JP3918213B2 - 車両制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両制御装置にかかり、詳しくは有段変速機及び無段変速機を含む自動変速装置の変速比の制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、運転者に車両の現在地周りの道路情報を知らせて、車両の目的地までの走行経路を誘導するナビゲーションシステム装置が車両に搭載され、この装置に備えられた車両の現在位置の周囲に関する道路情報に応じて、自動変速機の制御パターンを変更する変更手段を備えた自動変速機の制御装置が提案されている(特公平6-58141号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの従来の制御装置においては、必ずしも運転者の走行感覚に合致した変速段の選択が行なわれない場合がある。例えば、カーブを走行する場合の運転操作においては、カーブに進入する際に、好ましい車速まで減速が行なわれ、カーブを脱出する時には加速がなされる。ここで、従来の変速段制御では、上記のようなカーブへの進入と脱出に応じた一連の制御が行なわれているわけではなく、加速しつつカーブを脱出した時点でアクセルを戻すと、その時点でシフトアップが行なわれてしまう。ところが、カーブが連続している道路を走行する場合には、カーブを脱出すると、直ちに次のカーブへの進入が開始されるため、カーブを抜け出た時点でシフトアップが行なわれてしまう変速段制御では、カーブに進入するために減速を意図する運転者の操作感覚と異なる変速段が設定されてしまうこととなる。
【0004】
このような観点から、本発明は、道路形状の連続した変化に対応して、運転者の意図に沿った変速比制御をすることのできる制御装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、以下の本発明により達成される。
【0006】
(1)走行環境に基づき、自動変速装置の変速比を制御する車両制御装置であって、自車の位置を検出する自車位置検出手段と、自車の前方の走行環境に応じて自動変速装置が選択可能な変速比の下限を決定する前方規制手段と、自車の後方の走行環境と自車の現在の車速及びスロットル開度のうち、少なくとも一方に応じて自動変速装置が選択可能な変速比の下限を決定する後方規制手段と、前記前方規制手段及び後方規制手段によって決定された変速比の下限のうち、大きいほうを変速比の下限として設定する変速比決定手段とを備え、前記後方規制手段は、自車の現在の車速が所定の解除車速を超えている場合、又は、スロットル開度と車速とに基づいて前記自動変速装置で選択した変速比が前記設定した変速比の下限以上である場合には、前記変速比の下限を決定する規制制御を解除する、ことを特徴とする車両制御装置。
(2)道路情報を記憶した道路情報記憶手段と、自車位置を検出する自車位置検出手段と、現在車速を検出する車速検出手段と、変速マップに基づき自動的に変速比を選択する自動変速装置と、自車位置から自車の進行方向にある所定区間内における複数の特定点における推奨走行速度を算出する推奨走行速度算出手段と、自車位置から該複数の特定点までの距離を算出し、前記推奨走行速度と特定点までの距離に応じ、変速比の規制が必要かどうかを判定し、必要と判定された場合、自動変速装置が選択可能な変速比の下限を決定し特定点毎に設定する規制範囲設定手段と、前記特定点毎に設定された変速比の下限のうち、最も大きいものを変速比の下限として決定する第1変速比規制手段と、自車位置から後方に位置する所定区間内において、前記規制範囲設定手段により変速比の規制が設定された特定点の中から自車位置に最も近い特定点を検出し、該特定点通過時の車速と現在車速に応じて加速に必要な変速比の下限を決定する第2変速比規制手段と、前記第1及び第2変速比規制手段で決定された変速比の下限と、現在の車速と変速マップに基づいて決定される変速比とを比較して、最も大きい変速比を自動変速装置の変速比として設定する変速比設定手段とを備えたことを特徴とする車両制御装置。
(3)前記特定点は、道路形状を表現するノードである上記(2)に記載の車両制御装置。
(4)前記自動変速装置は、無段変速機である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の車両制御装置。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施形態の1つについて、添付図面に基づいて詳説する。図1は、本発明の車両制御装置の構成を示すブロック図である。
本発明の車両制御装置1は、ナビゲーションシステム装置10と、自動変速装置と、ATモード選択部20と、車両状態検出部30とを備えている。ナビゲーションシステム装置10は、ナビゲーション処理部11と、道路情報記憶手段であるデータ記憶部12と、現在位置検出部13と、通信部15と、入力部16と、表示部17と、音声出力部19とを有している。
【0012】
ナビゲーション処理部11は、入力された情報に基づいて、ナビゲーション処理等の各種演算処理を行い、その結果を出力する中央制御装置(以下「CPU」という)111を備えている。このCPU111は、データバス等のバスラインを介してROM112とRAM113が接続されている。ROM112は、目的地までの経路の検索、経路中の走行案内、特定区間の決定等を行うための各種プログラムが格納されているリード・オンリー・メモリである。RAM113は、CPU111が各種演算処理を行う場合のワーキング・メモリとしてのランダム・アクセス・メモリである。
【0013】
データ記憶部12は、地図データファイル、交差点データファイル、ノードデータファイル、道路データファイル、写真データファイル、および各地域のホテル、ガソリンスタンド、観光地案内などの各種地域毎との情報が格納された他のデータファイルを備えている。これら各ファイルには、経路探索を行うとともに、探索した経路に沿って案内図を表示したり、交差点や経路中における特徴的な写真やコマ図を出したり、交差点までの残り距離、次の交差点での進行方向を表示したり、その他の案内情報を表示部17や音声出力部19から出力するための各種データが格納されている。
【0014】
これらのファイルに記憶されている情報の内、通常のナビゲーションにおける経路探索に使用されるのが交差点データ、ノードデータ、道路データのそれぞれが格納された各ファイルである。これらのファイルには、道路の幅員、勾配、路面の状態、コーナの曲率半径、交差点、T字路、道路の車線数、車線数の減少する地点、コーナの入口、踏切、高速道路出口ランプウェイ、高速道路の料金所、道路の幅員の狭くなる地点、降坂路、登坂路などの道路情報が格納されている。ここで、走行環境とは、上記交差点データ、ノードデータ、道路データ等の道路情報に基づき特定することができ、また、天候に基づく路面の変化(雨路、雪路等)なども含めた概念である。これらの路面の変化は、ワイパーの使用の有無、路面センサなどによって検出することができる。
【0015】
各ファイルは、例えば、DVD、MO、CD−ROM、光ディスク、磁気テープ、ICカード、光カード等の各種記憶装置が使用される。なお、各ファイルは記憶容量が大きい、例えばCD−ROMの使用が好ましいが、その他のデータファイルのような個別のデータ、地域毎のデータは、ICカードを使用するようにしてもよい。
【0016】
また現在位置検出部13は、GPSレシーバ131、地磁気センサ132、距離センサ133、ステアリングセンサ134、ビーコンセンサ135、ジャイロセンサ136とを備えている。GPSレシーバ131は、人工衛星から発せられる電波を受信して、自車の位置を測定する装置である。地磁気センサ132は、地磁気を検出して自車の向いている方位を求める。距離センサ133は、例えば車輪の回転数を検出して計数するものや、加速度を検出して2回積分するものや、その他計測装置等が使用される。ステアリングセンサ134は、例えば、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転抵抗ボリューム等が使用されるが、車輪部に取り付ける角度センサを用いてもよい。ビーコンセンサ135は、路上に配置したビーコンからの位置情報を受信する。ジャイロセンサ136は、車両の回転角速度を検出しその角速度を積分して車両の方位を求めるガスレートジャイロや振動ジャイロ等で構成される。
【0017】
現在位置検出部13のGPSレシーバ131とビーコンセンサ135は、それぞれ単独で位置測定が可能であるが、その他の場合には、距離センサ133で検出される距離と、地磁気センサ132、ジャイロセンサ136から検出される方位との組み合わせ、または、距離センサ133で検出される距離と、ステアリングセンサ134で検出される舵角との組み合わせによって自車の絶対位置(自車位置)を検出するようになっている。
【0018】
通信部15は、FM送信装置や電話回線等との間で各種データの送受信を行うようになっており、例えば情報センタ等から受信した渋滞などの道路情報や交通事故情報等の各種データを受信するようになっている。
【0019】
入力部16は、走行開始時の現在位置の修正や、目的地を入力するように構成されている。入力部16の構成例としては、表示部17を構成するディスプレイの画面上に配置され、その画面に表示されたキーやメニューにタッチすることにより情報を入力するタッチパネル、その他、キーボード、マウス、バーコードリーダ、ライトぺン、遠隔操作用のリモートコントロール装置などが挙げられる。
【0020】
表示部17には、操作案内、操作メニュー、操作キーの表示や、ユーザの要求に応じて設定された案内地点までの経路の表示や、走行する経路に沿った案内図等の各種表示が行われる。表示部17としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フロントガラスにホログラムを投影するホログラム装置等を用いることができる。
【0021】
音声入力部18はマイクロホン等によって構成され、音声によって必要な情報が入力される。音声出力部19は、音声合成装置と、スピーカとを備え、音声合成装置で合成される音声の案内情報を出力する。なお、音声合成装置で合成された音声の他に、各種案内情報をテープに録音しておき、これをスピーカから出力するようにしてもよく、また音声合成装置の合成音とテープの音声とを組み合わせてもよい。
【0022】
以上のように構成されたナビゲーションシステム装置は、運転者に車両の現在地周りの道路情報を知らせて、車両の目的地までの走行経路を誘導する。つまり、入力部16から目的地を入力すると、ナビゲーション処理部11は、現在位置検出部13で検出された自車位置に基づき、データ記憶部12から読み出した道路情報から目的地までの走行経路を選択し、該経路を表示部17に出力するとともに、該表示部17に表示された走行経路と、音声出力部19から出力される音声によって、運転者を目的地まで誘導する。また、目的地が入力されていない場合には、自車位置の周辺の道路情報を表示部17に出力する。
【0023】
以上のようなナビゲーションシステム装置10において、自車位置検出手段は、現在位置検出部13によって構成され、道路情報記憶手段は、データ記憶部12によって構成される。自車位置の進行方向にある特定点は、現在位置検出部13で検出された自車位置と自車の走行方向および道路情報記憶手段に記憶されている道路情報に基づき、ナビゲーション処理部11が決定する。また、距離算出手段は、現在位置検出部13と、データ記憶部12と、ナビゲーション処理部11とによって構成され、図2及び図3に示されているように、現在位置から各ノードまでの距離L1〜Lnを算出する。
【0024】
ノード半径算出手段は、データ記憶部12とナビゲーション処理部11とによって構成され、図2に示されているように、各ノードN1〜Nn毎のノード半径r1〜rnを計算する。ここで、ノードとは、デジタル地図において、道路の位置形状を示す要素で、デジタル化された道路情報は、道路上の位置を示す点(ノード)とノード間を結ぶ線(リンク)により構成される。本実施形態においては、ノードが特定点である。特定点におけるノード半径の算出方法は、例えば特定点で交叉するリンクの交叉角度から算出することができる。
【0025】
また、推奨走行速度算出手段は、データ記憶部12と現在位置検出部13とナビゲーション処理部11とによって構成され、各ノード半径r1〜rnと、予め設定されている旋回横Gより、図3に示されているような、予め定められたデータテーブルに従って、各ノード位置を通過する際に推奨される車速(ノードスピード)V1〜Vn(推奨走行速度)を各ノード毎に計算する。
【0026】
次に、予定走行経路とは、既に車両の走行経路が設定されている場合には、その設定されている経路であり、設定されていない場合には、例えば直進した場合に通過することが予想される経路とすることができる。このような、予定走行経路を探索する走行経路検出手段を設けることによって、予定走行経路がより明確となり、制御性が向上する。
【0027】
ATモード選択部20は、シフトポジションと変速モードを選択する操作部である。車両状態検出部30は、車速検出手段である車速センサ31、運転操作検出手段としてブレーキセンサ32、アクセルセンサ33、ウィンカーセンサ34とを備え、さらにスロットル開度センサ35を有してしている。車速センサ31は車速Vを、ブレーキセンサ32はブレーキが踏まれたか否か(ON/OFF)を、アクセルセンサ33はアクセル開度αを、ウインカーセンサ34はウインカースイッチのON/OFFを、スロット開度ルセンサ35はスロットル開度θをそれぞれ検出する。
【0028】
そして、検出された運転操作は、ブレーキのON/OFF信号、アクセル開度信号、ウインカのON/OFF信号として、それぞれナビゲーション処理部11に供給される。また、車速センサ31で検出された車速Vは、ナビゲーション処理部11と後述する電気制御回路部40にそれぞれ供給され、スロットル開度センサ35で検出されたスロットル開度θは、電気制御回路部40に供給される。
【0029】
運転操作は、ブレーキのON信号によって、運転者の減速操作を検出することができる。また、アクセル開度αの変化によって、運転者の減速操作を検出することができる。つまり、アクセル開度が零に近い場合や、アクセル開度が所定の変化率以上で減少した場合など、運転者の減速操作として検出することができる。さらに、ウインカのON信号によって、運転者の減速の意志を予測し、減速操作して検出することもできる。
【0030】
自動変速装置は、プラネタリギアを主体としたギアトレーン及びギアトレーンの各構成要素を係合、解放して変速段を形成する油圧回路からなる機構部(図中、A/Tという)41と、この機構部41を制御する電気制御回路部(以下、A/T ECUという)40とを備えている。
ナビゲーションシステム装置10とA/T ECU40とは、相互に通信線で接続され適宜通信が行われる。
【0031】
A/T ECU40は、車速センサ31及びスロットル開度センサ35が接続されており、車速センサ31からは車速信号が、スロットル開度センサ35からはスロットル開度信号が入力される。さらに、機構部41に取り付けられた図示しないシフトポジションセンサからはATモード選択部20で選択されたシフトポジションに対応したシフトポジション信号が入力される。
【0032】
一方、A/T ECU40から機構部41の油圧回路内のアクチュエータ(油圧ソレノイド)に対して駆動信号が出力され、この駆動信号に基づき上記アクチュエータが作動して変速段の形成等を行う。
A/T ECU40は、また、EEPROM42に記憶された制御プログラムにより制御されており、例えば、変速段の選択は、スロットル開度センサ35より検出されるスロットル開度と、車速センサ31からの車速とに基づき、メモリテーブル(変速マップ)に基づき行われるように構成されている。この変速マップが自動変速装置固有の変速段を決定する。
【0033】
変速マップは、ノーマルモード、パワーモードの各モードに応じて用意されており、ナビゲーション処理部11から供給される変速モード変更指令信号に基づいて自動的に変更される。また、変速モードは、運転者の意志によりATモード選択部20を介して変更することもできる。
【0034】
ここで、ノーマルモードは、燃費と動力性能のバランスのとれた経済走行パターンで、通常走行に用いるものである。パワーモードとは、動力性能を重視したパターンで、山間地等での運転に使用するものであり、変速段マップでは、低速側の変速段の領域が大きく取られている。
【0035】
本実施態様では、この固有の変速マップを変化させることなく、変速段の高速側(上限)を制限することにより、結果的に変速段が低速側にシフトされたような制御を実行している。したがって、固有の変速マップとして、どのような変速マップを用いることもできる。
【0036】
ATモード選択部20が備えるシフトレバーは、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、ドライブレンジ、セカンドレンジ、ローレンジ、の6つのシフトポジションが選択可能な6ポジションタイプで、機構部41に取り付けられた図示しないシフトポジションセンサと機械的に接続されている。ドライブレンジのシフトポジションでは、1〜4速の間で変速段が選択され、セカンドレンジでは、1〜2速の間で変速段が選択され、ロウレンジでは、1速の変速段のみが設定される。本実施態様では、シフトレバーがドライブレンジのシフトポジションに保持されている場合にのみ、ナビゲーションシステム装置10による変速段の規制が実行可能な構成となっている。例えば、A/TECU40によって、4速が決定されていてもナビゲーション処理部11により上限が3速とされているときは、駆動信号は1速から3速までの範囲内でしか出力されない。そして、変速比を設定するアクチュエータに対して、その範囲内で駆動信号が出力される。
【0037】
エンジンコントロールユニット(図中、E/G ECUという)50は、スロットル開度の信号と、エンジン(図中、E/Gという)51からのエンジン回転数その他(冷却水温、センサ信号等)とに基づき、燃料噴射指令等を変化させて、エンジン51を制御する。
【0038】
以上のように、第1及び第2変速比規制手段及び変速比決定手段は、ナビゲーション処理部11で構成され、変速比設定手段は、ナビゲーション処理部11とA/T ECU40とによって構成される。また、前方規制手段は、第1変速比規制手段で、後方規制手段は、第2変速比規制手段でそれぞれ構成される。
本実施形態では、変更可能な変速段の範囲として、上限値が制限された規制範囲とされる。
【0039】
以下、ナビゲーション処理部11と、A/T ECU40による変速段の選択制御について図4〜図8に示されているフローチャートを参照して詳説する。ここで図4は、ナビゲーション処理部11で実行される処理の一部としてのカーブ制御ルーチンを示している。図5は、A/T ECU40で実行される処理の一部としての変速段出力ルーチンを示している。
【0040】
図4に示されているように、カーブ制御ルーチンは、前方カーブ制御ルーチン(ステップS10)、後方カーブ制御ルーチン(ステップS30)を備えている。前方カーブ制御ルーチン(ステップS10)は、カーブを円滑に通過するための減速をするために、どの様に変速段の上限を設定するかという観点で設定されている。この前方カーブ制御ルーチン(ステップS10)によって、変速比規制手段としての機能が発揮される。
【0041】
後方カーブ制御ルーチン(ステップS30)は、カーブを円滑に脱出するため前方カーブ制御で規制された変速段の上限をいかに解除するかという観点で設定されている。この後方カーブ制御ルーチン(ステップS30)によって、変速範囲決定手段としての機能が発揮される。カーブ制御ルーチンでは、上記2つの制御ルーチンで決定された変速段の指令値を比較して、最小値を指令値として選択し、A/T ECU40に指令信号を出力する(ステップS50)。ステップS50によって、変速比決定手段としての機能が発揮される。この選択によって、常に前方カーブ制御ルーチン(ステップS10)と後方カーブ制御ルーチン(ステップS30)とで決定された変速段の範囲内の変速段が常に設定されることとなる。このカーブ制御ルーチンによれば、車両よりも前方の道路状況に基づく制御と、車両よりも後方の道路状況に基づく制御が同時に行なわれているので、連続するカーブを通過する際にも、道路状況に合致した変速段制御が行なわれ、運転者の意図に沿った走行感覚が得られる。
【0042】
図5に示されているように、変速段出力ルーチンは、EEPROM42の変速マップに基づき、固有の変速段がいかなる変速段であるかを判断し(ステップS601)、上記ナビゲーション処理部11側からの変速段上限指令値(いかなる範囲内で変速段を選択可能とする指令)を受信し(ステップS603)、自己の選択した変速段と比較してその範囲内で変速段を決定し(ステップS605)、変速用アクチュエータを駆動すべくA/T41の機構部に対して指令信号を出力する(ステップS607)。ステップS605によって、変速比設定手段としての機能が発揮される。
【0043】
図6および図7に示されているフローチャートを参照して前方カーブ制御ルーチン(ステップS10)の内容について説明する。先ず、現在位置検出部13から入力された自車位置、データ記憶部12から入力された道路データ(道路種別、道路形状、各ノードの座標データ等が含まれる)より、車両の現在位置より前方100mに存在するノードを探索する(ステップS101)。
【0044】
各ノードにおけるノード半径rを、そのノードの前後に位置するノードから算出し、そのrから予め設定されているマップに基づき、各ノードにおける推奨車速を求め、また現在地から各ノードまでの区間距離Lを求める。この推奨車速に基づき、予め設定されている減速加速度Gと区間距離Lとから、基準車速を算出する(ステップS103)。
【0045】
ここで、減速加速度Gは、これ以上、減速加速度が大きい場合、変速段が3速以下の方が望ましいとされる3速用の減速加速度(図3中のm2)と、変速段が2速以下の方が望ましいとされる2速用の減速加速度(図3中のm1)がある。これは、変速段が低速側にある方が、減速時の車両の安定性と制動に有利であるためである。これらの変速段は、例えば、図3に示されているマップに基づき設定することができる。このような減速加速度Gと距離Lとの関係を示したのが、図3の減速加速度曲線m1、m2である。また、基準車速とは、区間距離Lを各減速加速度で減速すると仮定した場合、現在の車速はいかなる値であるかを示すものである。
【0046】
ノード点N1に対する基準車速は、現在位置からの垂線と減速加速度曲線m1、m2が交叉した点で現される。つまり、例えば、図3中において、現在車速V0は、基準車速VB11より小さく、基準車速VB12より大きいこととなる。減速加速度曲線m1は、2速用の減速加速度を現し、同じくm2は3速用の減速加速度を現している。従って、図3に現されている現在位置では、ノードN1を通過するためには、3速が最適変速段となり、また、ノードN2を通過するためには2速が最適変速段とされる。
【0047】
以上のように、図3に基づき、車速センサ31から入力された現在車速V0とステップS103で得られた基準車速とを比較して、減速をするための制御が必要か否かを判断する(ステップS105)。例えば、図3に示す例では、現在の変速段が4速の場合には、減速をするための制御が必要であると判断される。
【0048】
そして、ステップS105の判断の結果、制御が必要と判断されたノードは、カーブと認定し、フラグを1とする。制御が必要でないと判断された場合には、フラグを0とする(ステップS107)。
【0049】
ステップS105の判断の結果により、変速段の変更が必要と判断されたノード(フラグを1としたノード)に対する変速段を比較し、その中で最も変速段の上限の低い変速段を最適変速段と決定する(ステップS109)。図3の例では、ノードN1が3速、ノードN2が2速であるから、最も低い2速が最適変速段として決定される。
【0050】
ステップS109で決定された最適変速段にシフトダウンを行った場合、現在車速がオーバーレブを生じない速度かどうか判断する(ステップS111)。この判断は、ナビゲーション処理部11に格納されているデータテーブルに基づき行なわれる。オーバーレブが生ずると判断した場合には、制御しない旨である最適変速段を4速とする。
【0051】
最適変速段が何速かを判断する(ステップS113)。最適変速段が4速の場合は、上限4速を指令値とする(ステップS123)。最適変速段が3速の場合は、ステップS115に進み、前回出力した指令値が3速以下か判断する(ステップS115)。前回指令値が4速の場合は、A/Tの現状の変速段を維持する必要があるかどうかを判断するためステップS116に進む。前回指令値が3速以下の場合は、すでに上限が規制されているため、運転者の操作(アクセル操作、ブレーキのON/OFF)に関係なく、規制された状態を維持するため、上限を3速に決定する。つまり、ステップS135へ進む。
【0052】
A/T ECU40で出力された変速段と比較し、A/T ECU40が4速を出力した場合には、シフトダウンの可能性があるため、運転者の意思を検出するためにステップS117へ進む(ステップS116)。A/T ECU40が3速以下を出力した場合には、その変速段を維持するためステップS135へ進み、上限を3速に決定する。
【0053】
アクセルペダルのオンからオフの変化(以下「アクセルイベント」という)があったかを判断する(ステップS117)。アクセルイベントがある場合には、今変速段が4速の状態であり、運転者の減速の意思があったと判断して、ステップS135へ進み、上限を3速に決定する。アクセルイベントがない場合には、アクセルオフで惰性で走行している場合もあり、さらに運転者の意思を検出するためステップS119に進む。
【0054】
ブレーキペダルのオフからオンの変化(以下「ブレーキイベント」という)があったかを判断する(ステップS119)。ブレーキイベントがある場合には、さらに運転者の減速の意思があったと判断して、ステップS135へ進み、上限を3速に決定する。
イベントがない場合には、すでにブレーキが踏まれたままの状態か、踏まれていないかを判断するためステップS121へ進む。
【0055】
ブレーキがオンされた状態か、そして車速がブレーキを踏みながら4速から3速にシフトダウンしても、車両の挙動に影響が少ない車速よりも小さいかどうかを判断する(ステップS121)。
【0056】
ブレーキがオンされた状態で、かつ挙動に影響が小さい場合は、ステップS135へ進み、上限を3速に決定する。
ブレーキが踏まれていない、もしくは車速が高い場合にはステップS123へ進み、上限を4速に決定する。
【0057】
一方、ステップ113で最適変速段が2速と判断された場合には、前回指令値が上限2速であるか否かを判断する(ステップS125)。前回指令値が2速の場合には、規制された状態を維持するためステップS137に進み、上限を2速と決定する。
前回指令値が上限2速以上の場合は、2速へのシフトダウンする状態と判断してステップS126へ進む。
【0058】
A/T ECU40から出力された変速段と比較し、A/T ECU40が2速以下以外を出力した場合には、シフトダウンの可能性があるため、運転者の意思を検出するためにステップS127へ進む。A/T ECU40が2速以下を出力した場合には、その変速段を維持するためステップS137に進み、上限を2速と決定する。
【0059】
ブレーキイベントがあったかを判断する(ステップS127)。ブレーキイベント有りの場合は、減速の意思が検出されたためステップS137に進み、上限を2速と決定する。
ブレーキイベントがない場合は、すでにブレーキが踏まれたままの状態か、踏まれていないかを判断するためステップS129へ進む。
【0060】
ブレーキがオンされた状態か、そして車速がブレーキを踏みながら3速から2速にシフトダウンしても、車両の挙動に影響が少ない車速よりも小さいかどうかを判断する(ステップS129)。
ブレーキがオンされた状態で、かつ挙動に影響が小さい場合は、ステップS137へ進み、上限を2速に決定する。
ブレーキが踏まれていない、もしくは車速が高い場合には、ステップS133へ進む。
【0061】
ステップS133では前回指令値を判断する。前回指令値が3速の場合、3速の状態を維持するため、ステップS135へ進み上限を3速に決定する。前回指令値が4速の場合、4速の状態を維持するため、ステップS123へ進み、上限を4速に決定する。
【0062】
次に、図8に示されているフローチャートを参照して後方カーブ制御ルーチン(ステップS30)の内容について説明する。
現在位置検出部13からの入力により、自車位置を検出し、自車位置から所定距離後方の道路上に位置するノードの中で、前方カーブ制御ルーチンにおいて、フラグが1とされたノードが存在するか否かを判断する(ステップS301)。
【0063】
フラグが1であるノードが存在する場合には、ステップS303に進み、フラグが1であるノードが存在しない場合には、カーブを走行していないか、または所定距離以上走行し、カーブを脱出したものと判断し、ステップS315に進み変速段の規制制御を行わない旨である、上限指令値を4速へ設定する。
【0064】
カーブと認定されたノード(フラグが1のノード)の内、自車位置に最も近いノード(最後に通過したノード)通過時の実際の変速段が何速であったのかを判断する(ステップS303)。前記実際の変速段は、カーブと認定されたノード通過時の変速段が何速であったかを予め記憶することで知ることができる。4速の場合は、解除する必要がないと判断してステップS315に進み、なにも制御しない旨である上限を4速に決定する。
【0065】
3速の場合は、変速段の上限の3速から4速への規制を解除するか判断するためステップS305へ進む。2速の場合は、変速段の上限の2速から3速への規制に変更するか判断するためステップS309へ進む。
【0066】
現在の車速Vが、解除車速VK1を越えているかいなかを判断する(ステップS305)。ここで、解除車速VK1とは、カーブと認定された最終のノード通過時の車速に、3速から4速へシフトアップされる変更車速(例えば、5km/h)を加えた速度である。
【0067】
越えている場合は、3速で十分に加速した状態であると判断してステップS315に進み変速段の規制制御を行わない旨である、上限指令値を4速に決定する。越えていない場合は、まだ3速で加速する必要があるのか、もしくはすでに4速へ変速されているのかを判断するためステップS307に進む。
【0068】
前回の上限指令値が4速かどうかを判断する(ステップS307)。前回が4速の場合には、すでに4速へ変速されていると判断し、ステップS315へ進み、上限を4速に決定する。
【0069】
前回が4速でない場合は、3速でまだ加速が必要な状態(1つ前のステップがステップS305の場合)もしくは3速へのシフトアップが必要な状態(1つ前のステップがステップS311の場合)と判断して上限を3速に決定する。
【0070】
ステップS303で、2速と判断された場合には、現在の車速Vが解除車速VK2を越えているか否かを判断する(ステップS309)。ここで、解除車速VK2とは、カーブと認定された最終のノード通過時の車速と、3速から4速へシフトアップされる変更車速(例えば、5km/h)と、2速から3速へシフトアップされる変更車速(例えば、5km/h)との総和の速度である。越えている場合には、2速若しくは3速で充分に加速が行なわれた状態であると判断し、ステップS315に進み、変速段の規制制御を行わない旨である、上限指令値を4速に決定する。
越えていない場合には、変速段の上限の2速から3速への規制を解除するか判断するため、ステップS311へ進む。
【0071】
現在の車速Vが、解除車速VK3を越えているかを判断する(ステップS311)。ここで、解除車速VK3とは、カーブと認定された最終のノード通過時の車速と、2速から3速へシフトアップされる変更車速(例えば、5km/h)との和の速度である。
【0072】
越えている場合は、2速で十分加速した状態であるが、すでに4速に変速されていないかを判断するため、ステップS307に進む。越えていない場合は、まだ2速で加速する必要があるのかすでに他の変速段に変更されているかを判断するためステップS313に進む。
【0073】
前回の上限指令値を判断し(ステップS313)、前回の上限指令地が3速以上の場合は、すでに3速以上に変更されている状態であり、変速段を下げないためにステップS307へ進み、前回の指令値が4速かどうかを判断する。
【0074】
4速の場合は、再び4速よりも下に上限が規制されるのを防ぐため、ステップS315へ進み、上限を4速に決定する。3速の場合は、再び3速よりも下に上限が規制されるのを防ぐため上限を3速に決定する(ステップS317)。
ステップS313で、前回指令値が2速と判断された場合には、いまだ2速での加速が必要であると判断して、上限を2速に決定する(ステップS319)。
【0075】
ステップS315、S317、S319の実行の次に、A/T ECU40からの変速段信号により、A/T ECU40で判断された変速段とステップS315、S317、S319で決定された上限指令値とを比較する(ステップS321)。
【0076】
上限指令値の方がA/T ECU40で判断された変速段と同じもしくは大きい場合、加速するための準備が既にA/T ECU40側で整っていると判断して、規制制御を解除する旨である上限を4速と決定し(ステップS323)リターンする。
指令値の方がA/T ECU40で判断された変速段よりも小さい場合は、まだ規制を続ける必要が有ると判断してリターンする。
【0077】
以上のような制御動作の結果、例えば、カーブを通過する際、カーブ進入時には、減速のために変速段の上限を規制し、カーブから脱出する時には、その後方の道路状況に応じて、加速に適した変速段となるように変速段の上限を規制する。カーブが連続する場合には、前方規制手段と、後方規制手段が同時に作用するため、カーブ進入時の変速段の上限規制と、カーブ脱出時の変速段の上限規制が同時に行なわれ、そのなかで、両規制値を比較して規制値の低い変速段を選ぶことで、不要な変速段の変更(シフトアップ)を抑制し、運転者の意図に沿った滑らかな走行が可能となる。
【0078】
上記説明したカーブ制御ルーチンは、ナビゲーション処理部11で行う場合に限らず、A/T ECU40において行う構成としてもよく、これらのうちの一部で上記ルーチンの一部を担当する構成としてもよい。
【0079】
以上説明した実施形態では、アクセル開度αに基づいて運転者の減速の意志を判断していたが、スロットル開度センサ35から入力されるスロットル開度θ(即ち、エンジントルク)の変化率や値に基づいて運転操作を検出し、減速の意志を判断することもできる。このほか、ウインカーセンサに基づき運転操作を検出し、ウインカーオン操作の検出により減速の意志を判断する構成としてもよい。或いは、アクセルの減速操作、ブレーキの踏み込みによる減速操作、ウインカーのON操作による減速の予測の内、少なくとも2つの操作が検出された場合に、減速の意志があるものと判断するように設定してもよい。この場合には、より確実に減速の意志を確認することができ、運転者の意図により一層沿った制御が可能となる。
【0080】
また、A/T ECU40おける変速段の決定は、アクセル開度と車速により、または、スロットル開度と車速により、或いはエンジンのトルクの大きさと車速によって行ってもよい。
自動変速装置には、無段変速機を有するものを用いてもよく、この場合には、変速比規制手段は、変速段ではなく、変速比の範囲を規制し、変速比が決定される。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の車両制御装置によれば、道路形状の連続した変化に対応して、運転者の意図に沿った変速比制御をすることができる。つまり、前方の走行環境による変速比の規制と、後方の走行環境による変速比の規制を同時に判断し、車両の前後の走行環境を全体として考慮した制御を行うので、例えばカーブの連続する道路など、走行環境が連続して変化する場合でも滑らかな変速比の変更が行なわれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】道路上のノードの配置を示す模式図である。
【図3】変速段の上限値を決定する規制変速段マップである。
【図4】ナビゲーション処理部の制御動作を示すフローチャートである。
【図5】A/T ECUの制御動作を示すフローチャートである。
【図6】ナビゲーション処理部の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】ナビゲーション処理部の制御動作を示すフローチャートである。
【図8】ナビゲーション処理部の制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 車両制御装置
2 車両
10 ナビゲーションシステム装置
11 ナビゲーション処理部
12 データ記憶部
13 現在位置検出部
20 ATモード選択部
30 車両状態検出部
40 A/T ECU
Claims (4)
- 走行環境に基づき、自動変速装置の変速比を制御する車両制御装置であって、
自車の位置を検出する自車位置検出手段と、
自車の前方の走行環境に応じて自動変速装置が選択可能な変速比の下限を決定する前方規制手段と、
自車の後方の走行環境と自車の現在の車速及びスロットル開度のうち、少なくとも一方に応じて自動変速装置が選択可能な変速比の下限を決定する後方規制手段と、
前記前方規制手段及び後方規制手段によって決定された変速比の下限のうち、大きいほうを変速比の下限として設定する変速比決定手段とを備え、
前記後方規制手段は、自車の現在の車速が所定の解除車速を超えている場合、又は、スロットル開度と車速とに基づいて前記自動変速装置で選択した変速比が前記設定した変速比の下限以上である場合には、前記変速比の下限を決定する規制制御を解除する、
ことを特徴とする車両制御装置。 - 道路情報を記憶した道路情報記憶手段と、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
現在車速を検出する車速検出手段と、
変速マップに基づき自動的に変速比を選択する自動変速装置と、
自車位置から自車の進行方向にある所定区間内における複数の特定点における推奨走行速度を算出する推奨走行速度算出手段と、
自車位置から該複数の特定点までの距離を算出し、前記推奨走行速度と特定点までの距離に応じ、変速比の規制が必要かどうかを判定し、必要と判定された場合、自動変速装置が選択可能な変速比の下限を決定し特定点毎に設定する規制範囲設定手段と、
前記特定点毎に設定された変速比の下限のうち、最も大きいものを変速比の下限として決定する第1変速比規制手段と、
自車位置から後方に位置する所定区間内において、前記規制範囲設定手段により変速比の規制が設定された特定点の中から自車位置に最も近い特定点を検出し、該特定点通過時の車速と現在車速に応じて加速に必要な変速比の下限を決定する第2変速比規制手段と、
前記第1及び第2変速比規制手段で決定された変速比の下限と、現在の車速と変速マップに基づいて決定される変速比とを比較して、最も大きい変速比を自動変速装置の変速比として設定する変速比設定手段とを備えたことを特徴とする車両制御装置。 - 前記特定点は、道路形状を表現するノードである請求項2に記載の車両制御装置。
- 前記自動変速装置は、無段変速機である請求項1ないし3のいずれかに記載の車両制御装置。
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