JP2816961B2 - シングルモイストペレット養魚餌料用粘結剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、シングルモイスト
ペレット養魚餌料用粘結剤に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来のシングルモイストペレット養魚餌
料用粘結剤としては、例えばアルギン酸塩、アルギン酸
塩とカルシウム塩の配合品、グァガム、ポリアクリル酸
塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩（以下Ｃ
ＭＣという）等がある。これらの粘結剤は、魚粉、粉末
状植物餌料、ビタミン、ミネラル等を配合した粉末餌
料、いわゆるマッシュに混合した後、添加水を加えて、
混練し、任意形状（一般にはペレット状）に形成して製
造される養魚用餌料（一般にはシングルモイストペレッ
ト）に使用される。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来のシングルモイストペレット養魚餌料用粘結剤
は、生餌を使用せず、あるいは使用してもごくわずか
（生餌／マッシュ＝１０以下／９０以上）しか使用しな
いため、生餌から供給される、水分、油分の不足を補う
ための水、液状油（通常は肝油が用いられる）を多く添
加しないとペレットがうまく成形できない。ペレットが
成形されても形状が悪い、ベトツキ付着が発生する、あ
るいは海水へ投餌した時、水中で形くずれしチリの発生
による海洋汚染等の問題、さらには添加した油がペレッ
トから溶出して海面を汚す等の問題が発生しており、そ
の解決が粘結剤に求められている。

【０００４】シングルモイストペレット成形時の粘結剤
として使用されていたグアガム、アルギン酸塩又はアル
ギン酸塩とカルシウム塩の配合品ではペレットは出来る
が海水中のチリ発生を防止する効果は少なく、ＣＭＣ単
品でもやはり海水中のチリ発生を完全に防止できず、又
ポリアクリル酸ソーダでは海水中のチリ発生は防止でき
るが、ペレット成形時にベトツキが生じて、ペレットが
出来ない、又は出来たペレット同士が付着してしまう、
という問題点があった。更にこれらの従来の粘結剤のみ
では、ペレット表面からの離油を防止するという効果は
得られなかった。

【０００５】本発明はシングルモイストペレット養魚餌
料において、ペレット成形性に優れ、ベトツキがなく、
水中保形性に優れ、かつ海水中でのチリが発生しないペ
レット、更にはペレット表面から離油も防止したペレッ
トができる粘結剤を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者等は従来の粘結
剤をある特定の範囲で配合したものが前記課題を解決で
きることを見出し本発明に到達した。すなわち請求項１
は、下記の（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｃ）からなるシングル
モイストペレット養魚餌料用粘結剤である。 （Ａ）エーテル置換度が０．７以上、１％水溶液粘度が
５０〜２００００ｍＰａ・ｓ、かつ揺変性が０．２以上
であるＣＭＣ５〜９０重量％ （Ｂ）グァガム及び／またはアルギン酸塩５〜９０重量
％ （Ｃ）ポリアクリル酸ソーダ５〜９０重量％

【０００７】請求項２は、下記の（Ａ）、（Ｂ）、
（Ｃ）及び（Ｄ）からなるシングルモイストペレット養
魚餌料用粘結剤である。 （Ａ）エーテル置換度が０．７以上、１％水溶液粘度が
５０〜２００００ｍＰａ・ｓ、かつ揺変性が０．２以上
であるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩５〜８
９．５重量％ （Ｂ）グァガム及び／またはアルギン酸塩５〜８９．５
重量％ （Ｃ）ポリアクリル酸ソーダ５〜８９．５重量％ （Ｄ）非イオン活性剤０．５〜２０重量％

【０００８】請求項３は、下記の（Ａ）、（Ｂ）、
（Ｃ）、（Ｄ）及び（Ｅ）からなるシングルモイストペ
レット養魚餌料用粘結剤である。 （Ａ）エーテル置換度が０．７以上、１％水溶液粘度が
５０〜２００００ｍＰａ・ｓ、かつ揺変性が０．２以上
であるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩５〜８
９重量％ （Ｂ）グァガム及び／またはアルギン酸塩５〜８９重量
％ （Ｃ）ポリアクリル酸ソーダ５〜８９重量％ （Ｄ）非イオン活性剤０．５〜２０重量％ （Ｅ）カゼインソーダ０．５〜２０重量％

【０００９】

【発明の実施の形態】本発明の（Ａ）成分として用いら
れるＣＭＣはエーテル置換度が０．７以上、１％水溶液
粘度が５０〜２００００ｍｐａ・ｓ（２５℃）であっ
て、かつ揺変性が０．２以上のものを使用する。

【００１０】シングルモイストペレットの成形保形性や
海水中でのチリ防止は使用するＣＭＣのエーテル化度が
大きく影響するので、成形保形性を保持し、海水中のチ
リ防止の為には粘結性の強いエーテル化度０．７以上
（揺変性が０．２以上）のものが用いられる。エーテル
化度が０．７未満では粘着力が弱く、成形保形性が弱ま
り、海水中のチリ発生にもつながって来る。又揺変性が
０．２未満では、粘りが弱く、付着効果が小さいことに
依る成形保形性が弱くなり、海水中のチリ発生につなが
る。

【００１１】Ｂ成分のアルギン酸塩の塩としては、カル
シウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる
が、通常はナトリウム塩が用いられる。

【００１２】Ｃ成分のポリアクリル酸ソーダは２５℃の
０．２％水溶液粘度が３００〜６００ｍＰａ・ｓのもの
が用いられる。

【００１３】Ｄ成分の非イオン活性剤は、粘結剤中に配
合することによって、添加される液状油を乳化させ、ペ
レット内にこれを安定化させる機能を奏し、従来防止す
ることができなかったペレット表面からの離油をほとん
ど防止することができる。前記Ａ、Ｂ、Ｃの３成分で
は、やや離油防止にかける。

【００１４】この非イオン活性剤としては、グリセリン
脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸
エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エ
ステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
が挙げられる。

【００１５】これらの非イオン活性剤を構成する脂肪酸
は炭素数８〜２２の飽和、不飽和脂肪酸であって、具体
的にはオレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等であ
る。これらの非イオン活性剤のうち、離油防止効果とい
う点でグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。

【００１６】次にＥ成分のカゼインソーダは溶解した
時、強力な粘着性を有することより、これを添加し、シ
ングルモイストペレットを海水中に投餌した場合にはチ
リ防止の更なる効果（濁度の低下）が得られる。

【００１７】Ａ〜Ｃ成分からなるシングルモイストペレ
ット用粘結剤において、Ａ〜Ｃ成分の配合割合は、Ａ：
Ｂ：Ｃ＝５〜９０：５〜９０：５〜９０（重量％、以下
％と記載する）である。好ましくはＡ：Ｂ：Ｃ＝３０〜
８０：１０〜６０：１０〜６０（重量％）である。Ａ成
分が５％未満では、ＣＭＣが持つ保水性が失われ、ペレ
ットの成形保形性が弱くなり好ましくない。Ｂ成分が５
％未満では、マッシュのバインダー力が不足し、海水中
のチリ発生につながり好ましくない。又Ｃ成分が５％未
満では、粘着力が充分に発揮されないため、ペレットの
艶不足など外観が劣化し、更に海水中のチリ発生も生ず
るため好ましくない。

【００１８】Ａ〜Ｄ成分からなるシングルモイストペレ
ット用粘結剤における配合割合は、Ａ：Ｂ：Ｃ：Ｄ＝５
〜８９．５：５〜８９．５：５〜８９．５：０．５〜２
０（％）である。好ましくはＡ：Ｂ：Ｃ：Ｄ＝１０〜８
９：５〜５０：５〜３０：１〜５である。Ｄ成分が０．
５％未満では液状油の乳化効果が弱く、２０％を越える
とＡ〜Ｃ成分が減少することより、成形性や海水中のチ
リ発生が多くなり好ましくない。

【００１９】Ａ〜Ｅ成分からなるシングルモイストペレ
ット用粘結剤における配合割合は、Ａ：Ｂ：Ｃ：Ｄ：Ｅ
＝５〜８９：５〜８９：５〜８９：０．５〜２０：０．
５〜２０である。好ましくはＡ：Ｂ：Ｃ：Ｄ：Ｅ＝１０
〜８８：５〜５０：５〜３０：１〜５：１〜５である。
Ｅ成分が０．５％未満では粘着性が弱まり、海水中のチ
リ防止効果が弱い。また２０％を越えると粘着性が強く
なり過ぎ、ペレット間の付着が生じ好ましくない。

【００２０】これらのＡ〜Ｃ、Ａ〜Ｄ、Ａ〜Ｅ成分から
なる粘結剤は、マッシュに対して１〜５％配合される。
配合量１％以下では粘結剤の効果は少なく、５％以上で
はコスト的にムダを生ずるので１〜５％が最適配合量で
ある。

【００２１】本発明のＡ成分であるＣＭＣの揺変性は下
記のように測定される。揺変性の測定法 （イ）使用計器：東京計器製ＢＨ型粘度計 （ロ）測定方法： （ａ）試料ＣＭＣの固有粘度に応じて濃度を調整して１
００００±５００ｍｐａ・ｓのＣＭＣ水溶液を調製し、
よく撹き混ぜた後、ラップして２５℃恒温槽中に一夜放
置する。 （ｂ）恒温槽中より取り出し、ガラス棒にて充分撹き混
ぜる。 （ｃ）試料をＢＨ型粘度計、ローターＮｏ．５を用い、
回転数２ｒ．ｐ．ｍ及び２０ｒ．ｐ．ｍにおける各粘度
を測定し、下式の如く、回転数２ｒ．ｐ．ｍ時の粘度に
対する回転数２０ｒ．ｐ．ｍ時の粘度の商を以って揺変
性とする。この値が小さい程揺変性が大きい。

【００２２】揺変性＝粘度（２０ｒ．ｐ．ｍ）÷粘度
（２ｒ．ｐ．ｍ）

【００２３】

【実施例】実施例１〜３２及び比較例１〜５６ シングルモイストペレットの製造（造粒）方法 下記の機械を用い、又下記の手順にてシングルモイスト
ペレットを製造した。

【００２４】（ｉ）機械 配合：ケンウッドミキサー（愛工舎製作所 製） 造粒：ミートチョッパー （飯塚工業（株）製） ダイ口径（直径）：６ｍｍ バッチスケール ：５００ｇ（マッシュ）

【００２５】（ｉｉ）手順 表２〜表５に記載された量のマッシュと粘結剤と水とを
ケンウッドミキサー回転数目盛り１で１分間撹拌し、次
に表２〜表５の量の油（フィードオイルを使用）を入
れ、ケンウッドミキサー回転数目盛り１で１分間撹拌
し、更にミートチョッパーで造粒し、シングルモイスト
ペレットを製造した。前記粘結剤は、表１に記載された
成分と量にて配合されたものである。次にこのシングル
モイストペレットを下記の評価に供した。

【００２６】評価方法 ・硬 度（ｋｇ／ｃｍ² ）…不動レオメーターにて、
ペレットがつぶれる強度を求める。

【００２７】・ベトツキ、切り口、粉化、艶…ペレット
の状態を触感及び目視で確認し、以下の基準で評価す
る。 優：◎ 良：○ 並：△ 不可：×

【００２８】・水中保形性及び濁度（ｃｍ）…ペレット
２０ｇを金網かごに入れ、人工海水３００ｍｌの入った
５００ｍｌビーカーにひたしてスターラーで撹拌（スタ
ーラー目盛り１ｌ，５分間）した後、人工海水の透明度
を求める。合わせて、ペレットの水中保形性を確認す
る。透明度はガラス管に入れ１ｍｍ間隔に引いた黒い線
が見分けられなくなった所を求める。

【００２９】・離油…ペレット２００ｇを人工海水３０
０ｍｌに投入し、２時間後、水面に浮く油の状態を下記
基準で観察する。 一面に油が浮いた状態：× 一部油が浮いた状態：△ まったく油が浮いていない状態：○ 各評価は、シングルモイストペレット造粒直後に実施し
た。

【００３０】マッシュ マッシュＡ…魚粉５２、小麦粉３５、大豆粕７、ビール
酵母６（重量部） マッシュＢ…魚粉７５、小麦粉２０、大豆粕５ （重量
部）

【００３１】

【表１】

【００３２】

【表２】

【００３３】

【表３】

【００３４】

【表４】

【００３５】

【表５】

【００３６】表２〜表５より、Ａ〜Ｃ成分からなる本発
明の粘結剤を用いる事によって、離油はやや発生するも
のの、成形保形性があり、ベトツキがなく、海水中のチ
リ防止効果のあるシングルモイストペレット養魚用餌料
が製造できることが分かる。

【００３７】実施例３３〜６０及び比較例５７〜６０ 粘結剤として表６の成分と割合からなるものを用い、表
７、表８に記載された量のマッシュと水と油（フィード
オイル）を用いて、実施例１〜３２の手順及び機械を用
いてシングルモイストペレットを製造した。

【００３８】次にこのシングルモイストペレットについ
て前記した硬度、ベトツキ、切り口、粉化、艶、水中保
形性、濁度及び離油を評価し、その結果を表７、表８に
示した。なおマッシュは次の割合のものを用いた。魚粉
８５％、小麦粉１０％、大豆粕５％

【００３９】

【表６】

【００４０】

【表７】

【００４１】

【表８】

【００４２】表７、表８より、Ａ〜Ｄ成分からなる粘結
剤を用いた時には、非イオン活性剤を配合したことによ
り、離油の防止をはじめとする評価項目すべてにわたり
優れたシングルモイストペレットが得られることがわか
る。

【００４３】Ａ〜Ｅからなる粘結剤を用いた時には、非
イオン活性剤及びカゼインソーダを配合したことによ
り、Ａ〜Ｄ成分の粘結剤に比べ濁度が更に優れたシング
ルモイストペレットが得られることがわかる。

【００４４】

【発明の効果】本発明のシングルモイストペレット養魚
餌料用粘結剤は１〜５％の添加量で、ベトツキがなく、
水中保形性が保たれ、海水中でのチリによる海水汚染が
防止できる。更には特定の非イオン活性剤を加えること
により、ペレット表面からの離油防止効果を向上でき
る。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) A23K 1/20 A23K 1/18 102

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 下記の（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｃ）からな
   るシングルモイストペレット養魚餌料用粘結剤。 （Ａ）エーテル置換度が０．７以上、１％水溶液粘度が
   ５０〜２００００ｍＰａ・ｓ、かつ揺変性が０．２以上
   であるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩５〜９
   ０重量％ （Ｂ）グァガム及び／またはアルギン酸塩５〜９０重量
   ％ （Ｃ）ポリアクリル酸ソーダ５〜９０重量％
2. 【請求項２】 下記の（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び
   （Ｄ）からなるシングルモイストペレット養魚餌料用粘
   結剤。 （Ａ）エーテル置換度が０．７以上、１％水溶液粘度が
   ５０〜２００００ｍＰａ・ｓ、かつ揺変性が０．２以上
   であるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩５〜８
   ９．５重量％ （Ｂ）グァガム及び／またはアルギン酸塩５〜８９．５
   重量％ （Ｃ）ポリアクリル酸ソーダ５〜８９．５重量％ （Ｄ）非イオン活性剤０．５〜２０重量％
3. 【請求項３】 下記の（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）、（Ｄ）
   及び（Ｅ）からなるシングルモイストペレット養魚餌料
   用粘結剤。 （Ａ）エーテル置換度が０．７以上、１％水溶液粘度が
   ５０〜２００００ｍＰａ・ｓ、かつ揺変性が０．２以上
   であるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩５〜８
   ９重量％ （Ｂ）グァガム及び／またはアルギン酸塩５〜８９重量
   ％ （Ｃ）ポリアクリル酸ソーダ５〜８９重量％ （Ｄ）非イオン活性剤０．５〜２０重量％ （Ｅ）カゼインソーダ０．５〜２０重量％