JP2004358985A - 電気式動力舵取装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】操舵状態にかかわらず、操舵フィーリングを向上し得る電気式動力舵取装置を提供する。
【解決手段】電気式動力舵取装置では、モータ回転角センサにより検出されるモータの回転方向に基づいてモータの回転方向が反転したと判断し(S101でYes)、かつ、電流センサにより検出されるモータ電流に基づいてモータ電流が所定の第1電流閾値以下であると判断した場合には(S103でYes)、ステップS105によりECUにより補償器の比例ゲインを減少させる。これにより、減速機のギヤ等がバックラッシュ領域に入った場合は、バックラッシュ領域外の通常制御におけるモータ電流指令値よりも低いゲインでモータを制御することができるので、バックラッシュ領域に入った状態でステアリングホイール21を保舵していてもバックラッシュによる振動や異音等の発生が抑制され、操舵状態にかかわらず操舵フィーリングを向上することができる。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動モータで発生した操舵アシスト力を動力伝達機構を介して操舵系に伝達する電気式動力舵取装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、一般的な電気式動力舵取装置では、ステアリングホイールに連結された入力軸から得られる操舵トルクを、操舵トルク検出手段(トルクセンサ等)により検出しその操舵トルクに応じた補助操舵力(アシスト力)を電動モータに発生させることによって、運転者による操舵をアシストする制御をその制御装置において行っている(例えば、下記特許文献1;段落番号0009〜0024、図1、2)。そして、このような制御装置では、マイクロコンピュータ等による比例積分制御あるいは比例積分微分制御により電流指令値を求めて、PWM制御される当該電動モータを制御している(特許文献1;段落番号0018、0065、図5、9)。
【0003】
ところが、下記特許文献1に開示されるような一般的な電気式動力舵取装置によると、電動モータによるアシスト力は、例えば、減速ギア等の減速機構を介して出力軸に伝達され、ステアリングホイールによる操舵力をアシストするように動力伝達機構が構成されている。そのため、電動モータの回転方向が切り換わるときに、電動モータに取り付けられたギヤとこれに対向する減速ギヤとの間に発生するバックラッシュによって、発振による振動や異音等が発生し操舵フィーリングの悪化を招くという問題点が従来の電気式動力舵取装置には存在していた。
【0004】
そこで、当該特許文献1による開示技術では、電動モータの回転状態を検出する回転状態検出手段と、該回転状態検出手段の回転状態検出値に基き動力伝達機構の歯車がバックラッシュ間を移動する空転状態であることを検出したとき制御信号を補正する補正手段とを備えることによって、動力伝達機構の歯車がバックラッシュ間を空転する場合には、補正手段によって制御信号を補正し電動モータを緩やかに駆動することにより、上記問題点を解決しようとしている(特許文献1;段落番号0007、0008、0102)。
【0005】
ここで、当該特許文献1による開示技術では、「回転状態検出手段の回転状態検出値に基き動力伝達機構の歯車がバックラッシュ間を移動する空転状態であることを検出したとき制御信号を補正する補正手段」の具体例として、ローパスフィルタ処理を挙げている。そして、所定条件を満たす間においては、モータ電流指令値をローパスフィルタ処理して設定することで、電動モータが反転するときモータ電流指令値を抑制して設定することによって電動モータを緩やかに駆動する旨や、このローパスフィルタ処理により電動モータの回転方向が切り換わるために減速ギヤのバックラッシ間をギヤが移動する場合でも、ギヤどうしが勢い良く衝突することなく、電動モータの反転に伴い異音や衝撃等が発生しない旨等を当該特許文献1において説示している(特許文献1;段落番号0034、0052、0060、0067、0070、0081、0084、0086、0089、図5、7、9、11、12)。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−175406号公報(第2頁〜第13頁、図1〜13)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1による開示技術によると、「回転状態検出手段の回転状態検出値に基き…制御信号を補正する補正手段」の具体例としてローパスフィルタ処理を開示しているものの、当該補正手段のそれ以外の具体例は当該特許文献1には何ら明示も示唆もされていない。すると、当該補正手段であるローパスフィルタ処理によれば、急操舵時におけるステアリングホイールの反転操舵に対してはモータ電流指令値の高調波がフィルタリングされるため、ギヤどうしの歯当たりは急激にはならなくなり、異音や衝撃等の発生を防止可能にしているものと考えられる。
【0008】
ところが、動力伝達機構の歯車がバックラッシュ間を空転するという現象が発生するのは、ステアリングホイールによる急操舵時に限ったことではなく、中立直線操舵時にステアリングホイールをゆっくり左右に動作させた場合においてもバックラッシュ間を空転することがある。そのため、このように緩やかな操舵時に、歯車がバックラッシュ間を空転する領域(以下「バックラッシュ領域」という。)に入ってしまうような場合においては、モータ電流指令値をローパスフィルタ処理しても、それによるフィルタ効果が低いか、あるいはフィルタ効果がない。つまり、ローパスフィルタ処理により除去可能な周波数領域よりも低い周波数成分を含む場合には、上記特許文献1による開示技術では対処できない。したがって、当該開示技術では、操舵状態によっては、異音や衝撃等の発生を十分に防止することはできないという問題を残している。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、操舵状態にかかわらず、操舵フィーリングを向上し得る電気式動力舵取装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の作用・効果】
上記目的を達成するため、請求項1の電気式動力舵取装置では、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記操舵系に対する操舵アシスト力を発生させる電動モータと、前記電動モータで発生した前記操舵アシスト力を前記操舵系に伝達する動力伝達機構と、前記操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクに基いて前記操舵アシスト力を発生させる制御信号を前記電動モータに出力する制御手段と、前記制御手段から出力される前記制御信号に基いて前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、を備える電気式動力舵取装置において、前記電動モータの回転方向を検出するモータ回転方向検出手段と、前記電動モータに流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、前記モータ回転方向検出手段により検出される前記電動モータの回転方向に基づいて前記電動モータの回転方向が反転したと判断し、かつ、前記モータ電流検出手段により検出される前記モータ電流に基づいて前記モータ電流が所定の第1電流閾値以下であると判断した場合には、前記制御手段の比例ゲインを減少させるゲイン補正手段と、を備えることを技術的特徴とする。
【0011】
請求項1の発明では、モータ回転方向検出手段により検出される電動モータの回転方向に基づいて電動モータの回転方向が反転したと判断し、かつ、モータ電流検出手段により検出されるモータ電流に基づいてモータ電流が所定の第1電流閾値以下であると判断した場合には、ゲイン補正手段により制御手段の比例ゲインを減少させる。これにより、電動モータの回転方向が反転し、かつ、電動モータのモータ電流が所定の第1電流閾値以下であるときには、周波数領域に関係なく低下した比例ゲインで操舵アシスト力を発生させる制御信号を生成してモータ駆動回路に出力するので、例えば、動力伝達機構のギヤ等がバックラッシュ領域に入った場合は、通常制御における制御信号よりも低いゲインで電動モータを制御することができる。したがって、バックラッシュ領域に入った状態で保舵していても、バックラッシュによる振動や異音等の発生が抑制されるため、操舵状態にかかわらず、操舵フィーリングを向上することができる。
【0012】
また、請求項2の電気式動力舵取装置では、請求項1に記載の電気式動力舵取装置において、前記ゲイン補正手段により前記比例ゲインを減少させた後、前記モータ電流検出手段により検出される前記モータ電流に基づいて前記モータ電流が所定の第2電流閾値を超えると判断した場合には、減少前の前記比例ゲインに戻るまで前記減少させた前記制御手段の比例ゲインを制御周期ごとに徐々に増加させる比例ゲイン復帰手段を備えることを技術的特徴とする。
【0013】
請求項2の発明では、比例ゲイン復帰手段により、モータ電流が所定の第2電流閾値を超えると判断した場合には、減少前の比例ゲインに戻るまで減少させた制御手段の比例ゲインを制御周期ごとに徐々に増加させる。これにより、例えば、動力伝達機構のギヤ等がバックラッシュ領域から出た場合は、バックラッシュ領域に入っていたときにゲイン補正手段により減少させた比例ゲインを、制御周期ごとに徐々に減少前の比例ゲインに戻すので、急激に比例ゲインを増加させた場合に発生し得る異音や振動を防止しつつ、通常制御時における比例ゲインに復帰させることができる。したがって、通常制御における操舵フィーリングも損なうことなく、操舵フィーリングを向上することができる。
【0014】
上記目的を達成するため、請求項3の電気式動力舵取装置では、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記操舵系に対する操舵アシスト力を発生させる電動モータと、前記電動モータで発生した前記操舵アシスト力を前記操舵系に伝達する動力伝達機構と、前記操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクを前記電動モータのモータ電流指令に変換するアシストマップ手段と、前記モータ電流指令に基いて前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、を備える電気式動力舵取装置において、前記電動モータの回転方向を検出するモータ回転方向検出手段と、前記電動モータに流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、前記モータ回転方向検出手段により検出される前記電動モータの回転方向に基づいて前記電動モータの回転方向が反転したと判断し、かつ、前記モータ電流検出手段により検出される前記モータ電流に基づいて前記モータ電流が所定の第1電流閾値以下であると判断した場合には、前記アシストマップ手段の変換ゲインを減少させるマップ補正手段と、を備えることを技術的特徴とする。
【0015】
請求項3の発明では、モータ回転方向検出手段により検出される電動モータの回転方向に基づいて電動モータの回転方向が反転したと判断し、かつ、モータ電流検出手段により検出されるモータ電流に基づいてモータ電流が所定の第1電流閾値以下であると判断した場合には、マップ補正手段によりアシストマップ手段の変換ゲインを減少させる。これにより、電動モータの回転方向が反転し、かつ、電動モータのモータ電流が所定の第1電流閾値以下であるときには、周波数領域に関係なく低下した変換ゲインで操舵トルクをモータ電流指令に変換してモータ駆動回路に出力するので、例えば、動力伝達機構のギヤ等がバックラッシュ領域に入った場合は、通常制御におけるモータ電流指令よりも低いゲインで電動モータを制御することができる。したがって、バックラッシュ領域に入った状態で保舵していても、バックラッシュによる振動や異音等の発生が抑制されるため、操舵状態にかかわらず、操舵フィーリングを向上することができる。
【0016】
また、請求項4の電気式動力舵取装置では、請求項3において、請求項3に記載の電気式動力舵取装置において、前記マップ補正手段により前記アシストマップ手段の変換ゲインを減少させた後、前記モータ電流検出手段により検出される前記モータ電流に基づいて前記モータ電流が所定の第2電流閾値を超えると判断した場合には、減少前の前記変換ゲインに戻るまで前記減少させた前記アシストマップ手段の変換ゲインを所定周期ごとに徐々に増加させる変換ゲイン復帰手段を備えることを技術的特徴とする。
【0017】
請求項4の発明では、変換ゲイン復帰手段により、モータ電流が所定の第2電流閾値を超えると判断した場合には、減少前の変換ゲインに戻るまで減少させたアシストマップ手段の変換ゲインを所定周期ごとに徐々に増加させる。これにより、例えば、動力伝達機構のギヤ等がバックラッシュ領域より出た場合は、バックラッシュ領域に入っていたときにマップ補正手段により減少させた変換ゲインを、所定周期ごとに徐々に減少前の変換ゲインに戻すので、急激に変換ゲインを増加させた場合に発生し得る異音や振動を防止しつつ、通常制御時における変換ゲインに復帰させることができる。したがって、通常制御における操舵フィーリングも損なうことなく、操舵フィーリングを向上することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電気式動力舵取装置に係る一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。まず本実施形態の電気式動力舵取装置20のハードウェア構成を図1(A)、(B) を参照して説明する。
図1(A) に示すように、電気式動力舵取装置20は、主に、ステアリングホイール21、ステアリング軸22、ピニオン入力軸23、ステアリングセンサ24、減速機27、ラックアンドピニオン28、ロッド29、モータM、ECU30、モータ回転角センサ33等から構成されている。
【0019】
図1(A) に示すように、ステアリングホイール21には、ステアリング軸22の一端側が接続されており、このステアリング軸22の他端側にはステアリングセンサ24の入力側が接続されている。またこのステアリングセンサ24の出力側には、ラックアンドピニオン28のピニオン入力軸23の一端側が接続されている。ステアリングセンサ24は、図略のトーションバーとこのトーションバーを挟むようにトーションバーの両端に取り付けられた2つのレゾルバとからなり、トーションバーの一端側を入力、他端側を出力とする入出力間で生じるトーションバーの捻れ量等を当該2つのレゾルバにより検出することで、ステアリングホイール21による操舵トルクTや操舵角θH を検出し得るように構成されている。
【0020】
ステアリングセンサ24の出力側に接続されるピニオン入力軸23の途中には、減速機27が連結されており、モータMにから出力されるアシスト力をこの減速機27を介してピニオン入力軸23に伝達し得るように構成されている。
【0021】
即ち、図面には示されていないが、動力伝達機構としての減速機27は、モータMの出力軸に取り付けられたモータギヤと減速機27の減速ギヤとが互いに噛合可能に構成されており、モータMの出力軸が回転すると所定の減速比で減速機27の減速ギヤが回転することで、モータMによる駆動力(アシスト力)をピニオン入力軸23を伝達可能にしている。モータMには、モータMの回転角θM を検出可能なモータ回転方向検出手段としてのモータ回転角センサ33が取り付けられており、このモータ回転角θM やステアリングセンサ24による操舵トルクT、操舵角θH 等に基づいてECU30によるモータMの駆動制御が行われている。なお、本実施形態では、このモータギヤとこれに対向する減速ギヤとの間に存在するバックラッシュにより振動や異音等が発生するのを、後述するように、ECU30による制御処理によって抑制している。
【0022】
一方、このピニオン入力軸23の他端側には、ラックアンドピニオン28を構成する図略のラック軸のラック溝に噛合可能なピニオンギヤが形成されている。
このラックアンドピニオン28では、ピニオン入力軸23の回転運動をラック軸の直線運動に変換可能にしており、またこのラック軸の両端にはロッド29が連結され、さらにこのロッド29の端部には図略のナックル等を介して操舵輪FR、FLが連結されている。これにより、ピニオン入力軸23が回転すると、ラックアンドピニオン28、ロッド29等を介して操舵輪FR、FLの実舵角θTir を変化させることができるので、ピニオン入力軸23の回転量および回転方向に従った操舵輪FR、FLの操舵を可能にしている。なお図示されてないが、ラックアンドピニオン28には、操舵輪FR、FLの舵角を検出可能な実舵角センサが設けられており、これにより検出された実舵角信号はセンサ情報としてECU30に入力されている。
【0023】
ECU30は、図1(B) に示すように、主に、A/D変換器等の周辺LSIやメモリ等を備えたMPU(Micro Processor Unit)、ステアリングセンサ24やモータ回転角センサ33等による各種センサ情報(操舵トルク信号、操舵角信号、モータ回転角信号)等を入出力可能な入出力インタフェイスI/F、およびMPUから出力されるモータ電流指令に基づいてPWM制御によるモータ電流をモータMに供給可能なモータ駆動回路35から構成されている。なお、図1(B) に示す符号37は、モータMに実際に流れるモータ電流IM を検出し得る電流センサ37であり、この電流センサ37により検出されたモータ電流IM に関するセンサ情報は、モータ電流信号として入出力インタフェイスI/Fを介してMPUに入力され得るように構成されている。
【0024】
このように構成することにより、電気式動力舵取装置20では、ステアリングホイール21による操舵状態(操舵トルクT、操舵角θH )を操舵トルク検出手段としてのステアリングセンサ24により検出し、その操舵状態に応じたモータ指令電流を電動モータとしてのモータMに出力するように制御手段としてのECU30によって制御する。これにより、電気式動力舵取装置20は、当該操舵状態に応じたアシスト力をモータMにより発生させて運転者のステアリングホイール21による操舵をアシスト可能にしている。
【0025】
ここで、減速機27によるバックラッシュが、このような電気式動力舵取装置20による制御に与える影響を図2を参照して説明する。なお図2には、電気式動力舵取装置20の全体による制御概要を表す制御ブロックが示されている。
【0026】
図2に示すように、ECU30では、ステアリングセンサ24により検出された操舵トルクTとして、ステアリングホイール21の操舵角θH に対する操舵輪FR、FLの実舵角θTir の偏差にステアリングセンサ24のトーションバー捻れ定数KT を掛けたものが入力されると、モータ電流指令マップ30aを参照して当該操舵トルクTに応じたモータ電流指令値IMを得る。なお、このモータ電流指令マップ30aは、所定の変換ゲインにより操舵トルクTをモータ電流指令値IMに変換している。
【0027】
そして、このモータ電流指令値IM対する実際のモータ電流IM の偏差を加算器30bにより得て、その偏差を補償器30cに入力する。この補償器30cは、所定の比例ゲインを与えるほか、後述するように、所定の条件が整った場合に当該比例ゲインを減少させる機能を有するものである。この補償器30cは、特許請求の範囲に記載の「ゲイン補正手段」に相当するものである。
【0028】
補償器30cにより所定の比例ゲインが与えられると、モータ電流指令値IMは、さらにPWM30dに入力されてパルス幅変調がかけられて、モータ駆動回路35を介してモータMに出力される。なお、モータ駆動回路35では、モータ回転角速度θM−dot に誘起電圧定数Ke (V/rad/sec)を掛けたものとPWM30dの出力との差を、モータ駆動電流として出力し、さらにこのモータ駆動電流に1/(R+L・s)を掛けたものが実際のモータ電流IM として供給される。ここで、RはモータMの巻線抵抗、LはモータMのインダクタンス、sはラプラス演算子を示す。
【0029】
そして、実際のモータ電流IM にモータMのトルク定数Kt (N・m/A)を掛けたものがモータMの出力トルクTm (N・m)として得られるので、この出力トルクTm と、ラックアンドピニオン28のピニオン入力軸回転角θA にピニオン入力軸23の捻れ定数KL を掛けたもの(図2に示す丸A)との差に、モータ慣性JM の逆数(1/JM )を掛けることにより、モータ回転加速度θM−dotdotが得られる。これを積分(1/s)することにより前述のモータ回転角速度θM−dot が得られ、さらに積分(1/s)することでモータ回転角θM が得られる。なお、このモータ回転角θM は、モータ回転角センサ33により検出され得るものである。
【0030】
モータMの出力軸によるモータ回転角θM は、減速機27の減速ギヤによるギヤゲインGが与えられると、減速機27によるバックラッシュを経て、ピニオン入力軸23のピニオン入力軸回転角θA としてラックアンドピニオン28に入力される。そして、ラックアンドピニオン28では、ピニオン入力軸回転角θA とピニオン軸の回転角θL と偏差にピニオン軸の捻れ定数KL が掛けられた後(図2に示す丸A)、ラック軸から戻されるラック軸の捻れ等による外乱を引き、それにラックの負荷慣性JL の逆数(1/JL )を掛けることによって、ピニオン軸の回転加速度θL−dotdotが得られる。これを積分(1/s)することによりピニオン軸の回転角速度θL−dot が得られ、さらに積分(1/s)することでピニオン軸の回転角θL が得られる。
【0031】
そして、ピニオン・ラック変換によってピニオン軸の回転角θL をラック軸の変換値XL に変換した後、ラック軸の移動位置XRak と偏差にラック軸のラック定数KRak を掛けられたものが、前述のラック軸の捻れ等による外乱として戻される。またこのラック定数KRak を掛けられたものは、操舵輪FR、FLから入力されるタイヤの捻れ外乱を引いた後、ラックの質量MRak の逆数(1/MRak )を掛けることによって、ラック軸の移動加速度XRak−dotdotが得られる。これを積分(1/s)することによりラック軸の移動速度XRak−dot が得られ、さらに積分(1/s)することでラック軸の移動位置XRak が得られる。
【0032】
これにより、このラック軸の移動位置XRak はロッド29等を介して操舵輪FR、FLに入力されるので、ステアリングホイール21による操舵角θH に応じた操舵輪FR、FLの操舵が可能になる。
【0033】
このような電気式動力舵取装置20による制御において、減速機27にバックラッシュがない場合には、運転者により操舵されるステアリングホイール21によるマニュアル操舵力と、これを補助するモータMによるアシスト力との和である操舵力がピニオン入力軸23によるピニオン入力軸回転角θA を発生させ、このピニオン入力軸回転角θA によりピニオン入力軸23の負荷であるラックアンドピニオン28を作動させる。このような場合、アシスト力を発生させるモータMには、ラックアンドピニオン28を含め全ての負荷慣性がかかるため、その補償分を補償器30cによる比例ゲインで補う制御をECU30では行う。
【0034】
これに対し、減速機27にバックラッシュがある場合には、バックラッシュ領域に入ると同時に、それまでモータMにかかっていたラックアンドピニオン28を含た負荷を失う(負荷が抜ける)ため、負荷がかかっていた場合と同様の補償を補償器30cにより行っているときには、無負荷に対する補償によりモータMのモータ回転角θM が激しく増減を繰り返す振動あるいは発振した状態に陥ることとなる。このようなモータMの振動状態が、バックラッシュ間を移動する空転状態において対向するギヤどうしの歯間衝突を繰り返し招くため、その衝突音が異音となって車室内の乗員に不快音を与えたり、振動による衝撃がステアリング軸22を介してステアリングホイール21に振動を与えたりする原因となる。
【0035】
つまり、図2に示すブロック図において、ECU30の補償器30cによる比例ゲインをKp 、またモータMによるモータ慣性JM 分とラックアンドピニオン28によるラック負荷慣性分JL とをまとめて表すと1/(JM +JL )とすることができるので、図2に示す制御ブロック図をこのような観点から要約して表現すると、図3に示すように表すことができる。
【0036】
そこで、この図3に示す制御ブロックによる制御について、例えばトルク指令Aが入力された場合の出力BのゲインGは次式(1) により表すことができる。
【0037】
G = B/A = Kp /(JM +JL +Kp ) …(1)
【0038】
ここで、減速機27がバックラッシュ領域に入るということは、前述したようにラック負荷慣性分JL がゼロ(JL =0)になることであるから、バックラッシュ領域に入った場合には、上式(1) においてはG = Kp /(JM +Kp )となり、ゲインGが急激に増加した場合と等価の状態になる。したがって、減速機27がバックラッシュ領域に入っている場合には比例ゲインKp を下げることによって上述したような発振状態による振動の防止が可能になることがわかる。
【0039】
このようなバックラッシュ領域に入った状態を、モータMの回転角θM 、角速度ωM の変化に対応したモータ電流IM の波形として観測すると、図4(C) に示すように、概ね表すことができる。なお、図4(A) はモータMの回転角θM 、図4(B) はモータMの角速度ωM 、図4(C) はモータMの実電流IM の波形を表しているが、この図4(C) の電流波形については、バックラッシュにおける振動状態をわかり易くするため、図4(A) の回転角θM および図4(B) の角速度ωM に比べて時間軸t方向に拡大した誇張表現を採っているので、留意されたい。
【0040】
図4(A) に示すように、時間t1 においてモータMの回転角θM が正(+)方向から負(−)方向に切り替わると、それと同時に減速機27では対向するギヤどうし(モータギヤと減速ギヤ)がバックラッシュ領域に入るため、ラック負荷慣性JL がゼロ(JL =0)となる一方で、モータMの角速度ωM はゼロから逆回転(−)方向の増加傾向に移行するため、モータ電流IM はバックラッシュ領域を超えてラック負荷慣性分JL が増加に転じるまでピーク付近で振動を繰り返す(図4(C) に示す破線楕円α1 内)。また時間t2 においてモータMの回転角θM が負(−)方向から正(+)方向に切り替わる場合でも、同様にバックラッシュ領域に入ると振動を繰り返す(図4(C) に示す破線楕円α2 内)。さらに時間t3 においても同様で(図4(C) に示す破線楕円α3 内)、ステアリングホイール21を保舵することによりモータMの回転角θM 、角速度ωM がゼロに収束しつつある場合においても(時間t4、t5 )、バックラッシュ領域に入ると振動を繰り返す(図4(C) に示す破線楕円α4、α5 内)。
【0041】
これは、ステアリングホイール21を急激に操舵しても、緩やかに操舵してもさらには保舵状態においても、バックラッシュ領域に入ると、同様に振動が生じることを示している。そのため、前述したような開示技術(特許文献1)によるローパスフィルタでは、時間t3 におけるような緩慢な操舵あるいは時間t4、t5 における保舵時においても異音や衝撃を十分に防止することはできないことを明示している。
【0042】
なお、このような図4における状態をラックアンドピニオン28の負荷トルクTL とモータMの出力トルクTm との関係において式表現すると、次式(2)、(3) のように表される。
【0043】
TL = Kt ×IL = (JM +JL )×dωM /dt …(2)
ここで、Kt はモータMのトルク定数、IL は負荷電流、dωM /dtはモータMの回転角加速度を表す。バックラッシュ領域に入ると、負荷慣性JL がゼロになるため、式(2) は次式(3) として表現することができる。
【0044】
(JM +0)×dωM /dt = Kt ×IM = Tm …(3)
ここで、IM はモータMのモータ電流、Tm はモータMの出力トルクである。
またバックラッシュ領域ではギヤが空転するため、dωM /dt は変化しないとみなせるので、IM <IL の関係を維持する。
【0045】
以上の考察から、減速機27がバックラッシュ領域に入った場合には、補償器30cによる所定の比例ゲインを下げることによって、図4(C) のα1 〜α5 に示すようなモータ電流の振動を防止することが可能となる。そのため、本実施形態では図5に示すような比例ゲイン制御をECU30により行っている。
【0046】
この比例ゲイン制御処理は、ECU30のメモリに記憶された一連の制御プログラムに組み込まれており、制御周期として、例えば5ミリ秒ごとにタイマ割り込み処理等により起動され実行されている。なお図5には、ECU30により実行される電気式動力舵取装置20の制御処理のうち、当該比例ゲイン制御の部分だけが図示されている。
【0047】
図5に示すように、比例ゲイン制御では、まずステップS101によりモータMの回転方向が反転したか否かを判断する処理が行われる。例えば、モータMのモータ回転角センサ33から入力されるモータ回転角θM に基づいてモータ回転角速度θM−dot を求めて回転方向を検出する。
【0048】
ステップS101によりモータMの回転方向が反転したと判断された場合には(S101でYes)、続くステップS103に処理を移行し、モータMの回転方向が反転したと判断されなかった場合には(S101でNo)、ステップS107に処理を移行する。なおこのステップS101によりモータMの回転方向が反転したと判断された場合(S101でYes)は、特許請求の範囲に記載の「モータ回転方向検出手段により検出される前記電動モータの回転方向に基づいて前記電動モータの回転方向が反転したと判断し」に相当する。
【0049】
ステップS103では、モータMのモータ電流IM が所定の第1電流閾値以下であるか否かを判断する処理が行われる。例えば、モータMの電流センサ37から入力されるモータMの実電流値を読み込むことでモータ電流IM が得られるので、これを予め設定されている所定の第1電流閾値と比較する。
【0050】
ステップS103によりモータMのモータ電流IM が所定の第1電流閾値以下である判断された場合には(S103でYes)、次のステップS105に処理を移行し、モータMのモータ電流IM が所定の第1電流閾値以下である判断されなかった場合には(S103でNo)、ステップS107に処理を移行する。なおこのステップS103によりモータMのモータ電流IM が所定の第1電流閾値以下である判断された場合(S103でYes)は、特許請求の範囲に記載の「モータ電流検出手段により検出される前記モータ電流に基づいて前記モータ電流が所定の第1電流閾値以下であると判断した場合」に相当する。
【0051】
ステップS105では、補償器30cの比例ゲインを所定値に設定する処理が行われる。つまり、ステップS101によりモータMの回転方向が反転したと判断され(S101でYes)、かつ、ステップS103によりモータMのモータ電流IM が所定の第1電流閾値以下である判断された場合には(S103でYes)、前述した所定の条件が整ったとして、補償器30cにより与えられる比例ゲインを所定値まで減少させる処理がこのステップS105によって行われる。
このステップS105は、特許請求の範囲に記載の「ゲイン補正手段」に相当するものである。
【0052】
なおここにいう比例ゲインの「所定値」とは、例えば、減速機27がバックラッシュ領域に入った状態でステアリングホイール21を保舵していても、図4(C) に示す破線楕円α1 〜α5 内のような発振による振動を抑制し得る程度のゲインをいい、実機による実験データやコンピュータシミュレーションによるデータに基づいて最適な値が設定される。これにより、図2に示す補償器30cの比例ゲイン、つまり図3に示し比例ゲインKp がこのような所定値まで減少するので、例えば図6(C) に示す破線楕円β1 〜β5 内のように発振を抑え継続した振動の発生を抑制することが可能となる。
【0053】
ステップS105により補償器30cが比例ゲインが下げられると、続くステップS109では、モータMのモータ電流IM が所定の第2電流閾値を超えているか否かを判断する処理が行われ、モータMのモータ電流IM が所定の第2電流閾値を超えるまで(ステップS109でYes)このステップS109を繰り返し行う。即ち、運転者等により操舵されている場合には、図2を参照して説明したように、操舵角θH の入力により操舵トルクTが発生するため、モータ電流指令マップ30aに基づいて新たなモータ電流指令がECU30から出力される。
これによりモータ駆動回路35を介してモータMに電流が流れてモータ電流IM が増加するため、モータMの出力軸の回転により減速機27のバックラッシュ領域から抜け出ることが可能なる。
【0054】
つまり、このステップS109では、バックラッシュ領域内からバックラッシュ領域外に抜け出ることができたか否かを判断している。そのため、このステップS109でモータ電流IM が所定の第2電流閾値を超えていると判断された場合には(S109でYes)、ステップS111に処理を移行して、一旦はステップS105によりゲインを下げた比例ゲインを徐々に元に戻す処理が行われる。なお、このステップS109によりモータ電流IM が所定の第2電流閾値を超えていると判断された場合(S109でYes)は、特許請求の範囲に記載の「ゲイン補正手段により前記比例ゲインを減少させた後、前記モータ電流検出手段により検出される前記モータ電流に基づいて前記モータ電流が所定の第2電流閾値を超えると判断した場合」に相当するものである。
【0055】
一方、ステップS107は、ステップS101またはステップS103による判断処理によりそれぞれの条件を満たさないと判断された場合に行われる処理で、補償器30cの比例ゲインは初期値に設定されているか否かの判断処理が行われる。即ち、前回、この比例ゲイン制御処理を実行したときにはステップS105により補償器30cの比例ゲインが所定値まで下げられていたり、次に説明するステップS111により比例ゲインが上げられている途中であった場合には、引き続きステップS111を実行する必要があるので、このステップS107によりその判断を行っている。
【0056】
ステップS107により比例ゲインは初期値に設定されていると判断された場合には(S107でYes)、ステップS111による処理は必要ないので、本比例ゲイン制御処理を終了し、次回の割り込み処理による実行に備える。一方、ステップS107により比例ゲインは初期値に設定されていると判断されない場合には(S107でNo)、ステップS111に処理を移行して補償器30cの比例ゲインを上げる処理を行う。
【0057】
ステップS111では、補償器30cの比例ゲインをワンステップ上げる処理が行われる。ワンステップとは、例えば、比例ゲインを電流比で0.5dB増加させることをいう。このように比例ゲインを徐々に増加させることによって、減速機27がバックラッシュ領域より出た場合は、バックラッシュ領域に入っていたときにステップS105により減少させた比例ゲインを、減少前の比例ゲインに戻すので、急激に比例ゲインを増加させた場合に発生し得る異音や振動を防止しつつ、通常制御時における比例ゲインに復帰させることができる。
【0058】
なお、このステップ111は、特許請求の範囲に記載の「減少前の前記比例ゲインに戻るまで前記減少させた前記制御手段の比例ゲインを制御周期ごとに徐々に増加させる比例ゲイン復帰手段」に相当するもので、前述したように、本比例ゲイン制御処理が、例えばタイマ割り込み等により5ミリ周期ごとに実行されることによって当該ステップS111が毎回実行されてワンステップごとに比例ゲインを増加させるので、「制御手段の比例ゲインを制御周期ごとに徐々に増加させる」ことを可能にしている。
【0059】
ステップS111による処理が終了すると、本比例ゲイン制御処理を終了し、次回の割り込み処理による実行に備える。
【0060】
このように電気式動力舵取装置20では、図5に示す比例ゲイン制御処理を行うことによって、モータ回転角センサ33により検出されるモータMの回転方向に基づいてモータMの回転方向が反転したと判断し(S101でYes)、かつ、電流センサ37により検出されるモータ電流IM に基づいてモータ電流IM が所定の第1電流閾値以下であると判断した場合には(S103でYes)、ステップS105によりECU30により補償器30cの比例ゲインを減少させる。
【0061】
これにより、モータMの回転方向が反転し、かつ、モータMのモータ電流IM が所定の第1電流閾値以下であるときには、周波数領域に関係なく低下した比例ゲインで操舵アシスト力を発生させるモータ電流指令値IMを生成してモータ駆動回路35に出力するので、例えば、減速機27のギヤ等がバックラッシュ領域に入った場合は、バックラッシュ領域外の通常制御におけるモータ電流指令値IMよりも低いゲインでモータMを制御することができる。したがって、バックラッシュ領域に入った状態でステアリングホイール21を保舵していても、バックラッシュによる振動や異音等の発生が抑制されるため(図6(C) に示す時間t4、t5 )、操舵状態にかかわらず、操舵フィーリングを向上することができる。
【0062】
また、モータ電流IM が所定の第2電流閾値を超えると判断した場合には(S109でYes)、ステップS111により、減少前の比例ゲインに戻るまで減少させた補償器30cの比例ゲインを所定の割込み周期(例えば5ミリ秒)ごとに徐々に増加させる。これにより、例えば、減速機27のギヤ等がバックラッシュ領域より出た場合は、バックラッシュ領域に入っていたときにステップS105により減少させた比例ゲインを、当該割込み周期ごとに徐々に減少前の比例ゲインに戻すので、急激に比例ゲインを増加させた場合に発生し得る異音や振動を防止しつつ、通常制御時における比例ゲインに復帰させることができる。したがって、通常制御における操舵フィーリングも損なうことなく、操舵フィーリングを向上することができる。
【0063】
なお、上述した実施形態では、所定の条件が整った場合(S101でYes、かつ、S103でYes)、補償器30cによる比例ゲインを減少させたが(S105)、これに限られることはなく、例えば、図5に示すステップS105による「補償器30cの比例ゲインを所定値まで下げる処理」に代えて「図2に示すモータ電流指令マップ30aの変換ゲインを所定値まで減少させる処理」(マップ補正手段)を行っても良い。
【0064】
即ち、モータ回転角センサ33により検出されるモータMの回転方向に基づいてモータMの回転方向が反転したと判断し(S101でYes)、かつ、電流センサ37により検出されるモータ電流IM に基づいてモータ電流IM が所定の第1電流閾値以下であると判断した場合には(S103でYes)、モータ電流指令マップ30aの変換ゲインが所定値まで下げる処理を行う。これにより、モータMの回転方向が反転し、かつ、モータMのモータ電流IM が所定の第1電流閾値以下であるときには、周波数領域に関係なく低下した変換ゲインで操舵トルクTをモータ電流指令値IMに変換してモータ駆動回路35に出力するので、例えば、減速機27のギヤ等がバックラッシュ領域に入った場合は、バックラッシュ領域外の通常制御におけるモータ電流指令値IMよりも低いゲインでモータMを制御することができる。したがって、このような制御の場合であっても、バックラッシュ領域に入った状態でステアリングホイール21を保舵していても、バックラッシュによる振動や異音等の発生が抑制されるため(図6(C) に示す時間t4、t5 )、操舵状態にかかわらず、操舵フィーリングを向上することができる。
【0065】
また、このようなモータ電流指令マップ30aの変換ゲインを制御する場合には、図5に示すステップS111による「補償器30cの比例ゲインをワンステップ上げる処理」に代えて「図2に示すモータ電流指令マップ30aの変換ゲインをワンステップ上げる処理」(変換ゲイン復帰手段)を行っても良い。
【0066】
即ち、モータ電流IM が所定の第2電流閾値を超えると判断した場合には(S109でYes)、モータ電流指令マップ30aの変換ゲインをワンステップ上げる処理を行うにより、減少前の変換ゲインに戻るまで減少させたモータ電流指令マップ30aの変換ゲインを所定周期ごとに徐々に増加させる。これにより、例えば、減速機27のギヤ等がバックラッシュ領域より出た場合は、バックラッシュ領域に入っていたときに減少させたモータ電流指令マップ30aの変換ゲインを、当該所定周期ごとに徐々に減少前の変換ゲインに戻すので、急激に変換ゲインを増加させた場合に発生し得る異音や振動を防止しつつ、通常制御時における変換ゲインに復帰させることができる。したがって、通常制御における操舵フィーリングも損なうことなく、操舵フィーリングを向上することができる。
【0067】
なお、以上説明した実施形態等では、「操舵アシスト力を操舵系に伝達する動力伝達機構」の一例として、図1および図2に示す減速機27で生じるバックラッシュを挙げて説明したが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、図1に示すラックアンドピニオン28を構成するピニオンギヤとラックとの間で発生するバックラッシュについても上述した例と同様に適用することができる。
【0068】
即ち、ラックアンドピニオン28のピニオンギヤとラックとの間で発生するバックラッシュは、図2に示す制御ブロックでは、ラックアンドピニオン28のラック軸のラック定数KRak とその後段の加算器との間に表すことができるので、このよなラックアンドピニオン28におけるバックラッシュについても上述した減速機27のバックラッシュと同様に対処することができる。これにより、前述同様の作用・効果を得ることができる(図6(C) に示す時間t4、t5 )。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A) は、本発明の一実施形態に係る電気式動力舵取装置の構成概要を示す説明図で、図1(B) は、図1(A) に示すECU等の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る電気式動力舵取装置の全体による制御概要を表す制御ブロック図である。
【図3】図2に示すブロック図の一部を要約した構成を示すブロックである。
【図4】ステアリングホイールを左右に操舵してから保舵した場合におけるモータに関する波形図で、図4(A) はモータの回転角θM を示す波形、図4(B) はモータの角速度ωM を示す波形、図4(C) は、モータの実電流IM を示す波形で、従来の制御によるものである。
【図5】本実施形態に係る比例ゲイン制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】ステアリングホイールを左右に操舵してから保舵した場合におけるモータに関する波形図で、図6(A) はモータの回転角θM を示す波形、図6(B) はモータの角速度ωM を示す波形、図6(C) は、モータの実電流IM を示す波形で、本実施形態に係る比例ゲイン制御処理された場合のものである。
【符号の説明】
20 電気式動力舵取装置
21 ステアリングホイール
22 ステアリング軸
23 ピニオン入力軸
24 ステアリングセンサ(操舵トルク検出手段)
27 減速機 (動力伝達機構)
28 ラックアンドピニオン
29 ロッド
30 ECU (制御手段、ゲイン補正手段、比例ゲイン復帰手段、マップ補正手段、変換ゲイン復帰手段)
33 モータ回転角センサ(モータ回転方向検出手段)
35 モータ駆動回路
37 電流センサ (モータ電流検出手段)
M モータ (電動モータ)
FR、FL 操舵輪
T 操舵トルク
θH 操舵角
θTir 実舵角
θM モータの回転角
ωM モータの角速度
IM モータの実電流
IM モータ電流指令値(制御信号、モータ電流指令)
S105(ゲイン補正手段)、S111(比例ゲイン復帰手段)

Claims (4)

  1. 操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記操舵系に対する操舵アシスト力を発生させる電動モータと、前記電動モータで発生した前記操舵アシスト力を前記操舵系に伝達する動力伝達機構と、前記操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクに基いて前記操舵アシスト力を発生させる制御信号を前記電動モータに出力する制御手段と、前記制御手段から出力される前記制御信号に基いて前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、を備える電気式動力舵取装置において、
    前記電動モータの回転方向を検出するモータ回転方向検出手段と、
    前記電動モータに流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、
    前記モータ回転方向検出手段により検出される前記電動モータの回転方向に基づいて前記電動モータの回転方向が反転したと判断し、かつ、前記モータ電流検出手段により検出される前記モータ電流に基づいて前記モータ電流が所定の第1電流閾値以下であると判断した場合には、前記制御手段の比例ゲインを減少させるゲイン補正手段と、を備えることを特徴とする電気式動力舵取装置。
  2. 請求項1に記載の電気式動力舵取装置において、
    前記ゲイン補正手段により前記比例ゲインを減少させた後、前記モータ電流検出手段により検出される前記モータ電流に基づいて前記モータ電流が所定の第2電流閾値を超えると判断した場合には、減少前の前記比例ゲインに戻るまで前記減少させた前記制御手段の比例ゲインを制御周期ごとに徐々に増加させる比例ゲイン復帰手段を備えることを特徴とする電気式動力舵取装置。
  3. 操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記操舵系に対する操舵アシスト力を発生させる電動モータと、前記電動モータで発生した前記操舵アシスト力を前記操舵系に伝達する動力伝達機構と、前記操舵トルク検出手段により検出された操舵トルクを前記電動モータのモータ電流指令に変換するアシストマップ手段と、前記モータ電流指令に基いて前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、を備える電気式動力舵取装置において、
    前記電動モータの回転方向を検出するモータ回転方向検出手段と、
    前記電動モータに流れるモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、
    前記モータ回転方向検出手段により検出される前記電動モータの回転方向に基づいて前記電動モータの回転方向が反転したと判断し、かつ、前記モータ電流検出手段により検出される前記モータ電流に基づいて前記モータ電流が所定の第1電流閾値以下であると判断した場合には、前記アシストマップ手段の変換ゲインを減少させるマップ補正手段と、を備えることを特徴とする電気式動力舵取装置。
  4. 請求項3に記載の電気式動力舵取装置において、
    前記マップ補正手段により前記アシストマップ手段の変換ゲインを減少させた後、前記モータ電流検出手段により検出される前記モータ電流に基づいて前記モータ電流が所定の第2電流閾値を超えると判断した場合には、減少前の前記変換ゲインに戻るまで前記減少させた前記アシストマップ手段の変換ゲインを所定周期ごとに徐々に増加させる変換ゲイン復帰手段を備えることを特徴とする電気式動力舵取装置。
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