JP3601368B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動機の出力を利用して操舵力を補助するようにした電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電動パワーステアリング装置としては、ステアリングホイールが固定された入力軸に操舵トルクを検出するトルクセンサ等の操舵トルク検出器を取り付け、例えば電動モータとして誘導モータを用いる場合には、誘導モータの回転速度を検出し、これと操舵トルク検出器のトルク検出値に応じて誘導モータを制御することによって操舵力に応じた操舵補助トルクを発生させ、これによって操舵トルクのアシストを行うようにしている。
【0003】
このような電動パワーステアリング装置においては、装置各部に故障が発生したときに装置が誤動作することを回避するために、装置各部に対して異常監視処理を行っている。そして、例えば前記誘導モータの回転速度を検出するための回転センサについては、回転センサに異常が発生した場合には、例えば、運転席に設けた警告灯を点灯させて運転者にこれを通知し、制御を停止して操舵補助トルクの発生を停止したり、或いは特開平9−56188号公報、特開平10−225196号公報等に記載されているように、切り換え手段によって切り換えを行い、回転センサで検出される回転数に代えて、別の回路によって算出される誘導モータの推定回転数を使用して誘導モータの制御を継続して行い、操舵補助トルクを発生させるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のように、別の回路において推定した推定回転数を使用して誘導モータの制御を継続して行う方法では、回転センサが正常である間は、前記推定回転数を算出するための補助回路は不要なものである。また回転センサに異常が生じたときには、それほど高精度な推定回転数を必要としない制御を行っている場合等には、補助回路の必要性は小さい。
【0005】
このように、補助回路の必要性は小さいが、回転センサに異常が生じた場合に、継続して操舵補助トルクを発生させるためには補助回路が必要であり、このことが電動パワーステアリング装置全体の小型化、コスト削減、或いは信頼性向上等の点において、その妨げとなっている。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、回転センサに異常が発生した場合でも、補助回路を設けることなく、継続して操舵トルクをアシストすることの可能な電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電動パワーステアリング装置は、車両の操舵系に連結され当該操舵系に操舵補助力を付与する誘導電動機と、前記操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記誘導電動機の回転速度を検出する回転速度センサと、前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルク及び前記回転速度センサで検出した回転速度に基づいて前記誘導電動機を駆動制御する電動機制御手段と、前記回転速度センサの異常を検出する異常検出手段と、を備え、前記電動機制御手段は、前記異常検出手段で前記回転速度センサの異常を検出したときには、前記誘導電動機の磁界の回転速度が予め設定した回転速度固定値となるように前記誘導電動機を制御し、前記回転速度固定値は、前記操舵系への操舵入力により前記誘導電動機が回転されるときのその最大回転速度よりも大きな値であることを特徴としている。
【0007】
この請求項1に係る発明では、操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクと回転速度センサで検出した誘導電動機の回転速度とに基づいて、例えば誘導電動機のすべりが最適な値となるように誘導電動機の磁界の回転速度が制御され、これによって操舵トルクに応じた操舵補助力が操舵系に付与されて、操舵トルクのアシストが行われる。そして、異常検出段で回転速度センサの異常を検出したときには、誘導電動機の磁界の回転速度が予め設定した回転速度固定値となるように制御が行われる。
【0008】
誘導電動機では、磁界の回転速度が誘導電動機の回転速度よりも大きければ、多少なりとも出力トルクを得ることができるから、実際の誘導電動機の回転速度が回転速度固定値よりも小さい間は、多少なりとも操舵補助力を操舵系に付与することが可能となる。したがって、回転速度センサが異常となった場合でも、誘導電動機の回転速度が回転速度固定値よりも小さい間は、操舵トルクをアシストすることが可能となる。
【0009】
ここで、回転速度固定値として、操舵系への操舵入力によって誘導電動機が回転されるとき、つまり、運転者がステアリングホイールを転舵することにより操舵系が回転しこれにより誘導電動機の回転子が回転されたときの、誘導電動機の回転速度の最大値よりも大きな値が設定される。すなわち、運転者がステアリングホイールを最も速く転舵したときにこれによって誘導電動機が回転するときの誘導電動機の回転速度よりも大きな値に設定される。したがって、運転者がステアリングホイールをどのように操舵したとしても、誘導電動機の回転速度は回転速度固定値を越えることはないから、操舵時には誘導電動機から操舵補助力が発生されて操舵トルクのアシストが行われることになる。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る電動パワーステアリング装置は、前記回転速度固定値は、前記磁界の回転速度が前記回転速度固定値に制御されたときの前記誘導電動機のすべりが、前記誘導電動機のトルク出力効率が最大となるときの値以上であり且つ1以下となり得る値であることを特徴としている。この請求項2に係る発明では、回転速度固定値として、操舵系への操舵入力によって誘導電動機が回転されるときの、誘導電動機の回転速度の最大値よりも大きな値であり、且つ、誘導電動機のトルク出力効率が最大となるときのすべりをS0 としたとき、誘導電動機の磁界の回転速度が回転速度固定値に制御されたときに、このときの誘導電動機のすべりが、S0 以上であり且つ1以下となり得る値が設定される。
【0011】
一般に、誘導電動機の特性として、すべりが1から前記S0 である間は、トルク出力効率の変動は小さくすべりの減少に伴ってトルク出力効率は増加する。そして、すべりがS0 より小さくなるとトルク出力効率は減少し且つその変動が大きくなる。つまり、すべりがS0 以上であり且つ1以下となり得る値に設定されるということは、トルク出力効率が増加している間の値となるように設定されることになる。よって、誘導電動機の回転速度が増加するにつれて、すべりが減少しこれに伴ってトルク出力効率が増加するから、回転速度の変動に対し操舵補助力の変動は小さく、且つ誘導電動機の回転速度が大きくなった場合でも、操舵補助力が減少することはない。
【0012】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係る電動パワーステアリング装置によれば、異常検出手段で回転速度センサの異常を検出したときには、誘導電動機の磁界の回転速度が予め設定した回転速度固定値となるように制御するようにしたから、誘導電動機の回転速度が回転速度固定値よりも小さい間は、多少なりとも操舵補助力を操舵系に付与することができ、回転速度センサに異常が生じた場合でも、継続して操舵トルクをアシストすることができる。
【0013】
また、このとき、回転速度固定値として、操舵系への操舵入力によって誘導電動機が回転されるときのその最大回転速度よりも大きな値を設定するようにしたから、運転者の転舵速度がどのような値であったとしても、確実に操舵補助力を発生させることができる。
さらに、本発明の請求項2に係る電動パワーステアリング装置によれば、回転速度固定値として、誘導電動機の磁界の回転速度が回転速度固定値に制御されたときに、誘導電動機のすべりが、誘導電動機のトルク出力効率が最大となる値以上であり且つ1以下となり得る磁界の回転速度を設定したから、操舵補助力が大きく変動することを回避し且つ誘導電動機の回転速度の増加に応じて操舵補助力を増加させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態を示す概略構成図であって、図1に示すように、ステアリングホイール1にステアリングシャフト2の上端部が連結され、このステアリングシャフト2の下端部はピニオンシャフト4に接続されている。
【0015】
ピニオンシャフト4の下端部はピニオン軸部4aを構成し、このピニオン軸部4aは、水平に伸びるラック5のギア部に噛合している。そして、ラック5とピニオンシャフト4によってステアリングギアが構成されている。上記水平に延在するラック5の両端部は、それぞれサイドロッド6を介してナックル及び転舵輪7に接続され、ラック5が水平に移動することで左右の車輪7が転舵するようになっている。ここで、上記ステアリングギア、サイドロッド6、ナックルによって操舵系が構成されている。また、図1中、8はステアリングギアのハウジングである。
【0016】
また、前記ピニオンシャフト4の上部位置には、減速機を構成するリングギア9が同軸に固定され、リングギア9に対して、誘導モータ(誘導電動機)10の駆動軸先端部に設けられた傘歯車11が噛合して、誘導モータ10の回転トルクをピニオンシャフト4に伝達可能となっている。
さらに、前記ピニオンシャフト4のリングギア9の上部位置には、ピニオンシャフト4のねじれ量を検出するトルクセンサ(操舵トルク検出手段)12が介挿されている。また、前記誘導モータ10には、その回転角を検出するための回転角センサ(回転速度センサ)13が取り付けられ、前記トルクセンサ12及び回転角センサ13の検出信号は、コントローラ(電動機制御手段)20に出力されるようになっている。
【0017】
また、コントローラ20には、車両の適所に配設された、車速を検出する車速センサ14、及び図示しないエンジンのエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ15の検出信号が入力されるようになっている。
前記コントローラ20は、マイクロコンピュータ等で構成され、バッテリ21から電力供給が行われるようになっている。
【0018】
そして、コントローラ20は、トルクセンサ12の検出信号に応じた操舵補助力をピニオンシャフト4に付与するための操舵補助力制御処理を実行し、前記各種センサの検出信号に応じて、前記誘導モータ10を制御するようになっている。また、前記コントローラ20では、前記回転角センサ13からの検出信号をもとに、その異常監視を行っており、例えば回転角センサ13からの検出信号に基づき算出される誘導モータ10の単位時間あたりの回転数つまり、回転速度が通常あり得ない変化率で変化した場合に、回転角センサ13が異常であると判定する(異常検出手段)。そして、回転角センサ13の異常を検出したときには、予め設定した最大モータ回転数NmMAX を誘導モータ10の単位時間当たりの回転数として設定し、この最大モータ回転数NmMAX に基づいて前記誘導モータ10の制御を行う。
【0019】
図2は、前記コントローラ20で実行される、操舵補助力制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。この操舵補助力制御処理は、図示しないメインプログラムに対して所定時間毎のタイマ割込処理として実行される。
まず、ステップS1で、各センサからの検出信号を読み込む。次いで、ステップS2に移行して、トルクセンサ12で検出したトルク検出値Tが予め設定したしきい値Tα以上であるかどうかを判定する。そして、T≧Tαでないときには、操舵補助力を付与する必要がないと判定しそのまま処理を終了してメインプログラムに戻る。前記しきい値Tαは、操舵補助力を発生させる必要があるかどうかを判定するためのしきい値であって、予め実験等によって求められる。
【0020】
一方、ステップS2の処理でトルク検出値TがT≧Tαであるときには、操舵補助力を付与する必要があると判定してステップS3に移行し、トルクセンサ12及び車速センサ14からの検出信号、また、車速センサ14に異常が発生した場合には、車速センサ14に代えてエンジン回転数センサ15からの検出信号に応じた操舵補助力をピニオンシャフト4に付与し得る誘導モータ10への出力電流値を、例えば予め設定した制御マップ等に基づいて決定する。
【0021】
次いで、ステップS4に移行し、前記回転角センサ13の異常検出を行う図示しない異常検出処理において設定され所定の記憶領域に格納されている、回転角センサ13が正常であるかどうかを表す判定信号に基づき、回転角センサ13が正常であると判定されるときにはステップS5に移行する。そして、回転角センサ13からの検出信号に基づき、誘導モータ10の単位時間あたりの回転数Nm、つまり誘導モータ10の回転速度を算出する。
【0022】
次いで、ステップS6に移行して、ステップS3で決定した誘導モータ10への出力電流値及びステップS5で算出したモータ回転数Nmをもとに、誘導モータ10のすべりが最適なすべりとなるように、誘導モータ10の磁界の回転速度を求め、これに基づき、誘導コイルへの出力電流の周波数を決定する。
前記最適なすべりは、例えば図3に示す、誘導モータ10の出力トルクとすべりとの対応を表す特性図において、誘導モータ10の出力トルクが最も大きくなるすべりSの前後の、効率よく出力トルクを得ることの可能な正常時使用領域s〜s内の値に設定される。
【0023】
また、前記磁界回転速度Nsは次式(1)に基づいて算出することができる。つまり、誘導モータ10のモータ回転数をNm、誘導モータ10の磁界回転速度をNs、すべりをSとすると、これら間には次式(1)が成り立つ。そして、この(1)式から(2)式が導かれるから、磁界回転速度Nsを求めることができる。
【0024】
S=(Ns−Nm)/Ns ……(1)
Ns=Nm/(1−S) ……(2)
そして、決定した周波数に応じた出力電流を誘導モータ10へ出力し、誘導モータ10を駆動制御する。そして、処理を終了してメインプログラムに戻る。
一方、前記ステップS4の処理で、回転角センサ13が異常であると判定されるときには、ステップS11に移行する。そして、誘導モータ10の単位時間当たりの回転数Nmとして、予め設定した最大モータ回転数NmMAX を設定した後、ステップS6に移行し、以後、上記と同様にして、この最大モータ回転数NmMAX に基づき処理を行う。
【0025】
前記最大モータ回転数NmMAX は、運転者が最も速く転舵した場合、つまり、転舵速度が最大となるときの誘導モータ10の回転速度に設定され、例えば実走時に、運転者の転舵速度を計測し、これに基づいて設定する。
つまり、運転者の転舵速をω、リングギア9で構成される減速機のギア比をrとすると、誘導モータ10の回転速度Rは、次式(3)で表すことができる。
【0026】
R=r・ω [deg/s] ……(3)
したがって、誘導モータ10の単位時間あたりの回転数Nmは次式(4)で表すことができる。
Nm=(r・ω/360)×60 [rpm] ……(4)
次に、上記第1の実施の形態の動作を説明する。
【0027】
運転者がステアリングホイール1を転舵していない状態では、ステップS2の処理でトルクセンサ12で検出されるトルク検出信号TはT<Tαとなるから、操舵補助力を付与する必要はないと判断されて、操舵補助力制御処理が終了される。よって、誘導モータ10の駆動は行われず、操舵補助力も付与されない。
この状態から、運転者が転舵を行うと、トルクセンサ12で検出されるトルク検出信号Tは、転舵によりピニオンシャフト4に生じるトルクに応じた値となり、トルク検出信号Tがしきい値Tα以上となったときに、操舵補助力を付与する必要があると判定されて、ステップS2からステップS3に移行する。そして、トルクセンサ12及び車速センサ13の検出信号に基づいて、ピニオンシャフト4に発生するトルク及び現在の車速に応じた誘導モータ10への出力電流値が決定される(ステップS3)。
【0028】
このとき、回転角センサ13が正常な状態である場合には、図示しない回転角センサ13の監視を行う異常監視処理において回転角センサ13は正常であると判定されるから、ステップS4からステップS5に移行して回転角センサ13の検出信号に基づいて誘導モータ10のモータ回転数Nmを算出し、トルク検出値及び車速に基づいて決定した出力電流値及びモータ回転数Nmに応じて、最適なすべりを実現し得る磁界の回転速度Nsが決定され、これに基づき出力電流の周波数が決定されて誘導モータ10が駆動される(ステップS6)。
【0029】
これによって、ピニオンシャフト4に、トルクセンサ12で検出されるトルクに応じた操舵補助力が付加されて、運転者は容易に転舵を行うことができる。
この状態から、回転角センサ13に異常が発生し、例えばその検出信号に基づき算出したモータ回転数Nmの変化率が通常あり得ない変化率となると、図示しない異常監視処理でこれが検出されて、回転角センサ13は異常であると判定される。
【0030】
そのため、操舵補助力制御処理では、ステップS4からステップS11に移行し、最大モータ回転数NmMAX をモータ回転数Nmとして設定する。そして、ステップS6に移行して、トルク検出値に応じた出力電流値と、モータ回転数Nm(=NmMAX )とに基づいて、最適なすべりとなり得る磁界回転速度Nsを算出しこれに基づいて誘導コイルへの電流値の出力周波数を特定し、これに応じて誘導モータ10を駆動制御する。
【0031】
これによって、誘導モータ10が駆動され、ピニオンシャフト4に操舵補助力が付与される。
このとき、回転角センサ13には異常が生じているため、誘導モータ10の真の回転数Nmを検出することはできない。しかしながら、磁界回転速度Nsは、モータ回転数Nmが最大モータ回転数NmMAX であるときに最適なすべりとなる磁界回転速度に固定されているから(回転速度固定値)、運転者がステアリングホイール1をどんなに速く操舵したとしても、図3においてすべりSが正常時使用領域のsより小さくなることはなく、誘導モータ10からモータ出力トルク、つまり操舵補助力を得ることができる。したがって、真のモータ回転数Nmが最大モータ回転数NmMAX よりも小さいときには、多少すべりが大きくなり図3において正常時使用領域の範囲から外れる場合もあるため、回転角センサ13が正常な場合に比較して、ピニオンシャフト4に付与される操舵補助力は小さくなり誘導モータ10のトルク出力効率は低下するが、誘導モータ10による操舵補助力を確実に作用させることができる。
【0032】
また、このとき、最大モータ回転数NmMAX のときに、最適なすべりとなるように制御しているから、実際のすべりがsよりも小さくなることはなく、誘導モータ10のトルク出力効率が極端に低下することはなく、つまり操舵補助力が極端に低下することはない。
このように、回転角センサ13が故障したときには、最大モータ回転数NmMAX をモータ回転数Nmとしこれに基づいて制御を行うようにしたから、回転角センサ13が故障した場合でも、誘導モータ10による操舵補助力を付与することができる。また、最大モータ回転数NmMAX を、運転者による転舵速度が最大であるときの誘導モータ10の回転速度に基づいて設定しているから、運転者がどのような速度で操舵を行った場合でも、確実に操舵補助力を付与することができる。
【0033】
したがって、従来のように回転角センサ13の代わりとなる補助回路を設けることなく実現できるから、電動パワーステアリング装置の小型化及びコスト削減を図ることができると共に、信頼性を向上させることができる。
また、回転角センサ13が正常状態に復帰するまでの間にあっても、多少なりとも操舵補助力を付与することができるから、その分運転者の操舵時の負荷を軽減することができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
この第2の実施の形態は、図4に示すように、図2に示す上記第1の実施の形態における操舵補助力制御処理において、ステップS11の処理に代えてステップS21及びS22の処理を行うようにしたものである。同一処理部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0035】
すなわち、この第2の実施の形態においては、ステップS4の処理で、図示しない異常監視処理によって監視される回転角センサ13の監視結果に基づき、回転角センサ13が正常であると判定されたときには、ステップS5に移行し、以後、上記第1の実施の形態と同様にして、回転角センサ13の検出信号及びトルクセンサ12の検出信号に基づいて、誘導モータ10の制御を行う。
【0036】
一方、ステップS4の処理で回転角センサ13が、正常でないと判定されるときには、ステップS21に移行し、予め設定した最大磁界回転速度NsMAX (回転速度固定値)を、磁界回転速度Nsとして設定する。そして、ステップS22に移行して、この磁界回転速度Nsつまり最大磁界回転速度NsMAX 及びステップS3で決定した出力電流値に基づき、誘導モータ10の誘導コイルへの出力周波数を決定した後、これに基づいて誘導モータ10への電流供給を行い誘導モータ10を駆動する。
【0037】
前記最大磁界回転速度NsMAX は、上記第1の実施の形態で設定した最大モータ回転数NmMAX と、図3に示す正常時使用領域内のすべり(s≦S≦s)とに基づいて、前記(2)式に基づいて算出した値である。つまり、運転者の転舵速度が最大である場合に、最適なすべりとなる磁界回転速度Nsである。
したがって、この第2の実施の形態においては、回転角センサ13に異常が発生したときには、磁界回転速度Nsとして最大磁界回転速度NsMAX が設定され、これに基づいて誘導モータ10の制御が行われる。
【0038】
このとき、前記最大磁界回転速度NsMAX は、運転者の転舵速が最大となるときに最適なすべりとなり得る最大磁界回転速度NsMAX が設定されているから、運転者がステアリングホイール1をどんなに速く操舵したとしても、すべりSが正常時使用領域sを越えて零に近づくことはなく、モータ出力トルクが付与されることになる。
【0039】
したがって、この場合にも上記第1の実施の形態と同様に、真のモータ回転数Nmが最大モータ回転数NmMAX よりも小さいときには、多少すべりが大きくなり、回転角センサ13が正常な場合に比較して、ピニオンシャフト4に付与される操舵補助力は小さくなり効率は低下するが、誘導モータ10による操舵補助力を作用させることができ、上記第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0040】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
この第3の実施の形態は、図5に示すように、図4に示す第2の実施の形態における操舵補助力制御処理において、ステップS21の処理に代えてステップS31の処理を行うようにしたものである。同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0041】
すなわち、この第3の実施の形態における操舵補助力制御処理では、ステップS4の処理で回転角センサ13が異常であると判定されるときには、ステップS31に移行する。そして、磁界回転速度Nsとして、予め設定した磁界回転速度Ns(回転速度固定値)を設定する。そして、ステップS22に移行して、磁界回転速度Ns(=Ns)及びステップS3で決定した出力電流値に基づき、誘導モータ10の誘導コイルへの出力周波数を決定した後、これに基づいて誘導モータ10への電流供給を行い誘導モータ10を駆動する。
【0042】
前記磁界回転速度Nsは、上記第1の実施の形態で設定した最大モータ回転数NmMAX に基づいて、すべりSがモータの出力トルクが最大となるすべりS以上1以下(1≧S≧S)となるように、前記(2)式に基づいて算出した値である。すなわち、運転者が転舵速度が最大である場合に、すべりSが1≧S≧Sとなるときの磁界回転速度Nsであり、つまり、Ns≧NmMAX /(1−S)を満足する値である。
【0043】
したがって、この第3の実施の形態においては、回転角センサ13に異常が発生したときには、磁界回転速度Nsとして予め設定された磁界回転速度Nsが設定され、これに基づいて誘導モータ10の制御が行われる。
このとき、前記磁界回転速度Nsは、運転者が最も速く転舵を行ったときに、そのすべりSが1≧S≧Sとなるときの値に設定されているから、運転者がステアリングホイール1をどんなに速く操舵したとしても、すべりSがモータの出力トルクが最大となるすべりSよりも小さくなることはない。したがって、この場合にも上記第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができると共に、ここでは、すべりSが1≧S≧Sの範囲となるように磁界回転速度Nsを設定し、モータの出力トルクの変化が少ない範囲の値となるように設定しているから、運転者がどのような転舵を行っても操舵補助力の変化を小さく抑えたうえで、操舵補助力を付与することができる。
【0044】
また、図3からわかるように、運転者の転舵速度が増加するにつれて、実際のすべりは1からSの方向に向けて小さくなる。そして、すべりがSを越えないようにしているから、転舵速度の増加に伴って操舵補助力は増加する一方であって、減少することはない。したがって、転舵中に徐々に転舵速度が増加した場合に、途中で操舵補助力が減少してしまうようなことはなく、また、転舵速度が大きい状態で転舵を行う際に、操舵補助力が不足することを抑制することができる。
【0045】
なお、上記各実施の形態においては、回転角センサ13の異常を、その検出信号に基づくモータ回転数Nmの変化率の割合に基づいて判定するようにした場合について説明したが、これに限るものではない。
また、上記各実施の形態においては、トルクセンサ12をピニオンシャフト4に設けた場合について説明したが、これに限らず、例えばステアリングホイール1に近い、ステアリングシャフト2に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】第1の実施の形態における操舵補助力制処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】誘導モータの出力特性を表す特性図である。
【図4】第2の実施の形態における操舵補助力制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】第3の実施の形態における操舵補助力制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
4 ピニオンシャフト
5 ラック
7 転舵輪
10 誘導モータ
12 トルクセンサ
13 回転角センサ
14 車速センサ
15 エンジン回転数センサ
20 コントローラ

Claims (2)

  1. 車両の操舵系に連結され当該操舵系に操舵補助力を付与する誘導電動機と、
    前記操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
    前記誘導電動機の回転速度を検出する回転速度センサと、
    前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルク及び前記回転速度センサで検出した回転速度に基づいて前記誘導電動機を駆動制御する電動機制御手段と、
    前記回転速度センサの異常を検出する異常検出手段と、を備え、
    前記電動機制御手段は、前記異常検出手段で前記回転速度センサの異常を検出したときには、前記誘導電動機の磁界の回転速度が予め設定した回転速度固定値となるように前記誘導電動機を制御し、前記回転速度固定値は、前記操舵系への操舵入力により前記誘導電動機が回転されるときのその最大回転速度よりも大きな値であることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記回転速度固定値は、前記磁界の回転速度が前記回転速度固定値に制御されたときの前記誘導電動機のすべりが、前記誘導電動機のトルク出力効率が最大となるときの値以上であり且つ1以下となり得る値であることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
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