JP3828154B2 - トリシクロカルボン酸エステル、その製造法およびそれからなる香料 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、新規な三環式カルボン酸エステルである式(I)で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステル、その製造法およびそれからなる香料に関する。また、本発明は、式(III)で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エステルに関する。
Figure 0003828154
式(I)〜(III)において、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基である。
式(I)で表わされるカルボン酸エステルは、香料としてのみならず、香料の製造中間体として有用である。すなわち、式(I)で表わされるカルボン酸エステルは、特公昭61−1014号公報に開示されているように、香料として非常に有用である式(III)で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エステルの中間体として有用である。
背景技術
従来、香料として非常に有用である、以下のスキーム1および2に記載の式(III)で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エステル(III)は、以下のスキーム1で示されるように、ジヒドロジシクロペンタジエンのコッホカルボキシル化反応によって(特公昭61−1014号公報)、または以下のスキーム2に示されるように、トリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−イルホルメートを無機強酸触媒と接触させることによって(特公昭61−40658号公報)、得られた式(IV)で表わされる、対応するカルボン酸をエステル化させることにより製造されている。
Figure 0003828154
Figure 0003828154
前記スキーム1および2において、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基である。
しかしながら、スキーム1で示されるコッホカルボキシル化反応には、出発物質に対して大過剰量で一酸化炭素を供給する必要があり、未反応の一酸化炭素は、気体状で排出されるため、未反応の一酸化炭素を吸収する設備を必要とし、一酸化炭素は、毒性の高いガスであるため、その操作上に危険があるという問題がある。また、コッホ反応には、酸の使用量は、極めて多く、すなわちジヒドロジシクロペンタジエン1モルに対して10モル以上であるという問題点がある。スキーム2によって示される反応を採用する方法によれば、酸の量が6モルにまで低減されるが、この方法は、満足できるものではない。これらの方法に使用される酸は、回収不可能な場合がある。そのような場合、大量の廃酸の処理は、工程上大きな問題となる。かくして、化合物(III)の新しい工業的製法が開発されることが望まれている。
発明の開示
従って、本発明の目的は、式(III)で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エステルの工業的に有用な製造法を提供することにある。
本発明のもう1つの目的は、式(III)で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エステルの製造のための出発物質として新規で重要な化合物である、式(I)で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルを提供することにある。
本発明のさらにもう1つの目的は、トリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルの製造法を提供することにある。
本発明のこれらおよび他の目的は、以下の記載から明らかであろう。
1つの態様において、本発明は、一般式(I):
Figure 0003828154
(式中、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルに関する。
もう1つの態様において、本発明は、式(II):
Figure 0003828154
(式中、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
で表わされるシクロペンテニルカルボン酸エステルと、シクロペンタジエンとを反応させる工程を有する、一般式(I):
Figure 0003828154
(式中、Rは、前記と同じ)
で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルの製造法に関する。
さらにもう1つの態様において、本発明は、式(I):
Figure 0003828154
(式中、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルの二重結合を還元させる工程を有する、式(III):
Figure 0003828154
(式中、Rは、前記と同じ)
で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エステルの製造法に関する。
さらにもう1つの態様において、本発明は、式(I):
Figure 0003828154
(式中、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルからなる香料に関する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例4で得られた、シクロペンテニルカルボン酸エチルとジシクロペンタジエンの反応生成物のガスクロマトグラフィーの結果を示すチャートである。
発明を実施するための最良の形態
本発明を以下に詳細に説明する。
本発明のトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルは、式(I):
Figure 0003828154
(式中、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
で表わされる新規な化合物である。
Rの例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびイソプロピル基があげられる。本発明において、好ましいものはエチル基である。
式(I)で表わされる化合物は、以下の式:
Figure 0003828154
で示されるように、式(VI):
Figure 0003828154
で表わされる、対応するカルボン酸をエステル化させることによって製造することができると考えられる。
しかしながら、ディールス−アルダー反応は、式(V):
Figure 0003828154
で表わされるシクロペンテニルカルボン酸とシクロペンタジエンとの間では進行せず(H.Koch and W.Heaf,Liebigs.Ann.Chem.,638,111(1960))、また式(VI)で表わされる、対応するカルボン酸を合成する他の方法も知られていない。それゆえ、式(I)で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルは、式(VI)で表わされる、対応するカルボン酸エステルから製造することができないと現在まで考えられてきた。
かつて製造されたことがない、式(I)で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルは、式(II):
Figure 0003828154
(式中、Rは、前記と同じ)
で表わされるシクロペンテニルカルボン酸エステルとシクロペンタジエンとのディールス−アルダー反応により、容易に製造できることが、驚くべきことに見出された。前記知見に基づき、本発明が完成されるに至った。
式(II)で表わされるシクロペンテニルカルボン酸エステルは、J.Am.Chem.Soc.,79,1095(1957)に記載の方法にしたがって、式:
Figure 0003828154
に示されるように、ピリジン溶媒中で、式(VIII):
Figure 0003828154
(式中、Rは前記と同じ)
で表わされる2−アルコキシカルボニルシクロペンタノールを、p−トルエンスルホニルクロライドと反応させることによって得られる。
式(VIII)で表わされる2−アルコキシカルボニルシクロペンタノールは、ラネーニッケル触媒の存在下で、式(VII):
Figure 0003828154
(式中、Rは、前記と同じ)
で表わされる2−アルコキシカルボニルシクロペンタノンに水素添加させることによって得られる。
本発明に用いられる他の出発化合物は、シクロペンタジエンであり、Org.Syntheses Coll.Vol.,4,238(1963)に記載の方法にしたがって、市販のジシクロペンタジエンを熱分解させ、蒸留させることによって得られる。本明細書で後述するように、ジシクロペンタジエンは、特別の反応条件下で、出発物質として使用することができる。
本発明において、シクロペンタジエンの量は、副反応を抑制する観点から、式(II)で表わされるシクロペンテニルカルボン酸エステル1モルに対して、1〜10モル、好ましくは1〜2モルである。
本発明において、溶媒は必ずしも必須でなく、溶媒の不存在下で反応を行なうことができる。溶媒を用いる場合には、該溶媒の種類には特に限定がなく、種々の有機溶媒の存在下で反応が進行する。有用な溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの極性溶媒;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの非極性溶媒があげられる。反応速度の観点から、極性溶媒の使用が好ましい。前記溶媒の使用量は、特に限定がないが、式(II)で表わされる原料のシクロペンテニルカルボン酸エステルに対して0.5〜10重量倍であることが好ましく、経済性の点から0.5〜3重量倍であることが好ましい。この反応を採用した場合には、特に低温、中でも特に−78〜50℃において、一般的なディールス−アルダー反応に見られるような触媒効果が発現される。触媒としては、一般的にディールス−アルダー反応に用いられる触媒、例えば、TiCl4、LiCl4、Ti(OR')4〔式中、R’は2〜4個の炭素原子を有するアルキル基を示す〕、AlCl3、SnCl4、ZnCl2、ZnBr2、Sc(OTf)3、Y(OTf)3などのルイス酸;活性白土、陽イオン交換樹脂、Nafione−Hなどの固体酸やLiX〔式中、XはCl、BrまたはIを示す〕、Li2CO3、LiClO4などのリチウム塩があげられる。これらの中では、ルイス酸が好ましく、より好ましくはTiCl4、AlCl3、SnCl4、Sc(OTf)3などである。
触媒としてルイス酸を用いる場合、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのルイス酸を失活させない溶媒を用いることが好ましい。使用される触媒の量は、式(II)で表わされる原料のシクロペンテニルカルボン酸エステル1モルに対して、通常、0.01〜2モル、好ましくは0.05〜1モルである。
この反応は、採用される反応条件にもよるが、−78〜250℃の広い温度範囲で行なうことができる。
触媒が存在しない場合、反応速度の観点から、100℃以上の温度で行なうことが好ましい。また、反応溶液中で、ジシクロペンタジエンの熱分解によってシクロペンタジエンを発生させながら反応を行なう観点から、反応を150℃以上の温度で行なうことが望ましい。さらに、反応の選択性の観点から、反応を150〜220℃の範囲の温度で行なうことが好ましい。この場合、生成した低沸点のシクロペンタジエンの揮散を防ぐために、該反応を密閉容器内で行なうことが好ましい。
触媒を用いる場合は、副反応の抑制の点から、50℃以下の温度で反応を行なうことが好ましく、反応速度およびシクロペンタジエンの重合の抑制の観点から、−20〜25℃で反応を行なうことがより好ましい。
本発明においては、シクロペンタジエンの代わりにジシクロペンタジエンを用いて反応を行なってもよい。該ジシクロペンタジエンを用いる場合、シクロペンタジエンは、反応系内でジシクロペンタジエンの熱分解によって製造することができる。この場合、該反応は、シクロペンタジエンが用いられた場合と同様に反応が進行する。また、シクロペンタジエンを用いた反応に用いられるのと同様の溶媒および酸触媒を用いることができる。この態様は、ジシクロペンタジエンからシクロペンタジエンをあらかじめ製造する必要がないので、生産性の点で工業的に有利である。
本発明においては、シクロペンタジエンの重合や、式(I)で表わされるカルボン酸エステルとシクロペンタジエンとの反応などの副反応を抑制する点から、シクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンを式(II)で表わされるシクロペンテニルカルボン酸エステルを含有する出発物質に、滴下して添加しながら、反応を行なうことが好ましい。滴下速度は、1時間あたり式(II)で表わされるシクロペンテニルカルボン酸エステル1モルに対して、0.05〜2モル、好ましくは0.2〜0.5モルであることが望ましい。
前記反応によって得られる式(I)で表わされるカルボン酸エステルは、endo−体とexo−体との混合物である。所望の生成物は、従来の方法で単離することができる。例えば、ルイス酸が存在する場合には、該反応は、塩酸水の添加によって停止させることができ、そののちに、該反応混合物は、エーテルで抽出する。エーテル層を、ひき続いて炭酸水素ナトリウム水、食塩水で順次洗浄し、乾燥させる。その後、溶媒を留去することにより、油状物が得られる。目的化合物は、カラムクロマトグラフィーによって単離することができる。endo−体とexo−体の混合物は、直接、式(III):
Figure 0003828154
(式中、Rは、前記と同じ)
で表わされるカルボン酸エステルに還元することができ、生成した還元された混合物は、香料素材として用いることができる。endo−体とexo−体とを分離する必要がある場合には、精密蒸留によってたがいに分離することができる。
式(I)で表わされるカルボン酸エステルを還元させることにより、式(III)で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エステルを製造する方法は、炭素−炭素二重結合の還元に用いられる方法であれば限定されない。例えば、触媒として、白金黒、ラネーニッケルまたはPd/Cを用い、接触還元などの化学的方法によって炭素−炭素二重結合を水素化させる方法が好ましい。
本発明によれば、式(III)で表わされるカルボン酸エステルの前駆体である、式(I)で表わされる新規なカルボン酸エステルを、効率よく製造することができ、したがって式(III)で表わされるカルボン酸エステルの製造は、従来のコッホカルボキシル化反応を用いる方法比べて、操作性および生産性の点で著しく改善される。さらに、式(I)で表わされるカルボン酸エステルは、それ自体で香料として用いることができる。
式(I)で表わされるカルボン酸エステルは、優れた香気を有し、香料素材として有用である。この化合物の香気は、大まかには「果実様−木様」の香りに分類される。式(I)で表わされるカルボン酸エステルには、以下に示すように、2種類の異性体がある。
Figure 0003828154
異性体(A)および(B)は、若干異なった香気を有する。より詳細には、異性体(A)は、「木様−果実様−スパイス様−ハーブ様」の香気を有し、異性体(B)は、「果実様−フローラル様」の香気を有する。
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、これら実施例は限定的には解釈されない。
実施例1
窒素雰囲気下、20℃で、1.35gのTiCl4を含むジクロロメタン溶液3mlを攪拌しながら、該溶液にシクロペンテニルカルボン酸エチル1gを滴下した。30分間攪拌した後、シクロペンタジエン2.85gを4時間かけて滴下した。そのうち、5%−HCl水溶液で反応を停止し、エーテルで抽出した。エーテル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、カラムクロマトグラフィーにより反応生成物を単離し、トリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エチル0.78gを得た(未反応のシクロペンテニルカルボン酸エチル0.45gを回収)。収率はシクロペンテニルカルボン酸エチルに対して54.1%で、転化率は55.0%であった。endo−体/exo−体の比は38/62であった。その物性は、以下のとおりである。
1H−NMR(CDCl3溶媒、TMS内部標準)δ(ppm):
endo−体:1.10(1H,m),1.23(3H,t,J=7Hz),1.37〜1.96(7H,m),2.45(2H,br),2.83(1H,br),4.06(2H,q,J=7Hz),6.07(1H,d−d,J=5Hz,3Hz),6.18(1H,d−d,J=5Hz,3Hz)、
exo−体:1.10(1H,m),1.26(3H,t,J=7Hz),1.35(1H,m),1.59〜1.83(6H,m),2.77(1H,br),3.08(1H,m),3.14(1H,br),4.16(2H,q,J=7Hz),6.18(1H,d−d,J=5Hz,3Hz),6.25(1H,d−d,J=5Hz,3Hz)。
IR(液膜)ν(cm-1):2964,1728,1448,1302,1248,1228,1176,1032,718。
MS:207(M++1),141
実施例2
触媒としてTiCl41.35gの代わりにAlCl3950mgを用いた他は、実施例1と同様の操作を行なった。シクロペンテニルカルボン酸エチル1gにシクロペンタジエン2.85gを4時間かけて滴下しながら添加し、トリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エチル0.75gを得た。収率はシクロペンテニルカルボン酸エチルに対して50.5%で、転化率は52.0%であった。endo−体/exo−体の比は40/60であった。
実施例3
オートクレーブに、シクロペンテニルカルボン酸エチル32gを仕込み、200℃に加熱攪拌し、その中に、ジシクロペンタジエン47gを4時間かけて滴下した。そののち、反応混合物を室温まで冷却した。
反応混合物を蒸留し、トリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステル18.2gを単離した。収率はシクロペンテニルカルボン酸エチルに対して39.1%で、転化率は56.0%、であった。endo−体/exo−体の比は37/63であった。
実施例4
溶媒として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン32gを用いた以外は、実施例3と同様の操作を行なった。生成した反応混合物のサンプルを次に冷却し、以下の条件下で、ガスクロマトグラフィーに供した。
カラム:U1tra−1(架橋メチルシロキサン)25mm×0.2mm×0.33μm
オーブン:5℃/分で100℃(0分)〜280℃(5分)
インジェクション:1μ1スプリットモード(スプリット比100:1)280℃
検出器:FID(280℃)
ガスクロマトグラフィーの結果を第1図に示す。
第1図に示されたチャートから明らかなように、前記化合物は、トリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エチルを高含量で含有する。
第1図に示されたチャートにおいて、記号「a」〜「1」は、以下のことを示す。
Figure 0003828154
Figure 0003828154
収率はシクロペンテニルカルボン酸エチルに対して35.8%で、転化率は42.2%であった。endo−体/exo−体の比は40/60であった。
実施例5
実施例1における操作と同様にして得られたトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エチル13.1gに、5%−Pd/C(50%含水品)1.3gを添加した。生成した混合物を5kg/cm2の水素加圧下で、50℃で5時間攪拌した。触媒を濾別した後、濾液を蒸留することにより、トリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エチル12.3gを得た(収率93.0%)。
かくして得られた生成物は、果実様および木様の香気を有し、優れた香料素材であった。
産業上の利用可能性
本発明の製造法は、工業的に有利に、トリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エステルを提供する。また、本発明は、トリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エステルの製造中間体として好適に使用される新規な化合物である、トリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステル、および該化合物を工業的に有利に製造する方法を提供する。

Claims (5)

  1. 式(I):
    Figure 0003828154
    (式中、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
    で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステル。
  2. 式(II):
    Figure 0003828154
    (式中、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
    で表わされるシクロペンテニルカルボン酸エステルと、シクロペンタジエンとを反応させる工程を有する、式(I):
    Figure 0003828154
    (式中、Rは、前記と同じ)
    で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルの製造法。
  3. 反応溶液中でジシクロペンタジエンの熱分解により、シクロペンタジエンを製造する請求項2記載の製造法。
  4. 式(I):
    Figure 0003828154
    (式中、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
    で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルの二重結合を還元する工程を有する、式(III):
    Figure 0003828154
    (式中、Rは、前記と同じ)
    で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカン−2−カルボン酸エステルの製造法。
  5. 式(I):
    Figure 0003828154
    (式中、Rは、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
    で表わされるトリシクロ〔5.2.1.02.6〕デカ−8−エン−2−カルボン酸エステルからなる香料。
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