JP4651155B2 - 光学活性ムスコンの製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、香料として有用な光学活性ムスコンを高収率、高純度に製造できる新規な製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ムスコン(3−メチルシクロペンタデカノン)は、その光学異性体である(R)−(−)−体が天然麝香の主要香気成分として存在し、特に、この(R)−(−)−体は、(S)−(+)−体に比べて、より強く、拡散性が優れたボリューム感のある香気を有し、重要なムスク系合成香料である。
【0003】
ムスコンの合成法としてはこれまで種々の提案がなされ、例えば、ドデカン−1,12−ジアールを出発原料とする合成法(特開昭55−111438号公報)、ノナジエン酸エステルからの合成法(Tetrahedron Lett.,2257(1979))、シクロドデセンを出発原料とする合成法(J.Org.Chem.,52,3798-3806(1987))などが提案されている。
【0004】
一方、光学活性ムスコンの合成法としては、例えば、3−メチル−2−シクロペンタデセン−1−オンにルテニウム−光学活性ホスフィン錯体を触媒として不斉水素化する方法(特開平6−192161号公報)、R体またはS体のシトロネラールと、ハロゲン化不飽和炭化水素を反応する方法(特開2000−26361号公報)などが提案されている。しかしながら、上記の特開平6−192161号公報で提案されている光学活性ムスコンの合成法は、使用されている触媒が再利用可能であること、および高収率であるなど有効な合成法であるが、出発原料が高価であるなどの問題がある。また、上記の特開2000−26361号公報で提案されている合成法は、光学活性シトロネラールとハロゲン化不飽和炭化水素を反応させ、得られる11−ヒドロキシ−13,17−ジメチルオクタデカ−1,16−ジエン誘導体とし、オゾン酸化を行った後、閉環して製造されており必ずしも工業的に有利な合成法とは言い難い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は安価な原料を使用して、かつ高収率で、更に簡便な方法により、工業的に有利に光学活性ムスコンを製造する方法を提供することである。
【0006】
また、本発明の他の目的は、光学活性ムスコンの製造のために有用な中間体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、上記式(4)−1または上記式(4)−2で表される(R)−(−)−または(S)−(+)−3−メチル−6−ヘプテンニトリルを出発原料として9−デセン−1−マグネシウムハライドと反応し、閉環するという簡便な方法で、且つ高収率で光学活性ムスコンが得られることを見出し本発明を完成した。
【0008】
従って、本発明の1は下記式(4)−1
【0009】
【化11】
で表される(R)−(−)−3−メチル−6−ヘプテンニトリルを、有機溶媒中、9−デセン−1−マグネシウムハライド(C10H19MgX)とカップリング反応せしめて下記式(3)−1
【0010】
【化12】
で表される(R)−5−メチル−1,16−ヘプタデカジエン−7−オンを形成させ、これを閉環して下記式(2)−1
【0011】
【化13】
で表される(R)−3−メチル−6−シクロペンタデセン−1−オンとし、該式(2)−1の化合物のオレフィンを水素化してなることを特徴とする下記式(1)−1
【0012】
【化14】
で表される(R)−(−)−ムスコンの製法である。
【0013】
また本発明の2は下記式(4)−2
【0014】
【化15】
で表される(S)−(+)−3−メチル−6−ヘプテンニトリルを、有機溶媒中、9−デセン−1−マグネシウムハライド(C10H19MgX)とカップリング反応せしめて下記式(3)−2
【0015】
【化16】
で表される(S)−5−メチル−1,16−ヘプタデカジエン−7−オンを形成させ、これを閉環して下記式(2)−2
【0016】
【化17】
で表される(S)−3−メチル−6−シクロペンタデセン−1−オンとし、該式(2)−2の化合物のオレフィンを水素化してなることを特徴とする下記式(1)−2
【0017】
【化18】
で表される(S)−(+)−ムスコンの製法である。
【0018】
上記式(4)−1または上記式(4)−2で表される(R)−(−)−または(S)−(+)−3−メチル−6−ヘプテンニトリルは本発明で使用される有用な中間体である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の製法に従って、式(4)−1の化合物から式(1)−1の化合物を合成する態様を反応行程[以下、(A)製法と称す]で示すと、以下の如くになる。
(A)製法
【0020】
【化19】
また、本発明の製法に従って、式(4)−2の化合物から式(1)−2の化合物を合成する態様を反応行程[以下、(B)製法と称す]で示すと、以下の如くとなる。
(B)製法
【0021】
【化20】
本発明の光学活性ムスコンの製法は上記の(A)製法および(B)製法に従って合成することができる。本発明の出発原料である式(4)−1の化合物および式(4)−2の化合物の製法は、特に限定されないが、例えば、式(4)−1の化合物は下記式(9)−1の化合物から容易に合成することができる。式(9)−1の化合物から式(4)−1の化合物を合成する態様を反応行程[以下、(C)製法と称す]で示すと、以下の如くとなる。
(C)製法
【0022】
【化21】
[式中、Tsはトシル基、THPはテトラヒドロピラニル基、DMSOはジメチルスルホキシドを示す]
また例えば、式(4)−2の化合物は下記式(9)−2の化合物から容易に合成することができる。式(9)−2の化合物から式(4)−2の化合物を合成する態様を反応行程[以下、(D)製法と称す]で示すと、以下の如くとなる。
(D)製法
【0023】
【化22】
[式中、Ts、THP、DMSOは(C)製法の反応行程で示したものと同じ意味を示す]
また、式(4)−2の化合物は、式(9)−1の化合物からも容易に合成することができる。式(9)−1の化合物から式(4)−2の化合物を合成する態様を反応行程[以下、(E)製法と称す]で示すと、以下の如くとなる。
(E)製法
【0024】
【化23】
[式中、Ts、THP、DMSOは(C)製法の反応行程で示した物と同じ意味を示す]
以下、上記の(A)製法及び(B)製法に従い、各工程別に詳細に説明する。
(A)製法
(R)−5−メチル−1,16−ペンタデカジエン−7−オン[式(3)−1の化合物]の合成(第1行程)
式(4)−1の化合物を有機溶媒中カップリング触媒の存在下に9−デセン−1−マグネシウムハライドとカップリング反応させる第1行程により式(3)−1の化合物を容易に製造できる。
【0025】
この反応の反応温度および反応時間は、例えば、約−20℃〜約70℃程度、より好ましくは約20℃〜約40℃の温度範囲で、約1時間〜約2時間程度を採用することができる。使用する9−デセン−1−マグネシウムハライドのハロゲン原子の種類としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができ、その使用量は式(4)−1の化合物1モルに対して、例えば、約1モル以上、より好ましくは約1.2モル〜約2モル程度の範囲を例示できる。
【0026】
また、この反応に用いる有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エーテル、ジメトキシエタン、トルエンなどを示すことができる。これらの有機溶媒の使用量は、例えば、式(4)−1の化合物1重量部に対して約1〜約10重量部の範囲を例示できる。反応終了後、洗浄、抽出、乾燥、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの通常の分離手段を適宜に採用して高収率、高純度に式(3)−1の化合物が得られる。
【0027】
(R)−3−メチル−6−シクロペンタデセン−1−オン[式(2)−1の化合物]の合成(第2行程)
式(3)−1の化合物をオレフィンメタセシス反応による第2行程により式(2)−1の化合物を容易に製造できる。
【0028】
この反応の反応温度および反応時間は、例えば、約−10℃〜約100℃程度、より好ましくは約40℃〜約50℃の温度範囲で、約1時間〜約3時間程度を採用することができる。この反応で使用できる触媒としては、例えば、下記式(a)及び(b)
【0029】
【化24】
【化25】
[式中、Cyはシクロヘキシルを意味する]
で表される化合物を挙げることができ、その使用量は式(3)−1の化合物1モルに対して、約0.01モル〜約0.10モル程度を採用することができる。また、この反応に用いる有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エーテル、ジメトキシエタン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などを示すことができる。これらの有機溶媒の使用量は、例えば、式(3)−1の化合物1重量部に対して約10〜約1000重量部の範囲を例示できる。反応終了後、洗浄、抽出、乾燥、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの通常の分離手段を適宜に採用して高収率、高純度に式(2)−1の化合物が得られる。
【0030】
(R)−(−)−ムスコン[式(1)−1の化合物]の合成(第3行程)
式(2)−1の化合物のオレフィンを水素化する第3行程により式(1)−1の化合物を容易に製造できる。
【0031】
この反応の反応温度および反応時間は、例えば、約10℃〜約100℃程度、より好ましくは約30℃〜約50℃の温度範囲で、約1時間〜約3時間程度を採用することができる。この反応で使用できる触媒としては、例えば、Pd−C、Ru−C、Pt−C、Pd−Alumina、Ru−Aluminaを挙げることができ、その使用量は式(2)−1の化合物の重量を基準として、約2重量%〜約10重量%程度を採用することができる。また、この反応に用いる有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エーテル、ジメトキシエタン、トルエン、エタノール、ヘキサンなどを示すことができる。これらの有機溶媒の使用量は、例えば、式(2)−1の化合物1重量部に対して約1〜約10重量部の範囲を例示できる。反応終了後、洗浄、抽出、乾燥、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどの通常の分離手段を適宜に採用して高収率、高純度に式(1)−1の化合物が得られる。
【0032】
次に、式(1)−2の化合物の合成法について、(B)製法に従って説明する。
(B)製法
本発明のもう一方の目的化合物である式(1)−2で表される(S)−(+)−ムスコンは、鏡像関係にある式(1)−1で表される(R)−(−)−ムスコンの合成法に準じて製造することができる。
【0033】
即ち、前記反応行程図の(B)製法において、式(3)−2で表される(S)−5−メチル−1,16−ヘプタデカジエン−7−オンを合成する第4行程は、前記(A)製法の式(4)−1の化合物を式(4)−2の化合物に変える以外は(A)製法と同様に合成することができる。以下同様にして、式(2)−2の化合物を合成する第5行程は、該行程に対応する第2行程;式(1)−2の化合物を合成する第6行程は、該行程に対応する第3行程の製造方法と同じ操作を行うことにより、目的とする式(1)−2で表される(S)−(+)−ムスコンを高収率、高純度で合成することができる。
【0034】
【実施例】
以下に本発明について実施例、参考例を挙げて更に詳細に説明する。
【0035】
参考例1:(S)−(+)−3−テトラヒドロピラニロキシ−2−メチルプロピル p−トルエンスルフォネート[式(8)−1の化合物]及び(R)−(−)−3−テトラヒドロピラニロキシ−2−メチルプロピル p−トルエンスルフォネート[式(8)−2の化合物]の合成
200mlフラスコ中に(R)−3−テトラヒドロピラニロキシ−2−メチルプロパノール[式(9)−1の化合物]8.7g(50mmol)と乾燥ピリジン60mlを仕込み氷水冷する。p−TsCl12.4g(65mmol)を少しづつ加えて、さらに0℃で3時間攪拌する。反応液を冷蔵庫中で一夜放置し、氷水中に注ぎエーテル抽出する。有機層を水洗、硫酸銅水洗、重ソー水洗、ブライン洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。エーテル層をエバポレーターで濃縮し、得られた粗製15.6gをシリカゲルカラムクロマトにて精製し(n−ヘキサン:酢酸エチル=9:1)、式(8)−1の化合物15.1g(収率:92.0%)を得た。
【0036】
上記の参考例において、式(9)−1の化合物に変えて式(9)−2の(S)−3−テトラヒドロピラニロキシ−2−メチルプロパノールを用いた以外は、上記と同様にして式(8)−2の化合物を得た。
【0037】
参考例2:(R)−1−テトラヒドロピラニロキシ−2−メチル−5−ヘキセン[式(7)−1の化合物]及び(S)−1−テトラヒドロピラニロキシ−2−メチル−5−ヘキセン[式(7)−2の化合物]の合成
200mlフラスコ中に(S)−3−テトラヒドロピラニロキシ−2−メチルプロピル p−トルエンスルフオネート[式(8)−1の化合物]14.0g(43mmol)と乾燥テトラヒドロフラン40mlを仕込み、−78℃に冷却する。同温で1.5Nアリルマグネシウムクロリド/テトラヒドロフラン87ml(0.13mol)及び0.1NLi2CuCl4/テトラヒドロフラン4ml(0.4mmol)を加え、徐々に0℃まで昇温する。0℃で3時間攪拌後、さらに室温で16時間攪拌する。反応液を塩化アンモニウム水に注ぎ、エーテル抽出する。有機層をブライン洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。エーテル層をエバポレーターで濃縮し、得られた粗製10.5gをシリカゲルカラムクロマトにて精製し(n−ヘキサン:酢酸エチル=19:1)、式(7)−1の化合物7.7g(収率:82.6%)を得た。
【0038】
上記の参考例において、式(8)−1の化合物に変えて式(8)−2の(R)−3−テトラヒドロピラニロキシ−2−メチルプロピル p−トルエンスルフオネートを用いた以外は、上記と同様にして式(7)−2の化合物を得た。
【0039】
参考例3:(R)−2−メチル−5−ヘキセン−1−オール[式(6)−1の化合物]及び(S)−2−メチル−5−ヘキセン−1−オール[式(6)−2の化合物]の合成
200mlフラスコ中に(R)−1−テトラヒドロピラニロキシ−2−メチル−5−ヘキセン[式(7)−1の化合物]7.6g(38mmol)、メタノール80ml及びp−TsOH0.04g(0.2mmol)を仕込み、室温下に5時間攪拌する。反応液にソーダ灰100mgを加えてクエンチし、そのまま減圧下に蒸留することにより、式(6)−1の化合物3.4g(収率:78.8%)を得た。
【0040】
上記の参考例において、式(7)−1の化合物に変えて式(7)−2の(S)−1−テトラヒドロピラニロキシ−2−メチル−5−ヘキセンを用いた以外は、上記と同様にして式(6)−2の化合物を得た。
【0041】
参考例4:(R)−2−メチル−5−ヘキセン−1−イル p−トルエンスルフォネート[式(5)−1の化合物]及び(S)−2−メチル−5−ヘキセン−1−イル p−トルエンスルフォネート[式(5)−2の化合物]の合成
100mlフラスコ中に(R)−2−メチル−5−ヘキセン−1−オール[式(6)−1の化合物]3.3g(29mmol)と乾燥ピリジン40mlを仕込み、氷冷下にTsCl7.3g(1.3eq.)を加え、0〜5℃で攪拌し、冷蔵庫で一夜放置した。反応液を水にあけてエーテル抽出し、硫酸銅水洗浄、重曹水洗浄、ブライン洗浄、硫酸マグネシウム乾燥後、溶剤回収し、粗製の式(5)−1の化合物7.5gを得た(収率:96.9%)。
【0042】
上記の参考例において、式(6)−1の化合物に変えて式(6)−2の(S)−2−メチル−5−ヘキセン−1−オールを用いた以外は、上記と同様にして式(5)−2の化合物を得た。
【0043】
実施例1:(R)−(−)−3−メチル−6−ヘプテンニトリル[式(4)−1の化合物]及び(S)−(+)−3−メチル−6−ヘプテンニトリル[式(4)−2の化合物]の合成
100mlフラスコ中に(R)−2−メチル−5−ヘキセン−1−イル p−トルエンスルフォネート[式(5)−1の化合物]7.5g、DMSO20ml及びNaCN2.6g(1.6eq.)を仕込み、室温下に一夜放置した。水を加え、エーテル抽出、ブライン洗浄、溶剤回収後、クロマトにより精製し(エーテル:ヘキサン=1:9)、式(4)−1の化合物2.5gを得た(収率:74.4%)。
[α]20D=−8.15(c=0.9042,MeOH)
1H−NMR(400MHz,TMS,CDCL3)δ(ppm)5.78(1H,ddt,J=17.3Hz,10.3Hz,3.4Hz),5.04(1H,d,J=17.3Hz),4.99(1H,d,J=10.3Hz),2.36〜2.22(2H,m),2.15〜2.06(2H,m),1.93〜1.84(1H,m),1.56〜1.36(2H,m),1.08(3H,d,J=6.6Hz)
上記の実施例において、式(5)−1の化合物に変えて式(5)−2の(S)−2−メチル−5−ヘキセン−1−イル p−トルエンスルフォネートを用いた以外は、上記と同様にして式(4)−2の化合物を得た。
[α]20D=8.21(c=1.2422,MeOH)
1H−NMR(400MHz,TMS,CDCL3)δ(ppm)5.78(1H,ddt,J=17.3Hz,10.3Hz,3.4Hz),5.04(1H,d,J=17.3Hz),4.99(1H,d,J=10.3Hz),2.36〜2.22(2H,m),2.15〜2.06(2H,m),1.93〜1.84(1H,m),1.56〜1.36(2H,m),1.08(3H,d,J=6.6Hz)
実施例2:(R)−5−メチル−1,16−ヘプタデカジエン−7−オン[式(3)−1の化合物]および(S)−5−メチル−1,16−ヘプタデカジエン−7−オン[式(3)−2の化合物]の合成
30mlフラスコ中にマグネシウム1.2g(47mmol)及び乾燥エーテル5ml中に、9−デセニルブロマイド8.6g(39mmol)を滴下した。室温下に1時間攪拌後、(R)−(−)−3−メチル−6−ヘプテンニトリル[式(4)−1の化合物]2.5g(20mmol)を滴下し加え、室温下に2時間攪拌した。原料の消失を確認後、50%HCl20mlを冷却下に加え、室温に戻し2時間攪拌した。エーテル抽出、ソーダ灰水洗浄、ブライン洗浄後、溶剤回収し、クロマトにより精製し式(3)−1の化合物3.6gを得た(収率:70.5%)。
1H−NMR(400MHz,TMS,CDCL3)δ(ppm)5.79(2H,ddt,J=16.3Hz,6.8Hz,3.0Hz),5.01(2H,d,J=16.3Hz),4.93(2H,d,J=6.8Hz),2.39(1H,dd,J=15.5Hz,7.6Hz),2.36(2H,t,J=7.2Hz),2.18(1H,dd,J=15.5Hz,7.6Hz),2.1〜1.9(4H,m),1.6〜1.4(3H,m),1.4〜1.1(12H,m),0.89(3H,d,J=6.6Hz)
上記の実施例において、式(4)−1の化合物に変えて式(4)−2の(S)−(+)−3−メチル−6−ヘプテンニトリルを用いた以外は、上記と同様にして式(3)−2の化合物を得た(収率:72.6%)。得られた化合物のNMRスペクトルは式(3)−1の化合物と一致した。
【0044】
実施例3:(R)−3−メチル−6−シクロペンタデセン−1−オン[式(2)−1の化合物]および(S)−3−メチル−6−シクロペンタデセン−1−オン[式(2)−2の化合物]の合成
3000mlフラスコ中にRu−cat.0.4g(0.49mmol)を仕込み、系内をアルゴン置換する。(R)−5−メチル−1,16−ヘプタデカジエン−7−オン[式(3)−1の化合物]2.6g(9.8mmol)及び塩化メチレン2590ml溶液を加え、41℃で3時間反応した。減圧下に溶媒を回収後、クロマトにより精製し、式(2)−1の化合物1.2gを得た(収率:51.4%)。
1H−NMR(400MHz,TMS,CDCL3)δ(ppm)5.39〜5.30(2H,m),2.48〜2.31(3H,m),2.14(1H,dd,J=12.9Hz,7.5Hz),2.1〜1.9(4H,m),1.7〜1.5(3H,m),1.5〜1.2(12H,m),0.93(3H,d,J=6.6Hz)
上記の実施例において、式(3)−1の化合物に変えて式(3)−2の(S)−5−メチル−1,16−ヘプタデカジエン−7−オンを用いた以外は、上記と同様にして式(2)−2の化合物を得た(収率:46.3%)。得られた化合物のNMRスペクトルは式(2)−1の化合物と一致した。
【0045】
実施例4:(R)−(−)−ムスコン[式(1)−1の化合物]および(S)−(+)−ムスコン[式(1)−2の化合物]の合成
50mlオートクレーブに(R)−3−メチル−6−シクロペンタデセン−1−オン[式(2)−1の化合物]1.2g(5mmol)、Pd−C0.05g(Wet type)及び99%エタノール12mlを仕込み、40℃、水素圧0.49Mpaで反応した。反応終了後、触媒を濾過しクロマトにより精製し、式(1)−1の化合物1.1gを得た(収率:93.7%)。
[α]20D=−12.85(c=0.9638,MeOH)
1H−NMR(400MHz,TMS,CDCL3)δ(ppm)2.45〜2.37(3H,m),2.18(1H,dd,J=15.0Hz,5.4Hz),1.8〜1.5(3H,m),1.5〜1.1(20H,br s),0.94(3H,d,J=6.8Hz)
上記の実施例において、式(2)−1の化合物に変えて式(2)−2の(S)−3−メチル−6−シクロペンタデセン−1−オンを用いた以外は、上記と同様にして式(1)−2の化合物を得た(収率:95.0%)。得られた化合物のNMRスペクトルは式(2)−1の化合物と一致した。
[α]20D=12.94(c=0.6326,MeOH)
(光学純度の測定)
上記の実施例で得られた式(1)−1及び式(2)−1の化合物について、下記の条件による光学活性カラムを用いたGLC測定により、それぞれ光学純度が99%ee.以上であることを確認した。
GLC測定条件
Instrument:HP5890
Column:2,6-Me-3-Pe-β-CD(0.25mmI.D.×50mL.)
Column Temp.:100℃ to 160℃(0.7℃/min)
Column Press.:114kPa(N2)
Flow Rate:0.90ml/min
Split Ratio:1:30
Injector Temp.:230℃
Detector Temp.:250℃
Sample Volume:0.2μl(3% in Hexane)
保持時間
(R)−(−)−Muscone:131.5min
(S)−(+)−Muscone:130.8min
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、香料として有用な光学活性ムスコンを高収率、高純度に、且つ簡便に製造することができるため極めて有用である。
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