JP2005097158A - 含フッ素有機化合物の製造方法 - Google Patents

含フッ素有機化合物の製造方法 Download PDF

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俊彦 藤間
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Abstract

【課題】ジェミナルジフルオロ構造を有する高純度の含フッ素有機化合物を、複雑な分離操作をすることなしに効率的に製造する。
【解決手段】下式(1)で表される化合物と下式(2)で表される化合物との混合物において、エステル部位をカルボン酸へ変換する反応を行い、下式(3)で表される化合物と下式(4)で表される化合物との混合物を得て、次に該混合物において結晶化を行う。ただし、Rは炭素数1〜20のアルキル基、1個以上のアリール基で置換されたアルキル基、1個以上の1価複素環基で置換されたアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基、1個以上の置換基で置換されたアリール基、または炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。
【化1】
Figure 2005097158

【選択図】なし

Description

本発明は、1つの炭素原子に2つのフッ素原子が結合した(−CF)構造、すなわちジェミナルジフルオロ構造を有する含フッ素有機化合物を効率的に製造し、高純度の該化合物を得る方法に関する。
化合物中に炭素原子に結合したフッ素原子を導入する方法としては、炭素原子に結合した塩素原子に、フッ素アニオンを発生するフッ素化剤(たとえば、KF、HFなど)を作用させることにより、塩素原子を求核的にフッ素原子に置換する方法が知られている。そして、該方法を用いてジェミナルジフルオロ構造を有する含フッ素有機化合物を得る方法としては、対応する部分にジェミナルジクロロ構造(−CCl構造)を有する化合物を原料として、これをフッ素化する方法、またはDiels−Alder反応で得られたクロロオレフィン類をHFでフッ素化する方法が知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
米国特許第4792618号明細書
これらの方法により、4,4−ジェミナルジフルオロシクロヘキサンカルボン酸またはそのエステル体を合成しようとするときには、フッ素化の基質として4,4−ジェミナルジクロロシクロヘキサンカルボン酸またはそのエステル体、もしくは4−クロロ−3−シクロヘキセンカルボン酸またはそのエステル体を用いうるが、これらの基質は塩素原子の結合位置の異なる位置異性体(たとえば、3,3−ジェミナルジクロロシクロヘキサンカルボン酸またはそのエステル体、もしくは3−クロロ−3−シクロヘキセンカルボン酸またはそのエステル体)を含むことがしばしばある。
また、4,4−ジェミナルジフルオロシクロヘキサンカルボン酸またはそのエステル体は、香料、医薬品、農薬、および化学薬品等として、またはこれらの中間体として有用な化合物である。よって、高純度の4,4−ジェミナルジフルオロシクロヘキサンカルボン酸またはそのエステル体を効率的に製造する技術が望まれていた。
そこで本発明者らはこれらの位置異性体をフッ素化前に種々の方法で分離することや、フッ素化後に蒸留等の方法により分離することなどを試みた。さらに、フッ素化後に他の化学変換を行った後に分離する方法等を試みたが、いずれの方法によっても、目的とする4,4−ジェミナルジフルオロシクロヘキサンカルボン酸またはそのエステル体を高純度でかつ工業的に有利な方法で得ることはできなかった。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、複雑な分離操作をすることなしに、高純度のジェミナルジフルオロ構造を有する含フッ素有機化合物を製造する方法を見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の発明を提供する。
<1>下式(1)で表される化合物と下式(2)で表される化合物との混合物において、エステル部位をカルボン酸へ変換する反応を行い、下式(3)で表される化合物と下式(4)で表される化合物との混合物を得て、次に該混合物において結晶化を行うことにより、下式(3)で表される化合物の結晶を得ることを特徴とする下式(3)で表される含フッ素有機化合物の製造方法。ただし、Rは炭素数1〜20のアルキル基、1個以上のアリール基で置換されたアルキル基、1個以上の1価複素環基で置換されたアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基、1個以上の置換基で置換されたアリール基、または炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。
Figure 2005097158
<2><1>に記載の方法で得た式(3)で表される化合物と式ROHで表される可合物とをエステル化反応させることを特徴とする下式(5)で表される化合物の製造方法。ただし、Rは炭素数1〜20のアルキル基、1個以上のアリール基で置換されたアルキル基、1個以上の1価複素環基で置換されたアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基、1個以上の置換基で置換されたアリール基、または炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。
Figure 2005097158
<3>RおよびRが、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である<1>または<2>に記載の製造方法。
本発明の製造方法によれば、ジェミナルジフルオロ構造を有する高純度の含フッ素有機化合物を、複雑な分離操作をすることなしに効率的に製造することができる。
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)のようにも記す。他の式で表される化合物についても同様に記す。また本明細書においては、圧力は絶対圧で記載する。
本明細書におけるR1およびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、1個以上のアリール基で置換されたアルキル基、1個以上の1価複素環基で置換されたアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基、1個以上の置換基で置換されたアリール基、または炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。
炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、2−プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基がとりわけ好ましい。1個以上のアリール基で置換されたアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、トリチル基が好ましい。1個以上の1価複素環基で置換されたアルキル基としては、2−ピリジルメチル基が好ましい。炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。アリール基としては、フェニル基が好ましい。1個以上の置換基で置換されたアリール基としては、3−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメトキシフェニル基、2−ニトロフェニル基、4−アミノフェニル基が好ましい。炭素数1〜20のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基が好ましい。
本発明における化合物(1)と化合物(2)との混合物は、公知の方法(たとえば、米国特許第4792618号明細書に記載の方法等)によって入手できる。化合物(1)と化合物(2)の割合は特に限定されず、化合物(1)と化合物(2)の総量に対する化合物(1)の割合は、50モル%以上が好ましく、50〜99モル%以上が特に好ましく、70〜99モル%以上がとりわけ好ましい。化合物(1)と化合物(2)はフッ素原子の置換位置のみが異なる位置異性体である。化合物(1)と化合物(2)は化学的、物理的性質が類似するため、これらを分離することは困難であり、特に工業的製造においては有利ではない。
そこで、本発明の製造方法においては、化合物(1)と化合物(2)との混合物をそのまま用いて、エステル部位をカルボン酸へ変換する反応を行う(以下、変換反応と略記する。)。変換反応は加水分解反応、または水素添加反応によって実施するのが好ましい。
加水分解反応を行う場合は、塩基性条件下、または酸性条件下で反応を実施するのが好ましい。塩基性条件下で加水分解反応を行う場合の塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、および水酸化リチウム等の無機塩基が挙げられ、経済性や溶解度の点から、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いるのが好ましい。これらの無機塩基は、1〜60質量%の水溶液として用いるのが好ましい。酸性条件下で加水分解反応を行う場合の酸としては、塩酸または硫酸が好ましい。これらの酸は1〜70質量%の水溶液として用いるのが好ましい。
加水分解反応を塩基性条件下で行う場合は、反応系のpHは9以上に調整するのが好ましく、酸性条件下で行う場合は、反応系のpHは2以下に調整するのが好ましい。加水分解反応においては、後述する溶媒の種類によって、反応系が1相になる場合と2相になる場合とがある。反応系が1相になる場合は、反応系全体のpHが前記の範囲になるように調整し、反応系が2相になる場合は、水および水溶性の溶媒で構成される相のpHが前記の範囲になるように調整するのが好ましい。
加水分解反応は溶媒の存在下で行っても、不存在下で行ってもよい。溶媒の存在下で加水分解反応を行う場合の溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;トルエン等の炭化水素系溶媒;およびこれらの混合溶媒が用いられる。溶媒を用いる場合の量は、化合物(1)と化合物(2)との総量1gあたり、0.1〜1000mLが好ましく、特には1〜100mLが好ましい。
加水分解反応の反応温度は、操作性等の面から−50〜+250℃が好ましく、特には0℃〜溶媒還流温度の範囲が好ましい。反応時間は通常0.1〜100時間が好ましく、特には0.5〜50時間が好ましい。反応の圧力は反応温度により適宜変更され、通常は大気圧付近の圧力が好ましい。
変換反応を水素添加反応によって行う場合には、触媒の存在下に行うのが好ましい。触媒としては、パラジウム担持活性炭、白金担持活性炭、スポンジニッケル、またはスポンジコバルトを用いるのが好ましく、パラジウム担持活性炭、または白金担持活性炭が特に好ましい。触媒の使用量は化合物(1)と化合物(2)との混合物の総量に対して、通常は0.01〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%が特に好ましい。
水素添加反応は溶媒の存在下に行ってもよく、無溶媒で行ってもよい。溶媒の存在下で反応を行う場合の溶媒は、メタノール、エタノール、およびイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒から選ばれる溶媒が好ましい。溶媒を用いる場合の量は、化合物(1)と化合物(2)との総量1gあたり、0.1〜1000mLが好ましく、特には1〜100mLが好ましい。反応温度は、操作性等の面から通常は−50〜+250℃が好ましく、特には0℃〜+100℃が好ましい。反応時間は0.1〜100時間が好ましく、特には0.5〜50時間が好ましい。反応の圧力は反応温度により適宜変更され、通常は大気圧〜5.0MPa付近の圧力が好ましい。
化合物(1)と化合物(2)との混合物の変換反応によって、化合物(3)と化合物(4)との混合物を含む反応粗生成物が生成する。化合物(1)からは化合物(3)が生成し、化合物(2)からは化合物(4)が生成する。化合物(3)と化合物(4)との混合物における各化合物の割合は、化合物(1)と化合物(2)との混合物における各化合物の割合を通常の場合、ほぼ保持する。
化合物(3)と化合物(4)との混合物を含む反応粗生成物は、必要に応じて後処理を行うのが好ましい。後処理においては、化合物(3)と化合物(4)を分離する必要はなく、化合物(3)および化合物(4)以外の化合物を除去するのが好ましい。後処理の方法としては、抽出、洗浄程度の方法であってもよく、または結晶化、クロマトグラフィー、蒸留等の方法であってもよい。
本発明においては、化合物(3)と化合物(4)との混合物において結晶化を行い、高純度の化合物(3)を得る。結晶化においては、高純度の化合物(3)が得られること、結晶化の操作がしやすいことから、溶媒を用いて結晶化を行うのが好ましい。
結晶化の溶媒としては、化合物(3)と化合物(4)との混合物に対して不活性な溶媒から適宜選択され、溶媒は1種または2種以上を用いうる。溶媒の例としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、およびn−オクタン等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、およびイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンおよびHCFC−225等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、および1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒;ジクロロベンゼン、クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジメチルスルホキシド;水等が挙げられる。
これらのうち溶媒としては、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、イソプロピルアルコール、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、メチルエチルケトン、および水から選ばれる1種または2種以上の溶媒が好ましい。
溶媒を用いる場合の量は、化合物(3)と化合物(4)との総量1gあたり、0.1〜1000mLが好ましく、特には1〜100mLが好ましい。
結晶化の方法は、周知または公知の方法が採用でき、本発明においては下記のいずれかの方法で行うのが好ましい。
(方法1);化合物(3)と化合物(4)との混合物を加温しながら溶媒に溶解し、つぎに所定の温度に冷却することにより結晶を析出させる方法。
(方法2);化合物(3)と化合物(4)との混合物を、良溶媒に溶解または懸濁し、つぎに貧溶媒を滴下していくことにより結晶を析出させる方法。
化合物(3)と化合物(4)との混合物を溶媒に溶解させた後、タール状物質や微小な異物を除く目的で、ろ過等の操作を適宜加えることもできる。
(方法1)によって結晶化を行う場合の溶媒、もしくは(方法2)によって結晶化を行う場合の良溶媒および貧溶媒は、各々1種の溶媒を単独で用いてもよく、2種以上の溶媒を混合した混合溶媒を用いてもよい。
結晶化においては、結晶の析出速度を大きくする等の目的で種晶を加えてもよい。また、(方法2)においては、結晶の析出が確認されたのちに所定の温度まで冷却することによって、結晶析出を促進させることもできる。析出した結晶は、ろ過または遠心分離等の方法で母液と分離し、溶媒で洗浄したのちに乾燥するのが好ましい。
本発明では、高純度の化合物(3)が得られることから、(方法2)によって結晶化を行うのが好ましい。該方法における良溶媒としてはエステル系溶媒が好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。貧溶媒としては、炭化水素系溶媒が好ましく、n−ヘキサンおよび/またはシクロヘキサンが特に好ましい。
結晶化を行う際の温度は、操作性等の面から通常は−50〜+250℃が好ましく、特には0〜+100℃が好ましい。該温度は一定である必要はなく、結晶化の進行に合わせて適宜調節するのが好ましい。また、結晶化に要する時間は通常0.1〜150時間が好ましく、特には0.5〜50時間が好ましい。結晶化時の圧力は反応温度により適宜変更され、0.01MPa〜10.0MPaが好ましく、0.1MPa〜1.0MPaが特に好ましく、とりわけ大気圧付近の圧力が好ましい。
本発明の製造方法においては、化合物(1)と化合物(2)との混合物において、エステル部位をカルボン酸に変換した後に結晶化を行うことにより、化合物(1)と化合物(2)の混合物において化合物(1)を分離した後に変換反応を行うよりも高度に精製された化合物(3)を得ることができる。よって、本発明の製造方法ではカルボン酸への変換の後に結晶化を行うことが必須である。
さらに、本発明は、前記の製造方法によって得た化合物(3)と、式ROHで表される化合物とをエステル化反応させることによって化合物(5)を製造する方法を提供する。エステル化の方法は特に限定されず、公知または周知の方法を採用できる。また、前記の方法によって得た化合物(3)は高純度であるため、化合物(5)も高純度のものとして得ることができる。
エステル化反応により、化合物(5)を含む反応粗生成物が得られる。反応粗生成物は、必要に応じて後処理を行うのが好ましい。後処理の方法としては、抽出、洗浄、クロマトグラフィー、および蒸留等の方法が挙げられ、これらの中から選ばれる1つ、または2つ以上の方法の組み合わせによって適宜実施できる。
本発明の製造方法では、たとえば次のようにして目的のジェミナルジフルオロ構造を有する化合物(3)および化合物(5)を得ることができる。すなわち、化合物(1a)および化合物(2a)の混合物のエステル部位を加水分解して化合物(3)および化合物(4)の混合物を得て、つぎに該混合物を結晶化させることにより、カルボン酸(3)の結晶を得る。得られたカルボン酸(3)はエチルエステル化することによって、高純度の化合物(5a)が得られる。
Figure 2005097158
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されない。実施例においては、ガスクロマトグラフィーはGCと記し、GC分析結果は面積%を示す。また、1HNMRおよび19FNMRは下記の条件で測定した。
1HNMRの共鳴周波数は400MHz、溶媒はCDCl、標準物質はTMSとした。
19FNMRの共鳴周波数は376MHz、溶媒はCDCl、標準物質はCClFとした。
[参考例]ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルの位置異性体混合物の合成例
内容積2LのハステロイC製オートクレーブに、クロロシクロヘキセンカルボン酸エチルの位置異性体混合物(4−クロロ−3−シクロヘキセンカルボン酸エチルと3−クロロ−3−シクロヘキセンカルボン酸エチルとの92:8混合物。75g)を仕込み、0℃に冷却した後、真空ポンプを用いてオートクレーブ内を減圧にした。減圧下で無水フッ化水素(157g)を導入し、40℃で撹拌した(撹拌回転数は200rpm。)。20時間撹拌した後、25℃に戻し、内圧が大気圧に等しくなるまでオートクレーブのニードル弁を開放して、残存したフッ化水素を追い出した。オートクレーブ内の内容物を、氷で冷やした炭酸水素カリウム水溶液に加えた。つぎに酢酸エチルを加えて抽出を行い、酢酸エチル層を分離した後に、酢酸エチル層を水で洗浄し、ついで無水硫酸マグネシウムで乾燥し、エバポレータで濃縮して、無色透明油状物(70g)を得た。油状物を減圧蒸留し、ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルの位置異性体混合物(63g、GC分析の結果から、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルを67%、3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルを6%を含む。)を得た。
[例1]ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の位置異性体の混合物の合成例
2Lのフラスコに、参考例と同様に合成して得られたジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルの位置異性体混合物(4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルと3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルとの92:8混合物。100g)を仕込み、そこにエタノール(500mL)、および水(500mL)を加え100℃に加温した。大気圧下で撹拌しながら8時間反応させた後、水酸化ナトリウム水溶液を加え、反応系を塩基性にした後、エタノールを留去した。ここにヘキサン(500mL)を加え、撹拌した後にヘキサン層を分離した。つぎに水層に塩酸を加えて酸性にし、析出物をろ取した。20℃、1.33×10−3MPaで乾燥することによって、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸と3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の位置異性体混合物(85g)得た。GCで分析した結果、カルボン酸の異性体比は、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸:3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸=97:3であった。
[例2]4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の結晶化の例(その1)
100mLのフラスコに、例1で得た4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸と3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の位置異性体混合物(10g)を仕込んだ。そこに酢酸エチル(7.6mL)を加え30分撹拌した。つぎに、室温でシクロヘキサンとn−ヘキサンの3:1(容量比)混合溶媒(以下、A液という。)(3.8mL)をゆっくり加え10分撹拌した。さらにA液(26.6mL)をゆっくり加え、室温で2時間撹拌し、析出した結晶をろ取した。つぎにろ取した結晶をn−ヘキサン(5mL)で2回洗浄し、20℃、1.33×10−3MPaで乾燥することによって、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸(5.0g)を得た(収率50%)。GCで分析した結果、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の純度は99.9%であり、3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸は0.1%含まれていた。
4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸のNMRスペクトル
1HNMR:δ(ppm)1.70〜1.95(4H,m),1.95〜2.20(4H,m)、2.47(1H,m)。
19FNMR:δ(ppm)−95.2(d,J=238Hz),−100.0(d,J=235Hz)。
[例3]4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の結晶化の例(その2)
100mLのフラスコに、例1で得た4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸と3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の位置異性体混合物(10g)を仕込んだ。そこに酢酸エチル(4.0mL)を加え30分撹拌した。つぎに、室温でシクロヘキサンとn−ヘキサンの1:1(容量比)混合溶媒(以下、B液という。)(40ml)を、1回の添加量が約4mlになるように10回にわけてゆっくり加えた。室温で2時間撹拌し、析出した結晶をろ取した。ろ取した結晶をn−ヘキサン(5ml)で2回洗浄し、20℃、1.33×10−3MPaで乾燥することによって4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸(5.0g)を得た(収率50%)。GCで分析した結果、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の純度は99.8%であり、3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸は0.2%含まれていた。
[例4]4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の結晶化の例(その3)
200mLのフラスコに、例1で得た4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸と3,3-ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の位置異性体混合物(10g)を仕込んだ。そこにシクロヘキサン(100mL)を加え、撹拌しながら70℃に加温した。混合物が溶解したことを確認したのちに、室温まで放冷した。室温で2時間撹拌し、析出した結晶をろ取した。得られた結晶をシクロヘキサン(5mL)で2回洗浄し、20℃、1.33×10−3MPaで乾燥することによって、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸(5.6g)を得た(収率56%)。GCで分析した結果、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の純度は99.6%であり、3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸は0.4%含まれていた。
[例5]4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の結晶化の例(その4)
200mLのフラスコに、例1で得た4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸と3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の位置異性体混合物(10g)を仕込んだ。そこにトルエン(10mL)を加えて70℃に加熱し、30分間撹拌した。70℃でn−ヘキサン(90mL)をゆっくり加えた後、室温まで放冷し、結晶を析出させた。析出した結晶をろ取し、例3と同様に洗浄および乾燥を行い、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸(6.1g)を得た(収率61%)。GCで分析した結果、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の純度は99.4%であり、3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸は0.5%含まれていた。
[例6]4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の結晶化の例(その5)
トルエン(10mL)をシクロヘキサン(20ml)に変更し、n−ヘキサンの使用量を80mlに変更する他は、例5と同様に結晶化を行い、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸(5.8g)を得た(収率58%)。GCで分析した結果、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の純度は99.6%であり、3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸は0.4%含まれていた。
[例7]4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の結晶化の例(その6)
トルエン(10mL)をアセトニトリル(10ml)に変更し、n−ヘキサン(50ml)を水(50ml)に変更する他は、例5と同様の操作を行って結晶を析出させた。析出した結晶をろ取したのちに、水(5ml)で2回洗浄し、20℃、1.33×10−3MPaで乾燥することによって、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸(5.2g)を得た(収率52%)。GCで分析した結果、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の純度は99.1%であり、3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸は0.9%含まれていた。
[例8]4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の結晶化の例(その7)
トルエン(10mL)を酢酸エチル(2ml)に変更し、n−ヘキサンの使用量を50mlに変更する他は、例5と同様に結晶化を行い、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸(6.7g)を得た(収率67%)。GCで分析した結果、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の純度は99.7%であり、3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸は0.3%含まれていた。
[例9]4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の結晶化の例(その8)
100mLのフラスコに、例1で得た4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸と3,3−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸の位置異性体混合物(10g)を仕込む。そこに酢酸エチル(5mL)を加えて室温で30分撹拌する。室温でシクロヘキサンとn−ヘキサンの4:1(容量比)混合溶媒(25ml)ゆっくり加え、結晶を析出させる。例3と同様に析出した結晶のろ取、洗浄および乾燥を行うことにより、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸を得る。
[例10]4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸のエステル化の例(その1)
ジムロート、内温計、滴下ロートおよび撹拌機を備えた100mlの4つ口フラスコに、窒素気流下で、トルエン(30ml)、および例2で得た4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸(3g)を仕込み、撹拌しながら10℃に冷却する。つぎに反応温度が10〜20℃になるように制御しながら、塩化チオニル(2.2g)を滴下し、1.5時間撹拌する。つぎに内温が0〜10℃になるように制御しながら、エタノール(2.5g)を滴下する。20℃で2時間撹拌したのち、反応液に水(15ml)を加える。トルエン層を分離し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)で洗浄し、ついで水(10ml)で洗浄する。トルエンを留去し、油状物を得る。油状物を蒸留することにより、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸エチルエステルを得る。
[例11]4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸のエステル化の例(その2)
エタノール(2.5g)をメタノール(1.8g)に変更する以外は、例10と同様にエステル化を行い、4,4−ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸メチルエステルを得る。
本発明の製造方法は、複雑な分離操作をすることなしに効率的にジェミナルジフルオロ構造を有する高純度な含フッ素有機化合物を製造する方法を提供する。本発明の製造方法により得られる化合物(3)および化合物(5)は、香料、医薬品、農薬、および化学薬品等として、またはこれらの中間体として有用な化合物である。本発明の製造方法は、特別な試薬や装置を必要としない方法であることから、工業的に有用な方法である。

Claims (3)

  1. 下式(1)で表される化合物と下式(2)で表される化合物との混合物において、エステル部位をカルボン酸へ変換する反応を行い、下式(3)で表される化合物と下式(4)で表される化合物との混合物を得て、次に該混合物において結晶化を行うことにより、下式(3)で表される化合物の結晶を得ることを特徴とする下式(3)で表される含フッ素有機化合物の製造方法。ただし、Rは炭素数1〜20のアルキル基、1個以上のアリール基で置換されたアルキル基、1個以上の1価複素環基で置換されたアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基、1個以上の置換基で置換されたアリール基、または炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。
    Figure 2005097158
  2. 請求項1に記載の方法で得た式(3)で表される化合物と式ROHで表される化合物とをエステル化反応させることを特徴とする下式(5)で表される化合物の製造方法。ただし、Rは炭素数1〜20のアルキル基、1個以上のアリール基で置換されたアルキル基、1個以上の1価複素環基で置換されたアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アリール基、1個以上の置換基で置換されたアリール基、または炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。
    Figure 2005097158
  3. およびRが、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である請求項1または2に記載の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013506658A (ja) * 2009-09-30 2013-02-28 ウィズケム カンパニー・リミテッド 1,4−二置換シクロヘキサン誘導体の製造方法
JP2017105827A (ja) * 2011-08-19 2017-06-15 ザ・トラスティーズ・オブ・プリンストン・ユニバーシティThe Trustees Of Princeton University C−ハロゲン結合形成
JP2020026413A (ja) * 2018-08-15 2020-02-20 富士フイルム株式会社 4−ハロシクロヘキサン−1−カルボン酸の精製方法、および、4−ハロシクロヘキサン−1−カルボン酸を含む生成物の製造方法

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