JP3941553B2 - 電動式パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輌のパワーステアリング装置に係り、更に詳細には電動式のパワーステアリング装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車輌の電動式パワーステアリング装置の一つとして、例えば特許第2546673号公報に記載されている如く、操舵トルクに基づいて運転者の操舵負担を軽減するための目標補助操舵トルクを演算し、車速が高いほど大きくなるよう操舵速度及び車速に基づいて目標粘性補償トルク(目標減衰トルク)を演算し、目標補助操舵トルク及び目標粘性補償トルクに基づいて電動モータの目標トルクを演算し、該目標トルクに基づき電動モータを制御するよう構成された電動式パワーステアリング装置が従来より知られている。
【0003】
かかる電動式パワーステアリング装置によれば、車速が高いほど大きくなるよう操舵速度及び車速に基づいて目標粘性補償トルクが演算され、目標補助操舵トルク及び目標粘性補償トルクに基づく目標トルクに基づき電動モータが制御されるので、操舵速度のみに基づいて目標粘性補償トルクが演算される場合に比して、高速走行時の良好な手放し安定性を確保しつつ低速走行時の好ましい手放し復元性を確保することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、電動式パワーステアリング装置を備えた操舵系には回転振動の共振周波数があり、車輌にはヨー共振周波数があり、これらの共振周波数は互いに近い値であるので、操舵系の回転振動の共振周波数域又は車輌のヨー共振周波数域の周波数にて往復操舵が行われると、操舵系が回転共振振動すると共に車輌がヨー方向に共振振動し、或いは操舵系が回転共振振動することに起因して車輌がヨー方向に共振振動し、そのため車輌の走行安定性が低下することがある。従って往復操舵に起因して車輌の走行安定性が低下することを防止するためには、操舵系の回転共振周波数域又は車輌のヨー共振周波数域の周波数にて往復操舵が行われる状況に於いて目標粘性補償トルクが高く設定され、操舵系及び車輌の共振振動が効果的に減衰されることが好ましい。
【0005】
しかるに上述の如き従来の電動式パワーステアリング装置に於いては、目標粘性補償トルクは操舵の周波数や周期を考慮することなく操舵速度及び車速に基づいて演算されるため、操舵系の回転共振周波数域又は車輌のヨー共振周波数域の周波数にて往復操舵が行われた場合に於ける操舵系の回転共振振動や車輌のヨー方向の共振振動及びこれに起因する車輌の走行安定性の低下を防止することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、操舵トルクに基づいて目標補助操舵トルクを演算し、操舵速度及び車速に基づいて目標粘性補償トルクを演算し、目標補助操舵トルク及び目標粘性補償トルクに基づく該目標トルクに基づいて電動モータを制御するよう構成された従来の電動式パワーステアリング装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、往復操舵が行われる場合には操舵の周期に応じて目標粘性補償トルクを最適化することにより、通常の操舵時に於ける粘性補償トルク及びこれに起因する操舵反力を過剰に高くすることなく操舵系の回転共振周波数域又は車輌のヨー共振周波数域の周波数にて往復操舵が行われる場合に於ける操舵系の回転共振振動や車輌のヨー方向の共振振動及びこれに起因する車輌の走行安定性の低下を効果的に防止することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ちステアリングホイールと操舵輪との間の操舵系に設けられ補助操舵トルクを発生する電動モータと、操舵トルクを検出する手段と、操舵速度を検出する手段と、操舵トルクに基づく目標補助操舵トルク及び操舵速度に基づく目標粘性補償トルクに基づき前記電動モータの目標トルクを演算し、該目標トルクに基づき前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動式パワーステアリング装置に於いて、前記制御手段は操舵周期を判定する手段と、操舵周期が所定の範囲内にあるときには操舵周期が前記所定の範囲外にあるときに比して前記目標粘性補償トルクを増大させる目標粘性補償トルク可変手段を有することを特徴とする電動式パワーステアリング装置によって達成される。
【0008】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記目標粘性補償トルク可変手段は操舵範囲を推定する手段を有し、操舵範囲が大きいほど前記目標粘性補償トルクの増大量を大きくするよう構成される(請求項2の構成)。
【0009】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1又は2の構成に於いて、前記操舵周期を判定する手段は前記操舵速度を検出する手段により検出された操舵速度の符号反転を判定すると共に、操舵速度の符号反転の間の時間的間隔の2倍を操舵周期として判定するよう構成される(請求項3の構成)。
【0010】
【発明の作用及び効果】
上記請求項1の構成によれば、操舵トルクに基づく目標補助操舵トルク及び操舵速度に基づく目標粘性補償トルクに基づき電動モータの目標トルクが演算されるに留まらず、操舵周期が判定され、操舵周期が所定の範囲内にあるときには操舵周期が所定の範囲外にあるときに比して目標粘性補償トルクが増大されるので、通常の操舵時に於ける粘性補償トルク及びこれに起因する操舵反力が過剰に高くなることを防止すると共に、操舵周期が所定の範囲内にある場合には目標粘性補償トルクを高くして操舵系の回転振動及び車輌のヨー方向の振動を効果的に減衰させ、これにより車輌がヨー方向に共振振動して車輌の走行安定性が低下することを効果的に防止することができる。
【0011】
また上記請求項2の構成によれば、操舵範囲が推定され、操舵範囲が大きいほど目標粘性補償トルクの増大量が大きくされるので、所定の範囲内の操舵周期にて往復操舵が行われた場合であっても、その操舵の範囲が小さく操舵系が回転共振したり車輌がヨー方向に共振したりしない状況に於いて目標粘性補償トルクが不必要に大きくされること及びこれに起因して操舵反力が不必要に過剰に高くなることを確実に防止することができる。
【0012】
また上記請求項3の構成によれば、操舵周期を判定する手段は操舵速度を検出する手段により検出された操舵速度の符号反転を判定すると共に、操舵速度の符号反転の間の時間的間隔の2倍を操舵周期として判定するので、操舵周期を判定するための特別の検出手段は不要であり、従って操舵周期を判定するための特別の検出手段が使用される場合に比して構造を簡略化すると共にコストを低減することができる。
【0013】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、所定の範囲は操舵系の回転振動の共振周波数に対応する操舵周期及び車輌のヨー共振周波数に対応する操舵周期を含むよう構成される(好ましい態様1)。
【0014】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、制御手段は操舵トルクに基づき目標補助操舵トルクを演算し、操舵速度に基づき目標粘性補償トルクを演算すると共にローパスフィルタ処理し、目標補助操舵トルク及びローパスフィルタ処理された目標粘性補償トルクに基づき電動モータの目標トルクを演算するよう構成される(好ましい態様2)。
【0015】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、制御手段は操舵速度に基づき目標粘性補償トルクを演算し、操舵速度の大きさが基準値以下のときには目標粘性補償トルクを0に設定し、操舵周期が所定の範囲内にあるときの基準値は操舵速度が所定の範囲外にあるときの基準値よりも小さいよう構成される(好ましい態様3)。
【0016】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、目標粘性補償トルク可変手段は操舵周期を判定する手段により操舵周期が判定されないときには、目標粘性補償トルクを増大させないよう構成される(好ましい態様4)。
【0017】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、操舵速度を検出する手段は電動モータに対する駆動電流の電圧値及び電流値を検出し、駆動電流の電圧値及び電流値に基づき電動モータの回転角速度を演算し、電動モータの回転角速度に基づき操舵速度を演算するよう構成される(好ましい態様5)。
【0018】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、操舵範囲を推定する手段は操舵周期を判定する手段により判定された操舵周期の時間内に操舵速度を検出する手段により検出された操舵速度の大きさの最大値が大きいほど操舵範囲が大きいと推定するよう構成される(好ましい態様6)。
【0019】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、操舵範囲を推定する手段は操舵周期を判定する手段により判定された操舵周期の時間内に操舵速度を検出する手段により検出された操舵速度の大きさの最大値が大きいほど操舵範囲が大きいと推定するよう構成される(好ましい態様7)。
【0020】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1の構成に於いて、制御手段は操舵速度及び車速に基づき目標粘性補償トルクを演算し、車速が基準値以下のときには目標粘性補償トルクを0に設定し、操舵周期が所定の範囲内にあるときの基準値は操舵速度が所定の範囲外にあるときの基準値よりも大きいよう構成される(好ましい態様8)。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明による電動式パワーステアリング装置の一つの実施形態を示す概略構成図である。
【0023】
図1に於て、10FL及び10FRはそれぞれ操舵輪である左右の前輪を示しており、左右の前輪10FL及び10FRは運転者によるステアリングホイール12の操作に応答してステアリングシャフト14を介して駆動されるラック・アンド・ピニオン型の電動式パワーステアリングユニット16によりタイロッド18L及び18Rを介して転舵される。パワーステアリングユニット16はピニオンシャフト20及びラックバー22を含み、ピニオンシャフト20がステアリングシャフト14により回転されると、その回転がステアリングギヤボックス24によりラックバー22の往復動に変換される。
【0024】
図示の実施形態に於いては、電動式パワーステアリングユニット16はラック同軸型の電動式パワーステアリングユニットであり、電動モータ26と、電動モータ26の回転トルクをラックバー22の往復動方向の力に変換する例えばボールねじ式の変換機構28とを有し、ラックハウジング30に対し相対的にラックバー22を駆動する補助転舵力を発生することにより、運転者の操舵負担を軽減する補助操舵トルクを発生する。尚電動式パワーステアリングユニットは補助操舵トルクを発生し得る限り、ピニオンアシスト型やコラムアシスト型の如く当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよい。
【0025】
図示の実施形態に於ては、ステアリングシャフト14には該ステアリングシャフトのトルクを操舵トルクTsとして検出するトルクセンサ32が設けられており、トルクセンサ32の出力は電子制御装置34のマイクロコンピュータ36へ供給される。マイクロコンピュータ36には車速センサ38により検出された車速Vを示す信号も入力される。
【0026】
電子制御装置34はマイクロコンピュータ36及び駆動回路40を有し、マイクロコンピュータ36はCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有しこれらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成のものであってよい。駆動回路40には該駆動回路より電動モータ26へ出力される駆動電流の電圧値Vd及び電流値Idをそれぞれ検出する電圧計42及び電流計44を内蔵し、電圧計42により検出された電圧値Vd及び電流計44により検出された電流値Idを示す信号もマイクロコンピュータ36へ供給される。
【0027】
マイクロコンピュータ36は、後に詳細に説明する如く、図2に示された制御ルーチンに従って運転者の操舵負担を軽減するための操舵補助トルクTa及び操舵速度に応じた操舵抵抗を付与するための粘性補償トルクTdを演算し、これらの和である目標制御トルクTcに基づき電動式パワーステアリングユニット16の電動モータ26を制御し、電動式パワーステアリングユニット16によるトルクアシストを制御する。尚トルクセンサ32は車輌の左旋回方向への操舵の場合を正として操舵トルクTsを検出する。
【0028】
特に図示の実施形態に於いては、マイクロコンピュータ36は電圧計42により検出された電圧値Vd及び電流計44により検出された電流値Idに基づき、当技術分野に於いて周知の要領にて電動モータ26の回転角速度ωmを演算し、回転角速度ωmと変換機構28及びステアリングギヤボックス24のギヤ比に基づきステアリングシャフト14の回転角速度として操舵速度ωを演算する。尚操舵速度ωも左旋回切り増し方向が正である。
【0029】
次に図2に示されたフローチャートを参照して図示の実施形態に於ける電動式パワーステアリング装置の制御ルーチンについて説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0030】
まずステップ10に於いては操舵トルクTsを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては操舵トルクTs及び車速Vに基づき図3に示されたグラフに対応するマップより運転者の操舵負担を軽減するための補助操舵トルクTaが演算され、ステップ30に於いては電流計42により検出された電圧値Vd、電流計44により検出された電流値Id等に基づき操舵速度ωが演算される。
【0031】
ステップ40に於いては操舵速度ωの符号が正から負又は負から正へ反転したか否かの判別により操舵方向が反転したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ110へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ50へ進む。
【0032】
ステップ50に於いてはタイマが動作中であるか否かの判別、即ち上述のステップ40に於いて操舵方向が反転した旨の判別が行われた時点よりの経過時間がカウントされているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ60に於いてタイマのカウントがスタートされ、肯定判別が行われたときにはステップ70に於いてタイマのカウント値に基づき前回の操舵方向の反転時点より今回の操舵方向の反転時点までの時間(操舵半周期)の2倍として操舵周期Pcが演算される。
【0033】
ステップ80に於いてはステップ70に於いて演算された操舵半周期に対応する時間内に、即ち前回の操舵方向の反転時点より今回の操舵方向の反転時点までの間に検出された操舵トルクTsの大きさの最大値としてトルクピークTpが演算され、ステップ90に於いてはタイマのカウント値が0にリセットされた後タイマが停止される。
【0034】
尚一般に操舵周期が同一であれば、トルクピークTpが大きいほど操舵範囲(振幅)が大きくなり、操舵半周期内に検出される操舵速度ωの大きさの最大値、即ち後述の操舵速度ピークωpが大きいほど操舵範囲(振幅)が大きくなるので、トルクピークTpや操舵速度ピークωpは運転者により往復操舵が繰り返し行われる際に於ける操舵範囲を示す値である。
【0035】
ステップ100に於いては操舵周期Pcが第一の基準値Pc1以上であり且つ第二の基準値Pc2以下であるか否かの判別、即ち操舵周期Pcが操舵系の回転共振振動や車輌のヨー共振振動が生じる虞れのある所定の操舵周期の範囲内にあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ140へ進み、否定判別が行われたときにはステップ110へ進む。尚基準値Pc1及びPc2により郭定される所定の操舵周期の範囲は、操舵系の回転共振周波数に対応する操舵周期及び車輌のヨー共振周波数に対応する操舵周期の一方、好ましくは両方を含む範囲に設定される。
【0036】
ステップ110に於いては操舵速度ωに基づき図4に示されたグラフに対応するマップより通常操舵時の基本粘性補償トルクTdbが演算され、ステップ120に於いては車速Vに基づき図5に示されたグラフに対応するマップより車速係数Kvが演算され、ステップ130に於いてはトルクピーク係数Ktが例えば0.5の如き予め設定された定数に設定され、しかる後ステップ170へ進む。
【0037】
ステップ140に於いては、操舵速度ωに基づき図6に示されたグラフに対応するマップより操舵系の回転共振振動及び車輌のヨー共振振動を防止するための基本粘性補償トルクTdbが演算され、ステップ150に於いては車速Vに基づき車速係数Kvが演算され、ステップ160に於いてはトルクピークTpに基づき図8に示されたグラフに対応するマップより操舵範囲に基づく係数としてのトルクピーク係数Ktが演算される。
【0038】
ステップ170に於いては下記の式1に従って粘性補償トルクTdが演算され、ステップ180に於いては粘性補償トルクTdの前回値及び現在値をそれぞれTd(n-1)及びTd(n)とし、フィルタ定数をRとして下記の式2に従ってローパスフィルタ処理が行われることにより、ローパスフィルタ処理後の粘性補償トルクTdfが演算される。
Td=Kv・Kt・Tdb ……(1)
Tdf=(1−R)Td(n-1)+R・Td(n) ……(2)
【0039】
ステップ190に於いては下記の式3に従って補助操舵トルクTaとローパスフィルタ処理後の粘性補償トルクTdfとの和として目標制御トルクTcが演算され、ステップ200に於いては目標制御トルクTcに基づき電動モータ26に対する駆動電流の目標電圧が演算され、該目標電圧に基づき電動モータ26に対する駆動電流が例えば当技術分野に於いて周知の如くPI制御されることにより、電動モータ26の出力トルクが目標制御トルクTcになるよう制御される。
Tc=Ta+Tdf ……(3)
【0040】
かくして図示の実施形態によれば、ステップ30及び40に於いて操舵速度ωに基づき操舵方向が反転したか否かが判定され、操舵方向が反転したと判定されると、ステップ50及び60に於いてタイマのカウントが開始される。そしてその後更に操舵方向が反転したと判定されると、ステップ40及び50に於いてそれぞれ肯定判別が行われ、ステップ70に於いて操舵周期Pcが演算され、操舵周期が操舵系の回転共振振動や車輌のヨー共振振動を惹起す虞れがある所定の操舵周期の範囲内にあるか否かが判定される。
【0041】
操舵周期が所定の範囲内にないときには、操舵系が回転共振振動したり車輌がヨー共振振動したりする虞れがないので、ステップ100に於いて否定判別が行われ、ステップ110に於いて操舵速度ωに基づき通常操舵時の基本粘性補償トルクTdbが演算され、ステップ120に於いて車速が高いほど大きくなるよう車速係数Kvが演算され、ステップ130に於いてトルクピーク係数Ktが一定の値に設定され、ステップ170に於いて基本粘性補償トルクTdb、車速係数Kv、トルクピーク係数Ktの積として粘性補償トルクTdが演算される。
【0042】
そしてステップ180に於いて粘性補償トルクTdがローパスフィルタ処理され、ステップ190に於いてステップ120にて車速V及び操舵トルクTsに基づき演算された補助操舵トルクTaとローパスフィルタ処理後の粘性補償トルクTdとの和として目標制御トルクTcが演算され、ステップ200に於いて目標制御トルクTcに基づき電動モータ26が制御される。
【0043】
これに対し操舵周期が操舵系の回転共振振動や車輌のヨー共振振動を惹起す虞れのある所定の操舵周期の範囲内にあるときには、ステップ100に於いて肯定判別が行われ、ステップ140に於いて操舵速度ωの大きさが比較的小さい領域に於いても十分な粘性補償が行われるよう車輌のヨー共振振動を防止するための基本粘性補償トルクTdbが演算され、ステップ150に於いて車速Vが比較的高い領域に於いて車速が高いほど大きくなるよう車速係数Kvが演算され、ステップ160に於いてトルクピークTpが基準値以上であるときにはトルクピークが高くなるほど1よりも大きくなるトルクピーク係数Ktが演算され、ステップ170〜200が通常操舵時の場合と同様に実行される。
【0044】
従って運転者により操舵系の回転共振振動や車輌のヨー共振振動を惹起す虞れがある操舵周波数にて往復操舵が繰り返し行われたときには、粘性補償トルクTdが通常操舵時に比して大きさの大きい値に演算されるので、その後の操舵系の回転振動及び車輌のヨー方向の振動を効果的に減衰させ、これにより操舵系が回転共振振動し車輌がヨー共振振動して車輌の走行安定性が低下することを効果的に防止することができ、また運転者により往復操舵が繰り返し行われても、その操舵周波数が操舵系の回転共振振動や車輌のヨー共振振動を惹起す虞れがない操舵周波数である場合には、粘性補償トルクTdが通常操舵時の値に演算されるので、操舵反力が過剰に高くなることを確実に防止することができる。
【0045】
特に図示の実施形態によれば、操舵周期は操舵方向の反転により判定され、操舵方向の反転は操舵速度ωの符号反転により判定され、従って基本粘性補償トルクTdbの演算に必要な操舵速度ωを使用して操舵周期が判定されるので、操舵周期を判定するために例えば操舵角センサにより操舵角を検出したりする必要がなく、これにより必要なセンサの数を低減して電動式パワーステアリング装置の構造を簡素化しコストを低減することができる。
【0046】
また図示の実施形態によれば、車速Vに基づき車速係数Kvが演算され、操舵の程度としての操舵範囲を示すトルクピーク係数Ktが演算され、粘性補償トルクTdは基本粘性補償トルクTdbと車速係数Kvとトルクピーク係数Ktとの積として演算され、トルクピーク係数KtはトルクピークTpが基準値以下のときには1に設定されトルクピークTpが基準値よりも大きいときには1よりも大きい値に設定されるので、操舵周波数が操舵系の回転共振振動や車輌のヨー共振振動を惹起す虞れがある操舵周波数であっても、操舵範囲が小さく、操舵系が回転共振振動したり車輌がヨー共振振動したりする虞れがないときには、粘性補償トルクTdの大きさが過剰になることを確実に防止し、これにより操舵反力が過大になることを確実に防止することができる。
【0047】
また図示の実施形態によれば、粘性補償トルクTdがローパスフィルタ処理され、目標制御トルクTcは補助操舵トルクTaとローパスフィルタ処理後の粘性補償トルクTdfとの和として演算されるので、ステップ100の判定が変化することにより基本粘性補償トルクTdbの値が急激に変化すること及びこれに起因して粘性補償トルクTdの値が急激に変化することを確実に防止し、これにより運転者が感じる反力トルクが急変することを確実に防止することができる。
【0048】
また図示の実施形態によれば、電動モータ26へ出力される駆動電流の電圧値Vd及び電流値Idに基づき電動モータ26の回転角速度ωmが演算され、回転角速度ωmと変換機構28及びステアリングギヤボックス24のギヤ比に基づき操舵速度ωが演算されるので、操舵速度を検出するための特別のセンサは不要であり、従ってこのことによっても必要なセンサの数を低減して電動式パワーステアリング装置の構造を簡素化しコストを低減することができる。
【0049】
また図示の実施形態によれば、基本粘性補償トルクTdbは操舵速度ωに基づき演算され、操舵速度ωの大きさが基準値以下のときには0に設定され、操舵周期が所定の範囲内にあるときの基準値は操舵速度が所定の範囲外にあるときの基準値よりも小さいので、操舵周期が所定の範囲内にあり操舵系の回転共振振動や車輌のヨー共振振動が生じる虞れがある状況に於いて必要な粘性補償トルクを確実に確保し、これにより操舵系の回転共振振動や車輌のヨー共振振動を確実に防止することができる。
【0050】
また一般に、車輌のヨー共振振動は車速が低いときには発生せず、高車速域に於いて生じ易い。図示の実施形態によれば、図5と図7との比較より解る如く、車速係数Kvが0よりも大きくなる基準車速は操舵周期が所定の範囲内にあり車輌のヨー共振振動の虞れがあるときには操舵周期が所定の範囲外にあり車輌のヨー共振振動の虞れがない通常操舵時に比して大きい値であるので、中高速走行時に於ける通常操舵時に適度の操舵反力を発生させ、また高車速域に於いて所定の範囲内の操舵周期にて往復操舵が行われた際の車輌のヨー共振振動を効果的に防止することができると共に、所定の範囲内の操舵周期にて往復操舵が行われても車速が中低速域にあり車輌がヨー共振振動する虞れがない状況に於いて操舵反力が不必要に過剰に高くなることを確実に防止することができる。
【0051】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0052】
例えば上述の実施形態に於いては、操舵周期は操舵方向の反転により判定され、操舵方向の反転は操舵速度ωの符号反転により判定されるようになっているが、操舵方向の反転は操舵速度ωの符号反転以外の情報に基づいて判定されてもよく、また操舵周期は操舵方向の反転判定以外の方法により判定されてもよい。
【0053】
また上述の実施形態に於いては、電動モータ26へ出力される駆動電流の電圧値Vd及び電流値Idに基づき電動モータ26の回転角速度ωmが演算され、回転角速度ωmと変換機構28及びステアリングギヤボックス24のギヤ比に基づき操舵速度ωが演算されるようになっているが、操舵速度は例えば操舵角を検出しその変化率を演算する方法やステアリングシャフト14の回転角速度を検出する方法の如く当技術分野に於いて公知の任意の態様にて検出されてよい。
【0054】
また上述の実施形態に於いては、車速Vに基づき車速係数Kvが演算され、操舵の程度としての操舵範囲を示すトルクピーク係数Ktが演算され、粘性補償トルクTdは基本粘性補償トルクTdbと車速係数Kvとトルクピーク係数Ktとの積として演算されるようになっているが、操舵半周期に対応する時間内に検出された操舵速度ωの大きさの最大値として操舵速度ピークωpが演算され、操舵速度ピークωpが操舵範囲の大きさを示す値として使用され、トルクピーク係数Ktに代えて操舵範囲に基づく係数としての操舵速度ピーク係数Ksが図9に示されたグラフに対応するマップより演算され、粘性補償トルクTdが下記の式4に従って演算されるよう修正されてもよい。
Td=Kv・Ks・Tdb ……(4)
【0055】
また上述の実施形態に於いては、目標制御トルクTcは補助操舵トルクTaとローパスフィルタ処理後の粘性補償トルクTdfとの和として演算されるようになっているが、目標制御トルクTcは補助操舵トルクTa及び粘性補償トルクTdfに加えて電動モータ26の慣性を補償するためのトルク、ステアリングホイール12をニュートラル位置へ戻すためのトルク、操舵系の摩擦力を補償するためのトルク等を加味して演算されてもよい。
【0056】
また上述の実施形態に於いては、粘性補償トルクTdがローパスフィルタ処理されるようになっているが、目標制御トルクTcが補助操舵トルクTaと粘性補償トルクTdとの和として演算され、目標制御トルクTcがローパスフィルタ処理されてもよく、ステップ100の判別と同様の判別が操舵半周期について行われるよう修正されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電動式パワーステアリング装置の一つの実施形態を示す概略構成図である。
【図2】実施形態に於ける電動式パワーステアリング装置の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】車速V及び操舵トルクTsと補助操舵トルクTaとの間の関係を示すグラフである。
【図4】通常操舵時に於ける操舵速度ωと基本粘性補償トルクTdbとの間の関係を示すグラフである。
【図5】通常操舵時に於ける車速Vと車速係数Kvとの間の関係を示すグラフである。
【図6】車輌のヨー共振振動が発生する虞れがあるときの操舵速度ωと基本粘性補償トルクTdbとの間の関係を示すグラフである。
【図7】車輌のヨー共振振動が発生する虞れがあるときの車速Vと車速係数Kvとの間の関係を示すグラフである。
【図8】車輌のヨー共振振動が発生する虞れがあるときのトルクピークTpとトルクピーク係数Ktとの間の関係を示すグラフである。
【図9】車輌のヨー共振振動が発生する虞れがあるときの操舵速度ピークωpと操舵速度ピーク係数Ksとの間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
14…ステアリングシャフト
16…電動式パワーステアリングユニット
26…電動モータ
32…トルクセンサ
34…電子制御装置
36…マイクロコンピュータ
38…車速センサ
40…駆動回路
42…電圧計
44…電流計
Claims (3)
- ステアリングホイールと操舵輪との間の操舵系に設けられ補助操舵トルクを発生する電動モータと、操舵トルクを検出する手段と、操舵速度を検出する手段と、操舵トルクに基づく目標補助操舵トルク及び操舵速度に基づく目標粘性補償トルクに基づき前記電動モータの目標トルクを演算し、該目標トルクに基づき前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動式パワーステアリング装置に於いて、前記制御手段は操舵周期を判定する手段と、操舵周期が所定の範囲内にあるときには操舵周期が前記所定の範囲外にあるときに比して前記目標粘性補償トルクを増大させる目標粘性補償トルク可変手段とを有することを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
- 前記目標粘性補償トルク可変手段は操舵範囲を推定する手段を有し、操舵範囲が大きいほど前記目標粘性補償トルクの増大量を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の電動式パワーステアリング装置。
- 前記操舵周期を判定する手段は前記操舵速度を検出する手段により検出された操舵速度の符号反転を判定すると共に、操舵速度の符号反転の間の時間的間隔の2倍を操舵周期として判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動式パワーステアリング装置。
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