JP3830003B2 - モイストペレット状養魚飼料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は生餌のみ、配合飼料のみ、あるいは生餌と配合飼料とを混練して製造されたモイストペレット状養魚飼料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
モイストペレットは、名が示すように水分を多く含むペレットであり、一般に鯵、鰯、秋刀魚、鯖、イカナゴ、その他の雑魚などを未冷凍のまま、または冷凍した後、生餌とし、これら生餌と、魚粉、ミネラル、植物性油粕類、穀類、そうこう類、成長促進剤、海草などからなる粉末状配合飼料と粘結剤を混合し、ペレット化したものである。
【0003】
生餌は、ミンチ状、スライス状、切身状いずれでも使用され、生餌のみを使用したもの(すなわち粉末状配合飼料を使用しないもの)から粉末状配合飼料のみ(すなわち生餌を使用しないもの)で水にて混練したものまでモイストペレットとする。
【0004】
モイストペレットは海水中で離散し難く、魚の死亡率を少なくするのが特徴となっているが、これらの特徴をもたすためには、一般に粘結剤を使用することが必要である。粘結剤としては、例えばアルギン酸ナトリウム、グアガム、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースなどが使用されるが、これらの粘結剤では、生餌配合率が50%以上になると、多量の水分のため、十分な粘結力が得られず、製品にべとつきを生じて、ペレット間で付着し合い、魚が食べ易い形状が得られない等の問題があり、生餌配合率50%以上で、経済的で、魚が食べ易い硬さを保持する実用性のある製品を得ることはできなかった。
【0005】
そこで粘結剤としてのカルボキシメチルセルロース(以下CMCとも言う)中のカルボン酸とカルボン酸ナトリウムの当量比を限定したCMCを使用するものが提案されているが(特開昭63−192351号公報)、これはモイストペレット中の生餌比率が50%以上の高含水のペレットであって、ペレットの品質保持を主目的にしており、粉末配合飼料の多いモイストペレットでは逆にペレットが硬くなり、ネバリ、ベトツキが出なくなる事から、バラケが大きくなり、投餌時のチリ発生につながる欠点が出ている。
【0006】
一方、近年、生餌の生魚であるイワシの漁獲高が急激に減少している事により安定した生餌の確保が得られず、粉末配合飼料の比率を50wt%以上に高めたり、時によっては100wt%とする事もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者等は、養魚飼料としてモイストペレットを製造する際、最も重要な役割を果たす粘結剤、特に現在最も広く使用されているカルボキシメチルセルロースに着眼し、粘結剤の改良によって、生餌比率が0〜100重量%の範囲にあっても少量の粘結剤の使用でも硬さが大で、べとつきがなく、ペレット間に接合を生じないモイストペレットを経済的に提供することを目的として本発明を開発した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記状況に鑑み、鋭意研究の結果、特定の2種のCMCとカルシウム化合物を配合したものを粘結剤として使用した場合、前記課題を解決できることを見出した。すなわち生餌と配合飼料の配合比率が100:0〜0:100(重量%)である生餌と配合飼料との混練により製造されたモイストペレットであって、下記の(a)、(b)及び(c)を含有し、下記(d)及び(e)の割合にて含有する粘結剤を上記モイストペレット重量に対して0.5〜10重量%添加混合してなることを特徴とするモイストペレット状養魚飼料である。
(a)同一分子鎖中にカルボン酸基を有し、カルボン酸とカルボン酸ナトリウムの当量比が0.005:1〜0.02:1であって、エーテル化度が0.45〜0.80であって、25℃における1%水溶液粘度が5000mpa・s以上であるカルボキシメチルセルロースナトリウム。
(b)エーテル化度が0.80〜2.5、25℃における1%水溶液粘度が100〜4000mpa・sであるカルボキシメチルセルロースナトリウム。
(c)ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、第一リン酸カルシウム及び第二リン酸カルシウムの中から選ばれた少なくとも一種のカルシウム化合物。
(d)上記(a)と(b)との配合重量比が(a)/(b)=95/5〜80/20。
(e)上記(a)と(b)との合計量に対し(c)の配合重量割合が(a)+(b)/(c)=99.9/0.1〜90/10。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のモイストペレットには、粘結剤として下記の(a)、(b)及び(c)が特定の割合で配合されて用いられる。
【0010】
(a)同一分子鎖中にカルボン酸基を有し、カルボン酸とカルボン酸ナトリウムの当量比が0.005:1〜0.02:1であって、エーテル化度が0.45〜0.80であって、25℃における1%水溶液粘度が5000mpa・s以上であるカルボキシメチルセルロースナトリウム。
(b)エーテル化度が0.80〜2.5、25℃における1%水溶液粘度が100〜4000mpa・sであるカルボキシメチルセルロースナトリウム。
(c)ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、第一リン酸カルシウム及び第二リン酸カルシウムの中から選ばれた少なくとも一種のカルシウム化合物。
【0011】
まず(a)のCMCについて説明する。
(a)として用いられるCMCはエーテル化度(以下DSという)が、0.45〜0.80である。このDSが0.45未満では水溶性が劣り、粘結剤としての結果は少なく、又0.80をこえるとベトツキが生じるので好ましくない。
【0012】
又25℃における1%水溶液粘度(東京計器製のブルックフィールド型、B型粘度計30rpmで測定)は、高粘度ほどモイストペレットの硬さを大きくし、ベトツキをおさえる。この粘度水準として5000mpa・sが一つの限界となり、5000mpa・s以上が必要である。
【0013】
更に同一分子鎖中にカルボン酸基を有し、カルボン酸とカルボン酸ナトリウムの当量比が0.005:1〜0.02:1であることが必要である。
【0014】
即ち、本発明で使用するカルボキシメチルセルロースナトリウムは、ナトリウム塩の部分を部分酸中和し、かつ部分架橋したものを使用するのが好ましい。
【0015】
部分酸中和カルボキシメチルセルロースナトリウムは、公知の技術に従って容易に製造できる。例えば、カルボキシメチルセルロースをメタノール等でスラリー状に調製し、適当な温度で、塩酸、硝酸、硫酸などの鉱酸、又は酢酸、クエン酸などの有機酸等と反応させることにより製造できる。これらの反応は、ほぼ化学当量的に行われるので、酸の量を調節することにより、カルボン酸とカルボン酸ナトリウムの比を正確に調節できる。
【0016】
部分酸中和処理後のDSは、一部酸型となったカルボキシメチル基のDSとナトリウム塩型で存在しているカルボキシメチル基のDSの合計である。本発明で使用するカルボキシメチルセルロースナトリウムは、カルボン酸のDSとナトリウム塩のDSとの比(即ち、カルボン酸とカルボン酸ナトリウムの当量比)が、0.005:1〜0.02:1である場合に、カルボキシメチルセルロースナトリウムを用いたモイストペレットの硬さとべとつきを、非常に扱い易い状態にもたらすことができる。
【0017】
この比が小さすぎると硬さは小となり、べとつきが出てくる。また、逆にこの比が大きすぎると急激に硬さは小となり、やはり、べとつきが出てくる。
【0018】
なお、カルボン酸のDSとカルボン酸ナトリウム塩のDSの比を定量するには、酸アルカリ滴定法が適用できる。
【0019】
一方、本発明に使用するカルボキシメチルセルロースナトリウムにおいて、架橋の程度も重要な因子である。一般に特公昭43−22830号公報にも示されるように、カルボキシメチルセルロースナトリウムは加熱と酸により架橋構造を形成することが知られている。
【0020】
部分酸型化したカルボキシメチルセルロースナトリウムに架橋構造を導入する方法は、通常の乾燥条件、例えば100℃30分〜5時間程度の加熱によって、十分達成できる。
【0021】
モイストペレット粘結剤としては、水溶解性であることが必須であるので、高い架橋を導入することはできない。従って、本発明に用いるカルボキシメチルセルロースナトリウムの架橋は、水溶解性に支障を来さない程度に、低いものであることが必要である。
【0022】
架橋の程度は、カルボキシメチルセルロースナトリウムの1%水溶液の粘度で推定できるので、1%粘度が5000mpa・s以上とすることが必要である。
【0023】
次に(b)のCMCについて説明する。
DS=0.80〜2.5、1%粘度100〜4000mpa・sに限定する。エーテル化度0.80以上はベトツキがあり、高エーテル化度ほど好ましいが2.5を越えるものは原料コスト高と生産効率上好ましくない事より0.80〜2.5に限定した。
【0024】
粘度は低い方がよいが、あくまでもモイストペレットの粘結剤として使用される事より著しく粘度が低いと粘結力がなくなる事より、100以上とした。4000以上になるとたとえエーテル化度が0.80以上あるとは言え、硬さが大きくなる事より好ましくない。
【0025】
次に(c)のカルシウム化合物について説明する。
カルシウム化合物としては、ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、第一リン酸カルシウム及び第二リン酸カルシウムの中から選ばれた少なくとも一種を用いる。中でも飼料添加物として最も一般的であり入手が容易であるという点からステアリン酸カルシウムを用いるのが好ましい。
【0026】
次に上記(a)〜(c)成分は、粘結剤中下記の(d)、(e)の特定の配合割合にて配合される。
【0027】
(d)は上記(a)と(b)との配合重量比が(a)/(b)=95/5〜80/20である。
【0028】
(a)と(b)の2種類をこの割合で配合する事により、単独CMCでは得られない硬さが有り、かつベトツキの少ないモイストペレットが得られる。
【0029】
(e)は上記(a)と(b)との合計量に対し(c)の配合重量比が(a)+(b)/(c)=99.9/0.1〜90/10である。このような割合とする事で、CMCNaの粘結剤としての効果をさらに高め、モイストペレットを水中へ投餌した時のペレットのくずれによるバラケ、水の汚れをより防止できモイストペレットの保形性を保持させる事ができる。配合量が0.1%未満ではこの保形性効果は少なく好ましくない。
【0030】
又10%をこえると(a)と(b)が少なくなる事より、粘結剤量が少なくなりその効果は大きく発揮出来ない。
【0031】
なお、本発明において、他の粘結剤、例えばグァガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カゼイン酸を併用することは可能である。
【0032】
【実施例】
実施例1〜6及び比較例1〜6
1.モイストペレットを製造した機器を下記に示す。
・ミートチョッパー(飯塚工業(株)製)
・1軸リボンブレンダー(佐竹製作所(株)製)
・モイストペレット口径は8mmにダイをセット
・スケールは1000g(生餌のみ、生餌+配合飼料、配合飼料のみ)
【0033】
2.モイストペレットの製造方法
(1)生餌のみの場合
1000gの冷凍イワシをミートチョッパーで粗砕した。粗砕した冷凍イワシに粘結剤20gを添加し、リボンブレンダーで10分間撹拌した後、ミートチョッパーでペレット化した。
【0034】
(2)生餌と配合飼料を配合した場合
なお配合飼料の組成は下記の通りである。
魚粉 52%、 大豆粕 3%
小麦粉 15%、 ビール酵母 9%
米ぬか 12%
グルテンミール 9%
【0035】
500gの冷凍イワシをミートチョッパーで粗砕した。粗砕した冷凍イワシと配合飼料500gと粘結剤20gを添加し、リボンブレンダーで10分間撹拌した後、ミートチョッパーでペレット化した。
【0036】
(3)配合飼料のみの場合
配合飼料の組成は下記の通りである。
魚粉 52%
小麦粉 35%
大豆粕 7%
ビール酵母 6%
【0037】
上記配合飼料1000gに粘結剤20gを添加し、均一化後、スケソーダラ肝油200g、水400gを添加してリボンブレンダーで10分間撹拌した後、ミートチョッパーでペレット化した。
【0038】
表1の各々の粘結剤を用いて上記方法にてモイストペレットを作成し下記評価に供した。
【0039】
3.評価方法
上記で製造したモイストペレットの下記の製品性状を5人のモニターの感触試験により行った。
【0040】
(1)硬さ(硬い方が好ましい)
◎ 非常に硬い、 ○ 硬い、 △ やや軟らかい、× 軟らかい
【0041】
(2)ベトツキ(ベトツキがないのが良い)
◎ 全くベトツかない
○ ベトツかない
△ ややベトツク
× ベトツキがある
【0042】
(3)人工海水へ投餌した時のチリ
人工海水300mlにモイストペレット20gを投入してゆるやかに1分間撹拌した後、人工海水の濁りを比較した。(濁りの少ない方がチリが少なくよい)
◎ 全く濁りはない、○ 若干濁る
△ やや濁る、 × ペレットはくずれて濁る
【0043】
評価結果を下記表2に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】
生餌と配合飼料の配合比率を100:0〜0:100(重量%)のモイストペレットにおいて、本粘結剤を使用するとモイストペレット状養魚飼料はベトツキがなく、硬さがあり、投餌時の水中でのチリ防止をすることができる。
Claims (1)
- 生餌と配合飼料の配合比率が100:0〜0:100(重量%)である生餌と配合飼料との混練により製造されたモイストペレットであって、下記の(a)、(b)及び(c)を含有し、下記(d)及び(e)の割合にて含有する粘結剤を上記モイストペレット重量に対して0.5〜10重量%添加混合してなることを特徴とするモイストペレット状養魚飼料。
(a)同一分子鎖中にカルボン酸基を有し、カルボン酸とカルボン酸ナトリウムの当量比が0.005:1〜0.02:1であって、エーテル化度が0.45〜0.80であって、25℃における1%水溶液粘度が5000mpa・s以上であるカルボキシメチルセルロースナトリウム。
(b)エーテル化度が0.80〜2.5、25℃における1%水溶液粘度が100〜4000mpa・sであるカルボキシメチルセルロースナトリウム。
(c)ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、第一リン酸カルシウム及び第二リン酸カルシウムの中から選ばれた少なくとも一種のカルシウム化合物。
(d)上記(a)と(b)との配合重量比が(a)/(b)=95/5〜80/20。
(e)上記(a)と(b)との合計量に対し(c)の配合重量割合が(a)+(b)/(c)=99.9/0.1〜90/10。
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1997
- 1997-09-04 JP JP25764497A patent/JP3830003B2/ja not_active Expired - Fee Related
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