JP3915595B2 - レゾルバを用いた回転角度検出装置およびこの装置を用いた制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転角度検出装置に係り、特に、互いに連動して回転する複数の対象に設けられた複数のレゾルバを備え、各レゾルバの出力に基づいて複数の対象の回転角度位置をそれぞれ検出する回転角度検出装置およびこの装置を用いた制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電動機等の回転機の回転角を検出すべくその回転角に応じた信号を出力するレゾルバが知られている。レゾルバを用いて検出される回転角は、回転機の制御等に用いられる。この点、レゾルバ出力に異常が生じた際にそのレゾルバ出力に基づいて回転機の制御が行われるものとすると、その制御が適正に行われなくなる事態が生ずる。従って、かかる不都合を回避すべく、例えば特開2001−343253号公報に開示される如き手法を用いて、レゾルバ出力の検出異常を確実に検知する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示されるシステムにおいては、レゾルバ出力の検出異常が検知されると、以後、回転角を検出することができなくなる。このため、上記のシステムでは、レゾルバ出力の検出異常に起因して回転機の制御を続行することが不可能となる。
【0004】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、一のレゾルバの出力に検出異常が生じても、その一のレゾルバに対応する対象の回転角度位置をある程度正確に検出することが可能なレゾルバを用いた回転角度検出装置およびこの装置を用いた制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、請求項1に記載する如く、互いに連動して回転する複数の対象に設けられた複数のレゾルバと、各レゾルバの出力に基づいて前記複数の対象の回転角度位置をそれぞれ検出する回転角度検出手段と、を備える回転角度検出装置であって、
前記回転角度検出手段は、一のレゾルバの出力に検出異常が生じた場合には、該一のレゾルバに対応する一の対象の回転角度位置を、該一のレゾルバの検出異常が生ずる直前の回転角度位置と、他のレゾルバに対応する他の対象の回転角度とに基づいて検出するレゾルバを用いた回転角度検出装置により達成される。
【0006】
本発明において、レゾルバは、互いに連動して回転する複数の対象に対応して複数存在する。そして、出力に検出異常が生じた一のレゾルバに対応する一の対象の回転角度位置は、その検出異常が生ずる直前の回転角度位置と、他のレゾルバに対応する他の対象の回転角度とに基づいて検出される。これら一の対象と他の対象とは互いに連動して回転するため、他の対象が回転した回転角度に基づいて一の対象の回転角度を推定できる。このため、検出異常が生ずる直前の回転角度位置に、他の対象の回転角度に基づいて推定される一の対象の回転角度を加算することとすれば、検出異常のレゾルバに対応する一の対象の現時点での回転角度位置を検出できる。従って、本発明によれば、一のレゾルバの出力に検出異常が生じても、その一のレゾルバに対応する対象の回転角度位置を検出することができる。
【0007】
また、上記の目的は、請求項2に記載する如く、互いに連動して回転する複数の対象に設けられた複数のレゾルバと、各レゾルバの2相交流出力に基づいて前記複数の対象の回転角度位置をそれぞれ検出する回転角度検出手段と、を備える回転角度検出装置であって、
前記回転角度検出手段は、一のレゾルバの2相交流出力の何れか一方に検出異常が生じた場合には、該一のレゾルバに対応する一の対象の回転角度位置を、該一のレゾルバの2相交流出力の他方の値と、検出異常が生ずる直前の回転角度位置と、他のレゾルバに対応する他の対象の回転角度とに基づいて検出するレゾルバを用いた回転角度検出装置により達成される。
【0008】
本発明において、レゾルバは、互いに連動して回転する複数の対象に対応して複数存在する。そして、2相交流出力の何れか一方に検出異常が生じた一のレゾルバに対応する一の対象の回転角度位置は、その2相交流出力の他方の値と、検出異常が生ずる直前の回転角度位置と、他のレゾルバに対応する他の対象の回転角度とに基づいて検出される。これらの一の対象と他の対象とは互いに連動して回転するため、他の対象が回転した回転角度に基づいて一の対象の回転角度を推定できる。このため、検出異常が生ずる直前の回転角度位置に、他の対象の回転角度に基づいて推定される一の対象の回転角度を加算することとすれば、検出異常のレゾルバに対応する一の対象の現時点での回転角度位置を検出できる。また、検出異常が生じていない2相交流出力の他方の値によれば、一の対象の回転角度位置を有限の範囲に特定できる。従って、本発明によれば、一のレゾルバの2相交流出力の何れか一方に検出異常が生じても、その一のレゾルバに対応する対象の回転角度位置を精度よく検出することができる。
【0009】
この場合、請求項3に記載する如く、請求項1又は2記載のレゾルバを用いた回転角度検出装置において、前記複数の対象が車両の操舵系であることとしてもよい。
【0010】
ところで、対象の回転角度位置に基づいて所定の制御が実行される構成において、レゾルバの出力に検出異常が生じた際に上記の手法により検出された対象の回転角度位置をそのまま制御の実行に用いるものとすると、その検出精度は正規に算出されるものに比べて低いことがあるため、所定の制御が精度よく行われない事態が生じ得る。この点、レゾルバ検出異常時に検出される対象の回転角度位置は、上記した所定の制御において暫定的に用いることが適切である。
【0011】
従って、請求項4に記載する如く、請求項1乃至3の何れか一項記載の回転角度検出装置を用いた制御装置において、前記回転角度検出手段により検出される前記対象の回転角度位置に基づいて所定の制御を実行する制御実行手段を備え、前記制御実行手段は、一のレゾルバの出力に検出異常が生じた場合には、前記所定の制御を通常制御から暫定制御へ切り替えることとすれば、レゾルバ検出異常が生じた後に、検出される対象の回転角度位置の誤差による影響を抑制しつつ、対象の回転角度位置に基づく制御を続行させることができる。
【0012】
この場合、請求項5に記載する如く、請求項4記載の回転角度検出装置を用いた制御装置において、前記所定の制御が、車両の操舵系に運転者のステアリング操作に応じたアシスト力を付与するアシスト制御であると共に、前記制御実行手段は、一のレゾルバの出力に検出異常が生じた場合には、前記アシスト制御により車両の操舵系に付与するアシスト力を所望の値から減少させることとすれば、通常制御から暫定制御への移行をスムーズに行うことができる。
【0013】
また、レゾルバ検出異常が生じたことにより対象の回転角度位置に基づく暫定制御が行われている状況下において、その検出異常が解消した場合には、その制御を通常制御へ復帰させることが適切である。
【0014】
従って、請求項6に記載する如く、請求項4記載の回転角度検出装置を用いた制御装置において、前記制御実行手段は、一のレゾルバの出力に検出異常が生じた後、該検出異常が解消した場合には、前記所定の制御を暫定制御から通常制御へ切り替えることとすれば、レゾルバ検出異常が解消した場合に、レゾルバを用いて正規に検出される対象の回転角度位置に基づく通常制御への復帰を実現することができる。
【0015】
この場合、請求項7に記載する如く、請求項6記載の回転角度検出装置を用いた制御装置において、前記所定の制御が、車両の操舵系に運転者のステアリング操作に応じたアシスト力を付与するアシスト制御であると共に、前記制御実行手段は、一のレゾルバの出力に検出異常が生じた後、該検出異常が解消した場合には、前記アシスト制御により車両の操舵系に付与するアシスト力を所望の値へ向けて増加させることとすれば、暫定制御から通常制御への移行をスムーズに行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例である回転角度検出装置を備えるシステムの構成図を示す。本実施例のシステムは、車両に搭載される電動パワーステアリング装置(以下、単にステアリング装置と称す)10のシステムである。ステアリング装置10は、ラック&ピニオン式のステアリング装置であり、運転者が車両を操舵させるために操作するステアリングホイール(図示せず)に接続するステアリングシャフト12と、ステアリングシャフト12に設けられたピニオン14と、ピニオン14に係合するラック16と、を備えている。ラック16の両端には、ボールジョイント、タイロッド、及びナックルアームを介して操舵用車輪(図示せず)が連結されている。
【0017】
上記の構成において、ステアリングホイールが操作されると、それに伴ってピニオン14が回転し、ラック16が車幅方向に沿って長手方向に変位する。ラック16が車幅方向に沿って変位すると、タイロッド及びナックルアームが動作し、車輪が転舵される。すなわち、ステアリング装置10は、ピニオン14の回転運動をラック16の長手方向の直進運動に変換することで、運転者によるステアリング操作により車輪を転舵させる機能を有している。
【0018】
本実施例において、ステアリング装置10は、後述するモータを用いて車両乗員によるステアリング操作の負担を軽減させるべく、車両乗員が車輪を転舵させる際に必要なトルクをアシストする車速感応型のパワーステアリング装置である。ステアリングシャフト12は、ステアリングホイール側に固定される入力シャフトと、ラック16側に連結する出力シャフトと、入力シャフトと出力シャフトとの間に介在するトーションバーと、により構成されている。トーションバーは、ステアリングホイールに加わる操舵トルクに応じたねじれを生ずる。トーションバーのねじれ角は、機械的なストッパにより所定の範囲内に制限される。
【0019】
ステアリングシャフト12には、トルクセンサ20が配設されている。トルクセンサ20は、出力シャフトの舵角δ1と入力シャフトの舵角δ2との角度差Δδ(=δ2−δ1)、すなわち、トーションバーのねじれ角Δδに応じた信号を出力する。トーションバーのねじれ角Δδは、運転者がステアリングホイールを操作した際にステアリングホイールに加わる操舵トルクに対応する。従って、トルクセンサ20は、運転者によるステアリング操作によりステアリングホイールに加わる操舵トルクに応じた信号を出力する。トルクセンサ20の出力信号は、電子制御ユニット(以下、ECUと称す)22に供給される。ECU22は、トルクセンサ20の出力信号に基づいてトーションバーのねじれ角Δδを検出し、そのねじれ角Δδの大きさにトーションバーのバネ定数を乗算することによりステアリングホイールに加わる操舵トルクTを検出する。
【0020】
ステアリング装置10は、また、ラック16に係合する三相交流ブラシレスモータ(以下、単にモータと称す)24を備えている。モータ24は、ラック16を覆う車体側のハウジングに固定されたステータ26と、ラック16に係合しそのラック16を囲む筒状の部材であり、ハウジングにベアリングを介して回転可能に支持されたロータ28と、を有している。ステータ26は、コイルとコアとにより構成されている。ロータ28には、マグネットが取り付けられている。ステータ26の励磁によりロータ28が回転すると、ラック16が車幅方向に沿って長手方向に変位する。すなわち、ステアリング装置10において、モータ24は、その回転駆動によりラック16を車幅方向に沿って変位させるトルクを発生する。
【0021】
モータ24のU相,V相,W相の各相にはそれぞれ、ECU22が接続されている。ECU22は、バッテリ30を電源としてモータ24の各相にそれぞれ電力を供給する駆動回路32を有している。駆動回路32は、各相にそれぞれ対応して三対のパワースイッチング素子を有している。駆動回路32の各パワースイッチング素子は、ECU22によりPWM駆動され、モータ24に電圧を印加する。
【0022】
ECU22には、車速センサ34が接続されている。車速センサ34は、車両の速度に応じた周期でパルス信号を出力する。ECU22は、車速センサ34の出力信号に基づいて車速SPDを検出する。ECU22は、アシスト電流演算部36を用いて、トルクセンサ20による操舵トルクTと車速センサ34による車速SPDとの関係に基づいてラック16に付与すべきアシスト力を演算し、そのアシスト力がラック16に付与されるようにモータ24を駆動するために必要な目標アシスト電流量を演算する。
【0023】
ECU22は、駆動回路32とモータ24の各相との間の電流経路に対応して設けられた電流検出回路40,42,44を有している。電流検出回路40〜44はそれぞれ、自己に対応する電流経路を流れる電流量、すなわち、駆動回路32からモータ24の各相に流れる電流量iu,iv,iwに応じた信号を出力する。
【0024】
電流検出回路40〜44には、モータ24の制御方式の簡素化を図るべく、三相交流の電流,電圧を2軸直流で表すdq変換を行う三相−二相変換回路46が接続されている。ステアリング装置10は、モータ24に配設された回転角センサ48を備えている。回転角センサ48は、モータ24におけるロータ28のステータ26に対する回転角度位置δ3に応じた信号を出力する。回転角センサ48の出力信号は、ECU22に供給されている。ECU22は、回転角センサ48の出力信号に基づいてモータ24の回転角度位置δ3を検出する。上記した電流検出回路40〜44の各出力信号および回転角センサ48の出力信号は共に、三相−二相変換回路46に供給されている。三相−二相変換回路46は、電流検出回路40〜44の各出力信号に基づいてロータ28の回転角度位置δ3に従ったq軸電流Iqおよびd軸電流Idに応じた信号を出力する。
【0025】
アシスト電流演算部36および三相−二相変換回路46には、電流フィードバック演算部50が接続されている。アシスト電流演算部36の出力信号および三相−二相変換回路46の出力信号は共に、電流フィードバック演算部50に供給されている。ECU22は、モータ24の各相に流れる電流量が目標アシスト電流量に一致するようにモータ24をフィードバック制御する。電流フィードバック演算部50は、三相−二相変換回路46によるq軸電流Iqおよびd軸電流Idをアシスト電流演算部36による目標のq軸電流およびd軸電流と比較することにより、それらの偏差に基づいて2軸の電流指令値を演算する。
【0026】
電流フィードバック演算部50には、2軸直流を三相の交流電圧,電流で表すdq逆変換を行う二相−三相変換回路52が接続されている。電流フィードバック演算部50による2軸の電流指令値および上記の回転角センサ48の出力信号は共に、二相−三相変換回路52に供給されている。二相−三相変換回路52は、電流フィードバック演算部50の出力信号に基づいてロータ28の回転角度位置δ3に従った三相交流電流に応じた信号を出力する。
【0027】
二相−三相変換回路52には、PWM指令部54が接続されている。二相−三相変換回路52の出力信号は、PWM指令部54に供給されている。PWM指令部54は、二相−三相変換回路52の出力信号に基づいて駆動回路32の各パワースイッチング素子をPWM駆動し、モータ24の各相に目標のアシスト電流が流れるようにモータ24への電圧印加を指令する。
【0028】
上記の構成において、車両乗員によりステアリングホイールが操作されると、その操舵トルクTに応じたアシスト力がラック16に付与されるようにモータ24が駆動される。具体的には、モータ24の駆動は、操舵トルクTが大きいほど大きなアシスト力が発生するように行われる。また、このアシスト力は、車両の車速SPDに応じた値である。従って、本実施例のステアリング装置10によれば、モータ24を用いて車両乗員によるステアリング操作の負担を軽減することができる。
【0029】
図2は、本実施例のシステムが備えるトルクセンサ20及び回転角センサ48の原理構成図を示す。また、図3は、本実施例のトルクセンサ20及び回転角センサ48の検出原理を説明するための図を示す。トルクセンサ20及び回転角センサ48は共に、対象の回転角を検出するためのレゾルバ60を備えている。具体的には、トルクセンサ20は、入力シャフトの回転角δ1に応じた信号を出力する第1レゾルバ60aと、出力シャフトの舵角δ2に応じた信号を出力する第2レゾルバ60bとを有している。また、回転角センサ48は、モータ24のロータの回転角度位置δ3に応じた信号を出力するレゾルバ60cを有している。
【0030】
トルクセンサ20の第1レゾルバ60aは、ステアリングシャフト12の入力シャフトが車体側に対して一回転する過程においてn周期(例えば、5周期等)の信号、すなわち、360°/nごとに同一レベルの信号を出力するように構成されている。従って、第1レゾルバ60aの出力信号は、軸倍角がnxの信号となる。また、トルクセンサ20の第2レゾルバ60bは、ステアリングシャフト12の出力シャフトが車体側に対して一回転する過程においてm周期(例えば、6周期等)の信号、すなわち、360°/mごとに同一レベルの信号を出力するように構成されている。従って、第2レゾルバ60bの出力信号は、軸倍角がmxの信号となる。更に、回転角センサ48のレゾルバ60cは、モータ24のロータが車体側のステータに対して一回転する過程においてk周期の信号、すなわち、360°/kごとに同一レベルの信号を出力するように構成されている。従って、回転角センサ48のレゾルバ60cの出力信号は、軸倍角がkxの信号となる。尚、上記のn、m、及びkは、互いに一致した値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0031】
各レゾルバ60a〜60cは、図2に示す如く、一定周波数の励磁信号が印加される励磁コイル62、並びに、励磁コイル62への励磁信号の印加により信号を発生するsinコイル64及びcosコイル66を備えている。sinコイル64とcosコイル66とは、互いに直交する向きに延在している。sinコイル64及びcosコイル66はそれぞれ、励磁コイル62への励磁信号が最大となるタイミングにおいて、図3に示す如く、対象の回転角度位置θに応じた正弦波状の電流,電圧を発する。この際、sinコイル64とcosコイル66とは、360°/n、360°/m、又は360°/kの何れかを一周期とし、互いに90°だけ位相のずれた電流,電圧を出力する。ECU22は、各レゾルバ60a〜60cのsinコイル64及びcosコイル66の双方から供給されるコイル信号をそれぞれ“0”からオフセットされた出力電圧に変換し、両出力電圧の関係に基づいてそれぞれ、0°と360°/n、360°/m、又は360°/kとの間における各対象の回転角度位置θを検出する。
【0032】
図4は、レゾルバ60のsin相の出力に異常が生ずる状態を説明するための図を示す。レゾルバ60のsin相出力及びcos相出力のうちの何れか一方(図4においてはsin相出力)に、断線やグランドショート等に起因して異常が生ずることがある(図4におけるθ=X)。例えば、レゾルバ60のsinコイル64によるsin相の出力電圧が図4に点線で示す“0”近傍の所定範囲内に継続して維持されることがある。かかる異常が生じた際、その出力電圧に基づいて対象の回転角度位置θが検出され、その位置に基づいてラック16にアシスト力を付与すべくモータ24のフィードバック制御が実行されるものとすると、その対象の回転角度位置が正確に検出されず、その制御が適正に行われないこととなる。従って、モータ24のフィードバック制御を常に適正に行うためには、レゾルバ60の出力の検出異常を確実に検知する必要がある。
【0033】
本実施例においては、レゾルバ60のsin相出力およびcos相出力がそれぞれ図4に点線で示す“0”近傍の所定範囲内に達するか否かが判別され、その判別結果に基づいてレゾルバ60の出力の検出異常が検知される。具体的には、レゾルバ60の各相の出力が“0”近傍の所定範囲内に達せずそのしきい値を超えている場合は、レゾルバ60が正常状態にあると判断され、一方、その出力が“0”近傍の所定範囲内に達しそのしきい値を下回る場合は、レゾルバ60が異常にあると判断される。
【0034】
しかしながら、上記の手法を用いてレゾルバ60の出力の検出異常が検知されたとしても、その後、対象の回転角度位置を検出することができないものであると、かかる異常に起因してモータ24のフィードバック制御を続行することが不可能となる。そこで、本実施例のシステムは、レゾルバ60のsin相およびcos相のうち何れか一の相の出力に検出異常が生じても、モータ24のフィードバック制御を続行すべく、その異常が生じたレゾルバ60による対象の回転角度位置を精度よく検出することとしている。以下、本実施例のシステムの特徴部について説明する。
【0035】
図5は、レゾルバ60のcos相の出力に基づいてとり得る対象の回転角度位置を表した図を示す。レゾルバ60のsin相出力およびcos相出力は共に、360°/n、360°/m、又は360°/kの何れかを一周期とする正弦波である。このため、レゾルバ60のsin相出力のみ又はcos相出力のみに基づいて把握され得る対象の回転角度位置θは、0°と360°/n、360°/m、又は360°/kとの間において2箇所存在する(図5においてθ=θ1およびθ2(>θ1);尚、図5においてはcos相出力のみを示す)。そして、それら2箇所のうちの何れか一が対象の現実の回転角度位置となるべきである。
【0036】
レゾルバ60のsin相出力とcos相出力とは互いに90°だけ位相のずれた値であるので、それらの相の出力に検出異常が生じていない場合には、そのレゾルバ60に対応する対象の回転角度位置を、sin相出力とcos相出力との相対関係に基づいて検出することはできる。一方、レゾルバ60の出力に検出異常が生じている場合には、sin相出力とcos相出力との相対関係からはその対象の回転角度位置を検出することはできない。
【0037】
本実施例において、レゾルバ60a〜60cによる回転角度位置の検出対象は、ステアリングシャフト12の入力シャフトおよび出力シャフト並びにモータ24である。これらの検出対象は、互いに連動して回転する。すなわち、これらの検出対象の回転角度量は、互いに所定の関連性を有している。このため、一の検出対象の回転角度位置をその検出対象に対応するレゾルバ60による出力に基づいて検出することができなくなっても、前回処理時における回転角度位置と、前回処理時から今回処理時にかけて回転した他のレゾルバ60による他の検出対象の回転角度量とに基づいて、その一の検出対象の回転角度位置を推定することができる。かかる手法によれば、レゾルバ60a〜60cの何れか一のレゾルバ60のsin相およびcos相のうち一の相の出力に検出異常が生じた場合においても、その検出異常が生じたレゾルバ60による対象の回転角度位置を検出することが可能となる。
【0038】
尚、レゾルバ60a〜60cの何れか一のレゾルバ60のsin相およびcos相のうち、例えば図4に示す如くsin相の出力に検出異常が生じた場合においては、そのcos相の出力に検出異常は生じていないので、そのcos相の出力からは対象の回転角度位置は2箇所に限定される。従って、検出異常が生じていない相の出力に基づく回転角度位置と、前回処理時における回転角度位置、及び、前回処理時から今回処理時にかけて回転した他のレゾルバ60による他の検出対象の回転角度量に基づいて推定される回転角度位置とを比較することとすれば、その検出精度の向上を図ることができる。
【0039】
図6は、上記の機能を実現すべく、本実施例においてECU22が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図6に示すルーチンは、所定時間(例えば5ms)ごとに繰り返し起動されるルーチンである。図6に示すルーチンが起動されると、まずステップ100の処理が実行される。
【0040】
ステップ100では、上記した手法を用いて、トルクセンサ20の第1レゾルバ60aおよび第2レゾルバ60b並びに回転角センサ48のレゾルバ60cのうち何れか一のレゾルバにおいて、sin相およびcos相の何れか一の相の出力に検出異常が生じているか否かが判別される。本ステップ100の処理は、肯定判定がなされるまで繰り返し実行される。その結果、肯定判定がなされた場合には、次にステップ102の処理が実行される。
【0041】
ステップ102では、上記ステップ100で何れか一の相の出力に検出異常が生じていると判別されたレゾルバ60とは別の他の、検出異常が生じていない正常なレゾルバを用いて、その正常なレゾルバ60に対応する対象(例えば、トルクセンサ20の第2レゾルバ60bであればステアリングシャフト12の出力シャフト)の回転速度Δθを演算する処理が実行される。本ステップ102における回転速度Δθの演算処理は、単位時間当たりの対象の回転角度の変化量に基づいて行われる。
【0042】
ステップ104では、次式(1)に従って、上記ステップ100で何れか一の相の出力に検出異常が生じていると判別されたレゾルバ60が正常であった前回処理時における演算値と、上記ステップ102で演算された他のレゾルバ60による対象の回転速度Δθと、本ルーチン処理の演算周期Tとに基づいて、その一の相の出力に検出異常が生じたレゾルバ60を用いて検出すべき対象の回転角度位置θiを推定する処理が実行される。
【0043】
θi=K・Δθ・T+θi-1 ・・・(1)
但し、Kは上記ステップ100による検出異常に係るレゾルバ60の信号角度周期と上記ステップ102による正常なレゾルバ60の信号角度周期との比であり、また、θi-1は前回処理時における演算角度位置である。
【0044】
ステップ106では、上記ステップ100で何れか一の相の出力に検出異常が生じていると判別されたレゾルバ60の正常な相(例えば、sin相の出力に検出異常が生じていると判別された場合にはcos相)を正規化すると共に、その正常な一の相の出力に基づいてその異常なレゾルバ60による対象(例えば、トルクセンサ20の第1レゾルバであればステアリングシャフト12の入力シャフト)がとり得る回転角度位置θ1,θ2(尚、θ1<θ2)を算出する処理が実行される。
【0045】
ステップ108では、上記ステップ104及び106の処理結果に基づいて、|θi−θ1|>|θi−θ2|が成立するか否かが判別される。その結果、|θi−θ1|>|θi−θ2|が成立する場合は、角度位置θ1よりも角度位置θ2の方が、何れか一の相の出力に検出異常が生じたレゾルバ60による対象の回転角度位置としては正確な値を表していると判断できる。一方、|θi−θ1|<|θi−θ2|が成立する場合は、逆に、角度位置θ2よりも角度位置θ1の方が、何れか一の相の出力に検出異常が生じたレゾルバ60による対象の回転角度位置としては正確な値を表していると判断できる。従って、肯定判定がなされた場合は次にステップ110の処理が実行され、一方、否定判定がなされた場合は次にステップ112の処理が実行される。
【0046】
ステップ110では、上記ステップ100で何れか一の相の出力に検出異常が生じたと判別されたレゾルバ60による対象の回転角度位置θとして、上記ステップ106で算出された角度位置θ2を適用する処理が実行される。一方、ステップ112では、何れか一の相の出力に検出異常が生じたと判別されたレゾルバ60による対象の回転角度位置θとして、上記ステップ106で算出された角度位置θ1を適用する処理が実行される。
【0047】
ステップ114では、上記ステップ110又は112で算出される回転角度位置θに基づいて、後述の図7に示すルーチンに従ってモータ24の暫定的なフィードバック制御(以下、暫定制御と称す)を行う処理が実行される。本ステップ114の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0048】
上記図6に示すルーチンによれば、トルクセンサ20及び回転角センサ48の3つのレゾルバ60a〜60cのうち一のレゾルバ60においてsin相およびcos相の何れか一の相の出力に検出異常が生じている場合、その検出異常が生じたレゾルバ60を用いて検出すべき対象の回転角度位置θを、そのレゾルバ60の検出異常が生じていない相の出力に基づいて把握され得る二の回転角度位置θ1,θ2のうち、前回処理時における回転角度位置と、回転速度Δθと演算周期Tとから把握される前回処理時から今回処理時にかけての他のレゾルバ60による他の対象の回転角度量とに基づいて推定される回転角度位置θiに近接する位置に設定することができる。
【0049】
レゾルバ60a〜60cによる回転角度位置の検出対象は、上記の如く、ステアリングシャフト12の入力シャフトおよび出力シャフト並びにモータ24の軸であって、互いに連動して回転するので、すなわち、ステアリングシャフト12の入力シャフトが回転した場合、その出力シャフトおよびモータ24の軸は、その入力シャフトの回転角度量に近似した量だけ回転するので、これらの検出対象の回転角度量は互いに所定の関連性を有する。従って、前回処理時における回転角度位置と、回転速度Δθと演算周期Tとから把握される前回処理時から今回処理時にかけての他のレゾルバ60による他の対象の回転角度量とに基づいて推定される回転角度位置θiは、sin相およびcos相の何れか一の相の出力に検出異常が生じたレゾルバ60による対象の回転角度位置に近接したものとなる。
【0050】
このため、本実施例においては、何れか一のレゾルバ60のsin相およびcos相のうち一の相の出力に検出異常が生じても、上記の如く、前回処理時における回転角度位置と、回転速度Δθと演算周期Tとから把握される前回処理時から今回処理時にかけての他のレゾルバ60による他の対象の回転角度量とに基づいて推定される回転角度位置θiに近接した位置を、検出異常が生じたレゾルバ60を用いて検出すべき対象の回転角度位置θとして設定するので、その検出異常に係るレゾルバ60による対象の回転角度位置をある程度正確に検出することができる。
【0051】
また、レゾルバ60のsin相出力のみ又はcos相出力のみに基づいて把握され得る対象の回転角度位置は、0°と360°/n、360°/m、又は360°/kとの間において2箇所存在する。本実施例においては、それら2箇所の位置θ1,θ2のうち所定の条件を満たす位置を、検出異常が生じたレゾルバ60を用いて検出すべき対象の回転角度位置θとして設定するので、その検出異常に係るレゾルバ60による対象の回転角度位置を精度よく検出することができる。従って、本実施例の装置によれば、一のレゾルバ60のsin相およびcos相の何れか一の相の出力に検出異常が生じても、その一のレゾルバ60に対応する対象の回転角度位置を精度よく検出することが可能となっている。
【0052】
次に、図7を参照して、本実施例のシステムにおいて、レゾルバ60に検出異常が生じた際、検出された回転角度位置を用いて行われる制御の内容について説明する。
【0053】
図7は、本実施例においてECU22が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図7に示すルーチンは、所定時間(例えば5ms)ごとに繰り返し起動されるルーチンである。図7に示すルーチンが起動されると、まずステップ100の処理が実行される。
【0054】
ステップ150では、上記図6に示すルーチンの処理結果として暫定制御が実行されるか否かが判別される。本ステップ150の処理は、暫定制御が実行されると判別されるまで繰り返し実行される。その結果、肯定判定がなされた場合は、次にステップ152の処理が実行される。
【0055】
ステップ152では、上記図6に示すルーチン中のステップ100で何れか一の相の出力に検出異常が生じたと判別されたレゾルバ60の出力が監視され、その出力が異常の生ずる状態から正常状態へ復帰したか否かが判別される。その結果、否定判定がなされたと判別された場合は、次にステップ154の処理が実行される。ステップ154では、モータ24のフィードバック制御によるアシスト力を所望の値から例えば一定時間ごとに一定量ずつ徐々に減らす漸減処理が行われる。
【0056】
ステップ156では、上記ステップ154におけるフィードバック制御によるアシスト力の漸減処理が所定期間継続したか否かが判別される。尚、所定期間とは、アシスト力がゼロとなるまでの時間、或いは、所定時間等の予め定められた期間等のことである。その結果、所定期間が経過していないと判別された場合は、次に上記ステップ152の処理が実行される。一方、所定期間が経過したと判別された場合は、次にステップ158の処理が実行される。
【0057】
ステップ158では、一のレゾルバ60の何れか一の相の出力に検出異常が生じたとして、モータ24のフィードバック制御を中止し、ステアリング操作をアシストするアシスト制御を中止すると共に、その旨を運転者に知らせる異常確定処理が実行される。尚、運転者に検出異常を知らせるのを、暫定制御の開始時から行うこととしてもよい。本ステップ158の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0058】
一方、上記ステップ152において検出異常の生じたレゾルバ60の出力が正常状態に復帰し、肯定判定がなされた場合は、次にステップ160の処理が実行される。ステップ160では、通常どおりのフィードバック制御を行い、モータ24の暫定制御が実行されていた場合には、その暫定制御を中止し、通常どおりのフィードバック制御を再開する処理が実行される。尚、この際には、モータ24のフィードバック制御によるアシスト力を減じられた値から所望の値へ例えば一定時間ごとに一定量ずつ徐々に増やす漸増処理が行われる。本ステップ160の処理が終了すると、今回のルーチンは終了される。
【0059】
上記図7に示すルーチンによれば、一のレゾルバ60のsin相およびcos相のうち何れか一の相の出力に検出異常が生じた場合に、その検出異常が生じたレゾルバ60を用いて検出すべき対象の回転角度位置を上記図6のルーチンに示す手法を用いて検出し、その検出に係る回転角度位置に基づいてモータ24の制御を実行することができる。すなわち、何れか一のレゾルバ60のsin相およびcos相のうち一の相の出力に検出異常が生じても、直ちにモータ24のフィードバック制御を中止することはなく、モータ24のフィードバック制御を続行することができる。従って、本実施例においては、レゾルバ検出異常が生じた後、運転者におけるステアリング操作の負担を軽減させるアシスト制御が暫定的に続行されることとなる。
【0060】
かかる構成においては、レゾルバ検出異常が検知された直後に、運転者のステアリング操作に対するアシスト力が発生しない事態は回避され、その操作負担が急に軽減されなくなり過大となる事態は回避される。従って、本実施例によれば、レゾルバ検出異常が検知された直後、急にモータ24の電流フィードバック制御が中止されることに起因して運転者にとってステアリング操作について違和感が生ずるのを防止することが可能となっている。
【0061】
ここで、レゾルバ検出異常が生じた際に上記図6のルーチンに示す手法を用いて検出された対象の回転角度位置をそのままモータ24のフィードバック制御の実行に用いるものとすると、その検出精度はレゾルバ60を用いて検出されるものに比べて低いことがあるため、かかるフィードバック制御が精度よく行われず、アシスト制御が適正に行われない事態が生じ得る。
【0062】
これに対して、本実施例においては、何れか一のレゾルバ60のsin相およびcos相のうち一の相の出力に検出異常が生じた後、運転者のステアリング操作に対するアシスト制御について目標のアシスト力の漸減処理が行われる。具体的には、目標のアシスト力が所望の値から一定時間ごとに一定量ずつ徐々に減少される。
【0063】
かかる構成においては、モータ24の電流フィードバック制御が暫定的に行われる状況下、その暫定制御の開始後から、暫定的に検出される対象の回転角度位置に生ずる誤差による影響を小さく抑制させることができる。従って、本実施例によれば、レゾルバ検出異常が生じた後、検出される対象の回転角度位置の誤差による影響を抑制しつつ、対象の回転角度位置に基づくモータ24の電流フィードバック制御およびアシスト制御を暫定的に続行させることが可能となっている。
【0064】
また、上記の構成においては、運転者のステアリング操作に対するアシスト制御の暫定制御として目標のアシスト力が徐々に減少される。この場合には、急にアシスト制御が中止されることに起因して運転者にとってステアリング操作に違和感が生ずるのを防止することが可能である。この点、本実施例によれば、レゾルバ検出異常が生じた際、アシスト制御について通常どおりの制御から暫定制御への移行をスムーズに行うことが可能となっている。
【0065】
また、上記図7に示すルーチンによれば、一のレゾルバ60のsin相およびcos相のうち何れか一の相の出力に検出異常が生じても、その後その検出異常が解消された場合には、その異常が解消されたレゾルバ60を用いて検出される対象の回転角度位置に基づいてモータ24の電流フィードバック制御を実行することができる。すなわち、モータ24の電流フィードバック制御が暫定的なものから正規なものへ復帰させることができる。従って、本実施例によれば、レゾルバ検出異常が解消された場合、通常どおりの電流フィードバック制御への復帰を、運転者の操作によらずに自動的に実現することが可能となっている。
【0066】
対象の回転角度位置の検出が通常どおりレゾルバ出力に基づいて行われる場合は、上記の如く暫定的に行われる場合に比してその検出精度が向上する。従って、本実施例によれば、一旦レゾルバ検出異常が生じても、その後レゾルバ検出異常が解消された後は、モータ24の電流フィードバック制御を精度の良い状態に復帰させることが可能となっている。
【0067】
また、本実施例においては、レゾルバ検出異常が解消された後、アシスト制御について目標アシスト力の漸増処理が行われる。具体的には、目標のアシスト力が所望の値から一定時間ごとに一定量ずつ徐々に増加される。この場合には、アシスト制御による目標のアシスト力が急に所望の値に増大することに起因して運転者にとってステアリング操作に違和感が生ずるのを防止することが可能である。この点、本実施例によれば、レゾルバ検出異常が解消された際、アシスト制御について暫定制御から通常制御への移行をスムーズに行うことが可能となっている。
【0068】
尚、本実施例において、各レゾルバ60による回転角度位置の検出対象は、上記の如く、ステアリングシャフト12の入力シャフトおよび出力シャフト並びにモータ24の軸であって、合計3つ存在し、互いに連動して回転する。このため、一の対象が回転した場合、他の2つの対象は共に、その一の対象の回転角度量に応じた量だけ回転する。従って、3つのレゾルバ60a〜60cのうち2つのレゾルバ60においてそれぞれ何れか一の相の出力に検出異常が生じた場合においても、それら2つのレゾルバ60を用いて検出すべき2つの対象の回転角度位置をそれぞれ、正常な一のレゾルバ60による一の対象の回転角度量に基づいて検出することができる。
【0069】
このため、本実施例によれば、一のレゾルバ60に検出異常が生ずる場合に限らず、2つのレゾルバ60に同時に何れか一の相の出力の検出異常が生ずる場合においても、モータ24のフィードバック制御を暫定的に続行することが可能となっている。
【0070】
この点、本実施例においては、3つのレゾルバ60a〜60cのうち一又は2のレゾルバ60に検出異常が生じた場合にも、その検出異常に係るレゾルバ60による対象の回転角度位置が検出される。第1レゾルバ60a及び第2レゾルバ60bは共にトルクセンサ20を構成し、ステアリングホイールに加わる操舵トルクはそれらのレゾルバ60a,60bを用いて検出されるステアリングシャフト12のトーションバーのねじれ角Δδに基づいて検出される。従って、本実施例によれば、トルクセンサ20を構成する第1レゾルバ60a及び第2レゾルバ60bのうち何れか一方のレゾルバ60の何れか一の相に検出異常が生じても、そのレゾルバ60による対象の回転角度位置を検出することができる。このため、トルクセンサ20のレゾルバ60に検出異常が生じても、車両のステアリングホイールに加わる操舵トルクを検出することが可能となっている。
【0071】
このように、本実施例のシステムにおいては、ステアリングホイールに加わる操舵トルクに応じた信号を出力するトルクセンサ20、及び、モータ24におけるロータ28のステータ26に対する回転角度位置に応じた信号を出力する回転角センサ48を共に二重系にすることなく、3つのレゾルバ60a〜60cのうち一又は2のレゾルバ60に検出異常が生じた際、各対象の回転角度位置を他の手法を用いて検出することができ、モータ24のフィードバック制御を暫定的に続行し、車両のステアリング操作についてのアシスト制御を継続することが可能となっている。
【0072】
尚、上記の実施例においては、ステアリングシャフト12の入力シャフトおよび出力シャフト並びにモータ24の軸が特許請求の範囲に記載した「複数の対象」及び「車両の操舵系」に相当していると共に、ECU22が、レゾルバのsin相およびcos相の関係に基づいて対象の回転角度位置θを検出することにより、並びに、上記図6に示すルーチン中ステップ110,112の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「回転角度検出手段」が実現されている。
【0073】
ところで、上記の実施例においては、レゾルバ60のsin相およびcos相のうち何れか一の相の出力に検出異常が生じた場合、検出異常が生じていない相の出力から把握される対象の2つの回転角度位置θ1,θ2のうち所定の条件を満たす何れか一の位置を、検出異常が生じたレゾルバ60を用いて検出すべき対象の回転角度位置θとして設定するが、本発明はこれに限定されるものではなく、検出異常が生じていない前回処理時における回転角度位置と、回転速度Δθと演算周期Tとから把握される前回処理時から今回処理時にかけての他のレゾルバ60による他の対象の回転角度量とに基づいて推定される回転角度位置θiを、検出すべき対象の回転角度位置θとして設定することとしてもよい。
【0074】
【発明の効果】
上述の如く、請求項1記載の発明によれば、一のレゾルバの出力に検出異常が生じても、その一のレゾルバに対応する対象の回転角度位置をある程度正確に検出することができる。
【0075】
請求項2記載の発明によれば、一のレゾルバの2相交流出力の何れか一方に検出異常が生じても、その一のレゾルバに対応する対象の回転角度位置を精度よく検出することができる。
【0076】
請求項3記載の発明によれば、一のレゾルバの出力に検出異常が生じても、その一のレゾルバに対応する車両操舵系の回転角度位置を精度よく検出することができる。
【0077】
請求項4記載の発明によれば、レゾルバ検出異常が生じた後に、検出される対象の回転角度位置の誤差による影響を抑制しつつ、対象の回転角度位置に基づく制御を続行させることができる。
【0078】
請求項5記載の発明によれば、対象の回転角度位置に基づく制御について通常制御から暫定制御への移行をスムーズに行うことができる。
【0079】
請求項6記載の発明によれば、レゾルバ検出異常が解消した場合に、レゾルバを用いて正規に検出される対象の回転角度位置に基づく通常制御への復帰を実現することができる。
【0080】
また、請求項7記載の発明によれば、対象の回転角度位置に基づく制御について暫定制御から通常制御への移行をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるレゾルバを用いた回転角度検出装置を備えるシステムの構成図である。
【図2】本実施例のシステムが備えるレゾルバの原理構成図である。
【図3】本実施例のシステムが備えるレゾルバの検出原理を説明するための図である。
【図4】レゾルバのsin相の出力に異常が生ずる状態を説明するための図である。
【図5】レゾルバのcos相の出力に基づいてとり得る対象の回転角度位置を表した図である。
【図6】本実施例において、出力に検出異常が生じたレゾルバによる対象の回転角度位置を暫定的に検出すべく実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図7】本実施例において、暫定的に検出された対象の回転角度位置を用いて実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
10 電動パワーステアリング装置
12 ステアリングシャフト
14 ピニオン
16 ラック
20 トルクセンサ
22 電子制御ユニット(ECU)
24 モータ
48 回転角センサ
60 レゾルバ
Claims (7)
- 互いに連動して回転する複数の対象に設けられた複数のレゾルバと、各レゾルバの出力に基づいて前記複数の対象の回転角度位置をそれぞれ検出する回転角度検出手段と、を備える回転角度検出装置であって、
前記回転角度検出手段は、一のレゾルバの出力に検出異常が生じた場合には、該一のレゾルバに対応する一の対象の回転角度位置を、該一のレゾルバの検出異常が生ずる直前の回転角度位置と、他のレゾルバに対応する他の対象の回転角度とに基づいて検出することを特徴とするレゾルバを用いた回転角度検出装置。 - 互いに連動して回転する複数の対象に設けられた複数のレゾルバと、各レゾルバの2相交流出力に基づいて前記複数の対象の回転角度位置をそれぞれ検出する回転角度検出手段と、を備える回転角度検出装置であって、
前記回転角度検出手段は、一のレゾルバの2相交流出力の何れか一方に検出異常が生じた場合には、該一のレゾルバに対応する一の対象の回転角度位置を、該一のレゾルバの2相交流出力の他方の値と、検出異常が生ずる直前の回転角度位置と、他のレゾルバに対応する他の対象の回転角度とに基づいて検出することを特徴とするレゾルバを用いた回転角度検出装置。 - 前記複数の対象が車両の操舵系であることを特徴とする請求項1又は2記載のレゾルバを用いた回転角度検出装置。
- 前記回転角度検出手段により検出される前記対象の回転角度位置に基づいて所定の制御を実行する制御実行手段を備え、
前記制御実行手段は、一のレゾルバの出力に検出異常が生じた場合には、前記所定の制御を通常制御から暫定制御へ切り替えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の回転角度検出装置を用いた制御装置。 - 前記所定の制御が、車両の操舵系に運転者のステアリング操作に応じたアシスト力を付与するアシスト制御であると共に、
前記制御実行手段は、一のレゾルバの出力に検出異常が生じた場合には、前記アシスト制御により車両の操舵系に付与するアシスト力を所望の値から減少させることを特徴とする請求項4記載の回転角度検出装置を用いた制御装置。 - 前記制御実行手段は、一のレゾルバの出力に検出異常が生じた後、該検出異常が解消した場合には、前記所定の制御を暫定制御から通常制御へ切り替えることを特徴とする請求項4記載の回転角度検出装置を用いた制御装置。
- 前記所定の制御が、車両の操舵系に運転者のステアリング操作に応じたアシスト力を付与するアシスト制御であると共に、
前記制御実行手段は、一のレゾルバの出力に検出異常が生じた後、該検出異常が解消した場合には、前記アシスト制御により車両の操舵系に付与するアシスト力を所望の値へ向けて増加させることを特徴とする請求項6記載の回転角度検出装置を用いた制御装置。
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