JP3834904B2 - 車両制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両制御装置にかかり、詳しくは有段変速機及び無段変速機を含む自動変速装置の変速比の制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両が、カーブ走行中かどうかを横加速度を測定することで判断し、ある一定値を越えた場合には、カーブ走行中と判断して変速を禁止して、変速による駆動力を急激に変化させないように制御するものがある(特公平3-69023号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記従来技術においては、車両の横加速度を測定し、横加速度が一定の閾値以上の場合に変速を制限するといった制御が行なわれるが、変速を完了させるためには一定の時間が必要であり、その間に横加速度の状態が変化する場合がある。例えば、変速が完了するまでの間に、横加速度が増加して、実際に変速が完了したときには、車両が不安定な状態に陥るといった懸念がある。従来では、このような状態に陥るのを防ぐため、横加速度の増加を見込んで、上記閾値を低めに設定し、変速の制限が行なわれる領域を広く設定していた。そのため、変速の制限がない範囲が狭くなり適切な変速が行なわれ難い場合があった。
【0004】
このような観点から、本発明は、道路情報に基づいて、変速の完了する位置を推定し、その位置での横加速度を推定して、変速のタイミングを図ることで、道路形状に則した、より精密な変速制御が可能な制御装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、以下の本発明により達成される。
【0006】
(1)道路形状に基づき、自動変速装置の変速比を制御する車両制御装置であって、
自車の位置を検出する自車位置検出手段と、
現在車速を検出する車速検出手段と、
道路形状に応じた最適変速比を決定する最適変速比決定手段と、
現在の変速比から最適変速比に変速した場合に発生する減速度と現在の車速に基づき、変速完了後の車速を推定する車速推定手段と、
推定された変速後の車速で走行した場合に、前記道路形状に応じて車両に発生する横加速度を推定する横加速度推定手段と、
推定された横加速度と推定された車速に基づいて、前記最適変速比への変更の可否を判断する判断手段と、
最適変速比への変更が可である場合には、前記最適変速比へ変速比を変更する変速比変更手段と、を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【0007】
(2) 道路情報を記憶した道路情報記憶手段と、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
現在車速を検出する車速検出手段と、
自動的に変速比を選択する自動変速装置と、
道路情報に基づき、自車位置から自車の進行方向にある道路形状を判断する道路形状判断手段と、
道路形状に応じた最適変速比を決定する最適変速比決定手段と、
現在の変速比から最適変速比に変速した場合に発生する減速度と現在の車速に基づき、変速完了後の車速を推定する車速推定手段と、
推定された変速後の車速で走行した場合に、前記道路形状に応じて車両に発生する横加速度を推定する横加速度推定手段と、
推定された横加速度と推定された車速に基づいて、前記最適変速比への変更の可否を判断する判断手段と、
最適変速比への変更が否である場合には、前記最適変速比への変更を規制する規制手段とを備えたことを特徴とする車両制御装置。
【0008】
(3) 前記規制手段は、最適変速比への変更が否である場合には、所定の経過時間が経過した後に最適変速比に変更することを特徴とする上記(2)に記載の車両制御装置。
【0009】
(4) 前記自動変速装置は、無段変速機である上記(1)または(2)に記載の車両制御装置。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施形態の1つについて、添付図面に基づいて詳説する。図1は、本発明の車両制御装置の構成を示すブロック図である。
本発明の車両制御装置1は、ナビゲーションシステム装置10と、自動変速装置と、ATモード選択部20と、車両状態検出部30とを備えている。ナビゲーションシステム装置10は、ナビゲーション処理部11と、道路情報記憶手段であるデータ記憶部12と、現在位置検出部13と、通信部15と、入力部16と、表示部17と、音声出力部19とを有している。
【0011】
ナビゲーション処理部11は、入力された情報に基づいて、ナビゲーション処理等の各種演算処理を行い、その結果を出力する中央制御装置(以下「CPU」という)111を備えている。このCPU111は、データバス等のバスラインを介してROM112とRAM113が接続されている。ROM112は、目的地までの経路の検索、経路中の走行案内、特定区間の決定等を行うための各種プログラムが格納されているリード・オンリー・メモリである。RAM113は、CPU111が各種演算処理を行う場合のワーキング・メモリとしてのランダム・アクセス・メモリである。
【0012】
データ記憶部12は、地図データファイル、交差点データファイル、ノードデータファイル、道路データファイル、写真データファイル、および各地域のホテル、ガソリンスタンド、観光地案内などの各種地域毎との情報が格納された他のデータファイルを備えている。これら各ファイルには、経路探索を行うとともに、探索した経路に沿って案内図を表示したり、交差点や経路中における特徴的な写真やコマ図を出したり、交差点までの残り距離、次の交差点での進行方向を表示したり、その他の案内情報を表示部17や音声出力部19から出力するための各種データが格納されている。
【0013】
これらのファイルに記憶されている情報の内、通常のナビゲーションにおける経路探索に使用されるのが交差点データ、ノードデータ、道路データのそれぞれが格納された各ファイルである。これらのファイルには、道路の幅員、勾配、路面の状態、コーナの曲率半径、交差点、T字路、道路の車線数、車線数の減少する地点、コーナの入口、踏切、高速道路出口ランプウェイ、高速道路の料金所、道路の幅員の狭くなる地点、降坂路、登坂路などの道路情報が格納されている。
【0014】
各ファイルは、例えば、DVD、MO、CD−ROM、光ディスク、磁気テープ、ICカード、光カード等の各種記憶装置が使用される。なお、各ファイルは記憶容量が大きい、例えばCD−ROMの使用が好ましいが、その他のデータファイルのような個別のデータ、地域毎のデータは、ICカードを使用するようにしてもよい。
【0015】
また現在位置検出部13は、GPSレシーバ131、地磁気センサ132、距離センサ133、ステアリングセンサ134、ビーコンセンサ135、ジャイロセンサ136とを備えている。GPSレシーバ131は、人口衛星から発せられる電波を受信して、自車の位置を測定する装置である。地磁気センサ132は、地磁気を検出して自車の向いている方位を求める。距離センサ133は、例えば車輪の回転数を検出して計数するものや、加速度を検出して2回積分するものや、その他計測装置等が使用される。ステアリングセンサ134は、例えば、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転抵抗ボリューム等が使用されるが、車輪部に取り付ける角度センサを用いてもよい。ビーコンセンサ135は、路上に配置したビーコンからの位置情報を受信する。ジャイロセンサ136は、車両の回転角速度を検出しその角速度を積分して車両の方位を求めるガスレートジャイロや振動ジャイロ等で構成される。
【0016】
現在位置検出部13のGPSレシーバ131とビーコンセンサ135は、それぞれ単独で位置測定が可能であるが、その他の場合には、距離センサ133で検出される距離と、地磁気センサ132、ジャイロセンサ136から検出される方位との組み合わせ、または、距離センサ133で検出される距離と、ステアリングセンサ134で検出される舵角との組み合わせによって自車の絶対位置(自車位置)を検出するようになっている。
【0017】
通信部15は、FM送信装置や電話回線等との間で各種データの送受信を行うようになっており、例えば情報センタ等から受信した渋滞などの道路情報や交通事故情報等の各種データを受信するようになっている。
【0018】
入力部16は、走行開始時の現在位置の修正や、目的地を入力するように構成されている。入力部16の構成例としては、表示部17を構成するディスプレイの画面上に配置され、その画面に表示されたキーやメニューにタッチすることにより情報を入力するタッチパネル、その他、キーボード、マウス、バーコードリーダ、ライトぺン、遠隔操作用のリモートコントロール装置などが挙げられる。
【0019】
表示部17には、操作案内、操作メニュー、操作キーの表示や、ユーザの要求に応じて設定された案内地点までの経路の表示や、走行する経路に沿った案内図等の各種表示が行われる。表示部17としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フロントガラスにホログラムを投影するホログラム装置等を用いることができる。
【0020】
音声入力部18はマイクロホン等によって構成され、音声によって必要な情報が入力される。音声出力部19は、音声合成装置と、スピーカとを備え、音声合成装置で合成される音声の案内情報を出力する。なお、音声合成装置で合成された音声の他に、各種案内情報をテープに録音しておき、これをスピーカから出力するようにしてもよく、また音声合成装置の合成音とテープの音声とを組み合わせてもよい。
【0021】
以上のように構成されたナビゲーションシステム装置は、運転者に車両の現在地周りの道路情報を知らせて、車両の目的地までの走行経路を誘導する。つまり、入力部16から目的地を入力すると、ナビゲーション処理部11は、現在位置検出部13で検出された自車位置に基づき、データ記憶部12から読み出した道路情報から目的地までの走行経路を選択し、該経路を表示部17に出力するとともに、該表示部17に表示された走行経路と、音声出力部19から出力される音声によって、運転者を目的地まで誘導する。また、目的地が入力されていない場合には、自車位置の周辺の道路情報を表示部17に出力する。
【0022】
以上のようなナビゲーションシステム装置10において、自車位置検出手段は、現在位置検出部13によって構成され、道路情報記憶手段は、データ記憶部12によって構成される。自車位置の進行方向にある特定点は、現在位置検出部13で検出された自車位置と自車の走行方向および道路情報記憶手段に記憶されている道路情報に基づき、ナビゲーション処理部11が決定する。
【0023】
道路形状判断手段は、データ記憶部12とナビゲーション処理部11とによって構成され、図2に示されているように、各ノードN1〜Nn毎のノード半径r1〜rnを計算する。ここで、ノードとは、デジタル地図において、道路の位置形状を示す要素で、デジタル化された道路情報は、道路上の位置を示す点(ノード)とノード間を結ぶ線(リンク)により構成される。
【0024】
また、最適変速比決定手段は、データ記憶部12と現在位置検出部13とナビゲーション処理部11とによって構成され、各ノード半径r1〜rnと、予め設定されている旋回横Gより、図3に示されているような、予め定められたデータテーブルに従って、各ノード位置を通過する際に推奨される車速(ノードスピード)V1〜Vn(推奨走行速度)を各ノード毎に計算する。そして、推奨走行速度に基づき、予め設定されている減速加速度Gと区間距離LNとから、基準車速を算出し、現在車速と基準車速を比較して最適変速段を決定する。上記減速加速度には、図3に示されているように、これ以上減速加速度が大きい場合、変速段が4速以下の方が望ましいとされる4速用の減速加速度(m3)と、変速段が3速以下の方が望ましいとされる3速用の減速加速度(m2)と、変速段が2速以下の方が望ましいとされる2速用の減速加速度(m1)とが設定されている。基準車速は、区間距離LNを各減速加速度で減速すると仮定した場合、現在の車速はいかなる値であるかを示すものである。
【0025】
次に、予定走行経路とは、既に車両の走行経路が設定されている場合には、その設定されている経路であり、設定されていない場合には、例えば直進した場合に通過することが予想される経路とすることができる。このような、予定走行経路を探索する走行経路検出手段を設けることによって、予定走行経路がより明確となり、制御性が向上する。
さらに、ナビゲーション処理部11は、後述する推奨変速段と、不許可時間を求め、それぞれの値をA/T ECU40へ供給する。
【0026】
ATモード選択部20は、シフトポジションと変速モードを選択する操作部である。車両状態検出部30は、車速検出手段である車速センサ31、運転操作検出手段としてブレーキセンサ32、アクセルセンサ33、ウィンカーセンサ34とを備え、さらにスロットル開度センサ35を有してしている。車速センサ31は車速Vを、ブレーキセンサ32はブレーキが踏まれたか否か(ON/OFF)を、アクセルセンサ33はアクセル開度αを、ウインカーセンサ34はウインカースイッチのON/OFFを、スロットル開度センサ35はスロットル開度θをそれぞれ検出する。
【0027】
そして、検出された運転操作は、ブレーキのON/OFF信号、アクセル開度信号、ウインカのON/OFF信号として、それぞれナビゲーション処理部11に供給される。また、車速センサ31で検出された車速Vは、ナビゲーション処理部11と後述する電気制御回路部40にそれぞれ供給され、スロットル開度センサ35で検出されたスロットル開度θは、電気制御回路部40に供給される。
【0028】
運転操作は、ブレーキのON信号によって、運転者の減速操作を検出することができる。また、アクセル開度αの変化によって、運転者の減速操作を検出することができる。つまり、アクセル開度が零に近い場合や、アクセル開度が所定の変化率以上で減少した場合など、運転者の減速操作として検出することができる。さらに、ウインカのON信号によって、運転者の減速の意志を予測し、減速操作して検出することもできる。
【0029】
自動変速装置は、プラネタリギアを主体としたギアトレーン及びギアトレーンの各構成要素を係合、解放して変速段を形成する油圧回路からなる機構部(図中、A/Tという)41と、この機構部41を制御する電気制御回路部(以下、A/T ECUという)40とを備えている。
ナビゲーションシステム装置10とA/T ECU40とは、相互に通信線で接続され適宜通信が行われる。
【0030】
A/T ECU40は、車速センサ31及びスロットル開度センサ35が接続されており、車速センサ31からは車速信号が、スロットル開度センサ35からはスロットル開度信号が入力される。さらに、機構部41に取り付けられた図示しないシフトポジションセンサからはATモード選択部20で選択されたシフトポジションに対応したシフトポジション信号が入力される。
【0031】
一方、A/T ECU40から機構部41の油圧回路内のアクチュエータ(油圧ソレノイド)に対して駆動信号が出力され、この駆動信号に基づき上記アクチュエータが作動して変速段の形成等を行う。A/T ECU40は、また、EEPROM42に記憶された制御プログラムにより制御されており、例えば、変速段の選択は、スロットル開度センサ35より検出されるスロットル開度と、車速センサ31からの車速とに基づき、メモリテーブル(変速マップ)に基づき行われるように構成されている。この変速マップが自動変速装置固有の変速段を決定する。
【0032】
変速マップは、ノーマルモード、パワーモードの各モードに応じて用意されており、ナビゲーション処理部11から供給される変速モード変更指令信号に基づいて自動的に変更される。また、変速モードは、運転者の意志によりATモード選択部20を介して変更することもできる。
【0033】
ここで、ノーマルモードは、燃費と動力性能のバランスのとれた経済走行パターンで、通常走行に用いるものである。パワーモードとは、動力性能を重視したパターンで、山間地等での運転に使用するものであり、変速段マップでは、低速側の変速段の領域が大きく取られている。
【0034】
本実施態様では、この固有の変速マップを変化させることなく、変速段の高速側(上限)を制限することにより、結果的に変速段が低速側にシフトされたような制御を実行している。したがって、固有の変速マップとして、どのような変速マップを用いることもできる。
【0035】
ATモード選択部20が備えるシフトレバーは、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、ドライブレンジ、サードレンジ、セカンドレンジ、ローレンジ、の7つのシフトポジションが選択可能な7ポジションタイプで、機構部41に取り付けられた図示しないシフトポジションセンサと機械的に接続されている。
【0036】
ドライブレンジのシフトポジションでは、1〜5速の間で変速段が選択され、サードレンジでは1〜3速の間で変速段が選択され、セカンドレンジでは、1〜2速の間で変速段が選択され、ロウレンジでは、1速の変速段のみが設定される。
本実施態様では、シフトレバーがドライブレンジのシフトポジションに保持されている場合にのみ、ナビゲーションシステム装置10による変速段の制御が実行可能な構成となっている。例えば、A/T ECU40によって、4速が決定されていてもナビゲーション処理部11により最適変速段が3速とされているときは、駆動信号は1速から3速までの範囲内でしか出力されない。そして、変速比を設定する機構部41のアクチュエータに対して、その範囲内で駆動信号が出力される。
【0037】
エンジンコントロールユニット(図中、E/G ECUという)50は、スロットル開度の信号と、エンジン(図中、E/Gという)51からのエンジン回転数その他(冷却水温、センサ信号等)とに基づき、燃料噴射指令等を変化させて、エンジン51を制御する。
【0038】
以下、ナビゲーション処理部11と、A/T ECU40による変速段の選択制御について図4〜図7に示されているフローチャートを参照して詳説する。ここで図4は、ナビゲーション処理部11で実行される処理の一部としての変速制御ルーチンを示している。図5は、変速制御ルーチンを構成する推奨変速段判断ルーチンを示しており、図6は、推奨変速段判断ルーチンを構成する変速実施可能性判定ルーチンを示している。また、図7は、A/T ECU40で実行される処理の一部としての実行タイミング判断ルーチンを示している。
【0039】
図4に示されている変速制御ルーチンについて説明する。
まず、道路形状を判断する(ステップS10)。つまり、現在位置検出部13で検出された現在地に基づき、データ記憶部12から自車の進行方向にある道路データを取得し、前方の道路上のノード点毎のノード半径rnを算出する。このステップS10により、道路形状判断手段としての機能が発揮される。
【0040】
算出されたノード半径rnに基づいて、推奨変速段を判断する(ステップS40)。カーブまでの距離、推奨車速までの減速度、数秒後に車両に加わることが予測される横加速度と車速等を考慮した変速段(推奨変速段)を決定する。
推奨変速段、不許可時間等をA/T ECU40へ出力する(ステップS70)。
【0041】
次に、変速制御ルーチンにおける推奨変速段判断ルーチン(ステップS40)の内容について説明する。
最適変速段を判断する(ステップS401)。この最適変速段は、カーブを円滑に通過するための減速をする場合に、いかなる変速段が最適かという観点で設定される。ノード点Nn毎のノード半径rnに応じた推奨車速Vnを、予め設定されたマップにより求める。各ノードにおける推奨走行速度を求め、また現在地から各ノード点Nnまでの区間距離LNnを求める。
【0042】
この推奨走行速度Vnに基づき、予め設定されている減速加速度Gと区間距離LNnとから、基準車速(この基準車速は、区間距離LNを各減速加速度で減速すると仮定した場合、現在の車速はいかなる値であるかを示すものである)VBnを算出する。ここで、減速加速度Gには、これ以上、減速加速度が大きい場合、変速段が4速以下の方が望ましいとされる4速用の減速加速度と、変速段が3速以下の方が望ましいとされる3速用の減速加速度と、変速段が2速以下の方が望ましいとされる2速用の減速加速度がある。このような減速加速度Gと距離LNとの関係を示したのが、図3の減速加速度曲線m1、m2、m3である。
【0043】
ノード点N1に対する基準車速は、現在位置からの垂線と減速加速度曲線m1、m2、m3が交叉した点で現される。つまり、現在車速V0は、基準車速VB11より小さく、基準車速VB12より大きいこととなる。減速加速度曲線m1は、2速用の減速加速度を現し、同じくm2は3速用の減速加速度を現している。従って、図3に現されている現在位置では、ノードN1を通過するためには、3速が最適変速段となり、また、ノードN2を通過するためには2速が最適変速段とされる。このように、各ノードNn毎に決められる最適変速段の中で、最も低い変速段が選択される。このステップS401によって、最適変速比決定手段の機能が発揮される。
【0044】
車両状態予測による変速実施可能性を判定する(ステップS403)。これは、横加速度が大きい状態でシフトダウンした場合に、車両が不安定な状態になるのを防ぐため、シフトダウン後の減速度と前方のコーナーの曲率半径Rから、シフトダウン後における車速、横加速度を予測して、実際にシフトダウンしても車両に影響がでないかを判断する。そして、所定時間経過後の横加速度及び車速を推定して、変速を実施するかどうか判断する。
【0045】
次に、推奨変速段を決定する(ステップS405)。後述するステップS403のサブルーチンのステップS311において判定された不許可時間を踏まえた最適変速段、即ち、不許可時間が経過した後に変更されることが予定される最適変速段を推奨変速段として決定する。
決定された推奨変速段及び不許可時間を、A/T ECU40に送信する(ステップS407)。
【0046】
次に、図6のフローチャートに基づき、上記説明した推奨変速段判断ルーチンにおける変速段実施可能性判定ルーチン(ステップS403)の内容について説明する。このルーチンは、シフトダウンした場合の所定時間経過後の横加速度を予測することにより、車両の挙動に影響があるかどうかを判断するために行なわれる。この変速段実施可能性判定ルーチンによって、横加速度推定手段、減速度推定手段、車速推定手段、判断手段のそれぞれの機能が発揮される。
ここで、本実施形態において、所定時間とは、通常、ナビゲーション処理部11において、変速の開始を判断してから、変速が完了するまでの間の時間を意味し、具体的には、ナビゲーション処理部11とA/T ECU40における処理時間と、A/T ECU40がA/T41のアクチュエータへ駆動信号を出力してから、アクチュエータの作動によってA/T41における変速段の変更が完全に終了するまでの時間を合わせた時間を意味する。また、この様に定義される所定時間は、さらに幅を持たせて、例えば、上記定義された所定時間を挟んで、該所定時間より若干長い時間、と短い時間の2つを設定し、それぞれの時間で横加速度や車速を推定することもできる。このようにすることによって、より確実な道路形状に沿った制御が可能となる。また、処理時間の開始は、例えば、運転者の減速操作が検出された時(イベントがあった時(後述するステップS707))からとすることができる。
【0047】
まず、現在の車速V0、A/Tの実変速段を取得する(ステップS301)。ステップS401で決定された最適変速段とステップS301で入力された実変速段とから、飛び変速するかどうかを判断する(ステップS303)。例えば最適変速段が3速で、実変速段が5速の場合は、飛び変速となるので、最適変速段は4速に変更する。飛び変速がない場合は、最適変速段の変更は行われない。
【0048】
シフトアップとなるような場合も同様である。例えば最適変速段が4速で、実変速段が2速の場合、シフトアップ側の飛び変速を禁止するため最適変速段は3速となる。
【0049】
表1に示されているデータテーブルにより、実変速段から最適変速段へ変速した場合の減速度を求める(ステップS305)。
【0050】
【表1】
【0051】
入力された現在の車速V0と、ステップS305で求めた減速度から、所定時間であるt秒後、2t秒後の車速Vnを推定する。また、図2に示されているように、車両2の現在位置P0から、t秒後、2t秒後に位置する車両位置P1、P2までの走行距離L1、L2を推定する(ステップS307)。
【0052】
ステップS305で求められた、予想走行距離L1、L2と、各ノード間距離lnと、各ノード間距離lnからt秒後、2t秒後のコーナー曲率半径Rnを推定する。また、この推定したコーナー曲率半径RnとステップS305で推定した車速Vnから、現在からt秒後、2t秒後の横加速度Gnを推定する(ステップS309)。
【0053】
ステップ309で推定された車速Vnと横加速度Gnにより、各横加速度Gnと図8に示されている変速許可領域マップから変速の実施が許可されるかを判断する(ステップS311)。図8の変速許可領域マップは、求められた推定横加速度と推定車速の場合に、シフトダウンが可能か否かを表示したもので、3速から2速へシフトダウンする場合の許可領域が最も狭く、4速から3速へのシフトダウン、5速から4速へのシフトダウンの順に、許可領域が広くなっている。これは、より低い変速段へのシフトダウンが減速度が大きくなる傾向があるからである。
【0054】
この時、現在の横加速度が基準値よりも十分低い場合であっても、所定時間後の横加速度が基準値よりも増加すると予測される場合は、変速は許可されない。逆に、現在の横加速度が基準値よりも高い場合であっても、所定時間後の横加速度が基準値よりも低くなると予測される場合は、変速は許可される。変速が許可される場合は、不許可時間を0にする。変速が許可されない場合は、所定の式により不許可時間を算出する。不許可時間は、変速許可車速から現在車速を引いた値を、表2に示されているマップで選択された減速度で除することで求められる。
【0055】
【表2】
【0056】
表2のマップでは、所定の速度範囲内における減速度βが各変速段毎に予め設定されている。この不許可時間は、例えば、今から2秒後に推奨変速段に変更することを意味し、2秒後までは変速させないことを示す。このステップS311により、規制手段の機能が発揮される。
【0057】
次に、A/T ECU40の制御動作について、図7のフローチャートに基づいて説明する。タイマの時間Tが、タイマの終了時間Tend(ナビゲーション処理部11からの次のデータが入力されるまでの時間)を越えたかを判断する(ステップS700)。越えた場合は、新規のデータを入力する(ステップS701)。越えていない場合は、ステップS703以下の処理を繰り返す。
【0058】
ナビゲーション処理部11からの上限指令値である推奨変速段(SHIFT N)及び不許可時間(Ts)を取得する(ステップS701)。タイマを再起動させるため、タイマのフラグを0とする(ステップS702)。
【0059】
車両情報(アクセル開度、ブレーキのオン・オフ、車速等)をナビゲーション処理部11や車両状態検出部30から取得する(ステップS703)。EEPROM42の通常の変速マップに基づき、アクセル開度と車速から変速段を判断し、判断された変速段をSHIFT Oとする(ステップS705)。
【0060】
アクセルもしくはブレーキについて、減速のための操作が新たに行なわれたか(イベントがあったか)を判断する(ステップS707)。これは、アクセル開度の急激な減少により開度が0となった場合や、ブレーキオン操作の検出などにより判断することができる。
【0061】
イベントがなかった場合には、運転者の減速の意思がなかったものと判断して、ステップS709に進み、通常の変速を実行させるため、アクチュエータに指令する変速段をSHIFT Oとする(ステップS709)。
【0062】
イベントがあった場合には、ステップS711に進みナビゲーション処理部11で判断された上限指令値である変速段(SHIFT N)とA/T ECU40で判断された変速段(SHIFT O)を比較する(ステップS711)。
【0063】
比較の結果、SHIFT Nの方が大きい場合、ステップS709に進み、通常の変速を実行させる。小さい場合は、ステップS713に進み、タイマの経過時間Tとナビゲーション処理部11から入力された不許可時間Tsとを比較する(ステップS713)。
【0064】
経過時間Tの方が大きい場合、不許可時間が経過したことを意味し、ステップS715に進み、ナビゲーション処理部11からの変速段上限指令を基にした制御を行うため、アクチュエータに指令する変速段をSHIFT Nとする(ステップS715)。経過時間Tの方が小さい場合、不許可時間が未だ経過しておらず、変速による駆動力の急激な変化を防ぐため、現在の実変速段を維持するためアクチュエータに指令する変速段を、前回指令したSHIFTとする(ステップS717)。
【0065】
そして、ステップS709、S715、S717を実行した後、変速用アクチュエータを駆動すべくA/T41の機構部に対して指令信号を出力する(ステップS719)
【0066】
以上説明したような一連の制御動作によって、ナビゲーションシステム装置10に搭載されている道路情報に基づき、所定時間走行した場合の横加速度や車速を推定し、その推定結果から、変速段の変更の可否を判断することで、より道路形状に沿った変速を行うことが可能となる。
【0067】
上記説明した道路形状の判断(ステップS10)、推奨変速段判断ルーチン(ステップS40)、変速実施可能性判定ルーチン(ステップS403)は、ナビゲーション処理部11で行う場合に限らず、A/T ECU40において行う構成としてもよく、また、実行タイミング判断ルーチンをナビゲーション処理部11で行う構成としてもよい。
【0068】
以上説明した実施形態では、アクセル開度に基づいて運転者の減速の意志を判断(ステップS707)していたが、スロットル開度センサ35から入力されるスロットル開度θ(即ち、エンジントルク)の変化率や値に基づいて運転操作を検出し、減速の意志を判断することもできる。
【0069】
また、A/T ECU40における変速マップによる変速段の決定は、アクセル開度と車速による場合の他、スロットル開度と車速により、或いはエンジンのトルクの大きさと車速によって行ってもよい。
【0070】
自動変速装置には、無段変速機を有するものを用いてもよく、この場合には、規制手段や変速比設定手段は、変速段ではなく、変速比の変更を規制し、設定する。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の車両制御装置によれば、道路情報に基づき、変速段の変更が行なわれる位置での横加速度や車速を推定し、その推定結果から、変速の制御を行うので、より道路形状に沿った変速を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】道路上のノードの配置を示す模式図である。
【図3】最適変速段を設定するマップである。
【図4】ナビゲーション処理部の制御動作を示すフローチャートである。
【図5】ナビゲーション処理部の制御動作を示すフローチャートである。
【図6】ナビゲーション処理部の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】A/T ECUの制御動作を示すフローチャートである。
【図8】変速の可否を判断するためのデータテーブルを示すマップである。
【符号の説明】
1 車両制御装置
2 車両
10 ナビゲーションシステム装置
11 ナビゲーション処理部
12 データ記憶部
13 現在位置検出部
20 ATモード選択部
30 車両状態検出部
40 A/T ECU
Claims (4)
- 道路形状に基づき、自動変速装置の変速比を制御する車両制御装置であって、
自車の位置を検出する自車位置検出手段と、
現在車速を検出する車速検出手段と、
道路形状に応じた最適変速比を決定する最適変速比決定手段と、
現在の変速比から最適変速比に変速した場合に発生する減速度と現在の車速に基づき、変速完了後の車速を推定する車速推定手段と、
推定された変速後の車速で走行した場合に、前記道路形状に応じて車両に発生する横加速度を推定する横加速度推定手段と、
推定された横加速度と推定された車速に基づいて、前記最適変速比への変更の可否を判断する判断手段と、
最適変速比への変更が可である場合には、前記最適変速比へ変速比を変更する変速比変更手段と、を備えたことを特徴とする車両制御装置。 - 道路情報を記憶した道路情報記憶手段と、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
現在車速を検出する車速検出手段と、
自動的に変速比を選択する自動変速装置と、
道路情報に基づき、自車位置から自車の進行方向にある道路形状を判断する道路形状判断手段と、
道路形状に応じた最適変速比を決定する最適変速比決定手段と、
現在の変速比から最適変速比に変速した場合に発生する減速度と現在の車速に基づき、変速完了後の車速を推定する車速推定手段と、
推定された変速後の車速で走行した場合に、前記道路形状に応じて車両に発生する横加速度を推定する横加速度推定手段と、
推定された横加速度と推定された車速に基づいて、前記最適変速比への変更の可否を判断する判断手段と、
最適変速比への変更が否である場合には、前記最適変速比への変更を規制する規制手段とを備えたことを特徴とする車両制御装置。 - 前記規制手段は、最適変速比への変更が否である場合には、所定の経過時間が経過した後に最適変速比に変更することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
- 前記自動変速装置は、無段変速機である請求項1または2に記載の車両制御装置。
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