JP3937039B2 - ドライペレット飼料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライペレット飼料の製造方法に関し、詳細には高含油ドライペレット飼料の製造に好適な方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハマチ、タイ、サケ、ヒラメ、シマアジ等の海水魚、コイ、マス、アユ、ウナギ、ヤマメ、ティラピア、ナマズ等の淡水魚、クルマエビ、ウシエビ等の甲殻類に対する養魚用飼料としては、例えばイワシ、アジ、サバ等の生餌、生餌とマッシュと呼ばれる粉末状成分を配合造粒したモイストペレット、また、魚粉、グルテン、デンプンを中心に造粒したドライペレットがある。これらの中でも、環境面および設備面の観点から、今日ではドライペレットが脚光を浴びている。
【0003】
かかるドライペレットを製造するに際しては、主原料である魚粉、グルテン、デンプンを中心としてこれにミネラル、ビタミン類を配合し、一軸又は多軸エクストルーダーにより造粒する。このエクストルーダーでの造粒過程で、水又は水蒸気を加えて加湿し、また飼料のカロリーを高める目的で魚油、植物油等の脂肪油を添加し、80〜120℃に加熱しつつ、目的とする口径として成型しペレット化する。そして、このペレットを乾燥機で乾燥して水分率を1〜10重量%とすることでドライペレット飼料は製造される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の製造方法では、ドライペレット飼料を高カロリー化するときに、無理な油添加となり、できあがったドライペレット飼料からの油の滲み出しが生じたり、また油によりドライペレット飼料が成型できず、型崩れし商品価値が低下する等の問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、従来製造しにくかった含油分の高いドライペレット飼料を製造することができるドライペレット飼料の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題点を解決するために鋭意検討した結果、魚油などの脂肪油をドライペレット原料に液体のまま仕込む代わりに、高級脂肪酸のグリセリドを配合して加熱撹拌しこれをゲル化させ、このゲル化物を仕込むことにより上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、脂肪油に炭素数10〜20の高級脂肪酸のグリセリドを配合してゲル化させ、得られたゲル化物を他のドライペレット原料と配合して一軸又は多軸エクストルーダーにより造粒することを特徴とするドライペレット飼料の製造方法に関するものである。
【0008】
本発明においては、前記高級脂肪酸のグリセリドとともに、25℃での2重量%水溶液粘度が100mPa・s以下のカルボキシメチルセルロース塩を、前記脂肪油に加えることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0010】
本発明においてドライペレット原料としては、マッシュと呼ばれる粉末状成分と、飼料のカロリーを高めるための脂肪油と、造粒時の湿潤剤としての水とが用いられる。
【0011】
上記脂肪油とは常温で液体の油脂であり、例えば、タラ肝油、スケソウダラ肝油、イワシ油等の魚油、大豆油、綿実油等の植物油、またそれらの硬化油等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0012】
上記粉末状成分としては、魚粉、肉粉、脱脂粉乳、オキアミミール、イカミール等の蛋白質、油粕、穀類、デンプン、グルテンミール等の植物原料、ビタミン類、ミネラル類などが挙げられる。
【0013】
ドライペレット原料には、その他必要に応じて、界面活性剤、粘結剤などを配合してもよい。また、その他の油脂として、牛脂や豚脂などの常温で固体の脂肪を配合することもできる。
【0014】
脂肪油をゲル化させるために用いる高級脂肪酸のグリセリドとしては、炭素数10〜20、より好ましくは10〜18の飽和又は不飽和脂肪酸のグリセリンエステルが好適なものとして挙げられる。より好ましくはラウリン酸、ステアリン酸のグリセリンエステルである。該グリセリドとしては、グリセリンと脂肪酸のモノエステルであるモノグリセリドが好適であるが、ジグリセリドやトリグリセリドを使用することもできる。
【0015】
上記グリセリドとともに脂肪油に配合されるカルボキシメチルセルロース塩としては、ナトリウム塩が好ましく用いられる。カルボキシメチルセルロース塩のエーテル化度は、特に限定されないが、粘稠性の低い低粘度のものを用いることが好ましく、25℃における2重量%水溶液粘度が100mPa・s以下、より好ましくは3〜100mPa・sのものを用いることが好ましい。
【0016】
本発明においては、ドライペレット原料の一成分である上記脂肪油をゲル化させてから、このゲル化物を上記粉末状成分などの他のドライペレット原料に配合する。
【0017】
詳細には、上記高級脂肪酸のグリセリドを上記脂肪油に加え、加熱撹拌することでグリセリドを溶解させ、その後、常温まで冷却して脂肪油をゲル化固化させる。該グリセリドは、脂肪油100重量部に対して1〜20重量部配合されることが好ましい。配合量が1重量部以下では、脂肪油を十分に固化させることが難しく、また、20重量部を越えると全く固化できなくなる。撹拌時における加熱温度は、添加したグリセリドを溶解させることができる温度であれば特に限定されないが、通常60〜90℃で行われる。また、冷却は、冷却装置を用いて強制冷却してもよいが、室温下で放冷することにより冷却することもできる。
【0018】
脂肪油のゲル化物を得るに際しては、高級脂肪酸のグリセリドと上記カルボキシメチルセルロース塩との混合物を上記脂肪油に配合することが好ましい。脂肪油のゲル化は、通常、高級脂肪酸のグリセリド単独でも可能であるが、上記カルボキシメチルセルロース塩を併用することにより、得られるゲル化物をより固く仕上げることができる。カルボキシメチルセルロース塩は、脂肪油100重量部に対して0.1〜2.0重量部配合されることが好ましい。また、高級脂肪酸のグリセリド(A)とカルボキシメチルセルロース塩(B)との配合比(重量比)は、A/B=1〜15であることが好ましい。
【0019】
以上により得られる脂肪油のゲル化物を他のドライペレット原料に配合し、一軸または多軸のエクストルーダーに仕込んで、該エクストルーダーで所定形状に造粒し乾燥することで、ドライペレット飼料を製造する。脂肪油のゲル化物は、上記粉末状成分に添加して混合機中で撹拌混合することにより粉末化することができるため、このように粉末化してからエクストルーダーに供給されることが好ましい。なお、ゲル化物は粉末状成分に添加する前に予め粉末化しておいてもよい。
【0020】
ゲル化物の配合量は、特に限定されないが、高含油ドライペレット飼料とするために、ドライペレット飼料中における脂肪油の含有率が10〜40重量%となるように配合されることが好ましい。すなわち、本発明の方法は、含油分10〜40重量%である高含油ドライペレット飼料の製造に好適である。
【0021】
造粒後の乾燥は、ドライペレット飼料中における水分率が10重量%以下となるように行うことが好ましく、乾燥温度及び時間は特に限定されないが、通常90〜110℃で10〜40分間行われる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0023】
1.魚油のゲル化固化
スケソウダラ肝油(理研ビタミン株式会社製)1000gに、グリセリンモノラウレート(理研ビタミン株式会社製「ポエムM−300」)とカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製「セロゲンF−7A」、25℃での2重量%水溶液粘度=15mPa・s、東京計器製造所製のB型粘度計(ローターNo.1、60rpm×60秒)により測定)を8:2(重量比)で混合したもの150gを加え、80℃にて撹拌した。グリセリンモノラウレートが溶解した後、撹拌を止めて室温まで放冷したところ、スケソウダラ肝油はゲル化固化した。
【0024】
2.実施例1〜3および比較例1〜3
ドライペレット原料として、粉末原料、水、魚油、高級脂肪酸のグリセリド及びカルボキシメチルセルロース塩の配合を、下記表1に示す通りとした。
【0025】
そして、実施例1〜3では、魚油であるスケソウダラ肝油(理研ビタミン株式会社製)にグリセリンモノラウレート(理研ビタミン株式会社製「ポエムM−300」)とカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)(第一工業製薬株式会社製「セロゲンF−7A」)を表1に示す割合にて配合し、80℃で撹拌してグリセリンモノラウレートを溶解させた後、室温まで放冷してスケソウダラ肝油のゲル化物を得た。次いで、得られたゲル化物を粉末原料とともに配合し、混合機により混合し粉末化して、スクリューフィーダーによりエクストルーダーに供給した。水は定量ポンプによってエクストルーダーのバレルに供給して、エクストルーダーでペレットを造粒した(エクストルーダー:アルファライザー−70型二軸(末広鉄工製)、バレル温度:90〜120℃、スクリュー回転数:120rpm、ダイ径:8mm)。造粒したペレットを乾燥機で105℃、2時間乾燥し、これにより、水分10重量%以下の養魚用ドライペレット飼料を得た。
【0026】
一方、比較例1〜3では、グリセリンモノラウレートとカルボキシメチルセルロースナトリウムを他の粉末原料とともに粉体混合してスクリューフィーダーによってエクストルーダーに供給した。スケソウダラ肝油は液体のまま定量ポンプによってエクストルーダーのバレルに供給し、その他は上記実施例と同様にしてエクストルーダーでペレットを造粒し、乾燥して、水分10重量%以下の養魚用ドライペレット飼料を得た。
【0027】
得られた実施例1〜3及び比較例1〜3のドライペレット飼料について、外観形状、硬度、水中保形性および水中離油の各評価を行った。結果を下記表1に示す。なお、評価方法は以下の通りである。
【0028】
(1)外観形状(目視評価)
出来上がったドライペレットを目視観察した。評価基準は以下の通りである。
◎:欠け、崩れがなく円柱状に仕上がり、表面に油分のにじみがないもの
○:ほとんど欠点はないが「◎」に比して若干劣るもの
△:多少の欠け、崩れがあり、表面に油分のにじみが生じているもの
×:欠け、崩れが生じ、油分のにじみが出ているもの。
【0029】
(2)硬度
ドライペレット飼料を木屋式硬度計で10個を測定し、その平均値を求めた。
【0030】
(3)水中保形性
ドライペレット飼料約20個を人工海水中に投入し、1時間後、取り出し指でつまみ比較した。評価基準は以下の通りである。
◎:指でつまんでも崩れないもの
○:指でつまむと若干崩れが生じるもの
△:指でつまむと半分程度が崩れてしまうもの
×:人工海水中で大半が崩れてしまうもの。
【0031】
(4)水中離油
水中保形性を評価した人工海水の表面に浮く油分の状態を観察し、以下の基準で評価した。
【0032】
◎:全く油分の浮きがない
○:人工海水表面に若干油分を感じる
△:人工海水表面に油分が浮いている
×:ほとんど油分が溶出して浮いている。
【0033】
【表1】
【0034】
3.実施例4〜6及び比較例4〜6
ドライペレット原料として、粉末原料、水、魚油、高級脂肪酸のグリセリド及びカルボキシメチルセルロース塩の配合を、下記表2に示す通りとし、実施例4〜6では、実施例1〜3と同様に、スケソウダラ肝油(理研ビタミン株式会社製)を、グリセリンモノラウレート(理研ビタミン株式会社製「ポエムM−300」)とカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製「セロゲンF−7A」)を用いてゲル化させ、得られたゲル化物を粉末原料に配合し造粒して養魚用ドライペレット飼料を作製した。また、比較例4〜6では、比較例1〜3と同様に、グリセリンモノラウレートとカルボキシメチルセルロースナトリウムを他の粉末原料とともに粉体混合し、スケソウダラ肝油は液体のままエクストルーダーに供給して養魚用ドライペレット飼料を得た。
【0035】
得られた実施例4〜6及び比較例4〜6のドライペレット飼料について、外観形状、硬度、水中保形性および水中離油の各評価を行った。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、高含油ドライペレット飼料を安定して製造することができ、また、得られたドライペレット飼料は保形性がよく、水中投餌においても離油しないものであり、性能の良い高含油ドライペレット飼料を製造することができる。
Claims (4)
- 脂肪油に炭素数10〜20の高級脂肪酸のグリセリドを配合してゲル化させ、得られたゲル化物を他のドライペレット原料と配合して一軸又は多軸エクストルーダーにより造粒することを特徴とするドライペレット飼料の製造方法。
- 前記高級脂肪酸のグリセリドを前記脂肪油100重量部に対して1〜20重量部配合することを特徴とする請求項1記載のドライペレット飼料の製造方法。
- 前記高級脂肪酸のグリセリドとともに、25℃での2重量%水溶液粘度が100mPa・s以下のカルボキシメチルセルロース塩を、前記脂肪油に加えることを特徴とする請求項1記載のドライペレット飼料の製造方法。
- 前記脂肪油100重量部に対して、前記高級脂肪酸のグリセリドを1〜20重量部および前記カルボキシメチルセルロース塩を0.1〜2.0重量部配合することを特徴とする請求項3記載のドライペレット飼料の製造方法。
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