生したコギング周波数fcogよりも、少なくとも2倍以上の値にすることが望ましい。その理由は、一般的に、信号がローパスフィルターを通過するとき、その設定周波数付近の周波数を有する信号には、位相遅れが発生することがあるからである。
【0034】
図13に示す第6実施例では、第4実施例と同じく、ローパスフィルター13を可変型とし、その設定周波数fcをモータ角速度ωに応じて変化させている。ただし、ここでは、車両の据え切り・低速走行域でのみ設定周波数fcを可変にして、中・高速走行域では設定周波数fcを固定している。以下では、その理由を説明する。
前述のように、車両の据え切り・低速走行時には、コギングトルクによる微振動が特に問題となる。また、ノイズが増大されることによって、わずかでも異音や微振動が発生した場合でも、ドライバーはそれを感じてしまう。
そこで、車両の据え切り・低速走行域では、できるだけ異音や微振動を抑えるため、第4実施例で説明したように、ローパスフィルター13の設定周波数fcを、実際に発生したコギング周波数fcogに合わせて変化させるようにしている。
【0035】
それに対して、車両の中・高速走行中は、その走行自体の振動等により、ドライバーがコギングトルクやノイズによる微振動を感じることはほとんどない。したがって、ローパスフィルター13の設定周波数fcを固定しておいても、ほとんど問題はない。
また、例えば、短時間、小舵角での急操舵をしたようなとき、モータ角速度ωが小さいままで、操舵トルク信号だけが急激な変化をすることもある。
【0036】
この場合、モータ角速度ωが小さいので、コギング周波数fcogは小さくなる。そのため、ローパスフィルター13の設定周波数fcを変化させると、その設定周波数fcも低く設定されてしまう。
ところが、操舵トルク信号は急激に変化するので、その周波数が高くなる。そのため、操舵トルク信号のほとんどがローパスフィルター13でカットされてしまうこととなり、ステアリングの応答性を向上させることができなくなってしまう。
そこで、車両の中・高速走行域では、操舵フィーリングを維持するために、ローパスフィルター13の設定周波数fcを固定するようにしている。
なお、以上述べた第1〜6実施例をそれぞれ独立して説明したが、いずれかの実施例を任意に組み合わせて使用してもかまわない。
【0037】
【発明の効果】
第1の発明によれば、操舵トルク微分指令値によって、操舵トルクに重畳するコギング成分の遅れを補正してモータ電流指令値を決めることができる。特に、操舵トルク微分指令値の大きさを決めて、モータ電流指令値の脈動を、モータトルクの脈動と反転させるので、電動モータに発生するコギングを十分に打ち消すことができる。その結果、ドライバーが微振動を感じることがなく、操舵フィーリングを向上させることができる。
しかも、この電動パワーステアリング制御装置によれば、車両に必要不可欠の操舵トルクセンサを利用するので、コストアップすることなく、信頼性も十分に確保することができる。
さらに、操舵トルク微分指令値を、基本アシスト指令値に合成してモータ電流を流すので、ステアリングの応答性をよくすることができる。
【0038】
第2の発明によれば、第1の発明において、操舵トルク微分指令値の大きさを車速に応じて変化させるので、例えば、据え切り・低速走行域では、コギングトルクを十分に打ち消すようにするのに対して、中・高速走行域では、ステアリングの応答性を適切にセッティングし、軽くなり過ぎないようにすることができる。
3の発明によれば、第1または第2の発明において、操舵トルク微分指令値の大きさをモータ角速度に応じて変化させるので、実際に発生したコギングトルクの大きさに合わせて、それを打ち消すモータトルクの大きさを決めることができる。
の発明によれば、第の発明において、車両の中・高速走行時に違和感が生じるのを避けて、操舵フィーリングを安定させることができる。
【0039】
5の発明によれば、第1〜4の発明において、予め設定したコギング周波数よりも高い周波数範囲で、操舵トルク微分指令値をカットするので、その範囲にある不要なノイズが増大されることはなく、異音や微振動が発生するのを防止することができる。
の発明によれば、第1〜5の発明において、ステアリングホイールをゆっくりと切ったような場合であっても、実際に発生した低いコギング周波数に合わせて、ローパスフィルタの設定周波数を決めることができる。したがって、使用されない周波数範囲を狭くすることができ、設定周波数を固定した場合に比べて、異音や微振動が発生するのを効果的に防止することができる。
第7の発明によれば、第6の発明において、車両の中・高速走行域では、ローパスフィルタの設定周波数を固定したので、操舵フィーリングを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の電動パワーステアリング制御装置のブロック図である。
【図2】 (a)がモータトルクの変化を示し、(b)が操舵トルクの変化を示し、(c)が操舵トルクを微分した特性の変化を示し、(d)がモータ電流指令値の変化を示す図である。
【図3】モータ電流指令値に含まれるコギング成分の大きさa及び位相θの関係を示した図である。
【図4】第2実施例の電動パワーステアリング制御装置のブロック図である。
【図5】第3実施例の電動パワーステアリング制御装置のブロック図である。
【図6】車速と操舵トルク微分指令値のゲインとの一例を示した図である。
【図7】第4実施例の電動パワーステアリング制御装置のブロック図である。
【図8】モータ角速度ωと操舵トルク微分指令値のゲインとの一例を示した図である。
【図9】モータ角速度ωと操舵トルク微分指令値のゲインとの他の例を示した図である。
【図10】第5実施例の電動パワーステアリング制御装置のブロック図である。
【図11】設定周波数fcを固定した場合のゲインの変化を示した図である。
【図12】設定周波数fcを変化させた場合のゲインの変化を示した図である。
【図13】第6実施例の電動パワーステアリング制御装置のブロック図である。
【図14】電動パワーステアリング制御装置の全体図である。
【図15】従来例の電動パワーステアリング制御装置のブロック図である。
【符号の説明】
6 電動モータ
8 操舵トルクセンサ
9 車速センサ
10 基本アシスト指令値決定回路
11 モータ電流制御回路
12 操舵トルク微分指令値決定回路
13 ローパスフィルター
14 車速テーブル部
15 モータ角速度センサ
16 モータ角速度テーブル部

Claims (7)

  1. アシスト力を発生する電動モータと、操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、少なくとも操舵トルクに応じて基本アシスト指令値を決定する基本アシスト指令値決定手段と、基本アシスト指令値に基づいて、電動モータにモータ電流を流すモータ電流制御手段とを備えた電動パワーステアリング制御装置において、操舵トルク検出手段で検出された操舵トルク信号を微分して、操舵トルク微分指令値を決定する操舵トルク微分指令値決定手段を備え、上記モータ電流制御手段は、上記操舵トルク微分指令値決定手段が決定した操舵トルク微分指令値と上記基本アシスト指令値とからなるモータ電流指令値に基づいて、電動モータにモータ電流を流す構成にするとともに、この操舵トルク微分指令値決定手段は、上記操舵トルク信号の脈動に対するモータ電流指令値の脈動の位相を、モータトルクの脈動を反転させた信号に対する操舵トルク信号の脈動の遅れ分だけ進めるように、操舵トルク微分指令値の大きさを決定し、その結果、モータ電流指令値の脈動がモータトルクの脈動と反転する構成にしたことを特徴とする電動パワーステアリング制御装置。
  2. 車速検出手段を設け、操舵トルク微分指令値の大きさを車速に応じて変化させる構成にしたことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング制御装置。
  3. モータ角速度検出手段を設け、操舵トルク微分指令値の大きさをモータ角速度に応じて変化させる構成にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の電動パワーステアリング制御装置。
  4. 車両の据え切り・低速走行域でのみ、操舵トルク微分指令値の大きさをモータ角速度に応じて変化させる構成にしたことを特徴とする請求項記載の電動パワーステアリング制御装置。
  5. 設定周波数以上の操舵トルク微分指令値をカットするローパスフィルタを設け、その設定周波数を、予め設定したコギング周波数の最高値よりも高くしておくことを特徴とする請求項1〜のいずれか一に記載の電動パワーステアリング制御装置。
  6. モータ角速度検出手段と、設定周波数以上の操舵トルク微分指令値をカットする可変型ローパスフィルタとを備え、可変型ローパスフィルタの設定周波数を、モータ角速度から算出されるコギング周波数よりも高く変化させることを特徴とする請求項1〜のいずれか一に記載の電動パワーステアリング制御装置。
  7. 車両の据え切り・低速走行域でのみ、可変型ローパスフィルタの設定周波数を、モータ角速度から算出されるコギング周波数よりも高く変化させ、車両の中・高速走行域では、その設定周波数を固定しておく構成にしたことを特徴とする請求項記載の電動パワーステアリング制御装置。
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